JP3778273B2 - Icカード及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ICチップと該ICチップと電気的に接続され、リーダーライターと称される通信機器との通信により、ICチップのメモリーに記録された情報の記録、書き換え、読み取りを行うICカード、及びその製造方法に関するものである。
このようなICカードは、ICカードとリーダーライターの間の距離が、数mm〜数mまでのさまざまな範囲で通信できるものがあり、密着型(通信距離0〜数mm)、近接型(数mm〜数cm)、近傍型(数cm〜数十cm)、マイクロ波型(数十cmから数m)とその通信距離により分類されている。これらのなかには、リーダーライターとICカードが離れて通信できるものがあり、本発明ではこのような非接触ICカードと称されるICカードに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
カードの状態で情報を記録するものとして、従来より磁気カードが広く使用されてきた。この磁気カードは、カード全面に磁気記録層を設ける、いわゆる、磁気カードと称されるもの、カードの一部分にストライプ状の磁気記録層を設ける、いわゆる、磁気ストライプカードと称されるものに大別できる。磁気カードは、交通カード、定期券、テレビジョンやゴルフ練習機などに使用されるプリペイドカードや切符類に使用され、磁気ストライプカードは、銀行カードやキャッシュカードなどに使用されている。これらの磁気カードの磁気記録層は、バリウムフェライトやγ−酸化鉄あるいはコバルト被着γ−酸化鉄などの磁性材が、ポリウレタン樹脂などのバインダーに分散されており、その厚みは、数μm〜100μm程度である、磁性材は、磁化容易軸が記録方向に配向するように、磁性材をコーティングする際に永久磁石や空心コイルなどで一定方向に配向処理されている。このような配向処理を施すと、磁気ヘッドと称される、いわゆる、微小な電磁石で磁界をかけ磁性材を一定方向に磁化し所定のパターンを記録する際に、磁界を取り去ったあとでの磁化の量(残留磁化)が大きくなるという特徴が発現する。このように磁気記録では、磁気記録層中の磁性材をある一定の範囲で磁化し、その磁化の方向を変化させることにより磁化パターンを作成し記録している。しかしながら、この磁化パターンは、所定の磁気ヘッドを使用すると容易に書き換えが行うことができ、カードに記録された使用残高などの情報を改竄、偽造することが容易にでき、このような偽造、変造が大きな社会問題となっていた。
【0003】
磁気記録方式では、記録の改竄を防止するために、いわゆる、磁気遮蔽層と称する軟磁性材を含有したシールド層を磁気記録層の表面に形成することがある。このときには、磁気記録、読み取りを行う場合に、いわゆる、バイアス電流と称する一定方向の直流磁界をかけ、シールド効果が発現しない状態で記録する方式や、記録層自体を、磁化のしやすさが異なる、いわゆる、保磁力が異なる磁性層を複数層接してもうけそれぞれの層に固有の情報を記録するなどの改竄対策を施すことが行われる場合がある。しかしながら、これらの対策を施しても、所定の磁気ヘッドで記録することにより、偽造、変造が皆無になることはない。
また、磁気カード類は、磁気ヘッドとほとんど接触して記録、書き込み、読み取りを行うため、カードを財布などのカードホルダーからいちいち取り出して使用することが必要である。
さらに、磁気カードでは、カードに記録できる情報が所定の記録密度でカードの長さの範囲内に限定されるため、磁気記録を行う、いわゆる、磁気トラックを複数個(通常2〜4本)にしたとしても、記録できる情報の量が限定される。
【0004】
これに対して、ICカードでは、ICチップのメモリーに情報を記録するため、その情報量は、磁気カードの数倍〜数千倍と情報量が多い。また、アンテナを内蔵した磁気カードでは、リーダーライターと接触することなく通信を行うことが可能で、カードホルダーのカードを入れていてもリーダーライターとの通信は一般に可能である。
このため被接触ICカードは、テレフォンカードやJRの定期券などでの使用が始められており、今後、住民基本台帳や免許証、保険証などにも使用が検討されているのが現状である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
非接触ICカードは、情報を記録するためのメモリーを具備したICチップと、該ICチップと電気的に接続されリーダーライターから送信されてくる電磁波を把捉するアンテナ(場合によっては、カードからの情報を電磁波としてリーダーライターに送信する)を有している。これらのICチップおよびアンテナは同一の基材に配置されることがきわめて多い。これをインレットと称している。このインレットに使用するシート基材は、ポリイミドやPET(ポリエチレンテレフタレート)やPEN(ポリエチレンナフタレート)が使用されることが多く、その厚みは、10μm〜200μm程度でさまざまである。このインレットシート基材に、アンテナをエッチング法、銅線などをまきつけコイル状にした巻線アンテナ法、銀ペーストなどを印刷したペーストアンテナ法などで設ける。これらのアンテナに、ICチップをワイヤーボンディング法やフリップチップボンディング法(FCB法)などで実装する。ICチップは、いわゆる、IC(集積回路)を具備したチップの1種であり、ICカード用ICチップとしてインフィニオン社やモトローラー社、富士通社、ソニー社より販売されている。
【0006】
これらのICチップは、通常のICと同様に、シリコンウェハー上に、リソグラフィーやドーピングなどの手法により電子回路を形成し、アンテナとの接続端子を設け、必要な厚みに研摩し、ダイシングして所定のICチップ形状とする。アンテナとの接続端子は、通常、バンプと称され金メッキやハンダメッキなどにより形成する。このようなICカード用ICチップをアンテナの端子接続部分にワイヤーボンディング法(金線などでICチップの接続端子とアンテナ接続端子を接続する方法)、フリップチップボンディング法(ICチップとアンテナをACF(異方導電性フィルム)やACP(異方導電性ペースト)を介して、加熱加圧により接続する方法)などの手法で接合を行う。ACFやACPには、金粒子や銀粒子などの導電材が含まれており、加圧することによりそれらの粒子が接触し、導通することになり、ACFなどは、日立化成やソニーケミカル社より販売されている。
【0007】
ところが、このようにして実装したICチップは、いわゆる、ベアーチップと称され、チップがインレット上で剥き出しになっており、カード化した後でも、ペン先などで局部的に圧力がかかったり、折り曲げ、捻じれ等でICチップが破損することが多いという問題がある。このため、ICメモリーに蓄積、保存された貴重な情報が失われることが多かった。このようにベアーチップを実装したICカードは、使用回数が数回〜数十回でチップが破損し、非接触ICカードのひとつの特徴である繰り返し使用可能(通常は1000回程度)であることを保持することが困難である。
【0008】
このようなことから、ICチップ単体をインレットシート基材に実装するのではなく、ICチップを樹脂で固め補強した、いわゆる、ICチップモジュールを使用しようとする試みがなされている。このICチップモジュールは、ステンレスや4,2アロイなどの所定形状の端子部分を有する、厚み50μm〜200μmのリードフレームと称する金属板にICチップを実装し、ICチップの接続端子とリードフレームの接続端子をワイヤーボンディング法などで金ワイヤーなどで結線し、チップ部分を所定形状の金型に入れて、封止樹脂を封入し、加熱固化させた後、金型から取り出して形成する。このICチップモジュールは、パッケージ化チップとも称され、ICチップが樹脂で固められているため、ペン先などの局部的な外力に強く、折り曲げや捻じれなどにも強い。このICチップモジュールは、たとえば、インフィニオン社からはMCC−2−2−1などの商品番号で販売されている。
しかしながら、ICチップモジュールは、上記のような複雑な製造工程が必要で、専用の金型を作成する必要があり、コストが高くなるという欠点がある。また、モジュール化したときに樹脂封止するため、リードフレームと樹脂部分の厚みが厚くなり、通常、400μm〜600μmの厚みとなるため、ISO規格にあるようなカード厚み、740μm〜840μmに設定するためには、基材にチップを納める穴をあけるなどの必要性が生じ、製造工程が複雑になるという問題があった。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上述の問題点を解決可能な本発明のICカードは、ICチップと、このICチップと電気的に接続し通信機器との通信を可能にするアンテナとを具備したインレットシート基材を含み、ICチップの周囲がエポキシ樹脂で被覆されることによって補強されており、この際、ICチップの周囲を被覆しているエポキシ樹脂が、少なくとも95℃未満の温度にて10分〜90分でエポキシ樹脂の部分硬化重合を促進する成分aと、100℃以上の温度にて10分〜90分でエポキシ樹脂の完全な硬化重合を促進する成分bとを硬化剤として用いた、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンの硬化重合により得られた重合生成物であることを特徴とし、本発明のICカードでは、2種類の硬化剤の併用によって、ICチップの周囲を被覆しているエポキシ樹脂の補強効果が、1種類の硬化剤により得られるエポキシ樹脂の補強効果よりも大きく、ICチップが破損しにくいという利点を示す。
【0010】
本発明では、前記の成分aが、変性脂肪族アミン、脂環族ポリアミン、第三アミン、イミダゾール類およびBF3 錯体から選ばれる少なくとも一種で、エポキシ樹脂成分中に10〜90重量%の範囲内で含有されていることが好ましく、前記成分bは、イミダゾール系アミン、芳香族ポリアミン、酸無水物、フェノール樹脂、アミノ樹脂、ジシアンアミドおよびヒドラジド化合物から選択される少なくとも一種で、エポキシ樹脂成分中に10〜90重量%の範囲内で含有されていることが好ましい。
【0011】
