JP3770392B2 - 自動変速機用歯車変速装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、入力部と、三組の遊星ギヤと、3つのクラッチと、2つのブレーキと、出力部とを有して構成され、変速要素である3つのクラッチと2つのブレーキを適宜締結・解放することで、少なくとも前進6速・後退1速を得る自動変速機用歯車変速装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、入力軸と、一組のダブルピニオン型遊星ギヤと、ダブルピニオンにそれぞれサンギヤを噛み合わせた複合遊星歯車列(以下、ラビニオ型複合遊星歯車列という)と、3つのクラッチと、2つのブレーキと、出力軸とを有して構成され、変速要素である3つのクラッチと2つのブレーキを適宜締結・解放することで、前進6速・後退1速以上の変速段を得る自動変速機用歯車変速装置としては、例えば、特許文献1に記載のものが提案されている。
【0003】
【特許文献1】
特開2001−349388号公報(図1)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、このラビニオ型複合遊星歯車列を採用した歯車変速装置は、下記に列挙する問題点を有する。
(i)歯車列の最大トルク(1速)を、ラビニオ型複合遊星歯車列の片側のダブルピニオン型遊星ギヤで受け持つので、強度的に不利である。
(ii)減速装置としての一組のダブルピニオン型遊星ギヤで増大したトルクを、1速〜4速において、ラビニオ型複合遊星歯車列のサンギヤから入力するため、リングギヤ入力に比較して、接線力が大きくなり、歯車強度や歯車寿命やキャリヤ剛性等の点で不利である。
(iii)1速におけるラビニオ型複合遊星歯車列の強度(歯車強度や歯車寿命)の確保と、ラビニオ型複合遊星歯車列の歯車強度や歯車寿命やキャリヤ剛性等の向上と、が共に要求されることで、ラビニオ型複合遊星歯車列を大型化する必要があり、この結果、自動変速機の大型化を招く。
(iv)2速においてラビニオ型複合遊星歯車列にてトルク循環が発生し、トルク循環が発生する2速では、伝達効率の低下により、燃費が悪化する。
本発明は、上記課題に着目してなされたもので、歯車列の強度的有利性と、歯車強度や歯車寿命等の有利性と、燃費の向上と、入力部と出力部の同軸配置と、自動変速機の小型化と、を併せて達成しながら、ラビニオ型複合遊星歯車列を用いる場合に比べてギヤ比の選択自由度を高めることができる自動変速機用歯車変速装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明では、駆動源からの回転を入力する入力部に連結する第1の減速遊星ギヤメンバと、回転を係止可能な第2の減速遊星ギヤメンバと、第1と第2の減速遊星ギヤメンバとに噛み合う第1ピニオンを支持し、減速回転を出力する第1キャリヤと、を有する減速装置である第1遊星ギヤと、第2サンギヤと、第2リングギヤと、両ギヤに噛み合う第2ピニオンを支持する第2キャリヤと、を有するシングルピニオン型の第2遊星ギヤと、第3サンギヤ及び第4サンギヤと、該2つのサンギヤ間に配置され、かつ、回転を入力又は出力するセンターメンバを有し両サンギヤの各々に噛み合う第3ピニオンを支持する第3キャリヤと、前記第3ピニオンに噛み合う1つの第3リングギヤと、を有するダブルサンギヤ型の第3遊星ギヤと、第2キャリヤに連結され、変速された回転を出力する出力部と、第2サンギヤと第3サンギヤとを一体的に連結する第1連結メンバと、第2キャリヤと第3リングギヤとを一体的に連結する第2連結メンバと、第2リングギヤと入力部とを選択的に断接する第1クラッチと、第1キャリヤと第4サンギヤとを選択的に断接する第2クラッチと、入力部と第3キャリヤを選択的に断接する第3クラッチと、第3キャリヤの回転を選択的に停止させる第1ブレーキと、第4サンギヤの回転を選択的に停止させる第2ブレーキと、を備え、前記第1クラッチと第1ブレーキの締結により1速、第1クラッチと第2ブレーキの締結により2速、第1クラッチと第2クラッチの締結により3速、第1クラッチと第3クラッチの締結により4速、第2クラッチと第3クラッチの締結により5速、第3クラッチと第2ブレーキの締結により6速、第2クラッチと第1ブレーキの締結により後退速とし、少なくとも前進6速で後退1速を得る変速制御手段を設けたことで、上記課題を解決するに至った。
請求項2に記載の発明では、駆動源からの回転を入力する入力部に連結する第1の減速遊星ギヤメンバと、回転を係止可能な第2の減速遊星ギヤメンバと、減速回転を出力する第1リングギヤと、を有する減速装置であるダブルピニオン型の第1遊星ギヤと、第2サンギヤと、第2リングギヤと、両ギヤに噛み合う第2ピニオンを支持する第2キャリヤと、を有するシングルピニオン型の第2遊星ギヤと、第3サンギヤ及び第4サンギヤと、該2つのサンギヤ間に配置され、かつ、回転を入力又は出力するセンターメンバを有し両サンギヤの各々に噛み合う第3ピニオンを支持する第3キャリヤと、前記第3ピニオンに噛み合う1つの第3リングギヤと、を有するダブルサンギヤ型の第3遊星ギヤと、第3キャリヤに連結され、変速された回転を出力する出力部と、第2サンギヤと第3サンギヤとを一体的に連結する第1連結メンバと、第3キャリヤと第2リングギヤとを一体的に連結する第2連結メンバと、第1の減速遊星ギヤメンバと第3リングギヤとを選択的に断接する第1クラッチと、第1リングギヤと第4サンギヤとを選択的に断接する第2クラッチと、第1の減速遊星ギヤメンバと第2キャリヤとを選択的に断接する第3クラッチと、第2キャリヤの回転を選択的に停止させる第1ブレーキと、第1連結メンバの回転を選択的に停止させる第2ブレーキと、を備え、前記第1クラッチと第1ブレーキの締結により1速、第1クラッチと第2ブレーキの締結により2速、第1クラッチと第2クラッチの締結により3速、第1クラッチと第3クラッチの締結により4速、第2クラッチと第3クラッチの締結により5速、第3クラッチと第2ブレーキの締結により6速、第2クラッチと第1ブレーキの締結により後退速とし、少なくとも前進6速で後退1速を得る変速制御手段を設けたことで、上記課題を解決するに至った。
【0006】
【発明の作用及び効果】
すなわち、本発明は、一組の遊星ギヤに組み合わせる歯車列として、ラビニオ型複合遊星歯車列を用いることなく、基本的に二組のシングルピニオン型遊星ギヤを組み合わせた歯車列を用い、3つのクラッチと2つのブレーキを適宜締結・解放することで、少なくとも前進6速・後退1速を得る変速制御手段を有する自動変速機用歯車変速装置において、前記三組の遊星ギヤのうち、一組の遊星ギヤを、入力回転を常時減速する減速装置とし、残り二組の遊星ギヤのうち、一組の遊星ギヤを、2つのサンギヤと、該2つのサンギヤの各々と噛み合うピニオンと、前記2つのサンギヤ間に配置され、かつ、回転を入力又は出力するセンターメンバを有するキャリヤと、前記ピニオンに噛み合う1つのリングギヤと、を有するダブルサンギヤ型遊星ギヤとした。
【0007】
このダブルサンギヤ型遊星ギヤは、基本的なギヤ性能としてはシングルピニオン型遊星ギヤと同様であるが、(サンギヤから2つのメンバ)+(リングギヤから1つのメンバ)+(キャリヤから軸方向と径方向に2つのメンバ)=5つのメンバというように、3つのメンバであるシングルピニオン型遊星ギヤに比べてメンバ数が多くなるという特徴を持つ。
【0008】
よって、ダブルピニオンにそれぞれサンギヤを噛み合わせた複合遊星歯車列である「ラビニオ型複合遊星歯車列」や、二組のシングルピニオン型遊星ギヤの組み合わせた「シンプソン型遊星歯車列」とは区別するため、シングルピニオン型遊星ギヤとダブルサンギヤ型遊星ギヤとを組み合わせた歯車列を、発明者名を引用して「イシマル型遊星歯車列」と命名する。
【0009】
このように、一組の遊星ギヤと、基本性能はシンプソン型遊星歯車列と同様であるイシマル型遊星歯車列とを組み合わせた構成としたため、リングギヤ入力が可能であることによる遊星ギヤの強度的有利性と、1速のトルクフローが全メンバを介して分担可能であることによる遊星ギヤの歯車強度や歯車寿命等の有利性と、を達成することができる。
【0010】
