JP3768386B2 - 車両の走行安全装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えばレーザーレーダー等の物体検出装置によって自車の前方に検出した物体との相対位置関係に基づいて、物体との接触を回避すべく制動装置を自動的に作動させる車両の走行安全装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、例えば特開平8−240660号公報及び特開平6−160510号公報等に開示された障害物検知装置のように、レーザ等の電磁波を自車の進行方向前方に向けて発信して、自車の進行方向前方に位置する前走車両等の物体からの反射波を受信するレーダの探知結果に基づいて、自車の進行方向前方の障害物を検知して、この検知結果に基づいて例えば運転者による回避操作を促す警報を発生させたり、障害物との接触を回避するための制動動作を自動的に行うようにした障害物検知装置が知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記従来技術の一例による障害物検知装置では、例えば障害物が検知されて自車との接触の予測時刻が算出されると、この予測時刻から逆算して所定時間以前にブザーやランプ等の警報装置及びブレーキアクチュエータ等の制動装置に対して作動指令を出力する。そして、ブザーやランプの作動によって運転者に警報を認識させたり、制動装置の作動によって車両を減速させるようになっている。
しかしながら、ブザーやランプ等の警報装置は作動指令の出力直後に作動状態が認識されるのに対して、ブレーキアクチュエータに作動指令が出力された場合には、ブレーキの制動力が車両に作用し始めるまでに適宜の時間遅れが生じる。すなわち、ブレーキアクチュエータのブレーキ油圧が十分に昇圧するまでに適宜の時間遅れが存在するため、運転者が警報装置の作動を認識するタイミングと、車両の減速を体感するタイミングがずれてしまい、運転者が警報の発令を確信することができずに困惑してしまう恐れがあり、ドライバビリティーが悪化してしまうという問題が生じる。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、運転者が警報装置の作動を認識するタイミングと、制動装置の作動を体感するタイミングとがずれることを防いで、運転者に警報の発令を確実に認識させることが可能な車両の走行安全装置を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決して係る目的を達成するために、請求項1に記載の本発明の車両の走行安全装置は、自車進行方向に存在する物体を検知する物体検知手段(例えば、後述する実施の形態におけるレーダー装置S1)と、該物体検知手段の検知結果に基づき自車と前記物体との相対速度を算出する相対速度演算手段(例えば、後述する実施の形態における作動タイミング決定部22)と、該相対速度演算手段の演算結果に基づき前記物体と自車が接触する可能性を推定する接触可能性推定手段(例えば、後述する実施の形態においては作動タイミング決定部22が兼ねる)と、該接触可能性推定手段により接触の可能性があると推定された時、接触前の所定時期に自動的に乗員に警報する報知手段(例えば、後述する実施の形態における警報装置17)及び自車に制動力を付与する制動手段(例えば、後述する実施の形態におけるブレーキアクチュエータ12)に作動指令を送出する接触回避支援手段(例えば、後述する実施の形態における電子制御ユニットU)とを備えた車両の走行安全装置であって、前記接触回避支援手段は、前記報知手段に対する作動指令の送出(例えば、後述する実施の形態における警報作動タイミングTa)よりも所定期間(例えば、後述する実施の形態における調整時間α)以前に、前記制動手段に対する作動指令を送出送出し、前記所定期間を自車の車速に基づいて補正する補正手段(例えば、後述する実施の形態における作動タイミング調整部23)を備えることを特徴としている。
【0005】
上記構成の車両の走行安全装置によれば、例えば自車の進行方向前方に存在する物体との接触を回避するために運転者に警報を認識させるタイミングに対して、例えばブレーキアクチュエータ等の制動手段に対する作動指令のタイミングを所定期間だけ早めることで、ブレーキ油圧の昇圧に要する遅れ時間を補正することができ、運転者がブザーやランプ等の報知手段の作動を認識するタイミングと、制動手段により車両に制動力が作用したことを体感するタイミングとが、ほぼ同じタイミングとなるようにすることで、運転者に確実に警報の発令を認識させることができ、ドライバビリティーを向上させることができる。
