JP3761414B2 - 鋳造用鋳型及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、鋳造用鋳型及びその製造方法に関する。さらに詳しくは、安価で、寸法安定性及び生産性が高く、鋳造欠陥を生じ難い鋳造用鋳型及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
精密鋳造法は、現在、▲1▼ 焼失模型法(ロストワックス法)、▲2▼ セラミックモールド法、及び▲3▼ 石膏鋳造法の三つが主に用いられている。
【0003】
焼失模型法(ロストワックス法)は、焼失若しくは溶出可能な模型表面にコロイダルシリカ又はエチルシリケートを結合材として混練した耐火材(セラミック材)を付着させ、この上からさらに耐火材を散布し付着させ、これを自然乾燥により硬化させる工程を複数回繰り返すことで、殻状の鋳型を構築し、この後中の原型を焼失(溶出)させることで除去し鋳造用鋳型を作製する方法である。
この鋳型を800〜1200℃で焼成し、完全に硬化させることで、融点の高い合金の鋳造が可能となる。また、その特徴は、製法上、模型を完全に鋳型内に埋設できることから、通常の脱型法では対応困難なアンダーカット形状への対応が可能であることにある。
【0004】
セラミックモールド法は、エチルシリケートを結合材とし、これに耐火材を混練した後、硬化剤(アクセラレータ)を添加し、自己硬化性を持たせたスラリーを得、これをシリコーンゴム等の模型上に注入し硬化させた後、模型を脱型することで鋳造用鋳型を作成する方法である。この鋳型を800〜1200℃で焼成し、完全に硬化させることで、融点の高い合金の鋳造が可能となる。
また、その特徴は、焼失模型法とは異なり、鋳型材が自己硬化性を有することから、鋳型製作に際しての生産性が高く、かつ模型の寸法精度が格段に向上することから、製作される鋳型、鋳物の寸法精度もよくなることにある。また、焼失模型法に比べて、遥かに大きな鋳物(数トンレベル)の鋳造が可能であるという特徴もある。
【0005】
石膏鋳造法は、水と結合することで硬化(凝結)する特徴を持つ石膏を結合材とし、これに耐火材を混練して得たパウダーを、適宜水を加えてスラリー化し、これをシリコーンゴム等の模型上に注入し硬化させた後、模型を脱型することで鋳造用鋳型を作成する方法である。この鋳型を150〜200℃で焼成し、鋳型内の水を除去することで、前述の2つの鋳造法に比べて低い融点の合金(軽合金類)の鋳造が可能となる。
その特徴は、鋳型コストが格段に安価であると同時に、その寸法精度も極めて高く、鋳型での加工も容易であることにあり、他の鋳造法では対応することが困難な高精度高難度鋳物(例えば、タイヤ成形用金型など)に対しても対応が可能であることにある。しかしながら、石膏鋳型は軽合金等の融点の低い(800℃程度まで)合金までしか対応ができないこと、焼成後の鋳型が大気中から水分を吸湿しやすいこと(これは鋳造時、鋳物にピンホール欠陥を発生させる原因となる)という不都合もある。
これらの鋳造法の特徴をまとめて表1に示す。
【0006】
【表1】
【0007】
表1に示すように、各鋳造法に用いられる鋳型用組成物(スラリー)は、通常、結合材、溶媒及び耐火材を混合して調製される。
【0008】
鋳型用組成物(スラリー)を構成する成分のうち、石膏の場合は、水の存在が硬化(凝結)を開始させるエージェントとなるが、エチルシリケートの場合は、硬化材(アクセラレータ)を添加することで初めて自己硬化性を発現する。すなわち、アクセラレータを添加しなければ自己硬化性を発現することはない。コロイダルシリカの場合は、物理的に、組成物中の水を自然乾燥させることで、見かけ上固体化し、これを高温焼成することでガラス化させることはできるが、化学的に自己硬化性を発現させることはできない。
【0009】