また、残り二組の遊星ギヤとしてイシマル型遊星歯車列を用い、ラビニオ型複合遊星歯車列を用いない構成としたため、トルク循環の無い高い伝達効率により、燃費の向上を達成することができる。
【0011】
また、3つのクラッチのうち、2つのクラッチを入力部と他の回転メンバとを選択的に断接可能なクラッチとし、他の1つのクラッチを入力部の回転よりも減速された回転メンバと他の回転メンバとを選択的に断接可能なクラッチとしたことで、入力部の回転と同一回転を出力部に伝達する直結段を得ることが可能となり、伝達効率の高い変速段を達成することができる。
【0012】
さらに、残り二組の遊星ギヤ(イシマル型遊星歯車列)のうち、一組の遊星ギヤとして、2つのサンギヤ間に配置されたセンターメンバを有するダブルサンギヤ型遊星ギヤを用いたため、オーバードライブ変速段を達成するキャリヤへの入力経路が成立し、自動車の自動変速機に適する入力部と出力部の同軸配置を達成することができる。
【0013】
更に、請求項1及び2に記載の発明では、上記作用効果を得ることができると共に、4速段を直結段として得ることができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の自動変速機用歯車変速装置を実現する第1実施例〜第3実施例を、添付図面に基づいて説明する。
【0015】
(第1実施例)
【0016】
まず、構成を説明する。
【0017】
第1実施例は、請求項1に記載の発明に対応する自動変速機用歯車変速装置で、図1は第1実施例の自動変速機用歯車変速装置を示すスケルトン図である。
【0018】
図1において、G1は第1遊星ギヤ、G2は第2遊星ギヤ、G3は第3遊星ギヤ、M1は第1連結メンバ、M2は第2連結メンバ、C1は第1クラッチ、C2は第2クラッチ、C3は第3クラッチ、B1は第1ブレーキ、B2は第2ブレーキ、Inputは入力軸(入力部)、Outputは出力ギヤ(出力部)である。
【0019】
第1実施例の自動変速機用歯車変速装置(減速シングルタイプ1という)は、図1の左端部に減速装置としてのシングルピニオン型の第1遊星ギヤG1を配置し、右端部にシングルピニオン型の第2遊星ギヤG2を配置し、中央部にダブルサンギヤ型の第3遊星ギヤG3を配置した例である。そして、前記第2遊星ギヤG2と第3遊星ギヤG3により、いわゆる、イシマル型遊星歯車列を構成している。
【0020】
前記第1遊星ギヤG1は、第1サンギヤS1と、第1リングギヤR1と、両ギヤS1,R1に噛み合う第1ピニオンP1を支持する第1キャリヤPC1と、を有する減速装置としてのシングルピニオン型遊星ギヤである。
【0021】
前記第2遊星ギヤG2は、第2サンギヤS2と、第2リングギヤR2と、両ギヤS2,R2に噛み合う第2ピニオンP2を支持する第2キャリヤPC2と、を有するシングルピニオン型遊星ギヤである。
【0022】
前記第3遊星ギヤG3は、2つの第3サンギヤS3及び第4サンギヤS4と、第3及び第4サンギヤS3,S4の各々に噛み合う第3ピニオンP3と、この第3ピニオンP3を支持する軸方向の第3キャリヤPC3と、該第3キャリヤPC3に接続され、前記両サンギヤS3,S4の間に配置されるセンターメンバCMと、前記第3ピニオンP3に噛み合う1つの第3リングギヤR3と、を有するダブルサンギヤ型遊星ギヤである。なお、前記センターメンバCMは、第3キャリヤPC3の円周上に隣接する複数の第3ピニオンP3との空間位置において、第3キャリヤPC3に結合されている。
【0023】
前記入力軸Inputは、第1リングギヤR1に連結され、駆動源である図外のエンジンからの回転駆動力を、トルクコンバータ等を介して入力する。
【0024】
前記出力ギヤOutputは、第2キャリヤPC2に連結され、出力回転駆動力を図外のファイナルギヤ等を介して駆動輪に伝達する。
【0025】
前記第1連結メンバM1は、第2サンギヤS2と第3サンギヤS3とを一体的に連結するメンバである。
【0026】
前記第2連結メンバM2は、第2キャリヤPC2と第3リングギヤR3とを一体的に連結するメンバである。
【0027】
前記第1クラッチC1は、入力軸Inputと第2リングギヤR2とを選択的に断接するクラッチである。
【0028】
前記第2クラッチC2は、第1キャリヤPC1と第4サンギヤS4とを選択的に断接するクラッチである。
【0029】
前記第3クラッチC3は、入力軸Inputと第3キャリヤのセンターメンバCMとを選択的に断接するクラッチである。
【0030】
前記第1ブレーキB1は、第3キャリヤPC3の回転を選択的に停止させるブレーキである。
【0031】
前記第2ブレーキB2は、第4サンギヤS4の回転を選択的に停止させるブレーキである。
【0032】
前記各クラッチC1,C2,C3及び各ブレーキB1,B2には、図2(a)の締結作動表に示すように、前進6速後退1速の各変速段にて締結圧(○印)や解放圧(無印)を作り出す図外の変速油圧制御装置(請求項1に記載の変速制御手段)が接続されている。なお、変速油圧制御装置としては、油圧制御タイプ,電子制御タイプ,油圧+電子制御タイプ等が採用される。
【0033】
次に、作用を説明する。
【0034】
[変速作用]
【0035】
図2は第1実施例の自動変速機用歯車変速装置での前進6速後退1速の締結作動表を示す図、図3は第1実施例の自動変速機用歯車変速装置における前進6速後退1速の各変速段でのメンバの回転停止状態を示す共線図、図4〜図7は第1実施例の自動変速機用歯車変速装置における前進6速後退1速の各変速段でのトルクフローを示す図である。図3において、太線は第1遊星ギヤG1の共線図、中線はイシマル遊星歯車列の共線図である。図4〜図7においてクラッチ・ブレーキ・メンバのトルク伝達経路は太線で示し、ギヤのトルク伝達経路はハッチングで示す。以下、前進7速後退1速の各変速段での変速作用を説明する。
【0036】
〈1速〉
1速は、図2に示すように、第1クラッチC1と第1ブレーキB1の締結により得られる。
【0037】
この1速では、第2遊星ギヤG2において、第1クラッチC1の締結により、入力軸Inputの回転が第2リングギヤR2に入力される。
【0038】
一方、第3遊星ギヤG3においては、第1ブレーキB1の締結により、第3キャリヤPC3がケースに固定されるため、第3リングギヤR3からの出力回転に対し、第3サンギヤS3の回転は、回転方向が逆方向の減速回転となる。そして、この第3サンギヤS3の回転は、第1連結メンバM1を介し、第2遊星ギヤG2の第2サンギヤS2に伝達される。
【0039】
よって、第2遊星ギヤG2においては、第2リングギヤR2から正方向の回転が入力され、第2サンギヤS2から逆方向の減速回転が入力されることになり、第2リングギヤR2からの回転を減速した回転が、第2キャリヤPC2から第2連結メンバM2を経過して出力ギヤOutputへ出力される。
【0040】
すなわち、1速は、図3の共線図に示すように、入力部の回転を第2リングギヤR2への入力回転とする第1クラッチC1の締結点と、第3キャリヤPC3の回転を停止する第1ブレーキB1の締結点とを結ぶ線にて規定され、入力軸Inputから入力された回転を減速して出力ギヤOutputから出力する。
【0041】
この1速でのトルクフローは、図4(a)に示す通りであり、太線で示す第1クラッチC1と第1ブレーキB1と各メンバと、ハッチングで示す第2遊星ギヤG2と第3遊星ギヤG3(第4サンギヤS4を除く)にトルクが作用することになる。つまり、1速では、イシマル型遊星歯車列を構成する第2遊星ギヤG2と第3遊星ギヤG3とがトルク伝達に関与する。
【0042】
〈2速〉
2速は、図2に示すように、1速での第1ブレーキB1を解放し、第2ブレーキB2を締結する、つまり、第1クラッチC1と第2ブレーキB2を締結することにより得られる。
【0043】
この2速では、第2遊星ギヤG2において、第1クラッチC1の締結により、入力軸Inputの回転が第2リングギヤR2に入力される。
【0044】
一方、第3遊星ギヤG3においては、第2ブレーキB2の締結により、第4サンギヤS4がケースに固定されるため、第3ピニオンP3を介して連結されている第3サンギヤS3が固定される。そして、第3サンギヤS3とは第1連結メンバM1を介して連結されている第2サンギヤS2がケースに固定される。
【0045】
