JP3765690B2 - 低環境負荷型セメント混和材及びセメント組成物 - Google Patents
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Description
【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、主に、土木・建築分野において使用される高強度コンクリート用の低環境負荷型セメント混和材及びセメント組成物に関する。
【０００２】
【従来の技術】
近年、コンクリートに要求される性能は多様化し、中でもコンクリートの高強度化に関するニーズは益々高まってきている。
一方、環境問題が顕在化してきており、例えば、1997年12月に気候変動枠組条約・第三回締約国会議が京都で開かれ、先進国の温室効果ガス排出量について、法的拘束力のある削減目標を規定した京都議定書が採択された。これに伴い、各産業において二酸化炭素排出量の削減が必要になってきているが、全産業の二酸化炭素排出量に対する土木・建設業の占める割合は極めて大きく、要求性能を満足しつつ、環境負荷の小さなコンクリートの開発が切望されている。
【０００３】
【発明が解決しようとする課題】
高性能コンクリート、特に高強度コンクリートは、製造の際に二酸化炭素排出量が大きいセメントを多量に使用するため、環境負荷の大きいコンクリートであった。又、産業副産物をリサイクルすることは、我が国のように資源の少ない国では、資源の有効利用につながり、極めて重要である。
本発明者らは、これらの課題を解決すべく種々の検討を重ねた結果、特定の産業副産物を含有したセメント混和材及びセメント組成物を使用することにより、高強度で二酸化炭素排出量の小さい低環境負荷型高強度コンクリートとなるとの知見を得て本発明を完成するに至った。
【０００４】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明は、ｐＨが4.5以下の産業副産物として発生する無水セッコウを含有し、炭素排出量原単位が 0.02kgC/kg 以下であることを特徴とする低環境負荷型セメント混和材であり、無水セッコウの平均粒径が10μｍ以下であることを特徴とする該低環境負荷型セメント混和材であり、産業副産物として発生するシリカ質微粉末を含有してなることを特徴とする該低環境負荷型セメント混和材であり、更にセメントと該低環境負荷型セメント混和材とを含有してなるセメント組成物である。
【０００５】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を更に詳細に説明する。
【０００６】
本発明のコンクリートの炭素排出量の原単位とは、１ｍ3のコンクリートを製造する際に排出される炭素重量を意味し、その単位は（kgC/m3）で表す。コンクリートの炭素排出量の原単位とは、コンクリートを製造する際に使用される材料、即ち、セメント、砂、砂利、混和剤（材）等の炭素排出量の原単位を用い、コンクリート配合から算出する。各材料の炭素排出量の原単位は、LCA（ライフサイクルアセスメント）手法によって算出され定められている。ここで、LCA手法とは、材料を製造する際に、原料の調達、運搬、製造、消費、廃棄に至るまでのライフサイクルにおいて発生する、二酸化炭素の排出量を炭素排出量として表す手法である。土木・建設業で用いられる材料の炭素排出量の原単位は、例えば、（社）土木学会、（社）空衛建築学会、建設省建築研究所、建設省土木研究所等の各学術団体や研究機関によって提案されている。具体例としては、例えば、（社）土木学会地球環境委員会LCA小委員会推奨値によると、普通セメントの炭素排出量の原単位は0.228kgC/kgであり、高炉セメントは0.135kgC/kgであり、砂は0.00154kgC/kg、砂利は砕石の場合は0.00189kgC/kg、採石の場合は0.00154kgC/kgと定められている。又、産業副産物をリサイクルした場合の炭素排出量は、零と見なされるので、産業副産物を利用することが極めて重要である。
