JP3778224B2 - 糸巻きゴルフボール - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、スピン性能、コントロール性能、飛び性能、打感に優れると共に、ヘッドスピードの遅いプレーヤーでも好適に使用し得る糸巻きゴルフボールに関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
糸巻きゴルフボールは、ソリッドコアに1層以上のカバーを被覆してなるツーピースやマルチピースソリッドゴルフボールに比べて、打感、コントロール性には優れているが、ドライバー等でショットした際、スピン量が多く飛距離が劣るという問題がある。
【0003】
そこで、ドライバー打撃時のスピン量が抑えられ、飛距離が向上し得る糸巻きゴルフボールを得る試み(特開昭59−129072号公報、特公平6−4104号公報等)が種々なされており、例えば大径に形成されたセンターボールを有する糸巻きゴルフボール等が提案されている。
【0004】
しかしながら、これらの提案において、大径のセンターボールを有するゴルフボールは、ドライバーショット時のスピン量を減少させて飛距離の増大を図ることは可能であるが、センターボールが大きい分、このセンターボールの硬度がボール性能に大きく影響し、センターボールが硬いと打感が硬くなり、一方軟らかいと打感はソフトになるが、ボールの反発性が悪くなり満足する飛距離が得られないという二律背反的な問題がある。
【0005】
更に、これら提案の多くは、ターゲットをヘッドスピードの速いプレーヤーに絞ったもので必然的に中級者レベル以上に絞り込まれており、ヘッドスピードの速いプレーヤーが使用した場合には改良された効果を得ることができても、スウィングスピードが遅く、ヘッドスピードの遅いプレーヤー、例えば、初級者、レディース、シニアプレーヤー等が同じボールを使用しても、必ずしも飛距離の増大が得られるものではない。そこで、これら問題の解決が望まれている。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、スピン性能、コントロール性能、飛距離、打感に優れ、特に、ヘッドスピードの遅いプレーヤーでも好適に使用し得、初級者からプロまで技量の異なるプレーヤーが好適に使用することができる糸巻きゴルフボールを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段及び発明の実施の形態】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、センターボールに糸ゴムを巻きつけ、その上からカバーを被覆してなる糸巻きゴルフボールにおいて、上記センターボールをセンターコアと包囲層とからなる比較的大径の2層構造のセンターボールとすることにより、コントロール性、飛び性能に優れ、更に軟らかい良好な打感が得られることを見出した。
【0008】
即ち、上記センターコアを100kg定荷重時変形量が3.5〜10mmとなるように比較的軟らかく形成すると共に、この軟らかい層となるセンターコアの外径を31.9〜35.5mmとし、かつ上記包囲層をショアD硬度58〜68となるように比較的硬く形成すると共に、このセンターコアと包囲層とからなるセンターボールを外径33〜38mmの比較的大径に形成することにより、比較的軟らかく設定されたセンターコアによって、軟らかい打感が得られると共に、スピン量を低下させて飛距離の増大が図られ、かつ比較的硬い包囲層によってボールの反発性の向上が得られると共に、このセンターコアと包囲層とからなるセンターボールが比較的大径に形成されていることから更にスピン量を低下させて飛距離の増大が図られることを見出したものである。
【0009】
更に、本発明者らは、上記構成のゴルフボールについてヘッドスピードの差による上記作用効果の優劣を検討した結果、比較的スウィングスピードの速い中級レベル以上のプレーヤーは勿論、スウィングスピードが遅く、ヘッドスピードの遅いプレーヤー、例えば、初級者、レディース、シニアプレーヤー等が使用しても、上述した効果が確実に発揮され、ターゲットを中級レベル以上のプレーヤーに絞る必要がなく、あらゆる技量のプレーヤーに適用し得る糸巻きゴルフボールであることを知見し、本発明をなすに至った。
【0010】
