JP3762968B2 - インクジェット印刷用水中崩壊性繊維布帛複合体及びそのインクジェット印刷物 - Google Patents

インクジェット印刷用水中崩壊性繊維布帛複合体及びそのインクジェット印刷物 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水中崩壊性を有する繊維布帛複合体及びその印刷物に関するものである。より詳しく述べるならば、本発明は例えばインクジェットプリンターなどを使用して画像(写真、イラスト、文字など)印刷に供することができ、この印刷物が、広告掲示物などに用いられた後、これを、液体水と接触させる(例えば水中に浸漬する)だけでその形状が崩壊し、さらにはその大部分が溶解し消滅することのできる繊維布帛複合体、及びその印刷体に係るものである。本発明の水中崩壊性繊維布帛複合体及びその印刷物は、上記のような廃棄処理の利便性を有すると同時に、さらにその廃棄処理溶液中、または処理液残渣からの原料回収性に優れ、再利用が容易であるという利点を有している。
【0002】
【従来の技術】
広告・宣伝分野において、その印刷媒体として、紙、フィルム、布地などの記録シートが使用されている。これらのうち、紙は主に吊り広告やポスターに使用され、フィルムは主に窓ガラスや内照式看板などに貼合わせて使用され、また布地は幟、旗、懸垂幕などに使用されている。最近、デジタルカメラ、パーソナルコンピューターなどに取り込んだデジタル画像データを出力媒体に直接フルカラー印刷するインクジェット印刷が急速に普及している。インクジェット印刷は、従来のグラビア印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷などの印刷方式に不可欠な製版、及び刷版工程を省略することができるものであって、コンピューターで入稿されたデジタルデータを直接インクジェットプリンターで出力して、即時必要な印刷物を小ロット単位で得ることができる。しかもインクジェット印刷には特殊な印刷技術を必要としないため、誰にでも高画質の印刷物が容易に得られるという特徴がある。インクジェット印刷は、種々の作動原理、例えば、静電吸引方式、圧電素子(ピエゾ素子)を用いてインクに機械的振動または変位を与える方式、インクを加熱して発泡させ、その圧力を利用するバブルジェット(商標)方式などによりインクの微小液滴を出力媒体に向けて吐出・定着させて画像や文字などの印刷、記録を行うものである。
【0003】
この様にデジタルデータをコンピューター処理して容易に印刷媒体に印刷することができるインクジェット印刷は、例えば印刷業界、広告業界、サイン・ディスプレィ業界、各種イベント業界、アミューズメント業界、建築・インテリア設計業界などの様々な商業分野において視覚的効果、宣伝効果の高い精密印刷メディアとして、更にその拡がりを大きなものとしている。また最近、インクジェット印刷プリンターの高画質フルカラー印刷対応化、大型印刷対応化、高速印刷対応化などに伴い、従来の紙などの出力媒体だけでなく、フィルム、布地、布地と熱可塑性樹脂との複合シートなどの印刷メディアが要望されている。なかでも布地素材は、紙やフィルム素材では得られない、しなやかな手触り感と、見た目に和み感を有する独特な素材として、最近、広告業界、デザイン業界、ファッション・アパレル業界などで注目を集めている。
【0004】
ところで、広告業界において、これらの印刷メディアは、その商業的目的からして例えば、商品(家電、雑誌、新譜、食品、メニューなど)、イベント、キャンペーン、バーゲンセールなど、次々と溢れ出る商品や企画の告知・宣伝を主目的とするため、1週間から1ヶ月程度の短期用途が圧倒的に多く、それゆえ宣伝効果と納期に厳しい分野でもある。従ってインクジェット印刷のように小ロット需要に容易に対応でき、しかもデザイン校正がコンピューターで容易になすことができる広告メディアの作製技術は、今や広告・宣伝業界にとって欠かす事のできない印刷手段となっている。しかし、その需要の大きさの反面、短期間で使用を終えると、これらの広告メディアは、すぐさま価値のないものとなり、この使用ずみ広告メディアは業者によって連日大量に廃棄処分されている。すなわち広告・宣伝業界では、それに使用されるメディアが多種多様化しており、かつ総合的に広告メディアの消費量が多く、従って、この消費量の著しい増大に比例して、これらメディアの廃棄量も著しく増加しているのである。
【0005】
これら広告メディアのなかでも、特に需要のサイクルが短い広告用途には、低コストで一般ゴミとして廃棄可能なアート紙が使用されるが、比較的長期間使用され、かつ、耐久性が要求され、あるいは特殊感覚を意図して使用されるような布地メディアにおいては、それを廃棄処分するとき、一般ゴミとして取り扱われることが少ない。すなわち、処分量が極度に多量の場合や、メディアが大型化すればするほど、その処分を産業廃棄物処理に依存せざるを得ず、従って、従来これら布地メディアは、焼却処分または埋め立て処分され、リサイクルなどの二次使用に供せられることはなかったのである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来の課題であった使用済みの布地メディア(繊維布帛複合体)の廃棄処分と、その再利用に対して、これらを水中に没するだけで布地メディアが崩壊し、さらにはその大部分が溶解し消滅しうるインクジェット印刷用水中崩壊性繊維布帛複合体、及びそのインクジェット印刷物を提供しようとするものである。本発明の水中崩壊性繊維布帛複合物又はその印刷物を液体水に接触させて廃棄処理するとき、この廃棄処理溶液中、または処理液残渣から原料を回収して、種々の用途に再利用することが可能である。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決すべく研究、検討を重ねた結果、織物により構成された基布中に特定の水溶性繊維を含ませ、この基布の少なくとも片面に、特定の水溶性高分子化合物をバインダー樹脂として含有してなるインクジェット印刷受容層を形成することにより、インクジェット印刷が可能であり、さらに得られたインクジェット印刷用繊維布帛複合体、又はそのインクジェット印刷物は、それを液体水に接触させるだけでその形状が崩壊し、さらにはその大部分が溶解し消滅し、さらには、その廃棄処理溶液中、または処理液残渣から原料を回収して、種々の用途に再利用することが可能であることを見出して本発明を完成させるに至った。
【0008】
本発明のインクジェット印刷用水中崩壊性繊維布帛複合体は、織物より構成されている基布と、この基布の少なくとも1面上に形成されたインクジェット印刷受容層とを有する繊維布帛複合体であって、
前記インクジェット印刷受容層が、水溶性高分子化合物及びバインダー樹脂からなるバインダーと、このバインダーにより結着された微細粒子とを含み、
水溶性高分子化合物の含有量は、前記バインダーの合計質量の30質量%以上であり、
前記バインダー樹脂が、ポリエチレンオキサイド系樹脂、並びに、カルボン酸基、スルホン酸基、脂肪族アミノ基、芳香族アミノ基、ヒドロキシル基、エーテル基、及び4級アンモニウム基から選ばれた1種以上の官能基が導入されている親水性ポリエステル系樹脂及び親水性ポリウレタン系樹脂から選ばれた1種以上を含み、
前記微細粒子の含有量は、前記インクジェット印刷受容層の質量の10〜80質量%であり、
前記基布用織物は、水溶性ポリビニルアルコール系繊維を含み、かつこの水溶性ポリビニルアルコール系繊維が、前記繊維布帛複合体を液状の水と接触させたときに、その形状を崩壊するに十分な含有量及び分布をもって前記基布中に含まれている、
