JP3770792B2 - ポリエステル樹脂の製造方法及びそれより得られるポリエステル樹脂 - Google Patents

ポリエステル樹脂の製造方法及びそれより得られるポリエステル樹脂 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂の製造方法に関する。特にボトル等の各種包装容器、フィルム、シート、繊維等の素材として好適なポリエステル樹脂の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂は、機械的強度、化学的安定性、ガスバリア性、衛生性などに優れ、また比較的安価で軽量であるため、ボトル等の各種包装容器、フィルム、繊維等として幅広く用いられている。
この様なポリエステル樹脂の製造法としては、通常、ジカルボン酸とジオールとの反応によるエステル化又はジカルボン酸ジエステルのエステル交換後、重縮合触媒の存在下、溶融重縮合し、更に高粘度化や副生物を低減させるため、引き続き昇温結晶化(非晶質固体状態からの結晶化)及び固相重合を行う方法が知られている。この場合昇温結晶化は、固相重合の際に加熱されることにより非晶質ポリエステル同志が粘着することを避けるため、固相重合に先立って行われる。しかし、従来の製造法で得られたポリエステル樹脂では、昇温結晶化速度が遅いため昇温結晶化工程で十分な結晶化が行われない結果、固相重合工程でポリエステル同志の粘着が生じやすい傾向があった。従って、粘着を避けるためには昇温結晶化工程の時間を長く採らねばならず、更に固相重合の温度も低いものとせざるを得ず、その結果、生産性が低下する問題があった。
【0003】
又、ポリエステル樹脂の用途として、耐熱性ボトル成形品の用途がある。例えば、ミネラルウォーター、茶系飲料等の加熱殺菌充填を行うボトル容器では、加熱された内容物が充填される際に、その口栓部が熱変形するのを防止するため、口栓部を昇温結晶化(白化)することにより耐熱性とすることが知られている(特開昭55−79237号他)。
【0004】
しかし従来のポリエステル樹脂では昇温結晶化速度が遅いため、耐熱性の発現が不十分であったり、十分な耐熱性とするために、昇温結晶化工程を長くする必要があった。
このように昇温結晶化速度は(1)樹脂製造時の昇温結晶化工程、(2)成形時の口栓部結晶化工程、のいずれにおいても、速いことが好ましい。特に、工業的には、多くの場合、樹脂製造、成形とも、連続式に行われており、結晶化工程における結晶化速度が速くて、結晶化工程に要する時間が短縮できることは、工程全体の生産速度を飛躍的に増大させることに繋がり、その工業的価値は非常に大きい。
【0005】
昇温結晶化速度を速くする方法として、各種の結晶核剤を添加する方法が知られているが、この方法では樹脂の降温結晶化速度(溶融状態からの結晶化)も速くなってしまうため、ボトルとした場合に胴部や底部の透明性も損なわれる(白化傾向となる)ことが問題であった。
また、重合触媒としてアンチモン化合物を用いると昇温結晶化速度の速い樹脂が得られることも公知であるが、この方法でも、樹脂の降温結晶化速度(溶融状態からの結晶化)も速くなってしまうため、同様にボトルとした場合の胴部や底部の透明性が損なわれることが問題であった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記事情に鑑み成されたものであって、成形品とした場合の透明性や成形性を損なうことなく、ポリエステル樹脂製造時の昇温結晶化速度を速くすることにより、昇温結晶化工程に要する時間を短縮し、また、ポリエステル樹脂同志の粘着を回避し、生産性を向上させると共に、耐熱ボトル等のポリエステル成形品を効率よく生産できるポリエステル樹脂の製造方法を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記目的を達成するため鋭意検討を重ね、ポリエステル樹脂の製造工程に、極少量の長鎖の炭化水素基を有する物質を添加することにより成形品とした場合の透明性を損なわずに、昇温結晶化速度を速くすることができることを知り、本発明に到達した。
【0008】
即ち本発明の要旨は、芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体を主成分とするジカルボン酸成分と、エチレングリコールを主成分とするジオール成分とを、エステル化またはエステル交換反応、次いで重縮合触媒の存在下に重縮合反応を経て重合するポリエステル樹脂の製造方法において、下記一般式(1)乃至(3)の何れかで示されるエステル形成性有機化合物を、得られるポリエステル樹脂中の残存量が全ジカルボン酸単位に対して0.1モル%以下となる量添加して、重合反応を行うことを特徴とするポリエステル樹脂の製造方法に関する。
【化2】
a b (OH) c (1)
a b (COOH) c (2)
d e (COOC f g h (3)
(但し、式(1)及び(2)において、a、b、cは整数であり、aは20以上30以下、b+c=2×a+2である。又、式(3)において、d、e、f、g、hは整数であり、d及び/又はfは20以上、d+h+h×f<50、e+h=2×d+2、g=2×f+1である。)
