JP2000220386A - シールド掘削機 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 曲線部においても、組み立てた型枠の外周側
に自硬性充填材を確実に充填してトンネルを構築するこ
とのできるシールド掘削機を提供することを課題とす
る。 【解決手段】 シールド掘削機１０では、スキンプレー
ト１１の内部に内筒１６を設け、この内筒１６とスキン
プレート１１との間の空間１７で妻型枠１８をスライド
させる構成とし、さらに内筒１６の内周面側には型枠１
３との隙間を塞ぐ止水用テールブラシ２１を設ける構成
とした。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、コンクリートやモ
ルタル等の自硬性充填材を採用するシールドトンネルを
構築するに際して用いて好適なシールド掘削機に関す
る。

【０００２】

【従来の技術】周知のように、例えば軟弱で地下水位が
高いような地盤に対してシールド工法によりトンネルを
施工する場合、一次覆工にはセグメントを使用すること
が一般的である。近年、セグメントを用いることに代え
て、図３に示すように、シールド掘削機１の後方におい
て型枠２を組み立て、その型枠２と地山Ｇとの間に直接
的に自硬性硬化材としてコンクリート５を打設充填する
ことによって覆工壁を形成する、いわゆるＥＣＬ工法
（Extruded Concrete Lining Method）の開発も進めら
れている。ＥＣＬ工法では、打設されたコンクリート５
が硬化して覆工壁が形成された後は地山圧力（土圧およ
び地下水圧）に対して十分に耐え得ることは当然である
が、打設した直後の未硬化の状態においてもコンクリー
ト５によって地山圧力に対して抗し得るものでなければ
ならない。特に地下水圧が高い地山に対してＥＣＬ工法
を適用する場合には未硬化のコンクリート５による十分
な止水性を確保するための方策が不可欠である。このた
め、コンクリート５の打設圧力を地山圧力より常に高く
維持することによって未硬化のコンクリート５によって
も止水性を確保する技術も開発されている。

【０００３】図３に示したものは、このようなＥＣＬ工
法に用いるシールド掘削機の一例である。このシールド
掘削機１は、スキンプレート３の後端部内周面に押圧ジ
ャッキ４を備えている。この押圧ジャッキ４は、妻型枠
４ａがスキンプレート３の内周面と型枠２の外周面との
間に位置しており、押圧ジャッキ４を伸ばして妻型枠４
ａを掘進方向後方に押し付けることによって、未硬化の
コンクリート５を押圧し、コンクリート５が硬化するま
での間、その圧力を地山Ｇの圧力よりも高く維持するも
のである。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述し
たような従来のシールド掘削機には、以下のような問題
が存在する。すなわち、上記シールド掘削機１では、図
４（ａ）に示すように、シールド掘削機１でトンネルの
曲線部を施工するときには、後方に組み立てた型枠２の
中心軸線とシールド掘削機１の軸線とがずれ、これによ
ってスキンプレート３の内周面と型枠２の外周面とが平
行ではなくなる。すると、図４（ｂ）に示したように型
枠２の前端部に向けてスキンプレート３と型枠２との間
隔が漸次小さくなる部分では、押圧ジャッキ４の妻型枠
４ａが自由に動かなくなる。すると、コンクリート５に
十分な圧力を伝えられず、コンクリート５の充填性を保
証できなくなる不具合と、コンクリート５ではなく切羽
の泥水が回り込んできてシールド掘削機１の内部に吹き
出す等の不具合が生じた。本発明は、以上のような点を
考慮してなされたもので、曲線部においても、組み立て
た型枠の外周側に自硬性充填材を確実に充填してトンネ
ルを構築することのできるシールド掘削機を提供するこ
とを課題とする。

【０００５】

【課題を解決するための手段】請求項１に係る発明は、
シールド掘削機の前部に備えたカッタで形成した坑の周
壁と、該周壁の内周側に間隔を隔てて組まれた型枠との
間に充填された自硬性充填材を押圧するための押圧ジャ
ッキが、前記シールド掘削機の外殻を成すスキンプレー
トの後端部に備えられるとともに、前記スキンプレート
の後端部の内周面側には、定められた間隔を隔てて内筒
が設けられ、前記スキンプレートと前記内筒との間が、
前記押圧ジャッキのピストンを前後方向に進退させるた
めの空間とされ、該内筒には、前記シールド掘削機の掘
進方向が変化するときに、これに伴う前記内筒と前記型
枠外周面との隙間寸法の変化に追随して前記隙間を塞ぐ
止水部材が装着されていることを特徴としている。さら
に、請求項２に係る発明は、請求項１記載のシールド掘
削機であって、前記止水部材が、可撓性を有したブラシ
状であることを特徴としている。