ことを特徴とするものである。
本発明のインクジェット印刷用水中崩壊性繊維布帛複合体において、前記基布用織物の経糸及び緯糸のいずれか一方のみに前記水溶性ポリビニルアルコール系繊維が含まれていることが好ましい。
本発明のインクジェット印刷用水中崩壊性繊維布帛複合体において、前記基布中に含まれる水溶性ポリビニルアルコール系繊維が、ケン化度77〜97モル%のポリビニルアルコール樹脂及び融点150〜200℃のポリビニルアルコール系共重合体樹脂から選ばれた少なくとも1種からなることが好ましい。
本発明のインクジェット印刷用水中崩壊性繊維布帛複合体において、前記基布用織物が、それを構成する糸条の少なくとも1部分として、前記水溶性ポリビニルアルコール系繊維を、50質量%以上の含有率で含む繊維糸条を含むことが好ましい。
本発明のインクジェット印刷用水中崩壊性繊維布帛複合体において、前記インクジェット印刷受容層用水溶性高分子化合物が、ヒドロキシル基、カルボン酸(塩)基、(環状)エーテル基、アミノ基、4級アンモニウム(塩)基から選ばれた少なくとも1種の親水性基を有する水溶性天然高分子化合物及び水溶性合成高分子化合物から選ばれることが好ましい。
本発明のインクジェット印刷用水中崩壊性繊維布帛複合体において、前記印刷受容層用微細粒子が、ケイ素化合物、金属水酸化物、金属酸化物、金属炭酸塩化物、金属硫酸塩化合物、ホウ酸化合物、及び無機系化合物複合体の1種以上を含む無機微細粒子、並びに、セルロース及びその誘導体、デンプン類及びその変性体、穀物類粉粒など及び、たんぱく質化合物、天然カルシウム質化合物、及びこれらの変性体の1種以上を含む有機微細粒子から選ばれることが好ましい。
本発明のインクジェット印刷物は、前記本発明のインクジェット印刷用水中崩壊性繊維布帛複合体のインクジェット印刷受容層にインクジェット印刷が施されているものである。
本発明の水性混合物は、前記本発明のインクジェット印刷用水中崩壊性繊維布帛複合体、或は本発明のインクジェット印刷物を、水と接触させてその形状を崩壊せしめて得られたものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明のインクジェット印刷用水中崩壊性繊維布帛複合体は、水溶性繊維を含む織物からなる基布と、その少なくとも片面に形成され、かつ水溶性高分子化合物を主成分として含むバインダーを含有しているインクジェット印刷受容層とを有するものである。本発明に使用できる水溶性繊維としては、ポリビニルアルコール樹脂、またはポリビニルアルコール系共重合体樹脂から紡糸された水溶性ポリビニルアルコール系繊維を用いることが最も機械的強度に優れ好ましい。
【0010】
本発明に用いるポリビニルアルコール共重合体繊維としては、融点が150〜200℃、特に160〜185℃であることが、機械的強度と水(温水)に対する溶解能の観点で好ましい。融点が150℃未満であると、得られるポリビニルアルコール系共重合体繊維の機械的強度が不十分となり、あるいはその融点が200℃を越えて高くなると、得られるポリビニルアルコール系共重合体繊維の水(温水)に対する溶解能が不十分となることがある。またポリビニルアルコール繊維を紡糸するのに用いられるポリビニルアルコール樹脂は、ポリ酢酸ビニル樹脂をケン化して得られ、平均重合度(p)500〜3000、特に1200〜2400のものから選ばれることが好ましく、その、ケン化度は、酢酸ビニル量100モル%に対して77〜97モル%、特に92〜97モル%であることが、得られる繊維の水に対する溶解能と耐水性の観点で好ましい。ケン化度が77モル%未満であると、得られる繊維の水に対する溶解能は向上するが、その反面、その上に本発明の被覆層を形成するために水系塗工剤を塗工したとき、下地基布に水溶性繊維として含まれるポリビニルアルコール繊維が溶かされ侵されることがあり好ましくない。またケン化度が97モル%を越えて高くなると、ヒドロキシル基間の水素結合が増して、水に対する溶解能を低下するため本発明に好適に使用することができないことがある。ケン化度とは、ケン化後のポリビニルアルコール樹脂中に含有するビニルアルコール単位のモル分率であり、すなわち、ビニルアルコール単位のモル分率を(n)で表し、酢酸ビニル単位のモル分率を(m)で表すとき、ケン化度=(n/n+m)×100で表される量である。
【0011】
また、ポリビニルアルコール系共重合体樹脂としては、ポリ酢酸ビニル系共重合体樹脂を前駆体として、これをケン化して得られるものが挙げられる。この前駆体となるポリ酢酸ビニル系共重合体樹脂としては、酢酸ビニルモノマーと共重合し得るコモノマー、例えば、アクリル酸、メタアクリル酸などの不飽和カルボン酸及びそのエステル化物、マレイン酸無水物及び、その開環物など、及びビニルピロリドン、ピバリン酸ビニルなどのビニル化合物、及び炭素数4以上の脂肪酸のビニルエステル類などとの共重合体樹脂が挙げられる。不飽和カルボン酸のエステル化物としては、例えばアクリル酸エチル、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸グリシジルなどが挙げられる。ポリビニルアルコール系共重合体樹脂前駆体としては、前記コモノマーの1種以上の含有量が好ましくは0.5〜10モル%、より好ましくは1〜6モル%と、好ましくは酢酸ビニルモノマー90.5〜90モル%、より好ましくは99〜94モル%とを共重合して得られ、好ましくは平均重合度(p)500〜3000、より好ましくは1200〜2400のポリ酢酸ビニル系共重合体樹脂が用いられる。ポリビニルアルコール系共重合体樹脂のケン化度は、酢酸ビニル含有量100モル部に対して77〜97モル部、特に92〜97モル部であることが、水に対する溶解能と耐水性の観点で好ましい。このケン化度が77モル部未満であると、水に対する溶解能は向上するが、その反面、本発明の被覆層を形成するために水系塗工剤を塗工するとき、下地基布に含まれるポリビニルアルコール系繊維が溶かされ侵されることがあり好ましくない。またこのケン化度が97モル%を越えて高くなると、水酸基間の水素結合が増して融点が高くなり、水に対する溶解能を低下するため本発明に好適に使用することができないことがある。
【0012】
ポリビニルアルコール繊維、及びポリビニルアルコール系共重合体繊維の製造方法としては、例えば、有機溶媒系湿式冷却ゲル紡糸法が挙げられ、この方法は具体的に、ポリビニルアルコール樹脂、またはボリビニルアルコール系共重合体樹脂、またはこれらの水溶液をジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、N,N′−ジメチルアセトアミドなどの極性有機溶媒中に溶解、または相溶化させたものを紡糸原液として、この紡糸原液をメタノール、エタノールなどのアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶媒、及びこれらの溶媒と上記極性溶媒との混合物からなる貧溶媒浴槽中に湿式紡糸、または乾湿式紡糸して脱溶媒して凝固させ、得られた紡糸原糸を湿延伸に掛けた後、乾燥、熱処理させる方法が挙げられる。
【0013】
