JP3769717B2 - トンネル覆工方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、コンクリートやモルタルなどの自硬性充填材を採用するトンネルを構築するに際して用いて好適なトンネル覆工方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
周知のように、例えば軟弱で地下水位が高いような地山に対してシールド工法によりトンネルを施工する場合、一次覆工にはセグメントを使用することが一般的である。近年、セグメントを用いることに代えて、図8に示すように、シールド掘削機1の後方において内型枠3を組み立て、その内型枠3と地山Gとの間に自硬性硬化材としてコンクリートCを直接打設充填することによって、トンネルTの覆工壁Wを形成する、いわゆるECL工法(Extruded Concrete Lining Method)の開発も進められている。
【0003】
ECL工法では、打設されたコンクリートCが硬化して覆工壁Wが形成された後において地山圧力(土圧および地下水圧)に対して十分に耐え得ることは当然であるが、コンクリートCを打設した直後の未硬化の状態であっても地山圧力に対して抗し得るものでなければならない。特に地下水圧が高い地山Gに対してECL工法を適用する場合には、未硬化のコンクリートCによる十分な止水性を確保するための方策が不可欠である。このため、本出願人は先に、妻型枠6でコンクリートCを押圧することによって、その打設圧力を地山圧力より常に高く維持し、未硬化の状態のコンクリートCによっても止水性を確保するようにしたECL工法におけるトンネルTの覆工方法を提供した(例えば特開平4ー161599号等)。
【0004】
このようなECL工法では、通常時において、コンクリートC2を打設するときには、先行打設したコンクリートC1が固まる前に、新たに打設するコンクリートC2の打設圧力を、先行打設されているコンクリートC1の圧力と同等あるいはやや高い所定の圧力に妻型枠6で保持することによって、両者の打設コンクリートを一体化する構成となっている。その結果、覆工壁Wが打継ぎ目のない連続体とされ、これによって止水性が確保されるものとなっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記ECL工法において、図8(a)に示すように、例えば工事の休業日や、何らかの事情により工事が中断されたとき等には、先に打設したコンクリートC1が完全に硬化してしまう。このため、図8(b)に示すように、休業日明け等、工事を再開して最初の工程で打設するコンクリートC2は、先行打設されたコンクリートC1に一体化せず、ここに打継ぎ目Jが形成されてしまうこととなる。すると、この部分からの漏水の恐れがあるため、この打継ぎ目Jにおける止水性の確保が要求されていた。
【0006】
このような問題に対して、打継ぎ目Jにシール材を配設する工法が考えられる。これには、図9(a)に示すように、妻型枠6にシール材Sをセットしておき、この状態でコンクリートC1を打設することにより、シール材Sを打継ぎ目となる部分に埋没させておく。そして、この後、図9(b)に示すように、休業日明け等の最初の工程で、コンクリートC2を打設すると、コンクリートC1とC2との打継ぎ面Jにはシール材Sが介在することとなり、これによって止水性が確保されるようになる。
【0007】
ところが、このようなシール材Sを用いる場合にも、埋設されるシール材Sが常に打設コンクリートC1の流れに曝されることになり、その結果シール材Sの劣化損傷や剥がれ等、品質上の問題が生じることがあり、止水性能を確実に得ることが困難であるという問題が残る。
【0008】
本発明は、以上のような点を考慮してなされたもので、より止水性を高めることのできるトンネル覆工方法を提供することを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明は、シールド掘削機で地山を掘削しつつ、掘削された地山の周壁を定められた間隔を空けて内型枠で覆い、該内型枠と前記周壁との間に自硬性充填材を充填することによって前記周壁の内面を覆工するトンネル覆工方法であって、先行して充填した自硬性充填材が硬化した後に、その掘進方向前方側に新たに自硬性充填材を充填するときには、前記先行充填した自硬性充填材の打継ぎ目となる面にシール材を配設し、しかる後に前記新たな自硬性充填材を充填しており、前記シール材を配設するときには、前記自硬性充填材を加圧するために前記シールド掘削機に備えられている妻型枠を、前記先行充填した自硬性充填材側から引き離した後、前記先行充填した自硬性充填材に臨む側の面に固定手段が予め配されたシール材を前記妻型枠に仮止めし、続いて前記妻型枠を前記先行充填した自硬性充填材に押しつけて、前記シール材を前記先行充填した自硬性充填材に前記固定手段で固定することを特徴としている。
