JP3760047B2 - 記録再生装置及びその装置の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば磁気ディスク、あるいは光磁気ディスク等の記録媒体が高速回転することによって記録媒体上を摺動もしくは浮上する記録再生ヘッドを備えた記録再生装置及びその装置の製造方法に係り、特に記録媒体保持のために使用されるスペーサから記録媒体表面に潤滑剤を補給する機能を備えた記録再生装置及びその装置の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
記録再生装置としては、磁気ディスク、あるいは光磁気ディスク等の記録媒体を使用したものが主として挙げられるが、ここでは従来の技術の例として磁気ディスク装置を代表例に挙げて以下の説明を行うことにする。
【0003】
従来の磁気ディスク装置では、その磁気記録媒体上に摩耗を低減し記録した信号が消失しないように潤滑膜が形成されているのが一般的である。しかしながら、最近の信号の高速処理化に伴い磁気ディスクを回転させるスピンドルモータの回転数の高回転数化が要求されている。
【0004】
こうした高速回転化に際して問題となる点として記録媒体(以下、ディスクと称する)表面の潤滑剤が飛散するという問題がある。例えば日本トライボロジー学会トライボロジー会議予稿集、P593,1994-10に示されているようにディスク上に塗布された潤滑剤は、回転による遠心力と回転による空気のせん断力によりディスク内周側から外周側に移動する。そうすると内周側のディスク表面の潤滑剤の膜厚は装置の稼働時間とともに減少する傾向となり、その減少に伴いディスク表面の耐摩耗性は低下するため、高速回転の記録再生装置においては信頼性を保持することが困難となってくる。
【0005】
このようにディスク上の潤滑剤が外周側に移動し飛散する問題を解決するために従来から各種の提案がなされている。例えば特開昭64-55734号公報にあるように揮発性の潤滑剤をハードディスクドライブの中に配置し潤滑剤の飛散を空気の流れで制御することでその問題を解決しようとしたものもある。この従来例によると潤滑剤を揮発させるための空気流路等の設計、潤滑剤の選定等が複雑となり、小型のハードディスクドライブ等には不向きなように考えられる。
【0006】
また、特開平05-159532号公報では、ディスク上の潤滑剤の膜厚が減少したのを補充するために環状潤滑剤リザーバを設け、ディスクが回転することにより遠心力でその開口部から潤滑剤がディスク上に補充される構成となっている。この環状潤滑剤リザーバは、磁気ディスク装置のディスクスペーサの機能を有しており、焼結したステンレススチールのような多孔質の焼結金属から加工して形成したリングあるいは環からなっている。そしてこの環状潤滑剤リザーバ(ディスクスペーサ)は、その内部(多孔質の焼結金属)に含浸された液体潤滑剤がディスク上に流出する開口部を除いて外部はメッキにより密閉している。ディスクが回転することによって、多孔質の焼結金属に含浸された潤滑剤は開口部からディスク上に流出し補充される。
【0007】
しかし、この液体潤滑剤の供給方式の場合、その内部が多孔質の焼結金属で形成すると共に、開口部を除いて外部をメッキで密閉する必要があことからディスクスペーサの構造が複雑となる、また、ディスクスペーサに液体潤滑剤を含浸するためには開口部から内部を真空に引く必要があるなど実用上改良すべき種々の問題点があった。
【0008】
また、開口部の寸法精度がスペーサら流れ出る潤滑剤の量に影響するため、その加工精度を良くしなければならず、量産には不向きであった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明の目的は、上記従来の問題点を解消することにあり、簡便、かつ、容易に液体潤滑剤をディスク上に補給できる機能を備えた記録再生装置及びその装置の製造方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決すべく本発明者等は、ディスク上に塗布する潤滑剤と回転するディスク上に補給する潤滑剤との関係について種々実験検討したところ、両者に特定の関係の物性を有する潤滑剤を使い分けることによって、スペーサの構造を変えることなく単純にスペーサ表面に補給用の潤滑剤を塗布するだけで十分に実用性ある潤滑剤の補給手段を備えた記録再生装置が実現可能であるという知見を得た。
