JP3765804B2 - 吸音板取外し治具 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、高架道路の下面等に設置される吸音板の取外し治具に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
都市部では、土地の使用にきわめて深刻な制約が課せられ、如何に有効に限られた土地を利用するかということが、きわめて大きな命題でもあり、図1に示すように、高速道路R1 と一般道路R2 とを併設して交通渋滞の課題を効果的に解決するケースが多い。
【0003】
この道路構造では、下段の一般道路R2 を通過する車両から発生した音波は直上へも伝播して、高速道路R1 の高架構造の裏面(背面部)にも到達する。このとき、周知のとおり、音波は空気の粗密を伴った波動であるから、他の波動と同様に障害物に衝突すれば規則的な角度を以って反射するため、その到達音波は、高架構造裏面に反射し、その反射波は一般道路R2 の側壁W2 の上部を越えて道路に沿った住宅、建物などへ伝播する性質がそのままに現れる。この現象は交通量が多くなれば道路周辺の住民を耐え難い騒音の環境に陥れる可能性があり、現実に数多くの個所で指摘されている。
【0004】
このような交通環境の下、上記併設道路においては、上段の高速道路R1 の側面に防音壁W1 を立設すると共に、下段の一般道路R2 の側面にも防音壁W2 を立設して車両通過時に発生する騒音の伝播を側面で遮断するのみならず、高速道路R1 の裏面にも防音壁(反射阻止壁)W3 を設けて、高架構造物裏面からの音響反射波を遮断乃至は吸収し、高速道路網の周辺住民に対して及ぼす騒音公害が極力少なくなるようにしている。
【0005】
その防音壁(吸音壁)W1 、W2 、W3 (以下、W)の基本構成は、偏平箱内にグラスウールなどからなる吸音層を形成し、その箱開口面をパンチングメタルなどの金属多孔板製ケーシング内に収めたものであり、吸音層内で、音のエネルギーを摩擦などによって熱エネルギーに変えて吸音する。
【0006】
その高架道路下面の吸音板の取付けは、この発明の一実施例を示す図1、図2を参照して説明すると、高架道路の橋梁(I桁Hなど)に所要の間隔をおいて取付梁1を設置し、その相対する取付梁1のフランジ2間に吸音板10を取付梁1の長さ方向並列にボルト止めするのが一般的である。その際、吸音板10の両端には、一般に、フランジ2に係止するフック14が設けられており、けんどん(倹飩)式に吸音板10を左右に動かして、その両フック14をフランジ2に係止して吸音板10を仮置きし、その後、ボルト・ナット13等により吸音板10をフランジ2に固定する。
【0007】
一方、吸音板10は、上述のように吸音層をケーシング内に収めたものであり、横:2000mm、縦:300mm、高さ:100mm、重さ:10kg程度である。
【0008】
この長く重い吸音板10を取付ける際には、人がその吸音板10を持って梁1に仮置きすることとなるが、そのけんどん式の動きは、左右の動きであって、数人で行わねばならず、また、高所でもあるため、その作業は煩わしく、さらに危険でもある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
このため、従来から、例えば、特開平9−165721号公報、特開平9−165722号公報、及び特開平10−183538号公報等に示される、種々の吸音板10の取付工法が提案されている。
【0010】
しかしながら、それらの従来の技術は、例えば、図1に示す、鋼製橋梁のように、床版Dを支えるI桁Hがあって、そのI桁Hが高くて、その床版Dと吸音板10の間隙S1 が広く、その間に、作業者が入れる程の空間が必要である。このため、図6に示す、PC橋(プレストレスコンクリート橋)においては、通常、I桁Hを設けないため、床版Dと吸音板10との間隙S2 が狭く、その間に作業者が入ることができず、従来技術では、吸音板の取付が不可能である。さらに、いずれも構造が複雑であるうえに、取扱い性も悪く、作業性が悪い。
【0011】