【０００７】
本発明の産業副産物として発生する無水セッコウは、JIS R 9101に準じて測定したｐＨが4.5以下であることが好ましく、ｐＨが4.5を超えると良好な強度発現性が得られない。セッコウは二水セッコウ、半水セッコウ及び無水セッコウに大別されるが、本発明では無水セッコウが好ましく、二水セッコウや半水セッコウでは良好な強度発現性は得られない。無水セッコウには、フッ酸製造時に副生する無水セッコウや天然に産出する無水セッコウ等があるが、環境負荷低減のため、産業副産物として発生する無水セッコウを使用することが好ましい。天然無水セッコウは、ｐＨが4.5を超え、炭素排出量も産業副産物の無水セッコウより大きく、本発明の効果は得られない。
【０００８】
本発明の産業副産物の無水セッコウの粒度は、特に限定されるものではないが、通常、ブレーン比表面積で3000〜10000cm2/gが好ましく、4000〜9000cm2/gがより好ましい。3000cm2/g未満では強度発現性が充分でなく、10000cm2/gを超えても更なる効果の増進が期待できない。
又、強度発現性の面から、無水セッコウの平均粒径は10μｍ以下が好ましく、ブレーン比表面積が好ましい範囲であっても、平均粒径が10μｍを超えると強度が低下する場合がある。
【０００９】
本発明の産業副産物の無水セッコウに、更に産業副産物として発生するシリカ質微粉末を併用することが強度発現性の面から好ましい。産業副産物として発生するシリカ質微粉末は、特に限定されるものではないが、具体例としては、シリカフュームや溶融シリカを製造する際に発生するシリカダスト、或いは高炉スラグやフライアッシュ等が挙げられる。無水セッコウとシリカ質微粉末の配合割合は、特に限定されるものではない。
【００１０】
本発明の産業副産物の無水セッコウを含有するセメント混和材は、環境負荷低減のため産業副産物をリサイクル使用し、炭素排出量原単位が0.02kgC/kg以下である。
【００１１】
本発明の産業副産物の無水セッコウ又は産業副産物の無水セッコウと産業副産物のシリカ質微粉末を含有したセメント混和材の配合割合は、特に限定されるものではないが、セメントとセメント混和材からなるセメント組成物100重量部中、5〜20重量部が好ましく、7〜20重量部がより好ましい。5重量部未満では、強度発現性が充分でなく、20重量部を超えても更なる強度の増進が期待できない。
【００１２】
本発明のセメントとしては、普通セメント、早強、超早強、低熱及び中庸熱等各種ポルトランドセメントと、これらセメントに、高炉スラグ、フライアッシュ及びシリカを混合した各種混合セメント、並びに石灰石粉末等を混合したフィラーセメント等がある。
【００１３】
本発明では、減水剤、高性能減水剤、ＡＥ減水剤、高性能ＡＥ減水剤、流動化剤、消泡剤、増粘剤、防錆剤、防凍剤、収縮低減剤、高分子エマルジョン及び凝結調整剤、並びにセメント急硬材、セメント膨張材、ベントナイト等の粘土鉱物及びハイドロタルサイト等のアニオン交換体等のうちの一種又は二種以上を、本発明の目的を実質的に阻害しない範囲で使用することが可能である。
【００１４】
本発明では、各材料の混合方法は特に限定されるものではなく、それぞれの材料を施工時に混合しても良いし、予めその一部、或いは全部を混合しておいても差し支えない。混合装置としては、既存の如何なる装置も使用可能であり、例えば、傾胴ミキサー、オムニミキサー、ヘンシェルミキサー、Ｖ型ミキサー及びナウターミキサー等が挙げられる。
【００１５】
【実施例】
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。
【００１６】
実施例１