まず、本発明のICカードにおけるエポキシ樹脂について説明する。本発明では、ICチップ部分の封止樹脂として、強度の優れたビスフェノールAとエピクロルヒドリンの重合物(いわゆる、ビスフェノールAタイプのエポキシ樹脂)が使用されており、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンはそれぞれ、下記の構造式で表される。
【0012】
【化1】
【0013】
【化2】
【0014】
ビスフェノールAとエピクロルヒドリンをアルカリ化で反応させると、次の化学構造を有したエポキシ樹脂が生成する。
【0015】
【化3】
【0016】
このようなビスフェノールAタイプのエポキシ樹脂の特徴としては、(1) ビスフェノール基の対称性が高く、剛直で緻密な構造が得られる、(2) 耐薬品性が優れる、(3) 折り曲げなどの可撓性に優れる、(4) 接着性が高い、(5) 適度な反応性を有する、などが挙げられ、ICチップとしての封止効果に優れている。
【0017】
そして、本発明では、このビスフェノールタイプの樹脂の硬化に使用される硬化剤として、硬化促進温度の異なる2種類の成分が適切に配合されて使用され、一方が、少なくとも95℃未満の温度にて10分〜90分でエポキシ樹脂の部分硬化重合を促進する成分aであり、もう一方が、100℃以上の温度にて10分〜90分でエポキシ樹脂の完全な硬化重合を促進する成分bである。
本発明のICカードの製造においては、インレットシート基材と別のシート状基材、たとえば、インレットシート基材の表面と裏面にそれぞれシート状基材を配置し、接着材を介して加熱加圧して接合することが多く、この際の加熱加圧条件、通常は100℃〜150℃の温度条件で封止樹脂の硬化を完全にするため、あらかじめインレットの状態で80℃程度の温度条件で上記成分aによる部分硬化処理を行い、その後、上記温度条件にて加熱を行い、上記成分bにより樹脂を完全硬化させる。
【0018】
次に、本発明のICカードの構成について説明する。
本発明のICカードでは、ICチップとしてベアーチップが採用されており、アンテナを配置したインレットシート基材上で、FCB法などの方法によりチップ端子とアンテナ端子が接続され、ICチップ部分がスクリーン印刷などの手法により前記エポキシ樹脂で被覆され、加熱硬化したエポキシ樹脂によってICチップの周囲が補強された構造となっている。そして、成形時にICチップ部分の盛り上がりを少なくするために、ICチップの厚みをA、エポキシ樹脂の厚みをBとするときのB−Aが100μm以下となるように設定されている。
【0019】
本発明では、ICチップを被覆する封止樹脂のICチップ部分上部ならびにインレット基材を介して裏面のICチップ部分にも封止樹脂を配し、さらに、薄い補強板(金属板)を、インレットシート基材におけるICチップ部分の表面側及び/又は裏面側の封止樹脂に接触させて設けることで、チップ強度を増大させることが可能であり、この際、補強板としての金属板の厚さは10μm〜100μmの範囲であることが好ましい。
【0020】
尚、本発明においては、少なくともインレットシート基材のICチップ実装面側に積層される外皮シートがポリエステル材から形成され、インレットシート基材と外皮シートの厚みが50μm〜500μmの範囲にあることが好ましい。
又、本発明では、インレットシート基材と外皮シートの間に、融点50℃〜150℃のポリエステル系接着材が挿入され、当該ポリエステル系接着材の厚みが10μm〜300μmの間にある構造であることが好ましい。
更に、本発明のICカードにおいては、アンテナがカードの端部に配置されることが多いため、ICチップもカードの端部に位置することが多く、ICチップの位置がカード端部に近く設定されている場合でも、封止樹脂がカードエッジにはみ出しても、端部の汚れを目立たなくさせる目的で、エポキシ樹脂に白色顔料を添加することが好ましく、白色顔料の含有量としては10〜80重量%の範囲である。
【0021】
又、本発明は、このようなICチップの周囲が補強された構造のICカードを製造するための方法でもあり、当該方法は、インレット用シート基材上にICチップおよびアンテナを設けた後、少なくとも95℃未満の温度にて10分〜90分でエポキシ樹脂の部分硬化重合を促進する成分aと、100℃以上の温度にて10分〜90分でエポキシ樹脂の完全な硬化重合を促進する成分bとを硬化剤として含むビスフェノールA‐エピクロルヒドリン混合物を、ICチップの周囲を被覆するようにして塗布し、50℃〜90℃の範囲の温度で10分〜90分熱処理を施すことで、ICチップの周囲をエポキシ樹脂で被覆し、その後、少なくともインレットシート基材のICチップ実装面側に外皮シートを積層し、100℃〜200℃の温度で、98.067kPa〜980.67kPa(1kg/cm2 〜10kg/cm2 )の加圧範囲で加熱加圧することにより積層シートを成形し、得られた積層シートをカード状に打抜いてICカードとすることを特徴とする。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態の具体例を、図面を用いて説明するが、もちろん、本発明の請求範囲はこれらの例に限定されるものではない。図1及び図2は、本発明のICカードの好ましい具体例を示す層構成図であり、図3は、従来のICカードの層構成図である。
まず、インレットとして使用するシート基材1は、ポリイミド材、PET、PENなどの融点や軟化点が200℃以上のプラスチックフィルムを使用することが望ましい。これは、本発明が一般に、加熱加圧成形方式でカード積層板を製造するため、基材の耐熱性が要求されるからである。通常、このインレットシート基材1の表面と裏面にそれぞれ外皮シート2及び3を配置し、ホットメルト接着剤4を介して100℃〜130℃の温度で98.067kPa〜980.67kPa(1kg/cm2 〜10kg/cm2 )の加圧条件で基材全体を接合する。このとき基材自体に熱収縮差があると成形後、変形したりカールが発生したりすることが多いので、インレットを含む基材をあらかじめ、所定温度(80℃〜120℃の範囲)で数十分〜数時間アニール処理をすることが好ましい。特に、フィルムの製膜時に延伸処理を施したもの(2軸延伸処理PETなど)は、シート原反の幅方向で収縮差があったり、また、同一シートでも縦方向とよこ方向に収縮差が生じることがある。インレットシート基材1の厚みは、使用条件により10μm〜500μmのものを使用し、通常、PETでは38μmと50μmのものを使用することが好ましい。また、インレットシート基材1を挟み込む外皮シート2及び3の厚みは、50μm〜500μmの間から適宜選択する。
【0023】
ところで、ICカードに関しては、例えばISOの規格があり、カード厚として740μm〜840μmの間に設定するようになっており、このような規格に適合するように、外皮シートの厚み、接着剤の厚みを適宜選択する必要があるが、本発明のICカードは、テレフォンカードのように厚み450μmのようなものであっても良い。このようなPET材としては、帝人デュポン社や三菱樹脂社、東レ社などから販売されている。ホットメルト接着剤4は、外皮シートとしてPETを使用する場合にはポリエステル材系の接着材を使用することが多い。このポリエステル系接着剤の融点は50℃〜150℃の範囲にあることが多く、成形加熱条件にあわせて選択する。たとえば成形条件が120℃である場合には、接着材の融点は、それより10℃、望ましくは20℃低い100℃程度のものを使用する。このようなポリエステル系接着剤は、東亞合成社などから販売されており、融点が110℃程度のものが好適である。
【0024】
外皮シート2及び3としては、最近注目されているPETGが特に好ましい。このPETGとは、熱可塑性樹脂の一種である非結晶変性ポリエステル樹脂で、PETGの名称で市場に流通しているプラスチックシートである。この樹脂は、正式には少なくともエチレングリコール、テレフタル酸及び1,4‐シクロヘキサンジメタノールの3成分を重合した変性ポリエステル樹脂と呼ばれ、PETGが特に好ましい理由は、この軟化温度が70℃前後であって、PETGどうしが加熱したときに融着性を有するため、接着剤を介する必要がないためである。このようなPETG材としては、三菱樹脂社や太平化学社より販売されているものが使用できる。
【0025】
尚、本発明では、カードの外観を良くするために、インレットシート基材1、外皮シート2及び3、および、それらを接合する接着剤が白色顔料を含有することが好ましい。本発明にて使用されるシート状基材としてはPETやPETGが多く、これは、印刷時のインキを鮮明にしたり、カード端面の色付きを防止し、枚数計測などで誤動作が生じないようにするためである。白色顔料としては、一般に、酸化チタン微粒子や炭酸カルシウム微粒子、硫酸バリウム微粒子が使用され、その使用量は、基材として使用する場合、10〜80重量%、接着剤として使用する場合、5〜50重量%である。これより白色顔料が少ないと白色度が低下し、また、これより顔料が多いとプラスチックフィルムとして成膜時に破断が生じることが多くなり不都合である。また、カードを構成する基材や接着剤に白色顔料の含有量が多いとカード自体の不透明度が高くなり、たとえば、カードを実際に使用する際に、カードを検知する透過型センサーの誤動作が少なくなるというメリットがある。このようなセンサーは、可視光や赤外光が使用されるのでこれらの広範囲にわたる波長領域(400nm〜1200nm)での光の透過率が数%以内という性能が要求されることが多い。
【0026】
ところで、本発明のICカードの表面には、オフセット印刷などの印刷を施すことが多く、特にICカードとしては、上記のようなプラスチックフィルム類に印刷することが多く、UV硬化型のインキが多用される。このようなインキは、T&K TOKA社や東洋インキ社、大日本インキ社などから販売されている。基材としては、後述するICチップの実装形態からシート状であることが多く、一般に印刷には枚葉印刷機が使用される。このような印刷機は、ハイデルベルグ社や小森コーポレーション社より販売されている。通常、オフセット印刷では、インキの盛り量は0.5μm〜4μmである。そして、カードの表面と裏面にこのオフセット印刷を施すことがほとんどである。カードの偽造を防止するためにマイクロ文字と称する肉眼では判別しずらい微小な文字を印刷することも好ましい。オフセット印刷層に傷がつきにくいようにするには、カード表面にオーバプリントニス(OPニス)を0.5μm〜20μm程度印刷する。このOPニスの印刷層が5μmを超えるときにはスクリーン印刷などの方法で印刷を行う。このようなスクリーン印刷機は、ミノグループ社や東海商事社より販売されている。オフセット印刷でインキの盛り量をコントロールする場合は、基本的にインキづけロールに供給するインキの供給量でコントロールするが、スクリーン印刷の場合には、スクリーン版のスクリーンメッシュ数や感光乳剤厚、または、スキージ移動速度などの印刷条件によりインキ盛り量をコントロールする。
