JP3773706B2 - 給湯装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術の分野】
本発明は、バイパスミキシング方式の給湯装置であって、バイパス管の開度を制御する給湯装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、ガスバーナで加熱される熱交換器によって給水管から該熱交換器に供給される水を加熱して給湯管に出湯すると共に、給水管から供給される水の一部を給湯管に混入させて、給湯管から所定の目標給湯温度の湯を供給するようにしたバイパスミキシング方式のガス給湯装置が知られている。
【0003】
かかるガス給湯装置においては、給湯管内の流水の有無を検出する流水センサが設けられ、使用者が給水管の先端に設けられたカランを開けて給水管内に流水が生じると、流水センサにより該流水が検出されてガスバーナの燃焼が開始され、所定の目標給湯温度での給湯がなされるようにガスバーナの燃焼量が制御される。
【0004】
そして、使用者がカランを閉めて給湯が中止されるとガスバーナの燃焼が停止して熱交換器内には湯が滞留した状態となるが、熱交換器の有する余熱により、ガスバーナの燃焼停止後も熱交換器内に滞留した湯の温度は更に上昇する。そしてこの場合、使用者がカランを開けると給湯が再開されるが、ガスバーナが点火されるまでにはある程度の時間遅れが生じる。そのため、給湯が再開されたときには、先ず熱交換器内に滞留していた高温の湯が出湯され、その後ガスバーナで加熱生成された湯が出湯される。
【0005】
そこで、バイパス管の開度を調節するバイパスサーボを設け、給湯が再開されたときに、熱交換器からの出湯温度とバイパス管からの給水温度とに応じてバイパス管の開度を調節することによって、熱交換器内に滞留していた高温の湯が出湯される間も目標給湯温度での給湯が行われるようにした給湯装置が知られている。
【0006】
そして、従来の給湯装置においては、バイパス管から給湯管に混入される水の温度は給水管からの給水温度と同一であるとの前提のもとに、バイパス管の開度を調節していた。しかし、本願発明者らは、給湯再開時に、このようにバイパス管から給湯管に混入される水の温度が給水管からの給水温度と同一であるとの前提のもとにバイパス管の開度を調節すると、目標給湯温度よりも高い温度の湯が給湯管から出湯される場合が生じ得ることを知見した。そしてこの場合には、使用者の意図した温度よりも高い温度の湯が給湯管から出湯されるため、使用者に不快感を与えてしまうという不都合がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記不都合を解消し、給湯を再開したときに、目標給湯温度よりも高い温度の湯が供給されることを防止した給湯装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記目的を達成するためになされたものであり、給水管から供給された水を加熱手段により加熱する熱交換器と、該熱交換器で加熱生成された湯が出湯される給湯管と、前記給水管から供給される水の一部を前記給湯管に混入させるバイパス管と、該バイパス管の開度を調節する開度調節手段と、前記給水管からの給水温度を把握する給水温把握手段と、前記熱交換器からの出湯温度を検出する熱交温度センサと、前記給水管内の流水の有無を検出する流水センサとを有し、前記流水センサにより前記給水管内の流水が検出されているときに、前記給湯管と前記バイパス管との合流箇所の下流側の温水の温度が所定の目標給湯温度と一致するように、該目標給湯温度と前記給水温把握手段により把握された前記給水管からの給水温度と前記熱交温度センサにより検出された前記熱交換器からの出湯温度とに応じて、前記加熱手段の加熱量を調節すると共に前記開度調節手段により前記バイパス管の開度を調節する給湯制御を実行する給湯制御手段を備えた給湯装置の改良に関する。
【0009】
