JP3773274B2 - 培養皮膚の担体 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、培養皮膚の移植時に用いられる移動用担体に関するものであり、さらには、培養皮膚の培養時等にも用いられる担体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、皮膚細胞を培養した皮膚を目的とする患部などに移植するためには、培養皮膚を支持するための担体が必要とされる。例えば、グリーン(Green) は皮膚移植に際して、木綿のガーゼにワセリンを含有させたいわゆるワセリンガーゼを担体として用いている〔プロシーディング・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス・オブ・ザ・ユナイティッド・ステイツ・オブ・アメリカ,76, 5665-68, 1979 (Proceeding of the National Academy of Sciences of the United States of America, 76, 5665-68, 1979)〕。
【0003】
しかしながら、ワセリンは吸水性がなく、疎水性であるため、ワセリンガーゼは患部からの滲出液を吸収できず、このために滲出液が患部に貯留し、細菌繁殖の場を提供する結果となる。さらに、ワセリンガーゼは変形し易いため、保存、移動等の際、ワセリンガーゼに支持されたシート状の培養皮膚が破損するおそれがある。
本発明は、抗菌性を有し、培養皮膚の培養、移動、保存等の際に、培養皮膚を破損せず、容易に移植を行うことができ、さらに担体を培養皮膚と同時に患部へ適用した際に、患部からの滲出液を効果的に吸収することができる培養皮膚の移動用担体を提供することを目的とするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、このような課題を解決するために鋭意検討を行なった結果、シート状のキチン成形体を培養皮膚の移動用担体に用いれば、培養皮膚の損傷を防止し、滲出液が患部に貯留することなく、培養皮膚の患部への生着性を向上させうることを見出し、本発明に到達した。
【0005】
すなわち、本発明は、シート状キチン成形体からなることを特徴とする培養皮膚の移動用担体を要旨とするものである。
【0006】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0007】
本発明においてキチンとは、甲殻類、昆虫類等の外骨格等を、塩酸処理等の酸処理、並びに苛性ソーダ等のアルカリ処理等を行なって、蛋白およびカルシウム分を分離精製することにより得られるポリ−N−アセチル−D−グルコサミンあるいはその誘導体をいう。そのようなものとして、例えば6−O−ヒドロキシエチル化キチン、カルボキシメチル化キチン、エーテル化キチン、アセチル基の一部が脱アセチル化されたキチン、脱アセチル化されたキチンのアミノ基がアシル化されたキチン等が挙げられる。
【0008】
本発明の培養皮膚の移動用担体として用いられるキチン成形体の形状は、シート状を呈する限り特に限定されるものではなく、培養皮膚と一体化することが可能であるもの、例えば、キチン成形体上で細胞の培養が可能なもの、培養皮膚を移植時にキチン成形体と貼り合わせることが可能なもの、移植後培養皮膚の被覆材として用いることが可能なもの等、何らかの形で培養皮膚をキチン成形体と接触させた状態で用いることが可能なものであればよく、また、培養皮膚と同時に患部へ適用した際、患部からの滲出液を吸収できるものであれば、いかなるものでもよい。例えば、スポンジ状、不織布状、織編物等が挙げられる。
【0009】
上記シート状キチン成形体は、例えば次のようにして製造される。まず、キチン粉末を100メッシュに粉砕し、塩酸および苛性ソーダ水溶液によりキチン粉末中に含まれる無機質およびタンパク質を除去し、水洗した後、乾燥する。次いで得られた精製キチンをアミド系溶剤に溶解させ、ドープを作製し、得られたドープを湿式紡糸してフィラメントを得る。このフィラメントを所定の長さにカットしてバインダーとともに水に分散させて分散液を得る。この分散液をシートマシンに入れた後、水を濾過除去する。次いで、シートマシン底部に残存するシート状キチンの両面を定性濾紙ではさんだ後、ロール間にはさんで水を除去する。さらにプレス機で押圧し、高温で乾燥する。
上記の操作で得られたシート状のキチン成形体は、本発明の培養皮膚の移動用担体として使用することができる。
