JP3772674B2 - 電子打楽器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、打撃センサで検出されるセンシング信号により楽音信号を制御する電子打楽器に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、電子打楽器においてアコースティックドラムの音を忠実に再現する技術は、電子楽器の一つの重要な課題である。しかし、特に打楽器の奏法あるいは打楽器を使用するシチュエーションでは、面白味があること、表現豊かなバリエーションのある楽音が得られることも、音楽の分野において価値のあることである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、電子打楽器の分野において、このようなアプローチはまだ不十分であり、斬新な電子打楽器が待望されている。
本発明は、表現豊かなバリエーションのある楽音を発生する電子打楽器を提供することを課題とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1の電子打楽器は、打撃面を有するパッドと、該パッドに連設され、該打撃面への打撃にて打撃をセンスする打撃センサとを備え、該打撃面の打叩により該打撃センサのセンシング信号を得て、該センシング信号に応答して楽音信号を発生するようにした電子打楽器において、前記打撃センサは前記打撃面の打叩によりその振動波形を検出するアナログセンサからなり、該打撃センサからの振動波形信号そのものを入力とし、LFOで変調制御されるフィルタ手段と、該打撃センサからの振動波形信号のうちの立ち上がり要素をトリガ信号とし、所定の楽音波形を読み出す音源手段と、前記フィルタ手段と前記音源手段との出力を混合する混合手段と、を有し、該混合手段から第1または第2もしくはその両方の信号を発生するようにしたことを特徴とする。
【0005】
上記のように構成された請求項1の電子打楽器によれば、前記打撃センサの打撃面を打ったり叩いたりするとアナログセンサがその振動波形を検出し、該打撃センサから振動波形信号が出力される。この振動波形信号そのものが、LFOで変調制御されるフィルタ手段に入力される。一方、打撃センサから出力される振動波形信号のうちの立ち上がり要素をトリガ信号として音源手段が所定の楽音波形を読み出す。そして、フィルタ手段からは変調制御によりフィルタ処理された第1の信号が出力され、音源手段からは第2の信号が出力され、混合手段は第1または第2もしくはその両方の信号を発生する。
【0006】
前記打撃センサから出力される振動波形信号は、打撃面を打ったり叩いたりする操作に応じてその都度千差万別に変化し、さらにこれがフィルタ手段で変化するので、第1の信号はピッチや音色が種々変化する多様な楽音となる。また、打撃センサから出力される振動波形信号の立ち上がりにより音源手段から第2の信号が出力されるので、打撃センサが楽音発生のスイッチとしても機能する。第1の信号だけを発生したり、第2の信号だけを発生したり、第1および第2の信号を混合して発生することができ、表現豊かなバリエーションのある楽音となる。
【0007】
本発明の請求項2の電子打楽器は、打撃部を有する加圧子と、該加圧子に固着され、該加圧子による外部被打撃面への打撃にて該打撃をセンスする打撃センサとを備え、該外部被打撃面の打叩により該打撃センサのセンシング信号を得て、該センシング信号に応答して楽音信号を発生するようにした電子打楽器において、前記打撃センサからのセンシング信号そのもの入力とし、LFOで変調制御されるフィルタ手段と、前記打撃センサからのセンシング信号をトリガ信号とし、所定の楽音波形を読み出す音源手段と、前記フィルタ手段と前記音源手段との出力を混合する混合手段と、を有し、該混合手段から第1または第2もしくはその両方の信号を発生するようにしたことを特徴とする。
【0008】
上記のように構成された請求項2の電子打楽器によれば、前記打撃センサの加圧子を外部被打撃面(机や台などその他の部材面)に打撃すると、該打撃センサからセンシング信号が出力される。この打撃センサから出力されるセンシング信号がフィルタ手段で変化して、第1の信号はピッチや音色が種々変化する多様な楽音とり、また、該センシング信号の立ち上がりにより音源手段から第2の信号が出力されるので、請求項1と同様な作用効果が得られる。さらに、請求項3の電子楽器によれば、請求項2の作用効果に加えて、楽音信号が前記センシング信号そのもののアナログ情報により制御される。