【0009】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳細に説明する。本発明のポリエステル樹脂の製造方法は、基本的には従来公知の重合法に準じて、原料スラリー調製、エステル化又はエステル交換、溶融重縮合、さらに必要に応じて固相重縮合、更に必要に応じて、加熱下、水又は水蒸気と接触処理させることにより実施される。
【0010】
1.原料スラリーの調製
本発明のポリエステル樹脂の製造方法は、先ず、芳香族ジカルボン酸を主成分とするジカルボン酸成分とエチレングリコールを主成分とするジオール成分、その他の共重合モノマー、その他必要に応じて助剤化合物等を混合攪拌して原料スラリーを調製する。
【0011】
原料として使用するジカルボン酸成分の主成分である芳香族ジカルボン酸としては、具体的にはテレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ジブロモイソフタル酸、スルホイソフタル酸ナトリウム、ビフェニルジカルボン酸、ビフェニルエーテルジカルボン酸、ビフェニルスルフォンジカルボン酸、ビフェニルケトンジカルボン酸、ビフェノキシエタンジカルボン酸及びフェニレンジオキシジカルボン酸等が挙げられる。
【0012】
又、芳香族ジカルボン酸のエステル形成性誘導体としては、上記の芳香族ジカルボン酸の低級アルキルエステル、例えば、ジメチルテレフタレートやジメチルナフタレンジカルボキシレート等が挙げられる。なお、低級とは炭素数1〜4程度を意味する。
更に、これら主成分である芳香族ジカルボン酸成分の他に、アジピン酸、セバシン酸、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、ウンデカンジカルボン酸及びドデカンジカルボン酸等の炭素数15未満の炭化水素鎖(カルボキシル炭素を除く)を有する脂肪族ジカルボン酸等もジカルボン酸成分として使用できる。
【0013】
ジオール成分としては主成分であるエチレングリコール以外に、例えば、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、オクタメチレングリコール、デカメチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール等の炭素数15未満の炭化水素鎖を有する脂肪族グリコールが挙げられる。
【0014】
また、これらの脂肪族グリコールの他に、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,5ーノルボルネンジメタノール等の脂環式グリコール、ネオペンチルグリコール、2ーブチルー2ーエチルー1,3ープロパンジオール等の炭素数15未満の炭化水素鎖を有する分岐型脂肪族グリコール、キシリレングリコール等の芳香族グリコール等が使用できる。
【0015】
更に、上記のジカルボン酸成分、及びジオール成分の他に、本発明の効果を逸脱しない範囲で単官能成分や多官能成分を少量含んでいてもよい。具体的な例としては、安息香酸などの単官能成分、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、トリカルバリル酸、没食子酸、トリメチロールプロパン、トリエチロールエタン、ペンタエリスリトール、グリセリン等の3官能以上の多官能成分が挙げられる。
【0016】
本発明方法は特に、テレフタル酸または2,6−ナフタレンジカルボン酸を主成分とするジカルボン酸成分と、エチレングリコールを主成分とするジオール成分から製造されるポリエステルの製造に好ましく適用され、就中、テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分から製造するポリエステルに本発明の効果は好適に発揮される。
【0017】
テレフタル酸成分または2,6−ナフタレンジカルボン酸成分の量は、生成ポリエステル中の全ジカルボン酸成分に対して95モル%以上が好ましく、より好ましくは99モル%以上であり、エチレングリコール成分は全ジオール成分中の95モル%以上が好ましく、より好ましくは97モル%以上である。
またジオール成分としてエチレングリコールを主成分として製造されるポリエステルにおいては通常ジエチレングリコール成分が副生するが、ジエチレングリコール成分の量は、全ジオール成分に対して1.0〜3.0モル%であり、好ましくは2.0モル%を越え3.0モル%以下であることが、結晶性の観点から好ましい。ジエチレングリコールの量を所望のものとするために、ジエチレングリコールを製造工程の任意の段階で添加することもできる。
【0018】
2.エステル化