【0011】
すなわち、本発明はかかる新しい知見に基づいてなされたもので、ディスクを保持するために使用しているスペーサに特定の物性を満たす液体潤滑剤を塗布すれば良い。なお、ここで云うスペーサとは、記録再生装置において、複数枚のディスクが積層される際に、隣り合うディスクとディスクとの間に挿入されているスペーサ、あるいはスピンドルモータのディスク受け面、ディスククランプ面に使用されるスペーサなど、ディスクの内周面に接触するスペーサ一般を指している。
【0012】
潤滑剤を用途別に便宜上分け、ディスク上に塗布するものを潤滑剤A、スペーサ上に塗布するものを潤滑剤Bとする。これら両者の関係は、以下に説明する方法で測定した場合の流動係数が 潤滑剤B>潤滑剤A で、かつ、潤滑剤Bと潤滑剤Aとの差が少なくとも1×10-5(1/h)であることが物性上の要件となる。
【0013】
流動係数を求めるための方法は次のようである。
潤滑剤の流動性は塗布される材料、塗布後の処理により変化するため、流動性の測定は使用される状態となった完成部品として測定される。まず、最初に形成した潤滑膜に後で潤滑膜の膜厚分布変化が測定可能なサイズの潤滑膜厚の薄い部分をある面積にて形成する。この方法としては、潤滑膜上にマスクを被せプラズマによりエッチングする方法、ビーム径の小さい電子、あるいはイオンである面積を走査して潤滑膜をエッチングする方法、あるいは溶剤によりある面積だけ洗い流す方法などがある。
【0014】
潤滑膜厚の薄い部分を形成した後、エリプソメータあるいはFTIR(フーリエ変換型赤外分光計)、あるいはESCA(Electron Spectroscopy for Chemical Analysis)、あるいはSIMS(Secondary Ion Mass Spectroscopy)などにより潤滑膜の薄くなった部分(凹部と略す)の膜厚の経時変化を測定する。
【0015】
流動係数νは、潤滑膜に形成した段差における凹部の底面からの高さXの位置の潤滑剤が凹部に流れ込む速さvと高さXとの間に数式1に示す関係にあると定義した。
【0016】
【数1】
v=νX …(1)
凹部へ流れ込む潤滑剤の総量Qは、凹部の面積をS、凹部の縁の長さをLと
すると数式2のようになる。
【0017】
【数2】
Q=L∫vdx …(2)
凹部の潤滑膜厚は、数式3の形で求めることができる。
【0018】
【数3】
h=h0−∫Q/Sdx …(3)
ここで、h、h0は時間t経過後の凹部の深さと、初期の深さである。この関係を使い、時間に対して凹部の潤滑膜厚がどう変化していくかを測定することにより、潤滑剤の流動係数νを求めることができる。このような方法で実際に使用される状態での潤滑剤の流動性を評価することが可能である。
【0019】
この種の潤滑剤としては、パーフルオロポリエーテル、フッ素の一部を水素で置換したパーフルオロハイドロポリエーテル、そのほかラウリル酸、パルミチン酸、ステアリン酸等の脂肪酸が用いられ、潤滑剤A、Bが同一系統の化合物の場合には、例えば平均分子量を調整して潤滑剤Aと潤滑剤Bに使い分ければよい。スペーサに塗布する潤滑剤Bとしては、ディスクに塗布されている液体潤滑剤Aの平均分子量より小さい平均分子量の液体潤滑剤が使用される。
【0020】
また、一方の潤滑剤Aとしては、その化合物の末端にディスク面と結合し易い官能基を有しており、他方の潤滑剤Bとしては、そのような官能基を有しておらず、ディスク面との吸着力に明らかな差のあるものを使い分ける。
【0021】
さらに具体的には、潤滑剤A、Bをパーフルオロポリエーテルを含む潤滑剤で構成する場合、好ましい化合物としては以下に一般式(1)、(2)で示す化合物を挙げることができる。
【0022】
【化5】
一般式 F(CF2CF2CF2O)nCF2CF2−R1 …(1)
ただし、nは5〜50の整数で、分子量が1000〜8000程度、末端基R1は−F、もしくは官能基−CH2OH、−COOCH2CH2O(C6H5)、−COO-H3N+(C6H5)−O−(C6H5)など、特に−CH2OHが好ましい。
【0023】
【化6】
一般式 R2−CF2(OCF2CF2)n(OCF2)m−R3 …(2)
