JP3772993B2 - ポリカーボネートの製造法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、ポリカーボネートの製造法に関し、特に着色の少ない高分子量のポリカーボネートが得られるポリカーボネートの製造法に関する。
【0002】
【従来技術と発明が解決しようとする課題】
ポリカーボネートは、幅広い用途、特に射出成形用又は窓ガラスの代わりのガラスシートとしての用途を有する汎用エンジニアリングサーモプラスチックスである。
【0003】
従来よりこれらポリカーボネートの製造には界面重縮合法やエステル交換法等が適用されている。界面重縮合法は、一般的にポリカーボネートの製造に効果的であるが、有毒なホスゲンを使用することや塩素イオンが生成するポリカーボネートに残存することなどの欠点を有する
【0004】
これらの欠点を解消するために、有毒なホスゲンの代わりにホスゲンのダイマーである液体のトリクロロメチルクロロホルメートを用いて特殊な2価フェノールと界面重縮合反応させてポリカーボネートを製造する方法が特開昭63−182336号公報に開示されている。
【0005】
しかしながら、特殊な2価フェノールとして9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン類についての記載があるのみである。また、有毒なホスゲンの代わりにトリホスゲンを用いて2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンからポリカーボネートを得る方法がAngew.Chem.(アンゲバンテ,ヘミー)99.922(1987),ドイツ特許DE3440141号明細書に記載されているが、ホスゲンが発生する反応機構も提唱されている。
【0006】
エステル交換反応においては、ジフェニルカーボネートと芳香族ジヒドロキシ化合物にエステル交換触媒を加えて、加熱減圧下、フェノールを留出させながらプレポリマーを合成し、最終的に高真空下、290℃以上に加熱して、フェノールを留出させて高分子量のポリカーボネートを得ている(米国特許4345062号明細書)が、高分子量のポリカーボネートは他のエンジニアリングプラスチックスと異なって、溶融粘度が極めて大きいので、反応条件として290℃以上の高温を必要とし、また、沸点の高いフェノールを留去させるために高真空(10−2Torr)を必要とするため、設備の面からも工業化は難しく、更に生成するポリカーボネートにフェノールが残存することにより、色相や物性に好ましくない影響を及ぼすことが知られている。
【0007】
しかしながら、エステル交換法は溶融重縮合で反応を行わしめることができ、工業的に経済性の優れた手法であることから種々の検討がなされている。特に製品着色の観点から反応器の材質の影響が示唆されており、例えば、本発明の出発原料とは異なるものであるが米国特許4383092号明細書に開示されているように反応器材質としてタンタル、ニッケルまたはクロムを用いることにより製品着色の防止をはかることが提案されている。
【0008】
しかしながら、これらの金属は反応器利質として用いるには高価であることから、実質的ではない。さらに、本発明者らは、エステル交換触媒存在下、エステル交換法によりポリカーボネートを製造する際、炭素鋼やステンレススチールをそのまま使用した場合、高分子量化がはかれず、また、分子量の再現性が乏しいものであった。さらに着色の著しい樹脂であった。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、従来よりエステル交換反応によるポリカーボネートの製造法の課題の一つである樹脂の着色について鋭意研究した結果、工業的に経済性のある方法として、前縮合工程として反応器の接液部に鉄成分2%〜20%のハステロイ材料またはモネル材料を用い、粘度平均分子量が5,000〜20,000のポリカーボネートプレポリマーを得た後、前記化学式5、6、7、9、10から選ばれる着色防止剤を添加し、後縮合工程として粘度平均分子量が12,000〜60,000のポリカーボネートを得るまで反応を進めることにより、着色の少ない高分子量のポリカーボネートが得られるという事実を見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明に使用し得るエステル交換触媒の代表例としては、(a)金属を含んだ触媒に類する触媒として、水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、水素化ホウ素ルビジウム、水素化ホウ素セシウム、水素化ホウ素ベリリウム、水素化ホウ素マグネシウム、水素化ホウ素カルシウム、水素化ホウ素ストロンチウム、水素化ホウ素バリウム、水素化ホウ素アルミニウム、水素化ホウ素チタニウム、水素化ホウ素スズ、水素化ホウ素ゲルマニウム、テトラフェノキシリチウム、テトラフェノキシナトリウム、テトラフェノキシカリウム、テトラフェノキシルビジウム、テトラフェノキシセシウム、チオ硫酸ナトリウム、酸化ベリリウム、酸化マグネシウム、酸化スズ(4価)、ジブチルスズオキシド、水酸化ベリリウム、水酸化マグネシウム、水酸化ゲルマニウム、酢酸ベリリウム、酢酸マグネシウム、酢酸スズ(4価)、酢酸ゲルマニウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ベリリウム、炭酸マグネシウム、炭酸スズ(4価)、炭酸ゲルマニウム、硝酸スズ(4価)、硝酸ゲルマニウム、三酸化アンチモン、ビスマストリメチルカルボキシレート等が挙げられる。
【0010】