表１に示す各種セメント混和材に使用した、セッコウの平均粒径とｐＨを測定した。又、LCA手法により、セメント混和材の炭素排出量の原単位を算出した。但し、産業副産物を使用する場合には、粉砕時に消費した動力より、材料の炭素排出量の原単位を算出した。その結果を表１に示す。
【００１７】
＜使用材料＞
セメント混和材ａ：フッ酸製造時に副生する産業副産物としての無水セッコウ、比重2.96。ブレーン比表面積5000cm2/gに粉砕、平均粒径10μｍ、粉砕時の動力0.06kwhr/kg。動力の炭素排出量の原単位0.129kgC/kwhrより算出した炭素排出量の原単位0.008kgC/kg。
セメント混和材ｂ：フッ酸製造時に副生する産業副産物としての無水セッコウ、比重2.95。ブレーン比表面積5000cm2/gに粉砕、平均粒径8μｍ。粉砕時の動力0.07kwhr/kg。動力の炭素排出量の原単位0.129kgC/kwhrより算出した炭素排出量の原単位0.009kgC/kg。
セメント混和材ｃ：天然無水セッコウ、比重2.96。ブレーン比表面積5000cm2/gに粉砕、平均粒径18μｍ、粉砕時の動力0.17kwhr/kg。動力の炭素排出量の原単位0.129kgC/kwhrより算出した炭素排出量の原単位0.022kgC/kg。
セメント混和材ｄ：天然二水セッコウを約130℃で加熱し半水セッコウとしたもの。
比重2.65。ブレーン比表面積5000cm2/gに粉砕、平均粒径11μｍ、加熱時の動力0.15kwhr/kg。粉砕時の動力0.10kwhr/kg。動力の炭素排出量の原単位0.129kgC/kwhrより算出した炭素排出量の原単位0.032kgC/kg。
セメント混和材ｅ：排煙脱硫二水セッコウ、比重2.32。ブレーン比表面積5000cm2/gに粉砕、平均粒径12μｍ、粉砕時の動力0.06kwhr/kg。動力の炭素排出量の原単位0.129kgC/kwhrより算出した炭素排出量の原単位0.008kgC/kg。
シリカ質微粉末Ａ：シリカフューム、産業副産物としてのシリカ質微粉末、比重2.20。ブレーン比表面積200000cm2/g、平均粒径0.2μｍ。
シリカ質微粉末Ｂ：高炉スラグ、産業副産物としてのシリカ質微粉末、比重2.90。ブレーン比表面積4500cm2/g、平均粒径7μｍ。
シリカ質微粉末Ｃ：フライアッシュ、産業副産物としてのシリカ質微粉末、比重2.35。ブレーン比表面積4000cm2/g、平均粒径10μｍ。
セメント混和材ｆ：混和材ｂ50重量部とシリカ質微粉末Ａ50重量部を平均粒径3μｍに混合粉砕したもの。比重2.58。粉砕時の動力0.08kwhr/kg。動力の炭素排出量の原単位0.129kgC/kwhrより算出した炭素排出量の原単位0.014kgC/kg。
セメント混和材ｇ：混和材ｂ50重量部とシリカ質微粉末Ｂ50重量部を平均粒径5μｍに混合粉砕したもの。比重2.93。粉砕時の動力0.09kwhr/kg。動力の炭素排出量の原単位0.129kgC/kwhrより算出した炭素排出量の原単位0.012kgC/kg。
セメント混和材ｈ：混和材ｂ50重量部とシリカ質微粉末Ｃ50重量部を平均粒径5μｍに混合粉砕したもの。比重2.66。粉砕時の動力0.09kwhr/kg。動力の炭素排出量の原単位0.129kgC/kwhrより算出した炭素排出量の原単位0.012kgC/kg。
＜測定方法＞
比重、ブレーン比表面積：JIS R 5201に準じて測定
平均粒径：レーザ式粒度分布測定装置により測定
ｐＨ：JIS R 9101に準じて測定
【００１８】
【表１】
【００１９】
本発明の産業副産物の無水セッコウ（実験No.1-1,1-2）のｐＨは、4.5以下である。比較例の天然無水セッコウ（実験No.1-3）、半水セッコウ（実験No.1-4）及び排煙脱硫二水セッコウ（実験No.1-5）のｐＨは、何れも4.5を超えている。又、本発明のセメント混和材の炭素排出量原単位は、何れも0.02kgC/kg以下である。