本発明に用いる水溶性繊維糸条は、マルチフィラメント糸条、及び短繊維紡績糸条の何れの形状のものであってもよく、マルチフィラメント糸条としては、111〜2222dtex(100〜2000デニール)の範囲のものが好ましく、138〜1111dtex(125〜1000デニール)の範囲のものがより好ましい。マルチフィラメント糸条の太さが111dtexよりも小さいと、得られる繊維布帛複合体の引裂強力が不十分になることがあり、またそれが2222dtexよりも大きいと、得られる繊維布帛複合体の破断強力及び引裂強力は向上するが、糸径が太くなりすぎ、織交点の凹凸を増すため印刷に好ましい平滑性を得ることが困難となることがある。これらマルチフィラメント糸条からなる織物基布において、その経糸及び緯糸の打込み密度に特に制限はないが、111〜2222dtexの糸条を経糸及び緯糸として、25.4mm(1インチ)間に20〜80本打込んで得られる織布が好適に使用できる。例えば278dtex(250デニール)のマルチフィラメント糸条で25.4mm(1インチ)間30〜50本、555〜1111dtex(500〜1000デニール)のマルチフィラメント糸条では、25.4mm(1インチ)間26〜44本程度の打込み組織で得られる平織織布が適している。これらのマルチフィラメント糸条は無撚であってもよく、或は撚りが掛けられたものであってもよい。これらの織布の目付量は、50〜400g/m2 のものが適している。また、織布の空隙率(目抜け)は、0〜10%であることが好ましく0〜5%であることがより好ましい。空隙率が10%を越えると、経緯方向の繊維糸条の分布量が不十分になり、得られる繊維布帛複合体の寸法安定性が不十分になるだけでなく、繊維布帛複合体の引裂き強度と突起物に対する耐貫通性とが不十分になる。空隙率は繊維布帛(織布)の単位面積中に占める繊維糸条の合計面積を百分率として求め、100から差し引いた値として求めることができる。
【0014】
また、基布用織物に短繊維紡績糸条を用いるときは、その太さは591〜97dtex(10〜60番手)の範囲のもの、特に591dtex(10番手)、422dtex(14番手)、370dtex(16番手)、295dtex(20番手)、246dtex(24番手)、197dtex(30番手)などの短繊維紡績糸条が好ましく使用できる。短繊維紡績糸条の太さが97dtex(60番手)よりも細いと、得られる繊維布帛複合体の引裂強力が不十分になることがあり、また591dtex(10番手)よりも太いと、得られる繊維布帛複合体の破断強力及び引裂強力は向上するが、糸径が太くなり、織交点の凹凸を増すため印刷に適した平滑性を得ることが困難となることがある。これらの短繊維紡績糸条は、単糸及び、双糸、さらには単糸3本以上の撚糸、またはこれらの2本合糸、あるいは2本合撚糸などの糸条を、経糸及び緯糸として、25.4mm(1インチ)間30〜160本打込んで得られる短繊維紡績布が好ましく、特に591〜295dtex(10〜20番手)の単糸、または591〜295dtex(10〜20番手)の双糸を用いて25.4mm(1インチ)間に経糸50〜70本、緯糸40〜60本の織密度で糸を打込んで得られる短繊維紡績布が最も適している。また、糸の撚りは、単糸または2本以上の単糸を引き揃えてS撚り(右)、もしくはZ撚り(左)によって加撚された片撚糸、単糸または2本以上の単糸を引き揃えて下撚りされた加撚糸を2本以上引き揃えて上撚りを掛けて得られた諸撚糸、その他強撚糸など、何れの撚糸であってもよい。これらの撚糸の撚り回数は片撚糸、諸撚糸の普通撚糸で500〜2000回/mであることが好ましく、強撚糸で2000回以上/mであることが好ましい。また、糸の番手と撚数との関係を表す比例定数の撚係数の範囲として、撚係数1.3〜3.0程度の甘撚り、撚係数3.0〜4.5程度の普通撚り、撚係数4.5〜5.5程度の強撚糸が挙げられ、特に撚り係数3.0〜4.5の範囲の普通撚り糸であることが好ましい。また、短繊維紡績布の空隙率(目抜け率)は、0〜10%であることが好ましく、0〜5%のものであることがより好ましい。空隙率が10%を越えると、経緯方向の繊維糸条の含有量が少なくなり、得られる繊維布帛複合体の寸法安定性が不十分になるだけでなく、繊維布帛複合体の引裂き強度と突起物に対する耐貫通性が不十分になることがある。空隙率は繊維布帛の単位面積中に占める繊維糸条の面積を百分率として求め、100から差し引いた値として求めることができる。空隙率は経方向10cm×緯方向10cmを単位面積として求めることができる。
【0015】
本発明の繊維布帛複合体の基布用織物としては、平織物(経糸と緯糸とも最少2本ずつ用いた最小構成単位を有する)、綾織物(経糸と緯糸とも最少3本ずつ用いた最小構成単位を有する:3枚斜文、4枚斜文、5枚斜文、6枚斜文、8枚斜文など)、朱子織物(経糸と緯糸とも最少5本ずつ用いた最小構成単位を有する:2飛び、3飛び、4飛び、5飛びなどの正則朱子)などが好ましく使用できる。その他、拡大法、交換法、配列法、配置法、添糸法、削糸法などによって得られるこれらの変化平織物、変化綾織物、変化朱子織物など、さらに蜂巣織物、梨子地織物、破れ斜文織物、昼夜朱子織物、もじり織物(紗織物、絽織物)、縫取織物、二重織物などが挙げられる。これらの織物の製織は、シャットル織機、シャットルレス織機(レピア方式、グリッパ方式、ウォータージェット方式、エアジェット方式)などの従来公知の織機を用いて製織することができる。本発明に用いる、水溶性繊維を含む繊維糸条によって構成される織物の織り方としては、平織が最も汎用性が高く、また縦緯物性バランスにも優れ好ましい。また、本発明は、基布用織物は特に経糸、緯糸の何れか一方の糸条のみが、水溶性繊維糸条によって構成されたものであっても、本発明の目的とする水中崩壊性能と、原料回収性能を得ることが可能である。
【0016】
また、本発明に用いる水溶性繊維糸条には、マルチフィラメント糸条、または短繊維紡績糸条の形態において、繊維布帛複合体の強度と耐水強度を得る目的で、他の繊維糸条と混用することもできる。この繊維混用糸条において、水溶性繊維糸条成分として、ポリビニルアルコール繊維、及び/又はポリビニルアルコール系共重合体繊維を50質量%以上含有することが好ましく、特に75質量%以上含有することがより好ましい。この繊維混用糸条は繊維布帛を構成する経糸、及び緯糸の両方の糸条として用いることが好ましい。また、この繊維混用糸条を経糸、または緯糸の何れか片方を構成する糸条として用い、もう片方の糸条に、水溶性繊維糸条を用いることができ、用途に応じては他の繊維糸条を用いることもできる。これらの繊維混用糸条において、ポリビニルアルコール繊維、及び/又はポリビニルアルコール系繊維などの水溶性繊維糸条の含有率が50質量%未満だと、得られる繊維布帛複合体の水中崩壊性が不十分となり、満足な原料回収性が得られないことがある。具体的に混用繊維としては、綿、麻、絹などの天然繊維、レーヨンなどの半合成繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アラミド繊維、アクリル繊維、ポリウレタン繊維、及びケン化度98モル%以上、融点190〜240℃の難溶性ポリビニルアルコール繊維などの合成繊維が使用できる。また必要に応じて、ガラス繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、炭素繊維などの天然物由来物質、及び天然物由来物質を模倣して合成された無機系の繊維糸条を使用することもできる。上記これらの繊維布帛には公知の繊維処理加工、例えば、防カビ処理、防炎処理、カレンダー処理、及びバインダー樹脂処理などを施すこともできる。
【0017】