【0006】
さらに、本発明の車両の走行安全装置は、前記所定期間は、前記作動指令の送出後における前記制動手段の制動力の立上り遅れ(例えば、後述する実施の形態における作動遅れ時間Tbon)に応じて設定されることを特徴としている。
上記構成の車両の走行安全装置によれば、制動手段に対する作動指令の送出タイミングを調整する所定期間を、例えば運転者が体感可能な制動力を発生させるための液圧までブレーキ油圧を昇圧させるのに必要な時間に設定することで、運転者に警報の発令と制動力の作用とを同時に認識させることができる。
【0007】
さらに、上記構成の車両の走行安全装置によれば、例えば自車の速度(車速)が低いときには相対的に小さな制動力であっても減速感を体感させることができ、逆に、自車の速度が高いときには相対的に大きな制動力を作用させる必要がある。すなわち、車速が相対的に低い場合には制動手段に対する作動指令の送出タイミングを調整する所定期間が小さな値となるように補正し、逆に、車速が相対的に高い場合には所定期間が大きな値となるように補正することで、運転者が警報の発令を認識するタイミングにおいて車両に作用する制動力を適正値に調整することができ、運転者に警報の発令と制動力の作用とを同時に認識させることができる。
【0008】
さらに、請求項2に記載の本発明の車両の走行安全装置では、前記補正手段は、自車の車速が高いほど前記所定期間を長く設定することを特徴としている。
上記構成の車両の走行安全装置によれば、自車の速度に応じて車体に減速度が発生する際のブレーキ油圧の立ち上がり量が変化するため、車速が高くなることにしたがって必要とされるブレーキ油圧の液圧を高く設定して、運転者が警報の発令を認識するタイミングにおいて車両に作用する制動力を大きくすることで、運転者に確実に減速感を体感させることができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態に係る車両の走行安全装置について添付図面を参照しながら説明する。図1は本発明の一実施形態に係る車両の走行安全装置10を搭載した車両Vの全体構成図であり、図2は図1に示す走行安全装置10の機能ブロック図である。
本実施の形態による車両の走行安全装置10を搭載した車両Vは、図1に示すように、エンジンEの駆動力がトランスミッションTを介して伝達される駆動輪たる左右の前輪WFR,WFLと、従動輪たる左右の後輪WRR,WRLとを備えている。
【0010】
運転者により操作されるブレーキペダル11は、本発明の車両の走行安全装置10を構成する例えば電子制御負圧ブースタをなすブレーキアクチュエータ12を介してマスタシリンダ13に接続されている。
電子制御負圧ブースタは、ブレーキペダル11の踏力を機械的に倍力してマスタシリンダ13を作動させるとともに、自動制動時にはブレーキペダル11の操作によらずに電子制御ユニットUからの信号によりマスタシリンダ13を作動させる。尚、電子制御負圧ブースタの入力ロッドはロストモーション機構を介してブレーキペダル11に接続されており、電子制御負圧ブースタが電子制御ユニットUからの信号により作動して入力ロッドが前方に移動しても、ブレーキペダル11は初期位置に留まるようになっている。
【0011】
マスタシリンダ13は圧力調整器14を介して前輪WFR,WFLおよび後輪WRR,WRLにそれぞれ設けられたブレーキキャリパ15FR,…,15RLに接続されており、圧力調整器14は車輪のロックを抑制するアンチロックブレーキ制御を行うべく、電子制御ユニットUからの信号により前輪WFR,WFLおよび後輪WRR,WRLに伝達されるブレーキ油圧を個別に制御する。
【0012】
電子制御ユニットUには、車体前方に向けてレーザーやミリ波等の電磁波を発信し、その反射波に基づいて前走車等の物体と自車との相対距離および相対速度を検出するレーダー装置S1と、前輪WFR,WFLおよび後輪WRR,WRLの回転数をそれぞれ検出する車輪速センサS2,…,S2と、車両の旋回度を検出するヨーレートセンサS3と、ブレーキ油圧を検出する液圧センサS4とが接続されている。
【0013】
電子制御ユニットUは、レーダー装置S1からの信号および各センサS2〜S4からの信号に基づいて、ブレーキアクチュエータ12および圧力調整器14の作動を制御するとともに、スピーカやランプ等からなる警報装置17の作動を制御する。
そして、図2に示すように、電子制御ユニットUは、車両軌跡推定部21と、作動タイミング決定部22と、作動タイミング調整部23と、アクチュエータ指令部24とを備えて構成されている。
【0014】