前記給湯制御手段が前記給湯制御を終了すると、前記熱交換器内には高温の湯が滞留し、前記バイパス管内には前記給水管から供給された水が滞留した状態となる。そして、その後の時間の経過と共に、前記熱交換器内に滞留した高温の湯と前記バイパス管内に滞留した水との間で置換や対流が生じ、前記給湯管と前記バイパス管との合流箇所付近の前記バイパス管内の水の温度が次第に上昇する。そのため、前記給湯制御手段が前記給湯制御を再開したときに、前記熱交温度センサの検出温度と前記給水温把握手段により把握された給水温度とによって、前記開度調節手段により前記バイパス管の開度を調節すると、実際に前記バイパス管から前記給湯管に供給される水の温度は該給水温度よりも高いため、前記給湯管からの給湯温度が前記目標給湯温度よりも高くなってしまう。
【0010】
そこで、本発明は、前記バイパス管と前記給湯管との合流箇所付近の前記バイパス管内の水の温度であるバイパス温度を把握するバイパス温把握手段を設け、前記給湯制御手段は、前記給湯制御を終了した後に前記給湯制御を再開するときは、前記目標給湯温度と前記バイパス温把握手段により把握された前記バイパス温度と前記熱交温度センサにより検出された前記熱交換器からの出湯温度とに応じて、前記開度調節手段により前記バイパス管の開度を調節することを特徴とする。
【0011】
かかる本発明によれば、前記給湯制御を再開するときに、前記給湯制御手段は、前記目標給湯温度と、前記バイパス温把握手段により把握された前記バイパス温度、即ち、実際に前記バイパス管から前記給湯管に混入される水の温度と、前記熱交温度センサにより検出される前記熱交換器からの実際の出湯温度とに応じて、前記開度調節手段により前記バイパス管の開度を調節する。そのため、前記給湯管からの給湯される湯の温度を前記目標給湯温度に一致させることができ、使用者の意図した給湯温度よりも高い温度での給湯がなされることを防止することができる。
【0012】
また、前記バイパス温把握手段として、前記バイパス管と前記給湯管との合流箇所付近の前記バイパス管内の水の温度を検出するバイパス温度センサを設けたことを特徴とする。
【0013】
かかる本発明によれば、前記バイパス温度センサにより、前記バイパス管から前記給湯管に混入される水の温度を確実に検出することができる。
【0014】
また、前記開度調節手段は前記バイパス管を常時開状態に保ち、前記給水温把握手段は、前記バイパス温度センサの検出温度により前記給水管からの給水温度を把握することを特徴とする。
【0015】
かかる本発明によれば、前記開度調節手段により前記バイパス管が常時開状態に保たれるため、前記給水管からの給水が開始されると、給水の一部が必ず前記バイパス管側に供給される。したがって、前記給水温把握手段は前記バイパス温センサの検出温度によって前記給水管からの給水温度を把握することができる。これにより、前記給水温把握手段が温度センサを使用して前記給水管からの給水温度を把握する場合に、前記給水管からの給水温度を検出する温度センサを専用に設けることを不要とし、給湯装置の製品コストを下げることができる。
【0016】
また、前記バイパス温把握手段は、前記給湯制御の終了時に前記給水温把握手段により把握された前記給水管からの給水温度を基準給水温度とし、該基準給水温度よりも所定温度高いバイパス基準温度を決定して、その後前記給湯制御が再開されたときに、前記給湯制御が再開されてからの時間の経過と共に前記バイパス基準温度を低下させる補正をして算出した補正温度を前記バイパス温度として把握することを特徴とする。
【0017】
上述したように、前記給湯制御が終了すると、前記バイパス温度は前記給湯制御が終了した時の温度である前記基準給水温度から上昇する。そこで、前記バイパス温把握手段は、前記給湯制御を終了した後に、前記バイパス温度が前記基準給水温度から前記所定温度上昇すると想定して、前記基準給水温度よりも前記所定温度高い温度を前記基準バイパス温度とする。
【0018】
そして、前記給湯制御が終了して前記バイパス温度が前記基準バイパス温度まで上昇した時点における前記バイパス管内に滞留した水の温度分布は、前記給湯管との合流箇所付近が最も高い前記基準バイパス温度となり、前記給水管からの分岐箇所に近づくにつれて徐々に低下すると想定される。したがって、前記給湯制御が再開されたときに前記バイパス管から前記給湯管に混入される水の温度は前記基準バイパス温度から徐々に低下すると想定できる。