本発明のインクジェット印刷用水中崩壊性繊維布帛複合体において、上記織物基布の、少なくとも片面に、水溶性高分子化合物及びバインダー樹脂からなるバインダーと、このバインダーにより結着された微細粒子とを含有するインクジェット印刷受容層が形成されている。本発明に使用する水溶性高分子化合物の含有量は、印刷受容層に占めるバインダー成分の合計質量に対し、30質量%以上であることが好ましく、特に50質量%以上であることがより好ましい。水溶性高分子化合物の含有率が0質量%未満であると、得られる繊維布帛複合体の水中崩壊性が不十分となり、満足な原料回収性が得られないことがある。水溶性高分子化合物としては、ヒドロキシル基、カルボン酸(塩)基、(環状)エーテル基、アミノ基、4級アンモニウム(塩)基などの親水性基を含有する、水溶性天然高分子化合物、及び水溶性合成高分子化合物が併用され、例えば、酢酸置換デンプン、リン酸エステル化デンプンなどのデンプンエステル類、ヒドロキシアルキル化デンプンなどのデンプンエーテル類、架橋デンプン、グラフト共重合デンプン、及びデキストリン、アミロースなどのデンプン誘導体、及び、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体、及び、ポリビニルアルコール系樹脂(ケン化度65〜97モル%、融点140〜200℃)、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、ポリビニルピロリドン系樹脂、ポリアミン系樹脂、ポリアクリルアミド系樹脂、ポリエチレンイミン系樹脂、ポリエチレンポリアミド系樹脂、ポリアミドエピクロルヒドリン系樹脂、ポリアミンエピクロルヒドリン系樹脂、ポリアミドポリアミン系樹脂、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン系樹脂、ジシアンジアミド系樹脂など、及びポリエチレンオキサイド−ポリプロピレンオキサイド共重合体樹脂など、ポリアクリル酸ナトリウム、及びこれらの樹脂に、カルボン酸基、スルホン酸基、脂肪族アミノ基、芳香族アミノ基、ヒドロキシル基、エーテル基、4級アンモニウム塩基などの官能基の1種以上を導入することにより得られる変性樹脂類、その他、タンパク質(ゼラチン、カゼイン、プロテイン、コラーゲン)、多糖類(キタンサンガム、プルラン)、海草抽出物(ガラクタン、アルギン酸)、コンニャクマンナン、アラビアゴムなど、及び、これらの誘導体が用いられる。これら併用水溶性高分子化合物は単一種で用いられてもよく、或はその複数種併用することができる。本発明の複合体のインクジェット印刷受容層において、バインダー中に、水溶性高分子化合物とともに用いられるバインダー樹脂は、ポリエチレンオキサイド、親水性ポリエステル樹脂及び親水性ポリウレタン樹脂のいずれか1種以上を含むものである。本発明に用いられる親水性ポリエステル系樹脂及び親水性ポリウレタン系樹脂はカルボン酸基、スルホン酸基、脂肪族アミノ基、芳香族アミノ基、ヒドロキシル基、エーテル基、4級アンモニウム基などから選ばれる1種以上の官能基が導入されているものである。
【0018】
また、本発明に使用するバインダー中に、前記水溶性高分子化合物及びバインダー樹脂とともに使用できる他の樹脂としては、ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合樹脂、酢酸ビニルーマレイン酸ジブチル共重合樹脂、酢酸ビニル−ベオバ共重合樹脂、酢酸ビニル−エチレン共重合樹脂(VAE)、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)などの酢酸ビニル系共重合樹脂、アクリル酸エステル−メタクリル酸メチル共重合樹脂、アクリル酸エステル−スチレン共重合樹脂などのアクリル酸エステル系共重合樹脂、ポリエステル系ポリウレタン樹脂、ポリエーテル系ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂、ポリカプロラクトン系ポリウレタン樹脂、アクリル系ポリウレタン樹脂などのポリウレタン樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエチレンオキサイド系樹脂、及びアイオノマー樹脂などの熱可塑性樹脂などがあり、更に、これらの樹脂構造中にヒドロキシル基、カルボン酸基、4級アンモニウム塩基などを導入して親水性化した官能基含有変性樹脂なども使用できる。本発明において、これらの熱可塑性樹脂はエマルジョン、またはディスパージョンの形態で使用することが好ましい。また、特に熱可塑性樹脂エマルジョンの場合、そのエマルジョン粒子はコア−シェル異相構造体であってもよく、これらのコア−シェル型エマルジョンとしては、例えば、コアポリマーとして上記酢酸ビニル系共重合樹脂または、アクリル酸エステル系共重合樹脂を選び、シェルポリマーとしてポリオレフィン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂などの熱可塑性樹脂を選んでアロイ体としたものが使用できる。その他、バインダー中に熱可塑性ゴムを含んでいてもよい。これらは、ブタジエン重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、カルボキシル変性スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、メチルメタアクリレート−ブタジエン共重合体、2−ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体などである。本発明において、これらの熱可塑性ゴムはラテックスの形態で使用することが好ましい。前記水溶性高分子化合物を含有する前記バインダーには、印刷受容層の耐摩耗性向上の向上を目的として、本発明の水中崩壊性繊維布帛複合体の水溶性能が損なわれない範囲において、硬化剤や架橋剤を添加してもよく、これらの硬化剤及び架橋剤として、エポキシ系硬化剤、メラミン系硬化剤、イソシアネート系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤などを、バインダーが含有する官能基の種類及び、官能基量に応じて適量使用することができる。
【0019】
また、インクジェット印刷受容層には、インクの定着と発色性を向上させることを目的として、定着剤が含まれていることが好ましい。定着剤としては、インクに含まれる色素化合物の分子構造に含まれるスルホン酸基、又はカルボン酸基とイオン結合して水に不溶性の色素化合物錯体を形成することができるカチオン性化合物を使用するのが好ましく、カチオン性化合物としてはカチオン系ポリマーが好ましく使用できる。このようなカチオン系ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンイミン塩、ジメチルアミンエピハロヒドリン縮合体、ポリアルキレンポリアミンジシアンジアミドアンモニウム縮合体、ポリビニルアミン塩、ポリアリルアミン塩、(メタ)アクリル酸アルキル4級アンモニウム塩、(メタ)アクリルアミドアルキル4級アンモニウム塩、ポリジメチルジアリルアンモニウム塩、ポリスチレン4級アンモニウム塩、ポリビニールピリジウムハライド、ポリビニールベンジルトリメチルアンモニウム塩などが挙げられる。
【0020】
また、インクジェット印刷受容層には、インクの滲み防止性と発色性を向上させることを目的として、天然物(鉱物、植物、動・生物)由来物質、及びこれら天然物由来物質を模倣して合成された物質からなる微細粒子を、印刷受容層の合計質量に対して10〜80質量%、特に30〜60質量%含有することが好ましい。微細粒子の含有率が80質量%を超えると、印刷受容層の耐摩耗性を不十分にすることがある。天然物(鉱物)由来物質としては、ケイ素化合物、金属水酸化物、金属酸化物、金属炭酸塩化合物、金属硫酸塩化合物、及び無機系化合物複合体から選ばれた1種以上であり、また、天然物(植物)由来物質としては、セルロース及びその誘導体、デンプン類及びその変性体、穀物類粉粒(小麦粉、トウモロコシ粉)などから選ばれた1種以上であり、また、天然物(動・生物)由来物質としては、たんぱく質化合物、カルシウム質化合物、及びこれらの変性体などから選ばれた1種以上である。これらの微細粒子の粒径は、1〜20μm、特に2〜10μmであるものが好ましい。
