JP3776372B2 - ラチェット式レバー機構 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、シートリフターの駆動機構として設けられるラチェット式レバー機構、特に、ユニットカバーの外部において、駆動レバーが入力軸に対して一体回動可能に連結、固定される形態のラチェット式レバー機構に関する。
【0002】
【従来の技術】
シートを昇降可能に支持する、いわゆるシートリフターの駆動機構として、たとえば、対応する一回動方向のみの駆動力をその出力軸に伝達、出力可能とした、いわゆるラチェット式レバー機構が提供されている。そして、この種のラチェット式レバー機構として、ワンウェイクラッチ付きギヤからなるアップ用、ダウン用一対のラチェットギヤを、たとえばブレーキユニットの制動軸に連結される出力軸上に、そのロック回転方向を異にして段差配置した、たとえば特開2000−255295公報に開示のような構成が知られている。
【0003】
この特開2000−255295公報に開示されたラチェット式レバー機構においては、アップ用、ダウン用のラチェットギヤに噛合可能なアップ用、ダウン用の爪片を、その対応する段差位置に有したラチェット爪体が、駆動レバーにより駆動される入力軸周りに一体係着されている。そして、駆動レバーの回動方向に対応した爪片を、その対応するアップ用、ダウン用のラチェットギヤに噛合させ、これをさらに回動させることにより対応ラチェットギヤのロック回転方向への出力回転を出力軸に発生させるものとして、この公知のラチェット式レバー機構は構成されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、この種のラチェット式レバー機構は、前出の特開2000−255295公報に開示のように、ユニットカバー等での被覆のもとで概ねユニット化され、駆動レバーが、このユニットカバーの外部において、入力軸に一体回動可能に連結、固定されている。
【0005】
ここで、公知の構成においては、通常、入力軸、およびこの入力軸の嵌入、係着される駆動レバーの軸受が所定継手形状、たとえばスプライン継手に形成され、この継手形状の嵌合、係合のもとで、入力軸、および駆動レバーの一体回動が確保されている。そして、このようなスプライン継手等による連結においては、入力軸の軸線に沿った方向での係合長さがその係着力に影響するため、係着、つまりその一体回動を確実に得るためには、入力軸と駆動レバーの軸受との係合長さ、ひいてはユニットカバーからの入力軸の突出長を十分に長くとる必要がある。
【0006】
しかし、ラチェット式レバー機構が、通常、シートクッションの側面、特にドア等の壁面側に配置されることを考えると、ユニットカバーからの入力軸の突出長が制限を受けることは避けられない。特に、室内幅の狭い自動車のシートにおいては、シートクッション側面と壁面等との間の隙間が自ずと狭くなることから、レイアウト上、その適用、つまりはラチェット式レバー機構の採用が困難となることも考えられる。
【0007】
この発明は、ユニットカバーからの突出長の少ない、レイアウト性に優れたラチェット式レバー機構の提供を目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するために、この発明の請求項1に示すラチェット式レバー機構においては、アップ用、ダウン用のラチェットギヤに噛合可能な爪片を二股段差片にそれぞれ有した平面略二股形状の二股プレートが、回動中心となる入力軸回りに、その一体回動を可能に係着されている。そして、第1、第2のねじ孔が入力軸先端、および二股プレートに設けられ、ユニットカバーに形成された対応形状の第1、第2の挿通孔内への所定スペーサ部材の介在によるユニットカバーからの離間保持を伴った、第1、第2のねじ孔に対する各止めねじの締結により、ユニットカバー外部の駆動レバーを、ユニットカバーに対する回動を可能に、入力軸に一体的に連結、固定している。
【0009】
