JP3765188B2 - 浸炭測定方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、炭化水素等を加熱する炉等に使用されている輻射管等の内面に生じた浸炭部を検出し、その厚さを測定するための浸炭測定方法およびそれを用いた浸炭測定装置に関し、特に、輻射管の外表面に強磁性体からなる層が形成された輻射管における浸炭部の厚さを測定するための浸炭測定方法およびそれを用いた浸炭測定装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
炭化水素等を加熱する炉等に使用されている輻射管には、管内を移送されるガス中の炭素の吸着および金属中への拡散により、浸炭と呼ばれる損傷が発生する。浸炭された部分(浸炭層)は、浸炭されていない部分(健全層)に比して、機械的強度が著しく劣る部分である。従って、輻射管における浸炭層の有無および浸炭層の厚さを把握することは重要である。
【0003】
そこで、従来より、浸炭層の厚さを測定する方法として、電磁誘導法と呼ばれる方法が知られている。この方法は、健全層が非磁性体である一方、浸炭層が磁性体であることを利用したものであり、輻射管の外表面に設置したコイルに交流を流し、コイルのインピーダンスを測定する方法である。
【0004】
すなわち、強磁性体の浸炭層と非磁性体の健全層とでは、比透磁率等の磁気的性質が異なるため、コイルのインピーダンスは、コイルから浸炭層までの距離に応じて変化する。従って、インピーダンスを測定することによって、輻射管の外表面から浸炭層までの距離が測定でき、この距離を輻射管の厚さから差し引くことで、浸炭層の厚さを求めることができるようになっている。
【0005】
また、輻射管の外面側には、数100μm程度までの厚さを有する、酸化層と呼ばれる強磁性層が発生することが知られている。この酸化層とは、以下のようなものである。すなわち、輻射管の外面側が酸化されてクロム酸化物が生成されると、輻射管中のクロムが管の外表面に拡散されてしまい、管内にクロム量の少ない領域が発生する。このクロム量の少ない領域が、酸化層(脱クロム層)である。
【0006】
酸化層は強磁性体であるから、電磁誘導法による浸炭層の検出・厚さ測定に大きな影響を及ぼしてしまう。従って、従来の電磁誘導法によっては、酸化層が発生した輻射管に対しては、浸炭層の厚さを測定することができなかった。
【0007】
そこで、本願発明者は、この酸化層の影響を排除し、輻射管における浸炭層の厚さを測定するための方法および装置を開発し、特許公報第2616105号において開示している。
【0008】
この公報における方法では、電磁誘導法によって浸炭層の厚さを計測するために、インピーダンス検出用のコイル内に配された永久磁石によって、上記した酸化層(上記公報では脱クロム層と表記)を磁化するようになっている。これにより、酸化層の比透磁率を、非磁性体の比透磁率に近づけることができるので、この層の影響を回避することができる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、最近、輻射管の外表面に、最大厚さ2mm程度の、強磁性体の窒化層が発生していることが確認された。この窒化層は、輻射管のクロムが燃焼ガス中の窒素と化合することにより発生する。この窒化層は、上記した酸化層と同様に、クロム量の少ない強磁性の領域である。このため、酸化層と同様に、窒化層も電磁誘導法による浸炭層の厚さ測定に大きな影響を及ぼしてしまう。
【0010】
さらに、この窒化層の厚さは、上記した酸化層の数10倍であるため、上記公報における方法によって窒化層の比透磁率を非磁性体と同様の値に近づけるだけでは、この窒化層の影響を排除することはできなかった。従って、従来の方法では、窒化層が発生した輻射管に対しては、浸炭層の厚さ測定を行うことはできなかった。
【0011】
また、この窒化層自身も、浸炭層と同様に脆いため、この層が発生しているかどうかを検出することは、輻射管の検査における重要な課題となっている。
【0012】
本発明は、上記従来の問題点を解決するためになされたもので、その目的は、輻射管の外表面に、窒化層のような強磁性層が形成されていても、浸炭層の厚さを正確に求めることができる浸炭測定方法およびそれを用いた浸炭測定装置を供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明の浸炭測定方法は、電磁誘導法により輻射管の内表面に形成された浸炭層の厚さを測定する浸炭測定方法において、それぞれが略円筒形状をした、外径が輻射管の外表面に形成される窒化層の最大厚さの4倍を超えない大きさとなっている窒化層検出用コイルと、窒化層検出用コイルの外側に配されたマグネットと、外径が輻射管の厚みの少なくとも4倍となっているマグネットの外側に配された浸炭層検出用コイルと、を備えた浸炭測定プローブを用いて行うと共に、予め、輻射管の外表面に窒化層が有る場合と窒化層が無い場合とに分けて、浸炭層検出用コイルから測定したインピーダンスと非浸炭層の厚みとの相関関係を記憶させておき、輻射管にほぼ垂直に隣接させた窒化層検出用コイルにて測定したインピーダンスから、輻射管の外表面に窒化層があるかどうかを検出し、輻射管にほぼ垂直に隣接させた浸炭層検出用コイルによってインピーダンスを測定し、窒化層検出用コイルにて検出した窒化層の有無、および、浸炭層検出用コイルにて測定したインピーダンスから、非浸炭層の厚みを求め、輻射管の厚みから非浸炭層の厚みを差し引きすることによって浸炭層の厚みを求めることを特徴としている。 本発明の浸炭測定方法では、上記窒化層の比透磁率が、非磁性体の比透磁率に近づけられている。
【0014】
また、本発明の浸炭測定方法は、電磁誘導法により輻射管の内表面に形成された浸炭層の厚さを測定する浸炭測定方法において、輻射管の外表面における強磁性層の有無を検出する第1の工程と、輻射管の表面に隣接させた検出コイルに交流を流し、この検出コイルのインピーダンスを測定する第2の工程と、上記第1の工程における検出結果と上記第2の工程における測定結果とに基づいて、上記浸炭層の厚さを測定する第3の工程とを含んでいる。
【0015】
上記の方法における輻射管とは、例えば、炭化水素等を加熱する炉等に使用されている配管等であり、非磁性体を材料として形成されているものである。そして、ある程度の長期間、このような輻射管を使用すると、その内表面には、機械的強度が弱い、強磁性体からなる浸炭層が形成されてしまう。そして、上記の方法では、この浸炭層の有無の検出・厚さ測定を、電磁誘導法によって行うようになっている。
【0016】
すなわち、上記の方法では、輻射管の表面に隣接させた検出コイルに交流電流を流し、コイルのインピーダンスを測定するようになっている。このインピーダンスは、輻射管における外表面から浸炭層までの層(非浸炭層)の厚さに応じて変化する。すなわち、非浸炭層の厚さとインピーダンスとの間には、相関関係が存在する。従って、電磁誘導法では、コイルのインピーダンスを測定することで、非浸炭層の厚さを求めることができる。そして、非浸炭層の厚さを、輻射管本来の厚さから差し引くことで、浸炭層の厚さを求めることが可能となる。
【0017】
また、このような輻射管の外表面には、酸化や窒化により、酸化層や窒化層といった強磁性層が形成されることがある。そして、電磁誘導法によって非浸炭層の厚さを求める際に、輻射管の外表面に強磁性層が形成されていると、上記したインピーダンスと非浸炭層の厚さとの相関関係が崩れてしまう。このため、測定されたインピーダンスから、非浸炭層の厚さおよび浸炭層の厚さを正確に求めることができなくなる。
【0018】
そこで、上記の方法では、輻射管の外表面に強磁性層が形成されている場合でも、非浸炭層および浸炭層の厚さを正確に求めることが可能となるように、上記した第1ないし第3の工程を含んでいる。
【0019】
すなわち、第1の工程では、輻射管の外表面における強磁性層の有無を検出するようになっている。この検出は、例えば、交流を流したコイルのインピーダンスを測定することによって行うことが好ましい。
【0020】
そして、第2の工程では、輻射管に隣接させた検出コイルに交流を流し、このコイルのインピーダンスを測定する。
【0021】
そして、第3の工程では、第1の工程における検出結果と、第2の工程における測定結果とに基づいて、浸炭層の厚さを求めるようになっている。すなわち、検出コイルにおけるインピーダンスと非浸炭層の厚さとの関係には、外表面に強磁性層がある場合の第1の関係と、強磁性層がない場合の第2の関係との2種類がある。