【0021】
被覆層用微細粒子は具体的には、ケイ素化合物としてシリカ(二酸化ケイ素)、合成非晶質シリカ(二酸化ケイ素)、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ藻土などが用いられ、金属水酸化物として、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化ジルコニウム、塩基性炭酸マグネシウム、ドロマイト、ヒドロキシスズ酸亜鉛、酸化スズ水和物、ホウ砂などが用いられ、金属酸化物として、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化バリウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化モリブデン、酸化アンチモン、ジルコニウム−アンチモン複合酸化物などが用いられ、金属炭酸塩化合物として、炭酸亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸マグネシウム−カルシウムなどが用いられ、金属硫酸塩化合物として、硫酸アルミニウム、硫酸バリウムなどが用いられ、ホウ酸化合物としては、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸アルミニウムなどが用いられ、無機系化合物複合体として、アルミナ水和物、ゼオライト、セピオライト、ハイドロタルサイト、ヒドロキシアパタイト、大理石粉砕物などが用いられる。また、タンパク質として、アミノ酸重合物(プロテイン、皮革粉砕物)、コラーゲン、及びこれらの変性物などが用いられ、カルシウム質化合物として、リン酸カルシウム、リン酸亜鉛カルシウム、及び貝殻、珊瑚などの粉砕物が用いられ、その他、ケラチン、キトサン、アルギン酸重合体などの天然物由来の有機系化合物も用いられる。本発明の被覆層に用いるこれらの微細粒子の中でも、特にシリカ(二酸化ケイ素)を用いることが好ましく、ケイ酸ナトリウムと鉱酸(硫酸)及び塩類を、水溶液中で反応させる湿式法によって得られた合成非晶質シリカを用いることが好ましい。合成非晶質シリカの平均凝集粒径としては、平均凝集粒径(コールカウンター法)1〜20μm、特に2〜10μmであることが好ましい。また、合成非晶質シリカは、3〜15質量%、特に5〜10質量%の含水率を有することが好ましい。また特に上記天然物(鉱物)由来物質に関しては、必要に応じて、ステアリン酸、オレイン酸、パルチミン酸、などの脂肪酸またはその金属塩、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、またはこれらの変性物、有機ボラン、有機チタネート、シランカップリング剤などで微細粒子の表面を被覆もしくは表面処理、改質された物を使用することが好ましい。
【0022】
本発明の繊維布帛複合体が防炎性を必要とする場合には、公知の難燃剤を被覆層に適量含有させればよい。前記難燃剤としては、リン酸エステル系化合物、ポリリン酸アンモニウム系化合物、(イソ)シアヌル酸誘導体化合物、シアナミド化合物、尿素化合物、ホウ素系化合物、硫黄系化合物などのようにハロゲン原子を含まないものを用いることが好ましく、これらは、使用後の焼却処分にも問題を生ずることがない。
【0023】
被覆層を形成する塗工液の塗布の方法としては、格別の限定はない。一般に塗工液を繊維布帛の表面に均一、かつ均質に塗布できるコーティング方式を用いることが望ましく、例えば、グラビアコート法、マイクログラビアコート法、コンマコート法、ロールコート法、リバースロールコート法、バーコート法、キスコート法、フローコート法などが好適である。被覆層の形成には上記塗布方法の組み合わせ、または、単一方式により、塗工液を複数回繰り返しコーティングし、これを乾燥させて、被覆層の形成を行ってもよい。また、被覆層の形成にあたり、配合組成を異にする複数個の塗工液のコーティングによって多層構造の被覆層としてもよい。例えば、複数層の被覆層のそれぞれに用いられる塗工液中の微細粒子の配合量を変えてコーティングを行い、コーティング層毎に微粒子の含有濃度勾配を持たせることによって、印刷性、印刷発色性などの改良を行うこともできる。また、それぞれの被覆層に用いられる塗工液中の微細粒子の種類を変えてコーティングを行い、コーティング層ごとに含有される微細粒子の種類を変えることによって、印刷性、印刷発色性などの改良を行うこともできる。また、本発明の印刷用シートの被覆層が、繊維布帛の表裏両面に形成される場合、表裏両面の被覆層の組成が、それぞれ互に異なっていてもよい。これら被覆層各層の厚さに関して、特に制限はないが、上記コーティング方法のいずれか、もしくは、組み合わせによって、合計固形分付着質量が5〜60g/m2 、特に、10〜35g/m2 になるように形成されることが好ましい。合計固形分付着質量が5g/m2 よりも少ないと、本発明の繊維布帛複合体の印刷性、及び発色性が不十分となることがあり、また、それが60g/m2 を超えると、得られる繊維布帛複合体の風合いが硬くなると同時に、耐屈曲性が不十分になることがある。
【0024】
また、特に本発明の繊維布帛複合体の両面に被覆層が形成される場合、片面の印刷絵柄が、もう一方の印刷絵柄に透けて重なることを防止する目的で、被覆層の下地層として遮光層を設けることができる。この遮光層は、被覆層を形成するコーティング液中にカーボンブラック、酸化チタンなどの隠蔽性の無機系顔料、縮合アゾ染料、シアニンブルー、キナクリドンなどの濃色有機系顔料、アルミニウム粉末、ブロンズ粉末などの高隠蔽性の金属顔料、又は金属蒸着した無機系微粒子などを適量配合し、厚さが0.03〜0.1mmになるようにコーティングすることによって得ることができる。
【0025】
本発明の繊維布帛複合体に対する印刷方法としては、インクジェット印刷法が用いられる。インクジェット印刷は、市販のインクジェットプリンターを用いて容易に行うことができる。本発明の繊維布帛複合体に好適に使用できるインクジェット印刷用インクとしては、水性インク、溶剤系インク、油性インクのいずれを用いることができる。このうち水性インクは、顔料、染料の分散溶媒として水と水溶性有機溶剤を主成分とするものである。水溶性有機溶剤としてはジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリンなどの多価アルコール類や、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N−ビニル2−ピロリドンなどのピロリドン類をインクの湿潤剤として含み、また、水溶性有機溶剤としてエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコールエーテル類をインクの浸透剤として含むものである。その他、水性インク組成中にはpH調整剤、界面活性剤、水性高分子分散剤、キレート化剤、消泡剤、防腐防黴剤などの添加剤が添加されるものである。また、油性インクは顔料の分散溶媒として、ガス油、ナフサ、あるいは150℃以上の沸点をもつ有機溶剤を主体とするインクであり、また、溶剤系インクは顔料の分散溶媒として、シクロヘキサン、アセトン、メチルエチルケトンなどの150℃以下の融点をもつ有機溶剤を主体とするインクである。溶剤系インク及び、油性インクの組成としては、有機系顔料、染料などの着色剤と有機溶剤の他、バインダー樹脂として、フェノール樹脂、アクリル樹脂、マレイン酸樹脂、ロジン樹脂、エポキシ樹脂、ブチラール樹脂などの熱可塑性樹脂を含み、その他添加剤として、界面活性剤、キレート化剤、防腐防黴剤などの添加剤を含むものである。