鋳型は、通常、液状の結合剤(バインダー)中に各種耐火材の粉末を混合して、鋳型用組成物を調製し(スラリー化し)、これをゴム型、ロウ材表面等に流して、硬化させ、脱型、脱ロウする方法で製造される。
【0010】
このような鋳型を用いることができるのが鋳造法の最大の特徴であり、液状の鋳型用組成物で複雑な形状を精密に反転させた鋳型を作製し、この鋳型の中に金属溶湯を充填することによって、機械加工では対応することができない複雑な形状の製品を作製することができる。従って、鋳型用組成物、中でも結合材の特性が、各種鋳造法の特徴の大半を決定付けることになっている。
【0011】
結合剤の中でも、コロイダルシリカ、エチルシリケート系の結合剤は、焼成後ガラス化するため、耐火材の選択次第で高い温度までの使用が可能となることから、鉄、ニッケル、銅合金のような、融点で1000〜1500℃程度の合金まで、殆ど全ての合金の鋳造用鋳型として用いることができる。
【0012】
しかし、石膏の場合は、800℃近傍から石膏(CaSO4)の熱分解(カルシウムと亜硫酸ガスとへの分解)が始まるため、800℃程度までの耐火性しか有していない。このため、アルミニウム、亜鉛合金等の比較的融点の低い合金の鋳造にしか用いることができなかった。
【0013】
このことから、石膏鋳造法の場合、耐火材として、耐火性及び価格の高いものを用いずに、むしろ、安価かつ寸法的に安定で、鋳肌が平滑になるような、きめの細かいものを用いる傾向があった。
また、石膏鋳型の場合は、焼成(乾燥)後の石膏分子がIII型無水石膏(CaSO4III)の状態で、分子内に結晶水の形で水を取り込み易い状態となっており、150〜200℃以下になると、大気中から湿気を速やかに再吸湿し鋳造時に鋳物ピンホール欠陥を発生させ易いという問題があった。
【0014】
このような石膏鋳型も、700〜800℃の高温で焼成することによって、石膏分子の状態を、大気中から湿気を再吸湿することがないII型無水石膏(CaSO4II)に変態させることができるが、III型からII型への変態には非常に大きな変態収縮を伴う上、強度低下も著しいことから、鋳型焼成時に型割れや鋳型変形を発生させてしまうことが多かった。このため、通常、寸法が最も安定な焼成温度(150〜200℃)で鋳型を乾燥している。
【0015】
このような低い焼成温度を用いる事情もあって、前述の三種の精密鋳造法の中で石膏鋳造法が、最も、寸法精度の良好な鋳型を作製することができる。
【0016】
一方、コロイダルシリカの場合は、前述のように自己硬化性を有しないため、スラリー状で型に流し込み、硬化させ、反転するという方法を採用することができないという問題がある。このため、コロイダルシリカは消失模型法にしか用いることができない。また、消失模型法に用いた場合も、スラリーを硬化させる(スラリー中の水分を除去する)作業を急速に行うと、消失模型からスラリーが剥離したり、ひび割れが発生し易いことから、長い作業時間を要し、生産性が低かった。なお、水分除去後は、800℃〜1000℃の高温焼成でコロイダルシリカをガラス化させ、鋳造に耐える鋳型材として完全硬化させている。
【0017】
また、エチルシリケートの場合は、自己硬化性を有しているものの、硬化後に急速加熱(焼成)することが必要であり、これに起因して鋳型の寸法変動が発生し易いという問題があった。このように、硬化後に急速加熱(焼成)を必要とするのは、鋳型中の溶媒を急速に除去し、加水分解反応を停止させて鋳型の寸法変化を押さえると同時に、マイクロクレージングを生じさせることで、鋳型の通気性を向上させるためでもある。通常、このような急速加熱の後に、800℃〜1000℃の本焼成を実施し、鋳型を完全にガラス化させている。
【0018】
また、コストの面では、エチルシリケートが最も高価で、コロイダルシリカがそれに次ぎ、石膏が最も安価である。
【0019】
このように、上述の結合材(それを用いた鋳型用組成物及び各種鋳造法)には、それぞれ問題があり、安価で、寸法精度及び生産性が高く、鋳型中の水分等に起因する鋳造欠陥を生じ難い鋳造用鋳型を提供することができるものは未だ得られていないのが現状である。
