JP3761758B2 - 殺菌方法および殺菌装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、細菌類や黴などの各種微生物を死滅させる殺菌方法、特に、高圧と低温を利用した簡易な殺菌方法、ならびに、その方法の実施に使用される殺菌装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
各種微生物の物理的殺菌法として、加熱、冷凍、紫外線照射などといった一般に広く行われている方法のほか、微生物を高圧雰囲気中に置いて死滅させる方法があり、この高圧処理による殺菌法は、被殺菌物の劣化や変性を伴わずに殺菌することができるため、近年、主に食品の殺菌法として検討され一部で用いられてきた。また、殺菌効果を高めるために、低温下で高圧処理する殺菌法も検討されている。
【0003】
上記した高圧殺菌では、微生物を有効に死滅させるために、例えば100MPa前後以上といった高圧を必要とし、従来は、油圧ポンプなどを用いて高圧を発生させていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の高圧殺菌法では、高圧を発生させるために大掛りな高圧発生装置を必要とし、従来から行われている他の殺菌法に比べて多大な装置コストを要する、といった問題点がある。そして、より殺菌効果を高めようとすると、さらに高い圧力で微生物を処理する必要があり、殺菌性の向上には装置コストの増大を伴うこととなる。
【0005】
この発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、大掛りな高圧発生装置を必要とすることなく簡便に高圧を発生させて、食品や医療用具等の食品以外の物品、酵素液、血清等の生体液や液状の医薬品などの殺菌処理を行うことができる殺菌方法、ならびに、その方法を好適に実施することができる殺菌装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明は、被殺菌物およびその周囲を満たすための充填液体と、冷却されて凍結することにより体積膨張する水もしくは塩類の水溶液からなる液体状態の凍結媒体とを、変形可能な隔離部材によって互いに隔て、かつ、耐圧容器内に充満させて気体を排除した状態で、耐圧容器内に被殺菌物および充填液体と凍結媒体とを密封した後、耐圧容器を冷却させて内部の凍結媒体の全部または一部を凍結させ、その凍結に伴う凍結媒体の体積膨張を耐圧容器の内壁面によって抑えることにより耐圧容器の内部に高圧を発生させることにより殺菌することを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1記載の殺菌方法において、被殺菌物を変形可能なプラスチック製容器または袋内に収容し、その容器または袋内に充填液体を充満させて気体を排除した状態で、容器または袋内に被殺菌物と充填液体とを密封したものを、耐圧容器内に収容した後、その耐圧容器内に液体状態の凍結媒体を充満させて気体を排除した状態で、耐圧容器内に被殺菌物および充填液体と凍結媒体とを密封することを特徴とする。
【0010】
請求項3に係る発明は、被殺菌液、冷却されて凍結することにより体積膨張する水もしくは塩類の水溶液からなる液体状態の凍結媒体とを、変形可能な隔離部材によって互いに隔て、かつ、耐圧容器内に充満させて気体を排除した状態で、耐圧容器内に被殺菌液と凍結媒体とを密封した後、耐圧容器を冷却させて内部の凍結媒体の全部または一部を凍結させ、その凍結に伴う凍結媒体の体積膨張を耐圧容器の内壁面によって抑えることにより耐圧容器の内部に高圧を発生させることにより殺菌することを特徴とする。
【0011】
請求項4に係る発明は、請求項3記載の殺菌方法において、被殺菌液を変形可能なプラスチック製容器または袋内に充満させて気体を排除した状態で、容器または袋内に被殺菌液を密封したものを、耐圧容器内に収容した後、その耐圧容器内に液体状態の凍結媒体を充満させて気体を排除した状態で、耐圧容器内に被殺菌液と凍結媒体とを密封することを特徴とする。