上記原料混合物のスラリーは、次いで、エステル化工程に供されエステル化されポリエステルの低量体とされる。エステル化工程では原料スラリーを加熱し、ジカルボン酸とジオールを反応させてポリエステルの低量体を製造する(直接エステル化法)。エステル化反応の温度は、例えばテレフタル酸とエチレングリコールを主原料とする場合は、通常240〜280℃の温度、大気圧に対する相対圧力0〜4×105Paの加圧下で1〜10時間程度攪拌下、生成する水を除去しながら実施される。テレフタル酸を使用する場合、テレフタル酸がエステル化反応の自己触媒となるので無触媒でもよいが、エステル化触媒として後述するエステル交換触媒や重縮合触媒と同じものを用いても良いし、又少量の無機酸等を使用してもよい。
【0019】
原料としてジカルボン酸のエステル形成性誘導体、例えばジメチルテレフタレートを使用する場合は、エステル交換触媒、例えばナトリウム、リチウム等のアルカリ金属塩や、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属塩、亜鉛、マンガン等の金属化合物の存在下、エステル交換反応によりポリエステル低量体を製造する(エステル交換法)。これら触媒は金属の量として、得られるポリエステル樹脂に対して通常5〜2000ppmの範囲で使用される。
【0020】
しかして、エステル交換触媒は、ポリエステル樹脂の色調や結晶性等に悪影響を及ぼす(降温結晶化速度を速くする)場合があるので、本発明方法では、エステル交換触媒を使用しなくても良い直接エステル化法が好ましい。
3.溶融重合
エステル化により得られたポリエステルの低量体は、重縮合触媒の存在下、更に昇温するとともに次第に減圧し溶融重合により重縮合反応させる。溶融重合は、例えばテレフタル酸とエチレングリコールを原料とする場合には、通常温度は250〜290℃、圧力は常圧から漸次減圧され、最終的には絶対圧力1333Pa以下である。
【0021】
重縮合触媒としては、ゲルマニウム化合物、アンチモン化合物、チタン化合物等の反応系に可溶性の化合物を単独又は2種以上を併用して使用できるが、前記のように透明性の点、また環境安全性の点からアンチモン化合物の使用量は少ない方が好ましく、ゲルマニウム化合物又はチタン化合物の使用が好ましい。ゲルマニウム化合物としては二酸化ゲルマニウム、蓚酸ゲルマニウム、チタン化合物としては、テトラ−n−ブトキシチタン、酢酸チタン等が挙げられる。
【0022】
ゲルマニウム化合物は重縮合中に系外に揮散しやすく、揮散分を余計に添加するのが通常であるが、本発明の方法は、本質としては前記のように樹脂の昇温結晶化速度を速くするものであるが、意外にも本発明の方法により、ゲルマニウム化合物の系外への揮散率が低下する。その結果、本発明の方法により、高価なゲルマニウム化合物の使用量を減らすことができ、その面でも本発明方法はポリエステル樹脂の生産性に寄与する。
【0023】
更に、これら触媒金属の安定剤であるリン化合物を使用することが好ましい。具体的には例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリ−n−ブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリアルキルエーテルホスフェート等のリン酸エステル類、、トリフェニルホスファイト、トリスドデシルホスファイト、トリスノニルデシルホスファイト、トリアルキルエーテルホスファイト等の亜リン酸エステル類、メチルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、イソプロピルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート、ジブチルホスフェート、モノブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、アルキルエーテルアシッドホスフェート等の酸性リン酸エステル類、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ポリリン酸等が挙げられる。これら触媒あるいは安定剤は、全重合原料に対して、触媒の場合は、触媒中の金属として通常0.1〜1000ppmの範囲で使用される。安定剤の量は0〜1000ppmである。
【0024】
これら触媒及び安定剤は、原料スラリー調製時、エステル化反応又はエステル交換反応の任意の段階において供給することができ、更に重縮合反応の初期に供給することもできる。
本発明のポリエステル樹脂の製造方法では、本発明の効果を損なわない範囲で、他の公知のエステル化触媒、エステル交換触媒、重縮合触媒、核剤、無機充填材、滑材、スリップ剤、アンチブロッキング剤、安定剤、帯電防止剤、防曇剤及び顔料などの各種添加剤などの必要量を使用していてもよい。
【0025】
このようにして溶融重縮合で得られたポリエステル樹脂は、通常ストランド状に溶融押し出して反応器より抜き出したのち、カッターによって粒状体(チップ)にカットされる。
4.結晶化及び固相重合
また、溶融重縮合により得られたポリエステル樹脂は、必要に応じて昇温結晶化及び固相重縮合することができる。昇温結晶化は、溶融重縮合により得られたポリエステル粒状体(チップ)を加熱処理して、乾燥及び昇温結晶化し、引き続く固相重縮合工程での加水分解やチップ同士の粘着を低減させるために行われるものである。固相重縮合は、昇温結晶化に引き続き融点以下の温度で、減圧下または不活性ガス気流下で重縮合反応させるもので、溶融重縮合に比べて重縮合温度が低いため、色調に優れたポリエステルを得ることができ、また、固相重縮合することにより、環状低量体量やアセトアルデヒド等の副生物の量を低下させることができるので好ましい。
