JP3775384B2 - 耐擦傷性樹脂板及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、表面に硬化皮膜が形成されたメチルメタクリレート−スチレン共重合体樹脂基材からなる低吸湿耐擦傷性樹脂板、及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、例えば、プロジェクションテレビ用前面板をはじめとするディスプレイ用前面板として、透明樹脂板が広く用いられてきた。そして、樹脂表面は傷が付きやすいことから、表面保護のために、アクリレート系化合物やエポキシ系化合物、有機ケイ素化合物など、紫外線硬化性又は熱硬化性の化合物が、耐擦傷性皮膜として用いられてきた(例えば特許文献1参照)。また、埃等の付着を防止するため、耐擦傷性皮膜中に導電性無機粒子を分散させ、帯電防止性を付与することも知られている(例えば特許文献2、3参照)。
【0003】
一方、かかるディスプレイ用前面板の基材としては、ポリメチルメタクリレート板(メタクリル樹脂板)などが用いられているが、ポリメチルメタクリレート板は吸湿による伸縮が大きく、吸湿により基材に反りが生じ、画像を歪めたり、前面板内側の部品と接触したりするおそれがある。ポリメチルメタクリレートに比べ、メチルメタクリレート−スチレン共重合体樹脂は、吸湿性が小さいことが知られており、かかるメチルメタクリレート−スチレン共重合体樹脂をディスプレイの前面板として用いる試みもある(例えば特許文献4参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開平9−48950号公報
【特許文献2】
特開平11−343430号公報
【特許文献3】
特開2001−328220号公報
【特許文献4】
特開平11−7251号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来用いられているアクリレート系等の硬化性化合物は、基材となる樹脂によってその密着性が異なり、特に基材としてメチルメタクリレート−スチレン共重合体樹脂板を用いた場合には、その密着性が大きく低下する。一方で、メチルメタクリレート−スチレン共重合体樹脂基板に密着性が良好となる硬化性化合物は、硬化皮膜の硬度が低く、耐擦傷性が要求されるディスプレイ用前面板として十分な硬化皮膜とすることができなかった。
【0006】
そこで本発明者らは、吸湿性の小さいメチルメタクリレート−スチレン共重合体樹脂基板への密着性が良好で、さらには十分な表面硬度を有する硬化皮膜が形成された耐擦傷性樹脂板あるいは耐擦傷性帯電防止板を開発すべく、鋭意研究を行った結果、硬化のための塗料に特定の硬化性化合物を用いることにより、メチルメタクリレート−スチレン共重合体樹脂板に対して十分な密着性を有し、表面硬度も高い硬化皮膜が得られることを見出し、本発明に至った。
【0007】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明によれば、メチルメタクリレート−スチレン共重合体樹脂からなる基板と、その表面に形成された硬化皮膜とからなり、この硬化皮膜は、芳香族環と(メタ)アクリロイルオキシ基を有する硬化性化合物を含有し、芳香族環1個に対して(メタ)アクリロイルオキシ基が少なくとも3個となる割合で存在する硬化性樹脂組成物が硬化されたものである耐擦傷性樹脂板が提供される。この硬化性樹脂組成物において、芳香族環1個に対して(メタ)アクリロイルオキシ基が少なくとも3個の割合となるようにするためには、例えば、分子中に芳香族環と、それ1個に対して(メタ)アクリロイルオキシ基を少なくとも3個有する硬化性化合物を用いることもできるし、分子中に芳香族環とそれ1個に対して(メタ)アクリロイルオキシ基を1〜2個有する硬化性化合物に加えて、分子中に少なくとも3個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多官能化合物を配合し、上記の関係を満足させることもできる。また上記の硬化皮膜には、平均粒子径0.1μm以下の導電性無機粒子を分散させて、帯電防止性を付与することもできる。
【0008】
この耐擦傷性樹脂板は、ディスプレイ用前面板、特にプロジェクションテレビ用スクリーンなどとして有用である。したがって本発明によれば、上記の耐擦傷性樹脂板からなるディスプレイ用前面板が提供され、また、上記の耐擦傷性樹脂板からなるプロジェクションテレビ用スクリーンも提供される。
【0009】
さらに本発明によれば、メチルメタクリレート−スチレン共重合体樹脂からなる基板の表面に、芳香族環と(メタ)アクリロイルオキシ基を有する硬化性化合物を含有し、芳香族環1個に対して(メタ)アクリロイルオキシ基が少なくとも3個となる割合で存在する硬化性樹脂組成物を塗布して硬化性皮膜を形成し、次いでこの硬化性皮膜を硬化させることによって、耐擦傷性樹脂板を製造する方法も提供される。この際、樹脂組成物中に平均粒子径0.1μm以下の導電性無機粒子を含有させれば、得られる硬化皮膜に帯電防止性を付与することができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。本発明では、樹脂基板として、メチルメタクリレート−スチレン共重合体樹脂を用いる。この共重合体において、スチレン量は、一般には10〜90重量%程度であることができ、好ましくは20重量%以上、より好ましくは30重量%以上であり、また好ましくは60重量%以下、より好ましくは50重量%以下である。この共重合体中のスチレン量が10重量%を下回る場合には、吸湿性が大きくなり、またその量が90重量%を越えると、樹脂基板としての機械物性が低下する。この共重合体は、耐衝撃成分を含んでいてもよい。また、架橋されたメチルメタクリレート−スチレン共重合体樹脂を用いることも可能である。