【0012】
請求項2に係る発明は、請求項1記載のトンネル覆工方法であって、前記シール材を、前記固定手段よりも固定強度の低い仮止め手段によって前記妻型枠に仮止めすることを特徴としている。
【0013】
このように、先行打設した自硬性充填材が硬化した後に、打継ぎ目となる部分にシール材を配設するようにしたので、シール材が打設コンクリートの流れに曝されることがない。また、妻型枠にシール材を仮止めし、これを先行充填した自硬性充填材に押しつけた後に妻型枠を引き離せば、シール材を先行充填した自硬性充填材側に移し替えて固定することができる。固定手段や仮止め手段としては、例えば、接着強度を選択できる接着剤や両面粘着テープ等が好適である。
【0018】
請求項3に係る発明は、請求項1または2記載のトンネル覆工方法であって、前記先行充填した自硬性充填材の打継ぎ目となる部分には、凹部または凸部のいずれか一方または双方を形成しておくことを特徴としている。
【0019】
打継ぎ目に凹部または凸部が形成されることにより、一層高い止水性能を得ることが可能となる。
【0020】
請求項4に係る発明は、請求項1から3のいずれかに記載のトンネル覆工方法であって、前記先行充填した自硬性充填材の打継ぎ目となる面には、前記シール材を配する部分の外周側に、前記トンネルの周方向に連続する突条を形成しておくことを特徴としている。
【0021】
シール材の外周側に突条を形成しておくことにより、この突条が外周側の地山からしみ出てくる水の流路となる。つまり、地山からしみ出てきた水は、突条に沿ってトンネルの外周部を伝って下方に導かれることになる。
【0022】
請求項5に係る発明は、請求項4記載のトンネル覆工方法であって、前記突条が形成された後には、前記突条にパッキンを押し付け、前記パッキンと前記突条とによって溝を形成することを特徴としている。
【0023】
突条にパッキンを押しつけて、このパッキンと突条とで溝を形成することにより、外周側の地山からしみ出る水の流路を、この突条とパッキンとによって形成することが可能となる。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係るトンネル覆工方法の第一、第二の実施の形態および第一、第二の参考例について、図1ないし図7を参照して説明する。
ここではまず、本発明に係る技術の具体的な説明に先立ち、ECL工法の基本的な構成について説明を行う。
【0029】
図1において、符号1は、地山GにおいてトンネルTを掘削するシールド掘削機、2はシールド掘削機1の外殻を成す例えば円筒状のスキンプレートを、1aはスキンプレート2の先端部に設けられて地山Gを掘削するためのカッタを、3はシールド掘削機1によって掘削された坑の周壁Twの内方に所定間隔を隔てて組み立てられた内型枠を、それぞれ示している。さらに、符号4は、推進ジャッキであり、内型枠3から反力を取って、シールド掘削機1を前進させる役割を果たすものである。
【0030】
そして、スキンプレート2と、スキンプレート2の内方で組み立てられる内型枠3との間の環状の空間には、その全周にわたるリング状の板材からなる妻型枠6が、シールド掘削機1の軸線方向に前後動自在に収められている。この妻型枠6は、空間の前方においてスキンプレート2に固定された押圧ジャッキ7によって、空間内で前後方向に進退駆動されるようになっている。
【0031】
妻型枠6の外周部には、スキンプレート2側と内型枠3に接触する部分に図示しないシール部材が配設されている。また、妻型枠6の先端面、すなわち打設するモルタルやコンクリート(以下単に「コンクリート」と称する;自硬性充填材)Cを直接的に押圧する面には、コンクリートCの圧力を検出するため、例えば歪み計型の土圧計等の圧力センサ(図示なし)が取り付けられており、この圧力センサは、押圧ジャッキ7の駆動を制御する制御手段(図示なし)に接続され、妻型枠6によって押圧されるコンクリートCの圧力を刻々と検出して制御手段(図示なし)に入力するようになっている。