【0019】
そこで、前記給湯制御が再開されたときに、時間の経過と共に前記バイパス基準温度を低下させる補正を行って算出した前記補正温度を前記バイパス温度として把握することで、前記バイパス温把握手段は、前記バイパス管内に滞留した水の温度分布に即して精度良く前記バイパス温度を把握することができる。さらに、本発明によれば、前記パイパス管の径が小さい場合や、前記バイパス管の配置状況によって上述したバイパス温度センサを設けることが困難である場合であっても、前記バイパス温度を把握することができる。
【0020】
また、前記バイパス温把握手段は、前記給湯制御が再開されてから前記バイパス管内に滞留していた水が前記給湯管に抜け切るまでに要する時間であるバイパス水抜時間を推定し、前記給湯制御が再開されてから該バイパス水抜時間が経過した時に前記補正温度が前記基準給水温度となるように、前記バイパス基準温度を低下させる補正を行うことを特徴とする。
【0021】
前記給湯制御が再開されたときに、前記バイパス温度は最終的には前記給水管からの給水温度(前記基準給水温度とほぼ等しいと想定できる)まで低下する。そこで、前記バイパス温把握手段は、前記バイパス水抜時間を推定し、前記給湯制御が再開されてから前記バイパス水抜時間が経過した時に、前記バイパス温度が前記基準給水温度となるように補正して前記バイパス温度を把握することで、より精度良く前記バイパス温度を把握することができる。
【0022】
また、前記バイパス管を流れる水の流量であるバイパス流量を把握するバイパス流量把握手段を有し、前記バイパス温把握手段は、前記バイパス水抜時間を前記バイパス流量把握手段によって把握されたバイパス流量に応じて推定することを特徴とする。
【0023】
かかる本発明によれば、前記給水管からの給水流量が変動して、前記バイパス流量が変動する場合であっても、前記バイパス水抜時間を精度良く把握することができる。
【0024】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態の一例を図1〜図4を参照して説明する。図1は本発明の給湯装置の全体構成図、図2は図1に示した給湯装置に備えられたバイパス管内に滞留した水の温度の推移と該温度の把握方法を説明したグラフ、図3〜図4は図1に示した給湯装置におけるバイパス比の制御フローチャートである。
【0025】
図1を参照して、給湯装置1はコントローラ2により全体の作動が制御され、コントローラ2からの制御信号により作動するバーナ3(本発明の加熱手段に相当する)、バーナ3により加熱される熱交換器4、図示しない水道管と接続されて熱交換器4に給水する給水管5、コントローラ2からの制御信号により給水管5の開度を調節する水量サーボ6、給水管5を通過する水の流量を検出して検出信号をコントローラ2に出力する水量センサ7(本発明の流水センサの機能を含む)、熱交換器4で加熱された湯が出湯される給湯管8、給水管5に供給される水の一部を給湯管8に混合させるバイパス管9、コントローラ2からの制御信号によりバイパス管9の開度を調節するバイパスサーボ10(本発明の開度調節手段に相当する)、給湯管8とバイパス管9との合流点Xの下流側の湯の温度を検出して検出信号をコントローラ2に出力する給湯温度センサ11、熱交換器4の出口付近の湯の温度を検出して検出信号をコントローラ2に出力する熱交温度センサ12、及び熱交換器4の異常過熱を検出して検出信号をコントローラ2に出力する過熱検出センサ13を備える。
【0026】
更に、給湯装置1は、コントローラ2からの制御信号によりその回転数が制御される燃焼ファン14と、コントローラ2からの制御信号により火花放電を生じてバーナ3に点火する点火プラグ15と、バーナ3の燃焼状態を検出して検出信号をコントローラ2に出力するフレームロッド16とを備える。
【0027】
また、バーナ3に燃料ガスを供給するガス供給管17には、コントローラ2からの制御信号により開閉される元ガス電磁弁18、及び給湯ガス電磁弁19,20と、コントローラ2からの制御信号によりその開度が調節されるガス比例弁21とが備えられる。