【0011】
この樹脂基板は、板(シート)、フィルムなどのように、表面が平らなものであってもよいし、凸レンズや凹レンズなどのように、表面が曲率を有するものであってもよい。また、表面に細かな凹凸が設けられていてもよい。樹脂基板の厚さは、この耐擦傷性樹脂板の用途によって大きく変動するが、一般には0.5〜10mm程度の範囲から、その用途等に応じて、適当な厚さの基板を選択すればよい。最終的に得られる耐擦傷性樹脂板の自立性の観点からは、1.5mm 以上の厚さの樹脂板を用いるのが好ましい。
【0012】
このようなメチルメタクリレート−スチレン共重合体樹脂を基板とし、その表面に硬化皮膜を形成する。そして本発明では、硬化皮膜を形成するための樹脂組成物(塗料)として、芳香族環と(メタ)アクリロイルオキシ基を有する硬化性化合物(以下、芳香族(メタ)アクリロイルオキシ化合物と呼ぶことがある)を含有し、芳香族環1個に対して(メタ)アクリロイルオキシ基が少なくとも3個となる割合で存在する硬化性樹脂組成物を用いる。なお、(メタ)アクリロイルオキシ基とは、アクリロイルオキシ基又はメタクロイルオキシ基をいい、その他本明細書において、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸などというときの「(メタ)」も同様の意味である。また、芳香族環は、典型的にはベンゼン環であるが、その他、ナフタレン環などの多環であってもよい。
【0013】
芳香族(メタ)アクリロイルオキシ化合物を含有する硬化性樹脂組成物においては、芳香族環1個に対して(メタ)アクリロイルオキシ基が少なくとも3個の割合となるようにする。芳香族環1個に対して少なくとも3個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する芳香族(メタ)アクリロイルオキシ化合物を用いれば、この要件を満たすが、そのほかに例えば、芳香族環1個に対して(メタ)アクリロイルオキシ基を1〜2個有する芳香族(メタ)アクリロイルオキシ化合物を用い、それに加えて、芳香族環を持たず、1分子中に少なくとも3個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多官能化合物(以下、多官能(メタ)アクリロイルオキシ化合物ということがある)を用い、硬化性樹脂組成物全体で、芳香族環1個に対して(メタ)アクリロイルオキシ基が少なくとも3個となるようにした混合物であってもよい。
【0014】
後者のような併用系について具体的に説明すると、1分子中に芳香族環と(メタ)アクリロイルオキシ基を1:1の割合で有する芳香族(メタ)アクリロイルオキシ化合物に対しては、1分子中に3個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多官能化合物であれば2/3モル倍以上、1分子中に4個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多官能化合物であれば1/2モル倍以上、それぞれ併用することにより、上記の要件を満たすことができる。また、1分子中に芳香族環と(メタ)アクリロイルオキシ基を1:2の割合で有する芳香族(メタ)アクリロイルオキシ化合物に対しては、1分子中に3個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多官能化合物であれば1/3モル倍以上、1分子中に4個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多官能化合物であれば1/4モル倍以上、それぞれ併用することにより、上記の要件を満たすことができる。なお、1分子中に芳香族環と(メタ)アクリロイルオキシ基を1:1〜2の割合で有する硬化性化合物に対して、芳香族環を持たず、1分子中に1個又は2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物を所定量以上併用すれば、上記の「芳香族環1個に対して(メタ)アクリロイルオキシ基が少なくとも3個となる割合で存在する」という要件を満たすこともあるが、実用上は1分子中に少なくとも3個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多官能化合物を用いるのが好ましい。
【0015】
硬化性樹脂組成物中に芳香族環を有する硬化性化合物を存在させることで、それが存在しない場合に比べ、メチルメタクリレート−スチレン共重合体樹脂基板に対する密着性が向上する。また、芳香族環1個に対して(メタ)アクリロイルオキシ基が少なくとも3個となるようにすることで、硬化皮膜の表面硬度が向上する。
【0016】