【０００６】これにより、トンネルの曲線部を施工する
に際して、シールド掘削機のスキンプレートの軸線に対
して、既に後方に組み立てた型枠の軸線がずれた場合に
も、押圧ジャッキのピストンは、内筒とスキンプレート
との間の空間内を進退するので、何ら影響を受けること
がない。そして、内筒と型枠の隙間は、例えば可撓性を
有したブラシ状の止水部材等によって、確実にシールさ
れるようになっている。

【０００７】

【発明の実施の形態】以下、本発明に係るシールド掘削
機の実施の形態の一例を、図１および図２を参照して説
明する。

【０００８】図１において、符号１０は、地山Ｇにおい
てトンネルＴを掘削するシールド掘削機、１１はシール
ド掘削機１０の外殻を成す例えば円筒状のスキンプレー
トを、１２はスキンプレート１１の先端部に設けられて
地山Ｇを掘削するためのカッタを、１３はシールド掘削
機１０によって掘削された坑の周壁Ｔｗの内方に所定間
隔を隔てて組み立てられた型枠を、１４は型枠１３と坑
の周壁Ｔｗとの間に打設充填されるコンクリートやモル
タル等の自硬性充填材を、それぞれ示している。さら
に、符号１５は、推進ジャッキであり、型枠１３から反
力を取って、シールド掘削機１０を前進させる役割を果
たすものである。

【０００９】図２（ａ）および（ｂ）に示すように、シ
ールド掘削機１０のスキンプレート１１には、そのテー
ル部の内側に所定間隔を隔てて円筒状の内筒１６が設け
られている。この内筒１６は、型枠１３の外周面よりも
所定寸法大径に設定されており、これにより内筒１６の
内周面と型枠１３の外周面との間には所定寸法の隙間が
形成されるようになっている。

【００１０】そして、内筒１６とスキンプレート１１と
の間の環状の空間１７には、その全周にわたるリング状
の板材からなる妻型枠（ピストン）１８が、シールド掘
削機１０の軸線方向に前後動自在に収められている。こ
の妻型枠１８は、空間１７の前方においてスキンプレー
ト１１に固定された押圧ジャッキ１９によって、空間１
７内で前後方向に進退駆動されるようになっている。こ
こで、押圧ジャッキ１９のロッド１９ａは、内筒１６の
前端部とスキンプレートとの間を塞ぐプレート２０を貫
通して空間１７内に至っている。

【００１１】妻型枠１８の外周部には、スキンプレート
１１側と内筒１６に接触する部分に図示しないシール部
材が配設されている。また、妻型枠１８の先端面すなわ
ち自硬性充填材１４を直接的に押圧する面には、自硬性
充填材１４の圧力を検出するため、例えば歪み計型の土
圧計等の圧力センサ（図示なし）が取り付けられてお
り、この圧力センサは、押圧ジャッキ１９の駆動を制御
する制御手段（図示なし）に接続され、妻型枠１８によ
って押圧される自硬性充填材１４の圧力を刻々と検出し
て制御手段（図示なし）に入力するようになっている。

【００１２】そして、内筒１６の内周面、つまり空間１
７とは反対側のシールド掘削機１０の中心部側に臨む面
には、前後方向所定長にわたった部分に、止水用テール
ブラシ（止水部材）２１が備えられている。この止水用
テールブラシ２１は、いわゆるブラシ状であり、可撓性
を有した多数本の毛が、前記前後方向所定長の範囲に、
複数列にわたって配置されている。

【００１３】図２（ａ）に示したように、止水用テール
ブラシ２１は、シールド掘削機１０が直進状態であると
きに、その先端部が、内筒１６の内方で組み立てられる
型枠１３の外周面に押し付けられてある程度撓んだ状態
となるような長さを少なくとも有しており、これによっ
て、内筒１６と型枠１３との間の止水性を確保してい
る。そして、図２（ｃ）に示すように、シールド掘削機
１０が構築すべきトンネルＴの曲線部にさしかかる状態
では、後方に組み立てた型枠１３の中心軸線とシールド
掘削機１０の軸線とがずれ、これによって内筒１６の内
周面と型枠１３の外周面とが平行ではなくなるが、この
状態においても止水用テールブラシ２１の少なくとも一
部が型枠１３の外周面に押し付けられるよう、止水用テ
ールブラシ２１の長さが設定されている。