よって、第2遊星ギヤG2においては、第2リングギヤR2から正方向の回転が入力され、第2サンギヤS2が固定されることになり、第2リングギヤR2からの減速回転が、第2キャリヤPC2から第2連結メンバM2を経過して出力ギヤOutputへ出力される。
【0046】
すなわち、2速は、図3の共線図に示すように、入力軸Inputの回転を第2リングギヤR2への入力回転とする第1クラッチC1の締結点と、第4サンギヤS4の回転を停止する第2ブレーキB2の締結点と、を結ぶ線にて規定され、入力軸Inputから入力された回転を減速(1速よりも高速)として出力ギヤOutputから出力する。
【0047】
この2速でのトルクフローは、図4(b)に示す通りであり、太線で示す第1クラッチC1と第2ブレーキB2と各メンバと、ハッチングで示す第2遊星ギヤG2にトルクが作用することになる。なお、第3遊星ギヤG3については、固定である両サンギヤS3,S4の回りを、非拘束の第3ピニオンP3が第3リングギヤR3の出力回転に伴って公転するだけであり、回転メンバとして機能するだけで、トルク伝達には関与しない。
【0048】
〈3速〉
3速は、図2に示すように、2速での第2ブレーキB2を解放し、第2クラッチC2を締結すること、つまり、第1クラッチC1と第2クラッチC2とを締結することにより得られる。
【0049】
この3速では、第1遊星ギヤG1において、第1遊星ギヤG1からの減速回転が出力され、第2遊星ギヤG2において、第1クラッチC1の締結により、入力軸Inputの回転が第2リングギヤR2に入力される。同時に、第2クラッチC2の締結により、第1遊星ギヤG1の減速回転が第3遊星ギヤG3の第4サンギヤS4に入力される。
【0050】
よって、第2遊星ギヤG2においては、第2リングギヤR2に入力軸Inputの回転が入力され、第4サンギヤS4の回転が第3キャリヤPC3を介して第3サンギヤS3及び第1連結メンバM1を経過して第2サンギヤS2へ入力されることで決定される回転数で回転する第2キャリヤPC2から第2連結メンバM2を経過して出力ギヤOutputへ減速回転が出力される。
【0051】
すなわち、3速は、図3の共線図に示すように、入力軸Inputの回転を第2リングギヤR2への入力回転とする第1クラッチC1の締結点と、第1遊星ギヤG1からの減速回転を第2サンギヤS2への入力回転とする第2クラッチC2の締結点と、を結ぶ線にて規定され、入力軸Inputから入力された回転を減速して出力ギヤOutputから出力する。
【0052】
この3速でのトルクフローは、図5(a)に示す通りであり、太線で示す第1クラッチC1と第2クラッチC2と各メンバと、ハッチングで示す第1遊星ギヤG1及び第2遊星ギヤG2にトルクが作用することになる。すなわち、第3遊星ギヤG3はトルク伝達に何ら関与しない。
【0053】
〈4速〉
4速は、図2に示すように、3速での第2クラッチC2を解放し、第3クラッチC3を締結すること、つまり、第1クラッチC1と第3クラッチC3を締結することにより得られる。
【0054】
この4速では、第2遊星ギヤG2において、第1クラッチC1の締結により、Inputからの入力回転が第2リングギヤR2に入力される。
【0055】
一方、第3遊星ギヤG3においては、第3クラッチC3の締結により、入力軸Inputからの入力回転がセンターメンバCMを介して第3キャリヤPC3に入力される。第2キャリヤPC2と第3リングギヤR3は一体であるため、第2遊星ギヤG2と第3遊星ギヤG3は一体に回転し、入力軸Inputの回転数がそのまま第2キャリヤPC2から第2連結メンバM2を経過して出力ギヤOutputへ出力される。
【0056】
すなわち、4速は、図3の共線図に示すように、入力軸Inputの回転を第2リングギヤR2への入力回転とする第1クラッチC1の締結点と、第3キャリヤPC3の回転を入力回転とする第3クラッチC3の締結点と、を結ぶ線にて規定され、入力軸Inputから入力された回転がそのまま出力ギヤOutputから出力する(直結段)。
【0057】
この4速でのトルクフローは、図5(b)に示す通りであり、太線で示す第1クラッチC1と第3クラッチC3と各メンバと、ハッチングで示す第2遊星ギヤG2と第3遊星ギヤG3(第4サンギヤS4を除く)にトルクが作用することになる。
【0058】
(5速)
5速は、図2に示すように、4速での第1クラッチC1を解放し、第2クラッチC2を締結する。つまり、第2クラッチC2と第3クラッチC3を締結することにより得られる。
【0059】
この5速では、第3クラッチC3の締結により、入力軸Inputからの入力回転がセンターメンバCMを介して第3キャリヤPC3に入力される。同時に、第2クラッチC2の締結により、第1遊星ギヤG1により減速された第1キャリアPC1からの回転が第4サンギヤS4,第3サンギヤS3及び第1連結メンバM1を介して第2サンギヤS2に入力される。
【0060】
よって、第3遊星ギヤG3においては、第3キャリヤPC3に入力回転が入力され、第3サンギヤS3に第1遊星ギヤG1により減速された回転が入力されることで、入力回転が増速され第3リングギヤR3から第2連結メンバM2を経過して出力ギヤOutputへ出力される。
【0061】
すなわち、5速は、図3の共線図に示すように、第3キャリヤPC3の回転を入力回転とする第3クラッチC3の締結点と、第1キャリヤPC1と第4サンギヤS4が一体となって回転する第2クラッチC2の締結点と、を結ぶ線にて規定され、入力軸Inputから入力された回転が増速されて出力ギヤOutputから出力する。
【0062】
この5速でのトルクフローは、図6に示す通りであり、太線で示す第2クラッチC2と第3クラッチC3と各メンバと、ハッチングで示す第1遊星ギヤG1と第3遊星ギヤG3(第3サンギヤS3を除く)にトルクが作用することになる。
【0063】
(6速)
6速は、図2に示すように、5速での第2クラッチC2を解放し、第2ブレーキB2を締結する。つまり、第3クラッチC3と第2ブレーキB2を締結することにより得られる。
【0064】
この6速では、第3クラッチC3の締結により、入力軸Inputからの入力回転がセンターメンバCMを介して第3キャリヤPC3に入力される。同時に、第2ブレーキB2の締結により、第4サンギヤS4が固定される。
【0065】
よって、第3遊星ギヤG3においては、第3キャリヤPC3に入力回転が入力され、第4サンギヤS4が固定されることになり、入力回転よりも増速した回転が、第3リングギヤR3から第2連結メンバM2を経過して出力ギヤOutputへ出力される。
【0066】
すなわち、6速は、図3の共線図に示すように、第3遊星ギヤG3の第4サンギヤS4を固定する第2ブレーキB2の締結点と、第3キャリヤPC3の回転を入力回転とする第3クラッチC3の締結点と、を結ぶ線にて規定され、入力軸Inputから入力された回転を増速して出力ギヤOutputから出力する。
【0067】
この6速でのトルクフローは、図6(b)に示す通りであり、太線で示す第3クラッチC3と第2ブレーキB2と各メンバと、ハッチングで示す第3遊星ギヤG3(第3サンギヤS3を除く)にトルクが作用することになる。
【0068】
(後退1速)
後退1速は、図2に示すように、第2クラッチC2と第1ブレーキB1を締結することにより得られる。
【0069】
この後退1速では、第2クラッチC2の締結により、第1遊星ギヤG1からの減速回転が第4サンギヤS4及び第3キャリヤPC3を介して第3サンギヤS3に入力され、更に第1連結メンバM1を介して第2サンギヤS2に入力される。一方、第1ブレーキB1の締結により、第3キャリヤPC3がケースに固定される。
【0070】
よって、第3遊星ギヤG3においては、第4サンギヤS4に正方向の減速回転が入力され、第3キャリヤPC3がケースに固定となり、第3リングギヤR3からは、減速した逆回転が、第2連結メンバM2を経過して出力ギヤOutputへ出力される。
【0071】
すなわち、後退1速は、図3の共線図に示すように、第1遊星ギヤG1からの減速回転を第4サンギヤS4への入力回転とする第2クラッチC2の締結点と、第3キャリヤPC3の回転を停止する第1ブレーキB1の締結点とを結ぶ線にて規定され、入力軸Inputから入力された回転を逆方向に減速して出力ギヤOutputから出力する。
【0072】