芳香族環1個に対して少なくとも3個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する芳香族(メタ)アクリロイルオキシ化合物としては、例えば、ペンタエリスリトールトリアクリレートトリレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、グリセリンジメタクリレートトリレンジイソシアネートウレタンプレポリマーなどが挙げられる。ペンタエリスリトールトリアクリレートトリレンジイソシアネートウレタンプレポリマーは、1分子中に1個の芳香族環と6個のアクリロイルオキシ基を有する化合物であり、またグリセリンジメタクリレートトリレンジイソシアネートウレタンプレポリマーは、1分子中に1個の芳香族環と4個のメタクリロイルオキシ基を有する化合物であるが、それぞれ単量体そのものでもよいし、例えば、2量体、3量体などのオリゴマーが混じっていてもよく、また、事実上オリゴマーとなった形で用いることもできる。
【0017】
このような、芳香族環1個に対して少なくとも3個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する芳香族(メタ)アクリロイルオキシ化合物には、市販されているものもあるので、このような市販品を用いることもできる。市販品として、例えば、“ライトアクリレート UA-306T”〔共栄社化学株式会社、ペンタエリスリトールトリアクリレートトリレンジイソシアネートウレタンプレポリマー〕、“ライトアクリレート UA-101T”〔共栄社化学株式会社、グリセリンジメタクリレートトリレンジイソシアネートウレタンプレポリマー〕などが挙げられる。
【0018】
芳香族環1個に対して2個以下の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する芳香族(メタ)アクリロイルオキシ化合物としては、フェノキシエチルメタクリレート、フェノールエチレンオキサイド変性アクリレート、クレゾールエチレンオキサイド変性アクリレート、パラクミルフェノールエチレンオキサイド変性アクリレート、ノニルフェノールエチレンオキサイド変性アクリレート、ノニルフェノールプロピレンオキサイド変性アクリレート、フェニルグリシジルエーテルアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、フェニルグリシジルエーテルアクリレートトリレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、2,2−ビス〔4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル〕プロパンや2,2−ビス〔4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシエトキシフェニル〕プロパンのようなビスフェノールAエチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、ビス〔4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル〕メタンやビス〔4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシエトキシフェニル〕メタンのようなビスフェノールFエチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの化合物もすべて単量体で表示したが、単量体のまま用いてもよいし、例えば、2量体、3量体などのオリゴマーの形で用いてもよい。
【0019】
このような、芳香族環1個に対して2個以下の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する芳香族(メタ)アクリロイルオキシ化合物にも、市販されているものがあるので、このような市販品を用いることもできる。市販品としては、例えば、“ライトアクリレート AH-600 ”〔共栄社化学株式会社、フェニルグリシジルエーテルアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー〕、“ライトアクリレート AT-600 ”〔共栄社化学株式会社、フェニルグリシジルエーテルアクリレートトリレンジイソシアネートウレタンプレポリマー〕、“ライトアクリレート BP-4EA ”〔共栄社化学株式会社、2,2−ビス(4−アクリロイルオキシエトキシエトキシフェニル)プロパン〕、“NKエステル A-BPE-4”〔新中村化学工業株式会社、2,2−ビス(4−アクリロイルオキシエトキシエトキシフェニル)プロパン〕、“アロニックス M-208”〔東亞合成株式会社、ビスフェノールFエチレンオキサイド変性ジアクリレート〕などが挙げられる。
【0020】
本発明においては、硬化性樹脂組成物につき、芳香族環1個に対して(メタ)アクリロイルオキシ基が少なくとも3個となる割合で存在させる。先に述べたとおり、芳香族環1個に対して少なくとも3個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する芳香族(メタ)アクリロイルオキシ化合物を用いればこの要件を満たす。一方で、芳香族環1個に対して(メタ)アクリロイルオキシ基を1〜2個有する芳香族(メタ)アクリロイルオキシ化合物を用いた場合であっても、多官能(メタ)アクリロイルオキシ化合物を併用することにより、上記の要件を満たすものとすることができる。ここで、多官能(メタ)アクリロイルオキシ化合物における(メタ)アクリロイルオキシ基は、少なくとも3個必要であるが、例えば、4個、5個、6個、7個、8個等、さらに多数でもよい。