【0028】
また、30はコントローラ2と通信可能に接続されたリモコンであり、給湯装置1全体を運転待機状態と運転状態とに切り替える運転スイッチ31と、給湯管8に連通した給湯配管22への目標給湯温度を設定する給湯温設定スイッチ32と、給湯配管22への実際の給湯温度等を表示する表示部33とを有する。
【0029】
次に、給湯装置1の作動について説明する。給湯装置1を商用電源(図示しない)と接続すると、コントローラ2とリモコン30が作動を開始して給湯装置1は運転待機状態となる。そして、この運転待機状態で使用者がリモコン30の運転スイッチ31をON操作すると、給湯装置1は運転待機状態から運転状態に切り替わり、リモコン30の給湯温設定スイッチ32の操作が可能となる。
【0030】
使用者が給湯温設定スイッチ32を操作して目標給湯温度を設定した後、給湯配管22の先端に接続されたカラン23を開けると、水道管(図示しない)から給水管5への給水が開始され、水量センサ7により給水管5に流れる水量が検出される。
【0031】
コントローラ2は、水量センサ7から出力された検出信号によって給水管5への給水の開始を認識すると、燃焼ファン14を作動させて点火プラグ15に火花放電を生じさせた状態で、元ガス電磁弁18,給湯ガス電磁弁19,20を開弁してバーナ3の点火処理を行う。また、コントローラ2に備えられた給湯制御手段40は、給湯配管22にリモコン30で設定された目標給湯温度の温水が供給されるように、バーナ3の燃焼量と、熱交換器4への給水量に対するバイパス管9への給水量の割合であるバイパス比とを制御する給湯制御の実行を開始する。
【0032】
また、給水温把握手段41は給水管5からの給水温度を把握し、バイパス温把握手段42は給湯管8とバイパス管9の合流箇所X付近のバイパス管9内の水の温度であるバイパス温度を把握し、バイパス流量把握手段43はバイパス管9を通過する水量を把握する。
【0033】
給湯制御手段40は、給湯温設定スイッチ32により設定された目標給湯温度TA と、給水温把握手段41により把握された給水管5からの給水温度TW と、水量センサ7によって検出された給水管5からの総給水量QT とに基づいて、バーナ3による目標加熱量HA を以下の式(1)により決定する。
【0034】
HA =(TA −TW )*QT /η ・・・・・(1)
ここで、ηは熱交換器4の熱効率である。
【0035】
そして、給湯制御手段40は、式(1)により算出した目標加熱量HA が得られるように、ガス比例弁21の開度、燃焼ファン14の回転速度、及び給湯ガス電磁弁19,20の開閉を制御してバーナ3の燃焼量を調節する。また、給湯制御手段40は、給水管5からの給水温度TW として、給湯開始時は前回の給湯制御終了時に保持した給水温度を用い、給湯開始後は、給水温把握手段41によって把握された給水温度を用いる。
【0036】
ここで、給水温度把握手段41は、熱交温度センサ12により検出される熱交換器4からの出湯温度TH と、水量センサ7により検出される給水管5からの給水量とバイパス比とにより算出した熱交換器4への給水量QH と、目標加熱量HA とに基づいて、以下の式(2)によって給水温度TW を把握する。
【0037】
TW ={TH *QH −HA *η}/QH ・・・・・(2)
また、給湯制御手段40は、目標給湯温度に応じてバイパス比を決定し(目標給湯温度とバイパス比との対応関係は、予め実験等により決定される)、決定したバイパス比となるようにバイパスサーボ10によってバイパス管9の開度を調節する。
【0038】
このように、バーナ3の燃焼量とバイパス管9の開度を調整することで、基本的には給湯配管22に目標給湯温度での給湯がなされるが、給湯温度センサ11によって検出される給湯配管22への実際の給湯温度が目標給湯温度と一致しない場合は、給湯制御手段40は、更にバーナ3の燃焼量の微調整を行い、また、水量サーボ6により給水管5からの給水量の微調整を行う。
【0039】
そして、給湯制御手段40は、使用者によりカラン23が閉められて、給水管5からの給水が停止したことを水量センサ7の検出信号から認識したときに、元ガス電磁弁18と給湯電磁弁19,20を閉弁し、燃焼ファン14の作動を停止して給湯制御を終了する。
