JP3775166B2 - 熱間連続圧延機における走間板厚変更制御方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は熱間連続圧延機における走間板厚変更方法に関し、特に板厚変更応答の動特性と速度変更応答の動特性の差を補償し、走間板厚変更中のマスフロー変動を抑制する高精度、高安定な走間板厚変更制御方法に関する。
【0002】
【従来技術】
一般に、熱間連続圧延機において圧延材の走間板厚変更を行う際には、圧延前に圧延設備の能力、圧延材のサイズ、圧延温度などから走間板厚変更前後の各スタンドにおける出側板厚、ロールギャップ、圧延荷重、圧延速度などを求めておき、圧延材の板厚変更開始点が各スタンドに到達した時点で、圧下位置及びロール速度を順次変更することにより変更前の圧延スケジュールから変更後の圧延スケジュールに変更して、圧延中に異なる板厚の製品を製造する。特開昭56−114509号公報、特開昭56−114510号公報および特開昭56−114511号公報で開示された方法では、板厚は自動板厚制御装置(AGC)により制御するものであるが、板厚(つまり圧下位置)とロール速度を同じタイミングで変更している。しかし、図7に示すように、一般に、圧下系(電動圧下、または油圧圧下)の応答とロール速度系の応答は1次遅れに近似できるが、その応答の速さはそれぞれ相異し、同じタイミングで変更指令を出力しても同じ応答にならず、マスフローの乱れが生じてしまう。このような圧下系と速度系の応答の違いから生じるマスフロー変動をできるだけ抑制するため種々な対策が提案されている。
【0003】
例えば、特公昭63−52963号公報では、図8に示すように、圧下位置変更時間の中心点とロール速度変更時間の中心点を合せる方法を提案している。
【0004】
特開平06−170423号公報では、図9に示すように、圧下位置及びロール速度の変更指令タイミングにずれを設けることにより設定変更中のマスフロー変動を抑制する方法を提案している。
【0005】
また特開平10−249423号公報では、図10に見られるように、圧下位置変更の終了時間をロール速度変更の終了時間とを一致させるような方法を提案している。実施の具体方法として、図10(a)のように、圧下系と速度系のうち応答の速い方の指令値を応答の遅い方と同じタイミングで終了するように数段分けて出力するか、また、図10(b)のように、応答の速い制御系の目標指令値を1次遅れのフィルタを通すことにより応答の遅い制御系の変更終了時間とを合わせるようにしている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、圧下位置変更とロール速度変更の応答にダイナミック的な違いがあるにも係わらず、前記のいずれの方法においても、圧下変更と速度変更の開始タイミングをずらすか、変更時間の中心点を合わせるか、また、変更の開始、終了時間を合わせるなどの方法を取っており、変更中のダイナミック的な補償は考慮していない問題点が存在する。例えば、特開平10−249423号公報(図10c)の方法では、応答の速い制御系の目標値をフィルタを通して出力するようにして、応答の遅い制御系の変更終了時間とを合わせるようにしている。ロール速度制御系は、通常(1)式のような1次の遅れ系であり、また圧下位置制御系は、応答の速い油圧圧下スタンドの場合、通常(2)式のような2次系となっている。
【0007】
【数1】
【0008】
【数2】
【0009】
この2つの制御系の応答を同じようにするには2次か、2次以上の制御系にしなければならない。しかし、前記の従来方法は応答の速い油圧圧下系に更にフィルタを挿入して遅らせているので、結局、圧下位置制御系の応答は2次以上の遅れ系となり、この2つの制御系の次数は異なるため、たとえ両制御系の応答の開始と終了時間を合わせても、応答の動的な特性を一致できない。
【0010】