【0012】
請求項5に係る発明は、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の殺菌方法において、凍結媒体として、冷却させたときに凍結と共晶生成により膨張する塩類溶液を用いることを特徴とする。
【0013】
請求項6に係る発明は、請求項2または請求項4に記載の殺菌方法を実施するために使用される殺菌装置であって、内部に液体および変形可能なプラスチック製容器または袋を収容可能で、液体注入口が形設された耐圧容器本体と、この耐圧容器本体の前記液体注入口を、耐圧容器本体の内部圧力の上昇時にも液密に閉塞する密栓とから殺菌装置を構成したことを特徴とする。
【0014】
請求項7に係る発明は、請求項1または請求項3に記載の殺菌方法を実施するために使用される殺菌装置であって、内部がダイヤフラムによって2つの室に仕切られ、一方の室が密閉されてその内部に凍結媒体が充満させられるとともに、他方の室の内部に液体を収納可能でその他方の室側に液体注入口が形設された耐圧容器本体と、この耐圧容器本体の前記液体注入口を、耐圧容器本体の内部圧力の上昇時にも液密に閉塞する密栓とから殺菌装置を構成したことを特徴とする。
【0016】
請求項1に係る発明の殺菌方法では、耐圧容器内に充満させられて密封され変形可能な隔離部材によって互いに隔てられた充填液体と凍結媒体とのうち、凍結媒体、例えば水が、また、請求項3に係る発明の殺菌方法では、耐圧容器内に充満させられて密封され変形可能な隔離部材によって互いに隔てられた被殺菌液、例えば酵素液と凍結媒体とのうち、凍結媒体、例えば水が、氷点以下の温度に冷却されて凍結することにより体積膨張するが、凍結媒体および充填液体または被殺菌液は、耐圧容器内に封じ込められていて、耐圧容器の内壁面により内容物全体としての体積膨張が抑えられ、それに伴って耐圧容器内部に高圧が発生し、その高圧が、凍結媒体と隔離部材で隔てられた充填液体または被殺菌液にかかる。この高圧による殺菌作用と低温による殺菌作用とにより、充填液体中の被殺菌物に付着しまたは被殺菌液中に存在する細菌類や黴などの微生物が死滅する。
【0017】
請求項2および請求項4に係る各発明の殺菌方法では、耐圧容器内に充満させられて密封された凍結媒体が、凝固点以下の温度に冷却されて凍結することにより体積膨張するが、耐圧容器の内壁面により内容物全体としての体積膨張が抑えられ、それに伴って耐圧容器内部に発生した高圧が、プラスチック製容器または袋内に充満させられて密封された充填液体または被殺菌液にかかり、充填液中の被殺菌物または被殺菌液の殺菌が行われる。
【0018】
請求項5に係る発明の殺菌方法では、凍結媒体が冷却されて凍結するときの体積膨張が、水を冷却して凍結させるときの体積膨張より大きくなるので、耐圧容器の内部により高い圧力が発生する。
【0019】
請求項6に係る発明の殺菌装置を使用するには、耐圧容器本体内に、被殺菌物とその周囲を満たす充填液体とが密封されたプラスチック製容器または袋を収容し、または、被殺菌液、例えば酵素液が密封されたプラスチック製容器または袋を収容し、その耐圧容器本体内に液体注入口を通して凍結媒体、例えば水を注入し、耐圧容器本体内に水を充満させて気体を排除した状態で、液体注入口を密栓によって液密に閉塞し、耐圧容器本体内に被殺菌物および充填液体または酵素液と水とを密封する。その後に、耐圧容器本体を冷却して内部の水を氷点以下の温度で凍結させることにより、上記したように、耐圧容器本体の内部に高圧が発生して、高圧による殺菌作用と凍結による殺菌作用または低温による殺菌作用とにより、被殺菌物に付着しまたは酵素液中に存在する細菌類や黴などの微生物が死滅する。
【0020】