ただし、m、nは共に5〜40の整数で分子量が1000〜6000程度、末端基R2、R3は−F、もしくは官能基−CH2OH、−CH2OCH2(C6H3)O2CH2などであり、特に−CH2OHが好ましい。
【0024】
すなわち、ディスク面に塗布する液体潤滑剤Aの主鎖が例えば式(1)からなり、スペーサに塗布された液体潤滑剤Bの主鎖が式(2)よりなることで、より優れた耐摩耗性と高速回転に対する飛散の低減を実現することが可能である。
【0025】
また、ディスク面に形成される液体潤滑剤Aの主鎖骨格がパーフルオロポリエーテルであり、その末端にディスク面に吸着する官能基を有しており、スペーサに塗布された液体潤滑剤Bの末端には官能基を有していないものとすることで同上の結果を得ることが可能となる。
【0026】
さらに、記録再生装置においてスペーサ、ディスク面に形成される液体潤滑剤A、Bの主鎖が式(1)からなり、液体潤滑剤Aは末端官能基R1を有しており、その末端構造が−CH2OHよりなり、液体潤滑剤Bは末端官能基を有していないものとすることで、より飛散性をコントロール出来るため優れた信頼性を長時間にわたり保持することが可能である。
【0027】
なお、潤滑剤A、Bの塗膜の実用的な厚さは、潤滑剤Aが5〜30Å、潤滑剤Bが20〜50Åである。
【0028】
このようにスペーサ、ディスク面に潤滑剤を塗布する際に効果的な製造方法としては、潤滑剤をスペーサあるいは記録媒体に塗布した後、加熱処理を行った後に記録再生装置を組み立てることが効果的であり回転による潤滑剤の飛散を低減することが可能となる。
【0029】
以下、これらの手段を講じることの作用について述べる。
ディスクに接しているスペーサに液体潤滑剤Bを塗布することの作用については以下のごとく理解される。ディスク面上に初期的に存在した潤滑剤Aは回転により外周に移動する。
【0030】
しかしながらスペーサに形成された潤滑膜Bからディスクのスペーサと接している部分より潤滑剤Bはディスク面のほうに移動してディスク表面を内周側より外周側に移動する。こうなることでディスク表面に塗布してあった潤滑剤Aが減少した部分に、スペーサに塗布した潤滑剤Bが移動して減少した潤滑剤を補給する。こうして回転による潤滑剤Aの飛散があってもスペーサからの潤滑剤Bの補給があるため、ディスク面には常に潤滑作用を維持するに必要な潤滑膜厚を保持することが可能となりディスクの摩耗を長時間にわたり少なくすることが可能となり、また信頼性を保持することが可能となる。
【0031】
ディスク面に塗布されている液体潤滑剤Aの平均分子量より小さい平均分子量の液体潤滑剤Bをスペーサに塗布する場合についての作用は以下のようである。空気によるせん断力は回転数、記録再生装置の構造により一定であると考えると、平均分子量が大きいと内周から外周に移動する速度は小さくなる。反対に平均分子量が小さいと内周から外周への移動速度は大きくなる。
【0032】
一方、耐摩耗性から考えた場合、潤滑剤の平均分子量が小さい方が粘度が小さく、流動性が大きいため潤滑剤が摩耗した部部への修復がすみやかに行われ耐摩耗性は向上し、逆に平均分子量が大きい方が潤滑剤の流動性が小さく修復が遅くなるため耐摩耗性は劣化する。すなわち、ディスク面に高分子量の潤滑剤Aを塗布することでディスク自体の回転飛散量を低減するとともに、スペーサに低分子量の潤滑剤Bを塗布することで低分子の潤滑剤を十分ディスクの表面に回転により供給することで、実際のディスク表面には高分子の潤滑剤成分と低分子の潤滑剤成分の混合となり耐摩耗性に優れ、かつ回転飛散した潤滑剤はスペーサより供給されるため優れた信頼性を長時間にわたり保持することが可能となる。
【0033】
さらに、ディスク面上の液体潤滑剤Aの主鎖が式(1)よりなり、スペーサに塗布された液体潤滑剤Bの主鎖が式(2)とする場合の利点について以下に説明する。式(1)よりなる液体潤滑剤は一般的に式(2)の液体潤滑剤よりも分子的なフレキシビリティが小さいと考えられており、耐摩耗性に対しては式(2)の構造を持つ方が優れている。
【0034】
しかしながら、ディスクの回転に伴う飛散については式(1)の構造を持つ方が逆に小さい。そこでディスク面上には式(1)の構造の潤滑剤を塗布しておき、その回転飛散を補充するためにスペーサに式(2)の構造の潤滑剤を塗布することで飛散した潤滑剤を補い、かつ耐摩耗性を高めることが可能となる。