この発明は、上記実情の下、取扱いが簡単で作業性をよくするとともに、床版Dと吸音板10の隙間が狭くても、着脱が容易にすることを課題とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記課題を達成するために、この発明は、ばね板であれば、押え込みにつれて撓み、やがてその押え込まれている部材を乗り越えることに着目し、上記フックをばね板としたのである。ばね板であれば、フランジへの押え込みによって撓み、やがて乗り越えてフランジに係止するからである。両フックともばね板であることが好ましいが、一方のみでもよい。すなわち、両方ともにばね板であれば、両フックを同時に撓ませてフランジに係止し得るが、一方のみがばね板であれば、吸音板を傾め上方に移動させて、他方のフックをフランジに係止した後、ばね板製フックを押し込みによりフランジに係止し得るからである。
【0013】
【発明の実施の形態】
この発明の実施形態としては、所定間隔をおいて設置された取付梁の間に吸音板を取り付けるにあたり、前記吸音板の両端に突出するフックを設けて、その両フックを相対する取付梁のフランジに係止して吸音板を仮置きした後、その吸音板を取付梁に固定する吸音板の取付工法において、前記両フックの少なくとも一方をばね板により形成し、そのばね板製フックを取付梁のフランジに係止するとき、吸音板の押し上げにつれて、そのフックを、前記フランジに当接するとともに下方に撓ませ、やがてフランジを乗り越えさせてそのフランジに係止する構成を採用し得る。
【0014】
その取付工法をなし得る吸音板としては、その両端に上記フックを有して、その少なくとも一方がばね板から成る構成を採用でき、このとき、前記両フックの先端間を、上記相対する取付梁の一方のフランジの先端から他方のフランジの基部までの間隔より広くすれば、地震等により吸音板をフランジに固定するボルトが外れて、吸音板が動いても、フックがフランジから外れることがなく、吸音板が落下することがない。また、ばね板製フックに吸音板下面に至る引き下げ具を設ければ、吸音板を取外す際、その引き下げ具でもってフックをフランジから外し易く、その取外し作業が容易となる。
【0015】
吸音板を取外すには、上記引き下げ具による以外の手段も考えられ、要は、上述の取付けと逆作用、すなわち、吸音板を押し上げ、ばね板製フックを撓ませて取付梁のフランジから外せばよく、そのフックの撓ませ治具(取外し治具)としては、例えば、中杆の両端に側杆を設けたコ字状を成し、その中杆は並列された各吸音板の間隙間の長さを有し、その中杆が吸音板の幅方向全長に亘って前記側杆が前記各吸音板の間隙に挿通可能となっており、かつ、一方の側杆は他方の側杆の長さ分その他方の側杆より長くなっている構成のものを採用し得る。
【0016】
この治具の使用方法は、隣り合う吸音板の間隙を通して下方から突き上げ、その後、90度回転させ、つぎに、吸音板の端面に移動させてその間隙に中杆を落としてフックに係止し、さらに押し下げてフックを取付梁のフランジ側縁から外し、その状態で、吸音板を引き下げて取付梁から外す。
【0017】
このとき、上記中杆を平板とし、その平板は、上記ばね板製フックの下端が当接した状態で、上記側杆を上記取付梁1のフランジ側縁に当てて下方に回転し、前記フックを取付梁1のフランジ側縁より外側に位置してもそのフックの下縁が平板から外れない幅を有するものとすれば、てこ作用によって、フックの撓み作用を行え、吸音板の取外し作業がより容易となる。
【0018】
因みに、上記取外し治具は両側杆を持って中杆によりフックを押し下げ得るが、一方の側杆のみを持って押し下げ得れば、他方の側杆は省略し得る。すなわち、L字状の取外し治具とし得る。このとき、一方の側杆には柄を設けて持ち易くするとよい。
【0019】
【実施例】
一実施例を図1〜5に示し、高速道路橋の裏面に設けて防音壁W3 を構築するものであって、まず、橋脚間のI桁Hの長さ方向の適宜位置に横梁5を設け、その横梁5下面に縦梁6を適宜に設け、さらに、その縦梁6に、適宜間隔で、吸音板10の取付用横梁1を設ける。一方、吸音板10は、従来と同様に、多孔ケーシング内に吸音材を収めたものであり、図3に示すように、両端下部が突出して取付部11となっている。この取付部11の取付孔12にボルト13を通し、フランジ2にナット止めすることにより、フランジ2に吸音板10を固定して取付ける。このとき、取付部11の突出長さを適宜に設定することにより、各吸音板10の長さ方向の隙間(間隙)t1 を幅方向の隙間t2 と同じ程度にして調和させ、下方から見た美感を好ましいものとする。
