JP3768729B2 - 内燃機関の燃料噴射量制御装置およびその制御方法 - Google Patents

内燃機関の燃料噴射量制御装置およびその制御方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、内燃機関の燃料噴射量制御装置およびその制御方法にに関するものである。
【0002】
図13は従来の内燃機関(エンジン)のシステム構成図を示したものである。図において、101はエンジン、102はエアクリーナ、103は吸入通路、104はスロットルバルブ、105はサージタンク、106はアクセルペダル、107はアクセルペダルの踏み込み量を検出するアクセル開度検出センサ、108は電子制御ユニット、109はアクセル開度センサの値に応じてスロットルバルブを開閉するためのスロットルアクチュエータ、110はスロットルバルブの開度を検出するスロットル開度センサ、111はエンジン101のクランク角を検出するクランク角センサ、112はクランク角センサの出力信号がエンジン101のどの気筒に該当するものかを検出する気筒識別センサ、113は燃料噴射弁、114は点火コイル、115は電子制御ユニット108からの点火コイル駆動信号を高電圧に増幅して点火コイルに引火する点火コイル駆動ユニット、116は触媒である触媒コンバータ、117は触媒コンバータ116の活性状態を調べるための排気温度センサ、118は排気ガス中の酸素濃度を検出する酸素濃度検出センサである。
【0003】
次に動作について説明する。アクセルペダル106を運転者が踏み込むと電子制御ユニット108はアクセル開度検出センサ107から運転者のアクセル開度を検出し、スロットルバルブ104の開度がアクセル開度と同等になるようにスロットルアクチュエータ109とスロットル開度センサ110によってフィードバック制御する。スロットルバルブ104が開かれると空気がエアクリーナ102、吸入通路103を通りエンジン101に吸入される。電子制御ユニット108は吸入空気量とクランク角センサ111からのクランク角信号の周期等から燃料噴射量を演算し、気筒識別センサ112の出力から噴射すべき気筒の燃料噴射弁113を駆動して燃料を噴射する。そして点火コイル駆動ユニット115に信号を出力して点火プラグ114に点火することで噴射した燃料に点火して燃料を燃焼することでエンジンが駆動されることとなる。また、電子制御ユニット108は酸素濃度検出センサ118によって排気ガス中の酸素濃度を検出して、燃料量をフィードバック制御する。エンジン駆動後に排出されるガスは触媒コンバータ116により浄化され排出される。
【0004】
図14は、従来の燃料噴射制御装置において、アクセル開度、燃料噴射量、空燃比の関係を時系列に示したグラフである。図において、グラフの横軸は時間を表しており、図14(a)はある時刻t1でアクセル開度が増加し、アクセル開度を一定時間同じに保った後、時刻t2で再び減少させている。図14(b)はアクセル開度を図14(a)のように変化させたときの燃料噴射量であり、図14(c)はそのときの空燃比である。
このように、空燃比は、目標空燃比(14.7)に対して、アクセル開度の増加時(加速時)には、リーン(希薄)側に、逆にアクセル開度の減少時(減速時)にはリッチ(濃厚)側に変動している。これはアクセル開度の増加時には燃料噴射弁113から噴射された燃料のうち、エンジンの燃焼室に通じる吸気管の内壁に付着する燃料が増し、逆に減少時には吸気管に付着していた燃料の気化が増すためである。すなわち、吸気管に付着する燃料が増すと、燃焼室内に供給される燃料は噴射弁113から噴射する燃料に対して少なくなるため、実際の空燃比は、リーン側になる。一方、吸気管に付着していた燃料の気化が増すと、燃焼室内に供給される燃料は噴射弁113から噴射する燃料に対して多くなるため、実際の空燃比は、リッチ側になる
【0005】
図15は吸気管307の内壁面の燃料付着を示した概念図である。
図において、301は燃料噴射弁、302はサージタンク、307は吸気管、303は吸気管307に付着した燃料、304は吸気バルブ、305はピストン、306はシリンダである。シリンダ306は燃焼室を構成し、シリンダ306内に吸入される燃料量Qは、燃料噴射弁301から噴射された燃料量Qoutに吸気管307に付着した燃料Qf、もしくは吸気管307より気化する燃料Qwを考慮したものとなる。シリンダ306に吸入される燃料量Qは、
Q=Qout−Qf+Qw
但し Q :シリンダに吸入される燃料量
Qout:燃料噴射弁から噴射される燃料量
Qf :吸気管に付着する燃料量
Qw :吸気管より気化する燃料量
である。
このように燃料噴射弁301より噴射された燃料量Qoutはそのままシリンダ306に吸入されるわけではないので、スロットルバルブ104の開度が変化し、吸気管307内の吸気圧が変化する過渡運転時には、吸気管307に付着する燃料量Qfおよび吸気管307より気化する燃料量Qwが過渡的に変化するため、上述したように、実際の空燃比に変動を生じる。