従って、本発明は、センターボールに糸ゴムを巻きつけ、その上からカバーを被覆してなる糸巻きゴルフボールにおいて、上記センターボールが、外径31.9〜35.5mmでかつ100kg定荷重時変形量が3.5〜10mmのセンターコアと、該センターコアを被覆し、熱可塑性材料にて形成されてなりショアD硬度58〜68を有する包囲層とからなる外径33〜38mmのものであることを特徴とする糸巻きゴルフボールを提供する。
【0011】
以下、本発明につき更に詳しく説明すると、本発明の糸巻きゴルフボールは、図1に示すように、センターボール1に糸ゴムを巻回して糸ゴム層2を形成し、更にこの糸ゴム層2にカバー3を被覆したものであり、本発明の糸巻きゴルフボールにあっては、上記センターボール1をセンターコア4に包囲層5を被覆させて2層構造に形成したものである。
【0012】
ここで、センターボール1を構成するセンターコア4は、ボールの打感をソフトにすると共に、スピン量を抑制して飛距離の向上を図り、かつ低ヘッドスピード域においても良好な反発性を得るため、100kg定荷重時における変形量が3.5〜10mm、好ましくは4.5〜9mmとなるように比較的軟らかく形成し、かつ外径を31.9〜35.5mmに形成する。このセンターコアの100kg定荷重時における変形量が10mmより大きいと、打感が軟らかくなりすぎ、反発性の低下を招き、一方、変形量が3.5mmより小さいと、打感が硬くなり良好な打感が得られない上、低ヘッドスピード域における反発性が低下する。また、外径が37mmを超えると、必然的に糸ゴム層2が薄くなり、反発性の低下を招くこととなる。
【0013】
上記センターコアは、公知の方法で得ることができ、具体的には基材ゴムに共架橋剤、過酸化物を配合した公知のゴム組成物を加熱加圧成形して形成することができる。
【0014】
この場合、基材ゴムとしては、従来からソリッドセンターとして用いられているポリブタジエンゴム或いはポリブタジエンゴムとポリイソプレンゴムとの混合物などを使用することができるが、特に高反発性を得るためには、シス構造を90%以上有する1,4−ポリブタジエンゴムを用いることが好ましい。
【0015】
共架橋剤としては、従来、メタクリル酸、アクリル酸等の不飽和脂肪酸の亜鉛塩、マグネシウム塩やトリメチルプロパントリメタクリレート等のエステル化合物が使用されており、本発明においてもこれらを使用することができるが、反発性が得られることからアクリル酸亜鉛が好適に使用し得る。これら共架橋剤の配合量は、上記基材ゴム100重量部に対し10〜30重量部とすることが好ましい。
【0016】
過酸化物としては、種々選定し得るが、ジクミルパーオキサイド或いはジクミルパーオキサイドと1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロへキサンとの混合物が好適である。その配合量は、基材ゴム100重量部に対し0.5〜1.5重量部とすることが好ましい。
【0017】
上記ゴム組成物には、更に必要に応じ、比重調整に酸化亜鉛や硫酸バリウムなどを配合し得るほか、老化防止剤等の添加剤を配合することができる。また、一般にセンターコアは糸巻き時に変形を防ぐために凍結して糸ゴムを巻回することが行われ、この場合、凍結性を向上させる目的でセンターコアに油状物質を添加することが行われる。しかし、この油状物質の添加により反発性の低下及び反発性の温度依存性が劣化する場合があり、本発明においては油状物質を添加しないことが好ましい。
【0018】
本発明の糸巻きゴルフボールのセンターボール1は、上記センターコア4の表面に包囲層5を被覆してなるものである。
【0019】
この包囲層5は、上述した比較的軟らかい硬度を有するセンターコアの表面に被覆形成してなるものであって、センターコアによる優れた打感及びスピン性能を保持しつつ、ゴルフボールに良好な反発性を付与するものであり、ショアD硬度55以上、好ましくは58〜68の比較的硬い層である。この包囲層のショアD硬度が55より少ないとセンターボール全体が軟らかくなりすぎ、反発性が低下してしまう。また、この包囲層5の厚さは、その硬度や上記センターコア4の外径に応じて適宜選定されるが、通常は0.5〜5mm、特に1〜3mmとすることができる。この場合、包囲層5の厚さが5mmを超えると必然的に上記センターコアを小さくしなければならず、軟らかい打感及び低スピン化が達成し得なくなる場合があり、一方、0.5mm未満であると、この包囲層5の効果が十分に発揮されず反発性の低下を招く場合がある。