この後退1速でのトルクフローは、図7に示す通りであり、太線で示す第2クラッチC2と第1ブレーキB1と各メンバと、ハッチングで示す第1遊星ギヤG1と第3遊星ギヤG3(第3サンギヤS3を除く)にトルクが作用することになる。
【0073】
[対比による優位点]
【0074】
本発明の自動変速機用歯車変速装置の基本的な考え方は、3クラッチと2ブレーキにより少なくとも前進6速以上を成立させると共に、遊星ギヤ+シンプソン型遊星歯車列をベースとしながらも、シンプソン型遊星歯車列の問題点を補い、さらに、遊星ギヤ+ラビニオ型複合遊星歯車列による歯車変速装置を超える歯車変速装置を提供しようとするものである。以下、シンプソン型遊星歯車列やラビニオ型複合遊星歯車列を採用した歯車変速装置と対比しながら優位性を述べる。
【0075】
・シンプソン型遊星歯車列の特徴
【0076】
(i)シンプソン型遊星歯車列では、最大トルクとなる1速でのトルク伝達の流れが、図9(a)に示すように、全メンバを介して分担するので、強度的に有利である。
【0077】
(ii)シンプソン型遊星歯車列は、リングギヤ入力であるため、サンギヤ入力に比較して、接線力が半分程度になり、歯車強度や歯車寿命やキャリヤ剛性等の点で有利である。すなわち、図10に示すように、遊星ギヤに同じトルクが入力した場合、リングギヤ入力fが、サンギヤ入力Fに比較して接線力が、1/2〜1/2.5に減少する。
【0078】
(iii)オーバードライブの変速段を得るには、シンプソン型遊星歯車列へのキャリヤ入力が必要であるが、入力軸と出力軸とを同軸に設けると、シングルピニオン型の遊星ギヤでは、図11(a)に示すように、回転メンバが3メンバに限られるため、図11(b)の点線に示すように、キャリヤへの入力経路が不成立となる。
【0079】
よって、キャリヤへの入力経路を成立させるため、入力軸と出力軸とを異なる軸線上に平行軸配置で設ける必要があり、その結果、自動変速機の大型化を招くという問題点を有する。
【0080】
・ラビニオ型複合遊星歯車列の問題点
【0081】
そこで、前記(iii)の問題点を解消するために、シンプソン型遊星歯車列に代えて、ラビニオ型複合遊星歯車列を採用した歯車変速装置にすると、入力軸と出力軸とを同軸配置を達成できるものの、下記に列挙する問題点を有する。
【0082】
(v)歯車列の最大トルク(1速)を、図9(b)に示すように、ラビニオ型複合遊星歯車列の片側のダブルピニオン型遊星ギヤで受け持つので、強度的に不利である。
【0083】
(vi)減速装置としての一組のシングルピニオン型遊星ギヤで増大したトルクを、図8及び図9(b)に示すように、ラビニオ型複合遊星歯車列のサンギヤから入力するため、上記(ii)の理由により、リングギヤ入力に比較して、接線力が大きくなり、歯車強度や歯車寿命やキャリヤ剛性等の点で不利である。
【0084】
(vii)1速におけるラビニオ型複合遊星歯車列の強度(歯車強度や歯車寿命)の確保やキャリヤ剛性等の向上が要求されることで、ラビニオ型複合遊星歯車列を大型化する必要があり、この結果、自動変速機の大型化を招く。
【0085】
(viii)2速では、図8に示すように、ラビニオ型複合遊星歯車列にてトルク循環が発生し、トルク循環が発生する2速では、伝達効率の低下により、燃費が悪化する。ここで、トルク循環とは、図8に示すように、第3リングギヤR3から出力トルク(2,362)と循環トルク(1.77)とが分岐して発生し、このうち、循環トルクは、2速の間、第3リングギヤR3と第2ピニオンP2とを内部循環する。
【0086】
・イシマル型遊星歯車列の特徴
【0087】
本発明において採用したシングルピニオン型遊星ギヤとダブルサンギヤ型遊星ギヤとを組み合わせたイシマル型遊星歯車列の特徴について説明する。
【0088】
(a)オーバードライブの変速段を得るには、キャリヤ入力が必要であるが、キャリヤ入力を達成しながら、イシマル型遊星歯車列では、ラビニオ型複合遊星歯車列と同様に、入力部と出力部とを同軸に配置することができる。すなわち、図11(c)に示すように、イシマル型遊星歯車列を構成するダブルサンギヤ型遊星ギヤは、(サンギヤから2つのメンバ)+(リングギヤから1つのメンバ)+(キャリヤから軸方向と径方向に2つのメンバ)=5つのメンバというように、メンバ数が多くなり、特に、センターメンバにより2つのサンギヤの間から径方向に入力が取れることで、オーバードライブを含む高変速段(第1実施例では5速〜6速)が成立するキャリヤ入力が達成される。
【0089】
(b)イシマル型遊星歯車列では、歯車列に最大トルクが作用する1速において、図4(a)に示すように、イシマル型遊星歯車列を構成する第2遊星ギヤG2と第3遊星ギヤG3の両方で受け持ち、1速のトルクフローが全メンバを介して分担可能であるため、強度的に有利である。
【0090】
(c)減速装置としての一組の第1遊星ギヤG1で増大したトルクを、例えば、伝達トルクが大きい1速と2速において、図4(a)と図4(b)に示すように、イシマル型遊星歯車列の第2リングギヤR2から入力するため、サンギヤ入力であるラビニオ型複合遊星歯車列に比較して、接線力が小さくなり、歯車強度や歯車寿命やキャリヤ剛性等の点で有利(小型化可能)である。
【0091】
(d)ラビニオ型複合遊星歯車列に比べ、イシマル型遊星歯車列は、強度的に有利で、かつ、歯車強度や歯車寿命やキャリヤ剛性等の点で有利であると共に、ラビニオ型複合遊星歯車列と同様に、入力部と出力部とが同軸配置による構成とすることができるため、歯車変速装置がコンパクトとなり、自動変速機の小型化を達成することができる。
【0092】
(e)イシマル型遊星歯車列の2速では、図4(b)に示すように、トルク循環の発生が無く、トルク循環が発生するラビニオ型複合遊星歯車列の2速に比べて、伝達効率が向上し、燃費が向上する。
【0093】
(f)ラビニオ型複合遊星歯車列は、ギヤ比αの設定に際し、リングギヤ歯数が一定であるという規制があるため、一般的に適用可能なギヤ比範囲で、且つ、好ましいといわれている高速段になるほど段間比が小さいという条件を考慮した場合、適用できる変速比幅であるレシオカバレージ(=1速ギヤ比/6速ギヤ比)が制限される。
【0094】
これに対し、イシマル型遊星歯車列は、ラビニオ型複合遊星歯車列に比べ、適用できるレシオカバレージが拡大し、ギヤ比の選択自由度を高めることができる。
【0095】
ちなみに、図2(a)には、各遊星ギヤG1,G2,G3のギヤ比α1,α2,α3の一例と、そのときの各変速段での変速比の例を示す。
【0096】
次に、効果を説明する。
以上説明したように、第1実施例の自動変速機用歯車変速装置にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0097】
(1).駆動源からの回転を入力する入力軸Inputと、変速された回転を出力する出力ギヤOutputと、三組の遊星ギヤG1,G2,G3と、複数の回転要素間を一体的に連結する複数のメンバM1,M2と、入力軸Input,出力ギヤOutput,連結メンバM1,M2及び三組の遊星ギヤG1,G2,G3の各回転要素間に配置され、選択的に断接する3つのクラッチC1,C2,C3と選択的に固定する2つのブレーキB1,B2と、を備え、前記3つのクラッチC1,C2,C3と2つのブレーキB1,B2を適宜締結・解放することで、少なくとも前進6速・後退1速を得る変速制御手段を有する自動変速機用歯車変速装置において、前記三組の遊星ギヤG1,G2,G3のうち2、一組の遊星ギヤG1を、入力回転を常時減速する減速装置とし、残り二組の遊星ギヤG2,G3のうち、一組の遊星ギヤG3を、サンギヤS3,S4と、該2つのサンギヤS3,S4の各々と噛み合うピニオンP3と、前記2つのサンギヤS3,S4間に配置され、かつ、回転を入力又は出力するセンターメンバCMを有する第3キャリヤPC3と、前記ピニオンP3に噛み合う1つのリングギヤR3と、を有するダブルサンギヤ型遊星ギヤとし、前記3つのクラッチのうち、2つのクラッチを前記入力部と他の回転メンバとを選択的に段接可能なクラッチとし、他の1つのクラッチを前記入力部の回転よりも減速された回転メンバと他のメンバとを選択的に段接可能なクラッチとしたため、下記に列挙する効果を併せて達成することができる(請求項1に対応)。