【0027】
シート状基材としてプラスチック材を使用するときには、加熱温度によるシート変形に留意する必要があるため、溶剤乾燥型のインキを使用し長時間、乾燥するよりも、UV硬化型のインキを使用し、短時間での加熱温度上昇を抑えるようにすることが望ましい。UV照射用のランプは、インキの種類によりメタルハライドや水銀ランプが使用される。シートの温度上昇を防止するために水冷式ランプにしたりコールドミラーを利用したりすることが望ましい。
【0028】
本発明におけるインレットシート基材1には、ICチップとアンテナを配することが必要であり、ICチップにはICカード用のICチップを使用する。このようなICチップは前述のインフィニオン社などから販売されており、たとえばMCC1−1−2などの商品番号で販売されている。アンテナは、通常、エッチング法によるエッチングアンテナ、巻線法による巻線アンテナ、ペースト印刷法よるペーストアンテナが使用される。ベアーチップを接合する場合には、通常、エッチングアンテナとペーストアンテナが使用されることが多い。
エッチングアンテナは、上記インレットシート基材1に銅箔やアルミ箔を接着材を介して貼りあわせ、感光乳剤を塗布した後、所定のパターンの版下フィルムを重ねて露光し、レジストパターンを形成して、エッチングして不要な金属部分を溶解させ、その後、アルカリ処理などでレジストを剥離させることにより形成する。一方、ペーストアンテナは、銀粒子が固形分中に50〜90重量%含有した銀ペーストインキをスクリーン印刷によりアンテナパターンを印刷して形成する。アンテナ接続端子部分はICチップの配置上近接することが多く、アンテナ(通常ループアンテナが採用される)の両端を接近するためにループの途中で位置を変更するためのジャンパー部分を設けることが好ましい。エッチングでは、このアンテナ接続端子を接近させるために裏表アンテナを配置し、クリンピングなどの手法でアンテナを接続することが好ましい。エッチングアンテナを配したインレットシート基材は、たとえば日本黒鉛社、ナビタス社、東洋アルミ社などから販売されている。また、銀ペーストは東洋紡績社から販売されている。
【0029】
本発明のICカードにおけるICチップの接続端子は、バンプ形状であることが好ましく、このバンプを、前述のワイヤーボンディング法や、最近多用されているFCB法によりインレットアンテナの接続端子部分と接合する。FCB法の場合には、インレットアンテナのICチップ接続部分にACFを仮づけし、ICチップの接続端子の位置合わせをCCDカメラ等で行い、精度よくICチップを所定の位置に配置し、その後、約200℃程度の温度を加え、加圧し、ACFを導通させると同時にACFを熱硬化させ、接着を強固なものとする。このFCB法によるICチップの接合は、一般にシート状インレットで行い、このようなFCB実装装置は、たとえばカール・ズース社から販売されている。
【0030】
本発明では、ICチップを実装したインレットシート基材1を上記のように成形により基材を積層するわけであるが、ベアーチップそのままでは、カード化したあとのチップ強度が極めて弱く実用に耐えない場合が多いために熱硬化性の樹脂でチップ部分が補強され、これに使用する補強樹脂としては、前述のビスフェノールタイプのエポキシ樹脂が推奨される。ビスフェノールタイプの樹脂は、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンをアルカリの存在下で重合して生成し、反応式はつぎの通りである。
【0031】
【化4】
【0032】
この生成物は、エポキシ基を末端に有しており、硬化剤のもとで加熱時に硬化反応を行い重合体が生成する。ここで、液状または半固体状のエポキシ樹脂として使用する場合には、n<1の条件が必要である。ビスフェノールAのかわりにビスフェノールFを使用したものは粘度が低く、本発明では後述するスクリーン印刷用途には適さない。また、その他、たとえば、ノボラック型フェノール樹脂等に比べ、ビスフェノールタイプのエポキシ樹脂は、前述したように、硬化後の強度が強く可撓性に優れ、耐薬品性が高く、硬化後の収縮が少なく、接着性が大きいなどの優れた特徴を有している。加熱時の硬化を促進するために、通常、第一アミン、第二アミン、第三アミンなどのアミン系硬化剤が使用される。本発明では、ICチップを接合したインレットのチップ部分にビスフェノールタイプのエポキシ樹脂をスクリーン印刷により被覆することが好ましいが、この場合、エポキシ樹脂の粘度を、スクリーン印刷ができる範囲(通常は1000cps〜100000cps)に粘度調整する必要がある。又、この際、エポキシ樹脂による被覆は、ICチップ形状を完全に覆うことが必要であり、このためチップ形状より大きな形状の穴をあけたメタルマスクを用いてスクリーン印刷を行う。
【0033】
ICカード用として市販されているICチップの厚みは、通常100μm〜300μm程度であり、この厚みをAとし、被覆する樹脂の厚みをBとすると、B−Aは100μm以下が望ましい。これより厚み差が大きくなると成形したときにチップ部分の盛り上がりが大きくなり、たとえば、カードを積層したときに傾きが大きく、くずれてしまうなどの不都合が生じる。しかしながら、エポキシ樹脂層はICチップを完全に被覆する必要があり、それは、さらに、チップを補強する場合に、補強板をICチップ上部に配し、補強板とICチップの間にエポキシ樹脂を介在されることによって補強板とICチップを接合させることが必要であるためである。
【0034】
このようなエポキシ樹脂の印刷盛り量は、主にメタルマスクの厚みにより調整することが可能である。メタルマスクの厚みは、接合後のチップ部分の厚みより大きく、かつ、その厚みから100μmまで大きい厚みに調製する必要がある。印刷後、エポキシ樹脂を加熱処理により硬化させるのであるが、硬化するまでにエポキシ樹脂に表面張力により印刷部分の中央部が盛り上がることがある。本発明でいうところのエポキシ樹脂の厚みは、印刷直後のメタルマスクの所定の穴を通じて印刷されたエポキシ樹脂の厚みをさしているのであり、表面張力等での樹脂の盛り上がり量をコントロールすることは非常に困難である。印刷直後のエポキシ樹脂の厚みは、レーザー変位計(たとえば、キーエンス社製)を使用して非接触にてμオーダーで測定することが可能である。
本発明で使用するビスフェノールタイプのエポキシ樹脂は、たとえば、日立化成社、日本レック社などで販売されており、たとえば、日本レック社では、NPR−100の商品番号で販売されている。このエポキシ樹脂を印刷する際に使用するメタルマスクは汎用のものでよく、ステンレス材などが一般的であり、たとえば、ソノコム社、東海商事社、むらかみ社などで製造販売されている。
【0035】
本発明では、ICチップを被覆するエポキシ樹脂に白色顔料を添加することが好ましく、これは、成形時に樹脂がカード端面部分にはみ出したときに、カード端面の地汚れを防止するためであり、白色顔料のエポキシ樹脂インキ中に含まれる量は10〜80重量部が望ましい。これより含有量が少ないとビスフェノールタイプのエポキシ樹脂の色が目立ち、含有量がこれより多いと粘度が極端に大きくなりインキとして使用できなくなる。白色顔料としては平均粒子径が0.1μm〜0.8μmの酸化チタン微粒子が好ましく、酸化チタン微粒子を必要量添加することにより、硬化後の樹脂の硬度が増し、チップの補強効果が増大する。さらに、シリカなどのエポキシ樹脂に添加することにより、樹脂の硬度を高めることも可能である。このような酸化チタンを含有したビスフェノールタイプのエポキシ樹脂は、たとえば、日本レック社よりEZ−165Wなどの商品番号で販売されている。
【0036】
本発明では、ICチップをエポキシ樹脂で被覆したあと、ICチップ部分に補強板をエポキシ樹脂を介して接着させることが好ましい。この補強板は、ICチップ形状より大きいものが補強効果が高く、硬性を有していれば良く、ステンレス材等の金属材、セラミック材、樹脂材が使用でき、厚み10μm〜100μmのものが適しており、30μm〜50μmのものが望ましく、厚みが薄いと補強効果がなくなり、厚すぎると成形後のチップ部分の盛り上がりが大きくなるという問題が生じる。補強板として好ましい金属材の補強板の形成方法としては、金属板を金型で打抜く、金属板をエッチングにより不要部分を溶解して取り除く、という方法があり、本発明で使用される金属板はいずれの製造方法にて得られたものでも良いが、量産時に低コストになる点で金型プレス法が好ましい。このような補強板は、たとえば、ミスズ工業社より製造販売されている。
【0037】
本発明の製法においては、ICチップにスクリーン印刷等でエポキシ樹脂を被覆したのち、好ましくは金属板をICチップ上に配置してチップの補強効果を高めることを行うが、エポキシ樹脂の硬化を完全に行うためには、スクリーン印刷後の樹脂を50℃〜90℃の温度範囲で10分〜90分熱処理し(前熱処理)、外皮シートと一体化させる際に100℃〜200℃の温度範囲で98.067kPa〜980.67kPa(1kg/cm2 〜10kg/cm2 )の加圧条件で10分〜90分の熱処理を行い、エポキシ樹脂を完全に硬化させる。本発明では、少なくとも95℃未満の温度にて10分〜90分でエポキシ樹脂の部分硬化重合を促進する成分aによる硬化と、100℃以上の温度にて10分〜90分でエポキシ樹脂の完全な硬化重合を促進する成分bによる硬化の、2段階で樹脂の硬化が達成され、成分a及びbはそれぞれ、エポキシ樹脂成分中に10〜90重量部含有される。このような硬化促進する温度を調整するには、ビスフェノールタイプのエポキシ樹脂に添加するアミン類のような硬化促進剤の種類、配合量などで調製を行うことが可能である。
【0038】