【0040】
次に、給湯制御の終了後に、使用者がカラン23を開けて給水管5からの給水が開始され、給湯制御手段40が給湯制御を再開するときの給湯装置1の作動について説明する。給湯制御手段40が給湯制御を終了すると、バーナ3の燃焼が停止して熱交換器4内に湯が滞留した状態となるが、熱交換器4の有する余熱により熱交換器4内に滞留した湯の温度が更に上昇して高温となる。
【0041】
そして、給湯制御が再開されてから、実際にバーナ3に点火されるまでにはある程度の遅れ時間を生じる。そのため、給湯制御手段40が給湯制御を再開したときは、先ず熱交換器4内に滞留した高温の湯が給湯管8に出湯され、その後バーナ3で加熱された湯が給湯管8に出湯される。
【0042】
そこで、給湯制御が再開されたときに、熱交換器4からの出湯温度とバイパス管9から給湯管8に混入される水の温度とに応じて、バイパスサーボ10の開度を調節してバイパス比を制御することで、熱交換器4に滞留した高温の湯が出湯される間も目標給湯温度の湯を給湯配管22に供給することができ、これにより給湯制御を再開してから、実際に給湯配管22に目標給湯温度の温水が供給されるまでに要する時間を短縮することができる。
【0043】
そして、従来は、バイパス管9から給湯管8に混入される水の温度は給水管5からの給水温度と等しいことを前提として、熱交温度センサ12により検出した熱交換器4からの出湯温度と、給水温把握手段41により把握した給水管5からの給水温度とに基づいて、給湯再開時のバイパス比を制御していた。
【0044】
しかし、実際には、給湯制御手段40が給湯制御を終了してからの時間の経過と共に、熱交換器4に滞留して熱交換器4の余熱により更に高温となった湯(及び熱交換器4から合流箇所Xまでの間の給湯管内に滞留した湯)と、バイパス管9内に滞留した水との間に置換や対流が生じてバイパス管9内に滞留した水の温度は上昇する。
【0045】
図2(a)は、給湯制御が終了したときに、給湯管8とバイパス管9との合流箇所X付近の、バイパス管9内に滞留した水の温度であるバイパス温度TB が変化する様子を示した例であり、縦軸はバイパス温度TB 、横軸は給湯制御が終了してからの経過時間tである。
【0046】
図2(a)を参照して、給湯制御が終了すると(t=0)、バイパス温度TB は、上述した置換や対流によって急速に上昇するが、その後は徐々に低下して給湯制御終了時の給水温度(10℃)よりも高い温度(25℃程度)で安定する。そのため、その後、給湯制御が再開されたときには、バイパス管9から給湯管8に混入される実際の水の温度は、給水管5からの給水温度よりも高くなる。
【0047】
したがって、バイパス管9から給湯管8に混入される水の温度を給水管5からの給水温度と等しいものとしてバイパス比を制御すると、目標給湯温度よりも高い温度の湯が給湯配管22に供給され、使用者に不快感を与えてしまう。
【0048】
そこで、バイパス温把握手段42は、給湯制御が終了した後にバイパス管9内の水温が給水温度よりも高くなることを考慮してバイパス温度を把握し、給湯制御手段40はバイパス温把握手段42によって把握されたバイパス温度に基づいて給湯制御を再開したときのバイパス比を制御する。以下、図3〜図4を参照して、バイパス温把握手段42によるバイパス温度の把握処理と、給湯制御手段40によるバイパス比の制御処理について説明する。
【0049】
図3を参照して、給湯制御を終了すると、バイパス温把握手段42は、STEP1で、給湯制御終了時に給水温把握手段41により把握された給水管5からの給水温度TW を基準給水温度TW0として保持する。そして、次のSTEP2で、水量センサ7により給水管5からの給水を認識すると(この時、給湯制御手段40は給湯制御を再開する)、バイパス温把握手段42は、STEP3以下の処理を行ってバイパス温度TB を把握する。
【0050】