【0032】
上記したようなシールド掘削機1でトンネルTを施工する方法について説明すると、図1に示したように、トンネルTを掘削するには、まずシールド掘削機1の前部に備えたカッタ1aで地山Gを掘削して坑を形成しつつ、スキンプレート2の後方において内型枠3を所定形状に組み上げる。
このようにして内型枠3が所定形状に組み上げられた後、外周側の坑の周壁Twと、内型枠3との間の空間に、例えば妻型枠6に形成した図示しない充填口からコンクリートCを充填する。このときには、押圧ジャッキ7を駆動させて、打設したコンクリートCを妻型枠6で加圧し、その圧力が、周囲の地山Gの圧力よりも常に高く、かつ先行打設されているコンクリートCの圧力と同等あるいはやや高い所定の圧力となるように圧力を維持する。このとき、押圧ジャッキ7の作動は、妻型枠6に設けられた圧力センサ(図示なし)で検出されるコンクリートCの圧力に基づき、制御手段(図示なし)で制御され、これによってコンクリートCの圧力が、周囲の地山Gの圧力を上回る所定範囲内の値に自動的に保持されるようになっている。
【0033】
このようにして、打設されたコンクリートCは、先行打設したコンクリートCに一体化され、しかもそのとき周囲の地山Gから地下水が進入してくることが防止される。また、コンクリートCの打設を、先行打設した後方のリングのコンクリートCが硬化する前に行うことによって、通常は両者のコンクリートCに打継ぎ目が形成されず、これにより覆工壁Wが連続体として形成されることとなる。
【0034】
次いで、打設したコンクリートCの圧力を押圧ジャッキ7で保持したまま、推進ジャッキ4で組み立てた内型枠3に反力を得てシールド掘削機1を前方に掘進させ、次のリングにおいて新たな内型枠3の組立を行う。そして、押圧ジャッキ7を縮めて妻型枠6を前方に移動させながら、コンクリートCの充填−妻型枠6によるコンクリートCの押圧を行い、しかる後には、上記作業を順次繰り返し、トンネルTを構築していく。
【0035】
そして、コンクリートCの硬化後には、必要に応じて内型枠3を脱型する。これによりトンネルTの覆工壁Wが形成されることとなる。
【0036】
このようなトンネルTの施工方法においては、前述の如く、例えば休業日の前後や、工事が中断された場合等に、覆工壁Wに打継ぎ目が形成されてしまうこととなるが、この部分には、以下の各実施の形態で示すような方法でシール材を配設する。
【0037】
[第1の実施の形態]
以下に示すものは、打継ぎ目Jにシール材を配設する方法の第1の実施の形態を示すものである。
図2(a)および(b)に示すように、例えば休業日の前の最終工程において打設したコンクリート(自硬性充填材)C1が硬化した後に、妻型枠6を組付けの完了している内型枠3よりも手前に引き戻し、この妻型枠6に、周方向に連続して例えばゴム製等の材料からなる止水シール材(シール材)10を妻型枠6に貼り付ける。この時、止水シール材10には、妻型枠6に面する側10aと、硬化したコンクリートC1に面する側10bとの双方に、例えば両面テープや接着剤等の貼付手段を貼付あるいは塗布するが、妻型枠6に面する側10aの貼付手段(仮止め手段)の方が、コンクリートC1に面する側10bの貼付手段(固定手段)よりも接着強度が低くなるよう、貼付手段の材質を選択する。
【0038】
続いて、図2(c)に示すように、内型枠3を新たに1リング分組み立てる。これにより、妻型枠6は内型枠3とスキンプレート2との間に位置した状態となる。この状態で、妻型枠6を、先行打設して硬化したコンクリートC1に押しつける。この後、図2(d)に示すように、妻型枠6を引き戻すと、接着強度の違いから、妻型枠6に貼り付いていた止水シール材10は、コンクリートC1側に張り替えられるのである。
【0039】
この後、シールド掘削機1を掘進させながら、その後部において内型枠3と周囲の地山Gとの空隙に新たなコンクリート(自硬性充填材)C2を打設する。すると、図2(e)に示すように、止水シール材10は、新たなコンクリートC2と先行打設されて硬化しているコンクリートC1との打継ぎ目Jに埋め込まれた形態となる。
【0040】
その結果、打継ぎ目Jにおけるシール性を確実に発揮して、この部分からトンネルT内への漏水を防止することが可能となる。また、止水シール材10が、硬化した後のコンクリートC1に貼り付けられる構成となっているので、掘進及びコンクリートC1打設中に、止水シール材10がコンクリートC1の流動に曝されることがなく、止水シール材10の止水性能が確実に確保される。