請求項7に係る発明の殺菌装置を使用するには、耐圧容器本体の他方の室内に被殺菌物を収容し、その他方の室内に液体注入口を通して不凍液体を注入し、他方の室内に不凍液体を充満させて気体を排除した状態で、液体注入口を密栓によって液密に閉塞し、他方の室内に被殺菌物と不凍液体とを密封し、または、耐圧容器本体の他方の室内に液体注入口を通して被殺菌液、例えば酵素液を注入し、他方の室内に酵素液を充満させて気体を排除した状態で、液体注入口を密栓によって液密に閉塞し、他方の室内に酵素液を密封する。その後に、耐圧容器本体を冷却して、一方の室内に密封された凍結媒体、例えば水を氷点以下の温度で凍結させることにより、上記したように、耐圧容器本体の内部に高圧が発生して、高圧による殺菌作用と低温による殺菌作用とにより、被殺菌物に付着しまたは酵素液中に存在する細菌類や黴などの微生物が死滅する。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の好適な実施形態について図1および図2を参照しながら説明する。
【0022】
図1は、この発明に係る殺菌方法を実施するために使用される殺菌装置の構成の1例を示す概略縦断面図である。この殺菌装置は、内部に液体を収容可能で、液体注入口12が形設された耐圧容器本体10と、この耐圧容器本体10の液体注入口12を閉塞する密栓14とから構成されている。耐圧容器本体10は、例えば100〜200MPa以上の高圧に耐える構造を有しており、例えばステンレス鋼材で厚肉に形成されている。密栓14は、耐圧容器本体10の内部圧力が100〜200MPa以上に上昇しても、内部に密封された液体が漏出しないように、耐圧容器本体10の液体注入口12を液密に閉塞することができる構造となっている。
【0023】
被殺菌物、例えば医療用具の殺菌処理を行おうとするときは、まず、医療用具を変形可能なプラスチック製容器16(または袋)内に収容し、その容器16内に充填液体、例えば水、エタノールなどを充満させて空気を排除し、容器16内に医療用具と充填液体とを密封する。また、被殺菌液、例えば酵素液の殺菌処理を行おうとするときは、酵素液をプラスチック製容器16(または袋)内に充満させて空気を排除し、容器16内に酵素液を密封する。そして、容器16を耐圧容器本体10内に収容した後、耐圧容器本体10内に液体注入口12を通して液体状態の凍結媒体18を注入し、耐圧容器本体10内に凍結媒体18を充満させて空気を排除し、その状態で密栓14により液体注入口12を閉塞して、耐圧容器本体10内に、容器16内に密封された医療用具および充填液体または酵素液と凍結媒体18とを密封する。凍結媒体としては、水あるいは硫酸マグネシウムや硫酸カリウム等の塩類の水溶液などが使用される。この凍結媒体の条件は、常温で液状であって取扱いが容易であり、適当な温度、例えば0〜−20℃程度の温度で凝固し、凝固時に体積膨張することであり、凝固時の体積膨張が大きいもの程好ましい。
【0024】
医療用具および充填液体または酵素液が入った容器16を収容し凍結媒体18を密封した耐圧容器本体10と密栓14とからなる殺菌装置は、冷凍庫内へ入れられ、冷却される。殺菌装置が冷却されて、凍結媒体18の温度が凝固点以下(凍結媒体18が水であるときは氷点以下)となることにより、凍結媒体18が凝固し始め、凍結媒体18の温度の低下に従って凍結媒体18の凍結が進み、凍結に伴って凍結媒体18が部分的に体積膨張する。ところが、凍結媒体18は、耐圧容器本体10内に充満した状態で密封されているため、耐圧容器本体10の内壁面により内容物全体としての体積膨張が抑えられ、それに伴って耐圧容器本体10の内部に高圧が発生する。そして、凍結媒体18の凍結により発生した高圧が、プラスチック製容器16内に密封された充填液体または酵素液にかかり、その高圧による殺菌作用と低温による殺菌作用とにより、医療用具に付着した(または酵素液中に存在する)細菌類などの微生物が死滅する。
【0025】
なお、充填液体、例えばエタノールと接触すると不都合を生じる物品を殺菌処理したり、食肉等の食品を殺菌処理したりする場合などには、それらの物品や食品を真空包装して、その被殺菌物をプラスチック製容器16内に収容するとよい。
【0026】
