JP3774060B2 - 可変動弁機構 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関のクランク軸と同期回転可能な回転伝達部材に対するカムシャフトの回転位相を油圧により可変調整する可変動弁機構に関する。
【0002】
【関連する背景技術】
油圧ベーン式カム位相可変装置は、クランク軸と同期回転する回転伝達部材と一体回転可能な収容部材と、この収容部材内に収容されたベーンを有しカムシャフトと一体回転可能なベーン部材とを含み、ベーンと収容部材との間に形成された油室に対して圧油を給排することによりカム位相を変化させて吸気弁と排気弁とのバルブオーバラップ期間を可変調整するもので、エンジン始動性やエンジン出力の向上に寄与する。油圧ベーン式カム位相可変装置には、比較的廉価に製造可能であるという利点がある一方で、エンジン始動時にカム位相が変動するという欠点がある。
【0003】
すなわち、エンジンの運転停止に伴ってカム位相可変装置の油室への圧油供給が停止すると、エンジン上部に位置する油室内の圧油がシリンダヘッド内へ抜け、圧油を介するベーンと収容部材との結合が解除され、ベーンは収容部材内で自由に回転可能になる。この様な状態でのエンジン始動中、吸気弁または排気弁の開弁から最大リフトまでの期間ではカム回転を抑制する負の駆動トルクがカムを介してカムシャフトに加わり、最大リフトから閉弁までの期間ではカム回転を促進する正の駆動トルクがカムシャフトに加わる。この結果、圧油による拘束のないベーンが収容部材内で移動してカム位相が変動し、失火が発生し易くなる。
【0004】
駆動トルクによるカム位相ずれを防止するため、特開平9−60508号公報に記載のバルブタイミング調整装置は、この公報に記載の参照符号を付して説明すれば、チェーンスプロケット1及びフロントプレート4と共にハウジング部材を構成するシューハウジング3と、このシューハウジングのシュー3a、3bにより形成された扇状空間部に収容されたベーン9a、9bを有するベーンロータ9と、ベーンロータを最遅角位置にロックするロック機構とを有している。
【0005】
ロック機構は、一方のベーン9aに形成した収容孔8に収容される大径部とフロントプレート4に形成したストッパ穴20に嵌合する小径部とからなるストッパピストン7と、収容孔内に配されピストン7をフロントプレート側へ付勢するスプリング18と、ピストン小径部とベーン内壁との間に介在するガイドリング19とを有し、ベーンロータ及びフロントプレートにそれぞれ形成され遅角油圧室及び進角油圧室にそれぞれ連通する油圧室23、24への圧油供給がなくかつベーンが最遅角位置にあるときにスプリング18の付勢力によりピストン7をストッパ穴20に嵌合させ、いずれかの油圧室に圧油が供給されるとピストンをストッパ穴から離脱させるようになっている。
【0006】
上記のロック機構は、ロック用のスプリングに加えてロック解除用の2つの油圧室、両油圧室への2系統の圧油供給系および両油圧室を区分するガイドリングを設ける必要があるので、ベーン厚さが厚くなったりベーンを鉄系材料などで構成して強度を増大する必要が生じ、装置寸法やベーンロータ回転慣性が大きくなる。また、装置組立時にはスプリングの付勢力に抗してストッパピストンを押し込めなければならず、組立作業性が悪くなる。
【0007】
上記従来装置における問題点を解消するべく、本出願人は、特願平10−10594号において、ロックピンやストッパピストンなどの可動体をロック方向へ付勢するスプリングやロック解除用の複数系統の圧油供給系を用いずに、ベーン部材のロック及びロック解除を行い、機関運転停止中に油室からの油抜けが生じた場合にもロック状態を維持して次回の機関始動時の失火発生を防止する可変動弁機構を提案した。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記提案に係る可変動弁機構を装備した内燃機関をその最終検査工程などにおいて初めて運転する場合の機関始動を円滑に行うべく、可変動弁機構は、可動体がロック穴に嵌入したロック状態を確立するように組み立てられる。
