JP3772114B2 - エポキシ樹脂組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、遮光性に優れた硬化物を得ることのできるエポキシ樹脂組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
各種電気的素子を樹脂封止された電子部品が多くの電気・電子機器製品に汎用されている。例えば、従来から、反射型フォトカプラーが各種電気・電子機器部品として用いられている。このような反射型フォトカプラーは、一般的につぎのような構成からなる。すなわち、図1に示すように、発光素子1と受光素子2をそれぞれ内包する透明な第1封止層3と、この第1封止層3の外周に形成された遮光性を有する第2封止層4の二層構造の封止層によって樹脂封止された構成からなる。図1において、5および5′は発光素子1および受光素子2にそれぞれ接続されたリードである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
そして、上記構成を備えた反射型フォトカプラーにおいて、第2封止層4は外部からの光を遮光するためにチタン白を含有するエポキシ樹脂組成物の硬化体によって構成されている。しかしながら、従来の封止材料である上記チタン白含有のエポキシ樹脂組成物では、遮光性に劣るという問題があり、その結果、ノイズが入るという欠点を有していた。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであって、遮光性に優れた硬化体を形成しうるエポキシ樹脂組成物の提供をその目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明のエポキシ樹脂組成物は、下記の(A)を含有するという構成をとる。
(A)平均粒径0.4〜2.0μmの、ルチル型構造の酸化チタン(TiO 2 )の結晶格子中にアンチモン原子およびニッケル原子を熱溶融させ黄色に発色させた固溶体粒子。
【0006】
すなわち、本発明者らは、遮光性に優れた硬化物を形成することのできるエポキシ樹脂組成物を得るために、その配合材料を中心に一連の研究を重ねた。その結果、TiO2 を主成分とする特定の平均粒径の無機粒子(A)を用いると、これを用いて形成された硬化物は優れた遮光性を備えるようになることを見出し本発明に到達した。
【0007】
上記TiO2 を主成分とする特定の平均粒径の無機粒子(A)の含有量を特定範囲に設定すると、より一層優れた遮光性が得られるとともに、均一分散により成形材料として適当な流動性が得られるようになる。
【0008】
【発明の実施の形態】
つぎに、本発明の実施の形態について詳しく説明する。
【0009】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、特定の無機粒子(A)を配合することにより得られる。
【0010】
上記エポキシ樹脂組成物は、通常、粉末状あるいはこれを打錠したタブレット状に成形して樹脂封止に用いられる。
【0011】
上記エポキシ樹脂組成物を構成するエポキシ樹脂成分としては、特に限定するものではなく従来公知の各種エポキシ樹脂があげられ、単独でもしくは2種以上併せて用いられる。なかでも、クレゾールノボラック系エポキシ樹脂が好ましく用いられる。そして、エポキシ当量が180〜210程度のものを用いることが好ましい。
【0012】
そして、上記エポキシ樹脂とともに硬化剤として、通常、フェノール樹脂が用いられる。上記フェノール樹脂としては、特に限定するものではなく従来公知の各種フェノール樹脂が用いられるが、なかでもノボラック系フェノール樹脂が好ましく用いられる。また、水酸基当量としては、80〜140のものが用いられる。
【0013】
上記エポキシ樹脂とフェノール樹脂との配合割合は、エポキシ樹脂中のエポキシ基1当量に対してフェノール樹脂中の水酸基当量を0.5〜1.6の範囲に設定することが好ましい。より好ましくは0.8〜1.2の範囲に設定することである。
【0014】
さらに、上記エポキシ樹脂およびフェノール樹脂とともに必要に応じて硬化促進剤が用いられる。上記硬化促進剤としては、特に限定するものではなく従来公知のもの、例えば、1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7(以下「DBU」という)、トリエタノールアミン等の3級アミン類、2−メチルイミダゾール等のイミダゾール類、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート等のリン系硬化促進剤等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0015】
上記硬化促進剤の含有量は、通常、上記フェノール樹脂100重量部(以下「部」と略す)に対して0.5〜10部の範囲に設定される。
【0016】