図2は、殺菌装置の別の構成例を示す概略縦断面図である。この殺菌装置は、ステンレス鋼材などで厚肉に形成され耐圧構造を有する耐圧容器本体20の内部が、変形可能なダイヤフラム(仕切り板もしくは膜)22によって2つの室、すなわち凍結室24と殺菌室26とに仕切られている。凍結室24は、密閉されてその内部に凍結媒体28が常に充満させられている。殺菌室26側には液体注入口30が形設されており、液体注入口30は密栓32によって液密に閉塞され、内部圧力の上昇時にも内部に密封された液体が漏出しない構造となっている。
【0027】
図2に示した殺菌装置を使用して被殺菌物、例えば医療用具の殺菌処理を行おうとするときは、医療用具34を殺菌室26内に収容し、その殺菌室26内に水、エタノールなどの充填液体36を充満させて空気を排除し、その状態で密栓32により液体注入口30を閉塞して、殺菌室26内に医療用具34および充填液体36を密封する。また、被殺菌液、例えば酵素液の殺菌処理を行おうとするときは、酵素液を殺菌室26内に注入して充満させ、空気を排除した状態で密栓32により液体注入口30を閉塞して、殺菌室26内に酵素液を密封する。そして、この殺菌装置を冷凍庫内で冷却する。殺菌装置が冷却されて、凍結室24内の凍結媒体28の温度が凝固点以下に下降すると、凍結媒体28が凝固し始め、凍結媒体28の温度の低下に従って凍結媒体28の凍結が進み、凍結に伴って凍結媒体28が体積膨張する。ところが、凍結媒体28は、耐圧容器本体20の凍結室24内に充満した状態で密封され、殺菌室26内には充填液体36(または酵素液)が充満した状態で密封されているため、耐圧容器本体20の内壁面により内容物全体としての体積膨張が抑えられ、それに伴って耐圧容器本体20の内部に高圧が発生する。そして、凍結媒体28の凍結により発生した高圧が、殺菌室26内に密封された充填液体36(または酵素液)にかかり、その高圧による殺菌作用と低温による殺菌作用とにより、医療用具34に付着した(または酵素液中に存在する)細菌類などの微生物が死滅する。
【0028】
【実施例】
以下、この発明のより具体的な実施例について、実験例およびその結果を示しながら説明する。
【0029】
[実験方法]
〔1.実験材料の調製〕
耐塩性の味噌用酵母チゴサッカロマイセス・ルキシー(Zygosaccharomyces rouxii) IAM 12880を5%加塩の麦芽汁培地において30℃の温度で5日間培養し、菌体を滅菌水で洗浄した後、菌体を滅菌水に懸濁させ、その懸濁液0.3mlをプラスチック袋内に密封して被加圧試料aとした。非耐塩性酵母サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae) IAM 4274を麦芽汁培地において、乳酸菌ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)IFO 12005をGYP培地において、大腸菌エッセリシア・コリー(Escherichia coli) IFO 3972をミューラー・ヒントン培地において、それぞれ30℃の温度で2日間培養し、それぞれ菌体を滅菌水で洗浄した後、それぞれ菌体を滅菌水に懸濁させ、それぞれ懸濁液0.3mlをプラスチック袋内に密封して、それぞれ被加圧試料b、c、dとした。また、麹黴アスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae) H−3およびアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger) IFO 9455をそれぞれ、ポテトデキストロース寒天培地において30℃の温度で7日間培養し、それぞれ発生した胞子を滅菌水に懸濁させ、それぞれ懸濁液0.3mlをプラスチック袋内に密封して、それぞれ被加圧試料e、fとした。
【0030】
〔2.高圧発生の方法〕