【0020】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたもので、安価で、寸法安定性及び生産性が高く、鋳造欠陥を生じ難い鋳造用鋳型及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0021】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上述の課題を解決するべく鋭意研究した結果、水及び石膏を含む耐火材を混合した鋳型用組成物を硬化させ、得られた硬化物の表面にコロイダルシリカを含浸させること等によって、上記目的を達成することができることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下の鋳造用鋳型及びその製造方法を提供するものである。
【0027】
[1] 水及び石膏を含む耐火材から構成した鋳型用組成物を硬化させて得られる硬化物の表面に、コロイダルシリカを含浸させてなることを特徴とする鋳造用鋳型。
【0028】
[2] 前記コロイダルシリカの含浸量が、前記コロイダルシリカ、前記水及び前記石膏の合計に対して、0.5〜20質量%である前記[1]に記載の鋳造用鋳型。
【0033】
[3] 水及び石膏を含む耐火材を混合して、鋳型用組成物を調製し、この鋳型用組成物を硬化させ、得られた硬化物の表面にコロイダルシリカを含浸させることを特徴とする鋳造用鋳型の製造方法。
【0034】
[4] 前記コロイダルシリカを、前記コロイダルシリカ、前記水及び前記石膏の合計に対して、0.5〜20質量%含浸させる前記[3]に記載の鋳造用鋳型の製造方法。
【0035】
[5] 前記[3]又は[4]に記載の方法によって得られた鋳造用鋳型を、800℃〜1000℃で加熱し、鋳型中の石膏分をII型無水石膏まで変態させることを特徴とする鋳造用鋳型の製造方法。
【0036】
[6] 前記[1]又は[2]に記載の鋳造用鋳型を用いて作製してなることを特徴とするベリリウム銅合金、又はベリリウム若しくはカルシウムを含有したアルミニウム合金からなる鋳物。
【0037】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を具体的に説明する。
【0055】
本発明の鋳造用鋳型は、水及び石膏を含む耐火材(石膏以外の耐火材として、例えば、アルミナ、シリカ、タルク等を含ませてもよい)から構成した鋳型用組成物を硬化させて得られる硬化物の表面に、コロイダルシリカを含浸させてなることを特徴とするものである。
【0056】
このように、基本的に石膏を結合材とした硬化物(鋳型)を作製しておき、この硬化物(鋳型)の表面に後からコロイダルシリカを含浸させることで鋳型の耐火性を向上させることができる。すなわち、また、これまで石膏鋳造法では対応困難であった若干融点の高い鋳造合金(800℃〜1200℃程度の鋳込み温度)や、石膏と反応性の高い添加元素(例えば、Be、Ca等)を含む鋳造合金に対しても対応することができる。
【0057】
具体的には、通常の石膏鋳造法を用いて石膏硬化物(鋳型)を作製し、これから余剰水(遊離水)を除去した後、この石膏硬化物(鋳型)をコロイダルシリカの液中に10〜60分程度含浸させることを挙げることができる。このように、予め、石膏硬化物(鋳型)から余剰水を除去しておくことが、コロイダルシリカの含浸を速めることができることから好ましい。また、含浸させるコロイダルシリカは、必ずしも原液である必要はなく、水で希釈したものを用いてもよい。一般に、水で希釈したものの方が、含浸を速めることができる。
【0058】
この場合も、コロイダルシリカは、石膏の酸、塩基性度によってゲル化反応を起して含浸が不十分となることを防止するため、安定化処理を施したものが好ましい。