【0035】
また、記録再生装置において使用されるディスク面上に形成される液体潤滑剤Aの主鎖骨格がパーフルオロポリエーテルであり、その末端にディスク面に吸着する官能基を有しており、スペーサに塗布された液体潤滑剤Bの末端には官能基を有していないものとすると、ディスク面上の潤滑剤は末端の官能基がディスク上の保護膜表面、あるいは磁性膜表面に吸着することで回転による移動が小さくなり飛散しにくくなる。しかしながら、あまり強固にディスク表面に吸着する潤滑剤分子が多くなると耐摩耗性が劣化するという問題が生じる。
【0036】
この場合、スペーサに塗布した潤滑剤Bは官能基を有していないため回転によりすばやく記録媒体上を内周から外周に移動するのでその移動成分でディスク面に塗布した潤滑剤の耐摩耗性の劣る部分をカバーすることが出来る。また、ディスク面上の潤滑剤Aは、ディスク面に吸着しているため官能基がある潤滑剤が内周から外周に移動しようとした際に抵抗として働き単体の場合よりも回転の飛散が少なくなる。こうして長時間にわたる耐摩耗性、信頼性を保持することが可能となる。
【0037】
さらに、記録再生装置においてスペーサ、ディスク面に形成される液体潤滑剤の主鎖が式(1)よりなり、末端官能基R1を有しており、その末端構造が−CH2OHよりなるものとすると、潤滑膜を塗布後キュア処理を行うとフッ素系の潤滑剤であるため蒸気圧が低く熱による飛散が少なくなり、また、熱による分解が少ないため耐摩耗性に優れている。
【0038】
また、スペーサあるいはディスク面に形成した潤滑膜の膜厚、自由に移動できる潤滑剤の成分、表面に吸着し移動しない固定成分の割合をキュアの温度、時間等により制御することが可能になり、ディスクの表面には移動しにくい成分を多くし、スペーサには移動しやすい成分を多くするなどのコントロールが可能となる。こうすることでディスク面の潤滑剤が回転により移動した部分の補給がスペーサより速やかに行えるように潤滑剤の質を設定でき長時間の信頼性を保持することが可能である。
【0039】
前述したようにスペーサ、ディスク面に潤滑剤を塗布する際に効果的な製造方法としては、潤滑剤をスペーサあるいはディスク面に塗布した後、加熱処理を行った後に記録再生装置を組み立てることが効果的であり、こうした方法で形成される潤滑剤の移動できる成分、移動できない成分の割合をコントロールできるため本発明の目的に対しては優れた製造方法となる。上記塗布した後の、加熱処理条件としては、潤滑剤Aについては、温度60〜120℃で30分〜2時間、潤滑剤Bについては、温度60〜120℃で30分〜5時間程度で室温でも良い場合がある。加熱処理の目的は、分子量を大きくすること、潤滑剤中の溶媒を飛ばすことにある。
【0040】
なお、ここでは磁気ディスク装置を例に説明したが、本発明の記録再生装置の適用対象は、その他磁気ディスク装置と同様に記録媒体が円板状であり、回転し、潤滑剤を塗布することによりその耐摩耗性を向上しているもの、例えば光磁気ディスク装置についても同じ効果が得られることは云うまでもない。
【0041】
【発明の実施の形態】
磁気ディスク装置は、図1に示すようにディスク面に磁性膜、保護膜さらには保護膜上に潤滑膜(先に説明した潤滑剤A)が形成された磁気記録媒体1、磁気ヘッド3、磁気記録媒体を回転させるスピンドルモータ2、磁気ヘッドを位置決めする位置決め機構5などからなっている。同図において、4は記録再生回路、6は磁気ディスク装置ベースを示している。
【0042】
本発明の対象となるのは図2に示したスピンドルモータ2に磁気記録媒体(ディスク)1を所定の間隔で複数枚固定する際に使用されるディスクとディスクの間に挿入されるスペーサ7である。スペーサ7は、磁気記録媒体1の表面に密着しておりスペーサ7の外周に潤滑剤(先に説明した潤滑剤B)を塗布してスピンドルモータ2を回転させた場合は、スペーサ7より潤滑剤Bが磁気記録媒体1に移動し、さらにディスクの内周より外周へ順次移動することによってディスク面に常時一定膜厚の潤滑剤が保持できるように補給される。
【0043】
スペーサ7に塗布した潤滑剤Bは、磁気ディスク装置の運転時間にしたがって消耗するが、運転途中でのスペーサ7の交換は殆ど必要としない。