【0020】
この包囲層5は、公知の熱可塑性樹脂を用いて、上記センターコア4の周囲に射出成形することにより形成することができ、この場合、熱可塑性樹脂としては、上記硬度の硬化層が得られるものであればいずれのものでもよく、例えば、アイオノマー樹脂、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマー等を好適に使用することができる。具体的には、ハイミラン1605,1706,AM7317,1601,1557,1855(商品名:三井・デュポンポリケミカル社製)やサーリン8940,9910,8527,9020(商品名:デュポン社製)等のアイオノマー樹脂、ハイトレル5557、6347(商品名:東レ・デュポン社製)のポリエステルエラストマー、ペバックス5533,6312(商品名:東レ社製)等のポリアミドエラストマー等を挙げることができる。特に、カバーを後述する加熱加圧成形により被覆形成する場合には、加熱によりこの包囲層が溶けて反発性を損なうことがあるので、この包囲層は加熱温度より融点の高い樹脂を用いることが推奨される。
【0021】
更に、本発明において、上記センターコア4に包囲層5が被覆形成されたセンターボール1は、スピン量を適度に低減化して飛距離の増大を図るため外径33〜38mm、好ましくは34〜37mmの比較的大径に形成する。この場合、センターボールの外径が38mmを超えると、反発性の良好な糸ゴム層2が薄くなり、飛距離の低下を招くことになり、また、33mm未満であると、スピン量が十分に低減化せず、ボールのふき上がりによる飛距離の低下を防ぐことができない。
【0022】
次に、本発明の糸巻きゴルフボールのカバー3は、公知のカバー用樹脂を用いて得ることができ、例えば、アイオノマー樹脂、ポリウレタンエラストマー、バラタゴム等の基材にチタン白等の顔料、ステアリン酸マグネシウム等の分散剤等を常用量添加した組成物から形成することができる。
【0023】
ここで、上記カバー3の硬度は特に制限されるものではないが、ショアーD硬度で30〜70、好ましくは35〜65の層として形成することができる。このカバー3を形成する材料としては、例えば、ハイミラン(商品名:三井・デュポンポリケミカル社製)や、サーリン(商品名:デュポン社製)等のアイオノマー樹脂又はパンデックス(商品名:大日本インキ化学工業社製)等のポリウレタンエラストマーやバラタゴムを用いることができる。このカバー3は、特に制限されるものではないが、通常0.5〜3.5mm、特に1〜3mmとすることが好ましく、この場合、カバー3を1層あるいは2層以上の多層構造に形成することができる。
【0024】
本発明のゴルフボールは、上記センターボール1に糸ゴムを巻きつけてセンターボール1上に糸ゴム層2を形成し、この糸ゴム層2を上記カバー3で被覆した糸巻きゴルフボールであるが、この場合、上記センターボール1に巻回する糸ゴムの種類、巻回方法等は公知の糸ゴム及び方法を採用することができ、この場合、糸ゴム層2の厚さは1〜4.4mm、特に1.5〜4mmとすることができる。また、上記センターボール1及び糸ゴム層2からなる糸巻きコアにカバー3を被覆形成する方法も公知の方法により行うことができ、例えば、コアにカバー用組成物を直接射出成形する方法、カバー用組成物で予め半球殻状の一対のハーフカップを形成し、これらカップでコアを被包し、110〜160℃で2〜10分間加熱加圧成形する方法等を採用することができる。なお、2層以上のカバーを形成する場合は、上記射出成形法を繰り返すか、又は2種以上のハーフカップを重ね合わせて加熱加圧成形を行えばよい。
【0025】
本発明の糸巻きゴルフボールには、公知の方法により公知のディンプルを形成することができ、また大きさ及び重量は、ゴルフ規則に従って、直径42.67mm以上、重さ45.92g以下に形成することができる。
【0026】
【実施例】
以下、実施例、比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0027】
[実施例1〜4、参考例1、比較例1〜3]