【0041】
さらに、止水シール材10を妻型枠6に貼り付け、これを硬化したコンクリートC1に貼り付け替える構成としたので、当然、止水シール材10をコンクリートC1に手で直接貼り付ける必要がない。したがって、例えばコンクリート打設作業中にトラブル等が発生して打継ぎ目Jが生じてしまう事態となったとき等であっても、妻型枠6を若干引き戻すだけで容易に止水シール材10のセットを行うことが可能となる。
【0042】
[第1の参考例]
次に、打継ぎ目Jにシール材を配設する方法の第1の参考例を示す。
図3に示すように、妻型枠6の型枠面には、形成すべきトンネルTの周方向に連続する突条20が複数本形成されている。さらに、この妻型枠6には、複数本の突条20が設けられている部分にシール材注入孔21が形成されている。そして、流動性と自硬性とを有してジェル状あるいはフォーム状等とされた止水シール材(シール材)22が、図示しない供給源から送給されてこのシール材注入孔21から吐出されるようになっているのである。
【0043】
そして、休業日等の後に工事を行うときには、妻型枠6を、硬化したコンクリートC1から、所定寸法(例えば1cm)程度引き戻す。これにより妻型枠6と硬化しているコンクリートC1との間に空隙が生じることとなるので、この空隙に、シール材注入孔21から、止水シール材22を注入充填する。この止水シール材22は、時間の経過とともに硬化する。
【0044】
この後、前記第1の実施の形態と同様、新たにコンクリートを打設することにより、休業日等を挟んで前後に位置するコンクリートの打継ぎ目には、止水シール材22が配設されることになり、これにより打継ぎ目の止水を確実に行うことができる。さらに、止水シール材22が配設された部分には、妻型枠6の突条20により凹凸条(凹部または凸部)23が形成されることになるので、これによって止水シール材22による止水性がより有効なものとなる。
【0045】
そして、この止水シール材22を充填するときには、妻型枠6を最小限の寸法だけ引き戻せばよいので、上記第1の実施の形態のように、妻型枠6を内型枠3から外した位置まで引き戻して止水シール材10を妻型枠6に直接取り付ける必要がなく、作業を容易に行うことができ、施工性が向上すると共に、コストダウンにもつながる。
【0046】
なお、ここでは、妻型枠6に形成する突条20の断面形状や数等については何ら限定するものではない。例えば図4に示すように、突条20’の断面形状を半円形とし、これにより先行打設されたコンクリートC1に略半円形の凹凸条(凹部または凸部)23’を形成するような構成とすることも可能である。
【0047】
また、この止水シール材22としては、水膨張性を有したもの等を用いることにより、止水をより確実に行うことが可能となる。勿論、他の材料を適宜採用することが可能である。
【0048】
[第2の参考例]
次に、打継ぎ目Jにシール材を配設する方法の第2の参考例を示す。ここでは、図5に示すように、妻型枠6の型枠面側に、例えばゴム系材料等、止水性と可撓性とを有した材料により形成されて、シールド掘削機1の周方向に延在するチューブ30が配設されている。妻型枠6には、このチューブ30を収めるための略半円形状の凹部31が形成されている。さらに、妻型枠6には、チューブ30の内部に連通する供給・排出管33が設けられており、これらを通してチューブ30の内部に空気や水等を充填・排出させることによってチューブ30が膨張・収縮可能となっている。
【0049】
このような妻型枠6を用い、休業日前等の最後の打設工程においては、チューブ30の内部に、空気または水を入れてこれを膨張させておく。この状態でコンクリートC1を打設することにより、打設されたコンクリートC1の打継ぎ目となる部分には、略半円形の断面形状を有した凹溝34が、トンネルTの周方向に延在するよう形成される。
【0050】
その後、図5(b)に示すように、先行打設したコンクリートC1が硬化した後には、休業日明け等の最初の工程で、まず、チューブ30内の空気や水を供給・排出管33から排出してチューブ30を収縮させる。すると、先行打設されたコンクリートC1に形成された断面半円形状の凹溝34と、妻型枠6に予め形成されている凹部31とによって、断面略円形の空間35が形成されることになる。そして、図5(c)に示すように、この空間35に、妻型枠6に形成された注入孔36を通して、流動性と自硬性とを有した止水シール材(シール材)37を注入充填するのである。充填された止水シール材37は、時間の経過と共に硬化する。