一方、走間板厚変更の開始点から終了点までの変更部分は製品仕様外のオフゲージとなり、このオフゲージ長を極力短くすることは圧延の歩留向上に対して重要である。しかし、前記従来技術のいずれの方法においても、圧下系もしくは速度系の応答の遅い方に変更時間を合わせるので、板厚変更のオフゲージ長は応答の遅い方によって決めてしまい、オフゲージ長をそれほど短くすることはできない問題が存在する。
【0011】
本発明は、上記説明した従来技術の問題点すなわち板厚変更中の動特性補償問題、及び変更オフゲージ長が短く設定できない問題を解決することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記の課題は次の発明により解決される。
本発明の請求項1に係わる発明は、圧延ロールの出側板厚を制御する自動板厚制御装置及びロールの回転速度を制御する速度制御装置を備えた熱間連続圧延機で、圧延材を圧延しながら、前記板厚制御装置の目標設定値及び前記速度制御装置の目標設定値を変更することにより、圧延機出側板厚を圧延中に変更する走間板厚変更制御において、
走間板厚変更設定装置を備え、板厚制御系及びロール速度制御系のいずれか、または、両方に動特性補償器を設け、板厚変更応答とロール速度変更応答の動特性の差がなくなるように補償し、板厚変更実績と速度変更実績の動特性を完全に一致させることを特徴とする熱間連続圧延機の走間板厚変更方法である。
本発明の請求項2に係わる発明は、連続圧延機の全てのスタンドにおいて、前記動特性補償器をそれぞれ設け、全スタンドの板厚変更実績及びロール速度変更実績の動特性を完全に一致させることを特徴とする請求項1記載の熱間連続圧延機の走間板厚変更方法である。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、図面を示しながら、本発明の詳細を説明する。図1は本発明の実施の形態を示す走間板厚変更制御系の構成図である。図中において、1は圧延材、2は圧延ワークロール、3はバックアップロール、4は自動板厚制御装置(AGC)、5は主機ロール回転駆動モータ、6は主機速度制御装置、7は本発明が提案する板厚制御系動特性補償器、8は本発明が提案する速度制御系動特性補償器、9は走間板厚変更設定装置である。
【0014】
図1では本発明の走間板厚変更方法を単一スタンドにおいて、その実施の形態を説明するが、連続圧延機の他のスタンドにおいて同じように考えることができる。本発明の走間板厚変更方法は、変更点が当該スタンドに到達するとき、板厚変更指令を出力して板厚の変更を行うと同時に、板厚変更によるマスフロー変動抑制のため、当該スタンド及び当該スタンドより上流側、あるいは下流側スタンドのワークロール速度変更も実施する。図1の単一スタンドにおいて、従来、走間板厚変更設定装置9は変更前後圧延材のスケジュールから各スタンドの板厚変更量及び速度変更量(以降、変更目標値と呼ぶ)を計算し、板厚変更を行う際、板厚変更目標値をランプ状(または、ステップ状)に自動板厚制御装置4に出力し、AGC動作によりロール間のギャップ開度を変更する。それと同時に、速度変更目標値をランプ状(または、ステップ状)に速度制御装置6に出力し、主機モータ5の回転速度を調整することによりワークロールの速度を変更する。上記の変更においては、変更過程中時々刻々の板厚変更実績に応じて、圧下変更量によるマスフロー変化分を吸収できるように速度を変更できれば、マスフローの乱れは生じることなく、安定な板厚変更ができる。しかし、後述のように、板厚制御系と速度制御系の応答は異なるため、前記従来技術のいずれの方法で変更目標値を出力しても板厚制御系と速度制御系の応答のダイナミックス差を補償できず、マスフローの乱れは生じてしまう。この問題を解決するため、本発明は図1に示すように、自動板厚制御装置と速度制御装置の入力端にそれぞれ動特性補償器を設置する。これらの動特性補償器は同じような板厚変更目標パターン及び速度変更目標パターンに対して、板厚制御系と速度制御系の応答のダイナミックス差を補償し、板厚と速度の変更実績を一致するように変更の指令値パターンを作成して出力する。このように動特性補償器を設置することにより、板厚制御系と速度制御系(当該スタンド及び上流側、あるいは下流側スタンド)の応答のダイナミックスを一致させ、安定、かつ高精度な走間板厚変更ができる。