(i)二組の遊星ギヤG2,G3にて構成されるイシマル型歯車列は強度的(歯車強度や歯車寿命等)に有利である。
(ii)2速にてトルク循環を無くすことで燃費の向上を図ることができる。
(iii)入力軸Inputと出力ギヤOutputとを同軸配置とすることができる。
(iv)入力軸Inputと出力ギヤOutputとの同軸配置と、要求強度が低いイシマル型歯車列の小型化により、自動変速機をコンパクトにすることができる。
(v)ラビニオ型複合遊星歯車列を用いる場合に比べてギヤ比の選択自由度を高めることができる。
(vi)一組の遊星ギヤG1を、入力回転を常時減速する減速装置としたため、減速装置の小型化を達成できる。自動変速機のさらなるコンパクト化を図ることができる。
【0098】
(2)減速装置である第1遊星ギヤG1を、シングルピニオン型遊星ギヤとしたため、ギヤノイズや部分点数が低減できると共に、伝達効率が向上し、さらに、燃費の向上につながる(請求項1に対応)。
【0099】
(3)減速装置である遊星ギヤを第1遊星ギヤG1、ダブルサンギヤ型遊星ギヤを第3遊星ギヤG3、残りの遊星ギヤを第2遊星ギヤG2としたとき、前記第2遊星ギヤG2と前記第3遊星ギヤG3とは、第2遊星ギヤG2の回転メンバと第3遊星ギヤG3の回転メンバとを一体的に連結する連結メンバM1,M2を含んで5つの回転メンバで構成される遊星ギヤセットであって、図2に示す締結表にしたがって前進6速で後退1速を得る変速油圧制御装置を設けたため、下記に列挙する効果を併せて得ることができる(請求項1に対応)。
(i)2速にてトルク循環を無くすことで高い燃費の向上が図られる。
(ii)第1クラッチC1と第3クラッチC3の締結により4速として直結変速段を設けることが可能であり、トルク伝達効率が向上し、燃費に寄与する。
【0100】
(4)入力部に連結する第1の減速遊星ギヤメンバS1と、回転を係止可能な第2の減速遊星ギヤメンバR1と、第1と第2の減速遊星ギヤメンバS1,R1に噛み合う第1ピニオンP1を支持し、減速回転を出力する第1キャリヤPC1と、を有する減速装置であるシングルピニオン型の第1遊星ギヤG1と、第2サンギヤS2と、第2リングギヤR2と、両ギヤS2,R2に噛み合う第2ピニオンP2を支持する第2キャリヤPC2と、を有するシングルピニオン型の第2遊星ギヤG2と、第3サンギヤS3及び第4サンギヤS4と、前記センターメンバCMを有し両サンギヤS3,S4の各々に噛み合う第3ピニオンP3を支持する第3キャリヤPC3と、前記第3ピニオンP3に噛み合う1つの第3リングギヤR3と、を有するダブルサンギヤ型の第3遊星ギヤG3と、第2キャリヤPC2に連結される出力ギヤOutputと、第2サンギヤS2と第3サンギヤS3とを一体的に連結する第1連結メンバM1と、第2キャリヤPC2と第3リングギヤR3とを一体的に連結する第2連結メンバM2と、入力軸Inputと第2リングギヤR2とを選択的に段接する第1クラッチC1と、第1キャリヤPC1と第4サンギヤS4とを選択的に断接する第2クラッチC2と、入力軸Inputと第3キャリヤPC3を選択的に断接する第3クラッチC3と、第3キャリヤPC3の回転を選択的に停止させる第1ブレーキB1と、第4サンギヤS4の回転を選択的に停止させる第2ブレーキB2と、前進6速で後退1速を得る変速油圧制御装置を設けたため、下記に列挙する効果を併せて得ることができる(請求項1に対応)。
(i)大トルク入力となる1速及び2速において、第2遊星ギヤG2と第3遊星ギヤG3により構成される、いわゆる、イシマル型遊星歯車列に対し、リングギヤ入力を達成でき、さらに、自動変速機をコンパクトにすることができる。
(ii)2速においてトルク循環が無くなるため、2速の伝達効率が向上し、燃費の向上を図れる。
(iii)第1クラッチC1と第2クラッチC2を締結することで第2遊星ギヤG2を一体とし、第3クラッチC3の一方を入力軸Inputとし、5速において直結変速段を設けることができるため、トルク伝達効率が向上し、燃費に寄与する。
【0101】
(5) ダブルサンギヤ型遊星ギヤである第3遊星ギヤG3を、同じ歯数を有する2つのサンギヤS3,S4と、該2つのサンギヤS3,S4の各々に噛み合うピニオンP3と、を有する遊星ギヤとしたため、ピニオンP3の加工が容易であり、製造容易という効果が得られる。また、音や振動に対しても非常に有利となる。
【0102】
(第2実施例)
まず、構成を説明する。第2実施例は、請求項1に記載の発明に対応する自動変速機用歯車変速装置で、図12は第2実施例の自動変速機用歯車変速装置を示すスケルトン図である。
【0103】
図12において、G1は第1遊星ギヤ、G2は第2遊星ギヤ、G3は第3遊星ギヤ、M1は第1連結メンバ、M2は第2連結メンバ、C1は第1クラッチ、C2は第2クラッチ、C3は第3クラッチ、B1は第1ブレーキ、B2は第2ブレーキ、Inputは入力軸(入力部)、Outputは出力ギヤ(出力部)である。
【0104】
第2実施例の自動変速機用歯車変速装置(減速シングルタイプ2という)は、図12の左端部に減速装置としてのシングルピニオン型の第1遊星ギヤG1を配置し、中央部にダブルサンギヤ型の第3遊星ギヤG3を配置し、右端部にシングルピニオン型の第2遊星ギヤG2を配置した例である。そして、前記第2遊星ギヤG2と第3遊星ギヤG3により、いわゆる、イシマル型遊星歯車列を構成している。
【0105】
前記第1遊星ギヤG1は、第1サンギヤS1と、第1リングギヤR1と、両ギヤS1,R1に噛み合う第1ピニオンP1を支持する第1キャリヤPC1と、を有する減速装置である。
【0106】
前記第2遊星ギヤG2は、第2サンギヤS2と、第2リングギヤR2と、両ギヤS2,R2に噛み合う第2ピニオンP2を支持する第2キャリヤPC2と、を有するシングルピニオン型遊星ギヤである。
【0107】
前記第3遊星ギヤG3は、2つの第3サンギヤS3及び第4サンギヤS4と、該両サンギヤS3,S4の各々に噛み合う第3ピニオンP3を支持するセンターメンバCMと、前記第3ピニオンP3に噛み合う1つの第3リングギヤR3と、を有するダブルサンギヤ型遊星ギヤである。
【0108】
前記入力軸Inputは、第1リングギヤR1に連結され、前記出力ギヤOutputは、第2キャリヤPC2に連結される。
【0109】
前記第1連結メンバM1は、第2サンギヤS2と第3サンギヤS3とを一体的に連結する。前記第2連結メンバM2は、第2キャリヤPC2と第3リングギヤR3とを一体的に連結する。
【0110】
前記第1クラッチC1は、入力軸Inputと第2リングギヤR2とを選択的に断接する。前記第2クラッチC2は、第1キャリヤPC1と第4サンギヤS4とを選択的に断接する。前記第3クラッチC3は、入力軸InputとセンターメンバCMとを選択的に断接する。
【0111】
前記第1ブレーキB1は、第3キャリヤPC3及びセンターメンバCMの回転を選択的に停止させる。前記第2ブレーキB2は、第4サンギヤS4の回転を選択的に停止させる。
【0112】
前記各クラッチC1,C2,C3及び各ブレーキB1,B2には、図2の締結作動表に示すように、前進6速後退1速の各変速段にて締結圧(○印)や解放圧(無印)を作り出す図外の変速油圧制御装置が接続されている。
【0113】
次に、作用及び効果についてであるが、基本的な構成は実施の形態1と同様であるため省略する。
【0114】
次に、効果を説明する。
以上説明したように、第2実施例の自動変速機用歯車変速装置にあっては、第1実施例装置と同様の効果を得ることができる。
【0115】
(第3実施例)
まず、構成を説明する。第3実施例は、請求項2に記載の発明に対応する自動変速機用歯車変速装置で、図13は第3実施例の自動変速機用歯車変速装置を示すスケルトン図である。
【0116】
図13において、G1は第1遊星ギヤ、G2は第2遊星ギヤ、G3は第3遊星ギヤ、M1は第1連結メンバ、M2は第2連結メンバ、C1は第1クラッチ、C2は第2クラッチ、C3は第3クラッチ、B1は第1ブレーキ、B2は第2ブレーキ、Inputは入力軸(入力部)、Outputは出力ギヤ(出力部)である。
【0117】