ここで、図2(a)を参照して、上述したように、給湯が停止されるとバイパス温度TB は急速に上昇した後に給湯制御終了時の給水温度(この場合は10℃)よりも高い温度(この場合は25℃程度)で安定する。そしてこの場合、バイパス管9内に滞留した水の温度分布は、図1を参照して、給湯管8とバイパス管9との合流箇所X付近が最も高くなり、給水管5からバイパス管9が分岐する箇所Yに向かって次第に低下すると想定される。そして、Y付近のバイパス管9内に滞留した水の温度は給水管5からの給水温度と等しくなる。
【0051】
そこで、バイパス温把握手段42は、給湯制御を終了してからバイパス温度が上昇すると想定した温度(予め実験等で決定する)であるα0 (本発明の所定温度に相当する)を、基準給水温度TW0に加えた温度、即ち、基準給水温度TWOよりもα0 高い温度を基準バイパス温度TB0(TB0=TW0+α0 )とする。尚、α0 は給湯制御が終了した時に熱交換器4内に滞留した湯の温度が高いほど高くなるため、給湯制御が終了した時の熱交温度センサ12の検出温度を考慮してα0 を想定するようにしてもよい。
【0052】
そして、続くSTEP4で、給湯制御が再開されたときに、バイパス水量把握手段43により把握されるバイパス水量QB と既知のバイパス管9の容量VB とにより、給湯制御が再開されてからバイパス管9に滞留していた湯が給湯管8に抜け切るまでの時間であるバイパス水抜時間tB (=VB /QB )を算出する。ここで、バイパス水量把握手段43は、水量センサ7によって検出される給水管5への給水量QT と、給湯制御を再開した時のバイパス比λにより以下の式(3)によってバイパス水量QB を算出する。
【0053】
QB =(λ/λ+1)*QT ・・・・・(3)
次のSTEP5で、バイパス温把握手段43は、以下の式(4)をバイパス温度TBを把握するための補正式として決定し、式(4)によって給湯が再開されてからバイパス水抜時間tB が経過するまでの間のバイパス温度TB を把握する。
【0054】
TB =TB0−(α0 /tB )*t ・・・・・(4)
ここで、α0 は、STEP3で想定した、給湯終了後にバイパス温度TB が基準給水温度TW から上昇する温度、tは給湯制御が再開されてからの経過時間である。
【0055】
図2(b)は、式(4)を、バイパス温度TB を縦軸、給湯制御終了時からの経過時間tを横軸としてグラフに表したものである。
【0056】
図2(b)を参照して、式(4)によれば、バイパス基準温度TBOに対して、給湯制御が再開されてからの時間(t)が経過するにつれて、温度を低下させる補正が行われ、該補正により算出された温度(本発明の補正温度に相当する)がバイパス温度TB としてバイパス温把握手段42により把握される。
【0057】
そしてこの場合、把握されたバイパス温度TB は、給湯制御の再開時(t=0)の温度であるバイパス基準温度TB Oから、時間の経過と共に徐々に低下し、STEP4で算出したバイパス水抜時間tB が経過した時に給水基準温度TW0(給湯制御を再開した時の給水管5からの給水温度にほぼ等しいと想定できる)。
【0058】
そのため、バイパス温把握手段42は、給湯制御が再開された時にバイパス管9内に滞留した水の実際の温度分布に即して、精度良くバイパス温度TB を把握することができる。また、バイパス温把握手段42によってバイパス温度TB を把握することにより、バイパス9の径が小さい場合やバイパス管9の周囲のスペースが少ない場合のように、バイパス管9にバイパス温度を検出する温度センサを設けることが不可能な場合であっても、給湯制御の再開時におけるバイパス温度TB を把握することができる。
【0059】
そして、バイパス温把握手段42は、次のSTEP6でパイパス水抜時間tB を設定時間とするタイマをスタートさせ、STEP7で前記式(4)によりバイパス温度TB を把握する。
【0060】
次のSTEP8は給湯制御手段40による処理である。給湯制御手段40は、STEP8で、熱交温度センサ12によって検出される熱交換器4からの出湯温度TH と、バイパス温把握手段42によって把握されるバイパス温度TB と、目標給湯温度TA とに基づいて、バイパス比λを以下の式(5)で算出する。
【0061】
λ=(TH −TA )/(TA −TB ) ・・・・・(5)