【0009】
打撃センサから出力されるセンシング信号をトリガとして楽音信号が出力されるので、打撃センサが楽音発生のスイッチとしても機能する。センシング信号そのもののアナログ情報は例えばセンシング信号のエンベロープ等であり、加圧子を打ったり叩いたりする操作に応じて種々変化する。これにより楽音信号の例えば音量(あるいはエンベロープ)が制御されるので、多様な楽音となり、表現豊かなバリエーションのある楽音となる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。この実施の形態の電子打楽器は、打撃センサを備えた操作部の各実施例(操作部AA/図7参照、操作部BB/図8〜9参照、操作部CC/図8〜9参照、とする。)と回路部の各実施例(回路部A/図1参照、回路部B/図3参照、回路部C/図4参照とする。)の各種組合せとして構成されている。まず、操作部について説明する。
【0011】
(操作部AA)
図7は操作部AAの構成を概略的に示す図であり、図7(A) は断面図、図7(B) は底面図である。なお、この操作部AAは電子打楽器のケース等に取付られるものである。図7(A) に示すように、円板状の鉄板で形成されたパッド板11は、スティック等で打撃されるのに適した十分な強度を有する。パッド板11の上表面は、ゴム等で形成されたパッド表皮体12で被覆され、打撃面を構成する。パッド表皮体12は、パッド板11の上表面から外周を経て、周辺部下面までを覆っている。
【0012】
パッド表皮体12に連続して、パッド板11下面の周辺部において、複数個の円柱状弾性保持体12aが下側に突出している。弾性保持体12aの先端は、一旦半径を縮小させた小径部を形成した後、再び半径が増大し、鉤部12bを構成している。なお、弾性保持体およびその先端の鉤部は、図7(B) に示すように、円盤の4箇所に配されている。鉤部12bは、支持板部材13の透孔に押し込んでパッド体1を支持するものであるが、接着等の他の支持方法を用いてもよい。
【0013】
パッド板11の下面には、鉄等の十分な強度を有する材料で形成された複数個の円柱状スタッド14が溶接されている。図7(A) には一つのスタッド14を示すが、図7(B) の3つのネジ15の下部にそれぞれスタッド14が配されている。スタッド14は、パッド板11を3分割した位置の外周部に配されている。
【0014】
スタッド14の底面上に、打撃センサとしてのセンサユニット16のセンサ板16aが載置され、ネジ15によって固着されている。センサ板16aは、図7(B) に示すように、圧電センサ等で形成されたセンサ本体16bを固着する中央部16a−1と、この中央部16a−1から半径方向外側に延在するブリッジ体16a−2を含む板状部材で構成されている。そして、これらブリッジ体16a−2の先端が、スタッド14の先端に結合されている。
【0015】
パッド体1とセンサユニット16の中間に、ケースの一部である支持板部材13が配されている。支持板部材13には、複数個の透孔が開けられており、スタッド14は透孔13a内を貫通している。透孔13aは、スタッド14の径より十分大きな径を有し、スタッド14が支持板部材13に接触することなく、振動することを許容する。ケースの上面からは、図7(A) に示すように、パッド体1を取り囲むように環状リブ13bが突出している。
【0016】
また、弾性保持体12aは、支持板部材13の透孔13aに押し込んで結合され、鉤部12bが支持板部材13の下面上で再び拡張することにより、パッド体1を支持板部材13上に支持する。弾性保持体12aは、パッド体1を図7(B) に示すように、4箇所で保持する。弾性保持体12aの弾性により、パッド板11は衝撃によりほぼ自由に振動することができる。
【0017】
以上の構成により、パッド体1は4箇所の弾性保持体12aによって支持板部材13に支持され、3箇所のスタッド14が透孔13aを貫通してパッド体1をセンサ板16aに結合する。これにより、パッド体1(パッド表皮体12)への衝撃は、パッド板11からスタッド14を介してセンサ板16aに伝達され、センサ板16aが振動する。センサ板16aの中央部16a−1に固着されたセンサ本体16bはピエゾ型圧電センサであり、センサ板16aの振動波形に対応する振動波形信号がセンサ本体16bから得られ、この振動波形信号が後述する回路部に入力される。
【0018】
