JP3769155B2 - カチオン染料可染性ビスコースレーヨン - Google Patents

カチオン染料可染性ビスコースレーヨン Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はカチオン染料に対し染色性がよく耐光堅牢度のにすぐれたビスコースレーヨンに関する。
【0002】
【従来の技術】
ビスコースレーヨンは直接染料や反応性染料には優れた染色性を示すが、カチオン染料にはほとんど染色性を示さない。そのためウール、アクリルとの混紡品ではそれぞれの繊維を染色する二浴染めが必要になり、工程の煩雑さとコスト高を余儀なくされている。
【0003】
この問題を解決するためビスコースレーヨンに酸性基を導入する方法が試みられているが、酸性基の導入により染色性は向上するが耐光堅牢度これには伴わず実用化には至らなかった。さらにこの両方の課題をテーマに次の従来技術がある。
繊維学会誌Vol.34,No.1,1978,第71〜77ページには、ビスコースレーヨンにメタ過ヨウ素酸ナトリウムを作用させてジアルデヒドセルロースとしたのち亜硫酸水素ナトリウムを付加させることによりスルホン基を導入し、さらに残存水素基を各種のイソシアネートによりウレタン化して疎水基を導入することが記されている。
また、特公昭57−19207号公報には、芳香族カルボン酸または芳香族スルホン酸を用いてセルロース繊維の表面だけに芳香族アシル基または芳香族スルホン基を導入し次いで硫酸エステル基またはスルホン基をもった陰イオン表面活性剤の存在下でカチオン可染化する方法が開示されている。
また、特開昭61−146810号公報には、ビスコースにポリスチレンスルホン酸塩、又はポリスチレンカルボン酸塩を添加しビスコースレーヨンをカチオン可染性にする方法が開示されている。
さらに、特開平8−158263号公報にジヒドロキシジフェニルスルホン・スルホン酸縮合物を水酸化ナトリウムでジヒドロキシジフェニルスルホン・スルホン酸塩結合としたのち、2個以上のエポキシ基を有する架橋剤を加え、数時間反応させて得られるジヒドロキシジフェニルスルホン・スルホン酸縮合物の架橋した重合物をビスコースに混合し、直ちに紡糸する方法が提案されている。
しかしこれらの方法は操作が煩雑で実用化には問題が残る。またセルロース繊維本来の風合いや濃色時の耐光堅牢度等十分ではない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はビスコースレーヨンの特長である風合いのよさや吸水性を損なわず、実用に供し得る強度をもつ製造工程の簡素なカチオン可染性ビスコースレーヨンである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、酸性基を含む化合物と紫外線吸収剤とを含み、前記酸性基を含む化合物が4−ヒドロキシフェニルスルホンのホルマリン縮合物である、カチオン染料可染性ビスコースレーヨンである。
【0006】
本発明の好ましい態様は、酸性基を含む化合物はスルホン基、カルボキシル基の少なくとも一つを含む一または二以上の化合物である上記カチオン染料可染性ビスコースレーヨンである。
【0007】
また上記紫外線吸収剤は、ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール、酸化亜鉛、二酸化チタンから選ばれる一または二以上の化合物であることが好ましい。
【0008】
さらに本発明のより好ましい態様は、酸性基を含む化合物はビスコース中のセルロース100重量部に対し2.0〜15.0重量部含まれるビスコースレーヨンである。
【0009】
【発明の実施の態様】
本発明に使用するビスコースは通常のビスコースレーヨンを製造する慣用のものである。
上記酸性基を含む化合物は、スルホン基、カルボキシル基を単独あるいは同時に含む化合物、あるいはこれらの混合物である。このような化合物としては例えばスルホン基を含む化合物として、4−ヒドロキシフェニルスルホンのホルマリン縮合物、ポリスチレンベンゼンスルホン酸塩、ジヒドロキシジフェニルスルホン・スルホン酸塩縮合物などがある。
化合物のビスコースへの添加量は、化合物のもつ酸性基の量により効果が現れる。例えばスルホン基を含む上記の4−ヒドロキシフェニルスルホンのホルマリン縮合物中にはその全体の重量に対してスルホン基が20重量%存在するが、セルロース100に対しこの縮合物を2.5%添加するとスルホン基としてはセルロース100に対し0.5%の添加になる。好ましい添加量はセルロース100に対して重量比でスルホン基に換算して0.5〜2.0%である。0.5%より少なくては実用上のカチオン染料による染色性はなく、また2.0%より多く加えてもそれ以上の染色性向上効果は見られない。
