JP3768856B2 - ブレーキペダルの取り付け構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本願発明は、車両が前方衝突を行なうなどして車両にその前方から大きな負荷が入力したときのブレーキペダルの後退移動量や上昇量を少なくすることが可能なブレーキペダルの取り付け構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種のブレーキペダルの取り付け構造の一例としては、特開平9−254821号公報に所載の構造がある。本願の図5に示すように、この構造においては、ブレーキペダル90を吊り下げ支持するペダルブラケット91の前部がダッシュパネル80に取り付けられている。ブレーキペダル90には、ダッシュパネル80に取り付けられたブレーキブースタ6のプッシュロッド60が連結されている。ピラー・ツー・ピラー・メンバ81には、後ろ下がり状のガイド面92aを有するガイドブラケット92が取り付けられている。ピラー・ツー・ピラー・メンバ81は、自動車の左右一対のフロントピラーどうしを繋ぐ部材であり、「PPメンバ」と略称され、また「インパネリインフォース」と称される場合もある。ペダルブラケット91の後部とガイドブラケット92の前部とは、たとえばボルト82を利用して連結されているが、この連結は、車両前方から一定値以上の負荷を受けたときに解除されるようになっている。
【0003】
上記構造においては、自動車ボディのフロント部分にその前方から大きな負荷F1が入力し、ダッシュパネル80が車両後方に変形すると、これに伴ってペダルブラケット91とガイドブラケット92との連結が解除され、ペダルブラケット91が車両後方に移動する。この移動時には、ペダルブラケット91がガイド面92aに沿って下降する。すると、ブレーキペダル90の上部も下降することとなって、このブレーキペダル90の下部の車両後方上方への移動量を少なくすることが可能となる。その結果、ブレーキペダル90の下部が運転者の足に大きな衝撃力を与えないようにすることができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の手段においては、上述した一連の動作中においてもブレーキペダル90にはプッシュロッド60が連結されたままであり、ブレーキペダル90がプッシュロッド60による拘束を受け続けている。このため、ブレーキペダル90をペダルブラケット91に伴わせて下降させようとしても、プッシュロッド60がその妨げとなって、ブレーキペダル90を充分に下降させることができない場合があった。ブレーキブースタのなかには、プッシュロッドが上下方向に殆ど変位しないように構成されたものがあり、このような構成のブレーキブースタを用いた場合には、上記した不具合が一層顕著になっていた。
【0005】
本願発明は、このような事情のもとで考え出されたものであって、車両の前方衝突などに起因して車両のフロント部にその前方から大きな負荷入力が生じた場合に、ブレーキペダルが車両後方上方に大きく移動することを従来よりも確実に抑制することができるブレーキペダルの取り付け構造を提供することをその課題としている。
【0006】
【発明の開示】
上記の課題を解決するため、本願発明では、次の技術的手段を講じている。
【0007】
本願発明によって提供されるブレーキペダルの取り付け構造は、ブレーキペダルを支持するペダルブラケットと、上記ブレーキペダルに支持され、かつブレーキブースタのプッシュロッドを上記ブレーキペダルに連結する軸体と、を有しており、車両前方から所定値以上の負荷入力があったときに、上記ペダルブラケットが車両後方下方に変位可能に構成されている、ブレーキペダルの取り付け構造であって、上記ペダルブラケットが上記ブレーキブースタに相対して下降するときに、上記軸体が上記ブレーキペダルから上方に離脱するように構成されており、上記ペダルブラケットは、ダッシュパネルに取り付けられているとともに、上記ペダルブラケットの一部は、ピラー・ツー・ピラー・メンバに取り付けられたガイドブラケットに連結されており、かつ、上記ペダルブラケットは、車両前方から所定値以上の負荷入力があったときには、上記ガイドブラケットとの連結が解除されてから上記ガイドブラケットによってガイドされることにより車両後方下方への変位を行なうように構成されており、上記ペダルブラケットが上記ブレーキブースタに相対して下降するときには、上記ペダルブラケットの下方変位に伴う上記ブレーキペダルの下降により、上記軸体が上記ブレーキペダルから上方に離脱することを特徴としている。
【0008】
本願発明においては、車両前方から所定値以上の負荷入力があることに起因してペダルブラケットが車両後方下方への変位を開始すると、軸体がブレーキペダルから離脱し、ブレーキブースタのプッシュロッドとブレーキペダルとの連結が解除される。このため、従来とは異なり、ブレーキブースタのプッシュロッドによってブレーキペダルが拘束されないようにし、ブレーキペダルの下降動作を確実化し、このブレーキペダルが車両後方上方に大きく移動しないようにすることができる。したがって、ブレーキペダルが運転者の足に大きな衝撃を与えないようにするのに好適となる。また、上記軸体がブレーキペダルから離脱する方向は上方であるから、通常時においては、上記軸体に上向きの力を生じないようにしておくことにより、上記軸体がブレーキペダルから容易に離脱しないようにすることもできる。