【0026】
また、水性インク、溶剤系インク、及び油性インクの各々に使用する顔料としては、有機系顔料、無機系顔料など従来公知のもの、例えば、アゾ系、フタロシアニン系、キナクリドン系、アントラキノン系、ジオキサジン系、インジコ系、ベンチジン系、チオインジコ系、ペリノン系、ペリレン系、イソインドリノン系、酸化チタン、カドミウム系、酸化鉄系、カーボンブラック系の顔料が挙げられる。また、特に、水性インクには染料を使用することができ、これらの染料としては、天然染料、合成染料など従来公知の染料、例えばニトロソ系、ニトロ系、アゾ系、スチルベン系、ジフェニルメタン系、トリアリールメタン系、キノリン系、メチン系、ポリメチン系、チアゾール系、インダミン系、インドフェノール系、アジン系、オキサジン系、チアジン系、アミノケトン系、オキシケトン系、アントラキノン系、インジゴイド系、フタロシアニン系の染料などである。
【0027】
本発明の水中崩壊性繊維布帛複合体、及びその印刷体は、水(液体)と接触、例えば水中に浸漬すると、基布中の水溶性繊維及び印刷受容層中の水溶性高分子化合物が水中に溶解し、基布及び印刷受容層は、いずれもその形状が崩壊し、水溶性成分の水溶液中に水不溶性成分(非水溶性繊維、非水溶性バインダー成分、非水溶性粒子など)が分散している水性混合物が得られる。この水性混合物から、水溶性成分含有フラクションと、非水溶性成分含有フラクションとを、沈でん法、塩析法、濾過法、遠心分離法の何れか1種の分別法により分別してそれぞれを回収する。回収した水溶性成分含有フラクションを乾固して得られる水溶性成分は、水溶性繊維、又は水溶性バインダー成分などの水中溶解・乾固物を含み、これらをリサイクル原料として再生して再利用することができる。また分別された非水溶性成分含有フラクションから、例えば、無機系化合物固形成分を分別回収し、これをリサイクル原料としてもとの用途に再生再利用してもよいし、或はセメント、填料又は土中埋立材として用いてもよい。水不溶性有機系化合物成分のうち、分別できるもの、例えば繊維成分は、分別し、再生して、エコマーク適応商品、及びグリーン購入法適応商品などの用途に再利用してもよいし、分別できないものは、乾固して、サーマルリサイクル原料などとして利用してもよいし、或は焼却処分してもよい。また、使用ずみの本発明の水中崩壊性繊維布帛複合体、及びその印刷物は、そのまゝ、土中に埋め立て材として用いると、その有機成分の大部分は生分解し、非分解性成分も環境条件を悪化させることはなく、或は少ない。
【0028】
【実施例】
本発明を、下記実施例、及び比較例を挙げてさらに具体的に説明する。但し、本発明はこれらの例の範囲に限定されるものではない。下記実施例、及び比較例において繊維布帛複合体の印刷性、水中崩壊性能、及び、原料回収性など試験方法は下記の通りである。
【0029】
(I)印刷性
繊維布帛基布上に形成された被覆層に、それぞれ水性インク、溶剤系インクを装備した市販のインクジェットプリンターを用いて、音楽CDのジャケット絵柄(CRADLE OF FILTH/BITTER SUITES TO SUCCUBI/規格番号:VICP−61431/(株)ビクターエンタティメント)を120mm×1200mm大にフルカラー拡大出力(インクジェット印刷)し、そのインクの吸収性、発色性の評価を下記基準に基いて判定した。
1)水性インクによる印刷
インクジェットプリンター機種名:Hi−Fi JET FJ−50(6色ピエゾ型):ローランドディー.ジー(株)
インク顔料:シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック、ライトシアン、ライトマゼンタ
印刷出力:720dpi
2)溶剤系インクによる印刷
インクジェットプリンター機種名:ラミレスPJ−1304NX(オンデマンド方式):武藤工業(株)
インク顔料:シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック、印刷出力:384dpi3)印刷性の目視評価
○:インクの吸収性が良好、輪郭がシャープ、かつ発色も良好である。
△:インクが滲むか、或は発色が鈍い。
×:インクが滲み、かつ発色も鈍く、印刷性が不良である。
【0030】
(II)水中崩壊性
前記印刷1)によりインクジェット印刷を施した繊維布帛複合体の試料(サイズ:25cm×25cm)を、30℃の水浴中に24時間浸漬した後、これに5〜10分間の撹拌を施し、得られた水性混合物中における繊維布帛複合体の崩壊状態を観察し評価した。
<水中崩壊性の評価>
◎:水中崩壊性が良好であって繊維布帛複合体の形状を全く留めない。
○:繊維布帛複合体の半分以上が崩壊し、繊維布帛複合体の形状を留めていない。
△:繊維布帛複合体の一部が崩壊している。
×:繊維布帛複合体の原形がほゞ維持されている。
【0031】
(III )原料回収性
前記水中崩壊性試験(II)で得られた水性混合液を100メッシュのフィルターで濾過し、崩壊物の残査を回収し、これを乾燥して質量を求め、サイズ:25cm×25cmの繊維布帛複合体の原質量から残査の質量を差し引いた数値の百分率を求め、これを、供給試料の原料回収率とした。
【0032】
(IV)再利用性
前記原料回収性試験で得られた濾液をカラム分離し、固形物を、精製回収した。水溶性繊維製造の原料の一部、または被覆層を形成するコーティング剤の原料の一部として、前記回収固形物の再利用性を評価した。
<再利用性の評価>
○:再利用が可能である。
×:再利用が困難、または再利用に供するほどの回収量が得られない。
【0033】
(V)土中埋め立て材として利用性
(I)前記インクジェット印刷試験(I)を施した繊維布帛複合体をそのまま土中に埋め立て廃棄した場合の生分解性、及び環境負荷に関して可能性を判断した。
◎:土中埋め立てに適している。
○:土中埋め立てに用いても問題はない。
【0034】
[実施例1]
平均重合度(p)1150、ケン化度97モル%のポリビニルアルコール樹脂を、ジメチルスルホキシド溶媒中に溶解した紡糸原液を、メタノール浴中にゲル紡糸し、延伸し、脱溶媒・乾燥後、乾熱延伸して、融点193℃、繊度555dtex(96フィラメント)のマルチフィラメント糸条を製造した。この糸条を経糸、及び緯糸として、平織組織の繊維布帛(経糸密度:36本/インチ×緯糸密度:36本/インチ:空隙率1%:布帛質量132g/m2 )を織製した。この織物の片面に、下記配合組成を有するコーティング液をクリアランスコート法により、乾燥付着量18g/m2 を用いて均一に塗布し、乾燥(温度80℃)して被覆層を形成した。得られた繊維布帛複合体の厚さは、0.26mm、質量150g/m2 であった。
(被覆層形成用シリカ微粒子含有コーティング液)
Figure 0003762968
試験結果を表1に示す。
【0035】
[実施例2]
実施例1と同一の平織組織の繊維布帛の経糸の全てを、繊度555dtex(96フィラメント)のポリエステル(PET)マルチフィラメント糸条に変更して得られた繊維布帛(経糸密度:36本/インチ×緯糸密度:36本/インチ:空隙率1%:布帛質量138g/m2 )を基布として用いた。この基布の片面に、下記組成のコーティング液をクリアランスコート法により、乾燥付着量18g/m2 になるように均一に塗布し、乾燥(温度80℃)して被覆層を形成した。得られた繊維布帛複合体の厚さは、0.26mmであり、その質量は156g/m2 であった。