【0010】
また本発明に用いる紫外線吸収剤とは上記のものであるがビスコースへの添加量は、セルロース100に対して重量比で1〜15、好ましくは3〜10である。添加量が1より少なくては耐光堅牢度の向上がほとんど見られずまた15より多くてもそれ以上の効果は上がらない。またこれら紫外線吸収剤は通常ビスコースレーヨンのつや消し剤として用いる酸化チタン等と併用することもできる。
【0011】
【実施例】
(実施例1) セルロース含有量8.5重量%、水酸化ナトリウム5.7重量%及びセルロースの重量に対し二硫化炭素32重量%の組成で落球粘度56秒、塩化アンモニウム価17ccのビスコースを用意した。
このビスコースに酸性基を含む化合物として4−ヒドロキシジフェニルスルホンのホルマリン縮合物水溶液「ナイロックス700」(商品名、一方社油脂工業株式会社製)をビスコース中のビスコース1000gに対して3.4gを添加した。これはスルホン基としては0.68gにあたり、セルロース100に対する添加量は0.8%になる。また紫外線吸収剤としてベンゾトリアゾール水分散液「ユニガードE−200N」(商品名、第一工業製薬株式会社製)をビスコース1000gに対し6.0gを添加した。そしてこれらが均一になるように撹拌混合した後、このビスコースを硫酸100g/l、硫酸亜鉛15g/l、硫酸ナトリウム300g/l、温度50℃の紡糸浴中に紡糸速度50m/分、延伸率50%で紡糸してビスコースレーヨンのトウを得た。これを繊維長51mmに切断し、通常のとおり精、乾燥して繊度2.2デシテックスのビスコースレーヨンを得た。
【0012】
(実施例2) ベンゾトリアゾール水分散液にかえて二酸化チタン(アナターゼ型/ルチル型=50/50)水分散液をビスコース1000gに対して4.3gを添加する以外は実施例1と同様にして繊度2.2デシテックスのビスコースレーヨンを得た。
【0013】
(比較例1) ベンゾトリアゾール水分散液を添加しないこと以外は実施例1と同様にして繊度2.2デシテックスのビスコースレーヨンを得た。
【0014】
(比較例2) 4−ヒドロキシジフェニルスルホン酸のホルマリン縮合物の水溶液及びベンゾトリアゾール水分散液を添加しないこと以外は実施例1と同様にして繊度2.2デシテックスのビスコースレーヨンを得た。
【0015】
(染 色) 上記各実施例、比較例のビスコースレーヨンをカチオン染料で紺色及び灰色に染色した。
染料 各々以下の染料の混合液を調合して使用した。
Figure 0003769155
【0016】
染色方法 各繊維を酢酸ナトリウム0.5g/l、酢酸4.0g/lの上記紺色及び灰色の染色液で、浴比1:40で45分間浸漬したのち水洗、乾燥した。
【0017】
(繊維性能)
上記各実施例、比較例のビスコースレーヨンの繊維性状を測定した。測定は次ぎの方法による。
引っ張り強さ、伸び率
JIS L−1015化学繊維ステープル試験方法による。
測定項目 乾強度、湿強度、乾伸度、湿伸度
耐光堅牢度
JIS L−0842カーボンアーク灯に対する染色堅牢度試験法(63℃で20時間照射)による。
汗堅牢度
JIS L−0848汗に対する染色堅牢度試験法による。
摩擦堅牢度
JIS L−0849摩擦に対する染色堅牢度試験法による。
【0018】
その結果を表1に示す。
【0019】
【表−1】
Figure 0003769155
【0020】
【発明の効果】
上記の測定結果に示すとおり、本発明のビスコースレーヨンはカチオン系染料により染色し、高い耐光堅牢度をもっている。さらに繊維として必要な強度、伸度を失わず十分に実用に耐えるものである。したがって同じくカチオン可染性の繊維であるウールやアクリル繊維との混紡、交織品も一浴染めが可能である。

Claims (3)

  1. 酸性基を含む化合物と紫外線吸収剤とを含み、前記酸性基を含む化合物が4−ヒドロキシフェニルスルホンのホルマリン縮合物である、カチオン染料可染性ビスコースレーヨン。
  2. 前記紫外線吸収剤が、ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール、酸化亜鉛、二酸化チタンから選ばれる1または2以上の化合物である請求項1記載のカチオン染料可染性ビスコースレーヨン。
  3. 酸性基を含む化合物はビスコース中のセルロース100重量部に対し2.0〜15.0重量部を含む請求項1または2に記載のカチオン染料可染性ビスコースレーヨン。
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