車両軌跡推定部21には、車輪速センサS2から出力される車両の速度の信号と、ヨーレートセンサS3から出力される車両の旋回度の信号とが入力されており、将来自車が進行するであろう軌跡を推定する。
作動タイミング決定部22は、レーダー装置S1にて検出された、例えば前走車等の物体と自車との相対距離及び相対速度と、自車の速度及び車両軌跡推定部21での推定結果とに基づいて接触の可能性を推定して、ブレーキアクチュエータ12及び警報装置17の作動タイミングを決定する。
作動タイミング調整部23は、例えばブザーやランプ等の警報装置17の作動と、自車に作用する減速力とを、運転者がほぼ同時に体感するように、ブレーキアクチュエータ12に対する作動指令の送出タイミングを、例えばブレーキアクチュエータ12のブレーキ油圧の昇圧能力や自車の速度V0等に応じて調整する。
アクチュエータ指令部24は、作動タイミング調整部23にて算出されたタイミングに応じてブレーキアクチュエータ12に作動指令を送出する。
【0015】
本実施の形態による車両の走行安全装置10は上記構成を備えており、次に、この車両の走行安全装置10の動作について添付図面を参照しながら説明する。
図3は車両の走行安全装置10の動作を示すフローチャートであり、図4はブレーキアクチュエータ12のブレーキ油圧の変化を示すグラフ図であり、図5は自車の速度V0と調整時間αとの関係を示すグラフ図である。
【0016】
先ず、図3に示すステップS01においては、警報作動タイミングTaを算出する。この警報作動タイミングTaは前走車等の物体と自車とが接触する予測時刻から逆算してTa時間だけ以前の時刻として設定され、運転者に警報を認識させるタイミングである。
そして、以下においては、ステップS02以下の処理と平行して独立にステップS04以下の処理を行う。
先ず、ステップS02においては、例えばブザーやランプ等からなる警報装置17に作動指令を出力するタイミングTabuzzに、警報作動タイミングTaを設定する。そして、ステップS03においては、ブザー又はランプ等からなる警報装置17を作動させて、一連の処理を終了する。
この場合は、警報装置17に作動指令が出力された直後に、実際にブザーが鳴ったり、ランプが点灯して運転者に警報が認識される。
【0017】
一方、ステップS04においては、マスタシリンダ13のブレーキ油圧に予圧もしくは残圧があるか否かを判定する。この判定結果が「NO」の場合には、ステップS05に進み、警報作動タイミングTaに対する調整時間αに、後述するブレーキアクチュエータ12の作動遅れ時間Tbonをセットする。
一方、判定結果が「YES」の場合には、ステップS06に進み、警報作動タイミングTaに対する調整時間αに、ブレーキアクチュエータ12の作動遅れ時間Tbonよりも小さな所定値をセットする。
ここで、ブレーキアクチュエータ12の作動遅れ時間Tbonとは、例えば図4に示すように、ブレーキアクチュエータ12に対する作動信号が入力されてからマスタシリンダ13のブレーキ油圧が所定の液圧P1、つまり運転者が車両の減速を体感するために必要とされる液圧に到達するまでに要する時間であって、例えば約0.1秒程度とされている。
【0018】
次に、ステップS07においては、警報作動タイミングTaから調整時間αを減算して得た値を、ブレーキアクチュエータ12に作動指令を出力するタイミングTabrkにセットする。
ここで、調整時間αは、例えばブレーキアクチュエータ12の昇圧能力等に応じて設定され、例えば図5に示すように、自車の速度V0に応じて可変とされており、自車の速度V0が所定速度を超えて高くなるほど大きくなるように設定されている。この場合、車両の速度V0が高くなっても制動力(つまり減速度)が大きく設定されることで、運転者が車両の減速を確実に体感できるようにされている。
そして、ステップS08においては、設定されたタイミングTabrkに作動指令を出力してブレーキアクチュエータ12を作動させて、一連の処理を終了する。
【0019】
上述したように、本実施の形態による車両の走行安全装置10によれば、車両の進行方向に存在する物体との接触が生じる予測時刻から逆算して、ブレーキアクチュエータ12に対する作動指令を出力するタイミングを、警報装置17に対する作動指令を出力するタイミングよりも、調整時間αだけ早くなるように設定することで、運転者が警報装置17の作動を認識するタイミングと、運転者が車両の減速を体感するタイミングとを、ほぼ同じタイミングとすることができ、運転者が警報の発令を誤認識等することを防止すると共に、ドライバビリティーを向上させることができる。
【0020】
