JP3762181B2 - 切削インサート - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は切粉出し工作工具用の切削インサート(植刃)、具体的には正面フライス工具等のフライス用の切削インサートに関する。
【0002】
【従来の技術】
この種のインサートは、代表的には、頂面、工作工具の着座面に載置出来る適当に平坦な底面、及び頂、底面間に延長した少くとも1つの端縁面を含んで成る本体を成形するためにインサート成形用粉体材料を加圧成形し、そして焼結することにより製造される。端縁面は工具の協動する少くとも1つの側面と当接され得るが、これは頂面に対して鋭角度に概して傾斜しており、また底面に対して鈍角度で概して傾斜し、それにより切刃が頂面と端縁面との交差線に沿って形成され、切刃に隣接して1又は複数の逃げ面が存在する。
【0003】
このような切削インサート、具体的には割出し可能(インデキシヤブル)切削インサートを硬質金属で製造するためには、直プレス法が高い頻度で用いられるが、この方法では先ず硬質金属の成形用粉体が適当なプレスダイにおいて所期の形状に成形され、次いでこれを1000℃を越える温度のオーブンで焼結することにより最終の強度とサイズが付与される。このようなプレス操作は年を経て更に発展し、今回では切刃と隣接したチップ(切粉)成形面とを設けることが出来る強化面を高い寸法精度で以って成形することが出来るだけのレベルに進歩している。しかし、焼結操作中に収縮が起り(通常各寸法の原寸の約18%に相当する)、これにより切削インサートは原精度の幾分かを失うことになる。
【0004】
ある種の工作、例えばある種の正面フライス工作のためには、形状と寸法精度に対する要求が近年1段と厳しくなってきた。具体的には、ポジティブ型の切刃を備えたインサート外形(geometry)は小さい刃送りで満足な機能を保証するために非常に高度な寸法精度を要求する。これらの精度要件はこれまで所謂輪郭研磨によって適合されてきた。この研磨は焼結後の1工程で個々の切刃に隣接した面部を事後研磨することから成る。しかし、このような輪郭研磨の重大な不利益はこの研磨がインサートのミクロの外形(micro−geometry)を変更する原因となる、即ちブラスト加工、表面研磨、表面硬度改良層の沈積等の表面処理後のインサート端縁成形部分の表面構造の変更をもたらす。この処理は通常焼結完了後出来るだけ早期に施こされるものである。従って、存在するネガティブ型の強化面の幅並びに切刃からチップ成形面までの距離が改変される。実際上、これはチップ成形能力とインサートの切削性能が減退され、且つインサート強度と寿命が減少させられることを意味している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は上述の不利益を取り除くことにある。従って、第1の目的は問題の切刃に隣接した面部の事後研磨を要することなく使用時寸法が高精度で得られる切削インサートを提供することにある。第2の目的はこの種のインサートの簡単且つ合理的な製造を可能にすることにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
方法の発明としていえば、頂チップ面、底面及び頂、底面を結ぶ少くとも1つの端縁面を有するインサート本体を材料粉体の加圧(プレス)によりインサート素材を成形する。この場合、端縁面は頂面と鋭角度で交差して切刃を頂面との間に形成することになる逃げ面を含む。このプレス成形素材本体は次に焼結される。最後に、端縁面は研磨されるが、これは逃げ面の下に配位する端縁面の下面部に対して行われる。端縁面の下面部は切削操作中には工作工具の取付け面に対して当接されるものである。本発明では、この端縁面の下面部のみに研磨を施こす。
【0007】
この研磨が端縁面の下面部のみに限定されるので、従前の前記問題の発生を回避することが出来る。しかもこの研磨した下面部が工作工具にインサートを固定する際に当接面を提供するように利用出来るので、この当接面の反対側にある切刃との間の寸法を所望の値に研磨加工により設定することが出来る。
【0008】
【発明の実施の形態及び実施例】