【0015】
動特性補償器の構成及び設計方法は、板厚及びロール速度の指令から実績までの応答動特性を完全に一致することができれば、どのように構成及び設計してもよい。例えば、フィードフォワード制御器として動特性補償器を構成してもよいし、フィードフォワード制御器+フィードバック制御器で動特性補償器を構成してもよい。次に、動特性補償器構成の一例を説明する。
【0016】
図2は、自動板厚制御系AGC(図1の4)の構成を示すブロック線図である。図中の記号の意味を以下の(3)式に示すが、制御系自身は一般公知であるのでここではその説明を省略する。
【0017】
【数3】
【0018】
図2中AGCの積分制御の有無によって制御系の応答は違ってくる。積分制御が無い場合、制御系の応答は式(4)の1次遅れで近似でき、積分制御がある場合、制御系の応答は式(5)の2次系で表現できる。
【0019】
【数4】
【0020】
【数5】
【0021】
式中、は板厚制御系の時定数であり、は定数係数である。
一方、主機速度制御系の応答は、一般的に(6)式で1次遅れで近似する。
【0022】
【数6】
【0023】
ここで、は速度制御系の時定数である。前記板厚制御系と速度制御系において、同じようなパターンで変更する目標値ΔhM=ΔVMに対して、その応答は一致にならない。
【0024】
【数7】
【0025】
図4に、同じランプ状な目標指令に対する板厚変更応答と速度変更応答の実績を示す。これは速度系の応答は板厚系の応答より速い例であり、板厚変更実績と速度変更実績は一致しておらず、マスフローの変動を起こしている。
【0026】
図3は本発明の動特性補償器の一例を示すブロック線図であり、板厚制御系は2次系の場合の例を示している。2次系の板厚制御と1次系の速度制御の応答を一致させるためには、この2つの制御系の応答を同じような2次遅れ系となるように補償器を設計すればよい。よって、板厚制御系と速度制御系の動特性補償器は式(8)、(9)のように選ぶ。
【0027】
【数8】
【0028】
【数9】
【0029】
ここで、k1、k2は補償器の設計パラメータである。図3に示すように、このような動特性補償器を設置することにより、板厚制御系と速度制御系の目標値から実績までの応答ダイナミックスは完全一致となり、その応答は次式で記述される。
【0030】
【数10】
【0031】
この応答は元の制御系の応答と関係なく、補償器の設計パラメータk1、k2の指定により唯一決定されるので、k1、k2を適当に選択すれば色々な目的に対応できる補償器が得られる。
k2<ε;k2≪k1(εは小さい正数)とすれば、応答を近似1次遅れとして指定できる
AGCに積分器が無い場合、k2=0とし、補償器を1次遅れの全域通過フィルタとして(11)式のように設計できる
【0032】
【数11】
【0033】
前記全域通過フィルタの設計で、k1を適当に選択することにより設備能力の範囲内において応答の速さを任意に指定でき、走間板厚変更のオフゲージ長を短くすることができる
【0034】
【数12】
【0035】
Tlimitは圧延機全スタンドの圧下と速度系の中で設備最大能力で決めた最小応答時定数である。
【0036】
また、これまで単一スタンドにおいて動特性補償器を適用した走間板厚変更方法を説明したが、その方法は連続圧延機の全スタンドに適用することで、圧延機全スタンドの変更応答を同じように設定することができる。
【0037】
【実施例】
本発明の走間板厚変更方法を単一スタンドに実施する場合の構成例を図1に示す。本発明の動特性補償器が無い場合の走間板厚変更応答を図4に示し、本発明の動特性補償器がある場合の走間板厚変更応答を図5、図6に示す。
【0038】
図4では、0.5秒間で1となるランプ状な変更目標値に対して、板厚制御系と速度制御系の応答実績がそれぞれ違い、マスフロー変動が生じている。また、板厚変更実績は目標値より行き過ぎており、その応答の速さも速度変更実績より遅い。