【0010】
本発明に用いる培養皮膚は、公知の方法によって得ることができる。例えば以下のようにして得られたものを用いることができる。
まず、ヒトの皮膚をバイオプシ(生検用試料採取)して、皮膚組織の断片を準備する。採取部位としては、足の裏やかかとの皮膚はほとんど角質化しているので、これらの部位は避けた方が好ましい。例えば、腋の下や腹部、大腿内側の皮膚が好ましく用いられる。
【0011】
採取した表皮をトリプシン液などの細胞分散液により8〜24時間、好ましくは12時間処理して表皮細胞の浮遊液を得る。この細胞をマイトマイシンCや放射線等で処理することにより分裂能を弱めた3T3セルフィーダレイヤー(細胞支持層)上に、1×104 〜1×105 個/cm2 、好ましくは4×104 個/cm2 の濃度で播種する。
【0012】
培養用の培地としては、20%のウシ胎児血清(FCS)を含むダルベッコ改変イーグル(DME(H))培地などの表皮細胞培養用培地に生育促進物質を加えたものを使用する。
生育促進物質としては、 2.5〜10mg/ml、好ましくは5mg/mlのトランスフェリン、2〜15mg/ml、好ましくは5mg/mlのインシュリン、 1.3×10-11 〜 3.7×10-11 モル、好ましくは2×10-11 モルのヨードチロニン、 0.1〜 0.6mg/ml、好ましくは 0.4mg/mlのコルチゾール、 0.3×10-10 〜 2.2×10-10 モル、好ましくは 1.0×10-10 モルのコレラトキシン、 0.7×10〜 3.2×10ng/ml、好ましくは 1.0×10ng/mlの上皮成長因子(EGF)等が挙げられる。
【0013】
培養は、炭酸ガスの存在下で、例えば37℃の温度で行われる。炭酸ガスの濃度は5%以下が望ましい。
培養後、2〜3日して表皮細胞が容器に接着したのを確認して、培地の交換を行う。培地の交換に際しては、培養液としてカルシウムイオンを含まないDMEおよびchelex-100等のキレート試薬で処理してカルシウムイオンを除去したFCS等を用い、培地のカルシウムイオン濃度が 0.1mMとなるようにカルシウムイオンを添加する。さらにこの培地に上記の生育促進物質と共に、新たに5〜20ng/ml、好ましくは10ng/mlのヒト表皮成長因子(human epidermal growth factor )を添加する。この条件で培養すると、10日前後で表皮細胞は融合性(細胞数が充分に増えて密集化し、それ以上細胞が増えない状態)を示すようになる。
【0014】
その後は移植までの数日間、培地のカルシウムイオン濃度を 1.0〜 2.5mM、好ましくは 1.8mMに維持する。移植に先立って、上記のようにして増殖させた培養皮膚を容器から剥離させるため、酵素処理を行う。酵素としては、細胞同士の結合力を低下させることなく細胞と容器面との接着力を弱めることのできるものであればいかなるものでも用いることができるが、一般にディスパーゼが広く用いられる。培養皮膚を 100〜 300P.U./ml、好ましくは 200P.U./mlのディスパーゼ(酵素)溶液に5〜 120分間、好ましくは30〜60分間、より好ましくは40分間浸す。
【0015】
ディスパーゼ処理を行うと、培養皮膚はシャーレの辺縁より剥がれてくるので、液を除去した後に、キチン成形体を皮膚全面に押し当てて培養皮膚をキチン成形体に接着させ、ピンセット等で持ち上げると培養皮膚がキチン成形体に接着した状態で1枚のシートとして容器から剥離される。
【0016】
このようにして得られた培養皮膚が接着したキチン成形体は、移動用担体として用いることができる。この場合、キチン成形体ごと培養皮膚を適用部位、保存場所へ移動させればよい。
【0017】
このキチン成形体と一体化した培養皮膚を、キチン成形体の面を上にして創面の上に配置して、創面に付着させる。このようにして、培養皮膚を移植した後、その上層を被覆材にて被覆する。被覆材としては、脱脂綿、滅菌ガーゼ又は不織布状やスポンジ状のキチン成形体を用いることができるが、一般的には滅菌ガーゼが用いられる。さらに、この上から包帯を巻いて、移植作業が完了する。
【0018】
また、本発明の培養皮膚の担体は、次のようにして使用することもできる。上記と同様の操作でキチン成形体に培養皮膚を付着させ、創面に配置させた後、キチン成形体のみを静かに剥離除去すると、培養皮膚のみが創面に残留する。しかる後に、移植された培養皮膚を滅菌ガーゼ等で被覆し、包帯を巻いて作業は完了する。こうした場合にも培養皮膚は創面に対して良好な生着性を示す。