【0022】
従って、第3の工程では、まず、第1の工程における強磁性層の有無の検出結果より、上記第1および第2の関係のいずれを用いるかを選択する。そして、選択された関係に基づいて、第2の工程において測定されたインピーダンスから、非浸炭層の厚さを求める。そして、この非浸炭層の厚さを、輻射管の本来の厚さから差し引くことで、浸炭層の厚さを求めるようになっている。
【0023】
このように、上記の方法によれば、輻射管の外表面に強磁性層が形成されていても、輻射管の内表面に形成された浸炭層の厚さを、正確に測定することが可能となる。従って、輻射管の損傷状況を正確に判断することが可能となるので、輻射管を利用した装置・施設の安全性を高めることが可能となる。
【0024】
なお、インピーダンスと非浸炭層の厚さとの相関関係を求めるときには、特に、インピーダンスの位相角と非浸炭層の厚さとの相関関係を求めるようにすることが好ましい。インピーダンスの位相角とは、インピーダンスにおける直流抵値の大きさとリアクタンスの大きさとの比に応じたものであり、リアクタンスを直流抵抗値で割って得た値が、正接(tangent)値となるような角度のことである。インピーダンスの位相角と非浸炭層の厚さとには、非常に明確な相関関係があるので、上記に記載の方法を実現することが容易となる。なお、位相角は、例えば、ベクトル表示方式の探傷器によって測定することもできる。
【0025】
また、本発明の浸炭測定方法では、上記強磁性層の比透磁率が、非磁性体の比透磁率に近づけられる第4の工程が含まれている。
【0026】
通常、輻射管の外表面に形成される強磁性層の比透磁率は、非磁性体の比透磁率、すなわち、1よりも大きい。従って、この強磁性層における比透磁率は、上記第2の工程におけるインピーダンス測定に影響を及ぼしてしまう。
【0027】
そこで、上記の方法では、第4の工程において、強磁性層における比透磁率を、非磁性体の値、すなわち、輻射管における健全層の値に近づけるようになっている。これにより、上記第2の工程における検出コイルからの磁界が、輻射管の内表面にまで確実に到達するようになる。従って、上記の方法によれば、非浸炭層および浸炭層の厚さを、より正確に求めることが可能となる。
【0028】
なお、この第4の工程は、強磁性層に対して、所定以上の強さの磁界を印加することによって行われることが好ましい。強磁性層に、その磁気が飽和する程度以上の磁界を印加すると、この強磁性層の比透磁率は、非磁性体と同様、ほぼ1となる。このようにすれば、上記に記載の方法を実現することが容易となる。
【0029】
また、本発明の浸炭測定装置は、電磁誘導法により輻射管の内表面に形成された浸炭層の厚さを測定する浸炭測定装置において、輻射管の外表面における強磁性層の有無を検出する強磁性層検出部と、輻射管の外表面における強磁性層の有無と、輻射管の外表面から浸炭層までの距離とに応じて、インピーダンスが変化する検出コイルとを有している。
【0030】
上記の構成において、輻射管とは、例えば、炭化水素等を加熱する炉等に使用されている配管等であり、非磁性体を材料として形成されているものである。そして、ある程度の長期間、このような輻射管を使用すると、その内表面には、機械的強度が弱い、強磁性体からなる浸炭層が形成されてしまう。そして、上記の構成では、この浸炭層の有無の検出・厚さ測定を、電磁誘導法によって行うようになっている。
【0031】
すなわち、上記の構成では、輻射管の表面に隣接させた検出コイルに交流を流し、コイルのインピーダンスを測定するようになっている。このインピーダンスは、輻射管の外表面から浸炭層までの距離、すなわち、非浸炭層の厚さに応じて変化する。すなわち、このインピーダンスと非浸炭層の厚さとの間には、相関関係が存在する。従って、電磁誘導法では、コイルのインピーダンスを測定することで、非浸炭層の厚さを求めることができる。そして、非浸炭層の厚さを、輻射管本来の厚さから差し引くことで、浸炭層の厚さを求めることが可能となる。
【0032】
また、このような輻射管の外表面には、酸化や窒化により、酸化層や窒化層といった強磁性層が形成されることがある。そして、電磁誘導法によって非浸炭層の厚さを求める際に、輻射管の外表面に強磁性層が形成されていると、上記した、インピーダンスと非浸炭層の厚さとの相関関係が崩れてしまう。このため、測定されたインピーダンスから、非浸炭層の厚さ、および浸炭層の厚さを正確に求めることが困難になる。
【0033】
そこで、上記の構成では、検出コイルにおけるインピーダンスと非浸炭層の厚さとの間には相関関係があること、および、この関係は、輻射管の外表面における強磁性層の有無によって変化することを利用したものとなっている。
【0034】
すなわち、上記の構成では、輻射管の外表面に強磁性層がある場合とない場合とにおける、検出コイルのインピーダンスと非浸炭層の厚さとの関係を、あらかじめ求めておく。すなわち、外表面に強磁性層がある場合の第1の関係と、強磁性層がない場合の第2の関係との2種類をそれぞれ求めておく。
【0035】
そして、実際の浸炭層の厚さ測定では、検出コイルのインピーダンスを測定するとともに、強磁性層検出部によって、輻射管の外表面における強磁性層の有無を検出するようになっている。
【0036】
そして、強磁性層検出部による検出結果により、上記第1および第2の関係のいずれを用いるかを選択し、選択したほうの関係に基づいて、測定された検出コイルのインピーダンスから、非浸炭層の厚さを求める。そして、この非浸炭層の厚さを、輻射管の本来の厚さから差し引くことで、浸炭層の厚さを求めるようになっている。
【0037】
このように、上記の構成によれば、輻射管の外表面に強磁性層が形成されていても、輻射管の内表面に形成された浸炭層の厚さを、正確に測定することが可能となる。従って、輻射管の損傷状況を正確に判断することが可能となるので、輻射管を利用した装置・施設の安全性を高めることができる。
【0038】
なお、インピーダンスと非浸炭層の厚さとの相関関係を求めるときには、特に、インピーダンスの位相角と非浸炭層の厚さとの相関関係を求めるようにすることが好ましい。
【0039】
また、本発明の浸炭測定装置は、上記強磁性層検出部は、この検出コイルより外径が小さいコイルであることが好ましい
【0040】
上記の構成によれば、強磁性層検出部は、上記した検出コイルより外径が小さいコイルからなるようになっている。そして、このコイルに交流を流し、そのインピーダンスを測定することによって、輻射管の外表面における強磁性層の有無を検出するようになっている。このようなコイルによって強磁性層検出部を構成することで、上記に記載の浸炭測定装置を実現することが容易となる。
【0041】
また、電磁誘導法に用いられるコイルの磁界は、コイルの外径が大きいほど有効な到達距離が長くなる。このため、上記検出コイルの外径は、輻射管の内表面まで測定に有効な磁界を到達させるために、十分な大きさであることが好ましい。
【0042】
また、強磁性層検出部となるコイルは、輻射管の外表面にある強磁性層の有無を検出するものであるから、輻射管の内表面にある浸炭層まで到達する磁界を発生させるような、大きい外径のものは好ましくない。従って、強磁性層検出部となるコイルは、強磁性層を検出できる程度に、検出コイルより外径が小さいものが好ましい。
【0043】
本発明の浸炭測定装置は、上記強磁性層の比透磁率を非磁性体の比透磁率に近づけるためのマグネットを備えている
【0044】
通常、輻射管の外表面に形成される強磁性層の比透磁率は、非磁性体の比透磁率、すなわち、1よりも大きい。従って、この強磁性層における比透磁率は、上記検出コイルにおけるインピーダンス測定に影響を及ぼしてしまう。
【0045】
そこで、上記の構成では、マグネットによって、強磁性層に、その磁気が飽和する程度以上の磁界を印加するようになっている。このマグネットとしては、永久磁石を用いるようにしてもよいし、電磁石でもよい。マグネットからこのような磁界を印加された強磁性層は、比透磁率が、非磁性体の値、すなわち、輻射管における健全層の値に近づくようになる。
【0046】
これにより、上記検出コイルからの磁界が、輻射管の内表面にまで確実に到達するようになる。従って、上記の構成によれば、非浸炭層および浸炭層の厚さを、より正確に求めることが可能となる。