【0006】
アクセル開度が変化する過渡運転である加減速時に発生するこのような空燃比が変動する現象を抑えるため、加減速時には、実際の空燃比が目標空燃比になるように目標空燃比に相当する燃料量に対して燃料量を補正する燃料付着補正が従来より行われている。
【0007】
図16は、吸気管内壁面に付着する燃料を考慮した燃料量を補正する燃料付着補正を行ったときのアクセル開度、燃料噴射量、空燃比の関係を時系列に示したグラフである。図において、グラフの横軸は時間を表しており、図16(a)はある時刻t1でアクセル開度が増加し、アクセル開度を一定時間同じに保ったあと、t2で再び減少させている。図16(b)はアクセル開度を図16(a)のように変化させたときの燃料噴射量であり、図16(c)はそのときの空燃比である。
このように燃料付着補正を行うと図16(c)のように空燃比14.7を保ち変動は起こらない。
【0008】
以上のように、従来の燃料付着補正は加速時には吸気管内壁面に付着する燃料が多いため、噴射する燃料量を多くし、減速時には吸気管内壁面に付着する燃料が気化する量が多いため、噴射する燃料量を少なくするように行われる。したがって、燃料付着補正を行ったときには行わないときに比べ空燃比がアクセル開度増加時にはリッチ側へ、アクセル開度減少時にはリーン側へ変動することになる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
ここで、燃焼室に供給された燃料が燃焼した後に発生する排気ガスを考えたとき、排気ガスを浄化する触媒が完全に活性状態にあれば、排気ガスに含まれるTHC(全炭化水素)排出量を触媒により増加させることはない。
しかしながら、触媒非活性状態において、この燃料付着補正を行うとアクセル開度増加時における空燃比がリッチ側になるため、THC排出量が増加してしまうという問題点があった。
【0010】
この発明の目的は、このような課題を解決するためになされたもので、触媒の浄化能力低い触媒非活性状態のTHC排出量を減少させる内燃機関の燃料噴射量制御装置およびその制御方法を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
この発明に係る内燃機関の燃料噴射量制御装置は、運転者のアクセル踏み込み量であるアクセル開度を検出するアクセル開度検出手段と、所定の空燃比になるように、少なくともアクセル開度に基づいて燃料噴射量を算出する燃料噴射量算出手段と、吸気管内壁面に付着する燃料量を考慮した燃料補正量を記憶した燃料補正量記憶手段と、燃料噴射量に対して燃料補正量を加算あるいは減算して燃料噴射量を補正する燃料補正手段と、排気ガスを浄化する触媒の活性状態を検出する触媒活性度検出手段と、触媒の活性状態に基づいた補正係数を記憶した補正係数記憶手段とを備え、触媒活性状態が完全活性状態でない場合で、かつアクセル開度が増加した場合に、燃料補正手段が、触媒活性状態に応じて、燃料補正量に補正係数を乗算して燃料補正量を補正して、THC排出量を小さくするものである。
【0012】
また、この発明に係る内燃機関の燃料噴射量制御装置は、補正係数が、所定の一定値である。
【0013】
また、この発明に係る内燃機関の燃料噴射量制御装置は、補正係数が、触媒活性度の大きさに応じて大きくなる。
【0014】
また、この発明に係る内燃機関の燃料噴射量制御装置は、補正係数が、アクセル開度の大きさに応じて変化する。
【0015】
また、この発明に係る内燃機関の燃料噴射量制御装置は、補正係数が、アクセル開度の大きさに応じて、0を含む所定値から段階的あるいは連続的に大きくなる。
【0016】
また、この発明に係る内燃機関の燃料噴射量制御装置は、アクセル開度からアクセル開度の時間変化であるアクセル踏み込み速度を算出するアクセル速度算出手段を備え、補正係数が、アクセル踏み込み速度に応じて変化する。
【0017】
また、この発明に係る内燃機関の燃料噴射量制御装置は、補正係数が、アクセル踏み込み速度の大きさに応じて、0を含む所定値から段階的あるいは連続的に大きくなる。
【0018】
また、この発明に係る内燃機関の燃料噴射量制御方法は、排気ガスを浄化する触媒の活性状態を検出する触媒活性度検出ステップと、運転者のアクセル踏み込み量であるアクセル開度を検出するアクセル開度検出ステップと、所定の空燃比になるように、少なくともアクセル開度に基づいて燃料噴射量を算出する燃料噴射量算出ステップと、触媒の活性状態に基づいた補正係数を算出する補正係数算出ステップと、触媒活性状態が完全活性状態でない場合で、かつアクセル開度が増加した場合に、触媒活性状態に応じて、燃料補正量に補正係数を乗算して燃料補正量を補正するステップとを備え、THC排出量を小さくするものである。
【0019】
また、この発明に係る内燃機関の燃料噴射量制御方法は、アクセル開度からアクセル開度の時間変化であるアクセル踏み込み速度を算出するアクセル速度算出ステップを備え、補正係数が、アクセル踏み込み速度に応じて変化する。