【0019】
さらに、本発明の培養皮膚の移動用担体は、培養皮膚を接着させた後、培養皮膚を創面に移植するまでの間、保存用基材として用いることができる。この場合には、融合性を示すようになるまで培養した培養皮膚を、冷凍保存する。冷凍するに際しては、まず、培養皮膚とキチン成形体とが一体化したシートを端部から円筒状になるように巻き、この円筒をBME(basal medium of Eagle:イーグルの基本培地)+30%FBS(fetal bovine serum:ウシ胎児血清)+15%グリセリン、BME+10%FBS+10%グリセリン、BME+10%FBS+15%DMSO(dimethylsulfoxide)等の溶液に浸漬した後に、冷凍室に入れる。冷凍室の温度を室温から−135℃まで徐々に、例えば1分間あたり1℃ずつ低下させる。温度を徐々に低下させることによって氷の生成を防止し得る。このようにして冷凍された培養皮膚は、数日から数年の間保存でき、必要な際に新鮮な状態で解凍することができる。解凍には通常37℃の温水を用いるが、30℃から40℃の空気または水によるインキュベータを使用してもよい。
【0020】
また、培養皮膚をワセリンガーゼに付着させて冷凍保存した場合、このものを使用に際して解凍したときに、溶け出したワセリンが培養皮膚に付着するおそれがある。そのため作業性が悪くなるだけでなく、移植後の創面に悪影響をもたらす。
【0021】
このものの原料であるキチンには生体親和性がある、抗原性がない、表皮形成に優れる、損傷を受けた生体に適用すると特殊な細胞を誘発して傷の修復を早める、抗菌性がある等の性質を有する。そのため、被覆後創面への細菌感染を防ぎ、治療をスムーズにする。
【0022】
上記のように、キチン自体に抗菌性を有するが、培養皮膚の保存時ならびに移植後の細菌感染の防止をより効果的にする目的で、抗菌剤を用いることもできる。そのような抗菌剤として、例えばアミノ多糖類、第四アンモニウム塩、両性界面活性剤等が挙げられる。そのようなものとして、ゲンタマイシン、ヨードチンキ、カナマイシン、ファンギゾン、3−(トリメトキシシリル)プロピルジメチルオクタデシルアンモニウムクロリド、塩化ベンザルコニウム、ポリオキシエチレントリメチルアンモニウムクロリド、塩化ベンゼトニウム、アルキルトリメチルアンモニウム塩、p−イソオクチルフェノキシエトキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、臭化フェノドデシウム(臭化ドミフェン)、セチルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、(3,4−ジクロルベンジル)ドデシルジメチルアンモニウムクロリド、アルキルジメチルエチルアンモニウム塩、アルキルキノリニウム塩、アルキルアミドプロピルジメチルベンジルアンモニウム塩、ジイソブチルクレゾキシエトキシエチルベンジルアンモニウム塩、ウンデシレン酸、アルキルポリアミノエチルグリシン、クロルヘキシジン、ドデシルグアニジン塩酸塩、ポリヘキサメチレンビグアニジン塩酸塩、アクリロニトリル−硫化銅複合体、α−ブロムシンナムアルデヒド、2−(3,5−ジメチルピラゾリル)−4−ヒドロキシ−6−フェニルピリミジン等がある。
【0023】
キチン成形体に抗菌剤を含有させる方法としては、キチン成形体を抗菌剤を含む水溶液等で処理したり、キチン成形体を製造するためのキチンドープ中に予め抗菌剤を混入した上で成形したりする方法がある。例えば、ヨウ化カリ水溶液中にヨードを溶解して、その溶液にキチンを浸漬することによって簡単に行なうことができる。
【0024】
【実施例】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。
【0025】
参考例1
〔キチン成形体の作製〕
キチン粉末(共和油脂製)を 100メッシュに粉砕し、1N-HClにて4℃で1時間処理し、さらに3%NaOH水溶液中で3時間、90℃で処理し、キチン粉末中に含まれる無機質およびタンパク質を除去し、水洗を繰り返し乾燥した。得られたキチンは、塩化リチウムを8重量%含むジメチルアセトアミド溶液に、 0.2重量%の濃度になるよう溶解した溶液の粘度が30℃において 265センチポイズの値を表すものであった。得られたドープをタンクに入れ、加圧下でギヤーポンプにて輸送し、口径0.06mm、孔数 200ホールのノズルより吐出量2.2g/minの割合で60℃のブタノール液中に押し出して凝固し、10m/min の速度でローラーに引き取った。得られた糸条を水で十分に洗浄した後乾燥して、単糸デニールが0.68デニール、強度3.1g/dのフィラメントを得た。次いで、このフィラメントを長さ8mmにカットした。
