JP3768797B2 - 緑化用植栽基盤の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する利用分野】
本発明は、建築物の屋上、屋根、壁面、或いはダム、河川の堤防、法面、トンネルの入り口、砂防ダム等の箇所に設置されて緑化用として使用される緑化用植栽基盤と、その緑化用植栽基盤の製造方法、並びにその緑化用植栽基盤を用いた緑化工法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、都市緑化等の要請が高まり、それに応じて建築物の屋上、屋根、壁面等に植栽基盤を設置して緑化を行うことが試みられている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来のこの種の植栽基盤は、容器状の基盤本体に土壌を収納して形成されていたため、土壌が崩落するおそれがあり、垂直面や斜面等に設置される建築物の緑化用として必ずしも好適なものではなかった。
【0004】
このため、土壌を袋に収納する等によってこのような土壌の崩落等を防止していたが、基盤本体の他に袋を準備しなければならず、部品点数が増大するとともに、施工も煩雑になるという問題点があった。このため、施工期間も長くなっていた。
【0005】
また、基盤自体の透水性等が、必ずしも良好ではなかった。
【0006】
さらに、土壌を基盤本体に収納して形成したものであるため、基盤の全体の重量も大きくなり、取り扱いが不便となっていた。従って、このことが施工を一層煩雑なものとしていた。
【0007】
本発明は、以上のような点に鑑みてなされたもので、透水性が良好であり、軽量で取り扱いが簡易であり、また部品点数を大幅に削減することができ、しかも垂直面や斜面等に設置される建築物の緑化用として使用しても、土壌の崩落等の従来の問題を生じさせることのない全く新規な緑化用植栽基盤を提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、このような課題を解決するために、緑化用植栽基盤とその製造方法、並びにその緑化用植栽基盤を用いた緑化工法としてなされたもので、緑化用植栽基盤としての特徴は、草炭地の草炭が乾燥されて立体的繊維状物に形成されてなることである。
【0009】
本発明に使用する草炭は、古代の植物遺体が長期に堆積して地中に埋まり、繊維状を保持しつつ化石化したものである。
【0010】
堆積過程で、横方向を主体として存在する植物遺体からなる横方向繊維層と、これに横方向繊維を貫いて存在する植物遺体からなる縦方向繊維が三次元的に絡んでいる構造を有する立体的繊維状物が本発明に用いられる。
三次元的に繊維が絡んでいる構造を有する立体的繊維状物からなる草炭は、水分10重量%以下まで乾燥される。
【0011】
さらに、このような草炭地の草炭を乾燥して得られた本発明の緑化用植栽基盤は、立体的繊維状物であるために、それ自体の透水性が良好であることはもちろん、水分を上下方向のみならず横方向にも流通させるという特性も有する。
【0012】
また、立体的繊維状物であるために植物の根が通過し易いという特性を有する。
【0013】
このため、たとえばこのような緑化用植栽基盤を、複数並列して配置すると、1つの緑化用植栽基盤で生育する植物の根は、隣接する緑化用植栽基盤に侵入することとなり、それによって相互に隣接する緑化用植栽基盤は、それぞれの緑化用植栽基盤で生育する植物の根によって結束される結果となる。
【0014】
また、乾燥して立体的繊維状物に形成される結果、適度な弾力性を有することとなり、踏みつけても圧潰されることがないという特性を有する。
【0015】
草炭の乾燥は、天日乾燥によってなされる。天日乾燥で乾燥されることによって上記のような特性がより良好となる。
【0016】
乾燥期間は、1年半〜2年半とされる。
【0017】
また、他の緑化用植栽基盤としての特徴は、草炭、泥炭、または植物繊維が結合剤で固結されて固形状に形成されてなることである。