【００２０】
実施例２
各種セメント混和材について、表２に示す水／セメント組成物(W/P)比＝50%、細骨材率(s/a)=43%、空気量3.0±1.5%の配合のコンクリートを調製し、材齢28日における圧縮強度を測定した。又、LCA手法により、コンクリートの炭素排出量の原単位を算出した。但し、各材料の炭素排出量の原単位は、土木学会地球環境委員会LCA小委員会推奨値を用いた。産業副産物を使用する場合には、粉砕時に消費した動力より、材料の炭素排出量の原単位を算出した。コンクリートのスランプは8±1.5cmとなるように、市販の減水剤を添加した。その結果を表２に示す。
【００２１】
＜使用材料＞
セメント(C)：市販普通ポルトランドセメント、比重3.15。炭素排出量の原単位0.228kgC/kg。
水(W)：水道水
砂(S)：新潟県姫川産、比重2.62。炭素排出量の原単位0.00154kgC/kg。
砂利(G)：新潟県姫川産、比重2.64。炭素排出量の原単位0.00189kgC/kg。
減水剤：ナフタレン系市販品
＜測定方法＞
圧縮強度：JIS A 1108、JIS A 1132、JIS A 1138に準じて測定。
【００２２】
【表２】
【００２３】
本発明の低環境型セメント混和材及びセメント組成物を配合したコンクリートは、炭素排出量の原単位が小さく、強度発現性が良好である。本発明の低環境型セメント混和材及びセメント組成物を配合していない比較例のコンクリート（実験No.2-3,2-4,2-5,2-13）は、強度発現性が低いか炭素排出量の原単位が大きい。
【００２４】
【発明の効果】
本発明の低環境負荷型セメント混和材及びセメント組成物を使用することにより、高強度で二酸化炭素排出量の小さいコンクリートが得られる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、主に、土木・建築分野において使用される高強度コンクリート用の低環境負荷型セメント混和材及びセメント組成物に関する。
【０００２】
【従来の技術】
近年、コンクリートに要求される性能は多様化し、中でもコンクリートの高強度化に関するニーズは益々高まってきている。
一方、環境問題が顕在化してきており、例えば、1997年12月に気候変動枠組条約・第三回締約国会議が京都で開かれ、先進国の温室効果ガス排出量について、法的拘束力のある削減目標を規定した京都議定書が採択された。これに伴い、各産業において二酸化炭素排出量の削減が必要になってきているが、全産業の二酸化炭素排出量に対する土木・建設業の占める割合は極めて大きく、要求性能を満足しつつ、環境負荷の小さなコンクリートの開発が切望されている。
【０００３】
【発明が解決しようとする課題】
高性能コンクリート、特に高強度コンクリートは、製造の際に二酸化炭素排出量が大きいセメントを多量に使用するため、環境負荷の大きいコンクリートであった。又、産業副産物をリサイクルすることは、我が国のように資源の少ない国では、資源の有効利用につながり、極めて重要である。
本発明者らは、これらの課題を解決すべく種々の検討を重ねた結果、特定の産業副産物を含有したセメント混和材及びセメント組成物を使用することにより、高強度で二酸化炭素排出量の小さい低環境負荷型高強度コンクリートとなるとの知見を得て本発明を完成するに至った。
【０００４】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明は、ｐＨが4.5以下の産業副産物として発生する無水セッコウを含有し、炭素排出量原単位が 0.02kgC/kg 以下であることを特徴とする低環境負荷型セメント混和材であり、無水セッコウの平均粒径が10μｍ以下であることを特徴とする該低環境負荷型セメント混和材であり、産業副産物として発生するシリカ質微粉末を含有してなることを特徴とする該低環境負荷型セメント混和材であり、更にセメントと該低環境負荷型セメント混和材とを含有してなるセメント組成物である。
