JP3773990B2 - 歯科用石膏組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、歯科用石膏組成物に関し、詳しくは、賦形の忠実性に優れ表面の平滑な模形をつくることのできる歯科用石膏組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
分子式CaSO4 ・2H2 O、分子量172.18で表される硫酸カルシウムの二水塩は石膏として知られ、柱状または平板状の結晶として天然に産出し、含まれる不純物の程度によって灰色、淡黄色、褐色などを呈する。また天然産以外のいわゆる化学石膏は、化学工業における副産物として大量に得られており、その多くは二水塩で白色固塊または白色粉末(単斜晶系)である。
これらの二水塩は、100〜150℃で熱することによって、一部の結晶水を失い、1/2水塩となる。これを半水石膏または焼き石膏と称する。これに水を加えて放置すれば、二水塩に戻りつつ硬化する。
【0003】
半水石膏は、水と反応して硬化するので、作業性が容易で、さまざまな模型用材料として広く利用されている。特に歯科治療分野においては、口腔内に装着される各種の修復物(義歯ないし補綴物)を作成するための基になる模型材料として、不可欠の基盤材料となっている。
特に歯科用半水石膏は、日本工業標準(JIS)において、T6604歯科用焼き石膏、T6605歯科用硬質石膏の規定がなされている。
【0004】
歯科用石膏に要求される特性は、▲1▼表面平滑性、▲2▼寸法精度、▲3▼機械的強度、▲4▼作業性、▲5▼経時的安定性、▲6▼後加工性、▲7▼気泡混入の排除性などである。
しかし、従来、高度なアルファ型の半水石膏を使用しても、印象材と組み合わせて使用する時は、必ずしも良好な表面平滑性を得ることができなかった。すなわち水性コロイド系印象材の場合は、石膏スラリとの馴染みが十分でなく、硬化後の石膏表面に大小の荒れを生じがちであった。またゴム系印象材の場合は、印象材自体が疎水性のため、水を含む石膏スラリとの適合性が悪く石膏スラリが細部まで行きわたらなかったり、硬化後の石膏表面に多様な荒れ肌を生じることがしばしばあった。
従って斯界においては、各種の印象材に対して馴染みがよく、硬化物が常に良好な表面平滑性をなすような歯科用石膏組成物の開発実現が待望されるところであった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、各種の印象材に対して馴染みがよく、賦形忠実性に優れると共に硬化物の表面の平滑性の優れた歯科用石膏組成物を得ることを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明はかかる課題を解決するためになされたもので、半水石膏100重量部に対して無水カフェイン及びその誘導体、ならびにニコチン酸及びその誘導体から選ばれた1種又は2種以上からなる化合物0.05〜5.0重量部を添加混合してなる歯科用石膏組成物を提供するものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明歯科用石膏組成物は半水石膏が使用される。
半水石膏は、従来から用いられてきた通常のものが何らの制限でなく使用でき、市販品を使用することができるが、二水石膏を60〜150℃に加熱することによって得ることもできる。
特に二水石膏を脱水して得る結晶度の高いアルファ型半水石膏(硬質石膏)が好ましい。
【0008】
本発明の組成物には、石膏の硬化時の凝結作用を促進させるために、主成分の半水石膏100重量部に対して、二水石膏を0.1〜5.0重量部、好ましくは0.5〜2.0重量部の範囲で添加して好結果をもたらすこともできる。
本発明歯科用石膏組成物においては、無水カフェイン及びその誘導体ならびにニコチン酸及びその誘導体からなる群から選ばれた1種又は2種以上を半水石膏100重量部に対して0.05〜5.0重量部、好ましくは、0.1〜4.0重量部添加することを特徴とする。無水カフェインの誘導体としては、塩酸、酢酸等の酸との塩を挙げることができる。
【0009】
また、ニコチン酸の誘導体としては、アミド、塩酸塩、エステル、アニリド、ニトリル等が挙げられる。
添加量が0.05重量部未満では表面を平滑化する効果が少なく、また、5.0重量部を越えると添加量の増加に伴なう効果の上昇が少なく経済的に不利となる。
さらに本発明の組成物には、他の第3の物質として、反応促進剤、反応遅延剤、顔料、香料、消毒剤、抗菌剤などを加えてもよく、第3成分の添加によって、製品化する際に、その作業性、取り扱い性を向上させ、商品価値を一段と高めることができる。
【0010】
本発明の組成物の調製を行なう際には、主成分である半水石膏と、無水カフェイン及びその誘導体ならびにニコチン酸及びその誘導体から選ばれた1種又は2種以上と、他の添加物質などを高速流動型混合機(例えばスーパーミキサーなど)、円錐型スクリュー混合機(例えばナウターミキサーなど)、リボン型混合機、V字形混合機などの高性能混合機によって均一に混合される。
【0011】
もっとも、均一な分散混合が行なわれるならば、これらの混合方法・設備には一向にこだわるものではない。また、混合の順は制限がなく各成分を同時的に混合機内に投入してもよいし、または順次投入してもよい。