【0018】
草炭の繊維と繊維の交点を、天然の澱粉糊、ゼラチン、海藻糊、及び人工合成物のアクリル酸エステル、ポリビニルアルコールとそのエステル、酢酸エステル、ポリメチルセルロース等、水溶性高分子を含む水溶液が結合剤として使用できる。
【0019】
結合剤の使用量は、草炭乾燥重量の5%以下が適当で、5%以上になると草炭の空隙まで詰まり、本発明に適さない。
【0020】
本発明の緑化用植栽基盤には、アルカリ性溶液又は中和液を含浸させることも可能である。植物の育成には、種類にもよるが、ほぼ中性の植栽基盤が適している。
【0021】
酸性のものを中性にするアルカリ性溶液または中和液を用いることによって、仮に緑化用植栽基盤のpHが低くても、中性に近いpHとすることができる。
【0022】
また、本発明の緑化用植栽基盤には、保水剤を含浸させることも可能である。これによって、緑化用植栽基盤の保水性が良好となる。保水剤としてはポリグルタミン酸ソーダ高分子、ポリグリコール系高分子、ポリビニルアルコール系高分子が用いられる。
【0023】
保水剤の量は、乾燥草炭に対し5%以下が好ましい。これ以上になると、保水性が過大となる。
【0024】
さらに、本発明の緑化用植栽基盤には、界面活性剤を含浸させることが可能である。これによって、緑化用植栽基盤の水濡れ性が良好になる。
【0025】
界面活性剤は、アニオン型、両性型、カチオン型のいずれでもよい。付着量は0.3 %以下が望ましい。
【0026】
さらに、本発明の緑化用植栽基盤には、植物の種子を予め含有させて、後の発芽により植栽基盤が完成され、又は幼植物体若しくは一定期間生育した植物体を予め植え付けて施工直後に完成された緑化をすることも可能である。
【0027】
さらに、本発明の緑化用植栽基盤には、植栽用として準備された植物を予め植え付けた土、人工土壌等からなるプラグ体のようなものを打ち込むことも可能である。
【0028】
さらに、本発明の緑化用植栽基盤の製造方法の特徴は、草炭地の草炭を掘り起こしたものを乾燥して立体的繊維状物に形成して製造することである。
【0029】
さらに、本発明の緑化工法の特徴は、上記のような緑化用植栽基盤を多数並列的に屋上や屋根に載置して施工することである。
【0030】
また、他の緑化工法の特徴は、上記のような緑化用植栽基盤又は該緑化用植栽基盤を布帛状物で被覆した物を、多数壁面の前面側に積み上げ、積み上げられた緑化用植栽基盤の前面側に、網状体、布、構造体等の崩落防止手段を設けて施工することである。
【0031】
さらに、他の緑化工法の特徴は、上記のような緑化用植栽基盤又は該緑化用植栽基盤を布帛状物で被覆した物を籠状ケースに収納し、その緑化用植栽基盤が収納された籠状ケースを、壁面又は急勾配法面の前面側に多数積み上げて施工することである。
【0032】
さらに、他の緑化工法の特徴は、上記のような緑化用植栽基盤を、植栽ユニットに収納し、該植栽ユニットを、壁面又は急勾配法面の前面側に設置して施工することである。
【0033】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0034】
一実施形態の緑化用植栽基盤は、草炭地の草炭が乾燥されて立体的繊維状物に形成されてなるものである。
【0035】
本実施形態では、リトアニア共和国の湿地帯であるシルータにおける草炭地(ピートボグ)で得られた草炭を用いた。
【0036】
一実施形態の緑化用植栽基盤の製造方法について説明すると、上記草炭地の草炭を、掘削機(シャッタリング機)で堀り起こして、ブロック状の立体的な草炭を得た。
【0037】
次に、このように堀り起こされた草炭を、約2年間天日乾燥した。
【0038】
具体的には、先ず草炭の一面側を約1年間天日乾燥した後、反転させて他面側を1年間天日乾燥した。
【0039】
これによって、立体的繊維状物に形成された緑化用植栽基盤が得られた。その緑化用植栽基盤の繊維の組織を示す拡大写真を、参考写真1に示す。
