JP3765766B2 - サーマルヘッド - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、記録紙表面の光沢を損なうことなく熱記録を行うことが可能なサーマルヘッドに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
サーマルヘッドは、アルミナやセラミックの素材からなるヘッド基板上にグレーズ層が設けられ、その上に設けられた発熱素子と電極とが保護膜で覆われて構成されている。サーマルヘッドのグレーズ層は、ヘッド基板上で平坦に設けられた全面グレーズ層と、シリンドリカル状に突出した部分グレーズ層とに大別される。
【0003】
カラー感熱プリンタは、カラー感熱記録紙を移動させながらサーマルヘッドで加熱してフルカラー画像を発色記録する。カラー感熱記録紙は、支持体上にシアン感熱発色層、マゼンタ感熱発色層、イエロー感熱発色層が順に形成されており、イエロー感熱発色層の上には透明な保護層が設けられている。この保護層は感熱発色層を保護するとともに記録紙表面に光沢を与えてプリント画質を高める役割を果たしている。
【0004】
カラー感熱プリンタは、上層にあるイエロー感熱発色層から記録を行い、次にマゼンタ感熱発色層、その次に最下層のシアン感熱発色層を記録することで、イエロー画像、マゼンタ画像、シアン画像を面順次式にプリントする。このとき、イエロー画像の記録に必要な熱量は最も小さく、シアン画像の記録に必要な熱量が最も大きい。また、イエロー画像とマゼンタ画像の記録後にはそれぞれ発光ピークが420nmと、365nmの紫外線が照射され、イエロー画像とマゼンタ画像が光定着される。
【0005】
搬送中のカラー感熱記録紙に画像を記録する際には、シリンドリカル状に突出した部分グレーズ層によってカラー感熱記録紙に発熱素子を押し付けている。このため、サーマルヘッドの保護膜表面は、カラー感熱記録紙との摩擦を抑えるために滑らかに仕上げられている。カラー感熱記録紙は部分グレーズ層の頂点を通り抜けてから、サーマルヘッドから剥がれるようにして下流へ送られていく。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
カラー感熱記録紙が高温に加熱される時、特にシアン画像の熱記録時には、記録紙の保護層が加熱によって軟化する。保護層が軟化した状態ではカラー感熱記録紙がサーマルヘッドから離れるときに、保護層の一部がヘッド下流の保護膜上に付着したまま剥げ落ちたり、保護層に毛羽立ちが生じて記録紙表面に不規則で微細な凹凸が形成される。この凹凸は記録紙表面の光沢度を低下させ、プリント画像の見栄えを劣化させる。
【0007】
従来では、記録紙のプリント面に平滑なシートを重ねて熱を与えながら加圧する光沢処理装置を用い、プリント処理後の記録紙表面の凹凸をならして光沢度を上げることが行われている。しかし、このような作業は面倒で時間がかかり、プリンタとは別に光沢処理専用の装置が必要になるという問題がある。
【0008】
本発明は、上記問題点を考慮してなされたものであり、カラー感熱記録紙の表面を平滑に保ち、プリント後の光沢処理を必要とすることのないサーマルヘッドを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、ヘッド基板上に突出した部分グレーズ層と、この部分グレーズ層上に設けられた発熱素子と、部分グレーズ層及び発熱素子を覆う保護膜とを備え、熱記録材料を記録方向に移動させながら発熱素子を発熱して熱記録を行うサーマルヘッドにおいて、前記保護膜は、前記熱記録材料と接触する表面が、前記発熱素子の正面に位置する伝熱部と、前記伝熱部よりも記録方向の上流側に位置する平滑部と、前記伝熱部よりも記録方向の下流側に位置する粗面部とからなり、前記粗面部は、前記伝熱部及び前記平滑部よりも粗い面であることを特徴とする。
【0010】
【発明の実施の形態】
図1に、本発明のサーマルヘッドを内蔵したカラー感熱プリンタの概略構成を示す。カラー感熱プリンタ1には、長尺のカラー感熱記録紙2を巻き取った記録紙ロール2aがセットされている。給紙ローラ3は、カラー感熱記録紙2をサーマルヘッド5に向けて給紙し、また記録紙ロール2aに向けて戻す。符号4は排紙ローラである。給紙ローラ3と排紙ローラ4は、記録中はカラー感熱記録紙2にバックテンションとフロントテンションを与える。
【0011】
サーマルヘッド5は、プラテンローラ6上でカラー感熱記録紙2に圧接するプリント位置と、プラテンローラ6から上方に離れる退避位置との間で揺動する。このプラテンローラ6は、モータ7によって回転され、サーマルヘッド5との間でカラー感熱記録紙2をニップして記録方向及び戻し方向に搬送する。
【0012】