第3実施例の自動変速機用歯車変速装置(減速ダブルタイプ1という)は、図13の左端部に減速装置としてのダブルピニオン型の第1遊星ギヤG1を配置し、中央部にダブルサンギヤ型の第3遊星ギヤG3を配置し、右端部にシングルピニオン型の第2遊星ギヤG2を配置した例である。そして、前記第2遊星ギヤG2と第3遊星ギヤG3により、いわゆる、イシマル型遊星歯車列を構成している。
【0118】
前記第1遊星ギヤG1は、第1サンギヤS1と、第1リングギヤR1と、両ギヤS1,R1に噛み合う第1ダブルピニオンP1を支持する第1キャリヤPC1と、を有する減速装置としてのダブルピニオン型遊星ギヤである。
【0119】
前記第2遊星ギヤG2は、第2サンギヤS2と、第2リングギヤR2と、両ギヤS2,R2に噛み合う第2ピニオンP2を支持する第2キャリヤPC2と、を有するシングルピニオン型遊星ギヤである。
【0120】
前記第3遊星ギヤG3は、2つの第3サンギヤS3及び第4サンギヤS4と、第3及び第4サンギヤS3,S4の各々に噛み合う第3ピニオンP3と、この第3ピニオンP3を支持する軸方向の第3キャリヤPC3と、該第3キャリヤPC3に接続され、前記両サンギヤS3,S4の間に配置されるセンターメンバCMと、前記第3ピニオンP3に噛み合う1つの第3リングギヤR3と、を有するダブルサンギヤ型遊星ギヤである。
【0121】
前記入力軸Inputは、第1キャリヤPC1に連結され、駆動源である図外のエンジンからの回転駆動力を、トルクコンバータ等を介して入力する。
【0122】
前記出力ギヤOutputは、センターメンバCMに連結され、出力回転駆動力を図外のファイナルギヤ等を介して駆動輪に伝達する。
【0123】
前記第1連結メンバM1は、第2サンギヤS2と第3サンギヤS3とを一体的に連結する。前記第2連結メンバM2は、第2キャリヤPC2と第3リングギヤR3とを一体的に連結する。
【0124】
前記第1クラッチC1は、第1キャリヤPC1と第3リングギヤR3とを選択的に断接するクラッチである。前記第2クラッチC2は、第1リングギヤR1と第4サンギヤS4とを選択的に断接するクラッチである。前記第3クラッチC3は、第1キャリヤPC1と第2キャリヤPC2とを選択的に断接するクラッチである。
【0125】
前記第1ブレーキB1は、第2キャリヤPC2の回転を選択的に停止させるブレーキである。前記第2ブレーキB2は、第1メンバM1の回転を選択的に停止させるブレーキである。
【0126】
前記各クラッチC1,C2,C3及び各ブレーキB1,B2には、図2の締結作動表に示すように、前進6速後退1速の各変速段にて締結圧(○印)や解放圧(無印)を作り出す図外の変速油圧制御装置(請求項2に記載の変速制御手段)が接続されている。
【0127】
次に、作用を説明する。
[変速作用]
【0128】
図14は第3実施例の自動変速機用歯車変速装置において各変速段におけるメンバの回転停止状態を示す共線図、図15〜図18は第3実施例の自動変速機用歯車変速装置の各変速段でのトルクフローを示す図である。
【0129】
なお、図15〜図18においてクラッチ・ブレーキ・メンバのトルク伝達経路は太線で示し、ギヤのトルク伝達経路はハッチングで示す。
【0130】
以下、前進6速後退1速の各変速段における変速作用を説明する。
【0131】
〈1速〉
1速は、図2に示すように、第1クラッチC1と第1ブレーキB1の締結により得られる。
【0132】
この1速では、第3遊星ギヤG3において、第1クラッチC1の締結により、入力軸Inputの回転が第3リングギヤR3に入力される。
【0133】
一方、第2遊星ギヤG2においては、第1ブレーキB1の締結により、第2キャリヤPC2がケースに固定される。第3リングギヤR3からの入力回転に対し、第3サンギヤS3の回転は、回転方向が逆方向の減速回転となる。そして、この第3サンギヤS3の回転は、第1連結メンバM1を介し、第2遊星ギヤG2の第2サンギヤS2に伝達される。
【0134】
よって、第2遊星ギヤG2においては、第2サンギヤS2から逆方向の減速回転が入力され、第3リングギヤR3から正方向の回転が入力されることになり、第3キャリヤPC3からセンターメンバCMを経過して出力ギヤOutputへ出力される。
【0135】
すなわち、1速は、図14の共線図に示すように、第1遊星ギヤG1経由の入力軸Inputからの回転を第3リングギヤR3への入力回転とする第1クラッチC1の締結点と、第2キャリヤPC2の回転を停止する第1ブレーキB1の締結点とを結ぶ線にて規定され、入力軸Inputから入力された回転を減速して出力ギヤOutputから出力する。
【0136】
この1速でのトルクフローは、図15(a)に示す通りであり、太線で示す第1クラッチC1と第1ブレーキB1と各メンバと、ハッチングで示す第2遊星ギヤG2と第3遊星ギヤG3(第4サンギヤS4を除く)にトルクが作用することになる。つまり、1速では、イシマル型遊星歯車列を構成する第2遊星ギヤG2と第3遊星ギヤG3とがトルク伝達に関与する。
【0137】
〈2速〉
2速は、図2に示すように、1速での第1ブレーキB1を解放し、第2ブレーキB2を締結する。つまり、第1クラッチC1と第2ブレーキB2を締結することにより得られる。
【0138】
この2速では、第3遊星ギヤG3において、第1クラッチC1の締結により、第1遊星ギヤG1経由の入力軸Inputからの回転が第3リングギヤR3に入力される。
【0139】
一方、第2ブレーキB2の締結により、第3サンギヤS3がケースに固定されるため、第3リングギヤR3からの回転を減速した回転が、第3キャリヤPC3からセンターメンバCMを経過して出力ギヤOutputへ出力される。
【0140】
すなわち、2速は、図14の共線図に示すように、入力軸Inputの回転を第3リングギヤR3への入力回転とする第1クラッチC1の締結点と、第3サンギヤS3の回転を停止する第2ブレーキB2の締結点と、を結ぶ線にて規定され、入力軸Inputから入力された回転を減速(1速よりも高速)として出力ギヤOutputから出力する。
【0141】
この2速でのトルクフローは、図15(b)に示す通りであり、太線で示す第1クラッチC1と第2ブレーキB2と各メンバと、ハッチングで示す第1遊星ギヤG1及び第2遊星ギヤG2にトルクが作用することになる。なお、第2遊星ギヤG2については、固定である両サンギヤS2の回りを、非拘束の第2ピニオンP2が第2リングギヤR2の出力回転に伴って公転するだけであり、回転メンバとして機能するだけで、トルク伝達には関与しない。
【0142】
〈3速〉
3速は、図2に示すように、2速での第2ブレーキB2を解放し、第2クラッチC2を締結すること、つまり、第1クラッチC1と第2クラッチC2を締結することにより得られる。
【0143】
この3速では、第3遊星ギヤG3において、第1クラッチC1の締結により、入力軸Inputの回転が第3リングギヤR3に入力される。同時に、第2クラッチC2の締結により、第1遊星ギヤG1の第1リングギヤR1から減速された回転が第3遊星ギヤG3の第4サンギヤS4に入力される。
【0144】
よって、第3遊星ギヤG3においては、第3リングギヤR3に等速回転が入力され、第4サンギヤS4から減速回転が入力されることで、2速よりも第4サンギヤS4に入力される回転(=第1遊星ギヤG1の減速回転)だけ増速された減速回転がセンターメンバCMを経過して出力ギヤOutputへ出力される。
【0145】
すなわち、3速は、図14の共線図に示すように、入力軸Inputの回転を第3リングギヤR3への入力回転とする第1クラッチC1の締結点と、第1遊星ギヤG1からの減速回転を第4サンギヤS4への入力回転とする第2クラッチC2の締結点と、を結ぶ線にて規定され、入力軸Inputから入力された回転を減速(=第1遊星ギヤG1の減速比)して出力ギヤOutputから出力する。
【0146】
この3速でのトルクフローは、図16(a)に示す通りであり、太線で示す第1クラッチC1と第2クラッチC2と各メンバと、ハッチングで示す第1遊星ギヤG1及び第2遊星ギヤG2にトルクが作用することになる。すなわち、第2遊星ギヤG2はトルク伝達に何ら関与しない。
【0147】
〈4速〉
4速は、図2に示すように、3速での第2クラッチC2を解放し、第3クラッチC3を締結すること、つまり、第1クラッチC1と第3クラッチを締結することにより得られる。
【0148】
この4速では、第3遊星ギヤG3において、第1クラッチC1の締結により、第1遊星ギヤG1経由の入力軸Inputの回転が第3リングギヤR3に入力される。
