JP3765659B2 - カットゴボウの包装体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高二酸化炭素濃度環境(20〜50%)下でカットゴボウの変色(ピンク)を防止しつつ、呼吸作用に起因する低酸素濃度(0%)状態で嫌気呼吸による悪臭の発生を抑えるようなガス雰囲気に調整する包装体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ゴボウの変色は、ゴボウ中に存在するポリフェノールと空気中の酸素との反応によって発生すると考えられている。この反応は、特に高温下で活発になるので、変色を防止する為には低温下で保存し反応を抑える必要がある。
従来の技術としては、生のゴボウをガスバリア性のフィルムで包装し真空脱気するか、水煮し変色する反応を止めて包装する形態がある。生のまま真空脱気包装するとゴボウは無酸素環境下で嫌気呼吸によるアルコール系の悪臭を発生する。また、水煮すると変色はしないが、風味や歯ごたえがなくなる。 ゴボウには生のゴボウと煮たゴボウがあるが、本件では特に区別しない場合は生のゴボウに関するものとする。
また、窒素ガスまたは二酸化炭素ガス置換により初期の酸素濃度を0.1〜10%にする方法(特開平4-341139号公報)でカット野菜全般の鮮度保持方法を紹介しており、その中にゴボウも含まれている。しかし、この方法は包装時の酸素濃度を規定しているのみで保存中のガス濃度が規定されてなかった。本発明では、カットゴボウの保存には窒素ガス置換では効果がなく、保存中の二酸化炭素、酸素濃度管理が必要であることをつかみ、単なる酸素濃度を低下するだけでは鮮度を保持するのは難しいとの結論に至った。
さらには、大気中で包装し、野菜自体が発生した二酸化炭素ガスを袋中にため野菜の呼吸を抑えて保存する方法もあるが、呼吸抑制と変色防止の因果関係が未だ不明であること、またこの方法では低酸素、高二酸化炭素状態になるまでに1〜2日かかり、その間にもカットゴボウの反応が進み変色してしまっていた。
その他の方法としては、薬品でカットゴボウを洗浄し変色を防ぐ方法もあるが薬品の濃度により変色防止効果に差がある。例えば次亜塩素酸ナトリウム水による洗浄では濃度が濃すぎると保存中にカットゴボウの断面が黒く変色し薬品臭が残った。また、濃度が薄すぎると保存中に変色が発生した。薬品による洗浄はカットゴボウの減菌のため必要であるが、変色防止の効果を発揮するためには薬品の濃度調整が難しいため、本発明との併用が望ましい。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、カットゴボウが変色することなく、かつ嫌気呼吸による劣化を防止出来るように、さらには風味や歯ごたえを無くさない包装体を供給することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、カットゴボウを有孔合成樹脂フィルムで包装する際に、ガス置換した密封包装体において、包装後の二酸化炭素濃度を20〜50%、酸素濃度を3〜15%、包装後2日目の二酸化炭素濃度が20〜50%、酸素濃度が3.5〜15%であるカットゴボウの包装体である。更に好ましい形態としては、合成樹脂フィルムが、平均孔径20〜150μmの孔または平均孔径30〜100μmの孔を有しているカットゴボウの包装体である。
【0005】
【発明の実施の形態】
カットゴボウの鮮度を保持するためには、低酸素、高二酸化炭素状態が良い。ゴボウは収穫後も呼吸し、自分の栄養素を消費しそのエネルギーで生存しており、カットするとさらに呼吸がはげしくなる。包装してもそのフィルムのガス透過量が高過ぎると袋内は大気と同じような高酸素状態になりカットゴボウの断面が変色してしまう。また、真空包装では、カットゴボウが嫌気呼吸を起こしアルコール臭等の異臭を発生してしまう。乾燥を防ぐ為に包装した方が良いが、包装する場合にも条件が必要である。
【0006】
本発明においては、保存中の二酸化炭素濃度を20〜50%、酸素濃度を3〜15%に調整する必要がある。二酸化炭素濃度に関しては、フィルムには呼吸に必要な酸素を供給する穴が有る為、袋内の二酸化炭素濃度が高いほど拡散による袋外への排出が進み易くなる。従って、実験の結果保存中の二酸化炭素濃度は50%より高い濃度になることはなかった。さらに実験の結果二酸化炭素濃度が20%未満では変色が発生した。
また、カットゴボウは保存中に呼吸して二酸化炭素を生産しているためフィルムのガス透過量を調整する事で二酸化炭素20%以上を維持出来た。実験の結果、20%以上の高二酸化炭素状態がカットゴボウの表面または浸透して内部において変色反応を抑制する効果があると考えられる。
酸素濃度に関しては、3%未満では保存中の温度が変動し高くなった場合に嫌気状態になり易く、15%を超えると袋内に供給される酸素が多いため逆に二酸化炭素の排出が促進され二酸化炭素が20%以上を保持出来ずに変色が発生し易い。