この可変動弁機構は、内燃機関を一旦運転した後では機関運転が停止される度にロック状態を自動的に確立するものの、初回運転前にあっては、内燃機関への取付けのため可変動弁機構組立ラインから内燃機関組立ラインへ搬送され、また、内燃機関への装着後の検査のため内燃機関組立ラインから検査ラインへ搬送される間に、可変動弁機構に対して振動が加えられたり種々の姿勢に配置されて、ロック状態が不本意に解除されるおそれがある。そして、ロック状態が解除された場合、このロック解除状態を放置したままで可変動弁機構を内燃機関に装着すると、内燃機関の初回運転時にその始動性が損なわれることになる。この様な不具合を解消するために、内燃機関への装着の前後においてロック機構がロック状態にあるか否かを検査したり一旦解除されたロック状態に復帰させるには、時間と労力を要する。
【0009】
本発明の目的は、上記提案のタイプの可変動弁機構をそのロック機構がロック状態になるように組み立てた後における振動印加などによる不本意なロック解除を確実に防止する可変動弁機構を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の可変動弁機構は、内燃機関のクランク軸から回転力が伝達される回転伝達部材と一体回転可能な収容部材と、収容部材内に配されたベーン部を有すると共にカムシャフトと一体回転可能かつ収容部材に対して相対回転可能なベーン部材と、遅角側油室への圧油供給によりベーン部材が所定遅角位置まで回転したときに可動体をロック穴に嵌入させる一方、進角側油室への油圧供給により可動体をロック穴から離脱させるロック機構と、可動体のロック穴からの離脱を抑制する離脱抑制手段とを備え、この離脱抑制手段が内燃機関を初めて運転するまでの間において上記ロック機構のロック状態が不本意に解除されず上記可動体の上記ロック穴からの離脱を防止するに足る摩擦力または粘着力を利用して上記可動体の上記ロック穴からの離脱を抑制する手段のみで構成されていることを特徴とする。
【0011】
本発明の可変動弁機構では、そのロック機構がロック状態になるように組み立てると、離脱抑制手段によってロック状態の解除が抑制されてロック状態が良好に維持される。このため、可変動弁機構の組立後から可変動弁機構を装着した内燃機関を初めて運転するまでの間に、可変動弁機構に振動が加えられたり、或いは、種々の姿勢をとるように可変動弁機構が配置された場合にも、ロック機構のロック状態が不本意に解除されることがない。このため、内燃機関への可変動弁機構の装着前後においてロック機構がロック状態にあるか否かを確認する作業が不要になるので可変動弁機構の検査が簡略になり、また、内燃機関の初回運転における始動性が良く、内燃機関の検査効率および生産効率が向上する。
【0012】
本発明において、離脱抑制手段は種々に構成される。
例えば、離脱抑制手段は、摩擦力を利用してロック穴からの可動体の離脱を抑制するもので良い。この種の離脱抑制手段は、例えば、可動体の外周面あるいは収容部材またはベーン部材の対向周面に形成された環状溝と、この環状溝に配された環状部材とから構成される。環状部材は、C形あるいはO形の弾性リングで構成するのが好ましく、この場合、環状部材は弾発力を備えて環状溝への装着性が良く、また、環状溝から離脱しにくくなる。環状部材は、ゴム材料や樹脂材料などにより構成可能である。離脱抑制手段は、可変動弁機構の組立後から内燃機関の初回運転時までの短い期間においてロック状態解除を抑制する作用を奏するもので良い。例えば、離脱抑制手段を摩耗し易い材料で構成した場合、内燃機関の運転回数が増えるにつれて離脱抑制手段が摩耗してロック方向およびロック解除方向への可動体の移動が円滑に行われるようになる。可動体あるいは収容部材またはベーン部材に形成される環状溝は、可動体の移動位置にかかわらず、収容部材またはベーン部材あるいは可動体と対向するような長手方向位置領域に形成される。好ましくは、環状溝は、ロック穴と反対側の長手方向位置領域に形成される。ロック穴に近接した側の可動体部分は、環状溝が形成されず、従って、強度低下を来さず、ロック状態が確立された状態での機関運転時に加わる回転トルクに良く耐える。
【0013】
離脱抑制手段は、粘着力を利用してロック穴からの可動体の離脱を抑制するものであっても良い。この種の離脱抑制手段は、例えば、可動体の外周面あるいは収容部材またはベーン部材の対向周面に形成された環状溝と、この環状溝内に充填された粘着材とから構成される。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態による可変動弁機構としてのベーン式カム位相可変装置を説明する。
本実施形態のカム位相可変装置は、DOHCエンジンの吸気側カムシャフトに付設されて排気弁に対する吸気弁のオーバラップ量を可変制御するもので、以下の説明では吸気弁側の構成を主に説明する。但し、本装置は、エンジンの排気側または吸排気側の双方に配設可能である。