【0047】
【発明の実施の形態】
本発明の一実施の形態について以下に説明する。
【0048】
本実施の形態にかかる浸炭測定装置(以下、本浸炭測定装置とする)は、炭化水素等を加熱する炉等に使用されている輻射管(以下、単に輻射管とする)における浸炭層の厚さを、正確に検出するためのものである。
【0049】
本浸炭測定装置の構成を説明する前に、まず、ある程度長期間に渡って使用された輻射管の状態を説明する。
【0050】
図2は、このような輻射管における断面の一部の例を示す説明図である。この図に示すように、ある程度長期間に渡って使用された輻射管には、浸炭層,健全層,窒化層および酸化層が形成されている。
【0051】
健全層とは、輻射管の本来の材料からなる層であり、非磁性の層である。
【0052】
この健全層の内表面に形成される浸炭層は、輻射管内を移送されるガス中の炭素の吸着および金属中への拡散により発生する層であり、強磁性を有する層である。そして、この浸炭層は、健全層に比して機械的な強度に劣った、輻射管の損傷部分である。従って、浸炭層が厚くなりすぎた輻射管は、危険であるため、取り替える必要がある。
【0053】
また、健全層の外側に形成される酸化層(脱クロム層)は、健全層中のクロムが酸化によって失われることにより形成される層である。この酸化層は、強磁性を有する層であり、数100μm程度までの厚さとなる。
【0054】
また、酸化層と同じく、健全層の外側に形成される窒化層は、健全層のクロムが窒素と化合することにより発生する層であり、浸炭層と同様に、健全層に比して機械的な強度が劣る部分である。また、この窒化層は、強磁性を有する層であり、最大厚さは2mm程度である。
【0055】
次に、本浸炭測定装置における強磁性層の検出方法である、電磁誘導法について説明する。図3は、本浸炭測定装置における電磁誘導法を示す説明図である。この図に示すように、この方法では、輻射管にほぼ垂直に隣接させた検出コイルKに交流を流し、輻射管に渦電流を発生させるようになっている。
【0056】
交流が流された検出コイルKのインピーダンスは、この検出コイルKから発生する磁力線Gが通過する領域(十分強い渦電流が形成される領域)に存在する物質の、透磁率や導電率等の電気磁気特性に依存する。また、輻射管に形成されている強磁性層(浸炭層,酸化層および窒化層等)は、健全層とは透磁率や導電率等が大きく異なるものである。
【0057】
このため、検出コイルKのインピーダンスは、輻射管の外表面から強磁性層までの距離、すなわち、非強磁性層の厚さに依存することになる。従って、検出コイルKのインピーダンスと非強磁性層の厚さとの相関関係をあらかじめ取得しておけば、検出コイルKのインピーダンスを測定することによって、輻射管における非強磁性層の厚さを求めることができる。そして、非強磁性層の厚さを輻射管の本来の厚さから差し引くことで、強磁性層の厚さを測定することが可能となる。
【0058】
また、この電磁誘導法では、インピーダンスの測定に有効な密度の磁力線(以下、有効磁力線とする)が到達する距離δは、検出コイルKの外径Dに比例する。すなわち、δとDとは、下記の式(1)の関係となる。
【0059】
δ=D/4 …(1)
このように、距離δは、検出コイルKにおける外径Dに比例するようになっている。
【0060】
なお、検出コイルKが発生する有効磁力線の到達距離に比べて強磁性層が十分薄い場合には、検出コイルKのインピーダンスは、この強磁性層だけでなく、この層の内側に形成されている他の強磁性層の厚さにも依存する。
【0061】
また、この式(1)に示したδは、輻射管に強磁性層が形成されていない場合の式である。強磁性層がδより遠い位置に形成されている場合、有効磁力線は、この強磁性層まで到達することがある。
【0062】
また、輻射管にほぼ垂直に隣接させた検出コイルKに交流を流し、輻射管に渦電流を発生させる際、標準浸透深さδ’(Standard Depth of Penetration)は、コイルKに流される交流電流の周波数f(Hz),輻射管における導電率σ(%|ACS)および比透磁率μr により、以下の式(2)で表すこともできる。
【0063】
δ’=50・(172.41/σμr f)1/2 …(2)
なお、このδ’は、輻射管の表面に発生する渦電流の37%の強さの渦電流が発生する部分の、表面からの深さである。
【0064】
次に、本浸炭測定装置の構成について説明する。
【0065】
図4は、本浸炭測定装置の構成を示す説明図である。この図に示すように、本浸炭測定装置は、浸炭測定プローブ21,発振器22,増幅器23,移相器24,90°固定移相器25,第1同期検波器26,第2同期検波器27および表示装置28を備えている。
【0066】
浸炭測定プローブ21は、輻射管における非浸炭層(輻射管における外表面から浸炭層までの部分)の厚さと窒化層の有無とに応じたインピーダンスを有する浸炭層検出用コイルと、窒化層の有無に応じたインピーダンスを有する窒化層検出用コイルとを備えているものである。そして、この浸炭測定プローブ21は、浸炭層の厚さ測定の際には、輻射管に隣接して設置されるものである。なお、浸炭測定プローブ21の詳細な構成については後述する。
【0067】
発振器22〜表示装置28は、上記各コイルのインピーダンスを測定・表示するための、ベクトル表示方式の探傷器を構成するものである。すなわち、発振器22は、浸炭測定プローブ21に設けられたコイルに、所定周波数の交流を流すためのものである。また、増幅器23は、浸炭測定プローブ21から得られた、上記各コイルのインピーダンスに応じた信号(インピーダンス信号)を増幅するためのものである。
【0068】
また、本浸炭測定装置では、π/2、すなわち、90°の位相差をもつ2つの制御信号を用いて、入力信号との同期検波を行い、検波出力を表示装置28上のX軸とY軸とに加えるようになっている。図4に示した移相器24および90°固定移相器25は、これら90°の位相差をもつ2つの制御信号を、発振器22からの出力信号から生成するものである。上記した表示装置28は、CRT(Cathode-Ray-Tube)や液晶表示装置からなり、本浸炭測定装置における測定結果を表示するためのものである。
【0069】
また、第1同期検波器26および第2同期検波器27は、増幅器23から入力されたインピーダンス信号を、それぞれ,移相器24および90°固定移相器25から入力された制御信号によって検波するものである。そして、これら同期検波器26・27は、得られた検波出力を増幅し、フィルタ処理,リジェクション処理等の必要な処理を施した後、出力信号Ex・Eyとして表示装置28上のX軸およびY軸に加える。
【0070】
これにより、本浸炭測定装置では、浸炭測定プローブ21における各コイルのインピーダンスを、表示装置28上にベクトル波形として表示するようになっている。なお、表示装置28には、浸炭測定プローブ21における各コイルのインピーダンスにおけるベクトル波形,X振幅値,Y振幅値および位相角が示されるようになっている。
【0071】
次に、本浸炭測定装置の特徴的な構成である、複数の検出コイルを備えた浸炭測定プローブ21の構成について説明する。図5は、浸炭測定プローブ21の構成を示す説明図である。この図に示すように、浸炭測定プローブ21は、浸炭層検出用バランスコイル1,浸炭層検出用コイル2,マグネット3・3,窒化層検出用バランスコイル4,窒化層検出用コイル5,強磁性体からなる継磁鉄10、同じく強磁性体からなる磁気シールド11および非磁性体からなるコイルケース12を備えている。
【0072】
また、図6は、浸炭測定プローブ21を、図5に示した矢印Aの示す方向から示した説明図である。図5および図6に示すように、浸炭測定プローブ21は略円柱形であり、上記した各部材1〜5・10〜12は、全て略円筒形状となっている。また、浸炭測定プローブ21は、この矢印Aの方向から輻射管に隣接するように設置される。
【0073】
浸炭測定プローブ21におけるマグネット3・3は、輻射管における強磁性の酸化層および窒化層の比透磁率を、非磁性体の比透磁率、すなわち、1に近づけるためのものである。
【0074】
これらマグネット3・3は、浸炭層検出用バランスコイル1および浸炭層検出用コイル2の内側に、継磁鉄10を挟んで配されている。そして、各マグネット3は、リング状の永久磁石20が、複数枚積層されて形成されている。なお、この永久磁石20の材料としては、例えば、希土類鉄磁石からなるNEOMAX−32H(住友特殊金属(株)製)等を用いることができる。