【0040】
一例としての緑化用植栽基盤1は、図1に示すように、2面が正方形からなる直方体状のものであり、たとえば150mm ×150mm ×450mm の大きさに形成されている。
【0041】
そして、このような緑化用植栽基盤1を使用する場合には、たとえば、図2に示すように多数の緑化用植栽基盤1,…を縦横に並列状態で設置して使用される。
【0042】
そして、緑化用植栽基盤1に孔を穿設し、その孔の中に、植物の苗ポットの根鉢を収納し、或いは相互に隣接する緑化用植栽基盤1,1間で植物の苗ポットの根鉢を挟持させることによって、緑化のための施工がされることとなる。
【0043】
この場合において、緑化用植栽基盤1は、草炭を天日乾燥することによって立体的繊維状物に形成されているため、植物の根が通過し易く、従って、緑化用植栽基盤1で生育する植物の根は、該緑化用植栽基盤1の上面から上向きに伸長することはもちろんであるが、側面から外側に向かって横方向にも伸長する。
【0044】
この結果、1つの緑化用植栽基盤1の側面から横方向に伸長する植物の根は、隣接する緑化用植栽基盤1に侵入し、それによって相互に隣接する緑化用植栽基盤1,1は、それぞれの緑化用植栽基盤1,1の側面から横方向に伸長する植物の根によって結束されることとなる。
【0045】
従って、縦横に多数並設された緑化用植栽基盤1,…は、その側面から横方向に伸長する植物の根によって隣接する緑化用植栽基盤1と相互に結束されるので、多数並設された緑化用植栽基盤1,…は、全体が一体化されることとなる。
【0046】
上記のような、緑化用植栽基盤1は、たとえば建築物の屋上に設置して使用される。
【0047】
屋上緑化を行う場合には、上記図2に示すように、多数の緑化用植栽基盤1,…を、縦横に並列させて屋上に設置すればよい。
【0048】
この場合、多数の緑化用植栽基盤1,…を、縦横に並列するように、そのまま屋上に載置するだけで施工できるので、屋上緑化のための施工を非常に簡易に行うことができる。
【0049】
また、上記緑化用植栽基盤1は、屋根に設置して使用することも可能である。
【0050】
屋根緑化を行う場合には、図3に示すように、屋根2の斜面上に多数の緑化用植栽基盤1,…を並列して設置すればよい。
【0051】
この場合にも、多数の緑化用植栽基盤1,…を、並列して屋根2に載置するだけで施工できるので、屋根緑化のための施工を非常に簡易に行うことができる。
【0052】
さらに、上記緑化用植栽基盤1は、壁面緑化のために使用することも可能である。
【0053】
壁面緑化を行う場合には、たとえば図4に示すように、壁面3の前面側に多数の緑化用植栽基盤1,…を縦に積み上げ、その積み上げられた多数の緑化用植栽基盤1,…の前面側に、同図のように網状体4を取り付ける。
この場合、緑化用植栽基盤1は、布帛状物で被覆した状態で積み上げてもよい。
【0054】
この網状体4は、たとえばアンカーボルト(図示せず)のようなもので壁面に取り付けられる。
【0055】
このような網状体4が取り付けられることによって、積み上げられる緑化用植栽基盤1が前面側に崩落するのが好適に防止されることとなる。
【0056】
壁面緑化の場合には、緑化用植栽基盤1を縦に積み上げるので、網状体4の取り付けが必要となるが、緑化用植栽基盤1が立体的繊維状物であるため、軽量であり、従って土壌を具備する従来の緑化用植栽基盤に比べると、取り扱いが容易となる。
【0057】
また、緑化用植栽基盤1を壁面に1個ずつ直接取り付ける必要がなく、軽量の緑化用植栽基盤1を積み上げて網状体4で固定するだけで施工できるので、壁面緑化の施工が従来に比べると著しく容易となる。
【0058】
尚、このような網状体4に代えて布のようなものを用いることも可能である。
【0059】