【0015】
図1において、DOHCエンジンのシリンダヘッドとその上方に配されたロッカーカバー2との接合部位には、吸気側のカムシャフト10を回転自在に支持するカムジャーナル15が設けられている。カムシャフト10には、ロッカアームを介して吸気弁に当接するカム4が形成され、カムシャフトの回転につれて吸気弁が開閉するようになっている。
【0016】
エンジンのクランク軸は、図示しない回転力伝達要素(例えば合成樹脂製の歯付きベルト)を介して吸気側の回転伝達部材(例えばカムプーリ20)に連結されている。カムプーリ20は、円板状の主体部22と、歯付きベルトと噛み合う歯付きフランジ24と、カムシャフト10の端部に外嵌されたボス部26とを有している。図2中、参照符号20aは、クランク軸に対するカムシャフト10の位相差決めに供されるマークを示し、22aは、軽量化のためにカムプーリ主体部22の外周側に形成される溝孔を表す。
【0017】
カムプーリ20のボス部26及びカムジャーナル15の対向周面間には、オイルシール17が配されている。カムシャフト10回りの潤滑などに用いられた油は、カムジャーナル15の油路15cを介してエンジン内部に戻される。
カム位相可変装置は、ボルト23(図4)によりカムプーリ主体部22の外方端面に固定されてカムプーリ20と一体回転可能なベーンハウジング(収容部材)30と、ボルト14によりカムシャフト10の端面に固定されてカムシャフト10と一体に回転可能なベーンロータ(ベーン部材)40とを有している。
【0018】
カムプーリ20は、カムシャフト10に対して相対回転可能にされ、ベーンロータ40は、ハウジング30の内部において所定角度範囲内で回動可能になっている。
詳しくは、ベーンロータ40は、円筒状の主体部42と、ロータ主体部42の周面に等角度間隔で設けられた例えば4つのベーン44とを有している(図2)。ベーン44は、ベーンロータ主体部42から半径方向外方へ延び、縦断面でみて先細形状に形成されている。ロータ主体部42のピン穴42bとこれに整合してカムシャフト10に形成したピン孔とに配されるピン8により、カムシャフト10に対してベーンロータ40が位置決めされている。
【0019】
ベーンハウジング30は、ハウジング本体32とハウジング端壁34とを有している。ハウジング本体32はベーン数と同数の周壁部32aを有し、各ハウジング周壁部32aから一対の隔壁32b、32cが延びている。ベーンロータ周方向に相隣る隔壁32c同士は隔壁結合部32dを介して結合され、隔壁結合部32dの内周面はベーンロータ主体部42の外周面に摺接してベーンロータ40を回転自在に支持している。隔壁結合部32dには、ボルト23が挿通するボルト孔23aが形成されている。
【0020】
ベーンハウジング30の各対の隔壁32b、32cは、ハウジング端壁34及びカムプーリ主体部22と協働してベーン44を収容するベーン収容室を画成している。換言すれば、カムプーリ主体部22は、ハウジング要素32及び34と共に収容部材を構成している。ベーン44とハウジング周壁部32aとの間に配されたシール49とベーン44とにより、ベーン収容室は、進角側油室47と遅角側油室48との2つに区分されている。
【0021】
次に、油室47、48に対する圧油の給排について説明する。
図1に示すように、カムジャーナル15には、カムシャフト軸線に略直交して第1及び第2油路15a、15bが形成されている。油路15a、15bは、オイルコントロールバルブ(OCV)50の第1及び第2出口ポート51、52にそれぞれ連通している。OCV50の第1入口ポート53は、油タンク60からの油を加圧する油ポンプ62に連通する油供給パイプ63に接続され、第2入口ポート54はリターンパイプ64に接続されている。第1油路15aは遅角側油室47に連通しており、OCV50が図1に示す遅角位置50aをとったとき、遅角側油室48に圧油が供給されるようになっている。一方、OCV50が進角位置50bをとったとき、進角側油室47への圧油供給が行われる。また、OCV50が中立位置50cをとると、回転位相が維持される。即ち、OCVは、油ポンプ62等と共にベーンロータ40を油圧により遅角側または進角側へ回転させる油圧供給手段を構成している。
【0022】