たとえば、硬化促進温度を80℃に設定した場合には、1,8−ジアザビスシクロ(5,4,0)ウンデセン−1(DBU)を樹脂中に必要量添加し、100℃以上で硬化促進させるためには、トリエチルアミンやベンジルジメチルアミンなどの脂肪族アミンや2,5ジメチル−2,5−ヘキサンジアミン(DMHDA)などを必要量配合する。配合量は、一般に、エポキシ基のモル量とアミンの活性水素のモル量を調整するなどして上記の加熱時間で硬化するような最適な硬化条件を設定する。本発明では、前熱処理によるエポキシ樹脂の部分硬化を行うが、これは、成形時のエポキシ樹脂の硬化を完全に行うためだけではなく、たとえば、シートを成形する前に重ねたりする場合のハンドリング時の樹脂の擦れによるカードの地汚れを防止することや、補強板をチップ上に装着するときに補強板と樹脂を適度に接着させるという効用がある。
【0039】
本発明では、前述したICチップ部分にエポキシ樹脂を被覆し、補強板で補強するということ以外に、図1に示されるようにして、インレットシート基材1のチップ装着側と反対側のチップ位置にエポキシ樹脂を塗布し、また、必要に応じ補強板を装着して、さらに補強効果を高めることを行ってもよい。この場合には、製造工程上、ICチップ部分にエポキシ樹脂被覆を行った後で、その裏面側の補強処理を行うことが多いので、ICチップと反対面の樹脂の塗布は、ディスペンサーマシンを利用することが望ましい。エポキシ樹脂の塗布量は、チップあたり0.1g〜1gの間であることが望ましい。また、補強板も前述したようにチップより大きいものが望ましく、厚みも前述したとおり10μm〜100μmであることが望ましい。チップ上部にも補強板で補強し、その裏側も補強板で補強する場合には、チップ部分の厚みに加えて、エポキシ樹脂の厚み、さらに補強板の厚みが加わることになり、チップ部分のトータル厚みは相当なものになり、インレットシート基材1と重ね合わせた外皮シート2及び3、さらには、その間に介した接着剤層で、そのチップ部分の厚みを吸収できなくなることがある。そのため、両面に補強板で補強する場合には、補強板の厚みを30μm〜50μmにすることが望ましく、また、樹脂量も適宜調整する必要がある。ディスペンサーマシンについては、たとえば、武蔵エンジニアリング社やサンエイテック社より販売されている。
【0040】
本発明では、このようにして作成したインレット基材シート1を、前述のように外皮シート2や外皮シート3の間に接着剤層4を介して成形し、積層シートとする場合が多いが、その後は、カードパンチャー等を使用して所定の大きさ、たとえば、JIS II型では54mm×86mm程度に打抜いてカード化し、ICカードして使用する。
本発明では、カード表面にオフセット印刷だけではなく、感熱印字基材や昇華転写受理層を有する基材、リライト記録層を有する基材、インクジェット受理層を有する基材、熱転写受理層を有する基材などの表示基材を使用してもよい。また、必要に応じ、カード表面に、ホログラムや、サインパネル、磁気ストライプなどを貼付してもよいことはいうまでもない。
【0041】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、もちろん、本発明はこれによって限定されるものではない。
(実施例1)
下記の工程に従って、インレットを作成し、エポキシ樹脂によりチップ部分を補強し、補強板を装着して、接着剤を介してインレットシート基材の表裏両面に外皮シートを接合し、カード状に打抜いて本発明のICカードを製造した。
1)インレットの形成:厚み50μmのPETフィルム(東レ社製)に接着剤を介して厚み15μmの銅箔をロール状で貼り付け、レジストを塗布した後、所定のアンテナパターンを焼き付け、不要なレジストを除去したのちエッチングしてアンテナパターンを形成、その後、不要なレジストをアルカリ液で除去した。その後、375mm×475mmの寸法にシートカッティングし、インレット基材とした。
2)ICチップ実装:富士通ICカード用ICチップ(5mm×5mm大、厚み200μm)の接続端子をFCB法によりACF(日立化成製)を介してアンテナ端子に接続した。接着温度は200℃とした。
【0042】
3)エポキシ樹脂の印刷:ビスフェノールタイプのエポキシ樹脂として日本レック社製EZ−165Wを使用し、メタルマスク(ステンレス製、ソノコム社製)に7mm×7mm大で厚み250μmの穴をチップ位置にあけたものを使用して、チップ位置に上記エポキシ樹脂をスクリーン印刷して、チップ部分をエポキシ樹脂で被覆した。このエポキシ樹脂には、予め、80℃×60分で樹脂の部分的な硬化重合を促進し得る成分として変性脂肪族アミンを約40%含有させ、120℃×30分で樹脂の完全な硬化重合を促進し得る成分としてイミダゾール系アミンを約60%程度含有させた。
4)樹脂の部分硬化:上記の印刷済みシートを80℃で30分熱風乾燥した。熱風乾燥後のシート状のエポキシ樹脂は粘度が適度に高いものであった。
【0043】
5)補強板の装着:上記の熱処理にて部分硬化したインレットシートのICチップ部分に、厚み30μm、9mmφの円板状のステンレス製補強板を樹脂に密着させるようにした装着した。
6)インレット基材の裏面の補強:上記のインレットシートを裏返し、ICチップの実装位置と対応する箇所にディスペンサーマシンで前記EZ−165Wを0.5gチップごとに滴下し、前記補強板を装着した。
7)成形:上記インレットシートに、融点が110℃のポリエステル系ホットメルト接着剤(100μm厚、東亜合成製)を裏表面に重ね、さらに外皮シートとしてその外側にPETGシート(厚み275μm、三菱樹脂製)をそれぞれ重ね、120℃で30分間、392.268kPa(4kg/cm2 )の加圧下で積層一体化させて積層シートとした。
8)打抜き:上記積層シートをカードパンチャーで54mm×86mmの大きさに打抜き、図1に示される層構成を有した本発明のICカードを得た。
【0044】
上記実施例1にて得られた本発明のICカードについての補強効果を、以下の試験方法にて評価した。
a)点圧測定:厚み5mmのシリコンゴム上にカードをのせ、10mmφの鉄球を1mm/分の下降速度でカードチップ部分に押し付けチップが破損するときの鉄球に加わる力をロードセルで測定した。
b)折り曲げ試験:JIS X 6305に従い、カード長辺方向、短辺方向、その表面、裏面の計4種類の方向で各500回折り曲げ試験を実施し、リーダーライターにて通信可能かどうかを調査した。
c)ねじれ試験:JIS X 6305に従い、1000回のねじれ試験を実施し、リーダーライターにて通信可能かどうかを調査した。
【0045】
(実施例2)
インレットシートの裏面にエポキシ樹脂層及び補強板を設けない以外は実施例1と同様にして、図2に示される層構成を有した本発明のICカードを製造し、上記試験方法a)〜c)にて補強効果を評価した。
【0046】
(実施例3)
インレットシートの表面に補強板を設けず、しかも当該シートの裏面にエポキシ樹脂層及び補強板を設けない以外は実施例1と同様にして、ICチップの周囲がエポキシ樹脂層により補強された層構成を有する本発明のICカードを製造し、上記試験方法a)〜c)にて補強効果を評価した。
【0047】
(比較例1)
110℃で完全硬化する硬化剤(日本レック社NPR−100)を含むエポキシ樹脂を用い、ICチップの反対面の補強を行わずに、ICチップの周囲だけがエポキシ樹脂層により補強された層構成のICカードを製造し、上記試験方法a)〜c)にて補強効果を評価した。
【0048】
(比較例2)
実施例1においてエポキシ樹脂補強ならびに補強板による補強を行わない以外は実施例1と同様にして、図3に示される層構成を有したICカードを製造し、上記試験方法a)〜c)にて補強効果を評価した。
【0049】
上記実施例1〜3及び比較例1、2における評価結果を以下の表1に示す。
【0050】
【表1】
【0051】
【発明の効果】
表1に示されるように、本発明のICカードでは、ICチップが2段階硬化により得られた樹脂で固められているので、1段階硬化により得られた樹脂の場合に比べて外力に強く、折り曲げや捩じれにも強い。又、金属製の補強板で補強されたものは一層補強効果が優れたものとなる。本発明の製造方法を用いることによって、補強効果の優れたICカードが安定して製造できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のICカードの好ましい具体例を示す層構成図である。
【図2】本発明のICカードの好ましい具体例を示す層構成図である。
【図3】従来のICカードの層構成図である。
【符号の説明】
1 インレットシート基材
2、3 外皮シート
4 ホットメルト接着剤
【発明の属する技術分野】
本発明は、ICチップと該ICチップと電気的に接続され、リーダーライターと称される通信機器との通信により、ICチップのメモリーに記録された情報の記録、書き換え、読み取りを行うICカード、及びその製造方法に関するものである。
このようなICカードは、ICカードとリーダーライターの間の距離が、数mm〜数mまでのさまざまな範囲で通信できるものがあり、密着型(通信距離0〜数mm)、近接型(数mm〜数cm)、近傍型(数cm〜数十cm)、マイクロ波型(数十cmから数m)とその通信距離により分類されている。これらのなかには、リーダーライターとICカードが離れて通信できるものがあり、本発明ではこのような非接触ICカードと称されるICカードに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
カードの状態で情報を記録するものとして、従来より磁気カードが広く使用されてきた。この磁気カードは、カード全面に磁気記録層を設ける、いわゆる、磁気カードと称されるもの、カードの一部分にストライプ状の磁気記録層を設ける、いわゆる、磁気ストライプカードと称されるものに大別できる。磁気カードは、交通カード、定期券、テレビジョンやゴルフ練習機などに使用されるプリペイドカードや切符類に使用され、磁気ストライプカードは、銀行カードやキャッシュカードなどに使用されている。これらの磁気カードの磁気記録層は、バリウムフェライトやγ−酸化鉄あるいはコバルト被着γ−酸化鉄などの磁性材が、ポリウレタン樹脂などのバインダーに分散されており、その厚みは、数μm〜100μm程度である、磁性材は、磁化容易軸が記録方向に配向するように、磁性材をコーティングする際に永久磁石や空心コイルなどで一定方向に配向処理されている。このような配向処理を施すと、磁気ヘッドと称される、いわゆる、微小な電磁石で磁界をかけ磁性材を一定方向に磁化し所定のパターンを記録する際に、磁界を取り去ったあとでの磁化の量(残留磁化)が大きくなるという特徴が発現する。このように磁気記録では、磁気記録層中の磁性材をある一定の範囲で磁化し、その磁化の方向を変化させることにより磁化パターンを作成し記録している。しかしながら、この磁化パターンは、所定の磁気ヘッドを使用すると容易に書き換えが行うことができ、カードに記録された使用残高などの情報を改竄、偽造することが容易にでき、このような偽造、変造が大きな社会問題となっていた。