図1〜図3には、基本的に四角形の切削インサート1が図示されている。このインサートは頂チップ面2とこのチップ面2の平面P2 と実質的に平行な適当に平坦な底面3を含んで成る。この図形例では、同一の4つの端縁面4(4A,4B,4C及び4D)がチップ面2と底面3の間で延在している。インサートは、インサート端縁面4が1方で底面3の平面に対し鈍角度をなし、他方チップ面の平面P2 に対し鋭角度をなす平面上に配位していることを意味するところのポジティブ型の外形を有している。
【0009】
隣り合う端縁面の間には、コーナ5,5’,5''及び5''' が夫々配位している。チップ面2と第1の端縁面4Aの間の領域には、2つの切刃として主切刃6と副切刃7が配位している。同様に、チップ面2と第2の端縁面4Bとの間には、主切刃6’と副切刃7’が配位し、同様の対をなす切刃6'',7''と6''' ,7''' もチップ面と端縁面4Cと4Dの夫々との間の遷移域に形成されている。各主切刃6は、チップ面2の平面視で副切刃7に対しある角度をなしている。実際には、この角度は0.5〜4°の範囲にある。
【0010】
各端縁面のある部分に沿って、インサート1は平坦な逃げ面8を有しており、この逃げ面は主切刃6の実質的長さに亘って延長し、その幅或いは高さはこの主切刃に隣接した位置にあるコーナに進むに従って増大している。例えば、逃げ面8の幅は端縁面4Aの所でコーナ5''' からコーナ5の方向に進むに従って漸次減少している。この逃げ面8は、図3に示すように平面P2に実質的に直角な平面に配位している。この第1逃げ面8は区分線9に沿って第2逃げ面10に接合するが、この第2逃げ面の幅はコーナ5からコーナ5''' の方向に進むに従って減少している。第2逃げ面10はチップ面の平面P2に対し鋭角度γで傾斜していて、この角度は例えば65−75°の範囲、適切には図3に示すように70°近辺がよい。頂面(チップ面)2は切刃6,7に接合して主切刃6に少くとも沿って実質的に同一幅を有する上位強化ランド11を含む。このランドは、好ましくは平面P2に配位して、頂面(チップ面)2の中間面部と接合しており、この中間面部は逆に頂面(チップ面)2のチップブレーキング部(チップ破断部)に接合している。このチップ破断部としては多種多様のチップブレーカを包含し得る。切削インサートの中心には適宜の締付け手段のための孔が穿設されている。
【0011】
以上説明した切削インサートはSE9003827−4(及びEP−A489702)に既に記述されており、従ってこゝではこれを参照して説明される。
【0012】
本発明によれば、各端縁面4A−4Dは2種の面部である逃げ面8,10の他に、インサートの研磨によって形成される第3面12を含んで成る。図3には、この第3面12が問題の端縁面に対して研磨工具13を適用してどのようにして形成されかを図示している。図3において、研磨工具13は端縁面4Aと接触している。直径方向に見て反対側の端縁面4C上の切刃6''' は研磨作業中にインサート1を位置決めする当接面として機能する。更に具体的にいえば、研磨工具を正確な寸法Aが切刃6''' と直径方向(に見て)反対側の研磨面12と間に成立するような深さまで研磨する。これは、研磨面12が切削操作中には直径方向反対側の切刃を位置決めするために、工作工具の着座面に当接しているので、重要である。
【0013】
チップ面の平面P2 に対して傾斜した研磨面12の角度θは実際には逃げ面10の前述の傾斜角度γより幾分小さい。実際には、両傾斜角度の差は1−6°の範囲、好ましくは約4°である。従って角度γが70°であれば、角度θは約66°程度が良い。それ故に、2種の面10,12の間には両者を接合する端縁14が形成される。実際には、この端縁14は底面3に平行に延長して研磨面12を全長に亘って一定幅Wを与えるようにすべきである。実際には、研磨面12の幅はインサート厚Tの半分より大きくても小さくても良いが、約Tの半分程度にする。しかし、研磨面12の幅Wはインサート厚Tの少くとも40%になるようにすべきである。
【0014】
当然、研磨作業は時間とエネルギーを必要とする点で要資源的なものである。時間とエネルギーの消費を最少限に抑えるためには、切削インサートはプレス成形工程中に各端縁面4A−4Dに凹所、好ましくは中央凹所15を設けておくのがよい。この凹所15はインサート各側の研磨面12を2個の面部121 ,122 に離間分断する。実際上、凹所15の長さは研磨面12の全長Lの25−35%に出来る限り設定され、それによって面部121 ,122 の総面積が凹所の無い場合の研磨面全面積の約75−65%にする。
【0015】