(b)電子供与性アミン化合物に類する触媒としては、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン、4−ジエチルアミノピリジン、4−アミノピリジン、2−アミノピリジン、2−ヒドロキシピリジン、2−メトキシピリジン、4−メトキシピリジン、4−ヒドロキシピリジン、2−ジメチルアミノイミダゾール、2−メトキシイミダゾール、2−メルカプトイミダゾール、アミノキノリン、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、4−メチルイミダゾール、ジアザビシクロオクタン(DABCO)等が挙げられる。
【0012】
また、(c)上記電子供与性アミン化合物の炭酸、酢酸、ギ酸、硝酸、亜硝酸、しゅう酸、フッ化ホウ素酸、フッ化水素酸塩等が挙げられる。(d)電子供与性リン化合物に類する触媒としては、トリエチルホスフィン、トリ−n−プロピルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリ−o−ジメトキシフェニルホスフィン、トリ−p−トリルホスフィン、トリ−o−トリルホスフィン、トリブチルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリ−p−トリルホスファイト、トリ−o−トリルホスファイト等が挙げられる。
【0013】
更に、(e)ボラン錯体に類する触媒としては、ボランと以下の化合物との錯体、すなわちアンモニア、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、t−ブチルアミン、ジメチルアニリン、ピリジン、ジメチルアミノピリジン、モルホリン、ピペラジン、ピロール、テトラヒドロフラン、ジメチルスルフィド、トリ−n−ブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリフェニルホスファイト等の錯体が挙げられる。
【0014】
また、本発明に用いられる2価ヒドロキシ化合物としては、例えば、化学式1〜4で表される化合物が挙げられる。具体的には、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、4,4’−ジヒドロキシ−2,2,2−トリフェニルエタン、2,2−ビス−(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−3−イソプロピルフェニル)プロパン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−3−sec.ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−3−ターシャリーブチルフェニル)プロパン、1,1’−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、1,1’−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン等が挙げられる。更に、これらの2種又は31以上の2価ヒドロキシ化合物を組み合せて共重合ポリカーボネートを製造することも可能である。
【0015】
本発明の製造法は上記に示すエステル交換触媒の少なくとも1種を用いて、ビスフェノールAのような2価のヒドロキシ化合物をビスフェニルカーボネートのようなビスアリールカーボネートと溶融重縮合反応させることによって実施される。
【0016】
この反応が進む温度は、100℃から約300℃までの範囲である。反応温度としては、好ましくは130℃から280℃の範囲である。反応温度が130℃未満であると反応速度が遅くなり、280℃を越えると副反応が起こりやすくなる。
【0017】
触媒として選択された少なくとも1種の化合物は、反応系中に存在する2価のヒドロシ化合物に対して10−1モルから10−5モルを必要とするが、好ましくは、10−2モルから10−4モルである。触媒量が10−5モル未満であると触媒作用が少なくポリカーボネートの重合速度が遅くなり、また、触媒量が10−1モル以上であると触媒として生成するポリカーボネートの残存する率が高くなるのでポリカーボネートの物性を招く。
【0018】
また、ビスアリールカーボネートの必要量は、反応系中に存在する2価ヒドロキシ化合物と当モルである。一般に高分子量のポリカーボネートが生成するためにはカーボネート化合物1モル2価ヒドロキシ化合物の1モルが反応しなければならない。ビスアリールカーボネートを用いた場合、ヒドロキシ化合物2モルが前記反応によって生じる。これらの2モルのヒドロキシ化合物は反応系外に留去される。しかしながら、工業的には、従来よりビスアリールカーボネートをヒドロキシ化合物に対して1.00〜1.10モルのビスアリールカーボネート過剰で処理されており、本発明の条件として包含されるものである。
【0019】
本発明において、反応器の接液部に用いる鉄成分2%〜20%の材料として、例えばモネル400(Ni66.5%,Cu31.5%,Fe2%)、ハステロイB−2(Ni68%,Mo28%,Fe4%)、ハステロイC−276(Cr15.5%,Ni59%,Mo16%,W3.8%,Fe5.5%)、インコネ600(Ni76%,Cr15.5%,Fe8%)等が挙げられる。本発明においては、上記物質を表面材料とした張り合わせ材料あるいはメッキした材料も含まれる。また、グラスライニングもしくはセラミックスのコーティング等の方法も含まれるものである。また、添加する着色防止剤としては、例えば、リン化合物であり次の化学式5,6,7,8,で表わされる化合物である。
【0020】
【化学式5】
【化学式6】
(但し、R1は炭素数1〜30の炭化水素基を表す。)
【化学式7】
【化学式8】
【化学式9】
【0021】
また、ヒンダードフェノール化合物が化学式10を有するヒンダードフェノール化合物
【化学式10】
(但し、R2は炭素数1〜30の炭化水素基を表す。)
【0022】
