JP3776555B2 - レトルト処理用積層体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
少なくとも、ヒートシーラント層にゴム成分とプロピレンとの共重合体とアルミニウム箔とを層構成とするレトルト処理用包装体に係わり、該包装体を油脂成分を含む食品のレトルト処理に使用したときに発生する表面に生ずる凹凸形状いわゆる柚子肌現象を防止する積層体に使用する金属箔に属する。
【0002】
【従来の技術】
レトルト処理できるプラスチックフィルムから構成される包装体は、少なくとも耐熱性基材フィルムとヒートシーラント層とからなり、特に、水、光及びガスバリア性を要求されるときはバリア層としてアルミニウム箔を構成要素とし、各層の接着は反応硬化型接着剤を介して行われていた。
レトルト処理用積層体は、内容物を充填した後、密封状態でレトルト作業を行うときに加熱・冷却処理による伸縮をされるものである。特に包装体の密封部(ヒートシール部)は、伸縮で破断することがあり、それを防ぐためにヒートシーラント層に弾性をもたせるゴム成分を含ませて、縦横の伸縮バランスがあるヒートシーラント層を使用していた。
そして、ゴム成分を含ませることは、破断を防ぐ効果はあるが、該ゴム成分は耐油性に劣り、特に100〜135℃で加熱されるレトルト処理に於いては油脂成分を吸収し、不均一に膨潤することは避けられないものであった。
【0003】
不均一に膨潤したヒートシーラント層は、隣接するアルミニウム箔を不均一に伸縮して塑性変形を起こし易く、伸縮した状態が維持された凹凸形状(柚子肌)を形成して、包装体表面の美観を損なうという問題があった。
この柚子肌を防ぐために、耐油脂性に優れた密度が高いポリプロピレンで結晶化度を上げて、特開昭54ー120085号公報に開示された技術のように油脂分の吸収を阻害する試みも行われたが、レトルト処理や流通過程などで発生する破袋の問題があり十分なものではなかった。また、ヒートシーラント層のフィルムに均一に油脂を吸収する試みも行われたが、フィルムを均一の厚みで、かつ、縦横の方向性をも均一に、ヒートシーラント層として必要な無(低)延伸状態で製膜することは事実上難しく、均一に油脂を吸収させるフィルムを作製できず、十分な効果を奏するものではなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ヒートシーラント層にゴム成分とプロピレンとの共重合体とアルミニウム箔とを層構成に含むレトルト処理用包装体で、油脂成分を含む食品をレトルト処理に使用したときに発生する表面に生ずる柚子肌現象を防止するレトルト処理用積層体を提供することを課題とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明のレトルト処理用積層体においては、耐熱基材フィルム、接着剤層、アルミニウム箔、接着剤層及びゴム成分を含むプロピレン・エチレンブロック共重合体にヒートシーラント層とから形成する積層体において、該アルミニウム箔が、アルミニウム中に鉄が0.7〜1.7重量%含むレトルト処理用積層体である。
【0006】
【発明の実施形態】
図1に示す本発明のレトルト処理用積層体5は、耐熱基材フィルム1、接着剤層21、アルミニウム箔3、接着剤層22及びゴム成分を含むプロピレン・エチレンブロック共重合体を含むヒートシーラント層4とから形成する積層体5において、該アルミニウム箔3が、アルミニウム中に鉄が0.7〜1.7重量%含む合金からなるレトルト処理用積層体5である。
【0007】
本発明のレトルト処理用積層体を構成する図1に示す耐熱基材フィルム1(以下、本明細書においては基材フィルムと記載する。)は、通常のレトルトパウチなどに使用される、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリプロピレンなどの二軸延伸又は未延伸フィルムで、その厚みは12〜50μmのものから用途に応じて適宜に選択される。
【0008】
基材フィルム1の、合金箔3と積層する側には図1に示すように内容物に関する情報である絵柄層6の印刷が行うことができる。
絵柄層6は、通常のプラスチックフィルムに対する印刷と同様に行い、レトルト処理に耐える顔料とバインダ─とから構成されたインキで基材フィルム1のアルミニウム箔との積層面又は必要に応じて非積層面に行い、そして、接着剤層21を設けて合金箔3及び、更に合金箔3に接着剤層22を設けてヒートシーラント層4と積層する。