【０００５】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を更に詳細に説明する。
【０００６】
本発明のコンクリートの炭素排出量の原単位とは、１ｍ3のコンクリートを製造する際に排出される炭素重量を意味し、その単位は（kgC/m3）で表す。コンクリートの炭素排出量の原単位とは、コンクリートを製造する際に使用される材料、即ち、セメント、砂、砂利、混和剤（材）等の炭素排出量の原単位を用い、コンクリート配合から算出する。各材料の炭素排出量の原単位は、LCA（ライフサイクルアセスメント）手法によって算出され定められている。ここで、LCA手法とは、材料を製造する際に、原料の調達、運搬、製造、消費、廃棄に至るまでのライフサイクルにおいて発生する、二酸化炭素の排出量を炭素排出量として表す手法である。土木・建設業で用いられる材料の炭素排出量の原単位は、例えば、（社）土木学会、（社）空衛建築学会、建設省建築研究所、建設省土木研究所等の各学術団体や研究機関によって提案されている。具体例としては、例えば、（社）土木学会地球環境委員会LCA小委員会推奨値によると、普通セメントの炭素排出量の原単位は0.228kgC/kgであり、高炉セメントは0.135kgC/kgであり、砂は0.00154kgC/kg、砂利は砕石の場合は0.00189kgC/kg、採石の場合は0.00154kgC/kgと定められている。又、産業副産物をリサイクルした場合の炭素排出量は、零と見なされるので、産業副産物を利用することが極めて重要である。
【０００７】
本発明の産業副産物として発生する無水セッコウは、JIS R 9101に準じて測定したｐＨが4.5以下であることが好ましく、ｐＨが4.5を超えると良好な強度発現性が得られない。セッコウは二水セッコウ、半水セッコウ及び無水セッコウに大別されるが、本発明では無水セッコウが好ましく、二水セッコウや半水セッコウでは良好な強度発現性は得られない。無水セッコウには、フッ酸製造時に副生する無水セッコウや天然に産出する無水セッコウ等があるが、環境負荷低減のため、産業副産物として発生する無水セッコウを使用することが好ましい。天然無水セッコウは、ｐＨが4.5を超え、炭素排出量も産業副産物の無水セッコウより大きく、本発明の効果は得られない。
【０００８】
本発明の産業副産物の無水セッコウの粒度は、特に限定されるものではないが、通常、ブレーン比表面積で3000〜10000cm2/gが好ましく、4000〜9000cm2/gがより好ましい。3000cm2/g未満では強度発現性が充分でなく、10000cm2/gを超えても更なる効果の増進が期待できない。
又、強度発現性の面から、無水セッコウの平均粒径は10μｍ以下が好ましく、ブレーン比表面積が好ましい範囲であっても、平均粒径が10μｍを超えると強度が低下する場合がある。
【０００９】
本発明の産業副産物の無水セッコウに、更に産業副産物として発生するシリカ質微粉末を併用することが強度発現性の面から好ましい。産業副産物として発生するシリカ質微粉末は、特に限定されるものではないが、具体例としては、シリカフュームや溶融シリカを製造する際に発生するシリカダスト、或いは高炉スラグやフライアッシュ等が挙げられる。無水セッコウとシリカ質微粉末の配合割合は、特に限定されるものではない。
【００１０】
本発明の産業副産物の無水セッコウを含有するセメント混和材は、環境負荷低減のため産業副産物をリサイクル使用し、炭素排出量原単位が0.02kgC/kg以下である。
【００１１】
本発明の産業副産物の無水セッコウ又は産業副産物の無水セッコウと産業副産物のシリカ質微粉末を含有したセメント混和材の配合割合は、特に限定されるものではないが、セメントとセメント混和材からなるセメント組成物100重量部中、5〜20重量部が好ましく、7〜20重量部がより好ましい。5重量部未満では、強度発現性が充分でなく、20重量部を超えても更なる強度の増進が期待できない。