【0039】
本発明の走間板厚変更方法では、図1のように、板厚制御系及び速度制御系にそれぞれ動特性補償器を挿入し、走間板厚変更設定装置からの板厚変更目標値及び速度変更目標値を処理し、得られた板厚変更パターンと速度変更パターンを板厚制御系と速度制御系の指令として出力する。このように変更パターンを修正することにより板厚制御系と速度制御系の応答ダイナミックス差が補償され、板厚及びワークロール速度は予定通りに同じ応答で変更される。
【0040】
図5は本発明の方法を実施し、板厚系と速度系の応答を近似1次遅れ系として、その応答の速さを応答の速いロール速度制御系(実績が目標になる時間は2.5秒)に合せた実施結果である。0.5秒間で1となるランプ状な板厚変更目標値hM及び速度変更目標値VMに対して、動特性補償器で変更パターンを計算し、板厚変更指令はhrefとなり、速度変更指令はVrefとなる。その変更指令に応じて板厚制御装置は圧下位置を変更し、主機速度制御装置はワークロールの速度を変更する。その結果、板厚変更の実績と速度変更の実績は完全に一致しており、速度制御系に近い1次遅れの応答となっている。
【0041】
図6は本発明の方法を実施し、板厚系と速度系の応答を近似1次遅れ系として、応答の速い速度制御系の応答よりも速く整定できるように補償器を設計した実施結果である。0.5秒間で1となるランプ状な板厚変更目標値hM及び速度変更目標値VMに対して、動特性補償器で変更パターンを計算し、板厚変更指令はhrefとなり、速度変更指令はVrefとなる。その変更指令に応じて板厚制御装置は出側板厚を変更し、主機速度制御装置はワークロールの速度を変更する。その結果、板厚変更の実績と速度変更の実績は完全に一致し、応答の速さはロール速度制御系の2.5秒よりも速くなり、変更実績が目標となる整定時間は1.5秒と短くなる。
【0042】
【発明の効果】
本発明によって板厚制御系と速度制御系の応答の動的違いを補償し、板厚変更と速度変更の実績を希望の応答に一致させ、板厚変更中の圧下と速度応答差に起因するマスフロー変動を抑制することで、高精度、高安定な走間板厚変更を実現できる。
【0043】
また、動特性補償器のパラメータを調整することにより板厚変更及び速度変更の応答動特性を希望通りに指定でき、従来以上の応答速度を得ることで板厚変更オフゲージ長をより短く設定できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の走間板厚変更制御方法を単一スタンドに実施する構成図である。
【図2】自動板厚制御系(AGC)構成のブロック線図である。
【図3】本発明の動特性補償器の設計例の説明図である。
【図4】本発明の制御方法を実施しない場合の板厚変更と速度変更の応答結果である。
【図5】本発明の制御方法を実施し、応答を速度制御系に合せる場合の板厚変更と速度変更の応答結果である。
【図6】本発明の制御方法を実施し、応答を速度制御系より速くした場合の板厚変更と速度変更の応答結果である。
【図7】板厚制御系と速度制御系の応答差の説明図である。
【図8】圧下変更時間と速度変更時間の中心点を合せる従来技術の説明図である。
【図9】圧下変更開始タイミングと速度変更開始タイミングをずらす従来技術の説明図である。
【図10】圧下変更と速度変更の開始、終了タイミングを合わせる従来技術の説明図である。
【符号の説明】
1 圧延材
2 圧延ワークロール
3 バックアップロール
4 自動板厚制御装置(AGC)
5 主機ロール回転駆動モータ
6 主機速度制御装置
7 板厚制御系動特性補償器
8 速度制御系動特性補償器
9 走間板厚変更設定装置
【発明の属する技術分野】
本発明は熱間連続圧延機における走間板厚変更方法に関し、特に板厚変更応答の動特性と速度変更応答の動特性の差を補償し、走間板厚変更中のマスフロー変動を抑制する高精度、高安定な走間板厚変更制御方法に関する。
【0002】
【従来技術】
