JP3770786B2 - 後染め用繊維布帛 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、後染め用繊維布帛に関する。本発明は、特に、繊維布帛基材と樹脂膜とが複合されており、少なくともその一部において樹脂膜側が表面として使用される布帛製品を与えるための、後染め用繊維布帛に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、樹脂膜を有する繊維布帛製品の製造は、織物、編物、不織布などを染色した後、樹脂膜を付与し、その後縫製することにより帽子、手袋、衣服、スキーウエアー、カバン、テント等として製品化することによっていた。このような工程を経て繊維布帛製品を製造する方法は、品質の安定した製品を大量に製造することができる点で優れている。しかしながら、現在のように消費者の嗜好が急速に変化する時代においては、製品の短納期化が最も重要であり、製造者側が消費者の嗜好をつかんでから、糸の製造、織物の製造、染色加工、膜加工および縫製を行うという従来の製造方法によって製造していたのでは時間がかかりすぎてしまい、消費者の望んでいる商品をタイムリーに市場に提供することは不可能である。特に、スキーウエアーをはじめとする防寒具では、納品までに時間がかかってしまえば確実にビジネスチャンスを逃してしまうことになる。
【0003】
また、従来の方法で得られた樹脂膜を有する繊維布帛に対してシボ加工やシワ加工を行って得られる製品においては、繊維布帛基材にシボ加工やシワ加工を行なった後に膜を付与しているため、シボやシワが弱かったり、自然なシボ感やシワ感が消滅してしまっているといった問題点があった。
さらに、従来、繊維布帛基材に樹脂膜を付与した繊維布帛では、洗濯処理により剥離強力が低下することが知られていた。従って、温度や処理液の組成(酸、アルカリ、還元剤等が添加されている)からみて、洗濯処理よりもはるかに厳しい条件下に行われる染色処理を、樹脂膜を付与した後に行うことは不可能であると考えられていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題点を解決し、消費者が望んでいる商品をタイムリーに市場に供給できるように製品の短納期化が可能となり、また意匠面においても自然なシワやシボを繊維布帛基材面や樹脂膜面に付与することができ、さらに一体感のある風合やシボによるドライ感のあるタッチを付与することのできる、樹脂膜側が表面として使用される布帛製品を与えるための、後染め用繊維布帛を提供しようとするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するため、芳香族アルコールの乳化液による収縮処理を施していない繊維布帛基材と、この繊維布帛基材の片面にこれと一体化して形成された合成樹脂を主成分とする樹脂膜とを含む後染め用繊維布帛であって、前記繊維布帛がナイロン繊維からなる織物または編物であり、前記合成樹脂がポリウレタン樹脂であり、後染めの間に繊維布帛基材と樹脂膜との染色処理による収縮差によりシワ、シボが形成され、かつ前記樹脂膜形成面が表面として使用される繊維製品を与えるための、後染め用繊維布帛を提供する。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明に有用な繊維布帛基材は、ナイロン繊維からなる繊維布帛であってよく、織物または編物の形態にあってもよい。
【0007】
また、合成樹脂としては、ウレタン樹脂が挙げられる。本発明の繊維布帛における樹脂膜は、無孔質であっても、多孔質であってもよく、またこれらを組合せたものであってもよい。膜の厚さは約0.5μm〜5mm程度であるのが好ましい。
【0008】
本発明の繊維布帛における樹脂膜は、上記の合成樹脂の他に、所望により、顔料、架橋剤、酸化防止剤、可塑剤や、炭酸カルシウム、シリカ等の無機微粒子、プロテインパウダー等の有機微粒子等の添加剤を含んでいてもよい。
繊維布帛基材への合成樹脂を主成分とする樹脂膜の付与方法としては、所望により上記添加剤を含む合成樹脂またはその溶液をナイフコーターやグラビアコーター、ダイコーターなどを用い、繊維布帛またはこれに多孔質膜や無孔質膜などが付与された繊維布帛からなる繊維布帛基材に直接コートするダイレクトコーティングや、同様にして離型紙の上に樹脂膜を形成し、その上に接着剤を点状もしくは線状にまたは全面に付与した後、上記の如き繊維布帛基材と貼り合わせるラミネート法を用いることもできる。ここで、樹脂膜の形成は、公知の乾式法または湿式法のいずれによってもよい。
【0009】
ラミネート法に用いられる接着剤としては、染色後の繊維布帛に所望される規格物性を保持できるものであれば何を用いてもよいが、基本的には樹脂膜を構成する樹脂と同系の樹脂からなる接着剤が好ましい。
また、本発明の後染め用繊維布帛は、上記のようにして繊維布帛基材の一面に樹脂膜が付与されているものの他、さらに繊維基材の他の一面にも樹脂膜が付与されているものであってもよい。
【0010】
本発明の後染め用繊維布帛を用いれば、流行色や流行のデザインをつかんでから染色し、縫製のみを行なえばよいので、製品を市場に短納期で供給することができ、ビジネスチャンスを逃す危険性が効果的に回避される。さらに、この後染め用繊維布帛が縫製までされていれば、市場の流行をつかんで染色のみを行なえばよいことになり、市場の要求にマッチする製品をさらに短納期で、タイミングよく市場に出すことができる。
【0011】