【0021】
かかる多官能(メタ)アクリロイルオキシ化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタグリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ−又はテトラ−(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ−、テトラ−、ペンタ−又はヘキサ−
(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールテトラ−、ペンタ−、ヘキサ−又はヘプタ−(メタ)アクリレートのような、3価以上の多価アルコールのポリ(メタ)アクリレート;分子内にイソシアナート基を少なくとも2個有する化合物に、水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーを、イソシアナート基に対して水酸基が等モル以上となる割合で反応させて得られ、1分子中の(メタ)アクリロイルオキシ基の数が3個以上となったウレタン(メタ)アクリレートなどが挙げられる。ここには単量体を例示したが、これら単量体のままで用いてもよいし、例えば2量体、3量体などのオリゴマーの形になったものを多官能(メタ)アクリロイルオキシ化合物として用いてもよい。
【0022】
これらの多官能(メタ)アクリロイルオキシ化合物には、市販されているものもあるので、このような市販品を用いることもできる。市販品として、例えば、“NKハード M101 ”〔新中村化学工業株式会社、ウレタンアクリレート系〕、“NKエステル A-TMM-3L ”〔新中村化学工業株式会社、ペンタエリスリトールトリアクリレート〕、“NKエステル A-TMMT ”〔新中村化学工業株式会社、ペンタエリスリトールテトラアクリレート〕、“NKエステル A-9530 ”〔新中村化学工業株式会社、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート〕、“KAYARAD DPCA”〔日本化薬株式会社、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート〕などが挙げられる。
【0023】
なお、芳香族環1個に対して2個以下の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する芳香族(メタ)アクリロイルオキシ化合物を用いる場合は、以上のような多官能(メタ)アクリロイルオキシ化合物を併用しなければならないが、芳香族環1個に対して少なくとも3個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する芳香族(メタ)アクリロイルオキシ化合物を用いる場合にも、多官能(メタ)アクリロイルオキシ化合物を併用することができる。
【0024】
以上説明した芳香族(メタ)アクリロイルオキシ化合物及び多官能(メタ)アクリロイルオキシ化合物は、例えば、電子線、放射線、紫外線などのエネルギー線を照射することにより硬化させたり、加熱により硬化させたりすることができるものである。
【0025】
芳香族(メタ)アクリロイルオキシ化合物を含有し、必要に応じて多官能(メタ)アクリロイルオキシ化合物を配合した樹脂組成物(塗料)には、さらに平均粒子径が0.1μm以下の導電性無機粒子を分散させて、導電性を付与することができる。ここで用いる導電性無機粒子としては、例えば、アンチモンがドープされた酸化錫、リンがドープされた酸化錫、酸化アンチモン、アンチモン酸亜鉛、酸化チタン、錫がドープされた酸化インジウム(ITO:酸化インジウム錫)などが挙げられる。
【0026】
導電性無機粒子を使用する場合、その平均粒子径は0.1μm以下であることが必要であり、また通常は0.001μm以上である。導電性無機粒子の平均粒子径が0.1μmを越えると、得られる耐擦傷性樹脂板のヘイズが大きくなり、透明性が低下する傾向にある。また、導電性無機粒子を使用する場合、その量は、(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物全体、すなわち芳香族(メタ)アクリロイルオキシ化合物と多官能(メタ)アクリロイルオキシ化合物との合計100重量部に対して、通常は2〜25重量部程度が適当であり、好ましくは15重量部以下、より好ましくは10重量部以下である。導電性無機粒子の量が(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物全体100重量部に対して2重量部未満であると、得られる硬化皮膜の導電性が必ずしも十分でなくなるおそれがある。また、その量が25重量部を越えると、全光線透過率の低下やヘイズ上昇のおそれがある。
【0027】
かかる導電性無機粒子は、例えば、気相分解法、プラズマ蒸発法、アルコキシド分解法、共沈法、水熱法などにより製造することができる。また、導電性無機粒子の表面は、例えば、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、シリコン系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤などで表面処理されていてもよい。