また、この発明の請求項2においては、入力軸先端を、スペーサ部材を兼ねるねじ孔突起として形成し、このねじ孔突起の挿通される丸孔として、ユニットカバーの第1挿通孔を形成するとともに、ねじ孔付き台座を、スペーサ部材を兼ねて二股プレートに突設、固着し、入力軸を中心としたこのねじ孔付き台座の円弧移動を保障可能とする円弧状の長孔として、ユニットカバーの第2挿通孔を形成している。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながらこの発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0011】
図1、図2に示すように、この発明に係るラチェット式レバー機構10においては、ワンウェイクラッチ付きギヤからなるアップ用、ダウン用のラチェットギヤ12-u,12-dが、出力軸14周りに、そのロック回転方向への一体回転を可能にそれぞれ係着配置されるとともに、その駆動源となる駆動レバー16が、ラチェットギヤに噛合可能なアップ用、ダウン用の爪片18-u,18-dの回動中心となる入力軸20に、一体的に連結、固定されている。
【0012】
以下、このラチェット式レバー機構10の概略を説明する。
【0013】
アップ用、ダウン用のラチェットギヤ12-u,12-dとして用いられるワンウェイクラッチ付きギヤは、いずれも内輪12aを伴う外輪12bの回転方向、つまりロック回転方向を一方向のみに限定した公知のものであり、ロック回転方向を相反する方向、つまり異にして、たとえばセレーション等の継手の係着により、出力軸14周りに、内輪の一体回転を可能に環装配置される。
【0014】
この出力軸14は、たとえば、ブレーキユニットの制動軸(図示しない)との連結、係着を可能とする軸受14aを、その一端(図中下端)に有して形成され、ユニットベース24とユニットカバー26との間に、回転自在に軸支、保持される。そして、この出力軸14のラチェットギヤ12-u,12-dに噛合可能なアップ用、ダウン用の爪片18-u,18-dを一体回動可能に有した入力軸20が、出力軸14との平行位置に軸支、保持されている。
【0015】
図2に加えて図3を見るとわかるように、この発明においては、アップ用、ダウン用の爪片18-u,18-dが、平面略二股形状の二股プレート26の持つ二股段差片26a-u,26a-dにそれぞれ形成されている。この実施の形態においては、二股プレートの二股段差片26a-u,26a-dが、たとえば一方の平行段差曲げのもとで、アップ用、ダウン用のラチェットギヤ12-u,12-dに整列する段差位置にそれぞれ配置されている。そして、二股プレート26に設けられた非円形の軸孔28に、入力軸20がその段部に有する非円形の回り止め部20aを挿入、嵌合させることによって、二股プレートが、入力軸回りに、その一体回動を可能に係着されている。
【0016】
なお、この実施の形態における二股プレート26では、たとえば二股段差片26a-uが基準とされ、アップ用、ダウン用のラチェットギヤ12-u,12-d間の段差に対応するだけの段差を他方の二股段差片26a-dとの間に設けるべく、その相互間を平行とする平行段差曲げにより、この他方の二股段差片26a-dが、基準の二股段差片26a-uに対して段差付けされている(図1参照)。
【0017】
そして、駆動レバー16が、入力軸20に対し、ユニットカバー24の外部から、その一体回動を可能に連結、固定されている。
【0018】
図1ないし図3を見るとわかるように、この発明においては、第1、第2のねじ孔30,32が、入力軸20の先端、および二股プレート26にそれぞれ設けられている。第1ねじ孔30は、たとえば、入力軸先端に設けられたねじ孔突起20bからのねじ孔として形成され、また、第2ねじ孔32は、たとえば、挿通孔34を介して二股プレート26にカシメ固定されたねじ孔付き台座36のねじ孔として、二股プレートに設けられている。
【0019】
ここで、この第1ねじ孔30を有した入力軸先端のねじ孔突起20b、および第2ねじ孔32を有した二股プレートのねじ孔付き台座36は、ユニットカバー24からの所定の離間位置に駆動レバー16を保持するスペーサ部材として機能可能となっている。そして、ユニットカバー24に形成された対応形状の第1、第2の挿通孔38,40内への所定スペーサ部材、つまりねじ孔突起20b、およびねじ孔付き台座36の介在によるユニットカバー24からの離間保持を伴った、第1、第2のねじ孔30,32に対する止めねじ42,44の締結により、ユニットカバー外部の駆動レバー16を、ユニットカバーに対する回動を可能に、入力軸20に一体的に連結、固定している。