【0149】
一方、第2遊星ギヤG2においては、第3クラッチC3の締結により、入力軸Inputからの入力回転が第2キャリヤPC2に入力される。
【0150】
よって、第2遊星ギヤG2と第3遊星ギヤG3は一体に回転し、入力軸Inputと等速の回転がセンターメンバCMを経過して出力ギヤOutputへ出力される。
【0151】
すなわち、4速は、図14の共線図に示すように、入力軸Inputの回転を第3リングギヤR3への入力回転とする第1クラッチC1の締結点と、第2キャリヤPC2の回転を入力回転とする第3クラッチC3の締結点と、を結ぶ線にて規定され、入力軸Inputから入力された回転をそのまま出力ギヤOutputから出力する(直結段)。
【0152】
この4速でのトルクフローは、図16(b)に示す通りであり、太線で示す第1クラッチC1と第3クラッチC3と各メンバと、ハッチングで示す第2遊星ギヤG2と第3遊星ギヤG3(第4サンギヤS4を除く)にトルクが作用することになる。
【0153】
(5速)
5速は、図2に示すように、4速での第1クラッチC1を解放し、第2クラッチC2を締結する。つまり、第2クラッチC2と第3クラッチC3を締結することにより得られる。
【0154】
この5速では、第3クラッチC3の締結により、入力軸Inputからの入力回転が第2キャリヤPC2に入力される。同時に、第2クラッチC2の締結により、第1遊星ギヤG1の第1リングギヤR1により減速された回転が第4サンギヤS4,第3サンギヤS3及び第1連結メンバM1を介して第2サンギヤS2に入力される。
【0155】
よって、第2遊星ギヤG2においては、第2キャリヤPC2に入力回転が入力され、第2サンギヤS2に第1遊星ギヤG1により減速された回転が入力されることで、第2リングギヤR2から増速された回転が第3キャリヤPC3に入力され、センターメンバCMから出力ギヤOutputへ出力される。
【0156】
すなわち、5速は、図14の共線図に示すように、入力軸Inputの回転を入力回転とする第3クラッチC3の締結点と、第1遊星ギヤG1により減速された回転を第2サンギヤS2の入力回転とする第2クラッチC2の締結点と、を結ぶ線にて規定され、入力軸Inputから入力された回転を増速して出力ギヤOutputから出力する。
【0157】
この5速でのトルクフローは、図17(a)に示す通りであり、太線で示す第2クラッチC2と第3クラッチC3と各メンバと、ハッチングで示す第1遊星ギヤG1と第2遊星ギヤG2と第3遊星ギヤG3(第3リングギヤR3を除く)にトルクが作用することになる。
【0158】
(6速)
6速は、図2に示すように、5速での第2クラッチC2を解放し、第2ブレーキB2を締結する。つまり、第3クラッチC3と第2ブレーキB2を締結することにより得られる。
【0159】
この6速では、第3クラッチC3の締結により、第1遊星ギヤG1経由の入力軸Inputからの回転が第2キャリヤPC2に入力される。同時に、第2ブレーキB2の締結により、第2サンギヤS2及び第3サンギヤS3の回転を固定する。
【0160】
よって、第2遊星ギヤG2においては、第2リングギヤR2から増速された回転が第3キャリヤPC3に出力され、第3遊星ギヤG3の第3キャリヤPC3を経由してセンターメンバCMを経過して出力ギヤOutputへ出力される。
【0161】
すなわち、6速は、図14の共線図に示すように、入力軸Inputの回転を第2キャリヤPC2の入力回転とする第3クラッチの締結点と、第2サンギヤS2及び第3サンギヤS3の回転を固定する第2ブレーキB2の締結点と、を結ぶ線にて規定され、入力軸Inputから入力された回転を増速して出力ギヤOutputから出力する。
【0162】
この6速でのトルクフローは、図17(b)に示す通りであり、太線で示す第3クラッチC3と第2ブレーキB2と各メンバと、ハッチングで示す第2遊星ギヤG1と第3遊星ギヤG3(第4サンギヤS4及び第3リングギヤR3を除く)にトルクが作用することになる。
【0163】
(後退速)
後退速は、図2に示すように、第2クラッチC2と第1ブレーキB1を締結することにより得られる。
【0164】
この後退1速では、第2クラッチC2の締結により、第1遊星ギヤG1からの減速回転が第4サンギヤS2及び第3サンギヤS3に入力され、更に第1連結メンバM1を介して第2サンギヤS2に入力される。一方、第1ブレーキB1の締結により、第2キャリヤPC2がケースに固定される。
【0165】
よって、第2遊星ギヤG2においては、第2サンギヤS2に正方向の減速回転が入力され、第2キャリヤPC2がケースに固定となり、第2リングギヤR2からは、減速した逆回転が、第2連結メンバM2を経過して第3キャリヤPC3及びセンターメンバCMを介して出力ギヤOutputへ出力される。
【0166】
すなわち、後退速は、図14の共線図に示すように、第1遊星ギヤG1からの減速回転を第4サンギヤS4への入力回転とする第2クラッチC2の締結点と、第2キャリヤPC2の回転を停止する第1ブレーキB1の締結点とを結ぶ線にて規定され、入力軸Inputから入力された回転を逆方向に減速して出力ギヤOutputから出力する。
【0167】
この後退速でのトルクフローは、図18に示す通りであり、太線で示す第2クラッチC2と第1ブレーキB1と各メンバと、ハッチングで示す第1遊星ギヤG1と第2遊星ギヤG2と第3遊星ギヤG3(第3リングギヤR3を除く)にトルクが作用することになる。
【0168】
次に、効果を説明する。
以上説明したように、第3実施例の自動変速機用歯車変速装置にあっては、第1実施例の(1),(3),(5)の効果に加え、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0169】
(6)減速装置の一組の第1遊星ギヤG1を、ダブルピニオン型遊星ギヤとしたため、レイアウト自由度を高めることができる(請求項2に対応)。
【0170】
すなわち、出力部として、出力ギヤOutputとする以外に、入力軸Inputの反対側に同軸配置に出力軸Outputを配置することが可能であり、フロントエンジン・フロントドライブ車(FF車)の自動変速機に適しているレイアウトを得ることができると共に、フロントエンジン・リヤドライブ車(FR車)の自動変速機に適しているレイアウトを得ることができる。
【0171】
(7)入力部に連結する第1の減速遊星ギヤメンバS1と、回転を係止可能な第2の減速遊星ギヤメンバR1と、減速回転を出力する第1リングギヤR1と、を有する減速装置であるダブルピニオン型の第1遊星ギヤG1と、第2サンギヤS2と、第2リングギヤR2と、両ギヤS2,R2に噛み合う第2ピニオンP2を支持する第2キャリヤPC2と、を有するシングルピニオン型の第2遊星ギヤG2と、第3サンギヤS3及び第4サンギヤS4と、前記センターメンバを有し両サンギヤS3,S4の各々に噛み合う第3ピニオンP3を支持する第3キャリヤPC3と、前記第3ピニオンP3に噛み合う1つの第3リングギヤR3と、を有するダブルサンギヤ型の第3遊星ギヤG3と、第3キャリヤPC3に連結される出力ギヤOutputと、第2サンギヤS2と第3サンギヤS3とを一体的に連結する第1連結メンバM1と、第3キャリヤPC3と第2リングギヤR2とを一体的に連結する第2連結メンバM2と、第1の減速遊星ギヤメンバPC1と第3リングギヤR3とを選択的に断接する第1クラッチC1と、第1リングギヤR1と第4サンギヤS4とを選択的に断接する第2クラッチC2と、第1の減速遊星ギヤメンバPC1と第2キャリヤPC2とを選択的に断接する第3クラッチC3と、第2キャリヤPC2の回転を選択的に停止させる第1ブレーキB1と、第1連結メンバM1の回転を選択的に停止させる第2ブレーキB2と、少なくとも前進6速で後退1速を得る変速油圧制御装置と、を設けたため、下記に列挙する効果を得ることができる(請求項2に対応)。
(i)大きなトルクが作用する1速及び2速において、第2遊星ギヤG2と第3遊星ギヤG3により構成されるイシマル型遊星歯車列に対し、リングギヤ入力を達成でき、さらに、自動変速機をコンパクトにすることができる。
(ii)2速において、トルク循環が無くなるため、2速の伝達効率が向上し、燃費の向上を図ることができる。