耐圧容器として、図3に縦断面図を示すような構造のステンレス製耐圧容器(コマ・インターナショナル社製、耐圧性300気圧、内部充填容量20ml、L1=283mm、L2=241mm、L3=174mm、D=38.1mm)を用い、この耐圧容器内に被加圧試料a〜fをそれぞれ収容し、耐圧容器内から蒸留水をオーバーフローさせながら耐圧容器内に蒸留水を充満させ、耐圧容器内に被加圧試料および蒸留水を密封した。この耐圧容器を、各種の温度に設定された冷凍庫内へ入れ、24時間冷却した。また、比較試験のために外部からの加圧を行う装置として、三菱重工業(株)製の食品用加圧試験装置(MFP−7000)を使用した。
【0031】
〔3.耐圧容器の内部に発生する圧力の測定方法〕
図4に縦断面図を示すように、圧力計(長野計器(株)製、ダイヤフラム式、Type KH78型)66が接続された耐圧容器(光高圧(株)製、内容量167ml)68内に、水を密封したゴム風船(空気を抜き木綿糸で封止したもの)70を収容し、その周囲をエタノール(不凍液体、圧力伝達媒体)72で満たし、上部開口からエタノールをオーバーフローさせながら密栓74で上部開口を閉塞して、水を密封したゴム風船70およびエタノール72を耐圧容器68内に密封した。この際、圧力計66に接続したチューブ76内および耐圧容器68内の空気を完全に追い出してエタノール72で置換するようにした。そして、耐圧容器68を、所定の温度に設定された恒温槽78内に貯留された冷媒(エタノールと水)80中に浸漬させて冷却し、耐圧容器68の内部に発生する圧力を測定した。
【0032】
〔4.菌数の測定方法〕
耐塩性味噌用酵母チゴサッカロマイセス・ルキシー IAM 12880については5%加塩の麦芽寒天培地を用い、非耐塩性酵母サッカロマイセス・セレビシエ IAM 4274については麦芽寒天培地を用い、麹黴アスペルギルス・オリゼー H−3およびアスペルギルス・ニガー IFO 9455についてはそれぞれポテトデキストロース寒天培地を用い、乳酸菌ラクトバチルス・ブレビス IFO 12005についてはBCPプレートカウントアガールを用い、大腸菌エッセリシア・コリー IFO 3972についてはミューラー・ヒントン寒天培地を用いて、それぞれ希釈平板培養法により菌数を測定する。
【0033】
[実験結果]
〔1.耐圧容器の内部での高圧の発生〕
図4に示した装置を使用し、ゴム風船70内に140mlの水を密封(耐圧容器68内のエタノール量27ml)した耐圧容器68を、−22℃の温度に設定された恒温槽78内の冷媒80中に浸漬させたとき、耐圧容器68の冷却による耐圧容器68内部の圧力上昇は、図5に示すような曲線となった。すなわち、耐圧容器68内部の圧力上昇は、耐圧容器68を恒温槽78内の−22℃の冷媒80中に浸漬させてから15分後に始まり、時間の経過に従って圧力が上昇していき、1時間後に141MPaの圧力に達して、平衡状態となった。
【0034】
また、恒温槽78の設定温度を−5℃、−10℃、−15℃、−20℃および−22℃とし、その各温度の冷媒80中に耐圧容器68を30分以上浸漬させた後に、耐圧容器68の内部の圧力を測定した結果、−5℃のときに60MPa、−10℃のときに103MPa、−15℃〜−22℃のときに141MPaとなった。この結果を図6に、ブリッジマン(Bridgeman)の水・氷の平衡曲線Aと共に示す。
【0035】
図6に示すように、実験の結果は−15℃近辺まで水・氷の平衡曲線Aに重なるが、その後は、温度降下させても耐圧容器68内部の圧力上昇はみられない。この実験結果は、以下のことを示していると考えられる。すなわち、耐圧容器68を冷却すると、ゴム風船70内において0℃以下の温度で氷が生成し、ゴム風船70の体積が膨張するが、耐圧容器68の内壁面によって内容物全体としての体積膨張が抑えられるため、それに伴って耐圧容器68内部の圧力が上昇するとともに、耐圧容器68内のエタノール72およびゴム風船70内の水と氷がそれぞれ圧縮される。そして、耐圧容器68内部に発生した圧力は、ブリッジマンの平衡曲線Aに従ってゴム風船70内の水の氷点を降下させる。