一般に、熱間連続圧延機において圧延材の走間板厚変更を行う際には、圧延前に圧延設備の能力、圧延材のサイズ、圧延温度などから走間板厚変更前後の各スタンドにおける出側板厚、ロールギャップ、圧延荷重、圧延速度などを求めておき、圧延材の板厚変更開始点が各スタンドに到達した時点で、圧下位置及びロール速度を順次変更することにより変更前の圧延スケジュールから変更後の圧延スケジュールに変更して、圧延中に異なる板厚の製品を製造する。特開昭56−114509号公報、特開昭56−114510号公報および特開昭56−114511号公報で開示された方法では、板厚は自動板厚制御装置(AGC)により制御するものであるが、板厚(つまり圧下位置)とロール速度を同じタイミングで変更している。しかし、図7に示すように、一般に、圧下系(電動圧下、または油圧圧下)の応答とロール速度系の応答は1次遅れに近似できるが、その応答の速さはそれぞれ相異し、同じタイミングで変更指令を出力しても同じ応答にならず、マスフローの乱れが生じてしまう。このような圧下系と速度系の応答の違いから生じるマスフロー変動をできるだけ抑制するため種々な対策が提案されている。
【0003】
例えば、特公昭63−52963号公報では、図8に示すように、圧下位置変更時間の中心点とロール速度変更時間の中心点を合せる方法を提案している。
【0004】
特開平06−170423号公報では、図9に示すように、圧下位置及びロール速度の変更指令タイミングにずれを設けることにより設定変更中のマスフロー変動を抑制する方法を提案している。
【0005】
また特開平10−249423号公報では、図10に見られるように、圧下位置変更の終了時間をロール速度変更の終了時間とを一致させるような方法を提案している。実施の具体方法として、図10(a)のように、圧下系と速度系のうち応答の速い方の指令値を応答の遅い方と同じタイミングで終了するように数段分けて出力するか、また、図10(b)のように、応答の速い制御系の目標指令値を1次遅れのフィルタを通すことにより応答の遅い制御系の変更終了時間とを合わせるようにしている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、圧下位置変更とロール速度変更の応答にダイナミック的な違いがあるにも係わらず、前記のいずれの方法においても、圧下変更と速度変更の開始タイミングをずらすか、変更時間の中心点を合わせるか、また、変更の開始、終了時間を合わせるなどの方法を取っており、変更中のダイナミック的な補償は考慮していない問題点が存在する。例えば、特開平10−249423号公報(図10c)の方法では、応答の速い制御系の目標値をフィルタを通して出力するようにして、応答の遅い制御系の変更終了時間とを合わせるようにしている。ロール速度制御系は、通常(1)式のような1次の遅れ系であり、また圧下位置制御系は、応答の速い油圧圧下スタンドの場合、通常(2)式のような2次系となっている。
【0007】
【数1】
【0008】
【数2】
【0009】
この2つの制御系の応答を同じようにするには2次か、2次以上の制御系にしなければならない。しかし、前記の従来方法は応答の速い油圧圧下系に更にフィルタを挿入して遅らせているので、結局、圧下位置制御系の応答は2次以上の遅れ系となり、この2つの制御系の次数は異なるため、たとえ両制御系の応答の開始と終了時間を合わせても、応答の動的な特性を一致できない。
【0010】
一方、走間板厚変更の開始点から終了点までの変更部分は製品仕様外のオフゲージとなり、このオフゲージ長を極力短くすることは圧延の歩留向上に対して重要である。しかし、前記従来技術のいずれの方法においても、圧下系もしくは速度系の応答の遅い方に変更時間を合わせるので、板厚変更のオフゲージ長は応答の遅い方によって決めてしまい、オフゲージ長をそれほど短くすることはできない問題が存在する。
【0011】
本発明は、上記説明した従来技術の問題点すなわち板厚変更中の動特性補償問題、及び変更オフゲージ長が短く設定できない問題を解決することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記の課題は次の発明により解決される。