【0020】
入力軸20は、その軸心周りを回動されるにすぎないため、この入力軸のねじ孔突起20bの挿入、介在されるユニットカバーの第1挿通孔38は、このねじ孔突起の挿通可能な丸孔であれば足りる。これに対し、第2ねじ孔32を有するねじ孔付き台座36は、二股プレート26の回動中心となる入力軸20からの離反位置にあるため、図2に示すような、この入力軸を中心としたねじ孔付き台座、つまり第2ねじ孔の円弧移動を保障可能とする円弧状の長孔として、ユニットカバーの第2挿通孔40は形成される。
【0021】
この構成においては、駆動レバー16との一体回動のもとで、アップ用、ダウン用の爪片18-u,18-dは入力軸20を中心として回動される。そして、アップ用、ダウン用の爪片18-u,18-dのうち、その回動方向に対応する側の爪片が、それに対応するラチェット爪12-u,12-dに噛合し、それをロック回転方向に回転させることにより、駆動レバー16の回動力は、その操作方向に応じた回転出力として、出力軸14に伝達、出力可能となる。
【0022】
なお、この種のラチェット式レバー機構10においては、通常、図2に示すような、ラチェットギヤ12-u,12-dへの爪片18-u,18-dの非噛合位置が、駆動レバー16の初期位置(ニュートラル位置)として規定され、リターンばね46の付勢力のもとで、駆動レバーはそのニュートラル位置に付勢、保持されている。
【0023】
この実施の形態に例示したラチェット式レバー機構10においては、リターンばね46が、入力軸20周りに環装配置されたねじりばねとしてなり、このねじりばねの端末46aを、入力軸との一体回動を可能に係着配置したサポートプレート48の係合片48a、およびユニットベース22の係合片22aにそれぞれ係合させることによって、その付勢力を、入力軸、ひいては駆動レバー16に伝達させるものとして構成されている。
【0024】
上記のように、この発明のラチェット式レバー機構10においては、駆動レバー16を、入力軸20、およびこの入力軸と一体回動される二股レバー26に対するねじ止めのもとで、入力軸に一体的に連結、固定されている。
【0025】
つまり、スプライン継手等の継手を用いることなく、駆動レバー16を入力軸20に一体的に連結、固定しているため、この発明によれば、ユニットカバー24からの入力軸等の突出長は確実に低減される。従って、レイアウト上の不利を招かない、適応性、および汎用性に優れたラチェット式レバー機構10が、これによれば容易に確保可能となる。
【0026】
そして、入力軸の第1ねじ孔30、および二股プレートの第2ねじ孔32に対する止めねじ42,44の螺着、締着のもとで、駆動レバー16は固定されている。つまり、駆動レバー16は、入力軸20に対し、2点で固定されているものと同等であることから、その固定の確実性、および安定性を損なうことはない。
【0027】
また、この発明においては、アップ用、ダウン用の爪片18-u,18-dが、二股プレートの二股段差片26a-u,26a-dにそれぞれ設けられているため、この爪片の形成、および配置が、プレス加工による二股プレート26の成形のもとで確保可能となる。つまり、段差位置にあるアップ用、ダウン用の爪片18-u,18-dを、鋳型による一体成形等のような煩雑な製造工程を伴うことなく得ることができるため、その作業性、および生産性が一層向上される。
【0028】
従って、この発明によれば、そのコストの低減も同時に得ることが可能となる。
【0029】
ここで、この発明の実施の形態においては、ユニットカバーの第1、第2の挿通孔38,40に挿入、介在されるスペーサ部材として、入力軸先端のねじ孔突起20b、および二股プレート26に固着したねじ孔付き台座36を、それぞれ例示しているが、駆動レバー16を、ユニットカバー24に対する回動を可能に、このユニットカバーからの所定離間位置で保持可能とするものであれば足りるため、これに限定されず、たとえば、駆動レバーとの一体形状として、止めねじ42,44の挿通可能なスペーサを形成したり、別体のスペーサを、入力軸20と駆動レバーとの間、および二股プレート26と駆動レバーとの間に、それぞれ介在配置させる構成としてもよい。