【0009】
本発明に適用する接着剤層(21、22)は、反応硬化型接着剤が望ましく、例えば、−NCO基をもつポリイソシアネートを硬化剤(架橋剤)とし、−OH基をもつポリエステル、ポリエーテルやウレタン変性ポリオール、エポキシ化合物などを硬化する。
そして、これらの接着剤の塗工は、通常のグラビアコーティング方式(ダイレクト)、リバースロールコーティング方式、ダイレクトロールコーティング方式、カーテンフローコーティング方式、エアナイフコーティング方式、スクイズコーティング方式、キスコーティング方式、ブレードコーティング方式、あるいは、コンマコーティング方式などから接着剤の特性、塗布量の過多により選択する。接着剤層の塗工量は3〜6g/m2 (固形分の数値、以下同様。)である。
【0010】
本発明の合金箔は、アルミニウム中に鉄を0.7〜1.7%を含む(アルミニウム含有量が、98.0%以上のアルミニウム合金)5〜9μmの厚みのものである。合金箔は伸び率が大きく、耐力、引張強さも大きい、硬くて強い塑性変形を起こし難いアルミニウム合金から製造されたものである。また、合金箔は上記の接着剤との適応性に優れ、強力な剥離強度をもつものである。
【0011】
一般に鉄分が、0.6%以下、アルミニウム分が99.3%以上の金属アルミニウムが7〜9μmに圧延してアルミニウム箔として使用されている。しかしなら、単に圧延工程を終了した段階のアルミニウム箔は、表面に圧延油が付着した状態のままの未焼鈍の箔として得られる。表面の圧延油は、きわめて微量であり、装飾や、成形用としては支障はないが、表1に示すように積層体として使用するには接着阻害を起こすので、それを取り除く必要がある。
【0012】
包装用の積層体に使用される、純度が99.3%以上の通常のアルミニウム箔は、圧延の際に表面に残存する油を除去するために、圧延を終えた硬質箔を焼きなまし炉にいれて約350℃の温度で処理をして油を除去し、焼きなました軟質箔として積層用に供される。
この焼きなまし工程により、軟質箔は伸び率が大きく、引張強さ、耐力が低下した軟らかくて、柚子肌の原因となる塑性変形を起こし易く、レトルト処理用アルミニウム箔としては欠点をもつものである。
【0013】
純度が99.3%以上のアルミニウム箔で、焼きなましを軽く行った中間硬質箔は、柚子肌の発生は少ないものであり、また、硬質箔の接着を阻害する圧延油を洗浄除去したアルミニウム箔も上市されてはいる。しかしながら、圧延油は、箔に存在するピンホールや凹凸面などに残存するため、洗浄では完全に除去されない。そして、高温のレトルト処理で箔の表面に浮き出し、接着剤層の剥離強度を低下したり、ヒートシーラント層を剥離したりする原因となる。
特に、5〜7μmのようにうすいアルミニウム箔で、洗浄などの処理を行うことはロスが多く長尺巻きを必要とするラミネーショングレードのアルミニウム箔の製法としては、現状技術では好ましいものではない。
【0014】
これに対して、鉄を0.7〜1.7%を含む(アルミニウム分が、98.0%以上のアルミニウム合金)厚み5〜9μmの合金箔は、接着を阻害する圧延油を除去した状態においても伸び率が小さく、引張強さ、耐力も大きい硬くて塑性変形を起こし難いものである。
本発明のレトルト処理用積層体に使用する金属箔は上記の理由から合金箔を採用するものである。
【0015】
次に、アルミニウムを主成分とする従来の比較例である軟質箔、中間硬質箔、硬質箔、及び本発明のアルミニウムに鉄を含む合金箔の諸物性を表1に示す。
(以下余白)
【0016】
【表1】
【0017】
本発明のヒートシーラント層に使用する熱可塑性樹脂は、レトルト処理の温度における耐熱性、耐油性などを考慮して、ポリプロピレンを主とするフィルムが好ましく、その他、高密度ポリエチレン、飽和ポリエステル、ポリアミドなどから適宜に選択できる。本発明においては、ゴム成分を5〜25%を含むのプロピレン・エチレン共重合体からなるヒートシーラント層が好ましく使用できる。
また、図示はしないがレトルト処理時の伸縮には強いが、内容物の油成分に膨潤し易いゴム成分を含むヒートシーラント層のコポリマーの一部に代えて、内容物との接する面を、比較的耐油性に優れたプロピレンホモポリマーを用いることもできる。すなわち、金属箔との接着面を伸縮に強いコポリマーのクッション層とし、内容物側を耐油性に優れるプロピレンホモポリマーとからなる共押出し多層フィルムを使用することもできる。