【0075】
なお、本浸炭測定装置では、このマグネット3・3によって、浸炭層検出用コイル2および窒化層検出用コイル5のインピーダンスに対する酸化層および窒化層における透磁率の影響を完全に回避することが可能となっている。さらに、酸化層は、上記したように窒化層等に比して非常に薄いので、上記検出用コイル2・5には、酸化層の導電率による影響は現れない。従って、本浸炭測定装置では、マグネット3・3によって、酸化層の影響を完全に回避することが可能となっている。
【0076】
浸炭層検出用コイル(検出コイル)2は、上記した電磁誘導法によって、輻射管における非浸炭層の厚さを測定するための検出コイルである。そして、浸炭層検出用コイル2の外径は、浸炭測定プローブ21が輻射管に設置されたとき、浸炭層がない輻射管における内表面まで有効磁力線が到達するように設定されている。例えば、輻射管の厚さが7mmであれば、浸炭層検出用コイル2の外径は約28mmに設定される。
【0077】
浸炭層検出用コイル2の外径をこのように設定することによって、浸炭層検出用コイル2のインピーダンスは、輻射管における非浸炭層の厚さに依存するようになる。
【0078】
また、浸炭層検出用コイル2のインピーダンスは、輻射管の外表面に存在する、強磁性の窒化層の有無にも依存する。すなわち、浸炭層検出用コイル2のインピーダンスは、この窒化層の有無に応じて変化するようになっている。
【0079】
また、浸炭層検出用バランスコイル1は、浸炭層検出用コイル2と同一のサイズおよび形状を有するコイルである。これらコイル1・2は、それぞれマグネット3・3の外側に配されており、例えば、ホルマリン銅線をソレノイドコイル状に巻線することで形成される。
【0080】
窒化層検出用コイル(強磁性層検出部)5は、輻射管の外表面における窒化層の有無を検出するための検出コイルである。また、窒化層検出用コイル5の外径は、浸炭測定プローブ21が輻射管に設置されたとき、輻射管の外表面から浸炭層検出用コイル2の不感帯域を越えるまで有効磁力線が到達するように設定されている。例えば、浸炭層検出用コイル2の不感帯域の厚さが2.5mmであれば、窒化層検出用コイル5の外径は約10mmに設定される。
【0081】
窒化層検出用コイル5の外径をこのように設定することによって、窒化層検出用コイル5のインピーダンスは、輻射管の外表面における窒化層の有無に依存するようになる。すなわち、窒化層検出用コイル5のインピーダンスは、この窒化層の有無に応じて変化するようになっている。
【0082】
また、窒化層検出用バランスコイル4は、窒化層検出用コイル5と同一のサイズおよび形状を有するコイルである。これらコイル4・5は、それぞれマグネット3・3の内側に配されており、例えば、ホルマリン銅線をソレノイドコイル状に巻線することで形成される。
【0083】
また、浸炭層検出用バランスコイル1と浸炭層検出用コイル2と、および、窒化層検出用バランスコイル4と窒化層検出用コイル5とは、それぞれ独立した回路を形成している。図7は、これらの回路の等価回路となるブリッジ回路の構成を示す説明図である。
【0084】
この図に示すように、このブリッジ回路は、可変抵抗R1・R2,コイルL1・L2,発振器Eおよび検出器Dを備えた、自己比較方式・自己誘導形コイルブリッジである。
【0085】
この回路における発振器Eは、本浸炭測定装置における発振器22に相当する。また、同じく検出器Dは、本浸炭測定装置における増幅器23〜表示装置28までの構成に相当する。また、この回路におけるコイルL1は、本浸炭測定装置における浸炭層検出用バランスコイル1あるいは窒化層検出用バランスコイル4に相当する。また、コイルL2は、浸炭層検出用コイル2あるいは窒化層検出用コイル5に相当する。また、可変抵抗R1・R2は、本浸炭測定装置における図示しない可変抵抗に相当するものである。
【0086】
このブリッジ回路では、コイルL1のインピーダンスは、図示しない接地回路等により変化しないようになっている。一方、コイルL2のインピーダンスは、コイルL2のおかれた環境によって変化する。そして、この回路では、コイルL2のインピーダンスを、検出器Dによって測定するようになっている。
【0087】
従って、本浸炭測定装置では、浸炭層検出用バランスコイル1および窒化層検出用バランスコイル4のインピーダンスは変化しないようになっている。一方、浸炭層検出用コイル2および窒化層検出用コイル5のインピーダンスは、増幅器23〜表示装置28によって測定・表示されるようになっている。
【0088】
次に、本浸炭測定装置における浸炭層の厚さ測定について説明する。図1は、本浸炭測定装置における浸炭層の厚さ測定を示すフローチャートである。この図に示すように、本浸炭測定装置における浸炭層の厚さ測定では、まず、ユーザが、浸炭測定プローブ21における図5に矢印Aで示した方向に輻射管が隣接されるように、浸炭測定プローブ21を輻射管に設置する(S1)。
【0089】
そして、浸炭測定プローブ21を設置した後、ユーザは、増幅器23〜第2同期検波器27によって窒化層検出用コイル5のインピーダンスを測定させ、表示装置28に表示させる。そして、ユーザは、このインピーダンスを、あらかじめ求めておいた後述する2つの基準のインピーダンスと比較して、輻射管の外表面における窒化層の有無を判定する(S2)。
【0090】
これら2つの基準のインピーダンスとは、輻射管の外表面に窒化層がある場合における窒化層検出用コイル5のインピーダンスと、輻射管の外表面に窒化層がない場合における窒化層検出用コイル5のインピーダンスとのことである。
【0091】
その後、ユーザは、同様に浸炭層検出用コイル2のインピーダンスを測定させる。そして、S2において輻射管に窒化層が形成されていると判断した場合には、ユーザは、あらかじめ求めておいた後述する第1の関係と、浸炭層検出用コイル2のインピーダンスとから、非浸炭層の厚さを求める(S3)。また、S2において、輻射管に窒化層が形成されていないと判断した場合には、ユーザは、あらかじめ求めておいた後述する第2の関係と、浸炭層検出用コイル2のインピーダンスとから、非浸炭層の厚さを求める(S4)。
【0092】
これら第1および第2の関係とは、以下のようなものである。すなわち、第1の関係とは、輻射管の外表面に窒化層がある場合における浸炭層検出用コイル2のインピーダンスと非浸炭層の厚さとの相関関係のことである。また、第2の関係とは、輻射管の外表面に窒化層がない場合における浸炭層検出用コイル2のインピーダンスと非浸炭層の厚さとの相関関係のことである。
【0093】
そして、ユーザは、S3あるいはS4で求めた非浸炭層の厚さを、輻射管の本来の厚さから差し引き、浸炭層の厚さを求める(S5)。
【0094】
以上のように、本浸炭測定装置では、輻射管の外表面に窒化層がある場合とない場合とにおける、浸炭層検出用コイル2のインピーダンスと非浸炭層の厚さとの関係、すなわち、上記した第1および第2の関係を、あらかじめ求めておくようになっている。
【0095】
そして、実際の浸炭層の厚さ測定では、浸炭層検出用コイル2のインピーダンスを測定するとともに、窒化層検出用コイル5のインピーダンスを測定し、このインピーダンスから、輻射管の外表面における窒化層の有無を検出するようになっている。
【0096】
そして、ユーザは、窒化層の有無に応じて、上記第1および第2の関係のいずれを用いるかを選択し、選択したほうの関係に基づいて、浸炭層検出用コイル2のインピーダンスから、非浸炭層の厚さを求めるようになっている。そして、この非浸炭層の厚さを輻射管の本来の厚さから差し引くことで、浸炭層の厚さを求めるようになっている。
【0097】
このように、本浸炭測定装置の構成によれば、輻射管の外表面に窒化層が形成されていても、輻射管の内表面に形成された浸炭層の厚さを、正確に測定することが可能となる。従って、輻射管の損傷状況を正確に判断することが可能となるので、輻射管を利用した装置・施設の安全性を高めることができる。
【0098】
また、窒化層は、浸炭層と同様に機械的強度に劣る部分であるが、本浸炭測定装置を用いれば、窒化層検出用コイル5によって確実に窒化層を検出することができる。従って、輻射管の損傷状況を、さらに正確に判断することが可能となっている。
【0099】