【0028】
硬化性化合物として、芳香族環1個に対して少なくとも3個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する芳香族(メタ)アクリロイルオキシ化合物だけを用いる場合は、それから塗料を調製すればよいし、芳香族(メタ)アクリロイルオキシ化合物と多官能(メタ)アクリロイルオキシ化合物を併用する場合や、塗料中に導電性無機粒子を分散させる場合は、各成分を混合して塗料を調製すればよい。塗料の調製に際しては、溶媒を併用するのが好ましい。導電性無機粒子を用い、かつ溶媒を併用する場合には、例えば、導電性無機粒子及び溶媒を混合して溶媒中に導電性無機粒子を分散させた後、芳香族(メタ)アクリロイルオキシ化合物及び必要に応じて用いられる多官能(メタ)アクリロイルオキシ化合物を混合してもよいし、芳香族(メタ)アクリロイルオキシ化合物及び必要に応じて用いられる多官能(メタ)アクリロイルオキシ化合物を溶媒と混合した後、そこに導電性無機粒子を加えて混合してもよい。
【0029】
溶媒は、芳香族(メタ)アクリロイルオキシ化合物及び必要に応じて用いられる多官能(メタ)アクリロイルオキシ化合物を溶解することができ、かつ塗布後に揮発し得るものであればよく、また塗料成分として導電性無機粒子を用いる場合は、それを分散することができるものであればよい。例えば、ジアセトンアルコール、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、1−メトキシ−2−プロパノールのようなアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンのようなケトン類、トルエン、キシレンのような芳香族炭化水素類、酢酸エチルのようなエステル類、水などが挙げられ、所望なら2種以上の混合溶媒としてもよい。
【0030】
芳香族(メタ)アクリロイルオキシ化合物及び必要に応じて用いられる多官能(メタ)アクリロイルオキシ化合物を含有し、必要に応じて導電性微粒子を含有する樹脂組成物(塗料)は、さらに他のモノマー成分を含有していてもよい。
【0031】
任意に含有しうる他のモノマー成分として、例えば、マロン酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、マロン酸/トリメチロールプロパン/(メタ)アクリル酸、マロン酸/グリセリン/(メタ)アクリル酸、マロン酸/ペンタエリスリトール/(メタ)アクリル酸、コハク酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、コハク酸/トリメチロールプロパン/(メタ)アクリル酸、コハク酸/グリセリン/(メタ)アクリル酸、コハク酸/ペンタエリスリトール/(メタ)アクリル酸、グルタル酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、グルタル酸/トリメチロールプロパン/(メタ)アクリル酸、グルタル酸/グリセリン/(メタ)アクリル酸、グルタル酸/ペンタエリスリトール/(メタ)アクリル酸、アジピン酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、アジピン酸/トリメチロールプロパン/(メタ)アクリル酸、アジピン酸/グリセリン/(メタ)アクリル酸、アジピン酸/ペンタエリスリトール/(メタ)アクリル酸、セバシン酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、セバシン酸/トリメチロールプロパン/(メタ)アクリル酸、セバシン酸/グリセリン/(メタ)アクリル酸、セバシン酸/ペンタエリスリトール/(メタ)アクリル酸、フマル酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、フマル酸/トリメチロールプロパン/(メタ)アクリル酸、フマル酸/グリセリン/(メタ)アクリル酸、フマル酸/ペンタエリスリトール/(メタ)アクリル酸、イタコン酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、イタコン酸/トリメチロールプロパン/(メタ)アクリル酸、イタコン酸/ペンタエリスリトール/(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸/グリセリン/(メタ)アクリル酸のような化合物の組み合わせによる、飽和又は不飽和二塩基酸と(メタ)アクリル酸の混合ポリエステルなどが挙げられる。
【0032】
このような他のモノマー成分を配合する場合、その量は通常、樹脂固形分全体のうち30重量%程度までである。かかる他のモノマー成分は、芳香族(メタ)アクリロイルオキシ化合物及び必要に応じて用いられる多官能(メタ)アクリロイルオキシ化合物とともに溶媒に溶解されてもよいし、導電性無機粒子を用いる場合は、それとともに加えられてもよいし、芳香族(メタ)アクリロイルオキシ化合物、必要に応じて用いられる多官能(メタ)アクリロイルオキシ化合物及び導電性無機粒子を混合する前又は混合した後に混合してもよい。
【0033】