【0020】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
まず、この発明に係る内燃機関の燃料噴射制御装置を含むエンジンのシステムの構成を図1に示す。図12とほぼ同様であるが、電子制御ユニット200の構成する部品による制御内容が異なる。以降図において、図12と同一もしくは同等の部材および部位には、同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0021】
運転者がアクセルペダル106を踏み込む量を検出するアクセル開度検出センサ107はアクセル開度検出手段を構成している。CPU203(中央演算処理装置)を中心に構成される電子制御ユニット208では、例えば、14.7の所定の目標空燃比になるように、燃料噴射弁113から噴射する燃料噴射量Qoutを、少なくともアクセル開度に基づいて燃料噴射量を算出する燃料噴射量算出手段、吸気管内壁面に付着する燃料量を考慮した燃料補正量Q'を記憶した燃料補正量記憶手段、燃料噴射量Qoutに対して燃料補正量Q'を加算あるいは減算して燃料噴射量Qoutを補正する燃料補正手段、排気ガスを浄化する触媒の活性状態を検出する触媒活性度検出手段、触媒の活性度に基づいた補正係数を記憶した補正係数記憶手段を備えている。例えば、電子制御ユニット208には、ADコンバータ201が設けられ、アクセル開度検出センサ107からのアクセル開度のアナログ信号をデジタル変換する。また、ROM204が設けられ、吸気管内壁面に付着する燃料量を考慮した燃料補正量および触媒の活性度に基づいた補正係数を記憶している。さらに、入出力インターフェース202が設けられ、これを介して、クランク角センサ112からの出力信号がCPU203に入力され、CPU203が、エンジン101が始動状態にあるか否かを検知して、エンジン始動後のエンジン101の稼働時間をクロック発生回路206からのクロックパルスのCPU203が計算して、エンジン101の稼働時間を基に排気ガスを浄化する触媒である触媒コンバータ116の活性状態を検知している。
【0022】
次に、動作について説明する。
まず、触媒である触媒コンバータ116の活性状態を検知する方法を図10により説明する。図10は、エンジン101が始動し、稼働し続けている状態の経過時間と触媒活性状態との関係を定めるグラフである。すなわち、図10は、エンジン始動からのエンジン稼働時間の経過を表しており、エンジン始動からある時刻tまでを触媒が完全に活性していない状態である触媒非活性とし、時刻t以降を触媒が完全に活性している状態である触媒活性とする。
【0023】
図6は、この発明の実施の形態の燃料噴射制御を実行するためのフローチャートであり、各気筒の燃料噴射ごとに、CPU203により実行される。
ステップS901では、触媒の活性状態を判定している。
触媒が非活性、すなわちエンジン始動からt時間経過していなければ、ステップS902へ進む。ステップS902では、アクセル開度が増加中(加速中)であるかの判定をしており、アクセル開度が増加していれば、ステップS904で燃料補正量Q'を減少させる。例えば、燃料補正量Q'に補正係数0を乗算して燃料補正量Q'を0にし燃料付着補正を禁止している。なお、補正係数として、0より大きく1より小さい値を用いて、燃料付着補正を禁止するのではなく、燃料補正量Q'を触媒活性時に対して低減してもよい。
【0024】
アクセル開度が増加していない場合は、ステップS903へ進み、アクセル開度が減少中(減速中)であるかの判定をする。アクセル開度が減少中であれば、ステップS905で従来通り燃料付着補正(Qout=Qout−Q')を実施する。
【0025】
次に、図2は、この実施の形態におけるアクセル開度(APS)、燃料噴射量(Qout)、空燃比(A/F)の関係を時系列に示したグラフである。図において、グラフの横軸は時間を表しており、図2(a)はある時刻t1でアクセル開度が増加し、アクセル開度を一定時間同じに保った後、t2で再び減少させている。図2(b)はアクセル開度を図2(a)のように変化させたときの燃料噴射量であり、図2(c)はそのときの空燃比である。
図2(c)に示すように、加速時に従来の燃料付着補正を行ったときの空燃比14.7よりも、燃料補正量Q'を触媒活性時に対して低減したこの実施の形態の発明の方が燃料付着補正を行うことによるリッチ化が抑えられていることがわかる。また、減速時には、燃料噴射量Qoutを少なくし、吸気管307の内壁に付着する燃料付着量を抑え、次の加速時のリッチ化を低減している。従来に対して、このように空燃比がリッチ化するのを低減するので触媒非活性時におけるTHC排出量は低減する。
【0026】
なお、上述した実施の形態では、触媒の活性状態を検出する手段として、エンジン始動からの経過時間を用いたが、エンジン始動からの燃料噴射量の積算量が、所定の積算量Qtotalまでが触媒非活性とし、積算量Qtotal以上を触媒活性としてもよい。