また、本浸炭測定装置では、マグネット3・3によって、窒化層および酸化層の比透磁率を1に近づけるようになっている。これにより、浸炭層検出用コイル2から発生する磁力線は、これら2層に遮られることがないので、浸炭層まで確実に到達することができるようになっている。なお、本浸炭測定装置では、このマグネット3・3によって、浸炭層検出用コイル2のインピーダンスに対する酸化層の影響を完全に回避することが可能となっている。
【0100】
なお、本実施の形態では、浸炭層検出用コイル2あるいは窒化層検出用コイル5のインピーダンスから、非浸炭層の厚さあるいは窒化層の有無を判断するようにしているが、特に、上記コイル2・5におけるインピーダンスの位相角から、非浸炭層の厚さあるいは窒化層の有無を判断することが好ましい。
【0101】
図8(a)(b)は、浸炭層検出用コイル2あるいは窒化層検出用コイル5のインピーダンスを示す説明図である。図8(a)に示すように、コイルのインピーダンスは、コイルの巻線間の容量(キャパシタンス)を無視すると、インダクタンスL(誘導)と抵抗Rとの直列接続によって等価的に表現することができる。
【0102】
従って、コイルのインピーダンスZは、下記の式(3)によって表され、図8(b)のようにベクトル波形で示すことができる。また、このインピーダンスZの絶対値zおよび位相角θは、下記の式(4)および(5)によって表される。なお、ωは、コイルに流される交流の周波数をfとして、2πfなる角周波数である。
【0103】
Z=R+iωL …(3)
z=(R2 +ω2 L2 )1/2 …(4)
θ=tan-1(ωL/R) …(5)
式(5)および図8(b)に示すように、インピーダンスZの位相角θとは、直流抵抗値Rの大きさとリアクタンスωLの大きさとの比に応じたものである。具体的には、直流抵抗値RをリアクタンスωLで割って得た値が、正接(tangent)値となるような角度のことである。
【0104】
この位相角は、輻射管に強磁性層が存在する場合に、強磁性層の有無、あるいは、強磁性層までの距離に応じて変化するようになっている。すなわち、コイルのインピーダンスにおける位相角と、輻射管の外表面から強磁性層までの距離との間には、一定の相関関係がある。従って、この相関関係をあらかじめ保持しておけば、コイルの位相角を測定することにより、強磁性層の有無、あるいは、外表面から強磁性層までの距離を求めることができる。
【0105】
また、非浸炭層の厚さあるいは窒化層の有無の判断には、浸炭層検出用コイル2あるいは窒化層検出用コイル5のインピーダンスにおけるリアクタンスの大きさ、あるいは、直流抵抗値を用いるようにしてもよい。また、位相角,リアクタンスおよび直流抵抗値のいずれか2つあるいは3つを併用するようにしてもよい。
【0106】
なお、本浸炭測定装置における表示装置28に表示されるX振幅値およびY振幅値は、インピーダンスの直流抵抗値およびリアクタンスの大きさに応じたものである。
【0107】
また、本実施の形態では、浸炭測定プローブ21におけるマグネット3は、複数のリング状の永久磁石20が積層されてなるとしているが、マグネット3の構成はこれに限るものではない。例えば、マグネット3として、ソレノイドコイルを用いるようにしてもよい。すなわち、ソレノイドコイルに、直流電流、あるいは、十分に低い周波数の交流を流すことによって、酸化層および窒化層の比透磁率を1に近づけるようにしてもよい。
【0108】
また、本実施の形態では、浸炭測定プローブ21におけるマグネット3・3によって、酸化層および窒化層の比透磁率を1に近づけるとしているが、マグネット3・3は必ずしも必要ない。すなわち、マグネット3・3がない場合でも、浸炭層検出用コイル2からの有効磁力線が、酸化層および窒化層より内部に入る場合には、酸化層および窒化層の比透磁率を1に近づける必要はない。
【0109】
また、本実施の形態では、窒化層検出用コイル5によって窒化層の有無を判断するようにしているが、これに限らず、浸炭層検出用コイル2によって窒化層の厚さを測定するようにしてもよい。この場合には、窒化層の厚さ毎に、浸炭層検出用コイル2のインピーダンスと非浸炭層の厚さとの関係を求めておくことが好ましい。このようにすれば、より正確に浸炭層の厚さ測定を行うことが可能となる。
【0110】
また、本実施の形態では、浸炭測定プローブ21における窒化層検出用コイル5のインピーダンスから、窒化層の有無を判断するようにしているが、本浸炭測定装置の構成はこれに限らない。窒化層の有無の判断は、人間が目視によって行ってもよいし、放射線や超音波を用いて行うようにしてもよい。
【0111】
また、本実施の形態では、ユーザが、発振器22から表示装置28を制御して、浸炭層検出用コイル2および窒化層検出用コイル5のインピーダンスを測定し、窒化層の有無を判断して、第1および第2の関係のいずれかを選択するようになっている。
【0112】
しかしながら、本浸炭測定装置の構成はこれに限らない。すなわち、本浸炭測定装置を、増幅器23〜表示装置28を制御するための制御部と、第1および第2のインピーダンスと第1および第2の関係とを記憶しておくための記憶部とを有する構成とし、図1に示した各ステップを、制御部の制御によって行うようにしてもよい。
【0113】
また、本実施の形態では、増幅器23〜表示装置28により、浸炭層検出用コイル2および窒化層検出用コイル5のインピーダンスを測定するようにしているが、本発明の浸炭測定装置の構成はこれに限らない。本発明の浸炭測定装置は、浸炭測定プローブ21に、従来のベクトル表示方式の探傷器を備えた構成であってもよい。そして、この構成により、浸炭層検出用コイル2および窒化層検出用コイル5のインピーダンスにおけるY振幅値,X振幅値および位相角を測定するようにしてもよい。
【0114】
次に、本浸炭測定装置による浸炭層の検出・厚さ測定を示す実施例を、実施例1および実施例2として以下に説明する。
【0115】
なお、これら実施例に示した各測定を行うために、以下に示すようなサンプル♯1〜♯6,サンプル♯11・♯12,サンプル♯21〜♯25およびサンプル♯41〜♯50を作成した。
【0116】
図9は、これらサンプル♯1〜♯6の構成を示す説明図である。この図に示すように、サンプル♯1〜♯6は、使用済の輻射管(KHR−35H;外径90mm,肉厚9.5mm)の一部(健全層および酸化層)と、強磁性体の炭素鋼(炭素鋼層)とが、積層されてなるサンプルである。すなわち、これらのサンプルは、浸炭層,健全層および酸化層からなる輻射管に応じたサンプルである。この『KHR−35H』という輻射管は、HP合金(25Cr−35Ni−1Mo)からなる、耐熱遠心鋳造管((株)クボタ製)である。
【0117】
なお、サンプル♯1〜♯6の厚さは全て9.5mmである一方、炭素鋼層の厚さは互いに異なっている。各サンプルの健全層および炭素鋼層の厚さを、表1に示す。また、この表には、他のサンプルとの比較のために、サンプルの厚さ(全厚)、および、これらのサンプルにはない窒化層の厚さに関しても記載している。
【0118】
また、サンプル♯1〜♯6における酸化層の厚さは、0.2mm〜0.3mmである。また、サンプル♯1〜♯6における、図9に垂直な方向の長さは、70mmである。
【0119】
【表1】
Figure 0003765188
【0120】
また、図10は、サンプル♯11・♯12の構成を示す説明図である。この図に示すように、サンプル♯11・♯12は、酸化層および窒化層が形成された、使用済みの輻射管(KHR−35H;外径90mm,肉厚9.5mm)を材料としたサンプルである。なお、サンプル♯11・♯12における、図10に垂直な方向の長さは、70mmである。
【0121】
表2に、これらサンプル♯11・♯12における窒化層および健全層の厚さを示す。なお、サンプル♯11・♯12の材料となった輻射管には、浸炭層は形成されていなかった。また、サンプル♯11・♯12における酸化層の厚さは、0.2mm〜0.3mmである。
【0122】
【表2】
Figure 0003765188
【0123】
なお、これらサンプル♯11・♯12における窒化層の厚さは、各サンプルの断面観察により、輻射管の切断面における、エッチング後の変色部分(球状の析出物組織が多く存在する部分)の厚さを測定することにより求められた。また、サンプル♯11・♯12に対してEPMA(electro probe microanalysis )のライン分析を行って、窒化層の厚さを測定した結果、断面観察による測定結果と一致していることが確認された。