さらに、具体的には、化学式5はトリデシルホスファイト、化学式6はトリス(4−ノニルフェニルホスファイト)、化学式7はトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、化学式8はビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト)、化学式9はテトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、化学式10はオクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートが好ましい。
【0023】
ただし、本発明における着色防止剤の種類はこれらに限定されるものではない。添加量は、好ましくは重合物全量に対して、0.005wt%から1wt%である。また、併用して使用することも可能である。
【0024】
また、ビスアリールカーボネートの代表例としては、ジフェニルカーボネート、ビス(2,4−ジクロルフェニル)カーボネート、ビス(2,4,6−トリクロルフェニル)カーボネート、ビス(2−シアノフェニル)カーボネート、ビス(o−ニトロフェニル)カーボネート、ジトリルカーボネートなどの非置換及び核置換基をもつビスアリールカーボネートが挙げられる。以下実施例にて本発明を説明する。
【0025】
【実施例1】
ビスフェノールA4566g(20.0モル),ジフェニルカーボネート4392g(20.5モル)と4−ジメチルアミノピリジン0.489g(0.004モル)及び酢酸カリウム0.039g(0.0004モル)を、反応器材質としてハステロイC−276(Cr15.5%,Ni59%、Mo16%、W3.8%、Fe5.5%)を用いた20l槽型撹拌槽に仕込み、窒素置換した後、180℃まで昇温し溶解した。次に260℃まで徐々に昇温しながら2Torrまで減圧にし、副生するフェノールを留去していく。約4時間後、粘度平均分子量15,000のポリカーボネートプレポリマーを得た。次にトリス(4−ノニルフェニルホスファイト)2.54gとトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト2.54gとオクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート5.08gを添加し、均一に分散させた後、280℃,0.2Torrにコントロールされたセルフクリーニング二軸押出機に送り込み、ギヤポンプにて850g/Hrで排出を行った。得られたポリマーの粘度平均分子量は30,000であった。色相は、A380−A580=0.07であった。
【0026】
【実施例2】
実施例1と同様な方法で反応を行い、20l槽型撹拌槽の材質をモネル400(Ni66.5%、Cu31.5%、Fe2%)にて行った。得られたポリマーの粘度平均分子量は28,000で、色相はA380−A580=0.09であった。
【0027】
【実施例3】
実施例1と同様な反応器材質で同様な方法で反応を行い、トリス(4−ノニルフェニルホスファイト)、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートの代わりに、トリデシルホスファイト1.68g、テトラ(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト2.54gを添加して行った。得られたポリマーの粘度平均分子量は31,000で、色相はA380−A580=0.10であった。
【0028】
【比較例1】
実施例1と同様な方法で反応を行い、反応器材質としてSUS316(Cr18%、Ni12%、Mo2%、Fe68%)を用いた場合、得られたポリマーの粘度平均分子量は25,000で、色相はA380−A580=1.20であった。
【0029】
【比較例2】
実施例1において、着色防止剤を加えずに反応を行った場合、得られたポリマーの粘度平均分子量は29,000で、色相はA380−A580=0.95であった。
【0030】
ここで、粘度平均分子量の測定方法は、20℃における塩化メチレン溶液の固有粘度
た。
【0031】
【0032】
また、色相の評価はポリカーボネートを10%塩化メチレン溶液として、UV測定装置で380μmと580μmの波長領域での吸光度の差を測定し、表示したものであり、値が大きいほど着色していることを示す。なお、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0033】
【発明の効果】
本発明によれば、着色の少ない高分子量のポリカーボネートを工業的に経済性の優れた方法で効率よく製造することができる。
Claims (2)
- エステル交換触媒の存在下で2価ヒドロキシ化合物ビスアリールカーボネートをエステル交換法により溶融重縮合させ、ポリカーボネートを製造する方法において、前縮合工程として反応器の接液部に鉄成分2%〜20%のハステロイ材料またはモネル材料を用い、粘度平均分子量が5,000〜20,000のポリカーボネートプレポリマーを得た後、下記化学式5、6、7、9、10から選ばれる着色防止剤を添加し、後縮合工程として粘度平均分子量が12,000〜60,000のポリカーボネートを得るまで反応を進めることを特徴とするポリカーボネートの製造法。
【化学式5】
【化学式6】
(但し、R1は炭素数1〜30の炭化水素基を表す。)
【化学式7】
【化学式9】
【化学式10】
(但し、R2は炭素数1〜30の炭化水素基を表す。) - 反応器の接液部に用いる材料が、ハステロイB−2(Ni68%,Mo28%,Fe4%)、ハステロイC−276(Cr15.5%,Ni59%,Mo16%,W3.8%,Fe5.5%)、またはモネル400(Ni66.5%,Cu31.5%,Fe2%)である請求項1に記載のポリカーボネートの製造法。
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