【0026】
具体的な固相重縮合の方法としては、通常、乾燥状態の窒素、アルゴン、二酸化炭素等の不活性ガス雰囲気下、または水蒸気中または水蒸気含有不活性ガス雰囲気下で60〜180℃の温度でポリエステル粒状体表面を結晶化させた後、減圧下または不活性ガス下で樹脂の粘着温度直下乃至(粘着温度ー80℃)の範囲の温度で数十時間以下の範囲内で加熱処理される。また固相重縮合にあたっては、ポリエステル粒状体同士が粘着しないように、転動法、気体流動床法などの適当な方法で、ポリエステル粒状体を流動させながら行うのがよい。
【0027】
5.水中加熱処理
更に、以上のようにして溶融重合または固相重縮合を経て得られたポリエステルは、溶融熱安定性を更に改良し、成形時のアセトアルデヒド・環状三量体などの副生成物の生成を更に低減するなどの目的で、加熱下、樹脂を水又は水蒸気により処理(「水中加熱処理」と称す)することもできる。水中加熱処理は、例えば、ポリエステル樹脂を60℃以上の水蒸気又は水蒸気含有ガスに30分以上接触させるか、又は40℃以上の水に10分以上浸漬させる方法で行うことができる。
【0028】
これらの各製造工程は、回分式又は連続式のどちらでも良いが、製造コスト、色調及び結晶化速度などの点で連続式が好ましい。
6.生成ポリエステル樹脂の物性
本発明の製造方法においては、得られるポリエステル樹脂の固有粘度は、0.40dl/g以上、0.90dl/g未満とすることが好ましい。固有粘度は用途に応じ、ポリエステル製造時の溶融重縮合及び必要ならばそれに引き続く結晶化及び固相重縮合の、温度および時間等の条件を調節することにより、調整することができる。特に、溶融重合により固有粘度0.10dl/g以上0.70dl/g未満、より好ましくは0.30dl/g以上0.65dl/g未満とし、さらに結晶化・固相重合によって固有粘度0.60dl/g以上0.90dl/g未満、より好ましくは0.70dl/g以上0.90dl/g未満とすると、色調、重合速度及び環状低量体副生量、成形性などの点で好ましい。
【0029】
なお、この場合の固有粘度とは、ポリエステル樹脂を凍結粉砕したのち、フェノール/テトラクロロエタン(重量比1/1)の混合溶媒に溶解して、濃度0.1、0.2、0.5、1g/dlの溶液とし、各溶液の粘度をウベローデ型毛細粘度管にて温度30℃で測定し、定法により求めた値である。
また、本発明方法により得られるポリエステル樹脂は、特に耐熱ボトル製造用の樹脂として好ましい。耐熱ボトル製造用には、テレフタル酸成分が全ジカルボン酸成分の99モル%以上、エチレングリコール成分が全ジオール成分の97モル%以上、ジエチレングリコール成分が、全ジオール成分の1.0〜3.0モル%、固有粘度が0.70以上0.90dl/g未満のポリエステル樹脂であることが好ましい。
【0030】
本発明方法は、以上の如きポリエステル樹脂の製造方法において、下記一般式(1)乃至(3)の何れかで示されるエステル形成性有機化合物を、得られるポリエステル樹脂中の残存量が全ジカルボン酸単位に対して0.1モル%以下となる量添加して、重合反応を実施することを特徴とする。具体的には、スラリー調製から溶融重縮合までの任意の段階で、該エステル形成性有機化合物の所定量を添加することにより実施される
【0031】
【化3】
ab(OH)c (1)
ab(COOH)c (2)
de(COOCfgh (3)
(但し、式(1)及び(2)において、a、b、cは整数であり、aは20以上30以下、b+c=2×a+2である。又、式(3)において、d、e、f、g、hは整数であり、d及び/又はfは20以上、d+h+h×f<50、e+h=2×d+2、g=2×f+1である。)
一般式(1)または(2)において、通常aが大きい方が沸点が高くなるため重合中の系外への溜出が少なく歩留まりがよいが、あまりaが大きいと入手困難で高価になるため、通常aが30程度迄が入手容易で実用的である。中でも、aが20以上25以下の場合が、昇温結晶化速度を速める効果と透明性とのバランスが良く好適である。
【0032】
一般式(3)においてd及び/又はfは20以上であり、d+h+h×f<50である。d+h+h×fが大きいと、樹脂との相溶性が悪化し、ボトル等に成形した場合の透明性が悪化する。
一般式(1)乃至(3)においてc及びhの値は、1以上4以下であることが好ましく、より好ましくは2以下、さらに好ましくは1である。c、hの値が3または4であると、架橋反応により樹脂の溶融粘度を上昇させ成形性に悪影響を与える場合がある。c、hの値が2であると昇温結晶化速度を速くする効果が乏しい場合がある。
【0033】
一般式(1)で示される化合物の具体例としては、例えばエイコサノール、ヘネイコサノール、ドコサノール、トリコサノール、テトラコサノール、ペンタコサノール、ヘキサコサノール、ヘプタコサノール、オクタコサノール、ノナコサノール、トリアコンタノール及びフィタントリオール等のアルコール類が挙げられる。