【0124】
また、図11は、サンプル♯21・♯22の構成を示す説明図である。また、図12は、サンプル♯23〜♯25の構成を示す説明図である。これらの図に示すように、サンプル♯21〜♯25は、外表面に酸化層および窒化層が形成されている輻射管の内部を加工し、内表面に炭素鋼層を形成したものである。
【0125】
また、サンプル♯21・♯22を作成するために用いた輻射管は、サンプル♯11・♯12の材料と同一のものである。表3に、これらサンプル♯21〜♯25における各層の厚さを示す。なお、サンプル♯21〜♯25における、図11あるいは図12に垂直な方向の長さは、70mmである。また、サンプル♯21〜♯25における酸化層の厚さは、0.2mm〜0.3mmである。
【0126】
【表3】
Figure 0003765188
【0127】
また、図13は、サンプル♯41〜♯50の構成を示す説明図である。これらサンプル♯41〜♯50は、外表面近傍まで浸炭が進展した輻射管を切断して得たものである。表4に、これらサンプル♯41〜♯50における各層の厚さを示す。なお、サンプル♯41〜♯50における酸化層の厚さは、0.2mm〜0.3mmである。
【0128】
【表4】
Figure 0003765188
【0129】
また、実施例1および実施例2に示す測定に用いた浸炭測定プローブ21では、浸炭層検出用バランスコイル1および浸炭層検出用コイル2の外径を28mmとし、窒化層検出用バランスコイル4および窒化層検出用コイル5の外径を10mmとした。従って、上記(1)式より、有効磁力線が到達する距離は、浸炭層検出用コイル2で約7mm、窒化層検出用コイル5で約2.5mmとなる。
【0130】
また、マグネット3・3を構成する永久磁石20としては、外径18mm,内径10mm,厚さ1.8mmの、NEOMAX−32Hを用いた。
【0131】
〔実施例1〕
本実施例では、浸炭測定プローブ21における永久磁石20の適切な数量を求
めるための測定を行った結果を示す。
【0132】
図14は、浸炭測定プローブ21に何も接触させていない状態で、マグネット3・3における永久磁石20の枚数を変化させながら、浸炭層検出用コイル2のインピーダンスの大きさ(図8(b)におけるZの大きさ)と位相角(図8(b)におけるθ)とを測定した結果を示すグラフである。なお、この測定における永久磁石20の枚数とは、2つのマグネット3・3を構成する永久磁石20の合計枚数である。また、この測定において、発振器22が浸炭層検出用コイル2に流した交流の試験周波数は、3kHzであった。
【0133】
このグラフに示すように、永久磁石20の枚数が増すにつれて、浸炭層検出用コイル2のインピーダンスが小さくなる一方、位相角は変化しない。従って、永久磁石20の枚数が増えると、浸炭層検出用コイル2の直流抵抗値が大きくなることがわかった。また、永久磁石20の枚数を8枚以上とした場合には、インピーダンスはほとんど変化しないことも確認された。
【0134】
このように、永久磁石20の枚数を8枚とすれば、輻射管に形成されている酸化層および窒化層を磁気飽和させ、これらの比透磁率を、十分に1に近づけることが可能であると考えられる。
【0135】
従って、浸炭測定プローブ21における永久磁石20の数は、8枚以上であることが好ましいといえる。また、製作コストを考慮すれば、永久磁石20の数は、8枚であることがさらに好ましいといえる。
【0136】
上記の結果より、後述する実施例2では、浸炭測定プローブ21における永久磁石20の数を8枚として各測定を行っている。
【0137】
また、実施例2における各測定では、浸炭測定プローブ21の感度の設定は、上記したサンプル♯1を使用した。すなわち、サンプル♯1を測定した際に得られるインピーダンスの位相角が90度となり、そのベクトル電圧値が表示装置28によって観察しやすい値となるように、増幅器23〜第2同期検波器27(図4参照)の感度を設定した。
【0138】
〔実施例2〕
本実施例では、浸炭層検出用コイル2のインピーダンスと非浸炭層の厚さとの関係、および、窒化層検出用コイル5のインピーダンスと窒化層の有無との関係について測定を行った結果を示す。
【0139】
図15は、図9に示したサンプル♯1〜♯5と、図10に示したサンプル♯11・♯12とに対して浸炭層の厚さ測定を行うことによって得られた、浸炭層検出用コイル2と窒化層検出用コイル5とのインピーダンスに応じたベクトル波形(リサージュ波形)を示す説明図である。この図に示すように、浸炭層検出用コイル2および窒化層検出用コイル5の位相角は、窒化層の厚さが異なるサンプル♯11・♯12に対する測定では、ほぼ同一となることがわかる。
【0140】
また、この図に示すように、窒化層のあるサンプル♯11・12から得られた窒化層検出用コイル5の位相角は、ともに95°であった。また、サンプル♯21・♯22に対して、浸炭層の厚さ測定を行ったところ、窒化層検出用コイル5の位相角は、それぞれ95°,89°となった。このように、輻射管の外表面に窒化層がある場合には、窒化層および浸炭層の厚さに依らず、窒化層検出用コイル5の位相角は常に89°以上となることがわかる。
【0141】
また、この図に示すように、窒化層検出用コイル5の位相角は、サンプル♯1・♯2においても約89°となっている。これらサンプル♯1およびサンプル♯2に対する測定結果より、非浸炭層の厚さが2.4mm以内であれば、窒化層の有無に依らず、窒化層検出用コイル5の位相角は89°以上となることがわかる。
【0142】
また、図16は、サンプル♯1〜♯5に対する浸炭層の厚さ測定によって得られた、窒化層検出用コイル5のY振幅値と非浸炭層の厚さとの関係を示すグラフである。さらに、図17は、サンプル♯21〜25およびサンプル♯31に対する浸炭層の厚さ測定によって得られた、窒化層検出用コイル5のY振幅値と窒化層の厚さおよび炭素鋼層の厚さとの関係を示すグラフである。なお、サンプル♯31とは、サンプル♯22の構成において、健全層の厚さを7.5mm、窒化層の厚さを2.0mmとし、炭素鋼層をなくした構成のサンプルである。このため、図17には、サンプル♯31の炭素鋼層に応じたプロット点はない。
【0143】
図16および図17に示すように、輻射管の外表面に窒化層がある場合には、非浸炭層の厚さに依らず、窒化層検出用コイル5のY振幅値は、サンプル♯3から得られた値(約1V)程度となることがわかる。
【0144】
また、図18は、管外表面に窒化層がなく、管外表面近傍まで浸炭が進展しているサンプル♯41〜♯50に対する浸炭層の厚さ測定によって得られた、窒化層検出用コイル5のY振幅値と非浸炭層の厚さとの関係を示すグラフである。このグラフに示すように、非浸炭層の厚さが2.4mm以内であれば、窒化層検出用コイル5のY振幅値は、サンプル♯1から得られる値より小さく、サンプル♯2から得られる値(約2.4V)以上となることがわかる。
【0145】
従って、窒化層検出用コイル5における位相角が、89°以上であり、かつ、Y振幅値がサンプル♯3から得られる値(約1V)程度であれば、輻射管には、窒化層があるということがわかる。
【0146】
一方、窒化層検出用コイル5における位相角が89°未満であるか、あるいは、窒化層検出用コイル5における位相角が89°以上であり、かつ、Y振幅値がサンプル♯1から得られる値より小さく、サンプル♯2から得られる値以上であれば、輻射管には、窒化層がないということがわかる。
【0147】
また、図19は、サンプル♯2〜♯5、サンプル♯22〜♯25、および、サンプル♯31に対して、本浸炭測定装置による浸炭層の厚さ測定によって得られた浸炭層検出用コイル2の位相角と、これらのサンプルの実際の非浸炭層(健全層,酸化層および窒化層の積層)の厚さとの関係を示すグラフである。また、これらの測定では、発振器22が浸炭層検出用コイル2に流した交流の試験周波数は、1.3kHzであった。
【0148】
すなわち、この図における破線は、窒化層のないサンプル♯2〜♯5と浸炭層検出用コイル2の位相角との関係を示すグラフである一方、実線は、厚さ2mmの窒化層のあるサンプル♯22〜♯25およびサンプル♯31と浸炭層検出用コイル2の位相角との関係を示すグラフである。
【0149】
この図に示すように、窒化層の有無により、グラフの傾きが異なっていることがわかる。また、非浸炭層の厚さが7mm以上となると位相角の変化がなくなることが、サンプル♯31の測定によってわかる。