なお、パッド板11とセンサ板16aが3箇所で結合されていることにより、パッド板11のどの位置を打撃しても、センサ板16aにほぼ均一が衝撃が伝達される。センサユニット16のセンサ板16aが、円板状中央部とこの中央部から半径方向に対称的に突出する3つのブリッジ体を有する場合を説明したが、ブリッジ体の数は3に限らない。ただし、ブリッジ体の数をあまり増加すると、パッド板11の振動が制約され、感度が減少する。また、パッド板とセンサ板の結合箇所を例えば1箇所のみにすると感度ムラが生じてしまう。パッド板とセンサ板を結合するスタッドの数は3以上であれば感度ムラを実質的に減少することができる。しかし、この感度ムラを積極的に設けて、打撃する場所に応じて異なる特性を持たせるようにしてもよい。
【0019】
(操作部BB)
図8は操作部BBの断面図であり、この操作部BBは人工皮革製のバンド21により人の指先Fに取り付けられる。バンド21は、指先Fの腹側の部分を下基板21aおよび上基板21bとされ、下基板21aの腹側と反対側には、その略中央部にピエゾ型圧電センサである打撃センサとしてのセンサ本体22、センサ補強材23および加圧子24が配置されている。そして、加圧子24の膨出された打撃部24aを上基板21bの透孔21b−1から突出した状態で、センサ本体22、センサ補強材23および加圧子24が下基板21aと上基板21bとの間に収納されている。
【0020】
以上の操作部BB(および後述の操作部CC)は、図9に示したように親指、人差し指および中指の先端にそれぞれ取り付けられる。また、手の甲および手のひら部分には人工皮革製のグラブ25が装着される。なお、図9は手のひら側から見た図であり、グラブ25の親指の付け根側にも操作部BBと同様なセンサ構造をした操作部BB′が取り付けられている。さらに、グラブ25の小指の付け根側には、後述のミュートセンサ26が取り付けられている。また、各操作部BBのセンサ本体22から信号を取り出すリード線27はグラブ25の手の甲側で一つにまとめられ、図示しない楽器本体に接続される。
【0021】
以上の構成により、指先あるいは手のひらを例えば台や机の上で叩くように操作すると、主に加圧子24の打撃部24aが被打撃面(台上面や机上面)に当たり、加圧子24に衝撃振動が加えられる。そして、この衝撃振動に対応する振動波形信号がセンサ本体22から得られ、この振動波形信号が後述する回路部に入力される。
【0022】
(操作部CC)
図10は操作部CCの断面図であり、この操作部CCは人工皮革製のバンド31により人の指先Fに取り付けられる。バンド31は、指先Fの腹側の部分を下基板31aおよび上基板31bとされ、下基板31aの腹側と反対側には、その略中央部に皿状のセンサケース33aが配設され、このセンサケース33a内には、曲げ方向に弾性を有し薄板からなる感圧導電体32aを電極32bで挟んでサンドイッチ状になった押圧センサ32が収容されている。この押圧センサ32は、板面垂直方向加圧時に電極32b,32b間の抵抗値を減少させ、非加圧時には、その抵抗値がほぼ無限大値を呈するものとして構成されている。また、押圧センサ32の上(指先Fの腹側と反対側)には絶縁フィルム(ポリエステル)35を介して打撃センサとしての圧電センサ36が配設され、圧電センサ36はゴムシート37で覆われ、さらに、ゴムシート37上に座34bを介して加圧子34が配設されている。そして、加圧子34の膨出された打撃部34aを上基板31bの透孔31b−1から突出した状態で、センサケース33a、押圧センサ32、絶縁フィルム35、圧電センサ36、ゴムシート37および加圧子34が下基板31aと上基板31bとの間に収納されている。
【0023】
なお、この操作部CCも図9に示したように、操作部BBと同様に、親指、人差し指および中指の先端にそれぞれ取り付けられる。また、グラブ25の親指の付け根側にも操作部CCと同様なセンサ構造をした操作部CC′が取り付けられている。さらに、グラブ25の小指の付け根側には、後述のミュートセンサ26が取り付けられている。
【0024】
以上の構成により、指先あるいは手のひらを例えば台や机の上で叩くように操作したり、押すように操作する。これにより、主に加圧子34の打撃部34aが被打撃面(台上面や机上面)に当たったり押しつけられたりし、圧電センサ36から衝撃に対応する電圧信号(アナログ信号)が得られる。また、感圧導電体32aを挟む電極32b、32b間の抵抗が変化し、低電流を印加することにより押圧力に応じた電圧信号(アナログ情報)が得られる。そして、このれらの電圧信号は後述する回路部に入力される。