また、このような網状体4で固定することに代わる手段として、籠状のケースに緑化用植栽基盤1を収納したものを積み上げることによっても、複数の緑化用植栽基盤1を壁面に設置することが可能である。この場合、緑化用植栽基盤1は、耐候性のある合成繊維製又は天然繊維製からなる織物又は不織布等の布帛状物で包み込んだブロックとし、このブロックを籠状のケースに収納してもよい。
【0060】
さらに、このような籠状のケースを用いる代わりに、緑化用植栽基盤1を植栽ユニットに収納し、その植栽ユニットを壁面に設置することも可能である。この場合も、緑化用植栽基盤1を布帛状物で被覆することが可能である。
【0061】
さらに、このような垂直な壁面に限らず、たとえば急勾配の法面のような箇所にも同様にして施工することが可能である。
【0062】
さらに、上記のような緑化用植栽基盤1は、トンネルの入口部の緑化に使用することも可能である。
【0063】
より具体的には、たとえば図5に示すように、トンネルの壁面5の両側に、ガイドレール6を取り付け、そのガイドレール6に沿うように緑化用植栽基盤1を縦に積み上げることで、トンネルの壁面5への設置が可能となる。
【0064】
この場合、緑化用植栽基盤1は、そのまま積載することも可能ではあるが、崩落を確実に防止するためには、カセットケース(図示せず)のようなものに収納して積み上げることが望ましい。この場合も、緑化用植栽基盤1を布帛状物で被覆することできる。
【0065】
また、このようなカセットケースに収納することで、ガイドレール6に沿わせて設置する作業も容易に行うことができる。
【0066】
いずれにしても、軽量の緑化用植栽基盤1をガイドレール6に沿わせて積み上げるだけで施工できるので、従来のトンネル壁面の緑化作業に比べると施工の作業が著しく容易となり、施工期間を大幅に短縮することができる。
【0067】
トンネル入口部における工事は、電車の通行を中断させることができない事情等から、一般に短期の施工が要請されるが、上記のような緑化用植栽基盤1を用いたトンネル入口部における緑化工事は、この要請に合致するものである。
【0068】
さらに、上記のような緑化用植栽基盤1又は若しくは布帛状物で被覆した緑化用植栽基盤1は、法面や河川敷のフリーフレーム工法に使用することもできる。
【0069】
このフリーフレーム工法とは、コンクリート製の枠体を法面や河川敷に配設して施工する工法で、一般には、そのコンクリート製の枠体のマス目の空間部内に人工土壌を収容し、厚層基材を吹いて緑化を行う方法、上記空間部内に土を入れた土嚢袋を収容して緑化を行う方法、さらに上記空間部内にプランターを収容して緑化を行う方法等が採用されている。
【0070】
本実施形態では、図6に示すように、コンクリート製の枠体7のマス目の空間部内に、上記緑化用植栽基盤1を収納する。
【0071】
この場合、上記従来の人工土壌、土嚢袋、プランター等とは異なり、土壌を使用していないので非常に軽量であり、取り扱いが非常に容易となり、施工も簡単に行える。
【0072】
尚、緑化用植栽基盤1の施工箇所は、上記のような建築物の屋上、屋根、壁面、トンネルの入り口部、法面等のフリーフレーム工法のコンクリート製枠体の他、ダムや河川の堤防、高架の柱、道路の中央分離帯、農業用水の貯水池等、種々の箇所に施工することができる。
【0073】
また、上記実施形態では、リトアニア共和国の湿地帯であるシルータにおける草炭地で得られた草炭を原料としたが、これ以外の産地、たとえばフィンランド、カナダ、日本等で採取された草炭を原料とすることも可能である。
【0074】
たとえば、カナダで採取された草炭(ピートモス)は、参考写真2に示すような繊維の組織を有するものである。
【0075】
ただし、上記リトアニア共和国の湿地帯であるシルータにおける草炭地で得られた草炭は、いわゆる毛足の長いものであり、従って長い繊維からなる立体的繊維状物として得られるため、これを乾燥した緑化用植栽基盤は上記のような種々の特性の優れたものであった。
【0076】
さらに、上記実施形態では、掘削機(シャッタリング機)で堀り起こして、ブロック状の立体的な草炭を得る場合について説明したが、これ以外の手段で立体的な草炭を得ることも可能である。