またはエンジン始動からの走行距離によって、所定の走行距離Lまでが触媒非活性とし、走行距離L以上を触媒活性としてもよい。
また、触媒コンバータ116の温度を直接検出し、触媒コンバータ116の温度が所定の温度TC以下のとき触媒非活性とし、温度TC以上のとき触媒活性としてもよい。
エンジンの冷却水温度が所定の温度TR以下のとき触媒非活性とし、温度TR以上のとき触媒活性としてもよい。
排気温度センサ117の排気温度が所定の温度TE以下が触媒非活性とし、排気温度TE以上が触媒活性としてもよい。
さらに、上述したエンジン始動からの経過時間、エンジン始動からの燃料噴射量の積算、エンジン始動からの走行距離、触媒の温度、エンジン冷却水温および排気温度を組み合わせて触媒活性状態を検出してもよい。
【0027】
実施の形態2.
図7は、この発明の別の実施の形態の燃料噴射制御を実行するためのフローチャートであり、各気筒の燃料噴射ごとに、CPU203により実行される。
図7では触媒が非活性状態でも、触媒の活性状態の度合いによって、補正係数を変更し、燃料補正量Q'を変更している点が図6と異なる。
【0028】
まず、触媒コンバータ116の活性状態の度合いである触媒活性度を検知する方法を図11により説明する。図11は、エンジン101が始動し、稼働し続けている状態の経過時間と触媒活性度との関係を定めるグラフである。すなわち、図11は、エンジン稼働時間の経過を表しており、エンジン始動からある時刻tまでが触媒が完全に活性していない状態である触媒非活性とし、時刻t以降は触媒が完全に活性していない状態である触媒活性とするとともに、触媒非活性状態すなわちエンジン稼働時間が時刻tに達していない場合における触媒活性度Acを時刻tの関数で表し、エンジン始動時における触媒活性度Acを0%、時刻tにおける触媒活性度Acを100%として、各時刻における触媒活性度Acは、エンジン始動後の経過時間によって徐々に上昇するように定めている。
【0029】
図7に戻って、ステップS1001では、図11に説明した方法で触媒の活性状態を判定している。触媒が非活性、すなわち触媒活性度Acが100%でなければ、ステップS1002へ進む。
ステップS1002では、アクセル開度が増加中(加速中)であるかの判定をしており、アクセル開度が増加していれば、ステップS1004で、燃料補正量Q'に補正係数f(Ct)を乗算して燃料補正量Q'を補正し、燃料噴射量Qoutに対して、補正した燃料補正量Q'を加算している。
【0030】
ここで、補正係数f(Ct)は、触媒活性度Acに基づいた所定値が補正係数記憶手段であるROM204に格納されている。触媒活性度Acが大きくなるにつれ、補正係数f(Ct)も0以上1以下の範囲で段階的に大きくなる。
その他の点は、図6と同様である。
【0031】
図3は、この実施の形態におけるアクセル開度(APS)、燃料噴射量(Qout)、空燃比(A/F)の関係を時系列に示したグラフである。図において、グラフの横軸は時間を表しており、図3(a)は、ある時刻t1でアクセル開度が増加し、アクセル開度を一定時間同じに保った後、t2で再び減少させ、この動作を繰り返し、ある時刻t(2n−1)でアクセル開度が増加し、アクセル開度を一定時間同じに保った後、t(2n)で再び減少させている。図3(b)はアクセル開度を図3(a)のように変化させたときの燃料噴射量であり、図3(c)はそのときの空燃比である。
図3(c)に示すように、第1加速時601では、上述した実施の形態と同等の空燃比となるがその後徐々に空燃比は理想空燃比14.7に近づいていく。
燃料補正量は触媒が完全活性化状態に近づくに従って、完全活性化状態の燃料補正量に近づくようになり、空燃比をリッチ化しているので、上述した実施の形態と同様にTHC排出量を低減するとともに加速走行性が向上する。
【0032】
なお、上述した実施の形態では、触媒活性度Acを検出する手段として、エンジン始動からの時間を用いたが、エンジン始動からの燃料噴射量の積算量あるいはエンジン始動からの走行距離が大きくなるにつれ、触媒活性度Acが大きくなるように定めてもよい。
また、図12に示すように、触媒コンバータ116の温度が高温になるに従って、触媒活性度Acが大きくなるように定めてもよい。
また、エンジンの冷却水温度あるいは排気温度センサ117の排気温度が高温になるに従って、触媒活性度Acが大きくなるように定めてもよい。
さらに、上述したエンジン始動からの時間、エンジン始動からの燃料噴射量の積算、エンジン始動からの走行距離、触媒の温度、エンジン冷却水温および排気温度を組み合わせて触媒活性度Acを検出してもよい。
また、触媒活性度に応じた補正係数f(Ct)は、段階的に大きくなる値に限るものではなく、触媒活性度Acに比例して0以上1以下の範囲で連続的に大きくなってもよい。
【0033】
実施の形態3.