【0010】
また、このような構成によれば、通常時においては、ペダルブラケットをガイドブラケットを利用して確実に固定させておくことができる一方、車両前方から所定値以上の負荷入力があったときには、ガイドブラケットを利用することによって、ペダルブラケットおよびブレーキペダルの下降動作を積極的に行なわせることができる。したがって、ブレーキペダルの車両後方上方への移動量を小さくするのにより好ましいものとなる。
【0011】
本願発明のその他の特徴および利点については、以下に行う発明の実施の形態の説明から、より明らかになるであろう。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本願発明の好ましい実施の形態について、図面を参照しつつ具体的に説明する。
【0013】
図1は、本願発明に係るブレーキペダルの取り付け構造の一例を示している。なお、図1以降の図において、矢印Frは車両前方を示し、矢印Upは車両高さ方向の上方を示している。
【0014】
本実施形態のブレーキペダルの取り付け構造は、ブレーキペダル1、ペダルブラケット2、ガイドブラケット3、およびブレーキペダル1に保持された軸体4を具備して構成されている。ブレーキペダル1は、既存のブレーキペダル1と同様なものであり、ペダルアーム10の下端部に踏部11が設けられたものである。ただし、ペダルアーム10の側面には、軸体4を支持するための後述する補助板12が設けられている。
【0015】
ペダルブラケット2は、たとえば板金製であり、その前部はボルト(図示略)によってダッシュパネル50に取り付けられている。このペダルブラケット2は、ダッシュパネル50への取り付け部分から車両後方に延びた形態を有しており、このペダルブラケット2に保持された軸20によりブレーキペダル1が車両前後方向へ揺動可能に吊り下げ支持されている。
【0016】
ガイドブラケット3は、ピラー・ツー・ピラー・メンバ51に溶接されるなどして取り付けられており、ペダルブラケット2よりも車両後方に配されている。このガイドブラケット3の前部は、ボルト・ナット30a,30bを介してペダルブラケット2の後部と連結されている。ただし、この連結は、車両前方から所定値以上の大きな荷重がこの連結部分に作用したときに解除されるように構成されている。このための手段としては、たとえば本願の従来技術として挙げた特開平9−254821号公報に記載されている手段のように、ペダルブラケット2に設けられるボルト挿通用の穴を車両前方寄り部分が開口した形状に形成しておき、ボルト・ナット30a,30bに一定値以上の水平方向の力が作用したときには、ボルト30aが上記ボルト挿通用の穴から車両前方寄りに外れるようにする手段を用いることができる。もちろん、それ以外の手段、たとえばボルト30aに一定値以上の剪断力が作用したときにこのボルト30aを破断させるといった手段を用いることもできる。
【0017】
ガイドブラケット3は、このガイドブラケット3とペダルブラケット2との連結が解除された後にペダルブラケット2の移動をガイドするためのガイド面31を有している。このガイド面31はペダルブラケット2の後端部に接触する部分から車両後方下方に向けて滑らかに延びた下向きの傾斜面として形成されている。ガイドブラケット3は、たとえばペダルブラケット2と同様な板金製であるが、ペダルブラケット2が後退するときにガイド面31が容易に変形してそのガイド機能が損なわれるといったことがないように、その全体の機械的な強度はペダルブラケット2よりも高められている。
【0018】
ダッシュパネル50には、ブレーキブースタ6が取り付けられており、そのプッシュロッド60はブレーキペダル1に連結されている。この連結により、ブレーキブースタ6のプッシュロッド60は、ブレーキペダル1の踏部11が踏み込み操作されたときに、その踏み込み量に対応する寸法だけ車両前方に押し込まれるようになっている。プッシュロッド60とブレーキペダル1との連結は、図2によく表われているように、たとえばプッシュロッド60の先端に固定して取り付けられたクレビス61の貫通穴に軸体4を挿通することによりなされている。軸体4は、補助板12に形成された凹部13に嵌入していることにより、補助板12に保持されている。補助板12は、ペダルアーム10とは別体の金属板により形成されたものであり、ペダルアーム10に対してたとえば溶接されている。凹部13は、上向きに開口しており、軸体4が凹部13からその上方に外れることを許容する構成となっている。
【0019】
好ましくは、凹部13の開口部の最小幅Lは、軸体4の直径よりも小さくされており、軸体4が不用意に凹部13の外部に外れないようになっている。凹部13の一部を規定する補助板12の突起状部分14は、軸体4が上方に向けて移動しようとする力が所定値以上になると変形する強度に形成されており、この変形により、凹部13の開口幅が広がって軸体4の凹部13からの離脱が確実になされる構成となっている。軸体4をブレーキペダル1に保持させる手段として、本実施形態のように、ブレーキペダル1とは別体の補助板12を利用すれば、ブレーキペダル1のペダルアーム10自体の構成は従来と同様にすることができるため、その製造が容易となる利点がある。ただし、本願発明はこれに限定されない。本願発明においては、たとえはブレーキペダル1のペダルアーム10に凹部13と同様な凹部を直接形成し、かつこの凹部に軸体4を嵌入させた構成とすることもできる。図面には示されていないが、ペダルアーム10には踏部11に対する踏み込み操作がなされた後にこれらの部分を元の所定位置に復帰させるためのリターン用のバネが接続されている。