【0077】
さらに、上記実施形態では、草炭を、約2年間天日乾燥したが、天日乾燥する期間も該実施形態に限定されない。
【0078】
ただし、上記のような優れた特性を有する立体的繊維状物からなる緑化用植栽基盤を得るには、天日乾燥の期間は、1年半〜2年半とすることが必要であり、とりわけ約2年であることが好ましい。
【0079】
尚、天日乾燥で乾燥することによって本発明の緑化用植栽基盤の優れた特性が得られるものではあるが、天日乾燥以外の手段、たとえば機械による乾燥手段を採用することも可能である。
【0080】
さらに、上記実施形態では、緑化用植栽基盤1が、2面が正方形からなる直方体状に形成されていたが、緑化用植栽基盤1の形状はこれに限定されるものではなく、6面の全面が長方形から成る直方体状に形成されていてもよく、また三角柱状や円柱状に形成されたものであってもよい。
【0081】
いずれにしても緑化用植栽基盤1の形状は問うものではない。
【0082】
さらに、上記実施形態では、緑化用植栽基盤を単独で使用したが、アルカリ性溶液又は中和液を含有させることも可能である。
【0083】
すなわち、上記実施形態で得られたリトアニア産の草炭を原料とする緑化用植栽基盤は、pHが約4.0 と低いため、緩衝剤を含有させることによって、中性に近づけることが可能となる。
【0084】
さらに、保水剤を含有させることも可能であり、この場合には、緑化用植栽基盤の保水効果が良好となる利点がある。
【0085】
さらに、並列的に配置される緑化用植栽基盤の間に、たとえば培養土、ピートモス、水ごけ、土壌改良材、土、人工土壌等を介装させることも可能である。
【0086】
さらに、緑化用植栽基盤に、植物の種子を予め含有させて養生させておくことも可能であり、又は幼植物体若しくは一定期間生育した植物体を予め植え付けて養生しておくことも可能である。
【0087】
この場合には、苗ポット等を緑化用植栽基盤に埋め込み、或いは挟持させる等の作業を行わなくとも、そのまま所望の施工箇所に設置するだけで、植物を生育させることができるという効果がある。
【0088】
さらに、植栽用に準備された植物が植えられたプラグ体を緑化用植栽基盤に打ち込んで使用することも可能である。この場合にも、苗ポット等を緑化用植栽基盤に埋め込み、或いは挟持させる等の作業が不要となる。
【0089】
このプラグ体は、緑化用植栽基盤と、予め準備された植物とを一体化させるための媒体となるものであり、たとえば土、人工土壌等が用いられる。
【0090】
さらに、上記実施形態では、草炭地の草炭を乾燥して立体的繊維状物に形成することで緑化用植栽基盤を構成したが、これに限らず、たとえば草炭を結合剤で固結して固形状に形成して緑化用植栽基盤を構成することも可能である。
【0091】
この場合の草炭としては、たとえばカナダ産の草炭(ピートモス)のように毛足の短い草炭が用いられ、それをそのまま若しくは粉粒状にし、結合剤で固結されて固形状に形成される。
【0092】
結合剤としては、たとえば合成高分子樹脂製の結合剤や、澱粉系の天然樹脂製の結合剤等が用いられる。
【0093】
また、このような結合剤で固結する場合、上記のような草炭に代えて、泥炭や植物繊維を用いることも可能である。
【0094】
【実施例】
上記実施形態のような緑化用植栽基盤で、各種植物の植物生育試験を行った。
【0095】
(試験方法)
乾燥状態のブロック状の緑化用植栽基盤のほぼ中央にドリルで孔を穿設し、その孔に、ポット植えの各種の植物を収納した。
【0096】
植物の収納後、約2ケ月経過後の植物の生育状態を観察した。
【0097】
その結果、次のA群の植物種については、緑化用植栽基盤の上面側で植物の生育による良好な発根状態が認められた他、緑化用植栽基盤の側面側においても、植物の根の先端が飛び出して伸長している状態が認められた。
【0098】
〔A群の植物種〕