図8は、この発明の別の実施の形態の燃料噴射制御を実行するためのフローチャートであり、各気筒の燃料噴射ごとに、CPU203により実行される。
図8では触媒が非活性状態において、アクセル開度に応じて、補正係数を変更し、燃料補正量Q'を変更している点が図6と異なる。
【0034】
図において、図6と異なるのは、ステップS1104であり、その他のステップは、図6と同様である。
ステップS1104で、燃料補正量Q'にアクセル開度に応じた補正係数f(TH)を乗算して燃料補正量Q'を補正し、燃料噴射量Qoutに対して、補正した燃料補正量Q'を加算している。
【0035】
ここで、補正係数f(TH)は、アクセル開度に応じた所定値が補正係数記憶手段であるROM204に格納されている。補正係数f(TH)は、アクセル開度が大きくなるにつれ、0以上1以下の範囲で段階的に大きくなる。例えば、アクセル開度が第1の所定値AC1より大きい場合、補正係数f(TH)を1とし、第1の所定値AC1より小さい第2の所定値AC2より小さい場合、補正係数f(TH)を0とし、第1の所定値AC1と第2の所定値AC2との間の場合、補正係数f(TH)を0.5とする。
【0036】
図4は、この実施の形態におけるアクセル開度(APS)、燃料噴射量(Qout)、空燃比(A/F)の関係を時系列に示したグラフである。図において、グラフの横軸は時間を表しており、図4(a)は、ある時刻t1でアクセル開度が増加し、アクセル開度を第1の所定値AC1以上で一定時間同じに保った後、t2で再び減少させ、次に、ある時刻t3でアクセル開度が増加し、アクセル開度を第2の所定値AC2以下で一定時間同じに保った後、t4で再び減少させ、さらに、ある時刻t5でアクセル開度が増加し、アクセル開度を第1の所定値AC1と第2の所定値AC2との間で一定時間同じに保った後、t6で再び減少させている。図4(b)はアクセル開度を図4(a)のように変化させたときの燃料噴射量であり、図4(c)はそのときの空燃比である。
【0037】
図4(b)において、加速時にアクセル開度が第1の所定値AC1以上のときは、触媒活性状態と同じ燃料付着補正を実施しており、アクセル開度が第2の所定値AC2以下のときは燃料補正量Q'を0にし、燃料付着補正を禁止している。また、アクセル開度がアクセル開度を第1の所定値AC1と第2の所定値AC2との間のときは、燃料補正量Q'を低減した燃料付着量補正を実施している。
図4(c)に示すように、この実施の形態では、アクセル開度が大きいときは高負荷運転時であるので、空燃比がリッチ側に推移することにより走行性は向上する。一方、加速時においてアクセル開度が小さいときは燃料補正量Q'が低減され、THC排出量が低減される。
【0038】
なお、アクセル開度に応じた補正係数f(TH)は、段階的に大きくなる値に限るものではなく、触媒活性度Acに比例して0以上1以下の範囲で連続的に大きくなってもよい。
【0039】
実施の形態4.