【００１４】さらに、止水用テールブラシ２１のブラシ
間にはグリース等を充填し、その止水性を高めている。

【００１５】このようなシールド掘削機１０でトンネル
Ｔを掘削するには、前部のカッタ１２で地山Ｇを掘削し
て坑を形成しつつ、スキンプレート１１の後方において
型枠１３を所定形状に組み上げ、組み上げた型枠１３に
反力を得て推進ジャッキ１５でシールド掘削機１０を推
進させていく。そして、組み上げた型枠１３と、その外
周側の坑の周壁Ｔｗと、所定の位置に位置させた妻型枠
１８との間の空間には、型枠１３等に形成した図示しな
い充填口から自硬性充填材１４を充填する。そして、自
硬性充填材１４が充填された後には、押圧ジャッキ１９
を駆動させて、自硬性充填材１４の圧力が周囲地山の圧
力よりも常に高くなるように、打設した自硬性充填材１
４を妻型枠１８で加圧しておく。これにより周囲地山か
ら地下水が浸入してくることが防止される。

【００１６】このとき、押圧ジャッキ１９の作動は、妻
型枠１８に設けられた圧力センサ（図示なし）で検出さ
れる自硬性充填材１４の圧力に基づき、制御手段（図示
なし）で制御され、これによって自硬性充填材１４の圧
力が、周囲地山の圧力を上回る所定範囲内の値に自動的
に保持されるようになっている。

【００１７】そして、このようにして打設した自硬性充
填材１４の圧力を押圧ジャッキ１９で保持しながら、推
進ジャッキ１５でシールド掘削機１を前方に掘進させ、
新たな型枠１３の組立を行う。続いて、押圧ジャッキ１
９を縮めて妻型枠１８を前方に移動させながら、自硬性
充填材１４の充填−妻型枠１８による自硬性充填材１４
の押圧を行い、しかる後には、上記を順次繰り返し、ト
ンネルＴを構築していく。

【００１８】また、シールド掘削機１０が構築すべきト
ンネルＴの曲線部にさしかかると、後方に組み立てた型
枠１３の中心軸線とシールド掘削機１０の軸線とがず
れ、これによって内筒１６の内周面と型枠１３の外周面
とが平行ではなくなるが、止水用テールブラシ２１によ
って、内筒１６と型枠１３との隙間における止水性が確
保され、自硬性充填材１４がスキンプレート１１内に吹
き出すのを防止できるようになっている。

【００１９】上述したシールド掘削機１０では、スキン
プレート１１の内部に内筒１６を設け、さらに内筒１６
の内周面側には止水用テールブラシ２１を設ける構成と
なっている。これにより、妻型枠１８は、内筒１６とス
キンプレート１１との間の空間１７のみでスライドする
ことになり、シールド掘削機１０がトンネルＴの曲線部
にさしかかっても、従来のようにスキンプレート１１と
型枠１３との傾きによって、妻型枠１８の作動が影響を
受けることもない。したがって、押圧ジャッキ１９によ
る妻型枠１８の作動を確実に行うことが可能となる。し
かも、止水用テールブラシ２１によって、内筒１６と型
枠１３との隙間における止水性がトンネルＴの曲線部に
おいても確保され、自硬性充填材１４がスキンプレート
１１内に吹き出すのを防止できるようになっている。し
たがって、妻型枠１８によって自硬性充填材１４に充分
な圧力を加えることができ、施工を確実に行うことがで
きる。このように、上記シールド掘削機１０によって、
曲線部を有したトンネルＴにおいてもＥＣＬ工法を確実
に適用して施工を行うことが可能となる。

【００２０】なお、上記実施の形態において、シールド
掘削機１０の構造について述べたが、その構造について
は何ら限定するものではなく、適宜他の構造のシールド
掘削機を用いることが可能である。