【0051】
この後、図5(d)に示すように、妻型枠6を例えば7〜8cm程度引き下げながら、チューブ30内に供給・排出管33から空気や水を注入することにより、チューブ30を膨張させる。これは、チューブ30の膨張により止水シール材37を凹溝34に押し付けるためである。
【0052】
しかる後、新たにコンクリートC2を打設することにより、新たなコンクリートC2と先行打設されたコンクリートC1の打継ぎ目Jに止水シール材37が介在し、高い止水性能を得ることができる。
【0053】
また、止水シール材37を設置するために妻型枠6を動かしてスペースをつくる必要がなく、したがって、作業の効率化を図るとともに作業安全性を向上させることができる。
【0054】
このとき、この止水シール材37としては、水膨張性を有したもの等を用いることにより、止水をより確実に行うことが可能となる。勿論、他の材料を適宜採用することが可能である。
【0055】
[第2の実施の形態]
次に、打継ぎ目Jにシール材を配設する方法の第2の実施の形態を示す。
図6に示すように、ここでは、妻型枠6の型枠面側には、形成すべきトンネルTの周方向に延在する凹溝40が形成されている。この凹溝40は、配設すべき止水シール材10よりも外周側に位置するよう形成されている。
【0056】
このような妻型枠6により、先行打設されて硬化したコンクリートC1には、周方向に延在する突条42が形成されることになる。
【0057】
続いて、前記第1の実施の形態と同様にして、妻型枠6を一旦引き込んで止水シール材10を貼り付け、これを先行打設したコンクリートC1に押し付けて貼り付ける。この止水シール材10は、凹溝40よりも内周側に位置するよう貼付される。
【0058】
このとき、硬化したコンクリートC1には、止水シール材10を貼り付けるべき部分よりも外周側に突条42が形成されているので、外周側の地山Gから水Wが流れ込んできたときには、この水Wは突条42に沿って導かれ、突条42の外周側を伝って流れ落ちるようになっている。したがって、止水シール材10を貼り付けるべき部分が濡れるのを防止することができ、止水シール材10の貼付を確実に行うことが可能となるのである。
【0059】
そしてこの後、施工を続行し、前記第1の実施の形態と同様に、新たにコンクリートC2(図2参照)を打設することにより、打継ぎ目Jにおいては、止水シール材10によって高い止水性が確保される。また、打継ぎ目Jに形成されることになる突条42も、止水性を高めるという機能を有するものとなる。
【0060】
なお、上記実施の形態において、図7に示すように、妻型枠6側に、図示しないシリンダ等により前後方向に進退可能なパッキン45を設けておくようにしてもよい。このような構成においては、止水シール材10を妻型枠6(図6参照)に貼り付けるために妻型枠6を引き込んでいる間、パッキン45を突条42に押しつけておくことにより、パッキン45と突条42と硬化したコンクリートC1の端面とによって断面視略U字状の溝46が形成されることになる。その結果、周囲地山からしみ出てくる水Wを確実に処理することができ、より高い効果を得ることが可能となる。
【0061】
なお、上記実施の形態において、本工法に用いるシールド掘削機1の構造については何ら限定するものではなく、ECL工法を実施することができるのであれば、いかなる構成のシールド掘削機1を適用しても良い。
【0062】
加えて、上記実施の形態では、断面視円形のトンネルTを構築する場合を例に挙げたが、構築するトンネルT自体の構成については限定する意図はなく、断面視矩形のものをはじめとした他の形状のトンネルT等にも本発明の技術を適用することが可能である。
【0063】
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない範囲内であれば、いかなる構成を採用しても良く、また上記したような構成を適宜選択的に組み合わせたものとしても良いのは言うまでもない。
【0064】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1に係るトンネル覆工方法によれば、先行打設した自硬性充填材が硬化した後に、その打継ぎ目となる部分にシール材を配設するようにしたので、シール材が打設コンクリートの流れに曝されることがない。