本発明の請求項1に係わる発明は、圧延ロールの出側板厚を制御する自動板厚制御装置及びロールの回転速度を制御する速度制御装置を備えた熱間連続圧延機で、圧延材を圧延しながら、前記板厚制御装置の目標設定値及び前記速度制御装置の目標設定値を変更することにより、圧延機出側板厚を圧延中に変更する走間板厚変更制御において、
走間板厚変更設定装置を備え、板厚制御系及びロール速度制御系のいずれか、または、両方に動特性補償器を設け、板厚変更応答とロール速度変更応答の動特性の差がなくなるように補償し、板厚変更実績と速度変更実績の動特性を完全に一致させることを特徴とする熱間連続圧延機の走間板厚変更方法である。
本発明の請求項2に係わる発明は、連続圧延機の全てのスタンドにおいて、前記動特性補償器をそれぞれ設け、全スタンドの板厚変更実績及びロール速度変更実績の動特性を完全に一致させることを特徴とする請求項1記載の熱間連続圧延機の走間板厚変更方法である。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、図面を示しながら、本発明の詳細を説明する。図1は本発明の実施の形態を示す走間板厚変更制御系の構成図である。図中において、1は圧延材、2は圧延ワークロール、3はバックアップロール、4は自動板厚制御装置(AGC)、5は主機ロール回転駆動モータ、6は主機速度制御装置、7は本発明が提案する板厚制御系動特性補償器、8は本発明が提案する速度制御系動特性補償器、9は走間板厚変更設定装置である。
【0014】
図1では本発明の走間板厚変更方法を単一スタンドにおいて、その実施の形態を説明するが、連続圧延機の他のスタンドにおいて同じように考えることができる。本発明の走間板厚変更方法は、変更点が当該スタンドに到達するとき、板厚変更指令を出力して板厚の変更を行うと同時に、板厚変更によるマスフロー変動抑制のため、当該スタンド及び当該スタンドより上流側、あるいは下流側スタンドのワークロール速度変更も実施する。図1の単一スタンドにおいて、従来、走間板厚変更設定装置9は変更前後圧延材のスケジュールから各スタンドの板厚変更量及び速度変更量(以降、変更目標値と呼ぶ)を計算し、板厚変更を行う際、板厚変更目標値をランプ状(または、ステップ状)に自動板厚制御装置4に出力し、AGC動作によりロール間のギャップ開度を変更する。それと同時に、速度変更目標値をランプ状(または、ステップ状)に速度制御装置6に出力し、主機モータ5の回転速度を調整することによりワークロールの速度を変更する。上記の変更においては、変更過程中時々刻々の板厚変更実績に応じて、圧下変更量によるマスフロー変化分を吸収できるように速度を変更できれば、マスフローの乱れは生じることなく、安定な板厚変更ができる。しかし、後述のように、板厚制御系と速度制御系の応答は異なるため、前記従来技術のいずれの方法で変更目標値を出力しても板厚制御系と速度制御系の応答のダイナミックス差を補償できず、マスフローの乱れは生じてしまう。この問題を解決するため、本発明は図1に示すように、自動板厚制御装置と速度制御装置の入力端にそれぞれ動特性補償器を設置する。これらの動特性補償器は同じような板厚変更目標パターン及び速度変更目標パターンに対して、板厚制御系と速度制御系の応答のダイナミックス差を補償し、板厚と速度の変更実績を一致するように変更の指令値パターンを作成して出力する。このように動特性補償器を設置することにより、板厚制御系と速度制御系(当該スタンド及び上流側、あるいは下流側スタンド)の応答のダイナミックスを一致させ、安定、かつ高精度な走間板厚変更ができる。
【0015】
動特性補償器の構成及び設計方法は、板厚及びロール速度の指令から実績までの応答動特性を完全に一致することができれば、どのように構成及び設計してもよい。例えば、フィードフォワード制御器として動特性補償器を構成してもよいし、フィードフォワード制御器+フィードバック制御器で動特性補償器を構成してもよい。次に、動特性補償器構成の一例を説明する。
【0016】