表1に示す配合のゴム組成物を用い、混練ロールで混練し、155℃で15分間加圧成形することによりセンターコアを形成し、表1に示す樹脂を得られたセンターコアの表面に射出成形法によって被覆して包囲層とし、センターボールとした。
【0028】
次いで、上記センターボールに糸ゴムを通常の巻回方法によって巻きつけ、約39.7mm厚の糸巻コアにした。
【0029】
一方、実施例及び比較例共に、同一のアイオノマー樹脂(ハイミラン1601/1557=50/50、三井・デュポンポリケミカル社製)100重量部を用いて、チタン白5重量部、ステアリン酸マグネシウム0.3重量部と共にスクリュー式二軸押出し機で混練し、得られたカバー用組成物を用いて射出成形法によってハーフカップを製造した。
【0030】
次に、上記一対のハーフカップを上記糸巻きコアに被包してコンプレッション成形することによりカバーを形成し、糸巻きゴルフボールを製造した。
【0031】
このゴルフボールをドライバー(1番ウッド)を用いてヘッドスピード45m/s及び35m/sでショットした時のスピン量、キャリー、トータル飛距離、仰角を計測した。結果を表2に示す。
【0032】
なお、表2中、打感はヘッドスピード約45m/sのプロプレーヤー、約35m/sの女子トップアマプレーヤーそれぞれ3名ずつにより、実打した時の感触を下記基準によって評価した。
◎:非常に軟らかい
○:軟らかい
△:やや硬い
×:硬い
また、表2中、衝撃力は上記ドライバーのヘッドの後ろに加速度計をつけ、ヘッドスピード45m/sでショットした時の比較例3の衝撃力を100とした場合の比較値を示す。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】
表2の結果より、本発明の糸巻きゴルフボールは、ヘッドスピードの速さに拘らず優れたスピン性能、飛距離、打感を得ることができるものであることが確認された。一方、包囲層のない比較的高硬度の大径センターを有する糸巻きゴルフボール(比較例1)は、硬度が硬いため打感が硬く、スピン量も多い上、特に低ヘッドスピードで十分な飛距離が得られず、スピン量の抑制が十分でない上、打感も悪いものであった。また、比較的軟硬度の大径センターを有する糸巻きゴルフボール(比較例2)は、スピン量の抑制及び打感は改善されていると認められるが、ボールの反発性に欠けるため十分な飛距離を得ることができなかった。更に、一般的な径のソリッドコアとカバーを有する糸巻きゴルフボール(比較例3)は、糸ゴム層が厚くスピン量が多く、飛距離に劣っていた。
【0036】
【発明の効果】
本発明の糸巻きゴルフボールは、高ヘッドスピード域でも低ヘッドスピード域でも良好なスピン性能、コントロール性、及び飛距離が得られ、プレーヤーのレベルに関係なく(ヘッドスピード速さを問わず)あらゆるレベルのプレーヤーが好適に使用することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の糸巻きゴルフボールの一例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 センターボール
2 糸ゴム層
3 カバー
4 センターコア
5 包囲層
Claims (4)
- センターボールに糸ゴムを巻きつけ、その上からカバーを被覆してなる糸巻きゴルフボールにおいて、上記センターボールが、外径31.9〜35.5mmでかつ100kg定荷重時変形量が3.5〜10mmのセンターコアと、該センターコアを被覆し、熱可塑性材料にて形成されてなりショアD硬度58〜68を有する包囲層とからなる外径33〜38mmのものであることを特徴とする糸巻きゴルフボール。
- センターコアは、シス構造を90%以上含有する1,4−ポリブタジエン、共架橋剤、過酸化物を含有するゴム組成物から形成されたものである請求項1記載の糸巻きゴルフボール。
- 包囲層の熱可塑性樹脂は、アイオノマー樹脂、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマーから選ばれるものである請求項1又は2記載の糸巻きゴルフボール。
- カバーが、アイオノマー樹脂又はポリウレタンエラストマーを基材とした組成物から形成され、その硬度がショアD硬度が30〜70である請求項1,2又は3記載の糸巻きゴルフボール。
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