【0059】
コロイダルシリカの含浸量は、コロイダルシリカ、水及び石膏の合計に対して、0.5〜20質量%であることが好ましい。0.5質量%未満であると、耐火性が低下することがある。また、20質量%を超えるまでコロイダルシリカを含浸させるのは実用上困難である。
【0060】
本発明の鋳造用鋳型の製造方法(上述の鋳造用鋳型の製造方法)は、水及び石膏を含む耐火材を混合して、鋳型用組成物を調製し、この鋳型用組成物を硬化させ、得られた硬化物の表面にコロイダルシリカを含浸させることを特徴とする。
【0061】
具体的には、容器内に所定の量の水を計量しておき(石膏重量に対して40〜80重量%程度、石膏材質により異なる)、ここに石膏を含む耐火材(石膏以外の耐火材としては、例えば、アルミナ、シリカ、タルク等を挙げることができる)を散布し、攪拌、必要に応じて減圧等により脱泡し、シリコーンゴム等からなる模型に注入し、30〜50分ほど室温放置し、硬化させた後、模型を脱型することで鋳型用組成物を完成させ、これを別の容器に調製しておいたコロイダルシリカ水溶液 (水分含有量 0〜50質量%程度)に沈め、10〜60分ほど放置し、石膏鋳型中にコロイダルシリカを含浸させることを挙げることができる。この際、コロイダルシリカ溶液中に石膏鋳型を沈めたままの状態で減圧すれば、より高い含浸状態を短時間に実現することができる。
【0062】
この場合、コロイダルシリカを、コロイダルシリカ、水及び石膏の合計に対して、0.5〜20質量%含浸させることが好ましい。
【0063】
本発明の鋳造用鋳型の製造方法は、上述の製造方法によって得られた鋳造用鋳型を、800℃〜1000℃で加熱し、鋳型中の石膏分をII型無水石膏まで変態させることを特徴とするものであってもよい。
【0064】
このように、上述の製造方法で得られた鋳造用鋳型を、さらに、800〜1000℃で高温焼成することによって、少なくとも鋳型表面の溶湯接触面におけるコロイダルシリカ部分は完全にガラス化して高温強度が向上し、また、石膏部分はII型無水石膏へと変態を完了し、焼成後の鋳型の再吸湿が防止されるため、鋳造時の鋳型水分による鋳造欠陥の発生を有効に防止することができる。また、石膏部分自体もコロイダルシリカ(ガラス化したもの)でガードされることになるため、これまで石膏鋳造法では対応困難であった若干融点の高い鋳造合金(800℃〜1200℃程度の鋳込み温度)や、石膏と反応性の高い添加元素(例えば、Be、Ca等)を含む鋳造合金に対しても対応することができる。
【0065】
本発明の鋳造用鋳型は、上述の特徴のほかに、コロイダルシリカ単体を結合材として用いた組成物(スラリー)から得られる鋳型に比べて、崩壊性が高いという特徴も併有している。このため、鋳造後の型バラシ時において、鋳型を壊して鋳物を回収する作業が実施し易いという利点がある。これは強度の低い鋳造合金種の鋳造や、微細形状を鋳出しにて作製する場合において大きな効果を発揮する。
【0066】
また、鋳型の通気性についても、コロイダルシリカ単体を用いた場合よりも高くすることができ、鋳造欠陥の防止にも大きな効果を発揮する。この場合、発泡させた鋳型を用いることによって、さらに通気性を向上させることができる。
【0067】
換言すれば、本発明の鋳造用鋳型は、寸法安定性(寸法精度)の面で石膏鋳造法とほぼ同等で、コスト的には、結合材としてエチルシリケートを用いる方法によって得られるものより安価で、中程度の融点(800〜1200℃程度)の合金の鋳造が可能で、かつ鋳造欠陥を発生することがないという、これまでにはない新たな特徴を有するものである。
【0068】
本発明の鋳物は、上述の鋳造用鋳型を用いて作製してなることを特徴とする。
【0069】
上述のようにして作製した鋳型、及び800〜1000℃で加熱した鋳型を用いることで、従来製法(石膏鋳造法)では鋳造欠陥が多発して対応が困難であった、ベリリウム銅合金や、50ppm程度以上ベリリウム又はカルシウムを含有したアルミニウム合金を、焼失模型法やセラミックモールド法より高い寸法精度と低いコストで鋳造することが可能となる。