【0030】
しかしながら、この実施の形態のように、第1、第2のねじ孔30,32を有したねじ孔突起20b、およびねじ孔付き台座36を入力軸20、および二股プレート26にそれぞれ設ける構成とすれば、その構成の簡素化が容易にはかられる。
【0031】
上述した実施の形態は、この発明を説明するためのものであり、この発明を何等限定するものでなく、この発明の技術範囲内で変形、改造等の施されたものも全てこの発明に包含されることはいうまでもない。
【0032】
【発明の効果】
上記のように、この発明に係るラチェット式レバー機構によれば、ユニットカバー外部に大きく突出されるスプライン継手等の継手を用いることなく、駆動レバーを入力軸に、その一体回動を可能に連結、固定できるため、ユニットカバーからの入力軸等の突出長は確実に低減される。従って、レイアウト上の不利を招かない適応性、および汎用性に優れたラチェット式レバー機構が、これによれば容易に確保可能となる。
【0033】
そして、入力軸の第1ねじ孔、および二股プレートの第2ねじ孔に対する2点止めにより、駆動レバーが固定されるため、その固定の確実性、および安定性を損なうことはない。
【0034】
さらに、アップ用、ダウン用の爪片が二股プレートの二股段差片にそれぞれ設けられているため、この爪片の形成、および配置が、プレス加工による二股プレートの成形のもとで確保可能となる。つまり、段差位置にあるアップ用、ダウン用の爪片を、鋳型による一体成形等のような煩雑な製造工程を伴うことなく得ることができるため、その作業性、および生産性の一層の向上により、そのコストの低減化も同時にはかられる。
【0035】
そして、第1、第2のねじ孔を有したねじ孔突起、およびねじ孔付き台座を入力軸、および二股プレートにおけるそれぞれのスペーサ部材とすれば、その構成の簡素化が容易にはかられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に係るラチェット式レバー機構の、一部破断の概略側面図である。
【図2】ラチェット式レバー機構の概略平面図である。
【図3】ラチェット式レバー機構の部分的な分解斜視図である。
【符号の説明】
10 ラチェット式レバー機構
12-u,12-d ラチェットギヤ
14 出力軸
16 駆動レバー
18-u,18-d 爪片
20 入力軸
20b ねじ孔突起(スペーサ部材)
24 ユニットカバー
26 二股プレート
30,32 第1、第2のねじ孔
36 ねじ孔付き台座(スペーサ部材)
38,40 第1、第2の挿通孔

Claims (2)

  1. 出力軸回りにそのロック回転方向を異にして一体係着された、ワンウェイクラッチ付きギヤからなるアップ用、ダウン用のラチェットギヤと;このラチェットギヤに噛合可能に入力軸回りの段差位置に一体的に配されたアップ用、ダウン用の爪片と;をユニットカバー内に備え、ユニットカバー外部から入力軸に連結された駆動レバーの回動操作により、その回動力をラチェットギヤから出力軸に伝達、出力可能としたラチェット式レバー機構において、
    アップ用、ダウン用の爪片を二股段差片にそれぞれ有した平面略二股形状の二股プレートが、回動中心となる入力軸回りに、その一体回動を可能に係着されるとともに、
    第1、第2のねじ孔が入力軸先端、および二股プレートに設けられ、ユニットカバーに形成された対応形状の第1、第2の挿通孔内への所定スペーサ部材の介在によるユニットカバーからの離間保持を伴った、第1、第2のねじ孔に対する各止めねじの締結により、ユニットカバー外部の駆動レバーを、ユニットカバーに対する回動を可能に、入力軸に一体的に連結、固定したことを特徴とするラチェット式レバー機構。
  2. 入力軸先端が、スペーサ部材を兼ねるねじ孔突起として形成され、このねじ孔突起の挿通される丸孔として、ユニットカバーの第1挿通孔が形成されるとともに、
    ねじ孔付き台座が、スペーサ部材を兼ねて二股プレートに突設、固着され、入力軸を中心としたこのねじ孔付き台座の円弧移動を保障可能とする円弧状の長孔として、ユニットカバーの第2挿通孔が形成された請求項1記載のラチェット式レバー機構。
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