そして、給湯制御手段40は、式(5)で算出したバイパス比λが得られるようにバイパスサーボ6によりバイパス管9の開度を調節する。このように、バイパス温把握手段42によって把握されたバイパス温度TB を用いてバイパス比λを算出することで、給湯制御手段40は、実際にバイパス管9から給湯管8に混入される水の温度に即してバイパス比λを制御することができる。そのため、給湯配管22から供給される温水の温度が目標給湯温度TA よりも高くなることを防止することができる。
【0062】
続くSTEP9でタイマがタイムアップするまで(給湯制御が再開されてからバイパス水抜時間tB が経過するまで)、STEP9からSTEP7に分岐してSTEP7〜STEP9の処理が繰り返し実行される。
【0063】
STEP9でタイマがタイムアップした後、即ち、給湯制御が再開されてからバイパス水抜時間tB が経過して、給湯再開時にバイパス管9内に滞留していた水が全て給湯管8に抜け切った後は、給水管5から供給される水がバイパス管9を介してそのまま給湯管8に混入されるため、バイパス温度TB は給水温度と等しくなる。そこで、把握手段42はバイパス温度TB の把握処理を終了する。
【0064】
次のSTEP10とSTEP11は給湯制御手段40による処理である。給湯制御手段40は、目標給湯温度TA と、給水温把握手段41によって把握された給水管5からの給水温度TW と、熱交温度センサ12によって検出された熱交換器4からの出湯温度TH とに応じて上記式(5)によってバイパス比λを算出する。そして、給湯制御手段40は、算出したバイパス比λが得られるようにバイパスサーボ6によりバイパス管9の開度を調節する。
【0065】
そして、給湯制御手段40は、STEP11で、水量センサ7の検出出力によって給水管5からの給水の有無を認識し、給水が行われている間はSTEP10に分岐してSTEP10を繰り返し実行して給湯制御を継続する。一方、給水管5からの給水が停止したことを認識したときは、給湯制御手段40は給湯制御を終了してSTEP11からSTEP1に進み、STEP2で給水管5からの給水が再開されるのを待つ状態となる。
【0066】
尚、本実施の形態では、バイパス温把握手段42によってバイパス温度TB を把握したが、バイパス管9と給湯管8との合流箇所X付近のバイパス管9内の水の温度を直接検出する温度センサ(バイパス温度センサ)を設け、該温度センサの検出出力から直接バイパス温度TB を把握するようにしてもよい。
【0067】
また、本実施の形態では、給水温度把握手段41により前記式(2)によって給水管5からの給水温度TW を算出したが、サーミスタ等の温度センサを設け、該温度センサの検出出力から直接給水温度TW を把握するようにしてもよい。
【0068】
さらに、このように温度センサによって給水温度TW を把握する場合には、水量サーボ6によりバイパス管9を常時開状態(給水管5から水が供給されたときに、バイパス管9側にも必ず水が供給される状態)に保つことで、給水温度TW を前記バイパス温度センサにより把握(検出)することができる。そしてこの場合には、1個の温度センサによって、バイパス温度TB と給水温度TW を検出することができるため、給湯装置の製品コストを抑制することができる。
【0069】
また、本実施の形態では、バイパス温把握手段42は、前記式(3)によって算出したバイパス水量QB とバイパス比λとに基づいてバイパス水抜時間tB を算出したが、給水管5からの総給水量QT が既知であり、大きな水量変動もない場合は、総給水量QT を予め想定してバイパス比λのみに基づいてバイパス水抜時間tB を算出してもよい。更に、バイパス比λの制御範囲が狭いと想定できる場合には、バイパス水抜時間tB を固定値としてもよい。
【0070】
尚、本実施の形態では、バイパス開度調節手段としてバイパスサーボを用いたが、比例電磁弁を用いてもよい。
【0071】
また、本実施の形態では、加熱手段としてガスバーナを用いた給湯装置を示したが、灯油バーナや電気ヒータ等を加熱手段とした給湯装置に対しても本発明の適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の給湯装置の全体構成図。