【0020】
吸音板10の両端の取付部11上方には下向き傾斜のばね板製のフック14がビス止め又はリベット止めされており、図5に示すように、この両フック14、14の先端間aは、両フランジ2、2間Lより広く設定されている。このことにより、同図実線のごとく、吸音板10はフランジ2、2間に仮置きし得る。なお、一方のフランジ2の先端から他のフランジ2の根元(基部)までの距離L'よりフック先端間aを広くすれば、地震等によりボルト止めが外れて、吸音板10が鎖線のごとく左右に動いても、フック14、14はフランジ2、2に係止しつつ、吸音板10は落下することはない。
【0021】
この吸音板10の構成は以上のとおりであり、図4(a)から同(d)に示すように、吸音板10を持ち上げ、両フック14を相対するフランジ2に押し当てそのフランジ2により押し下げてやがて乗り越えさせて係止して吸音板10を仮置きする。この後、ボルト・ナット13により取付孔12を介して吸音板10をフランジ2に固定する。この作業を繰り返して、図2に示す、吸音壁を構成する。
【0022】
この吸音壁において、一部の吸音板10を取替える場合、床版Dと吸音板10とに十分な間隙S1 があって、その間隙S1 に作業者が入ることができれば、その間隙S1 に入り、吸音板10を持ち上げた状態で、フック14を下方に撓ませてフランジ2を越えさせて吸音板10を外す(図8参照)。取外し後、上述と同様な作用により、新たな吸音板10を取付ける。
【0023】
一方、 図6に示す、PC橋のように、床版Dと吸音板10の間隙S2 が狭いものにおいて、吸音板10を取替える場合には、例えば、図7、図9に示す、取外し治具20により、吸音板10の下方からフック14を下方に撓ませて、フランジ2を乗り越えさせる。すなわち、この取外し治具20は、中杆20aの両端に側杆20b、20cを設けたコ字状のものであって、その中杆20aは並列された各吸音板10の間隙t2 間の長さL1 を有して、その中杆20aが吸音板10の幅方向全長に亘ったとき、両側杆20b、20cが各吸音板10の間隙t2 に挿通するようになっている(図7(b)参照)。また、一方の側杆20cは他方の側杆20bの長さL2 分その他方の側杆20bより長くなって、その他方の側杆20bが前記間隙t2 から吸音板10上に完全に突出しても、一方の側杆20bの下端は吸音板10の下方にあるようになっている(図7(a)参照)。これにより、この治具20を他方の側杆20bを吸音板10の間隙t2 から突き上げた状態で回転し得る。
【0024】
また、図9に示す治具20は、その中杆20aが平板から成り、その平板20aは、ばね板製フック14の下端が当接した状態で、上記側杆20b、20cを上記取付梁1のフランジ2側縁に当てて下方に回転し、前記フック14を取付梁1のフランジ2側縁より外側に位置させてもそのフック14の下縁が平板20aから外れない幅L3 を有するようになっている。このとき、同図(b)に示すように、平板20aには取付梁1のフランジ2に固着のナット13'を避ける切欠20dを形成するとよい。ナット13'は、溶接によってフランジ2に固着し得るが、同図(e)のごとく、クリップ13aに溶接したものとし、そのクリップ13aをフランジ2に嵌めることにより、フランジ2に固着する(取付ける)ようにしてもよい。このナット13'にボルト13がねじ込まれて吸音板10が取付けられる。
【0025】
そして、図7に示す治具20にあっては、同図(a)に示すように、この治具20を隣り合う吸音板10の間隙t2 を通して下方から突き上げ、同図鎖線のごとく90度回して、同図(b)のごとく押し下げる。このとき、図8(b)のように吸音板10を持ち上げて、その治具20の押し下げにより、フック14を下方に撓ませてフランジ2を越えさせて吸音板10を外す(同図(c))。