このようにして得られる本発明の鋳物は、寸法精度に優れるとともに、安価で、鋳造欠陥がなく、外観性状においても優れたものである。
【0070】
【実施例】
以下、本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によっていかなる制限を受けるものではない。
【0071】
参考例1
結合材としての、水60質量部及びコロイダルシリカ(日産化学(株)製、商品名:スノーテックス−C)40質量部の混合品(コロイダルシリカの含有量は、コロイダルシリカ及び水の合計に対して、40質量%)中に、耐火材としての、α石膏(ノリタケカンパニーリミテド製、商品名:PE20A)30質量部及びアルミナ、ムライト、ジルコニアの、質量比が1:1:1の混合粉体70質量部の混合品(石膏の含有量は、耐火材の合計に対して、30質量%)を、耐火材の含有量が、結合材及び耐火材の合計に対して、79質量%となるように添加して、鋳型用組成物(スラリー)を調製した。
【0072】
次いで、図1に示すような、ステンレス鋼板11上に積層した円盤状模型12(直径:100mm、厚さ:30mmのシリコーンゴム(東芝シリコーン(株)製、商品名:TSE350))から構成した原型1を作製した。
【0073】
次いで、図2(a)に示すように、原型1と型枠2とで形成した原型枠3に、鋳型用組成物(スラリー)4注入した後、40分で脱型し、800℃、12hrの焼成を施した後、空冷して鋳型5を作製した。
【0074】
次いで、図2(b)に示すように、得られた鋳型5、減圧チャンバー6、鋳枠7、断熱材8から構成した鋳造手段9中に、これにベリリウム銅合金(BeA275C:Beが2.5質量%、Coが0.8質量%、Cuがbal.)の1200℃の溶湯10を注入し、図2(c)に示すように、鋳造手段9から製品鋳物13を取出すことで製品鋳物13を作製した。得られた製品鋳物13は、鋳型割れも、鋳造欠陥もない、外観性状に優れた製品鋳物13を作製することができた。なお、図2(c)において、符号14は押湯、15は引け巣を示す。
【0075】
また、完成した鋳物11の寸法精度(真円度、平面度)は以下のようであった。
外周面の真円度:0.10mm(楕円変形)、天面部の平面度:0.08mm(中央部:凸形状のタイコ変形)
【0076】
参考比較例1
鋳型用組成物として、石膏(非発泡石膏:ノリタケカンパニーリミテド社製、商品名:G−6)100質量部に対して、水50質量部でスラリーを調製し、原型に注入した後、40分で脱型することで作製した鋳型に、200℃、12hrの焼成を施した後、空冷し、これに参考例1の場合と同様にベリリウム銅合金(BeA275C)の1200℃の溶湯を注入し、鋳物を作製した。
【0077】
得られた鋳物は、鋳型と溶湯中のベリリウムとの反応によって発生したと考えられるピンホール欠陥が無数に発生し、かつ、鋳肌も原型の表面性状とは全く異なり、フクレ状の凹凸欠陥がほぼ全面に発生した。
【0078】
参考比較例2
参考例1で得られた形状の鋳型をコロイダルシリカを結合材とする鋳型用組成物(アルミナ:ムライト:ジルコニア=1:1:1の質量比からなる耐火材とコロイダルシリカの合計に対して、コロイダルシリカが21質量%となるように調製した物)で作製しようとしたが、鋳型を硬化させることができず、作製不能であった。
【0079】
参考比較例3
結合材としての、エチルシリケート40(加水分解率40%)70質量部、エチルアルコール20質量部、蒸留水10質量部、濃塩酸0.1質量部を攪拌後、一晩熟成させたものの中に、参考例1で用いたのと同一の耐火材を、耐火材の含有量が、結合材及び耐火材の合計に対して、76質量%となるように添加して、鋳型用組成物(スラリー)を調製し、結合材100gに対して、4mlの10%炭酸アンモニウム溶液を硬化剤として添加して攪拌し、原型枠に注入した後、40分で脱型することで作製した鋳型を、脱型直後に直火で1分間、一次焼成を実施し、この後、800℃、12hrの二次焼成を施し、空冷後、ベリリウム銅合金(BeA275C)の1200℃の溶湯を注入し、鋳物を作製した。