一方、耐圧容器68は継続的に温度降下し続けているため、ゴム風船70内での新たな氷の生成、耐圧容器68内部の圧力上昇、耐圧容器68内のエタノール72およびゴム風船70内の水と氷の圧縮、ならびに、ゴム風船70内の水の氷点降下が同時的に進行すると考えられる。そして、ゴム風船70内に未凍結水が存在する間は、温度・圧力は、平衡曲線A上を低温・高圧側へと変化し、未凍結水が無くなると、水の凍結に伴う新たな圧力の発生は無くなるので、温度・圧力は、平衡曲線Aから下方側へ離脱し、温度のみが低下する。この実験例のように、耐圧容器68内にゴム風船70内の水140mlとエタノール27mlとを収容した比率では、−15℃近辺の温度でゴム風船70内の水の凍結がほぼ終了したものと考えられる。
【0036】
〔2.高圧による殺菌〕
図3に示した耐圧容器内に被加圧試料aおよびbをそれぞれ各別に収容し、その耐圧容器内へ水を充満させて、耐圧容器内にそれぞれの被加圧試料a、bと水とを密封した後、各種の温度に設定した冷凍庫内に耐圧容器を入れて冷却し、それぞれ24時間保持したときの生菌数の変化を調べた。この結果を図7に示す。図中、折線aが、被加圧試料a(耐塩性味噌用酵母チゴサッカロマイセス・ルキシー IAM 12880)を耐圧容器内に密封して耐圧容器を冷却したときの結果を、折線bが、被加圧試料b(非耐塩性酵母サッカロマイセス・セレビシエIAM 4274)を耐圧容器内に密封して耐圧容器を冷却したときの結果を、折線a’が、被加圧試料aを開放容器に入れて開放容器を冷却したときの結果を、折線b’が、被加圧試料bを開放容器に入れて開放容器を冷却したときの結果をそれぞれ示す。
【0037】
図7に示した結果から明らかなように、両酵母共に、温度の低下に伴って生存率が低下し、−10℃以下の温度では完全に死滅した。これに対し、常圧で低温にしたものは、酵母の生存率が全く変化しなかった。
【0038】
比較のために、食品用加圧試験装置を使用し、室温でそれぞれの被加圧試料a、bを加圧したときの生菌数の変化を調べた。この結果を図8に示す。図中、折線a”が、被加圧試料aを常温で加圧した結果を、折線b”が、被加圧試料bを常温で加圧した結果をそれぞれ示す。図8から、常温下で酵母を死滅させるためには、200MPaの圧力が必要であることが分かった。
【0039】
他の被加圧試料c〜fについても、それぞれを耐圧容器内に密封して、−20℃の温度に設定された冷凍庫内に耐圧容器を入れて冷却し、24時間保持したときの生菌数の変化を調べた。この結果を表1に、被加圧試料a、bについての結果も併せて示す。
【0040】
【表1】
Figure 0003761758
【0041】
表1に示した結果より、乳酸菌、大腸菌および両麹黴のいずれも、完全に死滅した。これに対し、開放容器内で試料を冷却したものは、生存率の変化がそれ程無かった。
【0042】
この発明に係る殺菌方法による微生物の致死要因としては、氷点以下での低温による殺菌効果と高圧による殺菌効果とが考えられるが、開放容器内で微生物を低温処理しても、表1に示したように高い生存率が得られることから、低温による殺菌効果は主要な致死要因ではないと考えられる。したがって、耐圧容器での密封冷却による微生物の死滅は、氷点以下の冷却に伴う耐圧容器の内部の圧力上昇によるものと考えられ、このとき発生する圧力は、図6に示すように少なくとも140MPaに達する。
【0043】
【発明の効果】
請求項1ないし請求項5に係る各発明の殺菌方法によると、大掛りな高圧発生装置を必要とすることなく簡便に高圧を発生させて、食品や医療用具等の物品、酵素液、血清等の生体液や液状の医薬品などを効果的に殺菌処理することができる。また、請求項6および請求項7に係る各発明の殺菌装置を使用すると、上記した効果を奏する殺菌方法を好適に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に係る殺菌方法を実施するために使用される殺菌装置の構成の1例を示す概略縦断面図である。