【0034】
又一般式(2)で示される化合物としては、例えば、ヘネイコサノイックアシッド、ベヘニックアシッド、トリコサノイックアシッド、リグノセリックアシッド、ペンタコサノイックアシッド、セロティックアシッド及びメリシックアシッド等のカルボン酸が挙げられる。
【0035】
さらに一般式(3)で示される化合物としては、例えば、上記の一般式(2)で示されるカルボン酸の、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、イソブチルエステル、アミルエステル、イソアミルエステル、ヘプチルエステル、デシルエステル、トリデシルエステル、ヘキサデシルエステル、ヘプタデシルエステル、オクタデシルエステル及びドデシルエステル等が挙げられる。
【0036】
上記化合物の他、本発明で使用されるエステル形成性有機化合物としては、例えばオレイルアルコール、ダイマー酸、ビサボロール等の不飽和炭化水素鎖を有するアルコール又はカルボン酸、ポリグリセリン、ポリオキシエチレングリセリン、ポリオキシエチレンソルビタン、ポリオキシエチレンソルビトール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールまたはそれらの脂肪酸エステル等、またポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、シュガーエステル等のポリエーテル炭素鎖を有する化合物が挙げられる。これらは単独で使用しても、混合併用してもよい。あるいは、大豆油、椰子油、なたね油、ひまし油、鯨油等の天然系動植物油中に含まれる形で添加してもよい。但し、エステル形成性有機化合物は、金属塩でないことが好ましい。金属塩であると、結晶性に悪影響を与える怖れがある。
【0037】
本発明方法において、上記エステル形成性有機化合物は、生成するポリエステル樹脂中の全ジカルボン酸単位に対して、0.1モル%以下、好ましくは10-7モル%以上となる量が残るように添加して使用される。生成するポリエステル樹脂中の残存量が全ジカルボン酸単位に対して1.0モル%以上であると、昇温結晶化速度を速くする効果が発現されないばかりか、かえって結晶化速度が遅くなり、重合性にも悪影響を及ぼす場合もある。
【0038】
上記のようなエステル形成性有機化合物の添加時期としては、重縮合反応の初期以前であることが好ましく、重縮合反応開始の少なくとも1時間以上前であること(連続式の重合設備を用いる場合には、エステル形成性有機化合物を添加してから最初の溶融重合槽に至るまでの平均滞留時間の合計が1時間以上であること)がより好ましく、主として芳香族ジカルボン酸及びエチレングリコールからなる原料スラリー中に添加するのがさらに好ましい。添加時期がこの時期であると、添加したエステル形成性有機化合物が、重縮合反応時の減圧下に系外へ揮散し難く、エステル形成性有機化合物を添加した効果が十分に発現されやすくなる。
【0039】
また、エステル形成性有機化合物を前記スラリー中に添加する場合を含め、グリコールとのスラリーを形成させる場合は、一旦グリコールとともに、エステル形成性有機化合物の融点以上に加熱して融解し、混合攪拌しながら冷却して、グリコールスラリーとなすことが好ましい。このような方法でスラリーを形成することによりエステル形成性有機化合物がグリコール中に微分散し、エステル形成性有機化合物のスラリー中の濃度を上げることが出来るとともに、スラリーの流動性も良好なものとなったり、エステル形成性有機化合物のポリエステルへの残存率が上昇したりする。
【0040】
上記エステル形成性有機化合物は、ポリエステル分子鎖中に共有結合していることが好ましい。単に混合しているだけではポリエステル樹脂を成形加工して用いる場合に、徐々に樹脂外にブリードアウトして、周囲を汚染し、あるいは樹脂の性能を低下させる怖れがある。
本発明方法により得られるポリエステル樹脂は、昇温結晶化速度が速い。従って、本発明方法は、製造時の昇温結晶化工程(1)で結晶化が迅速かつ十分に進行し、結晶化工程に要する時間を短縮できるとともに、ポリエステル樹脂同志の粘着を回避でき、また固相重合工程においては高温で固相重合することができ、生産性に優れると共に、得られた樹脂を用いてボトル等の成形品を製造する場合は、ボトルの口栓部等の昇温結晶化工程(2)で結晶化が迅速かつ十分に進行するため、ボトルを効率よく生産することができる。本発明の方法により得られるポリエステル樹脂の昇温結晶化速度が速いのは、本発明の方法により昇温時の結晶核の数が多いポリエステル樹脂が得られるからである。
【0041】
また、本発明方法により得られるポリエステル樹脂は、降温結晶化速度が従来の方法により得られるポリエステル樹脂と同等か遅くなる傾向にある。従って、本発明方法により得られるポリエステル樹脂からなるボトル等の透明性が良好となる。本発明の方法により得られるポリエステル樹脂の降温結晶化速度が遅いのは、本発明の方法により降温時の結晶核の数が少ないポリエステル樹脂が得られるからである。
【0042】