カンナ、クマザサ、ハラン、フヨウ、ハギイカダ、シュンラン、セキショウ、オキナヤブラン、ギボウシ、パンパスグラス、オモト、ヒメシャガ、オカメザサ、ヒメウツギ、スイカズラ、シマカンスゲ、ムべ、ゴシキドクダミ、フッキソウ、ハイビャクシン、クサボケ、カキツバタ、ヒメカンゾウ、フイリヤブラン、クリスマスローズ、ビナンカズラ、キチジョウソウ、ユリオプスデージ、ナツヅタ、メキシコマンネングサ、ドイツスズラン、チゴザサ、ヘメロカリス、コグマザサ、テイカカヅラ、コトネアスター、ミヤギノハギ、ビンカマジョール、シロハギ、アカンサス、オロシマチク、ラインゴールド、ヒマラヤユキノシタ、リュウノヒゲ、ヤブラン、ツルバラ、セイヨウイワナンテン、シロバナサギゴケ、ホトトギス、シャガ、キキョウ、ビグノニア、ウンナンオウバイ、ヤブカンゾウ、ノウゼンカヅラ、マツバギク、ハギ、ポテンチラ
【0099】
また、次のB群の植物種については、緑化用植栽基盤の上面側で植物の生育による良好な発根状態が認められたが、緑化用植栽基盤の側面側においては、植物の根の先端の伸長が認められなかった。
【0100】
〔B群の植物種〕
クサソテツ、トクサ、ビンカ、アメリカツルマサキ、フィリフィアオーレア、ヒペリカムカリシナム、ツワブキ、イチハツ、タツタナデシコ、キショウブ、オオバジャノヒゲ、アヤメ、ヒペリカムヒデコート、ブッドレア、シュッコンバーベナ、ミソハギ、シュッコンフロックス、アスチルベ、シラン、ハイビャクシン、ニシキテイカ、ミセバヤ、ノシラン、オノマンネン、タマリュウ、オウバイ、エビネ、ラベンダー、トケイソウ、アガパンサス、ツキヌキニンドウ、アジュガ、ヤブソテツ、モッコウバナ、カロライナジャスミン、シャスターデージー、キヅタ、ローズマリー、オオイタビ、シュウカイドウ、イカリソウ、カンアオイ、オオキンケイギク、サクラモドキ、クレマチス、オタフクナンテン、シバザクラ、フイリアマドコロ、アケビ
【0101】
さらに、次のC群の植物種については、緑化用植栽基盤の側面側において植物の根の先端の伸長が認められなかったことはもちろん、緑化用植栽基盤の上面側においても、植物の発根状態が認められなかった。
【0102】
〔C群の植物種〕
ハナニラ、スイセン、ムスカリ、ヒガンバナ
【0103】
ただし、試験を行った時期が6〜8月であったため、これらC群の植物種は、生育時期が夏期に合致しなかったことも良好な生育状態が認められなかった要因と考えられる。
【0104】
【発明の効果】
叙上のように、本発明の緑化用植栽基盤は、草炭地の草炭が乾燥されて立体的繊維状物に形成されたものであるため、水分を上下方向のみならず横方向にも流通させるという特性を有する。従って基盤全体としての透水性が、従来の土壌を容器や袋等に収容した緑化用植栽基盤に比べると、著しく良好になるという効果がある。
【0105】
また、空隙を有する立体的繊維状物であるために植物の根が通過し易く、緑化用植栽基盤の上面側へ植物が生育することはもちろん、緑化用植栽基盤の側面側へも植物の根が伸長することになる。
【0106】
この結果、このような緑化用植栽基盤を、複数並列して配置すると、1つの緑化用植栽基盤の側面の外側に伸長する植物の根は、隣接する緑化用植栽基盤に侵入することとなり、それによって相互に隣接する緑化用植栽基盤は、それぞれの緑化用植栽基盤で生育する植物の根によって結束されることになり、複数の植栽基盤が全体として一体化され、一部の植栽基盤のみが脱落するようなことも好適に防止されることとなる。
【0107】
さらに、立体的繊維状物に形成されているため、従来の土壌を含む植栽基盤に比べると非常に軽量であり、従って取り扱いが容易で施工も簡易に行えるという効果がある。
【0108】
このように軽量である結果、たとえば建築物の屋上緑化、屋根緑化等を行う場合に、屋上や屋根への緑化用植栽基盤の運搬等を容易に行うことができ、施工も簡単になるという効果がある。
【0109】