【0003】
磁気記録方式では、記録の改竄を防止するために、いわゆる、磁気遮蔽層と称する軟磁性材を含有したシールド層を磁気記録層の表面に形成することがある。このときには、磁気記録、読み取りを行う場合に、いわゆる、バイアス電流と称する一定方向の直流磁界をかけ、シールド効果が発現しない状態で記録する方式や、記録層自体を、磁化のしやすさが異なる、いわゆる、保磁力が異なる磁性層を複数層接してもうけそれぞれの層に固有の情報を記録するなどの改竄対策を施すことが行われる場合がある。しかしながら、これらの対策を施しても、所定の磁気ヘッドで記録することにより、偽造、変造が皆無になることはない。
また、磁気カード類は、磁気ヘッドとほとんど接触して記録、書き込み、読み取りを行うため、カードを財布などのカードホルダーからいちいち取り出して使用することが必要である。
さらに、磁気カードでは、カードに記録できる情報が所定の記録密度でカードの長さの範囲内に限定されるため、磁気記録を行う、いわゆる、磁気トラックを複数個(通常2〜4本)にしたとしても、記録できる情報の量が限定される。
【0004】
これに対して、ICカードでは、ICチップのメモリーに情報を記録するため、その情報量は、磁気カードの数倍〜数千倍と情報量が多い。また、アンテナを内蔵した磁気カードでは、リーダーライターと接触することなく通信を行うことが可能で、カードホルダーのカードを入れていてもリーダーライターとの通信は一般に可能である。
このため被接触ICカードは、テレフォンカードやJRの定期券などでの使用が始められており、今後、住民基本台帳や免許証、保険証などにも使用が検討されているのが現状である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
非接触ICカードは、情報を記録するためのメモリーを具備したICチップと、該ICチップと電気的に接続されリーダーライターから送信されてくる電磁波を把捉するアンテナ(場合によっては、カードからの情報を電磁波としてリーダーライターに送信する)を有している。これらのICチップおよびアンテナは同一の基材に配置されることがきわめて多い。これをインレットと称している。このインレットに使用するシート基材は、ポリイミドやPET(ポリエチレンテレフタレート)やPEN(ポリエチレンナフタレート)が使用されることが多く、その厚みは、10μm〜200μm程度でさまざまである。このインレットシート基材に、アンテナをエッチング法、銅線などをまきつけコイル状にした巻線アンテナ法、銀ペーストなどを印刷したペーストアンテナ法などで設ける。これらのアンテナに、ICチップをワイヤーボンディング法やフリップチップボンディング法(FCB法)などで実装する。ICチップは、いわゆる、IC(集積回路)を具備したチップの1種であり、ICカード用ICチップとしてインフィニオン社やモトローラー社、富士通社、ソニー社より販売されている。
【0006】
これらのICチップは、通常のICと同様に、シリコンウェハー上に、リソグラフィーやドーピングなどの手法により電子回路を形成し、アンテナとの接続端子を設け、必要な厚みに研摩し、ダイシングして所定のICチップ形状とする。アンテナとの接続端子は、通常、バンプと称され金メッキやハンダメッキなどにより形成する。このようなICカード用ICチップをアンテナの端子接続部分にワイヤーボンディング法(金線などでICチップの接続端子とアンテナ接続端子を接続する方法)、フリップチップボンディング法(ICチップとアンテナをACF(異方導電性フィルム)やACP(異方導電性ペースト)を介して、加熱加圧により接続する方法)などの手法で接合を行う。ACFやACPには、金粒子や銀粒子などの導電材が含まれており、加圧することによりそれらの粒子が接触し、導通することになり、ACFなどは、日立化成やソニーケミカル社より販売されている。
【0007】
ところが、このようにして実装したICチップは、いわゆる、ベアーチップと称され、チップがインレット上で剥き出しになっており、カード化した後でも、ペン先などで局部的に圧力がかかったり、折り曲げ、捻じれ等でICチップが破損することが多いという問題がある。このため、ICメモリーに蓄積、保存された貴重な情報が失われることが多かった。このようにベアーチップを実装したICカードは、使用回数が数回〜数十回でチップが破損し、非接触ICカードのひとつの特徴である繰り返し使用可能(通常は1000回程度)であることを保持することが困難である。
【0008】
このようなことから、ICチップ単体をインレットシート基材に実装するのではなく、ICチップを樹脂で固め補強した、いわゆる、ICチップモジュールを使用しようとする試みがなされている。このICチップモジュールは、ステンレスや4,2アロイなどの所定形状の端子部分を有する、厚み50μm〜200μmのリードフレームと称する金属板にICチップを実装し、ICチップの接続端子とリードフレームの接続端子をワイヤーボンディング法などで金ワイヤーなどで結線し、チップ部分を所定形状の金型に入れて、封止樹脂を封入し、加熱固化させた後、金型から取り出して形成する。このICチップモジュールは、パッケージ化チップとも称され、ICチップが樹脂で固められているため、ペン先などの局部的な外力に強く、折り曲げや捻じれなどにも強い。このICチップモジュールは、たとえば、インフィニオン社からはMCC−2−2−1などの商品番号で販売されている。
しかしながら、ICチップモジュールは、上記のような複雑な製造工程が必要で、専用の金型を作成する必要があり、コストが高くなるという欠点がある。また、モジュール化したときに樹脂封止するため、リードフレームと樹脂部分の厚みが厚くなり、通常、400μm〜600μmの厚みとなるため、ISO規格にあるようなカード厚み、740μm〜840μmに設定するためには、基材にチップを納める穴をあけるなどの必要性が生じ、製造工程が複雑になるという問題があった。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上述の問題点を解決可能な本発明のICカードは、ICチップと、このICチップと電気的に接続し通信機器との通信を可能にするアンテナとを具備したインレットシート基材を含み、ICチップの周囲がエポキシ樹脂で被覆されることによって補強されており、この際、ICチップの周囲を被覆しているエポキシ樹脂が、少なくとも95℃未満の温度にて10分〜90分でエポキシ樹脂の部分硬化重合を促進する成分aと、100℃以上の温度にて10分〜90分でエポキシ樹脂の完全な硬化重合を促進する成分bとを硬化剤として用いた、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンの硬化重合により得られた重合生成物であることを特徴とし、本発明のICカードでは、2種類の硬化剤の併用によって、ICチップの周囲を被覆しているエポキシ樹脂の補強効果が、1種類の硬化剤により得られるエポキシ樹脂の補強効果よりも大きく、ICチップが破損しにくいという利点を示す。
【0010】
本発明では、前記の成分aが、変性脂肪族アミン、脂環族ポリアミン、第三アミン、イミダゾール類およびBF3 錯体から選ばれる少なくとも一種で、エポキシ樹脂成分中に10〜90重量%の範囲内で含有されていることが好ましく、前記成分bは、イミダゾール系アミン、芳香族ポリアミン、酸無水物、フェノール樹脂、アミノ樹脂、ジシアンアミドおよびヒドラジド化合物から選択される少なくとも一種で、エポキシ樹脂成分中に10〜90重量%の範囲内で含有されていることが好ましい。
【0011】
まず、本発明のICカードにおけるエポキシ樹脂について説明する。本発明では、ICチップ部分の封止樹脂として、強度の優れたビスフェノールAとエピクロルヒドリンの重合物(いわゆる、ビスフェノールAタイプのエポキシ樹脂)が使用されており、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンはそれぞれ、下記の構造式で表される。
【0012】
【化1】
【0013】
【化2】
【0014】
ビスフェノールAとエピクロルヒドリンをアルカリ化で反応させると、次の化学構造を有したエポキシ樹脂が生成する。
【0015】
【化3】
【0016】
このようなビスフェノールAタイプのエポキシ樹脂の特徴としては、(1) ビスフェノール基の対称性が高く、剛直で緻密な構造が得られる、(2) 耐薬品性が優れる、(3) 折り曲げなどの可撓性に優れる、(4) 接着性が高い、(5) 適度な反応性を有する、などが挙げられ、ICチップとしての封止効果に優れている。
【0017】
そして、本発明では、このビスフェノールタイプの樹脂の硬化に使用される硬化剤として、硬化促進温度の異なる2種類の成分が適切に配合されて使用され、一方が、少なくとも95℃未満の温度にて10分〜90分でエポキシ樹脂の部分硬化重合を促進する成分aであり、もう一方が、100℃以上の温度にて10分〜90分でエポキシ樹脂の完全な硬化重合を促進する成分bである。
本発明のICカードの製造においては、インレットシート基材と別のシート状基材、たとえば、インレットシート基材の表面と裏面にそれぞれシート状基材を配置し、接着材を介して加熱加圧して接合することが多く、この際の加熱加圧条件、通常は100℃〜150℃の温度条件で封止樹脂の硬化を完全にするため、あらかじめインレットの状態で80℃程度の温度条件で上記成分aによる部分硬化処理を行い、その後、上記温度条件にて加熱を行い、上記成分bにより樹脂を完全硬化させる。
【0018】
次に、本発明のICカードの構成について説明する。