【0020】
次に、上記構成のブレーキペダルの取り付け構造の作用について説明する。
【0021】
まず、この構造においては、ブレーキペダル1を支持するペダルブラケット2の前部および後部が、ダッシュパネル50およびガイドブラケット3にそれぞれ取り付けられている。したがって、通常時におけるペダルブラケット2の固定は確実なものとなり、たとえばブレーキペダル1を運転者が操作したときに、ペダルブラケット2の剛性が不足するような感覚を運転者に与えないようにすることができる。凹部13は、その上方が開口しているものの、通常のブレーキ操作時においてブレーキペダル1が揺動するときには、凹部13の周縁の一部分が軸体4を図1および図2の矢印N1に示す略水平方向に押圧するに過ぎない。したがって、通常時において、軸体4が凹部13から不用意に抜け外れることはない。
【0022】
次いで、車両が前方衝突を行い、図3に示すように、車両前方から大きな負荷Fの入力があった場合には、ブレーキブースタ6がダッシュパネル50を変形させながら車両後方に移動する。その際、ペダルブラケット2には、このペダルブラケット2をガイドブラケット3に相対させて車両後方に移動させようとする大きな荷重が作用する。このため、ペダルブラケット2とガイドブラケット3との連結は解除され、ペダルブラケット2は後退することとなる。この後退時には、ペダルブラケット2の後端部がガイドブラケット3のガイド面31によって下降するようにガイドされる。すると、ペダルブラケット2に支持されているブレーキペダル1がブレーキブースタ6のプッシュロッド60に相対して下降しようとする力が発生し、軸体4が補助板12の凹部13からその上方に離脱する。この軸体4の離脱により、プッシュロッド60とブレーキペダル1との連結は解除され、その後ブレーキペダル1はプッシュロッド60による拘束を受けないこととなる。
【0023】
このように、ブレーキペダル1がプッシュロッド60による拘束を受けないようになると、図4の実線で示すように、その後もブレーキブースタ6が車両後方に移動した場合に、ブレーキペダル1の全体をペダルブラケット2の下降に伴わせてそれと略同等量だけ下降させることが可能となる。その結果、ブレーキペダル1が車両後方上方に変位する量を少なくすることができるとともに、そのことが確実化され、踏部11が運転者の足に大きな衝撃を与えないようにすることが可能となる。なお、図4に示す状態においては、ガイドブラケット3も若干量だけ車両後方に変位している。これはガイドブラケット3に車両前方からの押圧力が作用することに起因してピラー・ツー・ピラー・メンバ5の一部が車両後方に変形することに起因する。
【0024】
本願発明に係るブレーキペダルの取り付け構造の各部の具体的な構成は、上述した実施形態に限定されるものではなく、種々に設計変更自在である。
【0025】
本願発明においては、車両前方から所定値以上の負荷入力があったときにペダルブラケットを車両後方下方に変位可能とする手段としては、ピラー・ツー・ピラー・メンバに取り付けられたガイドブラケットを利用する手段とは異なる手段を採用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明に係るブレーキペダルの取り付け構造の一例を示す側面図である。
【図2】図1の要部拡大側面図である。
【図3】図1に示すブレーキペダルの取り付け構造の作用を示す側面図である。
【図4】図1に示すブレーキペダルの取り付け構造の作用を示す側面図である。
【図5】従来技術の一例を示す側面図である。
【符号の説明】
1 ブレーキペダル
2 ペダルブラケット
3 ガイドブラケット
4 軸体
6 ブレーキブースタ
13 凹部
50 ダッシュパネル
51 ピラー・ツー・ピラー・メンバ
60 プッシュロッド
Claims (1)
- ブレーキペダルを支持するペダルブラケットと、
上記ブレーキペダルに支持され、かつブレーキブースタのプッシュロッドを上記ブレーキペダルに連結する軸体と、を有しており、
車両前方から所定値以上の負荷入力があったときに、上記ペダルブラケットが車両後方下方に変位可能に構成されている、ブレーキペダルの取り付け構造であって、
上記ペダルブラケットが上記ブレーキブースタに相対して下降するときに、上記軸体が上記ブレーキペダルから上方に離脱するように構成されており、
上記ペダルブラケットは、ダッシュパネルに取り付けられているとともに、上記ペダルブラケットの一部は、ピラー・ツー・ピラー・メンバに取り付けられたガイドブラケットに連結されており、かつ、
上記ペダルブラケットは、車両前方から所定値以上の負荷入力があったときには、上記ガイドブラケットとの連結が解除されてから上記ガイドブラケットによってガイドされることにより車両後方下方への変位を行なうように構成されており、
上記ペダルブラケットが上記ブレーキブースタに相対して下降するときには、上記ペダルブラケットの下方変位に伴う上記ブレーキペダルの下降により、上記軸体が上記ブレーキペダルから上方に離脱することを特徴とする、ブレーキペダルの取り付け構造。
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