図2は、自動板厚制御系AGC(図1の4)の構成を示すブロック線図である。図中の記号の意味を以下の(3)式に示すが、制御系自身は一般公知であるのでここではその説明を省略する。
【0017】
【数3】
【0018】
図2中AGCの積分制御の有無によって制御系の応答は違ってくる。積分制御が無い場合、制御系の応答は式(4)の1次遅れで近似でき、積分制御がある場合、制御系の応答は式(5)の2次系で表現できる。
【0019】
【数4】
【0020】
【数5】
【0021】
式中、は板厚制御系の時定数であり、は定数係数である。
一方、主機速度制御系の応答は、一般的に(6)式で1次遅れで近似する。
【0022】
【数6】
【0023】
ここで、は速度制御系の時定数である。前記板厚制御系と速度制御系において、同じようなパターンで変更する目標値ΔhM=ΔVMに対して、その応答は一致にならない。
【0024】
【数7】
【0025】
図4に、同じランプ状な目標指令に対する板厚変更応答と速度変更応答の実績を示す。これは速度系の応答は板厚系の応答より速い例であり、板厚変更実績と速度変更実績は一致しておらず、マスフローの変動を起こしている。
【0026】
図3は本発明の動特性補償器の一例を示すブロック線図であり、板厚制御系は2次系の場合の例を示している。2次系の板厚制御と1次系の速度制御の応答を一致させるためには、この2つの制御系の応答を同じような2次遅れ系となるように補償器を設計すればよい。よって、板厚制御系と速度制御系の動特性補償器は式(8)、(9)のように選ぶ。
【0027】
【数8】
【0028】
【数9】
【0029】
ここで、k1、k2は補償器の設計パラメータである。図3に示すように、このような動特性補償器を設置することにより、板厚制御系と速度制御系の目標値から実績までの応答ダイナミックスは完全一致となり、その応答は次式で記述される。
【0030】
【数10】
【0031】
この応答は元の制御系の応答と関係なく、補償器の設計パラメータk1、k2の指定により唯一決定されるので、k1、k2を適当に選択すれば色々な目的に対応できる補償器が得られる。
k2<ε;k2≪k1(εは小さい正数)とすれば、応答を近似1次遅れとして指定できる
AGCに積分器が無い場合、k2=0とし、補償器を1次遅れの全域通過フィルタとして(11)式のように設計できる
【0032】
【数11】
【0033】
前記全域通過フィルタの設計で、k1を適当に選択することにより設備能力の範囲内において応答の速さを任意に指定でき、走間板厚変更のオフゲージ長を短くすることができる
【0034】
【数12】
【0035】
Tlimitは圧延機全スタンドの圧下と速度系の中で設備最大能力で決めた最小応答時定数である。
【0036】
また、これまで単一スタンドにおいて動特性補償器を適用した走間板厚変更方法を説明したが、その方法は連続圧延機の全スタンドに適用することで、圧延機全スタンドの変更応答を同じように設定することができる。
【0037】
【実施例】
本発明の走間板厚変更方法を単一スタンドに実施する場合の構成例を図1に示す。本発明の動特性補償器が無い場合の走間板厚変更応答を図4に示し、本発明の動特性補償器がある場合の走間板厚変更応答を図5、図6に示す。
【0038】
図4では、0.5秒間で1となるランプ状な変更目標値に対して、板厚制御系と速度制御系の応答実績がそれぞれ違い、マスフロー変動が生じている。また、板厚変更実績は目標値より行き過ぎており、その応答の速さも速度変更実績より遅い。
【0039】
本発明の走間板厚変更方法では、図1のように、板厚制御系及び速度制御系にそれぞれ動特性補償器を挿入し、走間板厚変更設定装置からの板厚変更目標値及び速度変更目標値を処理し、得られた板厚変更パターンと速度変更パターンを板厚制御系と速度制御系の指令として出力する。このように変更パターンを修正することにより板厚制御系と速度制御系の応答ダイナミックス差が補償され、板厚及びワークロール速度は予定通りに同じ応答で変更される。
【0040】