(被覆層形成用炭酸カルシウム微粒子含有コーティング液)
実施例1の被覆層形成用コーティング液に配合したシリカ(商標:E−170:日本シリカ工業(株):含水シリカ:含水率6wt%)51質量部の代わりに、炭酸カルシウム(商標:μ−POWDER#90:平均粒子径0.7μm:備北粉化工業(株))51質量部を配合した。これ以外は実施例1と同一の組成コーティング液を用いた。
(※被覆層中の炭酸カルシウムの含有率は、33質量%であった)
試験結果を表1に示す。
【0036】
[実施例3]
平均重合度(p)1150、ケン化度97モル%のポリビニルアルコール樹脂を、ジメチルスルホキシド溶媒中に溶解した紡糸原液を、メタノール浴中にゲル紡糸し、延伸し、脱溶媒・乾燥後、乾熱延伸して得られた、融点193℃、繊度555dtex(96フィラメント)のマルチフィラメント糸条を作製した。この糸条を経糸と緯糸中に、それぞれ50質量%含有させ、残り50質量%を、繊度555dtex(96フィラメント)のポリエステル(PET)マルチフィラメントにより構成した混用糸条を用いて平織組織の繊維布帛(経糸密度:36本/インチ×緯糸密度:36本/インチ:空隙率1%:布帛質量135g/m2 )を織製した。この織物の片面に、下記組成を有するコーティング液をクリアランスコート法により、乾燥付着量18g/m2 になるように均一に塗布し、乾燥(温度80℃)して被覆層を形成した。得られた繊維布帛複合体の厚さは、0.26mmであり、その質量は153g/m2 であった。
(被覆層形成用水酸化アルミニウム微粒子含有コーティング液)
実施例1の被覆層を形成するコーティング液に配合したポリエチレンオキサイド(商標:PEO(ペオ)−8:製鉄化学工業(株))30質量部の代わりに、ポリウレタン樹脂エマルジョン(商標:スパーフレックス200:無黄変型エステル系:固形分濃度30質量%:第一工業製薬(株))100質量部を配合した。また、シリカ(商標:E−170:日本シリカ工業(株):含水シリカ:含水率6wt%)51質量部の代りに、水酸化アルミニウム(商標:ハイジライトH−43:平均粒子径0.6μm:昭和電工(株))51質量部を配合した。これ以外は実施例1と同一組成のコーティング液を調製した。
(※被覆層中の水酸化アルミニウムの含有率は、33質量%であった。)
試験結果を表1に示す。
【0037】
[実施例4]
平均重合度(p)1150、ケン化度97モル%のポリビニルアルコール樹脂を、ジメチルスルホキシド溶媒中に溶解した紡糸原液を、メタノール浴中にゲル紡糸し、延伸し、脱溶媒・乾燥後、乾熱延伸して、融点193℃、繊度555dtex(96フィラメント)のマルチフィラメント糸条を作製した。この糸条を50質量%含有し、残り50質量%を、繊度555dtex(96フィラメント)のポリエステル(PET)マルチフィラメント糸条を用いた混用糸条を、実施例1と同様の繊維布帛の緯糸として用いて、平織組織の繊維布帛(経糸密度:36本/インチ×緯糸密度:36本/インチ:空隙率1%:布帛質量134g/m2 )を織製した。この織物の片面に、下記組成を有するコーティング液をクリアランスコート法により、乾燥付着量18g/m2 になるように均一に塗布し、乾燥(温度80℃)して、被覆層を形成した。得られた繊維布帛複合体の厚さは、0.26mmであり、その質量は152g/m2 であった。
(被覆層形成用プロテイン含有コーティング液)
実施例1の被覆層を形成するコーティング液に配合したポリエチレンオキサイド(商標:PEO(ペオ)−8:製鉄化学工業(株))30質量部の代わりにポリウレタン樹脂エマルジョン(商標:スパーフレックス200:無黄変型エステル系:固形分濃度30質量%:第一工業製薬(株))100質量部を配合した。また、シリカ(商標:E−170:日本シリカ工業(株):含水シリカ:含水率6質量%)51質量部の代わりにプロテイン(商標:出光シルクパウダーK−30:平均粒子径3〜4μm:出光石油化学工業(株))51質量部を配合した。これ以外は実施例1と同一の組成のコーティング液を調製した。
(※被覆層中のプロテインの含有率は、33質量%であった。)
試験結果を表1に示す。
【0038】
[実施例5]
平均重合度(p)1150、ケン化度97モル%のポリビニルアルコール樹脂を、ジメチルスルホキシド溶媒中に溶解した紡糸原液を、メタノール浴中にゲル紡糸し、延伸し、脱溶媒・乾燥後、乾熱延伸して得られたフィラメント糸条を捲縮し、これをカットして50mm長のステープルとし、このステープルを紡績し、得られた紡績糸条を650回/m加撚して、融点193℃、繊度590dtex(20番手双糸)の短繊維紡績糸条を作製した。この紡績糸条を経糸、及び緯糸として用い、平織組織の繊維布帛(経糸密度:51本/インチ×緯糸密度:48本/インチ:空隙率0%:布帛質量224g/m2 )を織製した。この織物の片面に、実施例1と同一の配合組成のコーティング液をクリアランスコート法により、乾燥付着量18g/m2 になるように均一に塗布し乾燥(温度80℃)して、被覆層を形成した。得られた繊維布帛複合体の厚さは、0.30mmであり、その質量は242g/m2 であった。
試験結果を表1に示す。
【0039】
[実施例6]
実施例5の平織組織の繊維布帛の緯糸のみの全てを、繊度590dtex(20番手双糸)の綿紡績糸条に変更して繊維布帛(平織、経糸密度:51本/インチ×緯糸密度:48本/インチ:空隙率0%:布帛質量230g/m2 )を作製した。この織物の片面に、実施例2の被覆層形成用コーティング液に配合されたポリエチレンオキサイド(商標:PEO(ペオ)−8:製鉄化学工業(株))30質量部の代わりにポリウレタン樹脂エマルジョン(商標:スパーフレックス200:無黄変型エステル系:固形分濃度30質量%:第一工業製薬(株))100質量部を配合したコーティング液を用いて、クリアランスコート法により、乾燥付着量18g/m2 になるように均一に塗布し、乾燥(温度80℃)して、被覆層を形成した。得られた繊維布帛複合体の厚さは、0.30mmであり、その質量248g/m2 であった。
試験結果を表1に示す。
【0040】
[参考例1]
実施例1で得た繊維布帛複合体のインクジェット印刷物を、30℃の水浴に24時間浸漬した後に、これに10分間の撹拌を施し、得られた水性混合物を100メッシュのフィルターで濾過し、濾液をカラム分離し、水溶性樹脂の固形物を精製回収した。この水溶性固形物をポリビニルアルコール繊維製造用原料として平均重合度(p)1150、ケン化度97モル%のポリビニルアルコール樹脂80質量部に対して中に20質量部の含有率で混合して、これをジメチルスルホキシド溶媒中に溶解し、得られた紡糸原液をメタノール浴中にゲル紡糸し、延伸し、脱溶媒・乾燥後、乾熱延伸して、融点193℃、繊度555dtex(96フィラメント)のマルチフィラメント糸条を作製した。この糸条を経糸、及び緯糸として用いて、平織組織の繊維布帛(経糸密度:36本/インチ×緯糸密度:36本/インチ:空隙率1%:布帛質量132g/m2 )を織製した。次に、この繊維布帛の片面に、実施例1と同一の配合組成のコーティング液をクリアランスコート法により、乾燥付着量が18g/m2 になるように均一に塗布し、乾燥(温度80℃)して、被覆層を形成した。得られた繊維布帛複合体の厚さは、0.26mmであり、その質量は150g/m2 であった。
【0041】
[参考例2]