【００１２】
本発明のセメントとしては、普通セメント、早強、超早強、低熱及び中庸熱等各種ポルトランドセメントと、これらセメントに、高炉スラグ、フライアッシュ及びシリカを混合した各種混合セメント、並びに石灰石粉末等を混合したフィラーセメント等がある。
【００１３】
本発明では、減水剤、高性能減水剤、ＡＥ減水剤、高性能ＡＥ減水剤、流動化剤、消泡剤、増粘剤、防錆剤、防凍剤、収縮低減剤、高分子エマルジョン及び凝結調整剤、並びにセメント急硬材、セメント膨張材、ベントナイト等の粘土鉱物及びハイドロタルサイト等のアニオン交換体等のうちの一種又は二種以上を、本発明の目的を実質的に阻害しない範囲で使用することが可能である。
【００１４】
本発明では、各材料の混合方法は特に限定されるものではなく、それぞれの材料を施工時に混合しても良いし、予めその一部、或いは全部を混合しておいても差し支えない。混合装置としては、既存の如何なる装置も使用可能であり、例えば、傾胴ミキサー、オムニミキサー、ヘンシェルミキサー、Ｖ型ミキサー及びナウターミキサー等が挙げられる。
【００１５】
【実施例】
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。
【００１６】
実施例１
表１に示す各種セメント混和材に使用した、セッコウの平均粒径とｐＨを測定した。又、LCA手法により、セメント混和材の炭素排出量の原単位を算出した。但し、産業副産物を使用する場合には、粉砕時に消費した動力より、材料の炭素排出量の原単位を算出した。その結果を表１に示す。
【００１７】
＜使用材料＞
セメント混和材ａ：フッ酸製造時に副生する産業副産物としての無水セッコウ、比重2.96。ブレーン比表面積5000cm2/gに粉砕、平均粒径10μｍ、粉砕時の動力0.06kwhr/kg。動力の炭素排出量の原単位0.129kgC/kwhrより算出した炭素排出量の原単位0.008kgC/kg。
セメント混和材ｂ：フッ酸製造時に副生する産業副産物としての無水セッコウ、比重2.95。ブレーン比表面積5000cm2/gに粉砕、平均粒径8μｍ。粉砕時の動力0.07kwhr/kg。動力の炭素排出量の原単位0.129kgC/kwhrより算出した炭素排出量の原単位0.009kgC/kg。
セメント混和材ｃ：天然無水セッコウ、比重2.96。ブレーン比表面積5000cm2/gに粉砕、平均粒径18μｍ、粉砕時の動力0.17kwhr/kg。動力の炭素排出量の原単位0.129kgC/kwhrより算出した炭素排出量の原単位0.022kgC/kg。
セメント混和材ｄ：天然二水セッコウを約130℃で加熱し半水セッコウとしたもの。
比重2.65。ブレーン比表面積5000cm2/gに粉砕、平均粒径11μｍ、加熱時の動力0.15kwhr/kg。粉砕時の動力0.10kwhr/kg。動力の炭素排出量の原単位0.129kgC/kwhrより算出した炭素排出量の原単位0.032kgC/kg。
セメント混和材ｅ：排煙脱硫二水セッコウ、比重2.32。ブレーン比表面積5000cm2/gに粉砕、平均粒径12μｍ、粉砕時の動力0.06kwhr/kg。動力の炭素排出量の原単位0.129kgC/kwhrより算出した炭素排出量の原単位0.008kgC/kg。
シリカ質微粉末Ａ：シリカフューム、産業副産物としてのシリカ質微粉末、比重2.20。ブレーン比表面積200000cm2/g、平均粒径0.2μｍ。
シリカ質微粉末Ｂ：高炉スラグ、産業副産物としてのシリカ質微粉末、比重2.90。ブレーン比表面積4500cm2/g、平均粒径7μｍ。
シリカ質微粉末Ｃ：フライアッシュ、産業副産物としてのシリカ質微粉末、比重2.35。ブレーン比表面積4000cm2/g、平均粒径10μｍ。