【0025】
次に、回路部について説明する。
(回路部A)
図1は回路部Aの回路ブロック図である。センサ10は前記操作部の各センサ本体16b,22,32であり、このセンサ10の出力信号はVCF(ボルテージコントロールドフィルター)20、音源手段としての波形発生回路30、レベル制御部40に入力される。VCF20は、アナログ回路でも、デジタル回路で構成してもよく、アナログ回路で構成される場合はその出力はA/D変換されて後述のセレクタ80に接続され、デジタル回路で構成される場合はセンサ10からの入力はA/D変換されて入力され、同様に後述のLFO出力の入力についても複数ビットのデジタル値として入力される。VCF20にはLFO(低周波発振器)50の出力が入力され、波形発生回路30には音色選択スイッチ60が接続されている。VCF20の出力は加算回路70とセレクタ80のA入力に入力され、波形発生回路30の出力は加算回路70とセレクタ80のC入力に入力される。加算回路70の出力はセレクタ80のB入力に入力される。セレクトスイッチ90の選択信号は、このセレクトスイッチ90で選択されてセレクタ80の制御端子SA、SB、SCに択一的に入力される。
【0026】
セレクタ80の出力はGC(ゲインコントロール回路)100に入力され、GC100の出力はD/A(デジタル/アナログコンバータ)110に入力される。D/A110の出力はSS(サウンドシステム)120に入力される。また、レベル制御部40の出力はGC100に入力される。
【0027】
図2は波形発生回路30の詳細を示す回路図である。トリガ検出回路30aはセンサ10からの入力信号のエンベロープのピークを楽音発生のトリガ(ノートオン)を検出してトリガ信号を出力する。このトリガ信号はフリップフロップ30bをセットし、フリップフロップ30bの出力が波形メモリ30cのEN(イネーブル)端子、アドレス制御回路30dのEN端子およびクロック発生器30eのEN端子にそれぞれ入力される。また、トリガ信号は、OR回路30fを介してアドレス制御回路30dとクロック発生器30eのR端子に入力される。これにより、波形メモリ30c、アドレス制御回路30dおよびクロック発生器30eが作動する。なお、トリガ信号は、レベル制御部40へのラッチ信号(L)として出力される。アドレス制御回路30dはクロック発生器30eからのクロックに同期して波形アドレスの下位アドレス(所定ビット)を加算器30gに出力する。
【0028】
一方、スタートアドレスメモリ30hとエンドアドレスメモリ30iは、波形メモリ30cにおける各音色の波形データについてのスタートアドレスとエンドアドレスをそれぞれ記憶している。なお、図6は波形メモリ30cの波形データの一例である。この例では、「BD(バスドラム)」、「HHT(ハイハット)」、「Si(シンバル)」、…「アストロ(宇宙をイメージするような装飾音)」、…「ブラシ」等のドラムおよび装飾音の音色の波形データが記憶されている。なお、「STA」はスタートアドレス、「EDA」はエンドアドレスを示している。
【0029】
音色アドレスデータ発生器30jは、音色選択スイッチ60で選択された音色に対応する音色データをスタートアドレスメモリ30hとエンドアドレスメモリ30iにそれぞれ出力する。これにより、選択音色の波形データのスタートアドレスがスタートアドレスメモリ30hから加算器30gに出力され、同波形データのエンドアドレスがエンドアドレスメモリから比較器30kに出力される。なお、スタートアドレスの所定ビットの下位アドレスは“0”であり、実質的に上位アドレスが音色に対応している。
【0030】
加算器30gにおいて、アドレス制御回路30dから出力される下位アドレスとスタートアドレスメモリ30hから出力されるスタートアドレスとが加算され、この加算結果は、順次更新する波形アドレスとして波形メモリ30cと比較器30kにそれぞれ出力される。こにれより、波形メモリ30cから選択音色の波形データが順次出力される。そして、比較器30kにおいてA入力の現在の波形アドレスとB入力のエンドアドレスが一致すると、一致信号(EQ)が出力され、この一致信号はフリップフロップ30bをリセットし、波形メモリ30c、アドレス制御回路30d、クロック発生器30eがデスエーブルとなって動作を停止する。また、一致信号はOR回路30fを介してアドレス制御回路30dとクロック発生器30eのリセット信号として入力されるとともに、レベル制御部40へのリセット信号として出力される。
【0031】