切刃に続く逃げ面8,10は夫々プレス成形と焼結の両工程によって成形されて、得られた寸法が維持される間に、研磨面12を研磨によって成形する。このことが、以下のような非常に高度の寸法精度の達成を可能にする。即ち、各研磨面12と直径方向反対側の切刃間の上述の寸法Aの公差(即ち、所望値からの寸法Aの変差)が非常に小さな範囲にある、即ち1−20μm、好ましくは1−10μmの範囲になることが可能である。各研磨面12は切刃の下にある現実の逃げ面ではなく、切削操作中にインサートを位置決めするために工作工具に対するインサート当接面として働くに過ぎない。
【0016】
図4と図5は本発明に係わる切削インサート1を数個装備した正面フライス20を図示している。もっとも、図5のインサートは図1に示すインサートとはチップ面の形状が異なるものである。切削インサートはフライス(工作工具)20の凹所に、工作物のフライス加工角度が90°になるように挿置される。この工作工具20の各凹所には3種の区分された当接面、即ちインサートの底面3を当接させる底面、或いは着座面16、及びインサートの4つの端縁面4A−4Dの内の2面を、その他の2面が切削作用位置にある間に当接させる第1と第2の側当接面17,18が形成されている。一般的に、装備時のインサート外形(geometry)は、半径方向レーキ角(すくい角)αがネガティブ型であって、軸方向レーキ角βがポジティブ型となるインサート外形になるように設定される。工作精度にとって決定的な因子は1方で工作工具の回転軸と各インサートの外周に配位した主切刃6との間の半径方向寸法Bであり、他方では工作工具の平坦上面19と各インサートの副切刃7との間の軸方向寸法Cである。この寸法B,Cは、勿論各切刃と、第1、第2側当接面17,18のいづれかに当接するものであって当該切刃に対し直径方向反対側にある当接面(研磨面)12との間の寸法Aに依存している。この当接面12を研磨によって形成された面とすることにより、高寸法精度の利益に限らずインサートのミクロ外形(micro−geometry)が焼結とその後のあり得る表面処理の後にも不変に維持されるという利益がもたらされる。このようにして、なかんづく、プレス成形と焼結の両工程で成形された強化面11が原寸幅を維持することが出来るし、チップ面2内のチップブレーカが切刃に対する相対的位置を維持することが出来る。
【0017】
本発明は当然ながら上述の事項や実施例に限定されるものではない。本発明の技術思想を四角形とは違う、例えば三角形等の別の多角形のインサートに対して容易に適用出来る。また、円形インサートを、その単一な円周端縁の下面部を研磨した状態で作成することが出来る。更に、本発明のインサートは単に正面フライスだけでなく他のチップブレーキング(切粉出し)工作工具に適用することが出来る。
【0018】
本発明のインサートは2種の切刃6,7と傾斜接合線9によって区分された2種の逃げ面8,10を必らずしも要しないことを指摘しておきたい。各側(多角形インサートの場合)に沿って単独の逃げ面と単独の切刃を具備し、チップ面に対する傾斜角度が逃げ面の場合より小さい研磨面に逃げ面が接合している、斯ゝる本発明の切削インサートも製作することが出来る。
【0019】
切削インサートの頂面(チップ面)におけるチップブレーカとしては、可能な全ての強化面の形状や寸法と同様に多種多様のものを設計することが出来る。
【0020】
本発明の技術思想は、粉体原料のプレス成形と焼結で製作される限り、硬質金属以外の別の材料で製作される切削インサートにも適用出来る。
【0021】
【発明の効果】
プレス成形と焼結並び可能な表面処理によって製作された切削インサートの切削操作に必要な個所の工作工具に対する相対的な寸法に関し、当該個所を何ら損うことなく、当該寸法の精度を向上させることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わる切削インサートの斜視図である。
【図2】図1のインサートの透視説明図である。
【図3】研磨工具と切削インサートの本発明による係わりを示す側面説明図である。
【図4】本発明に係わる切削インサートを具備した正面フライス工具に対するインサートの位置決めを示す正面フライス工具の正面図である。
【図5】図4の正面フライス工具の側面図である。
【符号の説明】
1…切削インサート
2…頂チップ面(チップ面)
3…底面
4,4A−4D…端縁面
P2…チップ面の配位する平面
5−5''' …コーナ
6〜6''' …主切刃
7〜7''' …副切刃