図9は、この発明の別の実施の形態の燃料噴射制御を実行するためのフローチャートであり、各気筒の燃料噴射ごとに、CPU203により実行される。
図9では触媒が非活性状態において、アクセル開度の時間変化であるアクセル踏み込み速度に応じて、補正係数を変更し、燃料補正量Q'を変更している点が図6と異なる
【0040】
図において、図6と異なるのは、ステップS1204であり、その他のステップは、図6と同様である。
ステップS1204で、燃料補正量Q'にアクセル踏み込み速度に応じた補正係数f(Vth)を乗算して燃料補正量Q'を補正し、燃料噴射量Qoutに対して、補正した燃料補正量Q'を加算している。
【0041】
ここで、補正係数f(Vth)は、アクセル開度からCPU203がアクセル踏み込み速度を算出し、そのアクセル踏み込み速度に応じた所定値が補正係数記憶手段であるROM204に格納されている。補正係数f(Vth)は、アクセル踏み込み速度が大きくなるにつれ、0以上1以下の範囲で段階的に大きくなる。例えば、アクセル踏み込み速度が第1の所定値ACV1より大きい場合、補正係数f(Vth)を1とし、第1の所定値ACV1より小さい第2の所定値ACV2より小さい場合、補正係数f(Vth)を0とし、第1の所定値ACV1と第2の所定値ACV2との間の場合、補正係数f(Vth)を0.5とする。
【0042】
図5は、この実施の形態におけるアクセル開度(APS)、燃料噴射量(Qout)、空燃比(A/F)の関係を時系列に示したグラフである。図において、グラフの横軸は時間を表しており、図4(a)は、ある時刻t1で、アクセルペダル106を急激に踏み込み、第1の所定値ACV1以上のアクセル踏み込み速度でアクセル開度が増加し、そのアクセル開度を一定時間同じに保った後、t2で減少させる。次に、ある時刻t3で、第2の所定値ACV2以下のアクセル踏み込み速度でアクセル開度が増加し、そのアクセル開度を一定時間同じに保った後、t4で減少させる。さらに、ある時刻t5で、第1の所定値ACV1と第2の所定値ACV2との間のアクセル踏み込み速度でアクセル開度が増加し、そのアクセル開度を一定時間同じに保った後、t6で減少させている。図5(b)はアクセル踏み込み速度違いでアクセル開度を図5(a)のように変化させたときの燃料噴射量であり、図5(c)はそのときの空燃比である。
【0043】
図5(b)において、加速時に第1の所定値ACV1以上のアクセル踏み込み速度でアクセル開度が増加するときは、触媒活性状態と同じ燃料付着補正を実施している。第2の所定値ACV2以下のアクセル踏み込み速度でゆっくりアクセル開度が増加したときは燃料補正量Q'を0にし、燃料付着補正を禁止している。また、第1の所定値ACV1と第2の所定値ACV2との間のアクセル踏み込み速度でアクセル開度が増加したときは、燃料補正量Q'を低減した燃料付着補正を実施している。
【0044】
図5(c)に示すように、この実施の形態では、アクセル踏み込み速度が速いときは急加速時であるので、空燃比がリッチ側に推移することにより走行性は向上する。一方、加速時においてアクセル踏み込み速度が遅いときは燃料補正量Q'が低減され、THC排出量が低減される。
【0045】
なお、アクセル踏み込み速度に応じた補正係数f(Vth)は、段階的に大きくなる値に限るものではなく、触媒活性度Acに比例して0以上1以下の範囲で連続的に大きくなってもよい。
【0046】
実施の形態5.
上述した実施の形態1乃至4では、触媒の活性状態、アクセル開度、アクセル踏み込み速度のいづれかをパラメータにして燃料補正量Q'を補正し、触媒の完全活性状態に対して、アクセル開度増加時の燃料補正量Q'を減少させているが、これらのパラメータを組み合わせて行ってもよい。例えば、触媒活性度、アクセル開度およびアクセル踏み込み速度を各軸にした2次元あるいは3次元マップをROM204あるいはRAM205に設けて、触媒活性度、アクセル開度およびアクセル踏み込み速度の値に対応した0以上1以下の1つの補正係数f(Ct,TH,Vth)を求める。
この場合、加速走行性能とTHC排出量低減効果ともにバランス良く向上させることができる。
【0047】
【発明の効果】
この発明に係る内燃機関の燃料噴射量制御装置によれば、運転者のアクセル踏み込み量であるアクセル開度を検出するアクセル開度検出手段と、所定の空燃比になるように、少なくともアクセル開度に基づいて燃料噴射量を算出する燃料噴射量算出手段と、吸気管内壁面に付着する燃料量を考慮した燃料補正量を記憶した燃料補正量記憶手段と、燃料噴射量に対して燃料補正量を加算あるいは減算して燃料噴射量を補正する燃料補正手段と、排気ガスを浄化する触媒の活性状態を検出する触媒活性度検出手段と、触媒の活性状態に基づいた補正係数を記憶した補正係数記憶手段とを備え、触媒活性状態が完全活性状態でない場合で、かつアクセル開度が増加した場合に、燃料補正手段が、触媒活性状態に応じて、燃料補正量に補正係数を乗算して燃料補正量を補正するので、排気ガスを浄化する能力の低い触媒非活性状態のTHC排出量を低減できる。