(iii)等速回転する第1キャリヤPC1に第1クラッチC1と第3クラッチC3を設け、この2つのクラッチの締結により第2遊星ギヤG2と第3遊星ギヤG3を一体に回転することで、4速を直結変速段とすることができ、トルク伝達効率が向上し、燃費の向上に寄与することが可能となる。
(iv)2速及び6速では、第2遊星ギヤG2の第2サンギヤS2が、第3,第4サンギヤS3,S4を経由せず、直接、第2ブレーキB2により固定されるため、第1実施例装置よりも歯車の伝達効率が高く、燃費の向上に寄与する。
【0172】
以上、本発明の自動変速機用歯車変速装置を第1実施例〜第3実施例に基づき説明してきたが、具体的な構成については、これらの実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に記載された本発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。例えば、第1実施例において、減速装置である第1遊星ギヤG1は、入力部と連結する第1の減速遊星ギヤメンバとして第1リングギヤR1、固定可能な第2の減速遊星ギヤメンバとして第1サンギヤS1の例を使って説明したが、第1サンギヤS1を入力部に連結させて第1の減速遊星ギヤメンバとし、第1リングギヤR1を固定可能に配置して第2の減速遊星ギヤメンバとしたものでもよい。同様に、第2実施例において、第1サンギヤS1を入力部と連結して第1の減速遊星ギヤメンバとし、第1キャリヤPC1を固定可能として第2の減速遊星ギヤメンバとしたものでもよい。
また、ダブルサンギヤ型の第2遊星ギヤG2を、異なる歯数を有する2つのサンギヤS2,S4と、該2つのサンギヤS2,S4の各々に噛み合う歯数の異なる第2段付きピニオンP2と、を有する遊星ギヤとしてもよい。これにより、変速比幅をさらに広くとることができ、ギヤ比選択の自由度がさらに向上し、設計自由度が高まる。
【0173】
また、2速及び最高速段の変速比の自由度が増える。また、上述の各実施例では第1遊星ギヤG1の第1サンギヤS1を固定としたが、第1サンギヤS1を選択的に固定可能なブレーキを設けても良い。また、本発明に係る自動変速機用歯車変速装置は、変速段の多段化要求がある車両の変速装置として有用であり、特に、駆動源としてエンジンやモータが搭載された自動車の駆動源出力軸に接続される自動変速機の歯車変速部に用いるのに適している。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施例の自動変速機用歯車変速装置を示すスケルトン図である。
【図2】第1実施例の自動変速機用歯車変速装置の締結表である。
【図3】第1実施例の自動変速機用歯車変速装置における共線図である。
【図4】第1実施例の自動変速機用歯車変速装置における1速、2速のトルクフロー図である。
【図5】第1実施例の自動変速機用歯車変速装置における3速、4速のトルクフロー図である。
【図6】第1実施例の自動変速機用歯車変速装置における5速、6速のトルクフロー図である。
【図7】第1実施例の自動変速機用歯車変速装置における後退1速のトルクフロー図である。
【図8】ラビニオ型複合遊星歯車列を用いた自動変速機用歯車変速装置における2速でのトルク循環説明図である。
【図9】シンプソン型遊星歯車列とラビニオ型複合遊星歯車列とでの1速におけるトルク伝達経路を示す図である。
【図10】サンギヤ入力よりもリングギヤ入力が有利であることの説明図である。
【図11】シンプソン型遊星歯車列の場合にオーバードライブ変速段を得るキャリヤ入力が実現できないことの説明図とダブルサンギヤ型遊星ギヤが5つのメンバを持つことの説明図である。
【図12】第2実施例の自動変速機用歯車変速装置を示すスケルトン図である。
【図13】第3実施例の自動変速機用歯車変速装置を示すスケルトン図である。
【図14】第3実施例の自動変速機用歯車変速装置における共線図である。
【図15】第3実施例の自動変速機用歯車変速装置における1速、2速のトルクフロー図である。
【図16】第3実施例の自動変速機用歯車変速装置における3速、4速のトルクフロー図である。
【図17】第3実施例の自動変速機用歯車変速装置における5速、6速のトルクフロー図である。
【図18】第3実施例の自動変速機用歯車変速装置における後退1速のトルクフロー図である。
【符号の説明】
C1 第1クラッチ
C2 第2クラッチ
C3 第3クラッチ
B1 第1ブレーキ
B2 第2ブレーキ
G1 第1遊星ギヤ
G2 第2遊星ギヤ
G3 第3遊星ギヤ
Claims (2)
- 駆動源からの回転を入力する入力部に連結する第1の減速遊星ギヤメンバと、回転を係止可能な第2の減速遊星ギヤメンバと、第1と第2の減速遊星ギヤメンバとに噛み合う第1ピニオンを支持し、減速回転を出力する第1キャリヤと、を有する減速装置である第1遊星ギヤと、
第2サンギヤと、第2リングギヤと、両ギヤに噛み合う第2ピニオンを支持する第2キャリヤと、を有するシングルピニオン型の第2遊星ギヤと、
第3サンギヤ及び第4サンギヤと、該2つのサンギヤ間に配置され、かつ、回転を入力又は出力するセンターメンバを有し両サンギヤの各々に噛み合う第3ピニオンを支持する第3キャリヤと、前記第3ピニオンに噛み合う1つの第3リングギヤと、を有するダブルサンギヤ型の第3遊星ギヤと、
第2キャリヤに連結され、変速された回転を出力する出力部と、
第2サンギヤと第3サンギヤとを一体的に連結する第1連結メンバと、
第2キャリヤと第3リングギヤとを一体的に連結する第2連結メンバと、
第2リングギヤと入力部とを選択的に断接する第1クラッチと、
第1キャリヤと第4サンギヤとを選択的に断接する第2クラッチと、
入力部と第3キャリヤを選択的に断接する第3クラッチと、
第3キャリヤの回転を選択的に停止させる第1ブレーキと、
第4サンギヤの回転を選択的に停止させる第2ブレーキと、
を備え、
前記第1クラッチと第1ブレーキの締結により1速、第1クラッチと第2ブレーキの締結により2速、第1クラッチと第2クラッチの締結により3速、第1クラッチと第3クラッチの締結により4速、第2クラッチと第3クラッチの締結により5速、第3クラッチと第2ブレーキの締結により6速、第2クラッチと第1ブレーキの締結により後退速とし、少なくとも前進6速で後退1速を得る変速制御手段を設けたことを特徴とする自動変速機用歯車変速装置。 - 駆動源からの回転を入力する入力部に連結する第1の減速遊星ギヤメンバと、回転を係止可能な第2の減速遊星ギヤメンバと、減速回転を出力する第1リングギヤと、を有する減速装置であるダブルピニオン型の第1遊星ギヤと、
第2サンギヤと、第2リングギヤと、両ギヤに噛み合う第2ピニオンを支持する第2キャリヤと、を有するシングルピニオン型の第2遊星ギヤと、
第3サンギヤ及び第4サンギヤと、該2つのサンギヤ間に配置され、かつ、回転を入力又は出力するセンターメンバを有し両サンギヤの各々に噛み合う第3ピニオンを支持する第3キャリヤと、前記第3ピニオンに噛み合う1つの第3リングギヤと、を有するダブルサンギヤ型の第3遊星ギヤと、
第3キャリヤに連結され、変速された回転を出力する出力部と、
第2サンギヤと第3サンギヤとを一体的に連結する第1連結メンバと、
第3キャリヤと第2リングギヤとを一体的に連結する第2連結メンバと、
第1の減速遊星ギヤメンバと第3リングギヤとを選択的に断接する第1クラッチと、
第1リングギヤと第4サンギヤとを選択的に断接する第2クラッチと、
第1の減速遊星ギヤメンバと第2キャリヤとを選択的に断接する第3クラッチと、
第2キャリヤの回転を選択的に停止させる第1ブレーキと、
第1連結メンバの回転を選択的に停止させる第2ブレーキと、
を備え、
前記第1クラッチと第1ブレーキの締結により1速、第1クラッチと第2ブレーキの締結により2速、第1クラッチと第2クラッチの締結により3速、第1クラッチと第3クラッチの締結により4速、第2クラッチと第3クラッチの締結により5速、第3クラッチと第2ブレーキの締結により6速、第2クラッチと第1ブレーキの締結により後退速とし、少なくとも前進6速で後退1速を得る変速制御手段を設けたことを特徴とする自動変速機用歯車変速装置。
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