なお、本実施形態においては、ブレーキアクチュエータ12に対する作動指令を出力するタイミング調整するとしたが、これに限定されず、例えばブレーキ加圧用モータやブレーキ加圧用ソレノイド等に対する作動指令の出力タイミングを調整しても良い。
【0021】
なお、ブレーキ油圧の判定においては、例えば液圧センサS4等により直接にブレーキ油圧を検出しても良いし、或いは、液圧センサS4を省略して、ブレーキが作動したことを示す情報、例えばブレーキランプのスイッチのオン/オフ等を検出して、ブレーキ作動後の経過時間が所定時間以内であればマスタシリンダ13のブレーキ油圧に所定の予圧又は残圧が残っていると判断しても良い。
また、警報作動タイミングやブレーキアクチュエータ12の作動タイミングを時間に基づいて調整するようにしたが、前走車等の物体と自車とが接触する位置や時刻を作動タイミング決定部22にて推定し、これと相対速度とに基づいて接触すると推定された位置や時刻を基準にして、これらの基準の位置や時刻に到達するまでの距離によって調整するようにしても良い。
【0022】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1に記載の本発明の車両の走行安全装置によれば、自車の進行方向前方に存在する物体との接触を回避するために運転者に警報を認識させるタイミングに対して、制動手段に対する作動指令のタイミングを所定期間だけ早めることで、運転者がブザーやランプ等の報知手段の作動を認識するタイミングと、制動手段により車両に制動力が作用したことを体感するタイミングとを、ほぼ同じタイミングとすることができ、運転者に確実に警報の発令を認識させることができ、ドライバビリティーを向上させることができる。
さらに、本発明の車両の走行安全装置によれば、制動手段に対する作動指令の送出タイミングを調整する所定期間を、運転者が体感可能な制動力を発生させるための液圧までブレーキ油圧を昇圧させるのに必要な期間に設定することで、運転者に警報の発令と制動力の作用とを同時に認識させることができる。
【0023】
さらに、請求項1に記載の本発明の車両の走行安全装置によれば、車速が相対的に低い場合には制動手段に対する作動指令の送出タイミングを調整する所定期間が小さな値となるように補正し、逆に、車速が相対的に高い場合には所定期間が大きな値となるように補正することで、運転者が警報の発令を認識するタイミングにおいて車両に付与する制動力を適正値に調整することができ、運転者に警報の発令と制動力の作用とを同時に認識させることができる。
さらに、請求項2に記載の本発明の車両の走行安全装置によれば、車速が高くなることにしたがって必要とされるブレーキ油圧の液圧を高く設定して、運転者が警報の発令を認識するタイミングにおいて車両に作用する制動力を大きくすることで、運転者に確実に減速感を体感させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態に係る車両の走行安全装置を搭載した車両Vの全体構成図である。
【図2】 図1に示す車両の走行安全装置の機能ブロック図である。
【図3】 図1に示す車両の走行安全装置の動作を示すフローチャートである。
【図4】 ブレーキアクチュエータのブレーキ油圧の変化を示すグラフ図である。
【図5】 自車の速度V0と調整時間αとの関係を示すグラフ図である。
【符号の説明】
10 車両の走行安全装置
12 ブレーキアクチュエータ(制動手段)
17 警報装置(報知手段)
22 作動タイミング決定部(相対速度演算手段、接触可能性推定手段)
23 作動タイミング調整部(補正手段)
S1 レーダー装置(物体検知手段)
U 電子制御ユニット(接触回避支援手段)
Claims (2)
- 自車進行方向に存在する物体を検知する物体検知手段と、
該物体検知手段の検知結果に基づき自車と前記物体との相対速度を算出する相対速度演算手段と、
該相対速度演算手段の演算結果に基づき前記物体と自車が接触する可能性を推定する接触可能性推定手段と、
該接触可能性推定手段により接触の可能性があると推定された時、接触前の所定時期に自動的に乗員に警報する報知手段及び自車に制動力を付与する制動手段に作動指令を送出する接触回避支援手段とを備えた車両の走行安全装置であって、
前記接触回避支援手段は、前記報知手段に対する作動指令の送出よりも所定期間以前に、前記制動手段に対する作動指令を送出し、前記所定期間を自車の車速に基づいて補正する補正手段を備えることを特徴とする車両の走行安全装置。 - 前記補正手段は、自車の車速が高いほど前記所定期間を長く設定することを特徴とする請求項1に記載の車両の走行安全装置。
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