JP3766640B2 - Pc鋼より線 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、PC鋼より線に関するものである。特に、コンクリートやグラウトとの付着力を高めたPC鋼より線に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のPC鋼より線は、素線の数により、7本よりPC鋼より線や、19本よりPC鋼より線が知られている。これらは、表面が平滑な素線を所定本数撚り合わせて構成されている。コンクリートやグラウトにPC鋼より線を埋設したとき、より目にコンクリートなどがつまる。これにより、プレテンション部材の場合、PC鋼より線の緊張力を解放したときの滑り込みに対して抵抗し、アンカーの場合、PC鋼より線の緊張による引き抜きに対して抵抗する。その結果、通常、撚り合わせていない丸線のPC鋼線に比べて高い付着力が得られる。
【0003】
このPC鋼より線の付着力は、一般により目の中に入ったコンクリートなどによる引き抜き方向または滑り込み方向に対する機械的な抵抗と、素線表面とコンクリートとの接着力によるものである。
【0004】
この付着力を向上させるPC鋼より線としては、いわゆるインデントPC鋼より線がある。これは、例えばプレテンション部材であるコンクリート枕木などに用いられ、素線の表面に丸いくぼみを持ったインデントと呼ばれる加工が施されている。このインデントにより、平滑な丸線を素線とするPC鋼より線よりもさらに高い付着力を得ることができる。
【0005】
その他にPC鋼より線の付着力を挙げる方法として、PC鋼より線を構成している素線の表面に鉄筋のように不連続な突起を設けることが知られている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記のいずれの従来技術でも、なお十分な付着力が得られないことがある。
【0007】
インデントPC鋼より線は、通常の平滑な丸線に比べて付着力を向上させることに有効である。ところが、インデントによるくぼみは、比較的深さが浅く、かつ丸みを帯びた形状のものが不連続に設けられている。そのため、PC鋼より線が太径になるに従って、表面積の増加率以上に断面積の増加率が大きく、その比率で破断荷重も大きくなる。その結果、太いPC鋼より線になるとPC鋼より線の滑り込みや引き抜きに対して、必ずしも期待するほどの付着力が得られないことがある。
【0008】
一方、PC鋼より線を発錆させる方法は、定量的に付着力を上げる方法ではない。また、本来、プレストレストコンクリート用PC鋼より線は、腐食はもちろんのこと、錆びさせることは構造物を長期にわたって維持するためにあまりよい方法とは言えない。
【0009】
従って、本発明の主目的は、コンクリートやグラウトとの付着力を高めることができるPC鋼より線を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、素線に螺旋状の溝を設けることで上記の目的を達成する。
【0011】
すなわち、本発明PC鋼より線は、複数の側線が中心線の外側により合わされたPC鋼より線であって、前記側線の表面に連続的な螺旋溝を有することを特徴とする。
【0012】
側線表面に連続的な螺旋溝を形成することで、PC鋼より線の引き抜きや滑り込みに対する抵抗として作用し、コンクリートやグラウトなどとの付着力向上を実現することができる。
【0013】
以下、本発明をより詳しく説明する。
(螺旋溝の方向)
螺旋溝の方向は、素線の軸方向に対してSより、Zよりのどちらの傾きを持ったものでも良い。すなわち、図5に示すように、素線(側線11)の軸方向Aに対する螺旋溝20の傾き方向が右下がり(Sより)、左下がり(Zより)のいずれでも良い。このような螺旋溝付き素線を撚り合わせてPC鋼より線100を構成した場合、PC鋼より線100の軸方向Bに対する螺旋溝20の角度は種々のものが考えられる。
【0014】