本発明のICカードでは、ICチップとしてベアーチップが採用されており、アンテナを配置したインレットシート基材上で、FCB法などの方法によりチップ端子とアンテナ端子が接続され、ICチップ部分がスクリーン印刷などの手法により前記エポキシ樹脂で被覆され、加熱硬化したエポキシ樹脂によってICチップの周囲が補強された構造となっている。そして、成形時にICチップ部分の盛り上がりを少なくするために、ICチップの厚みをA、エポキシ樹脂の厚みをBとするときのB−Aが100μm以下となるように設定されている。
【0019】
本発明では、ICチップを被覆する封止樹脂のICチップ部分上部ならびにインレット基材を介して裏面のICチップ部分にも封止樹脂を配し、さらに、薄い補強板(金属板)を、インレットシート基材におけるICチップ部分の表面側及び/又は裏面側の封止樹脂に接触させて設けることで、チップ強度を増大させることが可能であり、この際、補強板としての金属板の厚さは10μm〜100μmの範囲であることが好ましい。
【0020】
尚、本発明においては、少なくともインレットシート基材のICチップ実装面側に積層される外皮シートがポリエステル材から形成され、インレットシート基材と外皮シートの厚みが50μm〜500μmの範囲にあることが好ましい。
又、本発明では、インレットシート基材と外皮シートの間に、融点50℃〜150℃のポリエステル系接着材が挿入され、当該ポリエステル系接着材の厚みが10μm〜300μmの間にある構造であることが好ましい。
更に、本発明のICカードにおいては、アンテナがカードの端部に配置されることが多いため、ICチップもカードの端部に位置することが多く、ICチップの位置がカード端部に近く設定されている場合でも、封止樹脂がカードエッジにはみ出しても、端部の汚れを目立たなくさせる目的で、エポキシ樹脂に白色顔料を添加することが好ましく、白色顔料の含有量としては10〜80重量%の範囲である。
【0021】
又、本発明は、このようなICチップの周囲が補強された構造のICカードを製造するための方法でもあり、当該方法は、インレット用シート基材上にICチップおよびアンテナを設けた後、少なくとも95℃未満の温度にて10分〜90分でエポキシ樹脂の部分硬化重合を促進する成分aと、100℃以上の温度にて10分〜90分でエポキシ樹脂の完全な硬化重合を促進する成分bとを硬化剤として含むビスフェノールA‐エピクロルヒドリン混合物を、ICチップの周囲を被覆するようにして塗布し、50℃〜90℃の範囲の温度で10分〜90分熱処理を施すことで、ICチップの周囲をエポキシ樹脂で被覆し、その後、少なくともインレットシート基材のICチップ実装面側に外皮シートを積層し、100℃〜200℃の温度で、98.067kPa〜980.67kPa(1kg/cm2 〜10kg/cm2 )の加圧範囲で加熱加圧することにより積層シートを成形し、得られた積層シートをカード状に打抜いてICカードとすることを特徴とする。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態の具体例を、図面を用いて説明するが、もちろん、本発明の請求範囲はこれらの例に限定されるものではない。図1及び図2は、本発明のICカードの好ましい具体例を示す層構成図であり、図3は、従来のICカードの層構成図である。
まず、インレットとして使用するシート基材1は、ポリイミド材、PET、PENなどの融点や軟化点が200℃以上のプラスチックフィルムを使用することが望ましい。これは、本発明が一般に、加熱加圧成形方式でカード積層板を製造するため、基材の耐熱性が要求されるからである。通常、このインレットシート基材1の表面と裏面にそれぞれ外皮シート2及び3を配置し、ホットメルト接着剤4を介して100℃〜130℃の温度で98.067kPa〜980.67kPa(1kg/cm2 〜10kg/cm2 )の加圧条件で基材全体を接合する。このとき基材自体に熱収縮差があると成形後、変形したりカールが発生したりすることが多いので、インレットを含む基材をあらかじめ、所定温度(80℃〜120℃の範囲)で数十分〜数時間アニール処理をすることが好ましい。特に、フィルムの製膜時に延伸処理を施したもの(2軸延伸処理PETなど)は、シート原反の幅方向で収縮差があったり、また、同一シートでも縦方向とよこ方向に収縮差が生じることがある。インレットシート基材1の厚みは、使用条件により10μm〜500μmのものを使用し、通常、PETでは38μmと50μmのものを使用することが好ましい。また、インレットシート基材1を挟み込む外皮シート2及び3の厚みは、50μm〜500μmの間から適宜選択する。
【0023】
ところで、ICカードに関しては、例えばISOの規格があり、カード厚として740μm〜840μmの間に設定するようになっており、このような規格に適合するように、外皮シートの厚み、接着剤の厚みを適宜選択する必要があるが、本発明のICカードは、テレフォンカードのように厚み450μmのようなものであっても良い。このようなPET材としては、帝人デュポン社や三菱樹脂社、東レ社などから販売されている。ホットメルト接着剤4は、外皮シートとしてPETを使用する場合にはポリエステル材系の接着材を使用することが多い。このポリエステル系接着剤の融点は50℃〜150℃の範囲にあることが多く、成形加熱条件にあわせて選択する。たとえば成形条件が120℃である場合には、接着材の融点は、それより10℃、望ましくは20℃低い100℃程度のものを使用する。このようなポリエステル系接着剤は、東亞合成社などから販売されており、融点が110℃程度のものが好適である。
【0024】
外皮シート2及び3としては、最近注目されているPETGが特に好ましい。このPETGとは、熱可塑性樹脂の一種である非結晶変性ポリエステル樹脂で、PETGの名称で市場に流通しているプラスチックシートである。この樹脂は、正式には少なくともエチレングリコール、テレフタル酸及び1,4‐シクロヘキサンジメタノールの3成分を重合した変性ポリエステル樹脂と呼ばれ、PETGが特に好ましい理由は、この軟化温度が70℃前後であって、PETGどうしが加熱したときに融着性を有するため、接着剤を介する必要がないためである。このようなPETG材としては、三菱樹脂社や太平化学社より販売されているものが使用できる。
【0025】
尚、本発明では、カードの外観を良くするために、インレットシート基材1、外皮シート2及び3、および、それらを接合する接着剤が白色顔料を含有することが好ましい。本発明にて使用されるシート状基材としてはPETやPETGが多く、これは、印刷時のインキを鮮明にしたり、カード端面の色付きを防止し、枚数計測などで誤動作が生じないようにするためである。白色顔料としては、一般に、酸化チタン微粒子や炭酸カルシウム微粒子、硫酸バリウム微粒子が使用され、その使用量は、基材として使用する場合、10〜80重量%、接着剤として使用する場合、5〜50重量%である。これより白色顔料が少ないと白色度が低下し、また、これより顔料が多いとプラスチックフィルムとして成膜時に破断が生じることが多くなり不都合である。また、カードを構成する基材や接着剤に白色顔料の含有量が多いとカード自体の不透明度が高くなり、たとえば、カードを実際に使用する際に、カードを検知する透過型センサーの誤動作が少なくなるというメリットがある。このようなセンサーは、可視光や赤外光が使用されるのでこれらの広範囲にわたる波長領域(400nm〜1200nm)での光の透過率が数%以内という性能が要求されることが多い。
【0026】
ところで、本発明のICカードの表面には、オフセット印刷などの印刷を施すことが多く、特にICカードとしては、上記のようなプラスチックフィルム類に印刷することが多く、UV硬化型のインキが多用される。このようなインキは、T&K TOKA社や東洋インキ社、大日本インキ社などから販売されている。基材としては、後述するICチップの実装形態からシート状であることが多く、一般に印刷には枚葉印刷機が使用される。このような印刷機は、ハイデルベルグ社や小森コーポレーション社より販売されている。通常、オフセット印刷では、インキの盛り量は0.5μm〜4μmである。そして、カードの表面と裏面にこのオフセット印刷を施すことがほとんどである。カードの偽造を防止するためにマイクロ文字と称する肉眼では判別しずらい微小な文字を印刷することも好ましい。オフセット印刷層に傷がつきにくいようにするには、カード表面にオーバプリントニス(OPニス)を0.5μm〜20μm程度印刷する。このOPニスの印刷層が5μmを超えるときにはスクリーン印刷などの方法で印刷を行う。このようなスクリーン印刷機は、ミノグループ社や東海商事社より販売されている。オフセット印刷でインキの盛り量をコントロールする場合は、基本的にインキづけロールに供給するインキの供給量でコントロールするが、スクリーン印刷の場合には、スクリーン版のスクリーンメッシュ数や感光乳剤厚、または、スキージ移動速度などの印刷条件によりインキ盛り量をコントロールする。
【0027】
シート状基材としてプラスチック材を使用するときには、加熱温度によるシート変形に留意する必要があるため、溶剤乾燥型のインキを使用し長時間、乾燥するよりも、UV硬化型のインキを使用し、短時間での加熱温度上昇を抑えるようにすることが望ましい。UV照射用のランプは、インキの種類によりメタルハライドや水銀ランプが使用される。シートの温度上昇を防止するために水冷式ランプにしたりコールドミラーを利用したりすることが望ましい。
【0028】
本発明におけるインレットシート基材1には、ICチップとアンテナを配することが必要であり、ICチップにはICカード用のICチップを使用する。このようなICチップは前述のインフィニオン社などから販売されており、たとえばMCC1−1−2などの商品番号で販売されている。アンテナは、通常、エッチング法によるエッチングアンテナ、巻線法による巻線アンテナ、ペースト印刷法よるペーストアンテナが使用される。ベアーチップを接合する場合には、通常、エッチングアンテナとペーストアンテナが使用されることが多い。