8…逃げ面
9…接合線
10…第2逃げ面
11…上位強化ラン
2…第3面部としての研磨面
13…研磨工具
14…接合端縁
15…凹所
16…底当接面
17…第1側当接面
18…第2側当接面
19…上面
20…正面フライス工具

Claims (12)

  1. 頂チップ面(2)と、底面(3)と、前記チップ面と前記底面との両面を接続する4つの端縁面(4A〜4D)とを本体が含み、
    前記端縁面(4A〜4D)が第1逃げ面(8)及び第2逃げ面(10)の両者の逃げ面を含んでいて、前記第2逃げ面(10)が前記頂チップ面(2)に関して鋭角度で延在し、
    前記第1逃げ面(8)は前記頂チップ面(2)と交差し且つ区分線(9)介して前記第2逃げ面10と交差し、
    前記第2の逃げ面(10)が、前記第2の逃げ面に中央部付近から前記底面に向かう凹所(15)を有し、前記凹所の両側に切削インサートを支持する面部(12 、12 )を離間して配置し、
    各端縁面内の切刃は主切刃(6)と副切刃(7)からなり、前記主切刃は前記頂チップ面(2)と前記第1逃げ面(8)と間に形成され、前記副切刃は前記頂チップ面(2)と前記第2逃げ面(10)と間に形成され、且つ
    粉体からプレス成形され且つ焼結されて成る本体を含んでいる切粉出し工作用の切削インサートにおいて、
    前記端縁面(4A〜4D)が、プレス成形工程により形成された凹所(15)と、前記各端縁面(4A〜4D)の同一平面のコーナ(5〜5’’’)近辺下方に区画形成された前記切削インサートを支持する二つの面部(12 1 、12 2 )とを備えていて、前記凹所(15)が、前記区分線(9)の中央部付近から前記底面(3)に向かって延在し、且つ前記切削インサートを支持する前記二つの面部(121、122を離間して前記凹所(15)の両側に配置しており、且つ
    前記切削インサートを支持する前記二つの面部(121、122)が、切削操作の際に、工作工具側の当接面(17、18)に対し当接して前記切削インサートを支持する面部である、
    ことを特徴とする切削インサート。
  2. 前記凹所(15)が、前記端縁面(4A〜4D)の中央に設けられることを特徴とする請求項1に記載の切削インサート。
  3. 前記端縁面(4A〜4D)が、前記頂チップ面(2)と交差する第1の逃げ面(8)の下側に配置する第2の逃げ面(10)を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の切削インサート。
  4. 前記第2の逃げ面(10)が、前記頂チップ面(2)の平面(P2)に対して65〜75°の範囲内の角度(γ)で傾斜していることを特徴とする請求項3に記載の切削インサート。
  5. 前記切刃(6、7)と交わる前記第1の逃げ面(8)下側の前記端縁面(4A〜4D)の一部または全体が、前記凹所(15)によって離間分断されていることを特徴とする請求項3または4に記載の切削インサート。
  6. 前記凹所(15)が、前記第2の逃げ面(10)と、前記頂チップ面(2)と交差する前記第1の逃げ面(8)との間の区分線(9)から下方に向かって延在し、前記底面(3)と交差することを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項に記載の切削インサート。
  7. 前記凹所(15)の長さが、前記底面(3)と前記端縁面(4A〜4D)との交差線の直線部の全長(L)の25〜35%である請求項1〜6のいずれか1項に記載の切削インサート。
  8. 前記本体が多角形であり、1辺に二つの切刃(6、7)を形成している複数の前記端縁面(4A〜4D)を含んでいる請求項1〜7に記載の切削インサート。
  9. 前記端縁面(4A〜4D)が、前記切削インサートの複数の同一に形成される端縁面の一つであり、それぞれの端縁面が交差して前記切削インサートのコーナを形成することを特徴とする請求項1に記載の切削インサート。
  10. 4個の前記端縁面(4A、4B、4C、4D)を備える請求項9に記載の切削インサート。
  11. 前記凹所(15)は、前記底面(3)と交差することを特徴とする請求項1に記載の切削インサート。
  12. 前記凹所(15)は、前記切刃(6、7)から下方に離間配置されることを特徴とする請求項1に記載の切削インサート。
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