図1において、レベル制御部40はラッチ回路41を備えており、センサ10から出力されるアナログ信号はラッチ回路41のアナログ入力端子(A)に入力される。このアナログ信号は、波形発生回路30から出力されるラッチ信号(L)の入力によりラッチされ、このラッチされた信号はアナログ/デジタル変換されてA/D端子からGC100に出力される。
【0032】
ここで、図2のトリガ検出回路30aは、センサ10からの入力信号が図5に破線で示したような振動波形信号の場合、実線で示したエンベロープ(包絡線)のピークを検出したときラッチ信号を出力する。したがって、ラッチ回路41において、ラッチ信号(L)によりピークレベルPRがラッチされ、これがゲイン信号としてGC100に出力される。そして、GC100はゲイン信号のレベルに応じたゲインでセレクタ80の出力を増幅する。なお、ゲイン信号は波形データの読出し終了による一致信号(EQ)の出力によりリセットされる。
【0033】
図1において、VCF20は、この例ではバンドパスフィルタであり、その透過帯域のf特性(あるいは中心周波数)がLFO(低周波発振器)50の出力によって低周波数と高周波数の間で例えば1秒〜10秒の周期で周期的に変動するように構成されている。また、VCF20はデジタルフィルタであり、センサ10からのアナログ入力信号をそのデジタル信号に変換するA/D変換器を含んでいる。したがって、VCF20からは、センサ10から入力される振動波形信号の周波数成分から選択透過される合成成分が変化し、変化に富んだ音色の楽音信号が出力される。また、波形発生回路30からは、音色選択スイッチ60で選択された音色に対応する音色データが、楽音信号として出力される。
【0034】
そして、セレクタ80は、制御端子SAが選択されるとVCF20の出力信号のみをGC100に出力し、制御端子SCが選択されると波形発生回路30の出力信号のみをGC100に出力する。また、制御端子SBが選択されるとVCF20の出力信号と波形発生回路30の出力信号とを加算した信号(加算器70の出力信号)をGC100に出力する。そして、GC100はレベル制御部40から設定されるゲインに応じてセレクタ80の出力信号を増幅し、D/A110でのデジタル/アナログ変換を経てサウンドシステム120で楽音が発生される。
【0035】
(第1実施例)
第1実施例は操作部AA(図7)を回路部Aに接続したものであり、図1のセレクトスイッチ90で手動により、セレクタ80を切り換える「SA」、「SB」、「SC」の何れかを選択する。また、波形発生回路30の音色は音色選択スイッチ60で選択する。そして、操作部AAのパッド表皮体12への衝撃により、パッド表皮体12を叩く度にVCF20に対して微妙に異なる入力信号が得られる。
【0036】
「SA」を選択すると、センサ本体23(ピエゾ型圧電センサ)から出力される振動波形信号がVCF20およびLFO50で制御され、さらに、VCF20のフィルタ特性の変化により、変化に富んだ音色が得られる。すなわち、VCF20のフィルタ特性は時間的に変化し、パッド表皮体12に対して同様な衝撃を連続した与えても、変化に富んだ楽音が得られる。例えば、「コン」、「キン」、「クン」、「カン」、「シュー」、「シャ」といったように音色変化に富んだ楽音が出力される。なお、音量は、センサ10の出力レベル(打撃の強さ)に応じて、レベル制御部40およびGC100によって制御される。
【0037】
「SC」を選択すると、音色選択スイッチ60で選択されて波形メモリ30cから出力される波形データの音色の楽音が得られる。「SB」を選択すると、VCF20の出力と波形メモリ30cの出力とが合成された音色の楽音が得られる。
【0038】
(第2実施例)
第2実施例は操作部BB(図8)を回路部Aに接続したものであり、第1実施例とは演奏入力形態が異なっているだけで、操作部BBが指の操作によりセンサ本体22(ピエゾ型圧電センサ)から信号を出力する点以外は、第1実施例と同様である。
【0039】
(第3実施例)
第1および第2実施例では、セレクタ80の出力選択をセレクトスイッチ90により選択するようにしているが、図1に破線で示したように、音色選択スイッチ60で選択される音色に対応して、セレクタ80の制御端子SA、SB、SCに選択信号を択一的に入力されるようにしてもよい。なお、図1の破線の回路の意味は、音色選択スイッチ60の選択線のうち、所定のいくつかの線のOR出力が制御端子SAに入力され、残りのうちのいくつかの線のOR出力が制御端子SBに入力され、残りのいくつかの線のOR出力が制御端子SCに入力されることを示している。例えば音色「アストロ」を選択すると制御端子SAが選択されてVCF20のみの音色が選択されるようにする。なお、操作部は操作部AAでも操作部BBでもよい。