エッチングアンテナは、上記インレットシート基材1に銅箔やアルミ箔を接着材を介して貼りあわせ、感光乳剤を塗布した後、所定のパターンの版下フィルムを重ねて露光し、レジストパターンを形成して、エッチングして不要な金属部分を溶解させ、その後、アルカリ処理などでレジストを剥離させることにより形成する。一方、ペーストアンテナは、銀粒子が固形分中に50〜90重量%含有した銀ペーストインキをスクリーン印刷によりアンテナパターンを印刷して形成する。アンテナ接続端子部分はICチップの配置上近接することが多く、アンテナ(通常ループアンテナが採用される)の両端を接近するためにループの途中で位置を変更するためのジャンパー部分を設けることが好ましい。エッチングでは、このアンテナ接続端子を接近させるために裏表アンテナを配置し、クリンピングなどの手法でアンテナを接続することが好ましい。エッチングアンテナを配したインレットシート基材は、たとえば日本黒鉛社、ナビタス社、東洋アルミ社などから販売されている。また、銀ペーストは東洋紡績社から販売されている。
【0029】
本発明のICカードにおけるICチップの接続端子は、バンプ形状であることが好ましく、このバンプを、前述のワイヤーボンディング法や、最近多用されているFCB法によりインレットアンテナの接続端子部分と接合する。FCB法の場合には、インレットアンテナのICチップ接続部分にACFを仮づけし、ICチップの接続端子の位置合わせをCCDカメラ等で行い、精度よくICチップを所定の位置に配置し、その後、約200℃程度の温度を加え、加圧し、ACFを導通させると同時にACFを熱硬化させ、接着を強固なものとする。このFCB法によるICチップの接合は、一般にシート状インレットで行い、このようなFCB実装装置は、たとえばカール・ズース社から販売されている。
【0030】
本発明では、ICチップを実装したインレットシート基材1を上記のように成形により基材を積層するわけであるが、ベアーチップそのままでは、カード化したあとのチップ強度が極めて弱く実用に耐えない場合が多いために熱硬化性の樹脂でチップ部分が補強され、これに使用する補強樹脂としては、前述のビスフェノールタイプのエポキシ樹脂が推奨される。ビスフェノールタイプの樹脂は、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンをアルカリの存在下で重合して生成し、反応式はつぎの通りである。
【0031】
【化4】
【0032】
この生成物は、エポキシ基を末端に有しており、硬化剤のもとで加熱時に硬化反応を行い重合体が生成する。ここで、液状または半固体状のエポキシ樹脂として使用する場合には、n<1の条件が必要である。ビスフェノールAのかわりにビスフェノールFを使用したものは粘度が低く、本発明では後述するスクリーン印刷用途には適さない。また、その他、たとえば、ノボラック型フェノール樹脂等に比べ、ビスフェノールタイプのエポキシ樹脂は、前述したように、硬化後の強度が強く可撓性に優れ、耐薬品性が高く、硬化後の収縮が少なく、接着性が大きいなどの優れた特徴を有している。加熱時の硬化を促進するために、通常、第一アミン、第二アミン、第三アミンなどのアミン系硬化剤が使用される。本発明では、ICチップを接合したインレットのチップ部分にビスフェノールタイプのエポキシ樹脂をスクリーン印刷により被覆することが好ましいが、この場合、エポキシ樹脂の粘度を、スクリーン印刷ができる範囲(通常は1000cps〜100000cps)に粘度調整する必要がある。又、この際、エポキシ樹脂による被覆は、ICチップ形状を完全に覆うことが必要であり、このためチップ形状より大きな形状の穴をあけたメタルマスクを用いてスクリーン印刷を行う。
【0033】
ICカード用として市販されているICチップの厚みは、通常100μm〜300μm程度であり、この厚みをAとし、被覆する樹脂の厚みをBとすると、B−Aは100μm以下が望ましい。これより厚み差が大きくなると成形したときにチップ部分の盛り上がりが大きくなり、たとえば、カードを積層したときに傾きが大きく、くずれてしまうなどの不都合が生じる。しかしながら、エポキシ樹脂層はICチップを完全に被覆する必要があり、それは、さらに、チップを補強する場合に、補強板をICチップ上部に配し、補強板とICチップの間にエポキシ樹脂を介在されることによって補強板とICチップを接合させることが必要であるためである。
【0034】
このようなエポキシ樹脂の印刷盛り量は、主にメタルマスクの厚みにより調整することが可能である。メタルマスクの厚みは、接合後のチップ部分の厚みより大きく、かつ、その厚みから100μmまで大きい厚みに調製する必要がある。印刷後、エポキシ樹脂を加熱処理により硬化させるのであるが、硬化するまでにエポキシ樹脂に表面張力により印刷部分の中央部が盛り上がることがある。本発明でいうところのエポキシ樹脂の厚みは、印刷直後のメタルマスクの所定の穴を通じて印刷されたエポキシ樹脂の厚みをさしているのであり、表面張力等での樹脂の盛り上がり量をコントロールすることは非常に困難である。印刷直後のエポキシ樹脂の厚みは、レーザー変位計(たとえば、キーエンス社製)を使用して非接触にてμオーダーで測定することが可能である。
本発明で使用するビスフェノールタイプのエポキシ樹脂は、たとえば、日立化成社、日本レック社などで販売されており、たとえば、日本レック社では、NPR−100の商品番号で販売されている。このエポキシ樹脂を印刷する際に使用するメタルマスクは汎用のものでよく、ステンレス材などが一般的であり、たとえば、ソノコム社、東海商事社、むらかみ社などで製造販売されている。
【0035】
本発明では、ICチップを被覆するエポキシ樹脂に白色顔料を添加することが好ましく、これは、成形時に樹脂がカード端面部分にはみ出したときに、カード端面の地汚れを防止するためであり、白色顔料のエポキシ樹脂インキ中に含まれる量は10〜80重量部が望ましい。これより含有量が少ないとビスフェノールタイプのエポキシ樹脂の色が目立ち、含有量がこれより多いと粘度が極端に大きくなりインキとして使用できなくなる。白色顔料としては平均粒子径が0.1μm〜0.8μmの酸化チタン微粒子が好ましく、酸化チタン微粒子を必要量添加することにより、硬化後の樹脂の硬度が増し、チップの補強効果が増大する。さらに、シリカなどのエポキシ樹脂に添加することにより、樹脂の硬度を高めることも可能である。このような酸化チタンを含有したビスフェノールタイプのエポキシ樹脂は、たとえば、日本レック社よりEZ−165Wなどの商品番号で販売されている。
【0036】
本発明では、ICチップをエポキシ樹脂で被覆したあと、ICチップ部分に補強板をエポキシ樹脂を介して接着させることが好ましい。この補強板は、ICチップ形状より大きいものが補強効果が高く、硬性を有していれば良く、ステンレス材等の金属材、セラミック材、樹脂材が使用でき、厚み10μm〜100μmのものが適しており、30μm〜50μmのものが望ましく、厚みが薄いと補強効果がなくなり、厚すぎると成形後のチップ部分の盛り上がりが大きくなるという問題が生じる。補強板として好ましい金属材の補強板の形成方法としては、金属板を金型で打抜く、金属板をエッチングにより不要部分を溶解して取り除く、という方法があり、本発明で使用される金属板はいずれの製造方法にて得られたものでも良いが、量産時に低コストになる点で金型プレス法が好ましい。このような補強板は、たとえば、ミスズ工業社より製造販売されている。
【0037】
本発明の製法においては、ICチップにスクリーン印刷等でエポキシ樹脂を被覆したのち、好ましくは金属板をICチップ上に配置してチップの補強効果を高めることを行うが、エポキシ樹脂の硬化を完全に行うためには、スクリーン印刷後の樹脂を50℃〜90℃の温度範囲で10分〜90分熱処理し(前熱処理)、外皮シートと一体化させる際に100℃〜200℃の温度範囲で98.067kPa〜980.67kPa(1kg/cm2 〜10kg/cm2 )の加圧条件で10分〜90分の熱処理を行い、エポキシ樹脂を完全に硬化させる。本発明では、少なくとも95℃未満の温度にて10分〜90分でエポキシ樹脂の部分硬化重合を促進する成分aによる硬化と、100℃以上の温度にて10分〜90分でエポキシ樹脂の完全な硬化重合を促進する成分bによる硬化の、2段階で樹脂の硬化が達成され、成分a及びbはそれぞれ、エポキシ樹脂成分中に10〜90重量部含有される。このような硬化促進する温度を調整するには、ビスフェノールタイプのエポキシ樹脂に添加するアミン類のような硬化促進剤の種類、配合量などで調製を行うことが可能である。
【0038】
たとえば、硬化促進温度を80℃に設定した場合には、1,8−ジアザビスシクロ(5,4,0)ウンデセン−1(DBU)を樹脂中に必要量添加し、100℃以上で硬化促進させるためには、トリエチルアミンやベンジルジメチルアミンなどの脂肪族アミンや2,5ジメチル−2,5−ヘキサンジアミン(DMHDA)などを必要量配合する。配合量は、一般に、エポキシ基のモル量とアミンの活性水素のモル量を調整するなどして上記の加熱時間で硬化するような最適な硬化条件を設定する。本発明では、前熱処理によるエポキシ樹脂の部分硬化を行うが、これは、成形時のエポキシ樹脂の硬化を完全に行うためだけではなく、たとえば、シートを成形する前に重ねたりする場合のハンドリング時の樹脂の擦れによるカードの地汚れを防止することや、補強板をチップ上に装着するときに補強板と樹脂を適度に接着させるという効用がある。
【0039】
本発明では、前述したICチップ部分にエポキシ樹脂を被覆し、補強板で補強するということ以外に、図1に示されるようにして、インレットシート基材1のチップ装着側と反対側のチップ位置にエポキシ樹脂を塗布し、また、必要に応じ補強板を装着して、さらに補強効果を高めることを行ってもよい。この場合には、製造工程上、ICチップ部分にエポキシ樹脂被覆を行った後で、その裏面側の補強処理を行うことが多いので、ICチップと反対面の樹脂の塗布は、ディスペンサーマシンを利用することが望ましい。エポキシ樹脂の塗布量は、チップあたり0.1g〜1gの間であることが望ましい。また、補強板も前述したようにチップより大きいものが望ましく、厚みも前述したとおり10μm〜100μmであることが望ましい。チップ上部にも補強板で補強し、その裏側も補強板で補強する場合には、チップ部分の厚みに加えて、エポキシ樹脂の厚み、さらに補強板の厚みが加わることになり、チップ部分のトータル厚みは相当なものになり、インレットシート基材1と重ね合わせた外皮シート2及び3、さらには、その間に介した接着剤層で、そのチップ部分の厚みを吸収できなくなることがある。そのため、両面に補強板で補強する場合には、補強板の厚みを30μm〜50μmにすることが望ましく、また、樹脂量も適宜調整する必要がある。ディスペンサーマシンについては、たとえば、武蔵エンジニアリング社やサンエイテック社より販売されている。