【0150】
これらのグラフより求められた、浸炭層検出用コイル2の位相角と非浸炭層の厚さとの関係を以下に示す。すなわち、図19に破線で示したグラフより、窒化層がない場合には、
非浸炭層の厚さ=−0.055024×θ+7.2864179 …(6)
となる。また、実線で示したグラフより、窒化層がある場合には、
非浸炭層の厚さ=−0.11265×θ+10.10516 …(7)
となる。
【0151】
また、図20は、サンプル♯2〜♯5に対する測定によって得られた、浸炭層検出用コイル2のインピーダンスにおける位相角と、これらサンプルの実際の非浸炭層(健全層)の厚さとの関係を示す説明図である。さらに、図21は、サンプル♯2〜♯5に対する測定によって得られた、窒化層検出用コイル5のインピーダンスにおける位相角と、これらサンプルの実際の非浸炭層の厚さとの関係を示す説明図である。
【0152】
なお、これらの測定では、発振器22が浸炭層検出用コイル2に流した交流の試験周波数は、1.3kHzであった。また、発振器22が窒化層検出用コイル5に流した交流の試験周波数は、5.0kHzであった。
【0153】
図20・図21に示すように、浸炭層検出用コイル2および窒化層検出用コイル5の位相角は、窒化層のないサンプル♯2〜♯5に対する測定では、各サンプルの非浸炭層の厚さが大きくなるにつれて小さくなっている。
【0154】
以上の測定により得られた結論を、(i) (iii)として以下に示す。
【0155】
(i)窒化層検出用コイル5における位相角が89°以上で、Y振幅値がサンプル♯3から得られた値(約1V)程度である場合、輻射管の外表面には、窒化層があると判断できる。そして、非浸炭層の厚さは、浸炭層検出用コイル2の位相角と上記(7)式とを用いて求めることができる。
【0156】
(ii)窒化層検出用コイル5における位相角が89°以上で、Y振幅値がサンプル♯1から得られた値より小さく、サンプル♯2から得られた値(約2.4V)以上である場合、輻射管の外表面には窒化層がないと判断できる。そして、浸炭層は、輻射管の外表面から2.4mm以内に達していると判断できる。
【0157】
(iii)窒化層検出用コイル5における位相角が89°未満の場合、輻射管の外表面には窒化層はないと判断できる。そして、非浸炭層の厚さは、浸炭層検出用コイル2の位相角と上記(6)式とを用いて求めることができる。
【0158】
このように、本浸炭測定装置によれば、輻射管の外表面に窒化層が形成されている場合でも、非浸炭層の厚さを測定することが可能である。従って、この厚さを輻射管本来の厚さから差し引くことで、浸炭層の厚さを求めることが可能となっている。
【0159】
また、本浸炭測定装置によれば、輻射管の表面近く(上記では外表面から2.4mm以内)まで浸炭層が形成されていても、この浸炭層を検出することができる。
【0160】
すなわち、従来の浸炭測定装置では、輻射管の浸炭が進み、非浸炭層の厚さが所定の厚さ以下となってしまった輻射管に対しては、浸炭層と非浸炭層とを区別して検知することができなかった。すなわち、従来の浸炭測定装置では、検知できない非浸炭層の厚さの範囲(不感帯域)が十分に小さくないので、まだ使用可能な輻射管であっても、完全に浸炭してしまったものと区別できないという問題があった。
【0161】
しかしながら、本浸炭測定装置では、窒化層検出用コイル5のインピーダンスを測定することで、外表面近くまで浸炭層が形成されていても、非浸炭層の厚さを測定することが可能となっている。従って、輻射管の不感帯域を、非常に小さくすることが可能となっている。
【0162】
なお、浸炭層の検出のためのコイル1・2に流す交流の試験周波数は、1.3kHzであることが好ましい。この試験周波数の交流を用いれば、窒化層がない輻射管に対して、非常に正確な測定を行うことができる。
【0163】
また、窒化層の検出のためのコイル4・5に流す交流の試験周波数は、5kHzとすることが好ましい。この試験周波数の交流を用いれば、輻射管の外表面から、2.5mm以内に達した浸炭層を検出することが可能となる。
【0164】
なお、コイル1・2および4・5が実施例1・2に示したサイズの場合、窒化層検出用コイル5の不感帯域は、0.8mm以下、浸炭層検出用コイル2の不感帯域は2.5mm以下となる。すなわち、輻射管の外表面から2.5mm以内に浸炭層が進展しても、浸炭層検出用コイル2による計測値は、2.5mmとなる。
【0165】
また、本浸炭測定装置による測定では、非浸炭層の厚さが2.4mm以内であって、窒化層が形成されている場合、窒化層検出用コイル5のY振幅値は、サンプル♯2から得られた値(約2.4V)以上になると考えられる。
【0166】
また、窒化層検出用コイル5の位相角が89°以上で、Y振幅値が1〜2.4Vの場合、輻射管は、以下の(iv) あるいは (v)に示した状態にあると考えられる。
【0167】
(iv)非浸炭層の厚さが2.4mm〜4mm程度であり、窒化層がない。
【0168】
(v)非浸炭層の厚さが(2.4+α1)mm〜(4+α2)mm程度であり、窒化層がある。
【0169】
なお、これらα1およびα2は、窒化層によるY振幅値への影響である。
【0170】
また、窒化層検出用バランスコイル4および窒化層検出用コイル5の外径は、輻射管の外表面から窒化層の最大厚さと考えられる距離まで有効磁力線が到達するように、設定されるようにしてもよい。例えば、窒化層の最大厚さが2.5mmであれば、窒化層検出用コイル5の外径は10mmに設定される。
【0171】
また、実施例1では、浸炭測定プローブ21に備える永久磁石20の枚数を8枚であることが好ましいとしているが、浸炭測定プローブ21の構成はこれに限るものではない。すなわち、永久磁石20の枚数および大きさは、輻射管に形成された酸化層および窒化層の比透磁率が十分1に近づくように設定されることが好ましい。
【0172】
また、この永久磁石20は、浸炭層検出用バランスコイル1と浸炭層検出用コイル2との直流抵抗値に明確な差異が発生するとともに、浸炭層検出用コイル2のインピーダンスが十分小さくなるように数および大きさが設定されるようにしてもよい。
【0173】
【発明の効果】
以上のように、本発明の浸炭測定方法は、電磁誘導法により輻射管の内表面に形成された浸炭層の厚さを測定する浸炭測定方法において、輻射管の外表面における強磁性層の有無を検出する第1の工程と、輻射管の表面に隣接させた検出コイルに交流を流し、この検出コイルのインピーダンスを測定する第2の工程と、上記第1の工程における検出結果と上記第2の工程における測定結果とに基づいて、上記浸炭層の厚さを測定する第3の工程とを含む方法である。
【0174】
上記の方法によれば、第1の工程において、輻射管の外表面における強磁性層の有無を検出するようになっている。そして、第3の工程において、第1の工程における強磁性層の有無の検出結果より、輻射管の外表面に強磁性層がある場合の検出コイルのインピーダンスと非浸炭層の厚さとの第1の関係と、強磁性層がない場合の上記インピーダンスと非浸炭層の厚さとの第2の関係とのいずれかを選択する。
【0175】
そして、選択した関係に基づいて、第2の工程において測定されたインピーダンスから、非浸炭層の厚さを求め、この非浸炭層の厚さを、輻射管の本来の厚さから差し引くことで、浸炭層の厚さを求めるようになっている。
【0176】
従って、上記の方法によれば、輻射管の外表面に強磁性層が形成されていても、輻射管の内表面に形成された浸炭層の厚さを、正確に測定することが可能となる。これにより、輻射管の損傷状況を正確に判断することが可能となるので、輻射管を利用した装置・施設の安全性を高めることが可能となるという効果を奏する。
【0177】
なお、インピーダンスと非浸炭層の厚さとの相関関係を求めるときには、特に、インピーダンスの位相角と非浸炭層の厚さとの相関関係を求めるようにすることが好ましい。このようにすれば、インピーダンスの位相角と非浸炭層の厚さとには、非常に明確な相関関係があるので、上記に記載の方法を実現することが容易となる。
【0178】
本発明の浸炭測定方法は、上記強磁性層の比透磁率が、非磁性体の比透磁率に近づけられる第4の工程が含まれる方法である。
【0179】
上記の方法によれば、第4の工程において、強磁性層における比透磁率を、非磁性体の値、すなわち、輻射管における健全層の値に近づけるようになっている。これにより、上記第2の工程における検出コイルからの磁界が、輻射管の内表面にまで確実に到達するようになる。