実施例5で得た繊維布帛複合体のインクジェット印刷物を、30℃の水浴に24時間浸漬した後、これに10分間の撹拌を施し、得られた水性混合物を100メッシュのフィルターで濾過し、濾液をカラム分離し、水溶性固形物を精製回収した。この水溶性固形物を、ポリビニルアルコール繊維製造用原料として、平均重合度(p)1150、ケン化度97モル%のポリビニルアルコール樹脂80質量部に対して20質量部の含有率で混合し、この混合物をジメチルスルホキシド溶媒中に溶解して紡糸原液を調製し、この原液をメタノール浴中にゲル紡糸し、延伸し、脱溶媒・乾燥後、乾熱延伸し、得られたフィラメント糸条を捲縮し、これをカットして50mm長のステープルとし、このステープルを紡績しながらこれを650回/m加撚して融点190℃、繊度590dtex(20番手双糸)の短繊維紡績糸条を製造した。この紡績糸条を経糸、及び緯糸として用いて、平織組織の繊維布帛(経糸密度:51本/インチ×緯糸密度:48本/インチ:空隙率0%:布帛質量224g/m2 )を作製した。次にこの繊維布帛の片面に、実施例5と同一の配合組成のコーティング液をクリアランスコート法により、乾燥付着量が18g/m2 になるように、均一に塗布し乾燥(温度80℃)して被覆層を形成した。得られた繊維布帛複合体の厚さは、0.30mmであり、その質量は242g/m2 であった。
【0042】
【表1】
Figure 0003762968
【0043】
[比較例1]
実施例1において使用された繊度555dtexのポリビニルアルコール糸条(マルチフィラメント:96f)を経糸、及び緯糸とする、平織組織の繊維布帛(経糸密度:36本/インチ×緯糸密度:36本/インチ:空隙率1%:布帛質量132g/m2 )の代りに、繊度555dtexのポリエステル糸条(マルチフィラメント:96f)を経糸、及び緯糸とする、平織組織の繊維布帛(経糸密度:36本/インチ×緯糸密度:36本/インチ:空隙率1%:布帛質量140g/m2)を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、厚さが、0.26mm、質量が158g/m2 の繊維布帛複合体を作製し得た。
【0044】
[実施例の効果]
全てポリエステル糸条からなる繊維布帛を用いた比較例1の繊維布帛複合体(従来の印刷メディア)では、水中で被覆層成分の一部が溶解しただけで、ポリエステル繊維布帛は元の形状を留めたままであった。これに対して、実施例1〜6で得られた繊維布帛複合体は、すべてインクジェット印刷が可能で、水性インキ、及び溶剤系インキでのインクジェット印刷性に優れたものであった。また、これらの印刷物はすべて水中崩壊性を有し、その繊維布帛成分と被覆層成分の一部(総合して30質量%以上)、またはその大部分(総合して50質量%以上)が水中に溶解するものであり、従って、これら実施例の繊維布帛複合体は、広告用途に使用後に廃棄処理が極めて容易であることが確認された。また、実施例7,8によると、この廃棄処理に用いた廃液からは、繊維布帛または被覆層の原料として再利用可能である水溶性樹脂が回収可能であるため、これら実施例の繊維布帛複合体は、これらの廃棄物を一括して回収する物流ルートの整備によって、資源再利用の観点において一層有用性の大きいものであることが明らかとなった。また、さらに実施例の繊維布帛複合体は、生分解性を有する高分子化合物、及び天然物由来物質をその構成材料として用いているため環境負荷が少なく、従って、土中に埋め立て廃棄しても安全であることが示唆されるものである。
【0045】
【発明の効果】
上記、実施例及び、比較例により明らかな様に、本発明のインクジェット印刷用水中崩壊性繊維布帛複合体は、インクジェット印刷により精緻な印刷画像を手軽に提供できるため、各種広告媒体として屋内で使用することができることは勿論、使用後の廃棄処理が水を用いて容易になし得るものであり、また参考例から明らかなように、処理廃液から分離回収された水溶性高分子化合物は、本発明のインクジェット印刷用水中崩壊性繊維布帛複合体を製造する原料の一部として再利用可能であるなど、リサイクル性の高い、有用な繊維布帛複合体、及び印刷物である。

Claims (8)

  1. 織物より構成されている基布と、この基布の少なくとも1面上に形成されたインクジェット印刷受容層とを有する繊維布帛複合体であって、
    前記インクジェット印刷受容層が、水溶性高分子化合物及びバインダー樹脂からなるバインダーと、このバインダーにより結着された微細粒子とを含み、
    前記水溶性高分子化合物の含有量は、前記バインダーの合計質量の30質量%以上であり、
    前記バインダー樹脂が、ポリエチレンオキサイド系樹脂、並びに、カルボン酸基、スルホン酸基、脂肪族アミノ基、芳香族アミノ基、ヒドロキシル基、エーテル基、及び4級アンモニウム基から選ばれた1種以上の官能基が導入されている親水性ポリエステル系樹脂及び親水性ポリウレタン系樹脂から選ばれた1種以上を含み、
    前記微細粒子の含有量は、前記インクジェット印刷受容層の質量の10〜80質量%であり
    前記基布用織物は、水溶性ポリビニルアルコール系繊維を含み、かつこの水溶性ポリビニルアルコール系繊維が、前記繊維布帛複合体を液状の水と接触させたときに、その形状を崩壊するに十分な含有量及び分布をもって前記基布中に含まれている、
    ことを特徴とする、インクジェット印刷用水中崩壊性繊維布帛複合体。
  2. 前記基布用織物の経糸及び緯糸のいずれか一方のみに前記水溶性ポリビニルアルコール系繊維が含まれている、請求項1に記載のインクジェット印刷用水中崩壊性繊維布帛複合体。
  3. 前記基布中に含まれる水溶性ポリビニルアルコール系繊維が、ケン化度77〜97モル%のポリビニルアルコール樹脂及び融点150〜200℃のポリビニルアルコール系共重合体樹脂から選ばれた少なくとも1種からなる、請求項1又は2に記載のインクジェット印刷用水中崩壊性繊維布帛複合体。
  4. 前記基布用織物が、それを構成する糸条の少なくとも1部分として、前記水溶性ポリビニルアルコール系繊維を、50質量%以上の含有率で含む繊維糸条を含む、請求項3に記載のインクジェット印刷用水中崩壊性繊維布帛複合体。
  5. 前記インクジェット印刷受容層用水溶性高分子化合物が、ヒドロキシル基、カルボン酸(塩)基、(環状)エーテル基、アミノ基、4級アンモニウム(塩)基から選ばれた少なくとも1種の親水性基を有する水溶性天然高分子化合物及び水溶性合成高分子化合物から選ばれる、請求項1〜4のいずれか1項に記載のインクジェット印刷用水中崩壊性繊維布帛複合体。
  6. 前記印刷受容層用微細粒子が、ケイ素化合物、金属水酸化物、金属酸化物、金属炭酸塩化物、金属硫酸塩化合物、ホウ酸化合物、及び無機系化合物複合体の1種以上を含む無機微細粒子、並びに、セルロース及びその誘導体、デンプン類及びその変性体、穀物類粉粒など及び、たんぱく質化合物、天然カルシウム質化合物、及びこれらの変性体の1種以上を含む有機微細粒子から選ばれる、請求項1に記載のインクジェット印刷用水中崩壊性繊維布帛複合体。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載のインクジェット印刷用水中崩壊性繊維布帛複合体のインクジェット印刷受容層に、水性インク、溶剤系インク、又は油性インクによるインクジェット印刷が施されているインクジェット印刷物。
  8. 請求項1〜6のいずれか1項に記載のインクジェット印刷用水中崩壊性繊維布帛複合体、或は請求項7に記載のインクジェット印刷物を、水と接触させてその形状を崩壊せしめて得られた水性混合物。
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