本発明において、ガス置換の方法としてはカットゴボウの包装時に高二酸化炭素、低酸素の混合ガスを導入置換しても良いし、高二酸化炭素状態に置いて徐々に目的のガス濃度に調整しても良い。
【0007】
本発明において、保存温度は0〜13℃であることが好ましく、更には3〜10℃が好ましい。この温度域は実際の流通・販売に使用されているものである。0℃未満ではゴボウが凍結してしまい生の風味を損なうばかりか呼吸も停止してしまう。また15℃では酸素との反応が活発になり変色が発生し易くなる。変色を防止するには請求項記載よりも低酸素、高二酸化炭素が必要であるが、袋内が嫌気状態になりカットゴボウが異臭を発生し易い為ガス濃度管理が難しい。
【0008】
本発明に使用するカットゴボウはカット形状が、ササガキ、千切り、輪切り等のようにスライスしカット面が多く露出しているものである。カットしてないゴボウを本発明以外の方法で袋保存した場合呼吸も少なく臭気も良好で、変色も起きにくい。 逆に、スライスしカット面が多く露出しているゴボウを保存した場合呼吸も活発で嫌気状態による悪臭も発生し易く、変色も起き易い。従って、本発明のように悪臭と変色を防止する必要がでてくる。
【0009】
本発明における合成樹脂フィルムの酸素、二酸化炭素透過量はカットゴボウ1gあたり1〜5cc/bag・atm・24hであることが好ましい。酸素透過量が1cc/bag・atm・24h未満ではカットゴボウの呼吸に必要な酸素を袋内に供給できずに嫌気呼吸による異臭を発生してしまい、5cc/bag・atm・24hを超えると供給過多で酸素濃度が15%を超え、逆に二酸化炭素の排出が促進され変色防止に必要な二酸化炭素濃度20%以上を維持出来なくなる。
【0010】
通常フィルムのガス透過量を調節するにはフィルムの選択透過性を用いてフィルムの厚さを調節する方法とフィルム表面に微孔を設ける方法がある。
実際に使用するためには鮮度保持をする条件以外に、易包装性、防曇性、価格などを考慮することが多く、さらには目的のガス濃度に調整し易くするために有孔合成樹脂フィルムのほうが好ましい。
【0011】
本発明に用いるフィルムとしては、カットゴボウの包装に用いることのできるものであれはどのようなものであっても差し支えないが、一般には無延伸ポリプロピレン、延伸ポリプロピレン、ポリエチレン等が用いられるが、これ等以外のポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート等のフィルム、さらにはこれらの複合フィルムであっても良く、さらには、これらのフィルム表面に接着層を設けたものでも、防曇処理したフィルムであっても何等差し支えはない。また、これらのフィルムの厚さは通常20〜60μmのものが用いられる。さらに、これらのフィルムは透明であっても、不透明であっても良く、また表面に印刷を付したものであっても何等差し支えはない。ただし、本発明のガス濃度を維持する為にはヒートシール性を有したフィルムでシールにより完全密封しなければならない。
また、フィルムの透過量はその材質によって一義的に決まっており、厚さに反比例する。包装されるカットゴボウの重量に応じてその厚さを調整することも可能であり、不足するときには20〜150μm、好ましくは30〜100μm程度の孔をフィルムに数個〜数百個/m2設け、カットゴボウ1g当たりの酸素、及び二酸化炭素透過量が1〜5cc/bag・atm・24hに調整することも可能である。
【0012】
有孔フイルムで調整するときには、孔部の平均径はできるだけ小さいことが望ましく、一般的には20〜150μm、好ましくは30〜100μm程度である。孔径はできるだけ小さいことが望ましいが、20μm以下では有孔フイルムの生産性が低下する。また、平均孔径が150μm以上であれば、適正な開孔面積比率を得るに必要な孔数が減少して、鮮度保持の品質精度に不安が生じる。また、孔の形状は、円形や四角または三角形など、どのような形状であってもよく、長径方向の平均径が150μm以下であれば何等差し支えはないが、円形が開孔作業性等の面より望ましい。
また、カットゴボウ包装袋に用いる有孔フイルムの袋当たりの孔の個数は開孔面積比率と平均孔径より算出されるが、できる限り複数個とすることが望ましい。内容物の付着や外的条件たとえば値段表の添付等で孔がふさがれてしまう場合があるので、鮮度を保証するには複数個の孔が好ましく、さらに袋あたり5個以上の孔をもち、孔1個あたりの影響度を20%以下にすることが望ましい。
また、カットゴボウの包装袋としては、三方シール袋、四方シール袋またはガゼット袋などの形態の袋であっても何等差し支えなく、さらには、トレー、カップ等にカットゴボウを充填し、これを包装袋で包装する形態のものであってもよい。
【0013】