さらに、上記硬化促進剤とともに、硬化物の機械的強度の向上と線膨張係数を下げるために好ましくは無機質充填剤が用いられる。上記無機質充填剤としては、特に限定するものではなく従来公知の各種無機質充填剤があげられ、例えば、溶融シリカ粉末や結晶性シリカ粉末等のシリカ粉末等があげられる。なかでも、溶融シリカ粉末を用いることが好ましい。そして、上記無機質充填剤としては、平均粒径が10〜20μm程度のものを用いることが好ましい。なお、上記平均粒径は、例えば、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置を用いて測定することができる。
【0017】
上記無機質充填剤の含有割合は、通常、エポキシ樹脂組成物全体中25〜40重量%の範囲に設定することが好ましい。すなわち、無機質充填剤の含有量が40重量%を超えて多くなると、エポキシ樹脂組成物の溶融粘度が高くなることから、充填性が悪化する傾向がみられるからである。
【0018】
上記エポキシ樹脂組成物に配合される特定の無機粒子(A)は、ルチル型構造の酸化チタン(TiO2 )の結晶格子中にアンチモン原子およびニッケル原子を熱溶融させ黄色に発色させた固溶体である。このような固溶体としては、TiO2 が全体の80〜84重量%、アンチモン分がSb2 3 として全体の12〜16重量%、ニッケル分がNiOとして全体の2〜6重量%のものがあげられる。そして、具体的には、上記固溶体として石原産業社製のタイペークイエロー等があげられる。
【0019】
このような特定の無機粒子(A)として、平均粒径が0.4〜2.0μmのものを用いる必要がある。特に好ましくは平均粒径が0.4〜1.0μmである。すなわち、平均粒径が上記範囲を外れると、得られる硬化物の遮光性に劣る等の欠点が生起する。なお、上記平均粒径は、例えば、無機粒子の母集団から任意にサンプルを採取してこれを用いレーザー回折散乱式粒度分布測定装置にて測定することができる。
【0020】
上記特定の無機粒子(A)の含有量は、エポキシ樹脂組成物全体中30〜55重量%の範囲に設定することが好ましい。特に好ましくは30〜50重量%である。すなわち、30重量%未満では、充分な遮光性を得ることが困難であり、55重量%を超えると、エポキシ樹脂組成物中に上記無機粒子が均一に分散され難く、成形材料として適当な流動性を得ることが困難となり好ましくない傾向がみられるからである。
【0021】
上記エポキシ樹脂組成物には、上記各成分以外に必要に応じて他の添加剤を適宜配合してもよい。
【0022】
上記添加剤としては、低応力化剤、顔料、離型剤、カップリング剤および難燃剤等があげられる。
【0023】
上記低応力化剤としては、側鎖エチレングリコールタイプのジメチルシロキサン等のシリコーン化合物、アクリロニトリル−ブタジエンゴム等があげられる。
【0024】
上記顔料としては、カーボンブラック、酸化チタン等があげられる。また、上記離型剤としては、ポリエチレンワックス、カルナバワックス、脂肪酸塩等があげられる。
【0025】
また、上記カップリング剤としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤等があげられる。
【0026】
また、上記難燃剤としては、ブロム化エポキシ樹脂等があげられ、これに三酸化アンチモン等の難燃助剤等が用いられる。
【0027】
上記エポキシ樹脂組成物は、例えば、つぎのようにして製造することができる。すなわち、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、硬化促進剤および無機質充填剤、そして特定の無機粒子(A)さらに必要に応じて、低応力化剤、離型剤、カップリング剤および難燃剤等の他の添加剤を適宜配合し、ドライブレンドした後、ミキシングロール機等の混練機にかけ加熱状態(100〜120℃)で溶融混合し、これを室温に冷却した後、公知の手段によって粉砕し、必要に応じて打錠するという一連の工程により目的とするエポキシ樹脂組成物を製造することができる。
【0028】
このようにして得られたエポキシ樹脂組成物は、例えば、樹脂封止材料として用いられる。好ましくは、反射型フォトカプラーの樹脂封止があげられる。また、リレーの封止にも用いることができる。
【0029】
上記エポキシ樹脂組成物を用いての反射型フォトカプラーは、例えば、つぎのようにして作製することができる。まず、各リードにそれぞれ連結された受光素子および発光素子を第1封止層形成材料によって封止する。ついで、上記エポキシ樹脂組成物を用いて、通常のトランスファー成形等の公知の成形方法により第1封止層の外周を樹脂封止して第2封止層を形成する。このようにして、図1に示す構造を有する反射型フォトカプラーを作製することができる。
【0030】
上記第1封止層は、特に限定するものではなく従来公知のもの、例えば、シリコーンゲル、通常の透明エポキシ樹脂組成物等の形成材料を用いて従来公知の方法にて形成される。
【0031】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。