またブロック状等に予め形成された緑化用植栽基盤を、屋上や屋根等に載置するだけで施工できるので、従来のように、土壌を容器に収容する作業や袋詰めする作業が不要となり、これが全体の施工作業を一層容易にするとともに、施工期間も従来に比べて短縮することができるという効果がある。
【0110】
さらに、乾燥して立体的繊維状物に形成される結果、適度な弾力性を有することとなり、踏みつけても圧潰されることがないという効果がある。
【0111】
特に、草炭を天日乾燥して緑化用植栽基盤を得ているので、上記のように特定の優れた立体的繊維状物が確実に形成され、とりわけ天日乾燥の乾燥期間を1年半〜2年半としているので、水分を横方向に流通させる機能、植物の根を好適に通過させて植栽基盤の側面の外側に良好に伸長させる機能、弾力性、軽量化等の各種特性や機能が一層良好になるという効果がある。
【0112】
また、草炭地の草炭を掘り起こしたものを乾燥して立体的繊維状物に形成して製造するので、緑化用植栽基盤の製造も簡易に行えるという効果がある。
【0113】
さらに、壁面緑化を行う場合においては、緑化用植栽基盤を壁面の前面側に積み上げるとともに、その積み上げられた複数の緑化用植栽基盤の崩落を防止する網状体等の崩落防止手段を設けた場合には、個々の緑化用植栽基盤を壁面に直接取り付けなくとも、積載された複数の緑化用植栽基盤の崩落防止手段を設けるだけで、その複数の緑化用植栽基盤を壁面の前面側に取り付けた状態と同じ状態になるため、壁面緑化の作業も、従来の土壌を具備した緑化用植栽基盤を用いる場合に比べて著しく容易となり、施工も簡単に行えるという効果がある。
【0114】
さらに、籠状ケースに収納し、緑化用植栽基盤が収納された籠状ケースを、壁面又は急勾配法面の前面側に多数積み上げて施工する場合には、その積み上げ等の作業を容易に行うことができるという効果がある。
【0115】
さらに、草炭が結合剤で固結されて固形状に形成された緑化用植栽基盤を使用する場合には、緑化用植栽基盤が型崩れすることがないので、たとえば壁面等に多数積み上げて施工する際に、崩落するようなこともないという効果がある。
【0116】
また、緑化用植栽基盤にアルカリ性溶液又は中和液を含浸させた場合には、仮に緑化用植栽基盤のpHが低くても、中性に近いpHとすることができ、多種の植物の生育に適した一般的な生育条件を付与することができるという効果がある。
【0117】
また、保水剤を含浸させた場合には、緑化用植栽基盤の保水性が良好となる効果がある。
【0118】
さらに、植物の種子を予め含有させて養生し、又は幼植物体若しくは一定期間生育した植物体を予め植え付けて養生したものを使用する場合、或いは植栽用として準備された植物を植え付けたプラグ体を打ち込んだものを使用する場合には、そのまま所望の施工箇所に設置するだけで、植物を生育させることができ、苗ポット等を緑化用植栽基盤に埋め込み、或いは挟持させる等の作業が不要となる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】一実施形態の緑化用植栽基盤の斜視図。
【図2】一実施形態の施工例を示す要部斜視図。
【図3】一実施形態の施工例を示す概略側面図。
【図4】一実施形態の施工例を示す一部断面側面図。
【図5】一実施形態の施工例を示す概略正面図。
【図6】一実施形態の施工例を示す要部斜視図。
【符号の説明】
1…緑化用植栽基盤
Claims (1)
- 植物遺体が長期に堆積して地中に埋まり、繊維状を保持しつつ化石化した草炭地の草炭であって、堆積過程で、横方向を主体として存在する植物遺体からなる横方向繊維層と、横方向繊維を貫いて存在する植物遺体からなる縦方向繊維が三次元的に絡んでいる構造を有する草炭を掘り起こしてブロック状の立体的な草炭を得、次に該立体的な草炭を水分10重量%以下になるまで、且つ立体的繊維状態が保持されるように、1年半〜2年半天日乾燥して製造することを特徴とする緑化用植栽基盤の製造方法。
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