本発明品の使用に際しては、本発明の組成物の適当量をラバーボール中に採り、水を加えてヘラなどで手練和してもよいし、より高度には真空撹拌機などを使用して機械練和することによってよりよい結果を得ることができる。水と練和された本発明の組成物は、放置後、所定の時間で凝結・硬化する。
【0012】
歯科用石膏模型を作成するときは、一般に、先ず印象材などの型取り材を用いて原形(患部)の陰型を作り、この陰型中に本発明石膏組成物を流し込んで硬化させて得る。
この場合の印象材としては、寒天、アルジネート系などの水性コロイド系印象材とか、シリコーンゴム、ポリエーテルゴム、ポリサルファイトゴムなどのゴム系印象材などを用いることができる。
【0013】
本発明の歯科用石膏組成物が、各種の印象材に対して、その注入・硬化後に、いかなる作用機構に基づいて表面平滑性に優れ、かつ寸法精度が良好な模型体を実現するかは十分に明らかではない。しかし発明者は、かねてよりアルカロイド系の添加物が石膏スラリの性状を微妙に制御し得る現象を発見しており、水性コロイド系印象材に対しても、あるいはゴム系印象材に対しても馴染みやすく、硬化物の表面平滑性を向上させ、寸法精度を良好たらしめる作用に注目してきた。その過程で、歯科用石膏に対する添加物として、▲1▼無水カフェイン、または無水カフェインの誘導体、▲2▼ニコチン酸、またはニコチン酸の誘導体からなる添加物が、それぞれ最も効果的に作用し、良好な結果をもたらすことを実験的に見出したものである。
【0014】
【実施例】
以下、実施例において、本発明の内容をより具体的に説明し、かつその効果について示す。
各実施例において、試料作成時の混水量はJIS−T6505の試験法に準じて、標準調度に相当する水の量で行なった。また本発明の目的と効果を最も端的に表現する表面粗さについては、測定装置としてミツトヨ社の商品名サーフテスト401を使用し、JIS−B0601で規定されている中心線平均粗さ(Ra)によってデータ化した。
各実施例において、主成分である歯科用硬質石膏粉末には、市販商品ニューダイヤストン(半水石膏99%)を使用した。同製品は次の物性値を有するものである。
【0015】
【表1】
Figure 0003773990
【0016】
各実施例において、印象材には市販のアルジネート系印象材として、市販商品名アルフレックスを使用した。
また、各実施例において、試料の作成および測定方法として、先ず印象材を用いてポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム面(平滑面)の印象を採取しその印象面に石膏組成物の練和物(スラリ)を注入し、室温で60分間放置して硬化した後、得られた石膏硬化体の印象材と接触していた面の表面粗さ(Ra)を、上記の設備によって測定した。
【0017】
各実施例において、本発明の組成物の添加物である無水カフェインおよび無水カフェイン誘導体には、和光純薬工業製の市販試薬特級031−06792を使用した。
各実施例において、本発明の組成物の添加物であるニコチン酸およびニコチン酸誘導体には、和光純薬工業製の試薬特級142−01232を使用した。
【0018】
実施例1
歯科用硬質石膏粉末100重量部に対して無水カフェイン0.1重量部を分散混合したものを練和物(スラリ)として印象面に注入して硬化後、得られた石膏硬化体の表面粗さ(Ra)を測定した結果は次の通りである。
【0019】
【表2】
Figure 0003773990
【0020】
実施例2
歯科用硬質石膏粉末100重量部に対して無水カフェイン1重量部を分散混合したものを練和物(スラリ)として印象面に注入して硬化後、得られた石膏硬化体の表面粗さ(Ra)を測定した結果は次の通りである。
【0021】
【表3】
Figure 0003773990
【0022】
実施例3
歯科用硬質石膏粉末100重量部に対して無水カフェイン誘導体0.1重量部を分散混合したものを練和物(スラリ)として印象面に注入して硬化後、得られた石膏硬化体の表面粗さ(Ra)を測定した結果は次の通りである。
【0023】
【表4】
Figure 0003773990
【0024】
実施例4
歯科用硬質石膏粉末100重量部に対してニコチン酸0.1重量部を分散混合したものを練和物(スラリ)として印象面に注入して硬化後、得られた石膏硬化体の表面粗さ(Ra)を測定した結果は次の通りである。
【0025】
【表5】
Figure 0003773990
【0026】
実施例5
歯科用硬質石膏粉末100重量部に対してニコチン酸誘導体0.2重量部を分散混合したものを練和物(スラリ)として印象面に注入して硬化後、得られた石膏硬化体の表面粗さ(Ra)を測定した結果は次の通りである。
【0027】
【表6】
Figure 0003773990
【0028】
【発明の効果】
以上で説明し、また実験的に証明したように、本発明の添加物を使用した歯科用石膏組成物は、各種の印象材との適合性に優れ、硬化物の表面粗さが少なく、また寸法精度が良好な、実用度の高い製品を提供することができる。

Claims (3)

  1. 半水石膏100重量部に対して無水カフェイン及びその誘導体ならびにニコチン酸及びその誘導体から選ばれた1種又は2種以上からなる化合物0.05〜5.0重量部を添加混合してなる歯科用石膏組成物。
  2. 無水カフェイン又は、その誘導体を添加混合してなる請求項1記載の歯科用石膏組成物。
  3. ニコチン酸又はその誘導体を添加混合してなる請求項1記載の歯科用石膏組成物。
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