なお、染色処理に際しては、繊維布帛基材および樹脂膜の構成に応じて、それらに適した任意の条件下に処理を行なえばよく、特に限定されるものではない。染料としては、分散染料、酸性染料、直接染料、反応染料、媒染染料、塩基性染料、建染染料、硫化染料、アゾイック染料等の任意のものを用いることができ、また染色方法についても、浸染、サーモゾール染色、コールドバッチ染色などの任意の方法を用いることができるが、大きなシボ、シワ等を表現したい場合(意匠性の観点)や縫製後に染色を行なう場合(作業性の観点)には、浸染法、特に常圧ワッシャー、高圧ワッシャーなどのような繊維製品に張力のかかり難い浸染用の装置を用いる方法が好ましい。
【0012】
染色後の堅牢度の観点からは、染料によって堅牢に染まる合成樹脂を主成分とする樹脂膜を有する繊維布帛であるのが好ましい。
また、染色後やその後のフィックス処理後に公知の界面活性剤を用いて洗浄処理を行ってもよい。
また、上記のようにして、樹脂膜を有する繊維布帛を染色することにより、繊維布帛基材と付与された樹脂膜との間の収縮差等により、繊維布帛基材面および樹脂膜面に自然なシワやシボがあらわれ、また繊維布帛基材と樹脂膜との一体感が得られる。さらに、樹脂膜面のシワやシボにより肌に膜が触れた場合においても貼りつくような感じがなく、ドライな感じが得られる。従って、これにより、外観、風合、タッチ等の意匠性に優れている上に、ドライ感があり、透湿性が多少低くても、着用者が快適に感じることができる繊維布帛製品を与えることができる。
【0013】
さらに、必要に応じ、染色前または染色と同時または染色後に、撥水、制電、制菌、消臭、防汚、防炎、紫外線遮蔽、吸水、防縮加工を行ない、得られる布帛にこれらの性能を付与してもよい。
【0014】
【実施例】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに説明する。
なお、得られた後染め用繊維布帛の染色後の性能は、以下の方法により測定したものである。
剥離強力
JIS L1089により測定。ただし、単位を1cm当りに換算した。
【0015】
実施例1
ナイロン製綾織物(タテ糸70デニール/17フィラメント、ヨコ糸70デニール/68フィラメント)に対し、常法により精練およびセットを行った。
次に、下記樹脂処方の混合樹脂溶液をフルダル離型紙(リンテック(株)製、TPD)にスリット0.1mmで付与し、乾燥し、ポリウレタン樹脂を主成分とする樹脂膜を得た。
【0016】
混合樹脂溶液
難黄変型ポリウレタン樹脂溶液(固形分30%) 100重量部
トルエン 15重量部
イソプロピルアルコール 15重量部
次に、上記膜面に下記処方の接着剤溶液をスリット0.1mmで全面に付与し、乾燥した後、上記のナイロン織物に貼り合せ、60℃で2日間エージングを行った。
【0017】
接着剤溶液
難黄変型エステル系ポリウレタン樹脂(固形分60%) 100重量部
トルエン 60重量部
メチルエチルケトン 10重量部
コロネートHL(架橋剤、日本ポリウレタン工業(株)製) 10重量部
HI215(触媒、大日精化工業(株)製) 1重量部
エージングを行なった後、離型紙を剥がして無孔質樹脂膜を有する布帛を得た。次いで、この布帛を、その樹脂膜側を表面側としてヤッケに縫製し、樹脂膜を含む後染め用繊維布帛からなる縫製品を得た。
【0018】
次に、この縫製品を、染料役者((株)小野森鉄工所製のワッシャータイプ高圧型染色機)により、Mitsui Nylon Black GLe/c(三井BASF染料(株)製)3%owfを用いて100℃で30分間染色し、洗浄(70℃×10分)を行い、ディマフィックスESK(明成化学工業(株)製)1%owfを用いて60℃で20分間フィックス処理を行った。
【0019】
得られた黒色のヤッケはナチュラルなシワとシボを有し、樹脂膜面の肌触りもドライ感のあるものであった。また、これらの染色および撥水処理に必要な日数は1日であった。
染色前と染色後の剥離強力を求め、表1に記した。
【0020】
【表1】
【0021】
【発明の効果】
本発明の後染め用繊維布帛を用いれば、流行をつかんでから短納期で繊維製品を市場に出すことができ、また縫製までしておくことによりさらに短納期で市場に出すことができるので、消費者が望む商品をいち早く供給でき、ビジネスチャンスも逃さなくすることができる。
【0022】
さらに、本発明の繊維布帛を染色することにより、自然なシワやシボを有し、樹脂膜と基材生地との一体感のある繊維製品を得ることができるので、樹脂膜独特のタッチを抑え、ドライ感があり、意匠性にも優れた繊維製品を供給することができる。
Claims (2)
- 芳香族アルコールの乳化液による収縮処理を施していない繊維布帛基材と、この繊維布帛基材の片面にこれと一体化して形成された合成樹脂を主成分とする樹脂膜とを含む後染め用繊維布帛であって、前記繊維布帛がナイロン繊維からなる織物または編物であり、前記合成樹脂がポリウレタン樹脂であり、後染めの間に繊維布帛基材と樹脂膜との染色処理による収縮差によりシワ、シボが形成され、かつ前記樹脂膜形成面が表面として使用される繊維製品を与えるための、後染め用繊維布帛。
- 請求項1に記載の後染め用繊維布帛を縫製した縫製品。
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JP2000287696A JP3770786B2 (ja) | 2000-09-21 | 2000-09-21 | 後染め用繊維布帛 |
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