【0026】
上記のカットしたフィラメント0.5gとバインダー(1デニールの水溶性ビニロン繊維を3mmにカットしたもの) 0.05gを1Lの水に分散させた。次いで、その分散液に水を加えて全量6Lとし、均一に繊維を分散させ、シートマシンに入れた後、水を濾過除去した。次いで、シートマシン底部に残存するシートの両面を定性濾紙ではさんだ後、ロール間にはさんで水を除去した。さらにプレス機を用いて3kg/cm2の圧力で30秒間押圧した後、それらを 120〜 130℃で6分間乾燥して不織布を得た。
【0027】
参考例2
〔培養皮膚の作製〕
患者の腹部から採取した皮膚をトリプシンで12時間処理して表皮細胞の浮遊液を得た。この細胞をマイトマイシンCで処理した3T3セルフィーダレイヤー上に、4 ×104 個/cm2の濃度で播種した。20%のウシ胎児血清( FCS) を含むダルベッコ改変イーグル(DME( H) )培地に 0.5μg/mlのハイドロコーチゾンおよび 10ng/mlのコレラトキシンを加え、37℃で5%の炭酸ガスの存在下で培養した。培養後、2〜3日して表皮細胞がシャーレに接着したのを確認して、培地の交換を行なった。培地の交換に際しては、培養液としてカルシウムイオンを含まないDMEおよびchlex-100 で処理したFCSを用い、培地のカルシウムイオン濃度が 0.1mMとなるようカルシウムイオンを添加した。さらにこの培地に上記の増殖因子と共に、新たに 10ng/ml濃度のヒト表皮成長因子(human epidermal growth factor) を加えた。この条件で培養すると、10日前後で表皮細胞は融合性を示すようになった。その後は移植までの3日間、培地のカルシウムイオン濃度を 1.8mMに維持した。このように培養してシート状の培養皮膚を得た。
【0028】
実施例1
参考例1で得られたキチン不織布を培養皮膚の移動用担体に用いた。
参考例2で得られた培養皮膚に200P.U./mlのディスパーゼ酵素溶液を40分間作用させた。酵素処理を行なって、表皮細胞がシャーレの辺縁より剥がれてきたところで、液を除去し、次いで参考例1で得られたキチン不織布を培養皮膚全面に押し当てて培養皮膚をキチン不織布に接着させた。しかる後に、ピンセットで持ち上げて、培養皮膚がキチン不織布に接着した状態で、1枚のシートとして容器から剥離した。このようにしてキチン不織布を担体とする培養皮膚を得た。
上記のごとく得られたキチン不織布を担体とする培養皮膚を下腿採皮創面に移植し、キチン不織布の上からガーゼで被覆した。1週間後に創面は理想的な治癒を見た。
【0029】
また、得られたキチン不織布を担体とする培養皮膚を10%FCS、10%グリセロールを含む培地で担体と共に4℃、1時間冷却後、−80℃のフリーザーに一晩置き、次いで−135 ℃の冷凍室に移植日まで保存した。次いで、37℃の温水中で凍結培養皮膚を急速解凍し、リン酸緩衝液で洗浄してから、この表皮を移植に供した。移植当日、熱傷II度を右上腕部に受けた患者に対して、熱傷面の肉芽創の壊死組織を除去してから培養皮膚を移植した。培養皮膚を創面に貼付後、担体であるキチン不織布を取り除き、滅菌ガーゼ3枚で移植片を覆った。4日目にガーゼを剥がし、以後2日毎にガーゼを交換した。10日目に表皮は生着していた。
【0030】
さらに、得られたキチン不織布を担体とする培養皮膚を、必要に応じて適宜使用できるように凍結保存した。すなわち、キチン不織布を担体とする培養皮膚を円筒状に巻き、冷凍操作を行なった。使用に際して解凍操作を行なったとき、培養皮膚は破損することがなく、キチン不織布は優れた保護作用を有していた。比較のため、キチン不織布の代わりにワセリンガーゼを用いた以外は実施例1と同様にして得られたもので同様の操作を行ったが、解凍操作の際、ワセリンが溶け出して培養皮膚と分離してしまい、移植操作を行うことができなかった。
この結果より、本発明の担体はワセリンガーゼと比較して丈夫であり、培養皮膚を破損しないことが明らかである。
【0031】
次に、参考例1で得られた(実施例1に用いた)キチン不織布の性質を調べた。
〔抗菌性〕