セメント混和材ｆ：混和材ｂ50重量部とシリカ質微粉末Ａ50重量部を平均粒径3μｍに混合粉砕したもの。比重2.58。粉砕時の動力0.08kwhr/kg。動力の炭素排出量の原単位0.129kgC/kwhrより算出した炭素排出量の原単位0.014kgC/kg。
セメント混和材ｇ：混和材ｂ50重量部とシリカ質微粉末Ｂ50重量部を平均粒径5μｍに混合粉砕したもの。比重2.93。粉砕時の動力0.09kwhr/kg。動力の炭素排出量の原単位0.129kgC/kwhrより算出した炭素排出量の原単位0.012kgC/kg。
セメント混和材ｈ：混和材ｂ50重量部とシリカ質微粉末Ｃ50重量部を平均粒径5μｍに混合粉砕したもの。比重2.66。粉砕時の動力0.09kwhr/kg。動力の炭素排出量の原単位0.129kgC/kwhrより算出した炭素排出量の原単位0.012kgC/kg。
＜測定方法＞
比重、ブレーン比表面積：JIS R 5201に準じて測定
平均粒径：レーザ式粒度分布測定装置により測定
ｐＨ：JIS R 9101に準じて測定
【００１８】
【表１】
本発明の産業副産物の無水セッコウ（実験No.1-1,1-2）のｐＨは、4.5以下である。比較例の天然無水セッコウ（実験No.1-3）、半水セッコウ（実験No.1-4）及び排煙脱硫二水セッコウ（実験No.1-5）のｐＨは、何れも4.5を超えている。又、本発明のセメント混和材の炭素排出量原単位は、何れも0.02kgC/kg以下である。
【００２０】
実施例２
各種セメント混和材について、表２に示す水／セメント組成物(W/P)比＝50%、細骨材率(s/a)=43%、空気量3.0±1.5%の配合のコンクリートを調製し、材齢28日における圧縮強度を測定した。又、LCA手法により、コンクリートの炭素排出量の原単位を算出した。但し、各材料の炭素排出量の原単位は、土木学会地球環境委員会LCA小委員会推奨値を用いた。産業副産物を使用する場合には、粉砕時に消費した動力より、材料の炭素排出量の原単位を算出した。コンクリートのスランプは8±1.5cmとなるように、市販の減水剤を添加した。その結果を表２に示す。
【００２１】
＜使用材料＞
セメント(C)：市販普通ポルトランドセメント、比重3.15。炭素排出量の原単位0.228kgC/kg。
水(W)：水道水
砂(S)：新潟県姫川産、比重2.62。炭素排出量の原単位0.00154kgC/kg。
砂利(G)：新潟県姫川産、比重2.64。炭素排出量の原単位0.00189kgC/kg。
減水剤：ナフタレン系市販品
＜測定方法＞
圧縮強度：JIS A 1108、JIS A 1132、JIS A 1138に準じて測定。
【００２２】
【表２】
本発明の低環境型セメント混和材及びセメント組成物を配合したコンクリートは、炭素排出量の原単位が小さく、強度発現性が良好である。本発明の低環境型セメント混和材及びセメント組成物を配合していない比較例のコンクリート（実験No.2-3,2-4,2-5,2-13）は、強度発現性が低いか炭素排出量の原単位が大きい。
【００２４】
【発明の効果】
本発明の低環境負荷型セメント混和材及びセメント組成物を使用することにより、高強度で二酸化炭素排出量の小さいコンクリートが得られる。
Claims (4)
- ｐＨが4.5以下の産業副産物として発生する無水セッコウを含有し、炭素排出量原単位が 0.02kgC/kg 以下であることを特徴とする低環境負荷型セメント混和材。
- 無水セッコウの平均粒径が10μｍ以下であることを特徴とする請求項１記載の低環境負荷型セメント混和材。
- シリカ質微粉末を含有してなることを特徴とする請求項１又は２記載の低環境負荷型セメント混和材。
- セメントと、請求項１乃至３の何れかに記載の低環境負荷型セメント混和材とを含有してなるセメント組成物。
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