従って、本発明方法は、樹脂の昇温結晶化を促進させ、製造時の結晶化工程に要する時間を短縮し、またポリエステル樹脂同士の粘着を回避でき、高温固相重縮合を可能とし、ポリエステル樹脂の生産性を向上できるとともに、該ポリエステル樹脂をボトルとした場合の胴部や底部の透明性を損なうことなく、ボトル成形時の口栓部の昇温結晶化速度を速めることができ、ボトルの生産性にも優れたポリエステルを樹脂得ることが出来る。
【0043】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお得られたポリエステル樹脂の各種データの測定及び評価方法は以下の通りである。
1.ジエチレングリコール含有量、エステル形成性有機化合物のポリエステル樹脂中の残存量(対テレフタル酸単位(モル%))の定量
ポリエステルを、ヘキサフルオロイソプロパノール/重水素化クロロホルム=3/7混合溶媒0.7mlに常温で溶解して3重量%溶液とする。この溶液にシフト試薬としてピリジン20μlを添加した後、日本電子製GSX−400型核磁気共鳴装置にてこの溶液の1H−NMRを測定して各ピークを帰属し、その積分比から算出した。
【0044】
2.結晶化速度の評価
結晶化速度の指標として、ポリエステル樹脂の昇温結晶化温度(Tc1)、降温結晶化温度(Tc2)を測定した。即ち、ポリエステルチップの表面を、超音波洗浄したカッターナイフで切除・除去して中心部約7mgを切り出したものを精秤したのち、パーキンエルマー社製のDSC用アルミニウム製標準サンプルパン(品番0219−0041)に封入した。このサンプルをアルミニウムパンごと田葉井株式会社製ラボスターバキュームオーブンLHV−112型真空乾燥機にて70℃、0.1mmHg以下で1週間乾燥した。その後窒素雰囲気下300℃、5分で溶融恒温後液体窒素へ投じることで急冷して熱的履歴を除去した非結晶状サンプルを作成し測定用試料を得た。
【0045】
このサンプルをパーキンエルマー社製DSC−7型示差走査熱量計にて、窒素気流下(1 )20℃から毎分20℃の割合で280℃まで昇温させ、(2)280℃で5分間保持したのち、(3)毎分20℃の割合で20℃まで降温させる。
以上の各熱工程のうち、特に(1)(3)について、その吸発熱量を温度に対してプロットすると、各工程に発熱ピークが観測され、その発熱曲線上の、同じ温度のベースラインから最も遠い距離をとる点(発熱ピークの頂点)を、(1)のものにつき昇温結晶化温度Tc1(℃)とし、(3)の工程のものにつき降温結晶化温度Tc2(℃)とした。
【0046】
なお、昇温結晶化温度Tc1の値が低いほど、昇温結晶化速度が速いと言え、降温結晶化温度Tc2の値が低いほど、降温結晶化速度が遅いと言える。
3.固有粘度
凍結粉砕した樹脂試料0.50gを、フェノール/テトラクロロエタン(重量比1/1)の混合溶媒に、濃度cを1.0g/dlとして、110℃で20分間で溶解させた後、ウベローデ型毛細粘度管を用いて、30℃で、前記混合溶媒との相対粘度ηrelを測定し、この相対粘度ηrel−1から求めた比粘度(ηsp)と濃度cとの比ηsp/cを求め、同じく濃度cを、0.5g/dl、0.2g/dl、0.1g/dlとしたときについてもそれぞれの比ηsp/cを求め、これらの値より、濃度cを0に外挿したときの比ηsp/cを固有粘度η(dl/g)として求めた。
【0047】
実施例1
回分式反応槽を用いて、以下のとおり操作してポリエステル樹脂を製造した。反応槽内に、あらかじめテレフタル酸とエチレングリコールの直接エステル化反応により別途調製しておいたポリエステルオリゴマー(数平均重合度=6.9)156gと、1−オクタコサノール(C2857OH)0.32g(テレフタル酸単位に対して0.10モル%相当)を仕込み、反応槽内を窒素置換するとともに260℃に昇温した。1時間後、原料が溶融したところで、攪拌を開始した。次いで安定剤として正リン酸のエチレングリコール溶液を、得られるポリマー1トン中のリン原子量が0.969モルとなるように添加し、さらにその5分後に触媒として二酸化ゲルマニウムのエチレングリコール溶液を、得られるポリマー1トン中のゲルマニウム原子量が0.552モルとなるように添加した。その5分後から、系内を260℃から280℃まで1時間20分で昇温するとともに、常圧から60分で減圧し、133Paに保持し、溶融重合反応を行った。所望の固有粘度の樹脂が得られる必要時間の反応を行った後、生成したポリマーを反応槽の底部に設けた抜出口よりストランド状に抜き出し、水冷後、チップ状にカットし、約100gの固有粘度0.53dl/gのポリエステル樹脂を製造した。前記した方法により、得られたポリエステル樹脂の各種データの測定及び評価結果を表1に示した。
【0048】
表1から、実施例により得られたポリエステル樹脂は、エステル形成性有機化合物を添加しない従来の製造法で得られた樹脂(比較例5)に比し、Tc1及びTc2の値が低下しており、昇温結晶化速度が速く、また、降温結晶化速度が遅くなっていることが分かる。
実施例2,3、比較例7,8