PC鋼より線を例えばコンクリート工学会で定められるコンクリートとの付着試験方法(コンクリート工学ハンドブック-1981)に準拠してPC鋼より線の引き抜きを行うと、PC鋼より線とコンクリートとの付着が切れ、PC鋼より線が移動し始める。その際、PC鋼より線の引き抜き方向に対して機械的に抵抗するような螺旋状の溝が形成されていると、引き抜きに対して抵抗となる。すなわち、PC鋼より線の軸方向に対して、より直角方向に近い螺旋溝となっていれば大きな抵抗が働き、大きな付着力が得られる。これは不連続に丸みを帯びたへこみであるインデントによる抵抗よりもかなり大きいものになる。
【0015】
この考えに基づけば、この引き抜き方向に対して螺旋溝の方向がPC鋼より線の軸方向と同じ方向になれば、引き抜き方向に対する抵抗がなくなり、付着力が上がることが期待できないとも推測される。
【0016】
しかし、PC鋼より線の軸方向に対して螺旋溝方向が同じであっても、螺旋溝のないPC鋼より線に比べて付着力が大きくなることが判明した。これは、前記引き抜き試験を行ったとき、PC鋼より線はよりが解ける方向に回転しながら引き抜けるため、この回転方向に対して機械的に抵抗するような螺旋溝を形成すれば付着力の向上が図れるのである。
【0017】
従って、螺旋状の連続した溝を持った凹部加工が存在すれば、その方向がどのようになっていてもPC鋼より線の引き抜きに対して抵抗するように働き、付着力が向上することになる。つまり、図6に示すように、PC鋼より線100の軸方向Bに沿った螺旋溝20を設けてもかまわない。図6では、側線11の軸方向に直交する線200と側線11の軸方向に対して90/4度の角度を持つ線210を破線で示している。
【0018】
一般に、素線軸方向に対して螺旋溝の傾きが大きくなる(直角に近くなる)ほど、すなわちピッチが小さくなるほどPC鋼より線の引き抜き方向に対してはより機械的な抵抗が大きくなる。一方、この螺旋溝加工は素線の伸線の最後に冷間で加工するため、加工上はピッチを大きくした方が良い。実用的には、コンクリートなどとの付着力を向上させるために、PC鋼より線の引き抜き時、機械的な抵抗を増やすように螺旋溝を加工すると良い。
【0019】
通常、PC鋼より線の場合、よりピッチはPC鋼より線径の12〜18倍とJIS G 3536で規定されており、そのときのより角は約10〜14度程度である。この場合、伸線加工での生産性を考えれば、螺旋溝の角度は素線の軸方向に対して90/4度程度以内とすることが好ましい。
【0020】
(螺旋溝の幅)
螺旋溝の幅は、素線径にもよるが、1.5〜3.0mm程度が好ましい。あまり溝幅を大きくすると、引き抜きに機械的に抵抗する凹凸が少なくなる。その上、付着力を増やすために、溝の深さを深くする必要があり、素線に対する加工度が大きくなって所定の引張荷重を確保することが難しくなるためである。また、溝幅を小さくすることにより、溝の数を増やすことができれば、機械的に抵抗する凹凸の数を多くすることができる。
【0021】
(螺旋溝の深さ)
螺旋溝の深さは、溝の幅にもよるが、従来のPC鋼より線のインデントの深さが素線径の4〜5%程度であるので、それと同程度の深さとすることが好ましい。例えば、15.2mm(側線径5mm)のPC鋼より線であれば、約0.20〜0.25mm程度の溝深さとする。また、12.7mm(側線径4.2mm)のPC鋼より線であれば、約0.15〜0.20mm程度の溝深さとする。
【0022】
これ以上の深さの溝とすることも可能であるが、深い溝加工により断面積が減少して荷重低下を引き起こすため、素線径を大きくする必要がでてくる。そのため、従来PC鋼より線に比べて外径が大きくなり、PC鋼より線を緊張定着するときに用いる定着具も従来の定着具とでは適正な組み合わせができなくなって品質上好ましくない。一方、素線径を大きくしたPC鋼より線に適合させるにはサイズの大きい特殊な定着具を用いる必要がある。
【0023】
(螺旋溝の形成方法)
螺旋溝は、伸線加工で素線を得る際に、最終ダイスを通った後、冷間にて素線にダイスで加工する。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
ここでは、JIS G 3536で規定されている15.2mmのPC鋼より線を例に説明する。このPC鋼より線は、図1に示すように、5.25mm径の1本の中心線10外周に5.05mm径の6本の側線11をより合わせた構成である。
【0025】