光定着器8は、イエロー定着用ランプ9とマゼンタ定着用ランプ10と反射板11とから構成される。イエロー定着用ランプ9は、カラー感熱記録紙2にイエロー画像がプリントされたときに点灯し、420nm付近に発光波長のピークを有する定着光を照射してイエロー画像を定着処理する。マゼンタ定着用ランプ10は、カラー感熱記録紙2にマゼンタ画像がプリントされたときに点灯し、365nm付近に発光波長のピークを有する紫外線を照射してマゼンタ画像を定着処理する。
【0013】
図2において、カラー感熱記録紙2は、透明もしくは白色の支持体15上にシアン感熱発色層16、マゼンタ感熱発色層17、イエロー感熱発色層18、透明保護層19が順次層設されている。なお、各感熱発色層の間に設けられる中間層などは図示を省略している。イエロー感熱発色層18は、イエロー定着用ランプ9から照射される紫外線により発色能力が消失し、マゼンタ感熱発色層17は、マゼンタ定着用ランプから照射される紫外線により発色能力が消失する。また、図3に示すように、各感熱発色層を発色させるのに必要な熱量は、最下層のシアン感熱発色層16が最も大きく、最上層のイエロー感熱発色層18が最も小さくなっており、イエロー、マゼンタ、シアンの各画像を面順次で記録することによるフルカラープリントが可能である。
【0014】
図4において、サーマルヘッド5は、アルミナ製のヘッド基板25上にグレーズドガラスをシリンドリカル状に形成した部分グレーズ層26を有する。部分グレーズ層26上には、発熱素子となる発熱抵抗体27と電極28とが設けられて、これらが耐磨耗性の保護膜29で覆われている。プリント時には、搬送されてきたカラー感熱記録紙2がサーマルヘッド5とプラテンローラ6とに挟持され、発熱抵抗体27で発生した熱が保護膜29を介してカラー感熱記録紙2に伝達される。
【0015】
部分グレーズ層26上の保護膜29の表面は、発熱抵抗体27の正面に位置する伝熱部30と、伝熱部30より記録方向の上流側に位置する平滑部31と、下流側に位置する粗面部32とからなる。粗面部32は中心線平均粗さが0.115μmであり、伝熱部30及び平滑部31の表面粗さは0.05μmである。なお、一般的なサーマルヘッドでは保護膜の表面粗さは0.01μm〜0.05μm程度である。平滑部31は記録方向に搬送されるカラー感熱記録紙2を伝熱部30にスムーズに進入させ、粗面部32は伝熱部30を通過した記録紙表面と保護膜29との接触面積を小さくする。
【0016】
次に、カラー感熱プリンタ1の作用について説明する。プリント処理が開始されると、給紙ローラ3が駆動してカラー感熱記録紙2が繰り出され、その先端がフォトインタラプタ(図示せず)で検知されると、サーマルヘッド5がプリント位置に揺動してカラー感熱記録紙2に圧接する。モータ7によってプラテンローラ6が回転すると、サーマルヘッド5とプラテンローラ6に挟持されたカラー感熱記録紙2が記録方向に搬送される。これと同時にサーマルヘッド5が駆動してイエロー画像が1ラインずつ記録される。
【0017】
イエロー画像が記録された部分は、イエロー定着用ランプ9を通過するときに照射される紫外線によって光定着される。イエロー画像の記録と定着が終了すると、サーマルヘッド5が退避位置に揺動し、イエロー定着用ランプ9が消灯する。カラー感熱記録紙2が戻し方向に搬送されると、サーマルヘッド5がプリント位置に揺動する。プラテンローラ6はカラー感熱記録紙2を記録方向に搬送し、サーマルヘッド5が駆動してマゼンタ画像の記録が行われる。
【0018】
マゼンタ画像の記録中に、マゼンタ定着用ランプ10が点灯しマゼンタ画像が光定着される。マゼンタ画像の記録と定着が終了すると、サーマルヘッド5の退避とマゼンタ定着ランプの消灯とが行われる。その後、カラー感熱記録紙2が再び戻されてから、シアン画像の熱記録が行われる。
【0019】
シアン画像の記録時には、サーマルヘッド5の発熱素子は最高温域に達し、カラー感熱記録紙2に伝達される熱量は最大となる。伝熱部30を通過したカラー感熱記録紙2は、その保護層19が軟化して、サーマルヘッド5に密着する。保護膜29の記録方向下流には粗面部32が設けられているため、下流側の保護膜とカラー感熱記録紙2との接触面積は小さくなる。これにより、伝熱部30との密着から解放されたときでも保護層19の一部が剥がれ落ちて保護膜29上に付着したり、保護層19に毛羽立ちが発生することが抑えられる。保護層19は表面の光沢を損なうことなくシアン画像がプリントされる。また、上流側の保護膜表面を滑らかにしておくことで、カラー感熱記録紙2が伝熱部30に進入する時の摩擦抵抗を小さくすることができ、熱記録中におけるカラー感熱記録紙2の搬送がスムーズに行われる。
【0020】
本発明者は、従来のサーマルヘッドと本発明のサーマルヘッド5の作用を比較するために、全面黒色の画像をプリント処理したときのカラー感熱記録紙2の表面光沢度を20度光沢計により測定した。この黒色画像のプリントでは、各感熱発色層に付与される熱エネルギーが最も大きくなり、熱ダメージによって記録紙表面の光沢度が最も低下する。