添加するエステル形成性有機化合物の種類と量を表1に記載した内容に代える他は実施例1と同様に操作して、ポリエステル樹脂を製造した。前記した方法により、得られたポリエステル樹脂の各種データの測定及び評価結果を表1に示した。
【0049】
表1から、エステル形成性有機化合物の残存量が多いほど、また、炭素鎖の長さが長いほど昇温結晶化速度が速く、炭素鎖長が短い方が降温結晶化速度が遅くなることがわかる。
比較例9
まず、ベヘニックアシッド(C2143COOH)0.79gをエチレングリコール24gに添加し、120℃に昇温して融解した。この混合液を攪拌して懸濁液としたところで、氷冷してエチレングリコールスラリーを調製した。
【0050】
次に、回分式反応槽を用いて、以下のとおり操作してポリエステル樹脂を製造した。反応槽内に、あらかじめテレフタル酸とエチレングリコールの直接エステル化反応により別途調製しておいたポリエステルオリゴマー(数平均重合度=6.9)156gを仕込み、反応槽内を窒素置換するとともに260℃に昇温した。1時間後、原料が溶融したところで、攪拌を開始した。
【0051】
次いで、先に調製したベヘニックアシッドのエチレングリコールスラリーを反応槽内に添加し、5分後に安定剤として正リン酸のエチレングリコール溶液を、得られるポリマー1トン中のリン原子量が0.969モルとなるように添加し、さらに5分後に触媒として二酸化ゲルマニウムのエチレングリコール溶液を、得られるポリマー1トン中のゲルマニウム原子量が0.552モルとなるように添加した。その5分後から、系内を260℃から280℃まで1時間20分で昇温するとともに、常圧から60分で減圧し、133Paに保持し、溶融重合反応を行った。所望の固有粘度の樹脂が得られる必要時間の反応を行った後、生成したポリマーを反応槽の底部に設けた抜出口よりストランド状に抜き出し、水冷後、チップ状にカットし、約100gの固有粘度0.53dl/gのポリエステル樹脂を製造した。前記した方法により、得られたポリエステル樹脂の各種データの測定及び評価結果を表1に示した。
【0052】
表1から、ベへニックアシッドのポリエステル樹脂中の残存量はテレフタル酸単位に対して0.11モル%であり、これは添加したベへニックアシッドに対して37%の残存率である。
比較例10
ベヘニックアシッドのエチレングリコールスラリーを反応槽内に添加してから1時間後に安定剤として正リン酸のエチレングリコール溶液を、得られるポリマー1トン中のリン原子量が0.969モルとなるように添加し、さらに5分後に触媒として二酸化ゲルマニウムのエチレングリコール溶液を、得られるポリマー1トン中のゲルマニウム原子量が0.552モルとなるように添加する以外は比較例9と同様に操作して、ポリエステル樹脂を製造した。前記した方法により、得られたポリエステル樹脂の各種データの測定及び評価結果を表1に示した。
【0053】
表1から、ベヘニックアシッドのポリエステル樹脂中の残存率は53%であり、比較例9に比べTc1及びTc2の値が低下しており、昇温結晶化速度が速く、また、降温結晶化速度が遅くなっていることが分かる。
比較例11
ベヘニックアシッドのエチレングリコールスラリーを反応槽内に添加してから2時間後に安定剤として正リン酸のエチレングリコール溶液を、得られるポリマー1トン中のリン原子量が0.969モルとなるように添加し、さらに5分後に触媒として二酸化ゲルマニウムのエチレングリコール溶液を、得られるポリマー1トン中のゲルマニウム原子量が0.552モルとなるように添加する以外は比較例9と同様に操作して、ポリエステル樹脂を製造した。前記した方法により、得られたポリエステル樹脂の各種データの測定及び評価結果を表1に示した。
【0054】
このポリエステル樹脂の分析結果を表1に示した。
表1から、ベヘニックアシッドのポリエステル樹脂中の残存率は60%であり、比較例10にさらに比べTc1及びTc2の値が低下しており、昇温結晶化速度が速く、また、降温結晶化速度が遅くなっていることが分かる。
比較例1〜3
添加するエステル形成性有機化合物の種類と量を表1に記載した内容代えるは実施例1と同様に操作して、ポリエステル樹脂を製造した。前記した方法により、得られたポリエステル樹脂の各種データの測定及び評価結果を表1に示した。表1から、無添加(比較例5)に比し、Tc1及びTc2の値は低下するものの、Tc1の低下は僅かであり、昇温結晶化速度は速くならなかった。
【0055】
比較例4
添加するエステル形成性有機化合物の量を表1に記載した内容に代える他は実施例1と同様に操作してポリエステル樹脂を製造した。前記した方法により、得られたポリエステル樹脂の各種データの測定及び評価結果を表1に示した。
表1から、同じエステル形成性有機化合物を使用した実施例及び比較例7に比較して、Tc2の値は低下するものの、Tc1の値はむしろ上昇しており、昇温結晶化速度は速くならなかった。
【0056】
比較例5
実施例1において、エステル形成性有機化合物を添加しない他は実施例1と同様にして、固有粘度0.56dl/gのポリエステル樹脂を製造した。前記した方法により、得られたポリエステル樹脂の各種データの測定及び評価結果を表1に示した。
【0057】
比較例6