図5は本発明の方法を実施し、板厚系と速度系の応答を近似1次遅れ系として、その応答の速さを応答の速いロール速度制御系(実績が目標になる時間は2.5秒)に合せた実施結果である。0.5秒間で1となるランプ状な板厚変更目標値hM及び速度変更目標値VMに対して、動特性補償器で変更パターンを計算し、板厚変更指令はhrefとなり、速度変更指令はVrefとなる。その変更指令に応じて板厚制御装置は圧下位置を変更し、主機速度制御装置はワークロールの速度を変更する。その結果、板厚変更の実績と速度変更の実績は完全に一致しており、速度制御系に近い1次遅れの応答となっている。
【0041】
図6は本発明の方法を実施し、板厚系と速度系の応答を近似1次遅れ系として、応答の速い速度制御系の応答よりも速く整定できるように補償器を設計した実施結果である。0.5秒間で1となるランプ状な板厚変更目標値hM及び速度変更目標値VMに対して、動特性補償器で変更パターンを計算し、板厚変更指令はhrefとなり、速度変更指令はVrefとなる。その変更指令に応じて板厚制御装置は出側板厚を変更し、主機速度制御装置はワークロールの速度を変更する。その結果、板厚変更の実績と速度変更の実績は完全に一致し、応答の速さはロール速度制御系の2.5秒よりも速くなり、変更実績が目標となる整定時間は1.5秒と短くなる。
【0042】
【発明の効果】
本発明によって板厚制御系と速度制御系の応答の動的違いを補償し、板厚変更と速度変更の実績を希望の応答に一致させ、板厚変更中の圧下と速度応答差に起因するマスフロー変動を抑制することで、高精度、高安定な走間板厚変更を実現できる。
【0043】
また、動特性補償器のパラメータを調整することにより板厚変更及び速度変更の応答動特性を希望通りに指定でき、従来以上の応答速度を得ることで板厚変更オフゲージ長をより短く設定できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の走間板厚変更制御方法を単一スタンドに実施する構成図である。
【図2】自動板厚制御系(AGC)構成のブロック線図である。
【図3】本発明の動特性補償器の設計例の説明図である。
【図4】本発明の制御方法を実施しない場合の板厚変更と速度変更の応答結果である。
【図5】本発明の制御方法を実施し、応答を速度制御系に合せる場合の板厚変更と速度変更の応答結果である。
【図6】本発明の制御方法を実施し、応答を速度制御系より速くした場合の板厚変更と速度変更の応答結果である。
【図7】板厚制御系と速度制御系の応答差の説明図である。
【図8】圧下変更時間と速度変更時間の中心点を合せる従来技術の説明図である。
【図9】圧下変更開始タイミングと速度変更開始タイミングをずらす従来技術の説明図である。
【図10】圧下変更と速度変更の開始、終了タイミングを合わせる従来技術の説明図である。
【符号の説明】
1 圧延材
2 圧延ワークロール
3 バックアップロール
4 自動板厚制御装置(AGC)
5 主機ロール回転駆動モータ
6 主機速度制御装置
7 板厚制御系動特性補償器
8 速度制御系動特性補償器
9 走間板厚変更設定装置
Claims (2)
- 圧延ロールの出側板厚を制御する自動板厚制御装置及びロールの回転速度を制御する速度制御装置を備えた熱間連続圧延機で、圧延材を圧延しながら、前記板厚制御装置の目標設定値及び前記速度制御装置の目標設定値を変更することにより、圧延機出側板厚を圧延中に変更する走間板厚変更制御において、
走間板厚変更設定装置を備え、板厚制御系及びロール速度制御系のいずれか、または、両方に動特性補償器を設け、板厚変更応答とロール速度変更応答の動特性の差がなくなるように補償し、板厚変更実績と速度変更実績の動特性を完全に一致させることを特徴とする熱間連続圧延機の走間板厚変更方法。 - 連続圧延機の全てのスタンドにおいて、前記動特性補償器をそれぞれ設け、全スタンドの板厚変更実績及びロール速度変更実績の動特性を完全に一致させることを特徴とする請求項1記載の熱間連続圧延機の走間板厚変更方法。
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