【0021】
保護膜29の下流側の表面粗さが0.01μm〜0.05μmである従来のサーマルヘッドでは、測定された光沢度が35%〜40%であったのに対し、下流側保護膜の表面粗さが0.115μmである本発明のサーマルヘッドでは、45〜48%の光沢度を保つことが確かめられた。また、この実験では、下流側保護膜の表面が滑らかなほど光沢度の低下が大きく、表面が粗いほど光沢度の低下が小さくなる傾向があることが確かめられ、従来のサーマルヘッドよりも記録紙表面の光沢度が優れたプリント処理を行うには、保護膜表面の粗さを0.1μm以上0.5μm以下とするのが有効であることが見出された。
【0022】
このように、イエロー、マゼンタ、シアンの各感熱発色層に付与する記録熱量を段階的に大きくすることでフルカラー画像のプリント処理を行うカラー感熱プリンタ1では、高濃度のシアン画像を熱記録した後でもカラー感熱記録紙2の表面の光沢が保たれ、品質のよいプリント写真を作成することができる。また、保護層19の成分が熱伝達を阻害する汚れとして保護膜表面に付着することが抑えられ、サーマルヘッドのクリーニング頻度を少なくすることができる。
【0023】
片側を粗面にしたサーマルヘッドを製造するには、図5に示すように、未研磨のサーマルヘッド5の下流側にプラテンローラ35をずらして配置した研磨装置を用いる。プラテンローラ35の接線方向からラッピングシート36を送り込み、ラッピングシート36をサーマルヘッド5とプラテンローラ35とで挟持させながら搬送すれば、下流側保護膜を粗く研磨できる。
【0024】
また、上記実施形態では、1つのサーマルヘッドを用い、感熱記録紙を3回往復搬送することでフルカラー画像をプリントしているが、これに限られず、3つのサーマルヘッドによりカラー感熱記録紙を一方向にのみ搬送するようにした3ヘッド1パス方式のカラー感熱プリンタにも本発明を適用することができる。この3ヘッド1パスタイプのカラー感熱プリンタでは、記録紙の搬送の上流側からイエロー記録ヘッド、マゼンタ記録ヘッド、シアン画像記録ヘッドが設けられるため、カラー感熱記録紙に最も大きな熱量を付与するシアン記録用のサーマルヘッドに粗面を形成するのが好適である。勿論、シアン記録用のサーマルヘッドのみならず、マゼンタ記録用ヘッド、シアン記録用ヘッドに粗面を設けてもよい。
【0025】
さらに、本発明のサーマルヘッドは、感熱記録式のサーマルプリンタのみならず、熱転写型のサーマルプリンタに用いることもできる。熱転写型プリンタでは、サーマルヘッドと記録紙の間にインクリボンを介在させているが、本発明のサーマルヘッドでは記録時にインクリボンの基材に与えるダメージを軽減させることができ、記録熱によって溶融したリボン基材の一部が保護膜上に汚れとして付着しにくくなり、またインクリボンが熱で断ち切れるような事故を防ぐことができる。
【0026】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、部分グレーズ層が形成されたサーマルヘッドの保護膜を、記録材料の搬送方向の下流側で粗く形成したので、ヘッド通過後の記録材料と保護膜との密着面積を小さくできる。これにより、記録材料が高温に加熱されることによる光沢の低下が発生しなくなり、またヘッド上に汚れが付着しにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を用いたカラー感熱プリンタの概略構成図である。
【図2】カラー感熱記録紙の層構造を示す断面図である。
【図3】カラー感熱記録紙の発色特性を表す説明図である。
【図4】サーマルヘッド要部の構成を示す断面図である。
【図5】研磨処理によって粗面を形成する状態を表す説明図である。
【符号の説明】
1 カラー感熱プリンタ
2 カラー感熱記録紙
5 サーマルヘッド
6 プラテンローラ
19 保護層
25 ヘッド基板
26 部分グレーズ層
27 発熱抵抗体
28 電極
29 保護膜
30 伝熱部
31 平滑部
32 粗面部
36 ラッピングシート
Claims (1)
- ヘッド基板上に突出した部分グレーズ層と、この部分グレーズ層上に設けられた発熱素子と、部分グレーズ層及び発熱素子を覆う保護膜とを備え、熱記録材料を記録方向に移動させながら発熱素子を発熱して熱記録を行うサーマルヘッドにおいて、
前記保護膜は、前記熱記録材料と接触する表面が、前記発熱素子の正面に位置する伝熱部と、前記伝熱部よりも記録方向の上流側に位置する平滑部と、前記伝熱部よりも記録方向の下流側に位置する粗面部とからなり、
前記粗面部は、前記伝熱部及び前記平滑部よりも粗い面であることを特徴とするサーマルヘッド。
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