また、芳香族(メタ)アクリロイルオキシ化合物及び必要に応じて用いられる多官能(メタ)アクリロイルオキシ化合物が配合された塗料を、樹脂基板上に塗布して硬化させるためには、通常、この塗料に重合開始剤が配合される。重合開始剤は、アクリル系の硬化性化合物の硬化のために通常用いられるものでよい。さらには必要に応じて、レベリング剤やその他の各種添加剤が含まれていてもよい。
【0034】
かくして得られる塗料を、メチルメタクリレート−スチレン共重合体樹脂基板の表面に塗布した後、硬化させることで、耐擦傷性樹脂板とする。基板上に上記の塗料を塗布するには、例えば、バーコーター法、ロールコーター法など、通常の方法が採用できる。こうして、樹脂基板の表面に硬化性皮膜が形成される。その後、エネルギー線を照射するか又は加熱することにより、基板表面の硬化性皮膜を硬化して硬化皮膜とし、耐擦傷性樹脂板が得られる。この硬化皮膜は、芳香族(メタ)アクリロイルオキシ化合物又はさらに多官能(メタ)アクリロイルオキシ化合物が含まれる状態で硬化したもの、あるいはその中に導電性無機粒子が分散したものとなる。
【0035】
エネルギー線の照射により硬化させる場合、用いるエネルギー線としては、例えば、紫外線、電子線、放射線などが挙げられ、その強度や照射時間などは、用いる芳香族(メタ)アクリロイルオキシ化合物及び多官能(メタ)アクリロイルオキシ化合物の種類や組成などに応じて、適宜選択される。また、加熱により硬化させる場合、加熱温度や加熱時間なども、用いる芳香族(メタ)アクリロイルオキシ化合物及び多官能(メタ)アクリロイルオキシ化合物の種類や組成などに応じて、適宜選択される。塗布に用いた塗料が溶媒を含有する場合は、塗布後、溶媒を揮発させてから皮膜を硬化させてもよいし、溶媒の揮発と皮膜の硬化とを同時的に行ってもよい。
【0036】
こうして得られる硬化皮膜の厚みは、0.5〜50μm 程度であるのが好ましく、さらには1μm 程度以上であるのがより好ましく、また20μm 程度以下であるのがより好ましい。硬化皮膜の厚みが50μm を越えると、亀裂が生じやすくなり、またその厚みが0.5μm未満であると、耐擦傷性が不十分となる傾向にある。この硬化皮膜の上には、さらに低反射層や防汚層などの各種機能層を設けてもよい。
【0037】
本発明の耐擦傷性樹脂板は、吸湿性が小さいために、長期間使用しても板の反り量が少ないものとなり、また硬化皮膜の表面硬度も十分なものである。そのため、例えば、陰極線管(CRT)、液晶表示装置(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、発光ダイオードディスプレイなどの各種ディスプレイにおいて、表示画面からの光を透過するディスプレイ用前面板として有用である。
【0038】
また、プロジェクションテレビのように、前面板の表面に画像を映し出す投影方式のディスプレイに対する前面板として用いた場合には、メタクリル樹脂板を用いた場合に比べて、表面からの吸湿量が少なく、板の反りが少ないために、画像の映りがよく、歪みのない画像が得られる。そこで、本発明の耐擦傷性樹脂板は、投影式ディスプレイ用のスクリーンとしても有用である。
【0039】
特に大型の、例えば対角40インチ以上のディスプレイ用前面板や投影式ディスプレイ用スクリーンは、サイズが大きい分、吸湿による伸縮が大きく、反りの問題が起こり易い。このような用途に供される耐擦傷性樹脂板は、60℃の温水に24時間浸漬したときの吸水率が1%以下と、温水に長時間曝しても吸水し難いものであることが望ましい。なお、この吸水率は、浸漬による質量増加分を浸漬前の質量で除することにより、求められる。
【0040】
【実施例】
以下、実施例を示して、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。例中、含有量ないし使用量を表す%及び部は、特記ないかぎり重量基準である。
【0041】
実施例1
ペンタエリスリトールトリアクリレートトリレンジイソシアネートウレタンプレポリマー〔共栄社化学(株)から入手した“ライトアクリレート UA-306T”〕25部及び1−メトキシ−2−プロパノール75部に、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン〔チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)から入手した“イルガキュア 184”、重合開始剤〕1.25部 を加えて混合し、塗料を調製した。この塗料を、メチルメタクリレート−スチレン共重合体樹脂板〔メチルメタクリレートとスチレンの重量比60/40の共重合体を、押出し成型機にて3mm厚の板にしたもの〕の一方の面にバーコーターにより塗布し、乾燥させて硬化性皮膜を設け、そこに紫外線を照射して硬化させ、硬化皮膜付き樹脂板を得た。硬化皮膜の厚みは約4μm であった。この樹脂板について、以下の方法で評価し、結果を表1に示した。
【0042】
(1)全光線透過率 Tt
ASTM D-1003 に従って、可視光線の入射光量に対する全透過光量を測定した。
(2)ヘイズ
ASTM D-1003 に従って測定した。
(3)スチールウール硬度
スチールウール0000番を荷重500g/cm2 で10往復したのちの硬化皮膜の傷の発生状態を目視により確認した。
(4)硬化皮膜の密着性