【0026】
また、 図9に示す治具20にあっては、同様に、吸音板10の間隙t2 を通して下方から突き上げ、90度回して中杆20aをフック14に当てた後(図10(a))、吸音板10上を持ち上げ、治具20を下方に引いて、中杆20a上にフック14の下縁を当て(同図(b))、同図(c)から(d)のごとく、治具20を下方に回すと、フック14が後方に撓んでフック14の下縁が取付梁1のフランジ2から退去し、この状態で、吸音板10を下降させて外す。このとき、図10に示すように、中杆(平板)20aの下縁を断面くさび状とすれば、フック14の中杆20a上への乗り上げ(同図(b))がスムースである。
【0027】
なお、この治具20による取外し時、間隙t2 が狭い場合には、取外す吸音板10の両隣りの吸音板10の固定ボルト13を外し、その両吸音板10を側方に動かして、その間隙t2 を広くする。また、一方の側杆20cには柄を設けることができる。
【0028】
フック14の他の撓ませによる取外し手段としては、例えば、図11に示すように、フック14に吸音板10の孔21aを通って下面に至る、紐、チェーンなどの引き下げ具21を予め設けておき、図12(a)、(b)、(c)のごとく、その引き下げ具21によりフック14を下方に撓ませてフランジ2から外すようにすることもできる。引き下げ具21は両フック14に設けることが好ましいが、一方のみでもよい。
【0029】
【発明の効果】
この発明は、以上のように、フックをばね板とし、その弾性でもってフックをフランジに係止して吸音板の仮置きを行い得るようにしたので、その作業が容易である。
【図面の簡単な説明】
【図1】一実施例による吸音壁の設置概略図
【図2】同実施例の設置状態要部斜視図
【図3】同実施例の吸音板の斜視図
【図4(a)】同実施例の取付作用図
【図4(b)】同実施例の取付作用図
【図4(c)】同実施例の取付作用図
【図4(d)】同実施例の取付作用図
【図5】同実施例の作用図
【図6】同実施例による吸音板の他の設置概略図
【図7】他の実施例の作用斜視図
【図8】同実施例の作用図
【図9】取外し治具の各例を示す斜視図
【図10】同治具による吸音板の取外し作用図
【図11】他の実施例の要部斜視図
【図12】同実施例の作用図
【符号の説明】
H I桁
1 取付梁
2 フランジ
10 吸音板
11 吸音板端部補強部
12 取付孔
13 ボルト・ナット
14 フック
20 取外し治具
20a 取外し治具の中杆
20b、20c 取外し治具の側杆
21 引き下げ具(チェーン)
Claims (2)
- 所定間隔をおいて設置された取付梁1、1の間に、吸音板10をその両端から突出するフック14、14を両取付梁1のフランジ2の上面に係止させて取付梁1の長さ方向並列に取り付けるに際し、その吸音板10両端のフック14、14の少なくとも一方をばね板により形成し、そのばね板製フック14を取付梁1のフランジ2に係止するとき、吸音板10の押し上げにつれて、そのフック14を、前記フランジ2に当接するとともに下方に撓ませ、やがてフランジ2を乗り越えさせてそのフランジ2に係止させた吸音板取付構造において、その吸音板10を取付梁1から取外す治具20であって、
中杆20aの両端に側杆20b、20cを設けたコ字状を成し、その中杆20aは並列された各吸音板10の間隙t2 間の長さL1 を有し、その中杆20aが吸音板10の幅方向全長に亘って前記側杆20b、20cが前記各吸音板10の間隙t2 に挿通可能となっており、かつ、一方の側杆20cは他方の側杆20bの長さL2 分その他方の側杆20bより長くなっていることを特徴とする吸音板取外し治具。 - 上記中杆20aは平板から成り、その平板20aは、上記ばね板製フック14の下端が当接した状態で、上記側杆20b、20cを上記取付梁1のフランジ2側縁に当てて下方に回転し、前記フック14を取付梁1のフランジ2側縁より外側に位置させてもそのフック14の下縁が平板20aから外れない幅L3 を有することを特徴とする請求項1に記載の吸音板取外し治具。
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