【0032】
まず、下記に示す成分を準備した。
【0033】
〔エポキシ樹脂〕
クレゾールノボラック系エポキシ樹脂(エポキシ当量195)
【0034】
〔フェノール樹脂〕
ノボラック系フェノール樹脂(水酸基当量105)
【0035】
〔硬化促進剤〕
DBU
【0036】
〔無機質充填剤〕
溶融シリカ粉末(平均粒径15μm)
【0037】
〔無機粒子〕
A:二酸化チタン(平均粒径0.4μm)〔石原産業社製、タイペークイエローTY−50〕
B:二酸化チタン(平均粒径1.0μm)〔石原産業社製、タイペークイエローTY−70〕
C:二酸化チタン(平均粒径0.29μm)
【0038】
【実施例1〜6、比較例1〜2】
上記各成分を下記の表1〜表2に示す割合で配合し、100℃で10分間均一に混合した後、常温に冷却した。そして、粉砕した後、常温にて加圧成形することによりタブレット状のエポキシ樹脂組成物を作製した。
【0039】
【表1】
Figure 0003772114
【0040】
【表2】
Figure 0003772114
【0041】
このようにして得られた各タブレット状エポキシ樹脂組成物を用いて、175℃×2分間の条件で硬化させることにより厚み0.3mmの板状体を作製した。上記板状体を用い、下記の方法に従って遮光性を測定・評価した。その結果を後記の表3〜表4に併せて示す。
【0042】
〔遮光性〕
図2に示すように、光源11と発光部12を備えた分光光度計20から発せられる各波長(900nm,1000nm)の光を、試験片である板状体13に照射した。そして、板状体13を透過した光を受光素子(フォトダイオード)14で検知してアンペアメーター15において透過した光の強さを電流として変換し測定した。なお、発光部12と板状体13と受光素子14とは黒箱21内に設置した。上記測定結果を電圧値(mV)に算出し、その値を遮光性評価として示した。したがって、電圧値が高いほど光の透過量が多く、遮光性に劣るといえる。
【0043】
【表3】
Figure 0003772114
【0044】
【表4】
Figure 0003772114
【0045】
上記表3〜表4の結果から、実施例品の電圧値は比較例品と比べて低く、光の透過量が少なかったことがわかる。したがって、実施例品は遮光性に優れたものであることは明らかである。
【0046】
これに対して、平均粒径が0.4μm未満の無機粒子を用いた比較例品は、電圧値が高く、光の透過量が多かったことがわかる。したがって、上記比較例品は遮光性に劣るものであることが明らかである。
【0047】
【発明の効果】
以上のように、本発明のエポキシ樹脂組成物は、前記特定の無機粒子(A)を含有するものである。このため、このエポキシ樹脂組成物硬化体は遮蔽性に優れるようになる。したがって、例えば、第1封止層の外周に第2封止層が形成された2層構造の封止層によって発光素子および受光素子を封止してなる反射型フォトカプラーの第2封止層形成材料として用いた場合、外部からの光の侵入が効果的に遮断され誤作動が防止されて信頼性に優れたものが得られるようになる。
【0048】
そして、上記特定の無機粒子(A)の含有量を特定範囲に設定すると、より一層優れた遮光性が得られるとともに、均一分散により成形材料として適当な流動性が得られるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】反射型フォトカプラーの構成を模式的に示す断面図である。
【図2】遮光性の評価方法を模式的に示す説明図である。
【符号の説明】
1 発光素子
2 受光素子
3 第1封止層
4 第2封止層
5,5′ リード

Claims (5)

  1. 下記の(A)を含有することを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
    (A)平均粒径0.4〜2.0μmの、ルチル型構造の酸化チタン(TiO 2 )の結晶格子中にアンチモン原子およびニッケル原子を熱溶融させ黄色に発色させた固溶体粒子。
  2. 硬化剤としてフェノール樹脂を用いる請求項1記載のエポキシ樹脂組成物。
  3. 硬化促進剤および無機質充填剤を含有する請求項1または2記載のエポキシ樹脂組成物。
  4. 上記(A)の含有量が、エポキシ樹脂組成物全体中30〜55重量%の範囲に設定されている請求項1〜3のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂組成物。
  5. 上記エポキシ樹脂組成物が、第1封止層の外周に第2封止層が形成された2層構造の封止層によって発光素子および受光素子を封止してなる反射型フォトカプラーの上記第2封止層形成材料として用いられる請求項1〜4のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂組成物。
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