この側線11の表面に断面が半楕円形の螺旋溝20を複数形成する。ここでは、図2(A)に示すように、5本の螺旋溝20を形成した側線11と、同(B)に示すように、8本の螺旋溝20を形成した側線11とを用いる。溝20の幅は、(A)図の側線では1.8mm、(B)図の側線では1.7mmとした。溝20の深さは(A)図の側線では0.22mm、(B)図の側線では0.25mmとした。螺旋溝20の素線の軸方向に対する角度は12度、素線のより角は12度である。この螺旋溝20は、素線をより合わせた状態で、PC鋼より線の軸方向に対して平行となるように形成される。
【0026】
この材料をコンクリート工学会の付着試験方法で付着力を測定した。この試験方法は、図3に示すように、貫通孔31を有するプレート30にPC鋼より線40を貫通させ、プレート30の背後にPC鋼より線40の周囲を取り囲む螺旋筋50を配置し、コンクリート60を打設する。コンクリートの寸法は、200mm×200mm×200mmである。ここでは引き抜き試験時のコンクリート強度を2680N/cm2とした。そして、0.025mm自由端滑り時の応力と、最大引き抜き応力とを測定した。
【0027】
さらに、PC鋼より線の滑り込み試験も行った。その試験装置を図4に示す。反力用鋼製フレーム70にPC鋼より線40を配置し、PC鋼より線40の両端部に鋼製フレーム71を配置して、PC鋼撚り線の一端にはプルロッド72をカップラーで接続する。このPC鋼より線40の一端側に定着具73を、他端側にジャッキ74を配置して、所定の張力で緊張する。続いてPC鋼より線40の周囲にコンクリート60を打設してコンクリート構造物を形成する。コンクリート構造物の寸法は、20mm×20mm×4000mmである。そして、ジャッキの緊張を開放し、付着伝達長を求める。
【0028】
いずれの試験においても、比較材料として、通常の15.2mmのPC鋼より線(JISG3536PC鋼より線)と、このPC鋼より線の側線に深さ0.25mm、ピッチ6.0mmの凹状インデントを加工したもの(インデントPC鋼より線)を用いた。このインデントは鋼線の円周上対称な位置にある。また、インデントの大きさは、軸方向2.7mm、円周方向2.4mmの大きさである。
【0029】
これらの材料の付着試験結果および滑り込み試験結果を表1に示す。表1において、「実施例1」は図2(A)に記載のPC鋼より線、「実施例2」は図2(B)に記載のPC鋼より線である。表1からわかるように、螺旋状の溝を形成したPC鋼より線は、通常のPC鋼より線はもとより、インデント加工したPC鋼より線よりもコンクリートとの付着力が高いことがわかる。
【0030】
【表1】
Figure 0003766640
【0031】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、PC鋼より線の素線に螺旋溝を形成することで、PC鋼より線とコンクリート等との付着力を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】7本よりPC鋼より線の断面図である。
【図2】 (A)は5本の螺旋溝を設けた本発明PC鋼より線に用いる側線の断面図、(B)は8本の螺旋溝を設けた本発明PC鋼より線に用いる側線の断面図である。
【図3】付着試験方法の説明図である。
【図4】滑り込み試験装置の説明図である。
【図5】螺旋溝の方向を示す説明図である。
【図6】本発明PC鋼より線における螺旋溝の概略説明図である。
【符号の説明】
10 中心線
11 側線
20 螺旋溝
30 プレート
40 PC鋼より線
50 螺旋筋
60 コンクリート
70 反力用鋼製フレーム
71 鋼製フレーム
72 プルロッド
73 定着具
74 ジャッキ
100 PC鋼より線
200 側線軸方向との直交線
210 側線軸方向との45度線

Claims (2)

  1. 複数の側線が中心線の外側により合わされたPC鋼より線であって、
    前記側線の表面に、コンクリートまたはグラウトとの付着力を高めるための連続的な螺旋溝を有することを特徴とするPC鋼より線。
  2. 前記螺旋溝は、側線の軸方向に対して90/4度以内の角度となるように形成されていることを特徴とする請求項1に記載のPC鋼より線。
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