【図2】殺菌装置の別の構成例を示す概略縦断面図である。
【図3】高圧発生の実験に使用した耐圧容器の構造を示す縦断面図である。
【図4】耐圧容器の内部に発生する圧力を測定するために使用した装置の全体構成を示す縦断面図である。
【図5】耐圧容器の内部での高圧発生の実験結果を示し、冷却時間−発生圧力曲線を示す図である。
【図6】同じく、冷却温度と発生圧力との関係を示す図である。
【図7】高圧による殺菌効果を調べるための実験の結果を示し、冷却温度と生菌数との関係を示す図である。
【図8】室温で被加圧試料を加圧したときの生菌数の変化を調べた実験結果を示し、圧力と生菌数との関係を示す図である。
【符号の説明】
10、20 耐圧容器本体
12、30 液体注入口
14、32 密栓
16 プラスチック製容器
18、28 凍結媒体(水)
22 ダイヤフラム
24 凍結室
26 殺菌室
34 医療用具
36 充填液体(エタノール)

Claims (7)

  1. 被殺菌物およびその周囲を満たすための充填液体と、冷却されて凍結することにより体積膨張する水もしくは塩類の水溶液からなる液体状態の凍結媒体とを、変形可能な隔離部材によって互いに隔て、かつ、耐圧容器内に充満させて気体を排除した状態で、耐圧容器内に被殺菌物および充填液体と凍結媒体とを密封した後、耐圧容器を冷却させて内部の凍結媒体の全部または一部を凍結させ、その凍結に伴う凍結媒体の体積膨張を耐圧容器の内壁面によって抑えることにより耐圧容器の内部に高圧を発生させることを特徴とする殺菌方法。
  2. 被殺菌物を変形可能なプラスチック製容器または袋内に収容し、その容器または袋内に充填液体を充満させて気体を排除した状態で、容器または袋内に被殺菌物と充填液体とを密封したものを、耐圧容器内に収容した後、その耐圧容器内に液体状態の凍結媒体を充満させて気体を排除した状態で、耐圧容器内に被殺菌物および充填液体と凍結媒体とを密封する請求項1記載の殺菌方法。
  3. 被殺菌液と、冷却されて凍結することにより体積膨張する水もしくは塩類の水溶液からなる液体状態の凍結媒体とを、変形可能な隔離部材によって互いに隔て、かつ、耐圧容器内に充満させて気体を排除した状態で、耐圧容器内に被殺菌液と凍結媒体とを密封した後、耐圧容器を冷却させて内部の凍結媒体の全部または一部を凍結させ、その凍結に伴う凍結媒体の体積膨張を耐圧容器の内壁面によって抑えることにより耐圧容器の内部に高圧を発生させることを特徴とする殺菌方法。
  4. 被殺菌液を変形可能なプラスチック製容器または袋内に充満させて気体を排除した状態で、容器または袋内に被殺菌液を密封したものを、耐圧容器内に収容した後、その耐圧容器内に液体状態の凍結媒体を充満させて気体を排除した状態で、耐圧容器内に被殺菌液と凍結媒体とを密封する請求項3記載の殺菌方法。
  5. 凍結媒体として、冷却させたときに凍結と共晶生成により膨張する塩類溶液を用いる請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の殺菌方法。
  6. 請求項2または請求項4に記載の殺菌方法を実施するために使用される殺菌装置であって、
    内部に液体および変形可能なプラスチック製容器または袋を収容可能で、液体注入口が形設された耐圧容器本体と、この耐圧容器本体の前記液体注入口を、耐圧容器本体の内部圧力の上昇時にも液密に閉塞する密栓とから構成されたことを特徴とする殺菌装置
  7. 請求項1または請求項3に記載の殺菌方法を実施するために使用される殺菌装置であって、
    内部がダイヤフラムによって2つの室に仕切られ、一方の室が密閉されてその内部に凍結媒体が充満させられるとともに、他方の室の内部に液体を収納可能でその他方の室側に液体注入口が形設された耐圧容器本体と、この耐圧容器本体の前記液体注入口を、耐圧容器本体の内部圧力の上昇時にも液密に閉塞する密栓とから構成されたことを特徴とする殺菌装置
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