抗菌剤ゲンタマイシンを含有した水溶液10mlに参考例1で得られたキチン不織布を浸漬した。このようにして得られたキチン不織布、抗菌剤に浸漬しないキチン不織布、抗菌剤含有ガーゼ( 比較例1) および抗菌剤を含まないガーゼ( 比較例2) について、緑膿菌の培養試験を行なった。
直径90mmのシャーレに20mlの寒天溶液を注入して作製した培地上に1×105 個/cm2の緑膿菌を播種し、上記の4試料(いずれも直径20mmの円形)を置き、37℃のインキュベータに入れた。2日後、寒天上に形成された緑膿菌発育阻止円を計測した。1種類の材料につき5枚ずつ供試した。1つの阻止円につき4箇所で直径を計測し、その平均値を求めた。
緑膿菌発育阻止円の直径は抗菌剤に浸漬したキチン不織布で28mmであり、顕著な阻止円が観察された。抗菌剤に浸漬しないキチン不織布では22mmであり、比較例1、2ではそれぞれ26mm、0mm であった。
以上から明らかなように、キチン不織布は抗菌剤の抗菌性を増強し、またキチン単独でもガーゼ単独より高い抗菌性を有していた。
【0032】
〔剛軟度〕
キチン不織布および一般のワセリンガーゼ( 比較例3) について、剛軟度をKES-F2純曲げ試験機により測定した。KES システムでは、曲率K =0.5 と1.5(cm-1) の間の傾斜を曲げ剛性とするが、キチン不織布の場合曲率K が0.5 以下で折れが発生するため、K =0 から折れるまでの間の傾斜で表した。結果を表1に示す。
【0033】
【表1】
Figure 0003773274
【0034】
表1から明らかなように、本発明に用いるキチン不織布はワセリンガーゼと比較して約15倍の曲げ剛性をもつ。この結果より、本発明に用いるキチン不織布は培養皮膚の移動、移植、保存に用いた際、培養皮膚の破損、変形がなく、皮膚の移植を容易に行うことができることが明らかである。
【0035】
〔滲出液蒸泄効果〕
キチン不織布( 通気度130cm3/cm2・ sec )および一般のワセリンガーゼ( 比較例4,通気度476cm3/cm2・ sec )について、臨床における滲出液蒸泄効果を比較した。深達性II度熱傷をキチン不織布およびワセリンガーゼで被覆し、創面の湿潤の程度を比較した。ワセリンガーゼで被覆した創面は滲出液が貯留して湿潤していたのに対し、キチン成形体で被覆した創面は滲出液の貯留もなく乾燥状態を呈していた。
この結果より、キチン成形体はワセリンガーゼと比較して、患部からの滲出液の吸収、排出性に優れていることが明らかである。
【0036】
実施例2
実施例1で作製したキチンドープ100gに 50gのポバール粉末(ユニチカケミカル株式会社製,UF−170GS)を添加し、均一に分散させた。この分散液をガラス板上に2mmの厚みに流延し、その上に木綿ガーゼを載せて十分に圧着させた後、約25℃の流水中に浸漬した。一夜放置後、凝固物をガラス板から剥離し、沸騰水中で5時間処理した後、凍結乾燥して、ガーゼと一体化したキチンスポンジを得た。このスポンジ上で、ヒトの大腿内側より採取した皮膚由来の表皮細胞を参考例2に示した方法で培養した。表皮細胞は一週間で融合性になった。このようにしてできた培養皮膚をキチンスポンジごと容器より剥した後、さらに培養皮膚の上にキチンスポンジをかぶせ、培養皮膚の上下をキチンスポンジで挟んだ状態のものを得た。
次に下側のキチンスポンジを剥した。そして上側のキチンスポンジと一体化した培養皮膚で採皮創を被覆した。その上から包帯を巻いて作業を完了した。10日後、滲出液の貯留はみられず、創面は乾燥し、理想的な状態であった。
以上の結果より、本発明の担体は、患部からの滲出液を吸収し、排出することができることが明らかである。
【0037】
【発明の効果】
本発明の培養皮膚の担体は、ワセリンガーゼと比較して、曲げ剛性が大きく、かつ丈夫であるので、培養皮膚の培養、移動、保存等の際に、培養皮膚を破損せず、容易に移植が行える。また、担体を培養皮膚と同時に患部へ適用した際、患部からの滲出液は担体に吸収され、患部に貯留することがない。特に、担体として不織布等の通気性のあるものを適用すると、効率よく滲出液を患部から吸収して、排出することができる。
さらに、本発明の培養皮膚の担体は、担体自体が抗菌性を有し、また抗菌剤の抗菌性を増強する作用を有するので、細菌の繁殖を抑えることが可能である。

Claims (1)

  1. シート状キチン成形体からなることを特徴とする培養皮膚の移動用担体。
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