【0040】
(第4実施例)
図1ではレベル制御部40としてラッチ回路41だけを用いているが、この第4実施例では、レベル制御部40を図3の回路部Bとするとともに、図9のグラブ25に取り付けられたミュートセンサ26を用いる。図3において、セレクタ42のA入力には前記操作部BBのセンサ本体(ピエゾ型圧電センサ)22や操作部CCのセンサ本体(感圧型センサ)32の出力信号が入力される。プリセットデータ発生器43は、センサ本体22,32から通常出力されるピークレベルよりもある程度低いレベル(ミュートレベル)の電圧を出力するものであり、例えばボリューム等で構成されている。このプリセットデータ発生器43の出力電圧はセレクタ42のB入力に入力される。
【0041】
ミュートセンサ26はオン/オフスイッチであり、そのスイッチ信号がセレクタ42の制御端子に入力され、例えば、ミュートセンサ26を机上等に押し当てるとセレクタ42の入力Bが選択され、ミュートセンサ26を開放するとセレクタ42の入力Aが選択され、このセレクタ42の出力信号はラッチ回路44のアナログ入力端子(A)に入力される。なお、ラッチ回路44は、前記実施例のラッチ回路41と同様に、波形発生回路30から出力されるラッチ信号(L)の入力によりアナログ入力をラッチし、このラッチした信号をアナログ/デジタル変換してA/D端子からGC100に出力する。
【0042】
以上の構成により、例えば、ミュートセンサ26を開放した状態で指(操作部BBまたは操作部CC)でドラム音の演奏をすると、入力信号のレベルに応じた音量で発音されるが、ミュートセンサ26を机上等に押し当てると、上記入力信号のレベルより低いミュートレベルの電圧(プリセットデータ発生器43の出力)によりGC100のゲインが制御されるので、音量を急激にミュートすることができる。また、ミュートレベルはプリセットデータ発生器43により可変に調節することができる。
【0043】
(第5実施例)
第5実施例は、図1におけるレベル制御部40を図4の回路部Cとするとともに、図10の操作部CCを回路部Cに接続したものである。操作部CCは前述したとおりの感圧型のセンサユニットであり、アフタセンサとして押圧センサ32が用いられ、音源発生用センサとして感圧センサ36が用いられる。
【0044】
そして、押圧センサ32から検出される押圧力に応じた出力信号(アナログ電圧信号)をA/D変換器45でデジタル信号に変換してレベル変換テーブル46に入力する。このレベル変換テーブル46は入力されるデジタル信号(A/D変換器45の出力)の“0”出力〜最大出力を“0”〜“1”に変換して乗算器47に出力する。一方、感圧センサ36から検出される衝撃に応じた出力信号(アナログ電圧信号)を図1の包絡線検出回路130を介してVCF20に入力するとともに、波形発生回路30のトリガ検出回路30aに入力する。さらに、この感圧センサ36からの出力信号をA/D変換器48でデジタル信号に変換して乗算器47に出力する。
【0045】
そして、乗算器47で、A/D変換器48の出力信号にレベル逆変換テーブル46の出力信号を乗算し、その乗算信号をラッチ回路49に出力する。ラッチ回路49は、波形発生回路30から出力されるラッチ信号(L)の入力により乗算器47からの乗算信号(デジタル信号)をラッチし、このラッチした信号をGC100に出力する。
【0046】
以上の構成により、指(操作部CC)でドラム音の演奏して、入力信号のレベルに応じた音量で発音することができる。また、指を机上等に押し当て、強く押すほど乗算器47から出力されるレベルが大きくなる。すなわち、押圧センサ32を押す力を変化させることにより、音量を自在に変化させるアフタ制御も可能である。さらに、波形メモリの能動時(SC選択時)には、選択された音色の再トリガ発音により、連打音のような楽音を発生することができる。
【0047】
なお、以上の実施例では音源発生用センサとして感圧センサ36を用いているが、この音源発生用センサとして押圧センサ32を用いるようにしてもよい。
【0048】
以上の実施形態では本発明を自動演奏装置および電子楽器に適用した例を示したが、どのようなタイプの電子楽器でもよい。また、電子楽器の形態に限らず、パソコン+アプリケーションソフトウェアの形態として、その入力手段に適用してもよい。さらに、本発明は、音源の方式や自動演奏の方式はどのようなものであってもよい。