第1及び第2油路15a、15bの内方端は、カムシャフト10の周面に形成された第1及び第2環状溝11a、11bにそれぞれ開口している。カムシャフト10には、第1環状溝11aからカムシャフト軸線の手前まで延びる第1半径方向孔12aと、第2環状溝11bからカムシャフト軸線まで延びる第2半径方向孔12bとが形成されている。孔12aはベーン数と同数設けられている。カムシャフト10の回転位置にかかわらず、孔12aは第1環状溝11aに連通し、孔12bは第2環状溝11bに連通する。また、カムシャフト10には、孔12a、12bの内方端からカムシャフト端面まで延びる第1及び第2長手方向孔13a、13bが形成されている。孔13bはカムシャフト軸線上に一つ設けられ、孔13aはカムシャフト軸線から偏倚した半径方向位置においてベーン数と同数設けられている。
【0023】
第2長手方向孔13bは、孔12bに連通する小径部と、中空ボルト14が螺着される大径部とを有している。ボルト14は、ベーンロータ主体部42に同軸に形成された段付き貫通孔42a内に配されている。ボルト中空部14aは、ベーンロータ主体部42とハウジング端壁34のネジ孔35に螺着されたボルト36とボルト14とにより画成される油路41に連通している(図1)。
【0024】
油室47,48への圧油給排経路に関連して、ロータ主体部42には、カムシャフト10の4つの孔13aに整合した4つの短い第1長手方向孔45aと、これらの孔45aにそれぞれ対応する4つの第1半径方向孔46aとが形成されている(図1)。孔46aの外方端は、ベーン44の根元付近でロータ主体部42の外周面に開口して遅角側油室48に連通している。
【0025】
また、第1半径方向孔46aに関して反カムシャフト側に偏倚したベーンロータ厚さ方向位置において、ベーンロータ主体部42には第2半径方向孔46bが形成されている。孔46bの内方端は、ボルト14に関して反カムシャフト側のカムシャフト軸線方向位置において、段付き貫通孔42aの大径部に開口し、孔46bの外方端はベーン44の根元付近においてロータ主体部42の外周面に開口して進角側油室47に連通している。
【0026】
上記の環状溝、半径方向孔および長手方向孔は、油路15aまたは15bと油室48または47とを連通させる遅角側油路または進角側油路を構成している。
カム位相可変装置は、ベーン44を最遅角側回転位置にロックするためのロック機構を有している。図2及び図3に示すように、本実施形態の装置は、ベーン数と同数のロック機構を有している。各ロック機構のロックピン(可動体)70は、ベーン厚さ方向にベーン44を貫通して形成されたロックピン孔44a内に移動自在に配されている。
【0027】
ロックピン70は、図5に示すように、進角側油室47への圧油供給によりカムプーリ主体部22側(ロック解除方向)へ移動する一方、遅角側油室48への圧油供給によりハウジング端壁34側(ロック方向)へ移動するようにされている。そして、ロックピン70が最遅角側回転位置付近まで移動したとき、ロックピン70のカムプーリ主体部側の先端部70aが、カムプーリ主体部22の対向端面に形成されたロック穴22bに嵌入してロックピン70がロックされるようになっている。
【0028】
進角側油室47からロックピン70への圧油印加のため、各ベーン44のカムプーリ主体部22側の端面には、第1油通路44cが形成されている。進角側油室47からのロック解除用の圧油は、第1油通路44cを介してロックピン70のカムプーリ主体部22側の先端部70aの受圧面に加えられ、ロックピン70をロック解除方向へ移動させるように作用する。
【0029】
遅角室側油室48からロックピン70への圧油印加のため、各ベーン44のハウジング端壁34側の端面には第2油通路44dが形成されている。遅角側油室48からのロック用の圧油は、第2油通路44dを介してロックピン70のハウジング端壁34側の基端部70bの受圧面に加えられ、ロックピン70をロック方向へ移動させるように作用する。
【0030】
カム位相可変装置は、ロック穴からのロックピン70の離脱を抑制する離脱抑制手段を備えている。本実施形態の離脱抑制手段は、図8および図9に示すように、ロックピン70の外周面に形成された環状溝71と、この環状溝71に配され平面視C形あるいはO形の弾性リング72とから構成されている(図3および図6では要素71,72の図示は省略されている)。この弾性リング72は、たとえばゴム材料や樹脂材料からなる。弾性リング72は、弾発力を備えて環状溝71への装着性が良く、また、一旦装着されると環状溝71から離脱しにくい。環状溝71は、ロックピン70の移動位置にかかわらず、ベーン44に形成されたロックピン孔44aの周面に常に対向するような長手方向位置領域にされる。本実施形態では、環状溝71は、ロック穴22bと反対側の長手方向位置領域(基端部70b側領域)に形成されている。