【００２１】また、上記実施の形態では、妻型枠１８を
自硬性充填材１４の加圧手段として用いる構成とした
が、妻型枠を別途設けるとともに、上記妻型枠１８に代
えて空間１７内でスライドするピストンを設け、このピ
ストンを押圧ジャッキ１９でスライドさせることによっ
て自硬性充填材１４を加圧するような構成とすることも
可能であり、このような構成においても本発明を適用す
ることが可能である。また、このような構成とする場合
には、上記のように空間１７をスキンプレート１１の全
周にわたって設けるのではなく、スキンプレート１１内
の周方向の一部のみに空間１７を設け、他の部分に自硬
性充填材を注入するための注入管を設けるような構成と
することも可能である。

【００２２】さらに、上記実施の形態では、止水部材と
して、止水用テールブラシ２１を用いる構成としたが、
同様の止水機能を有するのであれば、例えばゴム製のも
の等、適宜他のものを適用することも可能である。

【００２３】加えて、上記実施の形態では、断面視円形
のトンネルを構築する場合を例に挙げたが、構築するト
ンネル自体の構成については限定する意図はなく、断面
視矩形のものをはじめとした他の形状のトンネル等にも
本発明の技術を適用することができる。

【００２４】これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない
範囲内であれば、いかなる構成を採用しても良く、また
上記したような構成を適宜選択的に組み合わせたものと
しても良いのは言うまでもない。

【００２５】

【発明の効果】以上説明したように、請求項１，２に係
るシールド掘削機によれば、スキンプレートの後端部の
内周面側に内筒を設け、スキンプレートと内筒との間を
押圧ジャッキのピストンを前後方向に進退させる空間と
し、内筒には、シールド掘削機の掘進方向が変化すると
きに、これに伴う内筒と型枠外周面との隙間寸法の変化
に追随し、この隙間を塞ぐ、例えば可撓性を有したブラ
シ状等の止水部材が装着された構成となっている。これ
により、ピストンは、内筒によって隔てられた空間のみ
でスライドすることになり、シールド掘削機がトンネル
の曲線部にさしかかっても、従来のようにスキンプレー
トと型枠との傾きによって、その作動が影響を受けるこ
ともない。したがって、押圧ジャッキによるピストンの
作動を確実に行うことが可能となる。しかも、止水部材
によって、内筒と型枠との隙間における止水性がトンネ
ルの曲線部においても確保され、自硬性充填材がスキン
プレート内に吹き出すのを防止できるようになってい
る。したがって、自硬性充填材に充分な圧力を加えるこ
とが可能となり、施工を確実に行うことができる。この
ように、上記シールド掘削機によって、曲線部を有した
トンネルにおいてもＥＣＬ工法を確実に適用して施工を
行うことが可能となる。

【図面の簡単な説明】

【図１】 本発明に係るシールド掘削機の一例を示す側
断面図である。

【図２】 前記シールド掘削機の要部を示す拡大断面図
である。

【図３】 従来のシールド掘削機の一例を示す側断面図
である。

【図４】 同シールド掘削機における型枠との位置関係
を示す図である。

【符号の説明】

１０ シールド掘削機 １１ スキンプレート １２ カッタ １３ 型枠 １４ 自硬性充填材 １６ 内筒 １７ 空間 １８ 妻型枠（ピストン） １９ 押圧ジャッキ ２１ 止水用テールブラシ（止水部材） Ｔｗ 周壁

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 シールド掘削機の前部に備えたカッタで
   形成した坑の周壁と、該周壁の内周側に間隔を隔てて組
   まれた型枠との間に充填された自硬性充填材を押圧する
   ための押圧ジャッキが、前記シールド掘削機の外殻を成
   すスキンプレートの後端部に備えられるとともに、 前記スキンプレートの後端部の内周面側には、定められ
   た間隔を隔てて内筒が設けられ、前記スキンプレートと
   前記内筒との間が、前記押圧ジャッキのピストンを前後
   方向に進退させるための空間とされ、 該内筒には、前記シールド掘削機の掘進方向が変化する
   ときに、これに伴う前記内筒と前記型枠外周面との隙間
   寸法の変化に追随して前記隙間を塞ぐ止水部材が装着さ
   れていることを特徴とするシールド掘削機。
2. 【請求項２】 請求項１記載のシールド掘削機であっ
   て、前記止水部材が、可撓性を有したブラシ状であるこ
   とを特徴とするシールド掘削機。