【図2】図1に示した給湯装置のバイパス管内に滞留した水の温度の推移と該温度の把握方法を説明したグラフ。
【図3】図1に示した給湯装置のバイパス比の制御フローチャート。
【図4】図1に示した給湯装置のバイパス比の制御フローチャート。
【符号の説明】
1…給湯装置、2…コントローラ、3…バーナ、4…熱交換器、5…給水管、6…水量サーボ、8…給湯管、9…バイパス管、10…バイパスサーボ、11…給湯温度センサ、12…熱交温度センサ、13…過熱検出センサ、14…燃焼ファン、15…点火プラグ、16…フレームロッド、17…ガス供給管、18…元ガス電磁弁、19,20…給湯ガス電磁弁、21…ガス比例弁、30…リモコン、40…給湯制御手段、41…給水温把握手段、42…バイパス温把握手段、43…バイパス流量把握手段
Claims (6)
- 給水管から供給された水を加熱手段により加熱する熱交換器と、該熱交換器で加熱生成された湯が出湯される給湯管と、前記給水管から供給される水の一部を前記給湯管に混入させるバイパス管と、該バイパス管の開度を調節する開度調節手段と、前記給水管からの給水温度を把握する給水温把握手段と、前記熱交換器からの出湯温度を検出する熱交温度センサと、前記給水管内の流水の有無を検出する流水センサとを有し、
前記流水センサにより前記給水管内の流水が検出されているときに、前記給湯管と前記バイパス管との合流箇所の下流側の温水の温度が所定の目標給湯温度と一致するように、該目標給湯温度と前記給水温把握手段により把握された前記給水管からの給水温度と前記熱交温度センサにより検出された前記熱交換器からの出湯温度とに応じて、前記加熱手段の加熱量を調節すると共に前記開度調節手段により前記バイパス管の開度を調節する給湯制御を実行する給湯制御手段を備えた給湯装置において、
前記バイパス管と前記給湯管との合流箇所付近の前記バイパス管内の水の温度であるバイパス温度を把握するバイパス温把握手段を設け、前記給湯制御手段は、前記給湯制御を終了した後に前記給湯制御を再開するときは、前記目標給湯温度と前記バイパス温把握手段により把握された前記バイパス温度と前記熱交温度センサにより検出された前記熱交換器からの出湯温度とに応じて、前記給湯管と前記バイパス管との合流箇所の下流側の温水の温度が所定の目標給湯温度と一致するように、前記開度調節手段により前記バイパス管の開度を調節することを特徴とする給湯装置。 - 前記バイパス温把握手段として、前記バイパス管と前記給湯管との合流箇所付近の前記バイパス管内の水の温度を検出するバイパス温度センサを設けたことを特徴とする請求項1記載の給湯装置。
- 前記開度調節手段は前記バイパス管を常時開状態に保ち、前記給水温把握手段は、前記バイパス温度センサの検出温度により前記給水管からの給水温度を把握することを特徴とする請求項2記載の給湯装置。
- 前記バイパス温把握手段は、前記給湯制御の終了時に前記給水温把握手段により把握された前記給水管からの給水温度を基準給水温度とし、該基準給水温度よりも所定温度高いバイパス基準温度を決定して、その後前記給湯制御が再開されたときに、前記給湯制御が再開されてからの時間の経過と共に前記バイパス基準温度を低下させる補正をして算出した補正温度を前記バイパス温度として把握することを特徴とする請求項1記載の給湯装置。
- 前記バイパス温把握手段は、前記給湯制御が再開されてから前記バイパス管内に滞留していた水が前記給湯管に抜け切るまでに要する時間であるバイパス水抜時間を推定し、前記給湯制御が再開されてから該バイパス水抜時間が経過した時に前記補正温度が前記基準給水温度となるように、前記バイパス基準温度を低下させる補正を行うことを特徴とする請求項4載の給湯装置。
- 前記バイパス管を流れる水の流量であるバイパス流量を把握するバイパス流量把握手段を有し、前記バイパス温把握手段は、前記バイパス水抜時間を前記バイパス流量把握手段によって把握されたバイパス流量に応じて推定することを特徴とする請求項5記載の給湯装置。
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