【0031】
弾性リング72を環状溝71内に備えたカム位相可変装置は、そのロック機構がロック状態になるように組み立てると(図9)、弾性リング72によってロック状態の解除が抑制されてロック状態が良好に維持される。すなわち、ベーン44に形成されたロック穴22bにロックピン70の先端部70aが嵌入した状態にカム位相可変装置を組み立てたときからエンジンの初回運転までの間に同装置への振動印加などによってロックピン先端部70aがロック穴22bから離脱しようとしたとき、弾性リング72は、ロックピン70の外周面とベーン44のロックピン孔形成面との間にロックピン70の離脱を防止するに足る摩擦力を発生させる。その一方で、油通路44cまたは44dへの圧油供給に伴うロックピン70のロック解除方向移動またはロック方向移動は、弾性リング72の摩擦力により阻害されず、ロックピン70は円滑に移動する(図8および図9)。
【0032】
環状溝71はロックピン70の基端部70b側に形成され、換言すれば、ロックピン70の、ロック穴22bに近接した側の部分70aは、環状溝71が形成されていないので強度低下を来さない。このため、ロックピン70、特に、ロックピン先端部70aは、ロック状態が確立された状態でエンジンが回転したとき(エンジン始動時)に回転トルクを担うが、このときのせん断荷重や曲げ荷重に良く耐える。
【0033】
好ましくは、弾性リング72は摩耗し易い材料で構成され、カム位相可変装置の組立後から初回エンジン運転時までにおけるロック穴22bからのロックピン70の離脱を抑制し、その後はエンジン運転の度に徐々に摩耗してロックピン70のロック方向およびロック解除方向への移動が円滑になる。
以下、上記構成のカム位相可変装置の作用を説明する。
【0034】
エンジン運転中、エンジン回転数が略一定であって現在のカム位相が適正であれば、オイルコントロールバルブ50は中立位置50cに保持され、カム位相が維持された状態で、クランク軸の回転に同期してカムプーリ20、ベーンハウジング30、ベーンロータ40及びカムシャフト10が回転し、カム4により吸気弁が開閉される。
【0035】
エンジン回転が上昇すると、オイルコントロールバルブ50は進角位置50bに切り換えられ、油ポンプ62からの圧油は、カムジャーナル15の油路15b等を介してボルト14の中空部14aへ流入し、更に、油路41等を介して進角側油室47に供給される。油室47への圧油供給により、ベーン44は遅角側油室48内の油を排出しつつベーンハウジング30のベーン収容室内で進角方向へ移動し、カム位相が進角される。
【0036】
進角方向へのベーン44の移動中、遅角側油室48内の油は、ベーンロータ主体部42の孔46a、45a等やオイルコントロールバルブ50を介してシリンダヘッド内へ排出され、油タンク60へ戻る。
また、上記のように進角側油室47へ圧油が供給されると、ベーン44の油通路44cを介して油室47からロックピン先端部70aの受圧面に圧油が供給され、ロックピン70をロック解除方向へ付勢する。このとき、ロックピン70は既にロック解除状態にあるので、このロック解除状態が維持される(図2)。
【0037】
エンジン回転が低下すると、オイルコントロールバルブ50は、図1に示す遅角位置50aに切り換えられ、油ポンプ62からの圧油は遅角側油室48に供給される。油室48への圧油供給により、ベーン44は進角側油室47内の油を排出しつつベーンハウジング30のベーン収容室内で遅角方向へ移動し、カム位相が遅角される。
【0038】
また、遅角側油室48への圧油供給時、ベーン44の油通路44dを介して油室48からロックピン基端部70bの受圧面に圧油が供給され、ロックピン70をロック方向へ付勢するが、通常はロックピン70はロック穴22bと整合しておらず、ロックピン70はロック解除状態に維持される(図2)。
エンジンを運転停止させる直前でのアイドル運転中、図1に示す遅角位置にあるオイルコントロールバルブ50を介して油ポンプ62から遅角側油室48へ圧油が供給され、ロックピン70はロック穴22bに略整合する。このとき、油室48からロックピン基端部70bの受圧面に圧油が供給されているので、ロックピン70がロック方向へ付勢されており、ロックピン70はロック穴22bに嵌入し、ベーン44が最遅角位置にロックされる(図6および図7)。
【0039】