したがって、シール材の劣化損傷等、品質上の問題となることもなく止水性能を確実に発揮することができる。
【0065】
また、請求項1,2に係るトンネル覆工方法によれば、妻型枠にシール材を仮止めし、続いて妻型枠を先行充填した自硬性充填材に押しつけて、シール材を先行充填した自硬性充填材に固定する構成とした。このようにして、シール材のセット作業を容易に行うことが可能となり、作業効率と安全性の向上を図ることができる。
【0068】
請求項3に係るトンネル覆工方法によれば、打継ぎ目に凹部または凸部が形成されることにより、この凹部または凸部とシール材とによって一層高い止水性能を得ることが可能となる。
【0069】
請求項4、5に係るトンネル覆工方法によれば、シール材の外周側に突条を形成しておくことにより、この突条が外周側の地山からしみ出てくる水の流路となる。つまり、地山からしみ出てきた水は、突条に沿ってトンネルの外周部を伝い下方に導かることになる。その結果、シール材の固定を確実に行え、またトンネル内への漏水を防止できるようになっている。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係るトンネル覆工方法およびシールドトンネルの止水構造の実施の形態を示す図であって、トンネル覆工方法の基本的な構成を示すための図である。
【図2】 本発明に係るトンネル覆工方法およびシールドトンネルの止水構造の第1の実施の形態を示す工程図である。
【図3】 本発明に係るトンネル覆工方法およびシールドトンネルの止水構造の第1の参考例を示す工程図である。
【図4】 第1の参考例の他の例を示す図である。
【図5】 本発明に係るトンネル覆工方法およびシールドトンネルの止水構造の第2の参考例を示す工程図である。
【図6】 本発明に係るトンネル覆工方法およびシールドトンネルの止水構造の第2の実施の形態を示す工程図である。
【図7】 第2の実施の形態の他の例を示す図である。
【図8】 従来のトンネル覆工方法を示す工程図である。
【図9】 従来のトンネル覆工方法の他の例を示す工程図である。
【符号の説明】
1 シールド掘削機
3 内型枠
6 妻型枠
10,22,37 止水シール材(シール材)
23、23’ 凹凸条(凹部または凸部)
30 チューブ
35 空間
42 突条
45 パッキン
C,C1,C2 コンクリート(自硬性充填材)
G 地山
J 打継ぎ目
T トンネル
Tw 周壁
Claims (5)
- シールド掘削機で地山を掘削しつつ、掘削された地山の周壁を定められた間隔を空けて内型枠で覆い、該内型枠と前記周壁との間に自硬性充填材を充填することによって前記周壁の内面を覆工するトンネル覆工方法であって、
先行して充填した自硬性充填材が硬化した後に、その掘進方向前方側に新たに自硬性充填材を充填するときには、前記先行充填した自硬性充填材の打継ぎ目となる面にシール材を配設し、しかる後に前記新たな自硬性充填材を充填しており、
前記シール材を配設するときには、前記自硬性充填材を加圧するために前記シールド掘削機に備えられている妻型枠を、前記先行充填した自硬性充填材側から引き離した後、前記先行充填した自硬性充填材に臨む側の面に固定手段が予め配されたシール材を前記妻型枠に仮止めし、続いて前記妻型枠を前記先行充填した自硬性充填材に押しつけて、前記シール材を前記先行充填した自硬性充填材に前記固定手段で固定することを特徴とするトンネル覆工方法。 - 請求項1記載のトンネル覆工方法であって、前記シール材を、前記固定手段よりも固定強度の低い仮止め手段によって前記妻型枠に仮止めすることを特徴とするトンネル覆工方法。
- 請求項1または2に記載のトンネル覆工方法であって、前記先行充填した自硬性充填材の打継ぎ目となる部分には、凹部または凸部のいずれか一方または双方を形成しておくことを特徴とするトンネル覆工方法。
- 請求項1から3のいずれかに記載のトンネル覆工方法であって、前記先行充填した自硬性充填材の打継ぎ目となる面には、前記シール材を配する部分の外周側に、前記トンネルの周方向に連続する突条を形成しておくことを特徴とするトンネル覆工方法。
- 請求項4記載のトンネル覆工方法であって、前記突条が形成された後には、前記突条にパッキンを押し付け、前記パッキンと前記突条とによって溝を形成することを特徴とするトンネル覆工方法。
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