【0018】
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。
【実験例】
(実施例1)
図1に示す、厚み12μmのポリエチレンテレフタレート(耐熱基材フィルム1)に印刷した絵柄層6にポリエステルポリオール・ポリイソシアネート系接着剤層4g/m2 (接着剤層21)を設け、アルミニウム中に鉄を0.7%含む表1に示す厚み7μm合金箔A(合金箔3)とを積層する。更に上記接着剤を用いて合金箔3の面に接着剤層22を4g/m2 設けて、ゴム成分を含むプロピレン・エチレンブロック共重合体(ヒートシーラント層4)とをドライラミネーションして実施例1のレトルト処理用積層体5を作製した。
【0019】
(実施例2)
実施例1で合金箔3を(厚み7μmのアルミニウムに含む鉄を0.7%から1.1%にした表1に示す合金箔B)に代えた以外は実施例1と同様に積層し、本発明の実施例2のレトルト処理用積層体5を作製した。
【0020】
(実施例3)
実施例1で合金箔3を(厚み7μmのアルミニウムに含む鉄を0.7%から1.7%にした表1に示す合金箔C)に代えた以外は実施例1と同様に積層し、本発明の実施例3のレトルト処理用積層体5を作製した。
【0021】
(比較例1)
実施例1で使用した合金箔3を、表1に示す軟質箔に代えた以外は実施例1と同様の材料・工程で積層し、比較例1のレトルト処理用積層体を作製した。
【0022】
(比較例2)
実施例1で使用した合金箔3を、表1に記載の中間硬質箔に代えた以外は実施例1と同様の材料・工程で積層して、比較例2のレトルト処理用積層体を作製した。
【0023】
(比較例3)
実施例1で使用した合金箔3を、表1に記載の硬質箔に代えた以外は実施例1と同様の材料・工程で積層し、比較例3のレトルト処理用積層体を作製した。
【0024】
実施例及び比較例の各試料について、140×170mmの大きさに切断し、ヒートシーラント層を相対し、そして端部を10mm巾のヒートシールで製袋し、次の各項目について行った結果を表2に示す。
【0025】
(柚子肌の発生状態)
各試料に、中華ソーススープを100g充填し、加圧した熱湯による120℃30分のレトルト処理を行い冷却後、積層体の表面における柚子肌の発生状態を目視で評価した。
評価基準
○:柚子肌の発生がなく、表面状態が良好
△:柚子肌を若干発生する
×:柚子肌の発生が著しく、表面状態が不良
【0026】
(剥離強度)
上記のレトルト処理後の積層体について、ポリエステルフィルムとアルミニウム箔との剥離強度(g/15mm巾)を、JIS K6854に準じてT形剥離試験で測定した。
【0027】
(落下強度)
上記の内容物を充填した後レトルト処理した袋体を各10袋、1.2mの高さから各10回の落下テストを行い、破袋に至るまでの回数の総計=落下強度として評価した。(100以上の評価を記述した試料は、10回の落下テストで、破袋が全くないものを意味し、10の評価のものは、各試料が全て1回の落下で破袋したことを意味する。
【0028】
【表2】
【0029】
【発明の効果】
本発明は、以上説明したように、硬く塑性変化を起こし難く、接着適性がよい合金箔を使用し、耐レトルト処理適性をもつゴム成分を含むプロピレン・エチレンブロック共重合体をヒートシーラント層とし、レトルト処理用積層体を構成したものである。
そして、油脂成分が多い内容物を充填してレトルト処理を行い、ヒートシーラント層に部分的な伸縮があり、凹凸を生じても、それが金属箔にまで賦型することがない。したがって、レトルト処理用積層体の表面に柚子肌の発生を防止する効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のレトルト処理用積層体の断面概略図である。
【符号の説明】
1 基材フィルム
21、22 接着剤層
3 合金箔
4 ヒートシーラント層
5 積層体
6 絵柄層
Claims (1)
- 耐熱基材フィルム、接着剤層、アルミニウム箔、接着剤層、及びゴム成分を含むプロピレン・エチレンブロック共重合体のヒートシーラント層とからなる積層体において、該アルミニウム箔がアルミニウム中に鉄が0.7〜1.7重量%含む合金であることを特徴とするレトルト処理用積層体。
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