エンジンが運転停止状態にある間、ロックピン70はロック穴22bに嵌入したままであり(図6および図7)、ベーン44は最遅角位置にロックされている。次のエンジン始動時、ベーン44はエンジン始動に適した最遅角位置にロックされており、エンジンは失火発生を伴うことなく円滑に始動する。
本発明の装置は、実施形態に限定されず、種々に変形可能である。
【0040】
例えば、上記実施形態では、各ベーンにロック機構を設けた4枚ベーン式のカム位相可変装置について説明したが、ベーン数は4枚に限らない。また、ロック機構は少なくとも一つのベーンに設ければ良い。
また、上記実施形態では、ロックピン70の外周面に形成した環状溝71内に弾性リング72を配して、弾性リング72の摩擦力を利用してロック穴22bからのロックピン70の離脱を抑制する場合について説明したが、図10に示すように、ベーン44のロックピン孔形成面側に環状溝71を形成し、これに弾性リング72を配置しても良い。また、摩擦力を利用した離脱抑制手段に代えて、粘着力を利用したものを用いても良い。この種の離脱抑制手段は、例えば、ロックピンの外周面やベーンのロックピン孔形成面に形成された環状溝と、この環状溝内に充填された粘着材とから構成される。
【0041】
【発明の効果】
本発明の可変動弁機構は、そのロック機構がロック状態になるように組み立てられると離脱抑制手段によってロック状態を良好に維持するようにしたので、可変動弁機構の組立後から可変動弁機構を装着した内燃機関の初回運転までの間に可変動弁機構に振動が加えられたり、種々の姿勢をとるように可変動弁機構が配置された場合にも、ロック状態が不本意に解除されることがなく、内燃機関への可変動弁機構の装着前後においてロック機構がロック状態にあるか否かを確認する作業が不要になり、従って、可変動弁機構の検査が簡略になり、また、内燃機関の初回運転における始動性が良く、内燃機関の検査効率および生産効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態によるカム位相可変装置を図2のI−I線に沿って示す断面図である。
【図2】図3のII−II線に沿うカム位相可変装置の横断面図である。
【図3】ロック解除状態のカム位相可変装置を示す、図4のIII−III線に沿う断面図である。
【図4】カム位相可変装置の端面図である。
【図5】図2のV−V線に沿う断面図である。
【図6】カム位相可変装置の断面図である。
【図7】ロック状態のカム位相可変装置を示す、図6のVII−VII線に沿う断面図である。
【図8】弾性リングを収容する環状溝が形成されたロックピンをロック解除状態で示す一部断面部分正面図である。
【図9】弾性リングを収容する環状溝が形成されたロックピンをロック状態で示す一部断面部分正面図である。
【図10】弾性リングを収容する環状溝をベーンに形成した変形例を示す一部断面部分正面図である。
【符号の説明】
4 カム
10 カムシャフト
20 カムプーリ
30 ベーンハウジング
40 ベーンロータ
44 ベーン
47 進角側油室
48 遅角側油室
50 オイルコントロールバルブ
62 油ポンプ
70 ロックピン
71 環状溝
72 弾性リング
Claims (1)
- 内燃機関のクランク軸から回転力が伝達される回転伝達部材と一体回転可能な収容部材と、
上記収容部材内に配されて上記収容部材との間に遅角側油室及び進角側油室を画成するベーン部を有し、上記内燃機関の吸気弁または排気弁の一方を開閉するカム部が形成されたカムシャフトと一体回転可能でかつ上記収容部材に対して相対回転可能なベーン部材と、
上記遅角側油室または上記進角側油室に油圧を供給して上記ベーン部材を上記回転伝達部材に対して遅角側または進角側へ相対回転させる油圧供給手段と、
上記遅角側油室への圧油供給により上記ベーン部材が所定遅角位置まで相対回転したとき上記ベーン部材または上記収容部材に形成した孔に配された可動体を上記収容部材または上記ベーン部材に形成したロック穴に嵌入させ、上記進角側油室への油圧供給により上記可動体を上記ロック穴から離脱させるロック機構と、
上記可動体の上記ロック穴からの離脱を抑制する離脱抑制手段とを備え、
上記離脱抑制手段が、内燃機関を初めて運転するまでの間において上記ロック機構のロック状態が不本意に解除されず上記可動体の上記ロック穴からの離脱を防止するに足る摩擦力または粘着力を利用して上記可動体の上記ロック穴からの離脱を抑制する手段のみで構成されていることを特徴とする可変動弁機構。
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