【実施例】
《実施例1》
内寸が140×220mmでカットゴボウ1gあたりの酸素透過量が2.5cc/bag・atm・24hの厚さ30μmの延伸ポリプロピレンで、ゴボウは1mm厚のささがきにスライスされ、減菌の為次亜塩素酸ナトリウム水50ppmで5分浸漬し、水洗・脱水処理後300g充填した。包装時の二酸化炭素濃度を90%になるように導入・調整し、ヒートシール後5℃で7日間保存し変色と臭気を官能検査した。
《実施例2》
実施例1と同じサイズとフィルムで同様の処理したカットゴボウを300g充填した。混合ガス(二酸化炭素濃度を50%、酸素濃度を3%)で完全に置換し、ヒートシール後5℃で7日間保存し変色と臭気を官能検査した。
《実施例3》
実施例1と同じサイズでカットゴボウ1gあたりの酸素透過量が3.3cc/bag・atm・24hの厚さ30μmの延伸ポリプロピレンで、同様の処理したカットゴボウを300g充填した。包装時の二酸化炭素濃度を90%になるように導入・調整し、ヒートシール後10℃で7日間保存し変色と臭気を官能検査した。
《実施例4》
実施例1と同じサイズでカットゴボウ1gあたりの酸素透過量が4cc/bag・atm・24hの厚さ30μmの延伸ポリプロピレンで、同様の処理したカットゴボウを300g充填した。包装時の二酸化炭素濃度を90%になるように導入・調整し、ヒートシール後5℃で7日間保存し変色と臭気を官能検査した。
実施例1〜4の結果を表1に示す。
【0014】
《比較例1》
実施例1と同じサイズとフィルムで同様の処理をしたカットゴボウを300g充填した。包装時の窒素濃度を95%になるように導入・調整し、ヒートシール後5℃で7日間保存し変色と臭気を官能検査した。
《比較例2》
実施例1と同じサイズでカットゴボウ1gあたりの酸素透過量が0.5cc/bag・atm・24hの同様の処理したカットゴボウを300g充填した。混合ガス(二酸化炭素濃度を50%、酸素濃度を3%)で完全に置換し、ヒートシール後5℃で7日間保存し変色と臭気を官能検査した。
《比較例3》
実施例1と同じサイズでカットゴボウ1gあたりの酸素透過量が7cc/bag・atm・24hの厚さ30μmの延伸ポリプロピレンで、同様の処理したカットゴボウを300g充填した。包装時の二酸化炭素濃度を90%になるように導入・調整し、ヒートシール後10℃で7日間保存し変色と臭気を官能検査した。
《比較例4》
実施例1と同じサイズでカットゴボウ1gあたりの酸素透過量が4cc/bag・atm・24hの厚さ30μmの延伸ポリプロピレンで、同様の処理したカットゴボウを300g充填した。包装時の二酸化炭素濃度を90%になるように導入・調整し、ヒートシール後15℃で7日間保存し変色と臭気を官能検査した。
比較例1〜4の結果を表2に示す。
【0015】
【表1】
【0016】
【表2】
【0017】
【発明の効果】
本発明の包装体により、カットゴボウが変色することなく、かつ嫌気呼吸による異臭発生を防止でき、さらには風味や歯ごたえを無くさないように保存できる。
Claims (2)
- カットゴボウを有孔合成樹脂フィルムで包装する際に、ガス置換した密封包装体において、前記有孔合成樹脂フィルムは平均孔径20〜150μmの孔を有し、密封包装体の包装後の二酸化炭素濃度を20〜50%、酸素濃度を3〜15%に調整し、包装後2日目の二酸化炭素濃度が20〜50%、酸素濃度が3.5〜15%であることを特徴とするカットゴボウの包装体。
- 合成樹脂フィルムが、平均孔径30〜100μmの孔を有する請求項1記載のカットゴボウの包装体。
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JP35882697A JP3765659B2 (ja) | 1997-12-26 | 1997-12-26 | カットゴボウの包装体 |
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JPH11187812A JPH11187812A (ja) | 1999-07-13 |
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JP (1) | JP3765659B2 (ja) |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN104920585A (zh) * | 2015-05-26 | 2015-09-23 | 浙江大学 | 一种维持水蜜桃果实香气品质的方法 |
-
1997
- 1997-12-26 JP JP35882697A patent/JP3765659B2/ja not_active Expired - Fee Related
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