【0048】
また、この発明に係る内燃機関の燃料噴射量制御装置によれば、補正係数が所定の一定値であるので、簡易な構成で触媒が非活性状態のTHC排出量を低減できる。
【0049】
また、この発明に係る内燃機関の燃料噴射量制御装置によれば、補正係数が、触媒活性度の大きさに応じて大きくなるので、非活性状態の触媒浄化能力に応じてTHC排出量を低減しつつ加速時の走行性を向上できる。
【0050】
また、この発明に係る内燃機関の燃料噴射量制御装置によれば、補正係数が、アクセル開度の大きさに応じて変化するので、高負荷運転時あるいは加速走行時等アクセル開度に表れる運転者の意思に対応しつつ、THC排出量を低減しつつ加速時の走行性を向上できる。
【0051】
また、この発明に係る内燃機関の燃料噴射量制御装置によれば、補正係数が、アクセル開度の大きさに応じて、0を含む所定値から段階的あるいは連続的に大きくなるので、アクセル開度が大きい高負荷運転時には走行性は向上させ、アクセル開度が小さいときはTHC排出量が低減され、THC排出量を低減しつつ加速時の走行性を向上できる。
【0052】
また、この発明に係る内燃機関の燃料噴射量制御装置によれば、アクセル開度からアクセル開度の時間変化であるアクセル踏み込み速度を算出するアクセル速度算出手段を備え、補正係数がアクセル踏み込み速度に応じて変化するので、THC排出量を低減しつつ、アクセル踏み込み速度に応じた走行性を向上できる。
【0053】
また、この発明に係る内燃機関の燃料噴射量制御装置によれば、補正係数が、アクセル踏み込み速度の大きさに応じて、0を含む所定値から段階的あるいは連続的に大きくなるので、アクセル踏み込み速度が速いときは急加速時の走行性を向上でき、アクセル踏み込み速度が遅いときにはTHC排出量が低減できる。
【0054】
また、この発明に係る内燃機関の燃料噴射量制御方法によれば、排気ガスを浄化する触媒の活性状態を検出する触媒活性度検出ステップと、運転者のアクセル踏み込み量であるアクセル開度を検出するアクセル開度検出ステップと、所定の空燃比になるように、少なくともアクセル開度に基づいて燃料噴射量を算出する燃料噴射量算出ステップと、触媒の活性状態に基づいた補正係数を算出する補正係数算出ステップと、触媒活性状態が完全活性状態でない場合で、かつアクセル開度が増加した場合に、触媒活性状態に応じて、燃料補正量に補正係数を乗算して燃料補正量を補正するステップとを備えているので、排気ガスを浄化する能力の低い触媒非活性状態のTHC排出量を低減できる。
【0055】
また、この発明に係る内燃機関の燃料噴射量制御方法によれば、アクセル開度からアクセル開度の時間変化であるアクセル踏み込み速度を算出するアクセル速度算出ステップを備え、補正係数が、アクセル踏み込み速度に応じて変化するので、THC排出量を低減しつつ、アクセル踏み込み速度に応じた走行性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態の燃料噴射制御装置を含むエンジンのシステム構成図である。
【図2】 この発明の実施の形態1の燃料噴射制御動作において、アクセル開度、燃料噴射量、空燃比の関係を時系列に示したグラフである。
【図3】 この発明の実施の形態2の燃料噴射制御動作において、アクセル開度、燃料噴射量、空燃比、触媒活性度の関係を時系列に示したグラフである。
【図4】 この発明の実施の形態3の燃料噴射制御動作において、アクセル開度、燃料噴射量、空燃比の関係を時系列に示したグラフである。
【図5】 この発明の実施の形態4の燃料噴射制御動作において、アクセル開度、燃料噴射量、空燃比の関係を時系列に示したグラフである。
【図6】 この発明の実施の形態1の動作を示す燃料噴射制御動作を示すフローチャートである。
【図7】 この発明の実施の形態2の動作を示す燃料噴射制御動作を示すフローチャートである。
【図8】 この発明の実施の形態3の動作を示す燃料噴射制御動作を示すフローチャートである。
【図9】 この発明の実施の形態4の動作を示す燃料噴射制御動作を示すフローチャートである。
【図10】 この発明の実施の形態1の触媒活性状態の検出方法を説明するグラフである。
【図11】 この発明の実施の形態2の触媒活性度の検出方法を説明するグラフである。