サンプル板を80℃の温水に1時間浸漬し、常温に冷却した後、 JIS K 5400 に従って、碁盤目テープ法により、硬化皮膜に設けた碁盤目100個の剥離の有無を観察した。
【0043】
実施例2
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート〔新中村化学工業(株)から入手した“NKエステル A-9530”〕7.5部、ペンタエリスリトールトリアクリレートトリレンジイソシアネートウレタンプレポリマー〔共栄社化学(株)から入手した“ライトアクリレート UA-306T”〕17.5部 及び1−メトキシ−2−プロパノール75部に、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン〔チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)から入手した“イルガキュア 184”、重合開始剤〕1.25部 を加えて混合し、塗料を調製した。この塗料を用いて実施例1と同様に操作し、約4μm 厚の硬化皮膜が形成された樹脂板を作製した。この樹脂板について、実施例1と同様の方法で評価し、結果を表1に示した。
【0044】
実施例3
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート〔“NKエステル A-9530 ”〕に代えてペンタエリスリトールテトラアクリレート〔日本化薬(株)から入手した“KAYARAD PET30”〕を用いる以外は、実施例2と同様に操作して、約4μm厚の硬化皮膜が形成された樹脂板を作製した。この樹脂板について、実施例1と同様の方法で評価し、結果を表1に示した。
【0045】
実施例4
ウレタンアクリレート系硬化性化合物〔新中村化学工業(株)から入手した“NKハード M101 ”、1分子中に3〜6個のアクリロイルオキシ基を有する化合物の混合物、固形分80%〕9.4部(固形分として7.5部)、ペンタエリスリトールトリアクリレートトリレンジイソシアネートウレタンプレポリマー〔共栄社化学(株)から入手した“ライトアクリレート UA-306T”〕17.5部 及び1−メトキシ−2−プロパノール73.1部 を混合して合計100部とし、そこに、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン〔チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)から入手した“イルガキュア 184”、重合開始剤〕1.25部 を加えて混合し、塗料を調製した。この塗料を用いて実施例1と同様に操作し、約4μm 厚の硬化皮膜が形成された樹脂板を作製した。この樹脂板について、実施例1と同様の方法で評価し、結果を表1に示した。
【0046】
実施例5
ペンタエリスリトールトリアクリレートトリレンジイソシアネートウレタンプレポリマー〔共栄社化学(株)から入手した“ライトアクリレート UA-306T”〕25部及び1−メトキシ−2−プロパノール75部に、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン〔チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)から入手した“イルガキュア 184”、重合開始剤〕1.25部 を加え、さらに五酸化二アンチモン分散液〔触媒化成(株)から入手した“ELCOM PC-14 ”、濃度20%、分散している五酸化アンチモンの平均粒子径は20〜30nm〕を20部添加して、耐擦傷性塗料を調製した。この塗料を用いて実施例1と同様に操作し、約4μm 厚の硬化皮膜が形成された樹脂板を作製した。この樹脂板について、実施例1と同様の方法で評価し、結果を表1に示した。また、ここで得られた硬化皮膜付き樹脂板について、 JIS K 6911 に従って硬化皮膜の表面抵抗値を測定したところ、1×1012Ω/□であった。
【0047】
実施例6(参考)
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート〔新中村化学工業(株)から入手した“NKエステル A-9530 ”〕20部、2,2−ビス(4−アクリロイルオキシエトキシエトキシフェニル)プロパン〔共栄社化学(株)から入手した“ライトアクリレート BP-4EA ”〕5部、1−メトキシ−2−プロパノール25部及び2−メチル−1−プロパノール50部に、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン〔チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)から入手した“イルガキュア 184”、重合開始剤〕1.25部 を加えて混合し、塗料を調製した。この塗料を用いて実施例1と同様に操作し、約4μm 厚の硬化皮膜が形成された樹脂板を作製した。この樹脂板について、実施例1と同様の方法で評価し、結果を表1に示した。
【0048】
実施例7(参考)
2,2−ビス(4−アクリロイルオキシエトキシエトキシフェニル)プロパン〔“ライトアクリレート BP-4EA ”〕に代えてビスフェノールFエチレンオキサイド変性ジアクリレート〔東亞合成(株)から入手した“アロニックス M-208”〕を用いる以外は、実施例6と同様に操作して、約4μm 厚の硬化皮膜が形成された樹脂板を作製した。この樹脂板について、実施例1と同様の方法で評価し、結果を表1に示した。