【0180】
従って、上記の方法によれば、上記の効果に加えて、非浸炭層および浸炭層の厚さを、より正確に求めることが可能となるという効果を奏する。
【0181】
なお、この第4の工程は、強磁性層に対して、所定以上の強さの磁界を印加することによって行われることが好ましい。強磁性層に、その磁気が飽和する程度以上の磁界を印加すると、この強磁性層の比透磁率は、非磁性体と同様、ほぼ1となる。従って、このようにすれば、上記に記載の方法を実現することが容易となる。
【0182】
また、本発明の浸炭測定装置は、電磁誘導法により輻射管の内表面に形成された浸炭層の厚さを測定する浸炭測定装置において、輻射管の外表面における強磁性層の有無を検出する強磁性層検出部と、輻射管の外表面における強磁性層の有無と、輻射管の外表面から浸炭層までの距離とに応じて、インピーダンスが変化する検出コイルとを有する構成である。
【0183】
上記の構成によれば、検出コイルのインピーダンスを測定するとともに、強磁性層検出部によって、輻射管の外表面における強磁性層の有無を検出するようになっている。
【0184】
そして、強磁性層検出部による検出結果により、輻射管の外表面に強磁性層がある場合の検出コイルのインピーダンスと非浸炭層の厚さとの第1の関係と、強磁性層がない場合の上記インピーダンスと非浸炭層の厚さとの第2の関係とのいずれかを選択する。そして、選択したほうの関係に基づいて、測定された検出コイルのインピーダンスから、非浸炭層の厚さを求める。そして、この非浸炭層の厚さを、輻射管の本来の厚さから差し引くことで、浸炭層の厚さを求めるようになっている。
【0185】
このように、上記の構成によれば、輻射管の外表面に強磁性層が形成されていても、輻射管の内表面に形成された浸炭層の厚さを、正確に測定することが可能となっている。従って、輻射管の損傷状況を正確に判断することが可能となるので、輻射管を利用した装置・施設の安全性を高めることができるという効果を奏する。
【0186】
なお、インピーダンスと非浸炭層の厚さとの相関関係を求めるときには、特に、インピーダンスの位相角と非浸炭層の厚さとの相関関係を求めるようにすることが好ましい。
【0187】
また、本発明の浸炭測定装置は、上記強磁性層検出部が、この検出コイルより外径が小さいコイルである構成である
【0188】
上記の構成によれば、上記した検出コイルより外径が小さいコイルに交流を流し、そのインピーダンスを測定することによって、輻射管の外表面における強磁性層の有無を検出するようになっている。これにより、上記の構成によれば、上記の効果に加えて、上記に記載の浸炭測定装置を実現することが容易となるという効果を奏する。
【0189】
また、本発明の浸炭測定装置は上記強磁性層の比透磁率を非磁性体の比透磁率に近づけるためのマグネットを備えている構成である
【0190】
上記の構成では、マグネットによって、強磁性層に、その磁気が飽和する程度以上の磁界を印加し、強磁性層の比透磁率を、輻射管における健全層の比透磁率に近づけるようになっている。これにより、上記検出コイルからの磁界が、輻射管の内表面にまで確実に到達するようになる。
【0191】
従って、上記の構成によれば、上記の効果に加えて、非浸炭層および浸炭層の厚さを、より正確に求めることが可能となるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態にかかる浸炭測定装置による、浸炭層の厚さ測定における動作の流れを示すフローチャートである。
【図2】 上記浸炭測定装置によって測定可能な、輻射管の例を示す説明図である。
【図3】 上記浸炭測定装置における電磁誘導法を示す説明図である。
【図4】 上記浸炭測定装置の構成を示す説明図である。
【図5】 図4に示した浸炭測定装置における浸炭測定プローブの構成を示す説明図である。
【図6】 図5に示した浸炭測定プローブを、図5における矢印Aの方向から示す説明図である。
【図7】 図5に示した浸炭測定プローブにおける浸炭層検出用バランスコイルおよび浸炭層検出用コイル、あるいは、窒化層検出用バランスコイルおよび窒化層検出用コイルが形成する回路の等価回路であるブリッジ回路の構成を示す説明図である。
【図8】 図5に示した浸炭測定プローブにおける浸炭層検出用コイルあるいは窒化層検出用コイルのインピーダンスを示す説明図であって、図8(a)は、コイルのインピーダンスをインダクタンスと抵抗との直列接続によって等価的に表現した回路を示す説明図であり、図8(b)は、コイルのインピーダンスをベクトル波形で示す説明図である。
【図9】 窒化層のない輻射管におけるサンプルの構成を示す説明図である。
【図10】 窒化層のある輻射管におけるサンプルの構成を示す説明図である。
【図11】 窒化層のある輻射管におけるサンプルの、他の構成を示す説明図である。
【図12】 窒化層のある輻射管におけるサンプルの、さらに他の構成を示す説明図である。
【図13】 外表面の近傍まで浸炭が進展した輻射管におけるサンプルの構成を示す説明図である。
【図14】 図5に示した浸炭測定プローブに何も接触させていない状態で、マグネットを構成する永久磁石の枚数を変化させながら、浸炭層検出用コイルのインピーダンスの大きさと位相角とを測定した結果を示すグラフである。
【図15】 図4に示した浸炭測定装置によって、図9および図10に示したサンプルに対して、浸炭層の厚さ測定を行うことによって得られた、浸炭層検出用コイルと窒化層検出用コイルとのインピーダンスにおけるベクトル波形を示す説明図である。
【図16】 図9に示したサンプルに対する浸炭層の厚さ測定によって得られた、窒化層検出用コイルのY振幅値と非浸炭層の厚さとの関係を示すグラフである。
【図17】 図11および図12に示したサンプル等に対する浸炭層の厚さ測定によって得られた、窒化層検出用コイルのY振幅値と炭素鋼層および窒化層の厚さとの関係を示すグラフである。
【図18】 図13に示したサンプルに対する浸炭層の厚さ測定によって得られた、窒化層検出用コイルのY振幅値と非浸炭層の厚さとの関係を示すグラフである。
【図19】 図9,図11および図12に示したサンプル等に対する浸炭層の厚さ測定を行うことによって得られた、浸炭層検出用コイルの位相角と、これらのサンプルの非浸炭層の厚さとの関係を示すグラフである。
【図20】 図9に示したサンプルに対する浸炭層の厚さ測定を行うことによって得られた、浸炭層検出用コイルのインピーダンスにおける位相角と、これらサンプルの非浸炭層の厚さとの関係を示す説明図である。
【図21】 図9に示したサンプルに対する浸炭層の厚さ測定を行うことによって得られた、窒化層検出用コイルのインピーダンスにおける位相角と、これらサンプルの非浸炭層の厚さとの関係を示す説明図である。
【符号の説明】
1 浸炭層検出用バランスコイル
2 浸炭層検出用コイル(検出コイル)
3 マグネット
4 窒化層検出用バランスコイル
5 窒化層検出用コイル(強磁性層検出部)
21 浸炭測定プローブ
22 発振器
23 増幅器
24 移相器
25 90°固定移相器
26 第1同期検波器
27 第2同期検波器
28 表示装置

Claims (1)

  1. 電磁誘導法により輻射管の内表面に形成された浸炭層の厚さを測定する浸炭測定方法において、
    それぞれが略円筒形状をした、窒化層検出用コイルと、窒化層検出用コイルの外側に配されたマグネットと、外径が輻射管の厚みの少なくとも4倍となっているマグネットの外側に配された浸炭層検出用コイルと、を備えた浸炭測定プローブを用いて行うと共に、
    予め、輻射管の外表面に窒化層が有る場合と窒化層が無い場合とに分けて、浸炭層検出用コイルから測定したインピーダンスと非浸炭層の厚みとの相関関係を記憶させておき、
    輻射管にほぼ垂直に隣接させた窒化層検出用コイルにて測定したインピーダンスから、輻射管の外表面に窒化層があるかどうかを検出し、
    輻射管にほぼ垂直に隣接させた浸炭層検出用コイルによってインピーダンスを測定し、
    窒化層検出用コイルにて検出した窒化層の有無、および、浸炭層検出用コイルにて測定したインピーダンスから、非浸炭層の厚みを求め、輻射管の厚みから非浸炭層の厚みを差し引きすることによって浸炭層の厚みを求めることを特徴とする浸炭測定方法。
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