【図12】 この発明の実施の形態2の変形例における触媒活性度の検出方法を説明するグラフである。
【図13】 従来のエンジンのシステム構成図である。
【図14】 従来の燃料噴射制御装置において、アクセル開度、燃料噴射量、空燃比の関係を時系列に示したグラフである。
【図15】 従来の燃料噴射制御装置において吸気管内壁面の燃料付着を示した概念図である。
【図16】 従来の燃料噴射制御装置において、従来の燃料付着補正を行ったときのアクセル開度、燃料噴射量、空燃比の関係を時系列に示したグラフであ
【符号の説明】
107 アクセル開度センサ(アクセル開度検出手段)、116 触媒コンバータ(触媒)、117 排気温度センサ(触媒活性度検出手段)、200 電子制御ユニット(燃料噴射量算出手段、燃料補正手段、触媒活性度検出手段、アクセル速度算出手段)、203 CPU(燃料噴射量算出手段、燃料補正手段、触媒活性度検出手段、アクセル速度算出手段)、204 ROM(燃料補正量記憶手段、補正係数記憶手段)、206 クロックパルス発生回路(触媒活性度検出手段)、307 吸気管、Q' 燃料補正量、Qout 燃料噴射量、f(Ct)、f(TH)、f(Vth) 補正係数。

Claims (9)

  1. 運転者のアクセル踏み込み量であるアクセル開度を検出するアクセル開度検出手段と、
    所定の空燃比になるように、少なくともアクセル開度に基づいて燃料噴射量を算出する燃料噴射量算出手段と、
    吸気管内壁面に付着する燃料量を考慮した燃料補正量を記憶した燃料補正量記憶手段と、
    上記燃料噴射量に対して上記燃料補正量を加算あるいは減算して上記燃料噴射量を補正する燃料補正手段と、
    排気ガスを浄化する触媒の活性状態を検出する触媒活性度検出手段と、
    上記触媒の上記活性状態に基づいた補正係数を記憶した補正係数記憶手段とを備え、
    上記触媒活性状態が完全活性状態でない場合で、かつ上記アクセル開度が増加した場合に、上記燃料補正手段が、上記触媒活性状態に応じて、上記燃料補正量に上記補正係数を乗算して上記燃料補正量を補正して、THC排出量を小さくすることを特徴とする内燃機関の燃料噴射量制御装置
  2. 上記補正係数が、所定の一定値であることを特徴とする請求項1記載の内燃機関の燃料噴射量制御装置。
  3. 上記補正係数が、上記触媒活性度の大きさに応じて大きくなることを特徴とする請求項1記載の内燃機関の燃料噴射量制御装置。
  4. 上記補正係数が、上記アクセル開度の大きさに応じて変化することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の内燃機関の燃料噴射量制御装置。
  5. 上記補正係数が、上記アクセル開度の大きさに応じて、0を含む所定値から段階的あるいは連続的に大きくなることを特徴とする請求項4記載の内燃機関の燃料噴射量制御装置。
  6. 上記アクセル開度から上記アクセル開度の時間変化であるアクセル踏み込み速度を算出するアクセル速度算出手段を備え、
    上記補正係数が、上記アクセル踏み込み速度に応じて変化することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の内燃機関の燃料噴射量制御装置。
  7. 上記補正係数が、上記アクセル踏み込み速度の大きさに応じて、0を含む所定値から段階的あるいは連続的に大きくなることを特徴とする請求項6記載の内燃機関の燃料噴射量制御装置。
  8. 排気ガスを浄化する触媒の活性状態を検出する触媒活性度検出ステップと、
    運転者のアクセル踏み込み量であるアクセル開度を検出するアクセル開度検出ステップと、
    所定の空燃比になるように、少なくとも上記アクセル開度に基づいて燃料噴射量を算出する燃料噴射量算出ステップと、
    上記触媒の上記活性度合いに基づいた補正係数を算出する補正係数算出ステップと、
    上記触媒活性状態が完全活性状態でない場合で、かつ上記アクセル開度が増加した場合に、上記触媒活性状態に応じて、上記燃料補正量に上記補正係数を乗算して上記燃料補正量を補正するステップとを備え、
    THC排出量を小さくすることを特徴とする内燃機関の燃料噴射量制御方法。
  9. 上記アクセル開度から上記アクセル開度の時間変化であるアクセル踏み込み速度を算出するアクセル速度算出ステップを備え、
    上記補正係数が、上記アクセル踏み込み速度に応じて変化することを特徴とする請求項8記載の内燃機関の燃料噴射量制御方法。
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