【0049】
比較例1
ウレタンアクリレート系硬化性化合物〔新中村化学工業(株)から入手した“NKハード M101 ”、1分子中に3〜6個のアクリロイルオキシ基を有する化合物の混合物、固形分80%〕31.3部(固形分として25部) 及び1−メトキシ−2−プロパノール68.7部 に、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン〔チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)から入手した“イルガキュア 184”、重合開始剤〕1.25部 を加えて混合し、塗料を調製した。この塗料を用いて実施例1と同様に操作し、約4μm 厚の硬化皮膜が形成された樹脂板を作製した。この樹脂板について、実施例1と同様の方法で評価し、結果を表1に示した。
【0050】
比較例2
ペンタエリスリトールトリアクリレートトリレンジイソシアネートウレタンプレポリマー〔“ライトアクリレート UA-306T”〕25部の代わりに、2−アクリロイルオキシエチル 2−ヒドロキシエチル フタレート〔共栄社化学(株)から入手した“ライトアクリレート HOA-MPE”〕25部を用いる以外は、実施例1と同様にして塗料を調製し、さらに実施例1と同様に操作して、約4μm 厚の硬化皮膜が形成された樹脂板を作製した。この樹脂板について、実施例1と同様の方法で評価し、結果を表1に示した。
【0051】
【表1】
【0052】
実施例8
実施例1において、メチルメタクリレート−スチレン共重合体樹脂板の厚さを2mmとした以外は同様に操作して、硬化皮膜付き樹脂板を作製した。この樹脂板を、80℃で4時間真空乾燥した。次いで、23℃の水に24時間浸漬した後、及び60℃の温水に24時間浸漬した後、それぞれ吸水率〔={(浸漬後の質量−浸漬前の質量)/浸漬前の質量}×100%〕を測定し、吸湿性を評価した。その結果、23℃の水に24時間浸漬したときの吸水率は0.45%であり、60℃の温水に24時間浸漬したときの吸水率は0.9%であった。
【0053】
比較例3
厚さ3mmのメチルメタクリレート−スチレン共重合体樹脂板に代えて、厚さ2mmのメタクリル樹脂板〔住友化学工業(株)から入手した“スミペックスE”〕を用いる以外は、実施例1と同様に操作して、硬化皮膜付き樹脂板を作製した。この樹脂板について、実施例6と同じ方法で吸湿性を評価したところ、23℃の水に24時間浸漬したときの吸水率は0.52% であり、60℃の温水に24時間浸漬したときの吸水率は1.35%であった。
【0054】
【発明の効果】
本発明によれば、基板樹脂とその表面に設けられる硬化皮膜を特定の組合せとしたことで、密着性と表面硬度に優れた硬化皮膜を有し、吸湿性も小さい耐擦傷性樹脂板が得られる。この耐擦傷性樹脂板の製造にあたり、硬化皮膜形成のための樹脂組成物中に特定の導電性無機粒子を分散させ、得られる硬化皮膜中にこの導電性無機粒子が分散するようにしておけば、帯電防止性も併せ持つ耐擦傷性樹脂板とすることができる。この樹脂板は、プロジェクションテレビ用スクリーンをはじめとする各種のディスプレイ用前面板に特に有用である。
Claims (8)
- メチルメタクリレート−スチレン共重合体樹脂からなる基板と、その表面に形成された硬化皮膜とからなり、該硬化皮膜は、分子中に芳香族環と、それ1個に対して(メタ)アクリロイルオキシ基を少なくとも3個有する硬化性化合物を含有し、芳香族環1個に対して(メタ)アクリロイルオキシ基が少なくとも3個となる割合で存在する硬化性樹脂組成物が硬化されたものであることを特徴とする耐擦傷性樹脂板。
- 硬化性樹脂組成物が、芳香族環と(メタ)アクリロイルオキシ基を有する硬化性化合物に加えて、分子中に少なくとも3個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多官能化合物を含有する請求項1に記載の耐擦傷性樹脂板。
- 硬化皮膜の中に平均粒子径0.1μm以下の導電性無機粒子が分散している請求項1又は2に記載の耐擦傷性樹脂板。
- 60℃の温水に24時間浸漬したときの吸水率が1%以下である請求項1〜3のいずれかに記載の耐擦傷性樹脂板。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の耐擦傷性樹脂板からなるディスプレイ用前面板。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の耐擦傷性樹脂板からなるプロジェクションテレビ用スクリーン。
- メチルメタクリレート−スチレン共重合体樹脂からなる基板の表面に、分子中に芳香族環と、それ1個に対して(メタ)アクリロイルオキシ基を少なくとも3個有する硬化性化合物を含有し、芳香族環1個に対して(メタ)アクリロイルオキシ基が少なくとも3個となる割合で存在する硬化性樹脂組成物を塗布して硬化性皮膜を形成し、次いで該硬化性皮膜を硬化させることを特徴とする耐擦傷性樹脂板の製造方法。
- 硬化性樹脂組成物がさらに、平均粒子径0.1μm以下の導電性無機粒子を含有する請求項7に記載の方法。
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