【0049】
【発明の効果】
本発明の請求項1の電子打楽器によれば、打撃センサから出力される振動波形信号がフィルタ手段で変化して、第1の信号はピッチや音色が種々変化する多様な楽音とり、また、該振動波形信号の立ち上がりにより音源手段から第2の信号が出力されるので、第1の信号だけを発生したり、第2の信号だけを発生したり、第1および第2の信号を混合して発生することができ、表現豊かなバリエーションのある楽音を発生することができる。
【0050】
本発明の請求項2の電子打楽器によれば、打撃センサから出力されるセンシング信号がフィルタ手段で変化して、第1の信号はピッチや音色が種々変化する多様な楽音とり、また、該センシング信号の立ち上がりにより音源手段から第2の信号が出力されるので、請求項1と同様に、第1の信号だけを発生したり、第2の信号だけを発生したり、第1および第2の信号を混合して発生することができ、表現豊かなバリエーションのある楽音を発生することができる。さらに、請求項3によれば、請求項2の効果に加えて、該センシング信号の例えばエンベロープ等のアナログ情報により楽音信号の例えば音量が制御されるので、打撃センサの加圧子を打ったり叩いたりする操作に応じて楽音信号が種々変化し、多様な楽音となり、表現豊かなバリエーションのある楽音となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態における回路部Aの回路ブロック図である。
【図2】実施形態における波形発生回路の詳細を示す回路図である。
【図3】第4実施例におけるレベル制御部の回路ブロック図である。
【図4】第5実施例におけるレベル制御部の回路ブロック図である。
【図5】実施形態におけるトリガ検出回路とラッチ回路の信号の一例を示す図である。
【図6】実施形態における波形データの一例を示す図である。
【図7】実施形態における楽音制御回路のブロック図である。
【図8】実施形態における操作部BBの断面図である。
【図9】実施形態における操作部の取り付け状態を示す図である。
【図10】実施形態における操作部CCの断面図である。
【符号の説明】
10…センサ、20…VCF(フィルタ手段)、30…波形発生回路(音源手段)、40…レベル制御部、50…LFO、60…音色選択スイッチ、70…加算回路(混合手段)、80…セレクタ、90…セレクトスイッチ、100…GC11…パッド板(パッド)、12…パッド表皮体(パッド、打撃面)、16b…センサ本体(打撃センサ)、24,34…加圧子、24a,34a…打撃部、36…圧電センサ(打撃センサ)
Claims (3)
- 打撃面を有するパッドと、該パッドに連設され、該打撃面への打撃にて打撃をセンスする打撃センサとを備え、該打撃面の打叩により該打撃センサのセンシング信号を得て、該センシング信号に応答して楽音信号を発生するようにした電子打楽器において、
前記打撃センサは前記打撃面の打叩によりその振動波形を検出するアナログセンサからなり、該打撃センサからの振動波形信号そのものを入力とし、LFOで変調制御されるフィルタ手段と、
該打撃センサからの振動波形信号のうちの立ち上がり要素をトリガ信号とし、所定の楽音波形を読み出す音源手段と、
前記フィルタ手段と前記音源手段との出力を混合する混合手段と、を有し、
該混合手段から第1または第2もしくはその両方の信号を発生するようにしたことを特徴とする電子打楽器。 - 打撃部を有する加圧子と、該加圧子に固着され、該加圧子による外部被打撃面への打撃にて該打撃をセンスする打撃センサとを備え、該外部被打撃面の打叩により該打撃センサのセンシング信号を得て、該センシング信号に応答して楽音信号を発生するようにした電子打楽器において、
前記打撃センサからのセンシング信号そのもの入力とし、LFOで変調制御されるフィルタ手段と、
前記打撃センサからのセンシング信号をトリガ信号とし、所定の楽音波形を読み出す音源手段と、
前記フィルタ手段と前記音源手段との出力を混合する混合手段と、を有し、
該混合手段から第1または第2もしくはその両方の信号を発生するようにしたことを特徴とする電子打楽器。 - 前記打撃センサからのセンシング信号そのもののアナログ情報を用いて、前記楽音信号を制御することを特徴とする請求項2に記載の電子打楽器。
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