【0040】
本発明では、このようにして作成したインレット基材シート1を、前述のように外皮シート2や外皮シート3の間に接着剤層4を介して成形し、積層シートとする場合が多いが、その後は、カードパンチャー等を使用して所定の大きさ、たとえば、JIS II型では54mm×86mm程度に打抜いてカード化し、ICカードして使用する。
本発明では、カード表面にオフセット印刷だけではなく、感熱印字基材や昇華転写受理層を有する基材、リライト記録層を有する基材、インクジェット受理層を有する基材、熱転写受理層を有する基材などの表示基材を使用してもよい。また、必要に応じ、カード表面に、ホログラムや、サインパネル、磁気ストライプなどを貼付してもよいことはいうまでもない。
【0041】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、もちろん、本発明はこれによって限定されるものではない。
(実施例1)
下記の工程に従って、インレットを作成し、エポキシ樹脂によりチップ部分を補強し、補強板を装着して、接着剤を介してインレットシート基材の表裏両面に外皮シートを接合し、カード状に打抜いて本発明のICカードを製造した。
1)インレットの形成:厚み50μmのPETフィルム(東レ社製)に接着剤を介して厚み15μmの銅箔をロール状で貼り付け、レジストを塗布した後、所定のアンテナパターンを焼き付け、不要なレジストを除去したのちエッチングしてアンテナパターンを形成、その後、不要なレジストをアルカリ液で除去した。その後、375mm×475mmの寸法にシートカッティングし、インレット基材とした。
2)ICチップ実装:富士通ICカード用ICチップ(5mm×5mm大、厚み200μm)の接続端子をFCB法によりACF(日立化成製)を介してアンテナ端子に接続した。接着温度は200℃とした。
【0042】
3)エポキシ樹脂の印刷:ビスフェノールタイプのエポキシ樹脂として日本レック社製EZ−165Wを使用し、メタルマスク(ステンレス製、ソノコム社製)に7mm×7mm大で厚み250μmの穴をチップ位置にあけたものを使用して、チップ位置に上記エポキシ樹脂をスクリーン印刷して、チップ部分をエポキシ樹脂で被覆した。このエポキシ樹脂には、予め、80℃×60分で樹脂の部分的な硬化重合を促進し得る成分として変性脂肪族アミンを約40%含有させ、120℃×30分で樹脂の完全な硬化重合を促進し得る成分としてイミダゾール系アミンを約60%程度含有させた。
4)樹脂の部分硬化:上記の印刷済みシートを80℃で30分熱風乾燥した。熱風乾燥後のシート状のエポキシ樹脂は粘度が適度に高いものであった。
【0043】
5)補強板の装着:上記の熱処理にて部分硬化したインレットシートのICチップ部分に、厚み30μm、9mmφの円板状のステンレス製補強板を樹脂に密着させるようにした装着した。
6)インレット基材の裏面の補強:上記のインレットシートを裏返し、ICチップの実装位置と対応する箇所にディスペンサーマシンで前記EZ−165Wを0.5gチップごとに滴下し、前記補強板を装着した。
7)成形:上記インレットシートに、融点が110℃のポリエステル系ホットメルト接着剤(100μm厚、東亜合成製)を裏表面に重ね、さらに外皮シートとしてその外側にPETGシート(厚み275μm、三菱樹脂製)をそれぞれ重ね、120℃で30分間、392.268kPa(4kg/cm2 )の加圧下で積層一体化させて積層シートとした。
8)打抜き:上記積層シートをカードパンチャーで54mm×86mmの大きさに打抜き、図1に示される層構成を有した本発明のICカードを得た。
【0044】
上記実施例1にて得られた本発明のICカードについての補強効果を、以下の試験方法にて評価した。
a)点圧測定:厚み5mmのシリコンゴム上にカードをのせ、10mmφの鉄球を1mm/分の下降速度でカードチップ部分に押し付けチップが破損するときの鉄球に加わる力をロードセルで測定した。
b)折り曲げ試験:JIS X 6305に従い、カード長辺方向、短辺方向、その表面、裏面の計4種類の方向で各500回折り曲げ試験を実施し、リーダーライターにて通信可能かどうかを調査した。
c)ねじれ試験:JIS X 6305に従い、1000回のねじれ試験を実施し、リーダーライターにて通信可能かどうかを調査した。
【0045】
(実施例2)
インレットシートの裏面にエポキシ樹脂層及び補強板を設けない以外は実施例1と同様にして、図2に示される層構成を有した本発明のICカードを製造し、上記試験方法a)〜c)にて補強効果を評価した。
【0046】
(実施例3)
インレットシートの表面に補強板を設けず、しかも当該シートの裏面にエポキシ樹脂層及び補強板を設けない以外は実施例1と同様にして、ICチップの周囲がエポキシ樹脂層により補強された層構成を有する本発明のICカードを製造し、上記試験方法a)〜c)にて補強効果を評価した。
【0047】
(比較例1)
110℃で完全硬化する硬化剤(日本レック社NPR−100)を含むエポキシ樹脂を用い、ICチップの反対面の補強を行わずに、ICチップの周囲だけがエポキシ樹脂層により補強された層構成のICカードを製造し、上記試験方法a)〜c)にて補強効果を評価した。
【0048】
(比較例2)
実施例1においてエポキシ樹脂補強ならびに補強板による補強を行わない以外は実施例1と同様にして、図3に示される層構成を有したICカードを製造し、上記試験方法a)〜c)にて補強効果を評価した。
【0049】
上記実施例1〜3及び比較例1、2における評価結果を以下の表1に示す。
【0050】
【表1】
【0051】
【発明の効果】
表1に示されるように、本発明のICカードでは、ICチップが2段階硬化により得られた樹脂で固められているので、1段階硬化により得られた樹脂の場合に比べて外力に強く、折り曲げや捩じれにも強い。又、金属製の補強板で補強されたものは一層補強効果が優れたものとなる。本発明の製造方法を用いることによって、補強効果の優れたICカードが安定して製造できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のICカードの好ましい具体例を示す層構成図である。
【図2】本発明のICカードの好ましい具体例を示す層構成図である。
【図3】従来のICカードの層構成図である。
【符号の説明】
1 インレットシート基材
2、3 外皮シート
4 ホットメルト接着剤
Claims (9)
- ICチップと、前記ICチップと電気的に接続し通信機器との通信を可能にするアンテナとを具備したインレットシート基材を含むICカードにおいて、前記ICチップの周囲がエポキシ樹脂で被覆されることによって補強されており、前記エポキシ樹脂が、少なくとも95℃未満の温度にて10分〜90分で前記エポキシ樹脂の部分硬化重合を促進する成分aと、100℃以上の温度にて10分〜90分で前記エポキシ樹脂の完全な硬化重合を促進する成分bとを硬化剤として用いた、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンの硬化重合により得られた重合生成物であることを特徴とするICカード。
- 前記成分aが、変性脂肪族アミン、脂環族ポリアミン、第三アミン、イミダゾール類およびBF3 錯体から選ばれる少なくとも一種であり、前記エポキシ樹脂成分中に10〜90重量%の範囲内で含有されていることを特徴とする請求項1記載のICカード。
- 前記成分bが、イミダゾール系アミン、芳香族ポリアミン、酸無水物、フェノール樹脂、アミノ樹脂、ジシアンアミドおよびヒドラジド化合物から選択される少なくとも一種であり、前記エポキシ樹脂成分中に10〜90重量%の範囲内で含有されていることを特徴とする請求項1または2記載のICカード。
- 前記ICチップを被覆したエポキシ樹脂のICチップが配置された部分に、板厚10μm〜100μmの範囲にある補強板が、前記エポキシ樹脂と接触した状態で配置されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のICカード。
- 前記インレットシート基材のICチップが実装された面と反対側の面に、前記ICチップを背面側から補強するようにして、前記エポキシ樹脂の塗布・硬化処理により得られた補強層が設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のICカード。
- 少なくとも、前記インレットシート基材のICチップ実装面側に積層される外皮シートがポリエステル材から形成されており、前記インレットシート基材及び前記外皮シートの厚みが50μm〜500μmの範囲にあることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のICカード。
- 少なくとも前記インレットシート基材と前記外皮シートの間に融点50℃〜150℃のポリエステル系接着材が挿入されており、当該ポリエステル系接着材の厚みが10μm〜300μmの間にあることを特徴とする請求項6に記載のICカード。
- 前記エポキシ樹脂が白色顔料を含有しており、当該白色顔料の含有量が10〜80重量%の範囲にあることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のICカード。
- インレット用シート基材上にICチップおよびアンテナを設けた後、少なくとも95℃未満の温度にて10分〜90分でエポキシ樹脂の部分硬化重合を促進する成分aと、100℃以上の温度にて10分〜90分でエポキシ樹脂の完全な硬化重合を促進する成分bとを硬化剤として含むビスフェノールA‐エピクロルヒドリン混合物を、前記ICチップの周囲を被覆するようにして塗布し、50℃〜90℃の範囲の温度で10分〜90分熱処理を施すことで、当該ICチップの周囲をエポキシ樹脂で被覆し、その後、少なくとも前記インレットシート基材のICチップ実装面側に外皮シートを積層し、100℃〜200℃の温度で、98.067kPa〜980.67kPaの加圧範囲で加熱加圧することにより積層シートを成形し、得られた積層シートをカード状に打抜いてICカードとすることを特徴とする、請求項6〜8のいずれか一項に記載のICカードの製造方法。
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