【0080】
得られた鋳物は、鋳型割れ及び鋳造欠陥のない、外観性状も優れたものであったが、寸法精度は、以下に示すように参考例1の場合と比べて、劣るものであった。これは鋳型への一次焼成、急加熱が必須であったことが原因であると考えられる。
【0081】
外周面の真円度:0.20mm(楕円変形)、天面部の平面度:0.15mm(中央部、凸形状のタイコ変形)
【0082】
実施例1
石膏(非発泡石膏:ノリタケカンパニーリミテド社製、商品名:G−6)100質量部に対して、水60質量部で鋳型用組成物(スラリー)を調製し、原型枠に注入した後、40分で脱型し、80℃、12hrで余剰水を除去、乾燥した。
【0083】
得られた鋳型を、コロイダルシリカ(日産化学(株)製、商品名:スノーテックス−C)50質量部及び水50質量部の混合溶液中に60分浸漬し、鋳型表面の余分な溶液分を除去した後、800℃、12hrで焼成を施した。空冷後この鋳型に、ベリリウム銅合金(BeA275C)の1200℃の溶湯を注入し、鋳物を作製した。
【0084】
得られた鋳物は、若干の鋳型割れが確認されたものの、鋳造欠陥も殆どなく、若干のピンホール欠陥は発生したものの外観性状も実用に十分耐えるものであった。
【0085】
このように、実施例1によって、通常の石膏鋳造法では、対応することが困難なベリリウム銅合金の鋳造にも対応することができることがわかった。
【0086】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によって、安価で、寸法安定性及び生産性が高く、鋳造欠陥を生じ難い鋳造用鋳型及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の鋳造用鋳型及びその製造方法の実施例及び参考例に用いられる原型を模式的に示す斜視図である。
【図2】 本発明の鋳造用鋳型及びその製造方法の実施例及び参考例において、原型から鋳物を作製するまでの工程を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
1…原型、2…型枠、3…原型枠、4…鋳型用組成物(スラリー)、5…鋳型、6…減圧チャンバー、7…鋳枠、8…断熱材、9…鋳造手段、10…ベリリウム銅合金の1200℃の溶湯、11…ステンレス鋼板、12…円盤状模型、13…製品鋳物、14…押湯、15…引け巣。
Claims (6)
- 水及び石膏を含む耐火材から構成した鋳型用組成物を硬化させて得られる硬化物の表面に、コロイダルシリカを含浸させてなることを特徴とする鋳造用鋳型。
- 前記コロイダルシリカの含浸量が、前記コロイダルシリカ、前記水及び前記石膏の合計に対して、0.5〜20質量%である請求項1に記載の鋳造用鋳型。
- 水及び石膏を含む耐火材を混合して、鋳型用組成物を調製し、この鋳型用組成物を硬化させ、得られた硬化物の表面にコロイダルシリカを含浸させることを特徴とする鋳造用鋳型の製造方法。
- 前記コロイダルシリカを、前記コロイダルシリカ、前記水及び前記石膏の合計に対して、0.5〜20質量%含浸させる請求項3に記載の鋳造用鋳型の製造方法。
- 請求項3又は4に記載の方法によって得られた鋳造用鋳型を、800℃〜1000℃で加熱し、鋳型中の石膏分をII型無水石膏まで変態させることを特徴とする鋳造用鋳型の製造方法。
- 請求項1又は2に記載の鋳造用鋳型を用いて作製してなることを特徴とするベリリウム銅合金、又はベリリウム若しくはカルシウムを含有したアルミニウム合金からなる鋳物。
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