実施例1において、二酸化ゲルマニウムと正リン酸の代わりに、三酸化アンチモンと正リン酸を表1に記載した量に代えた他は実施例1と同様にしてポリエステル樹脂を製造した。
得られたポリエステルチップの固有粘度は0.55dl/gであった。前記した方法により、得られたポリエステル樹脂の各種データの測定及び評価結果を表1に示した。
【0058】
参考例1
昇温結晶化速度増大の効果を確認するため、次にような実験を行った。140℃に加熱したオイルバスに、アルミカップを浮かべて動かないように固定し、5分間静置して恒温化した。このアルミカップの底部に、比較例11(Tc1=141.2℃)と比較例5(Tc1=151.0℃)で得られたポリエステルチップをチップ同士が重ならないように散布し、140℃で2分間、4分間、6分間加熱し、それぞれの加熱時間を経たチップと、原料チップの密度を測定し、時間に対する密度の上昇カーブを作成し、密度上昇の速度を比較した。(図1参照)
表1から、比較例11と比較例5のポリエステルのTc1は9.8℃異なるが、この場合、図1からわかるように、例えば密度1.34g/cm3に達する時間を比較すると、比較例5は約5分に対し、比較例11は約2分であり、結晶化時間が半分以下に短縮されたことがわかる。
【0059】
参考例2
降温結晶化速度抑制の効果を確認するため、次のような実験を行った。比較例11(Tc2=173.7℃)と比較例6(Tc2=191.2℃)に相当するポリエステル3kgを、十分乾燥したのち、株式会社名機製作所製「M−70AII−DM」型射出成形機を用い、シリンダー設定温度280℃、背圧5×105Pa、射出率40cc/sec、保圧35×105Pa、金型温度25℃、75秒前後の成形サイクルで、縦50mm、横100mm、厚さは6mmから3.5mmまで横方向に0.5mm毎の段差を付けた段付き成形板(試験片)を射出成形した。
【0060】
得られた試験片の5mm厚部分のヘーズ(霞度)を、ヘーズメーター(日本電色社製「NDH−300A」)にて測定した。比較例6のもののヘーズは30.7%であり、試験片は白化しており透明性はほとんどなかったのに対し、比較例11のもののヘーズは2.6%であり試験片の透明性は良好であった。
【0061】
【表1】
Figure 0003770792
【0062】
【表2】
Figure 0003770792
【0063】
【発明の効果】
本発明方法によれば、成形品とした場合の透明性や成形性を損なわずに、昇温結晶化速度を速くして、製造時の結晶化工程に要する時間を短縮し、またポリエステル同士の粘着を回避でき、生産性を向上できるとともに、耐熱ボトルなどの昇温結晶化部分を含むポリエステル成形品を効率良く生産できるポリエステル樹脂の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】比較例5と比較例11の密度上昇速度を示すグラフである。

Claims (6)

  1. 芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体を主成分とするジカルボン酸成分と、エチレングリコールを主成分とするジオール成分とを、エステル化またはエステル交換反応、次いで重縮合触媒の存在下に重縮合反応を経て重合するポリエステル樹脂の製造方法において、
    下記一般式(1)乃至(3)の何れかで示されるエステル形成性有機化合物を、得られるポリエステル樹脂中の残存量が全ジカルボン酸単位に対して0.1モル%以下となる量添加して、重合反応を行うことを特徴とするポリエステル樹脂の製造方法。
    【化1】
    a b (OH) c (1)
    a b (COOH) c (2)
    d e (COOC f g h (3)
    (但し、式(1)及び(2)において、a、b、cは整数であり、aは20以上30以下、b+c=2×a+2である。又、式(3)において、d、e、f、g、hは整数であり、d及び/又はfは20以上、d+h+h×f<50、e+h=2×d+2、g=2×f+1である。)
  2. ステル形成性有機化合物を、重縮合反応開始の少なくとも1時間以上前に、添加することを特徴とする請求項1に記載のポリエステル樹脂の製造方法。
  3. 重縮合触媒が、ゲルマニウム化合物である請求項1又は2に記載のポリエステル樹脂の製造方法。
  4. 更に、触媒金属の安定剤であるリン化合物を使用する請求項1乃至3のいずれか1項に記載のポリエステル樹脂の製造方法。
  5. 芳香族ジカルボン酸を主成分とするジカルボン酸成分と、エチレングリコールを主成分とするジオール成分とを、エステル化する請求項1乃至4のいずれか1項に記載のポリエステル樹脂の製造方法。
  6. 請求項1乃至の何れかに記載の製造方法により製造され、テレフタル酸成分が全ジカルボン酸成分の99モル%以上、エチレングリコール成分が全ジオール成分の97モル%以上、ジエチレングリコール成分が、全ジオール成分の1.0〜3.0モル%、固有粘度が0.40以上0.90dl/g未満であることを特徴とするポリエステル樹脂。
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