【0044】
スペーサ7の材質としては、例えばアルミニウム、ステンレス等の金属、もしくはセラミック等、一般に使用されているものが使用できる。しかし、潤滑剤被膜の形成し易さと、必要な膜厚の確保とを考慮すると少なくとも外周面が多孔質体からなるセラミックが好ましい。
【0045】
スペーサ7の外周面へ潤滑剤を塗布する方法は、一般に行われている磁気記録媒体の保護膜上への塗布方法と略同様の方法で行う。すなわち、液状潤滑剤を所定の濃度含む塗布液を予め調製しておき、例えばこの塗布液中にスペーサ7を浸漬し、引き上げ必要な膜厚を塗布する。この後、キュア処理のため60〜120℃で30分〜2時間、空気中もしくは減圧下で熱処理する。使用する潤滑剤の種類によっては、室温で乾燥するだけでよい場合もある。キュア工程と塗布工程とを交互に行うことで、より均一な膜厚を得られる場合もある。
【0046】
【実施例】
図1及び図2で説明した磁気ディスク装置の磁気記録媒体1及びスペーサ7に、それぞれ対応する潤滑剤を塗布することにより塗布潤滑膜を形成し、磁気ディスク装置に組み込んで、1000h(時間)回転後の磁気記録媒体1上の膜厚の変化を測定した。なお、潤滑剤は、先に一般式(1)及び一般式(2)で表示した主鎖構造を有するものを使用した。
【0047】
表1に具体的な実施例を示す。実施例で示したディスク1は3.5インチのものである。このディスクは保護膜としてカーボンを主体としたものである。スペーサ7はセラミックより出来たスペーサを用いた。従来スペーサ材質はアルミニウムが一般的であるがセラミック材質の方が多孔質であり潤滑剤を長時間供給可能であると考えられるためセラミックスペーサを用いた。
【0048】
しかしながら、アルミニウムスペーサでも塗布する潤滑剤の量を制御してやることで同じ効果を得ることが可能である。液体潤滑剤としてはパーフルオロポリエーテルよりなる潤滑剤を用いた。実施例ではパーフルオロポリエーテル潤滑剤であるが、これらがフッ素の一部を水素で置換したパーフルオロハイドロポリエーテルもしくはフッ素の全部を水素で置換したハイドロカーボン系でも材料を選択すれば同様の効果を得ることが可能である。
【0049】
これらの実施例について10,000rpmにて磁気記録媒体を回転させ1,000h後の磁気記録媒体上の潤滑膜厚を測定した。測定はFTIR(フーリエ変換型赤外分光装置)を用いて半径20mmのところの潤滑膜厚を測定した。その測定結果も併せて表1に示す。表1には、一般式(1)、(2)の主鎖構造、末端官能基R1、R2、R3の種類(末端官能基無しは末端基がフッ素)、初期膜厚、平均分子量をも表示した。
【0050】
【表1】
【0051】
この結果から明らかなように、スペーサ7に潤滑剤を塗布していない比較例(No.1)は回転による飛散が非常に大きい(回転前の初期の膜厚20Å→1000h回転後の膜厚12Å)。それに対してNo.2、3、4は飛散量が低減している。
【0052】
さらに磁気記録媒体とスペーサに塗布した潤滑剤の平均分子量を変えた場合(No.5、6、7、8)、スペーサに潤滑剤を塗布しない場合よりは飛散が少ないが、磁気記録媒体の潤滑剤の平均分子量がスペーサに塗布した潤滑剤の平均分子量より大きい方がその飛散量が小さい。
【0053】
次に潤滑剤の種類を磁気記録媒体とスペーサで変化させた場合(No.9、10、11、12)を比較すると同種の場合(No.9)と磁気記録媒体が一般式(2)の−CF2(OCF2CF2)n(OCF2)m−を骨格とする潤滑剤であり、スペーサが一般式(1)のF(CF2CF2CF2O)nCF2CF2−を骨格とする潤滑剤の場合(No.10)よりもNo.11、12の方が飛散量が小さくなっており、磁気記録媒体の潤滑剤の主鎖が一般式(1)のF(CF2CF2CF2O)nCF2CF2−、スペーサの潤滑剤の主鎖が一般式(2)の−CF2(OCF2CF2)n(OCF2)m−である方が優れていることが判る。
【0054】
また、潤滑剤の末端の官能基の働きについて比較するためNo.13、14、15、16を比較すると潤滑剤が−CH2OHの末端官能基を有した方が官能基の無い場合に比較して飛散量が小さいことが判る。このことから末端官能基を−CH2OHとすることでより一層潤滑剤の飛散を抑制することが可能である。
【0055】
次に潤滑剤を塗布した後のキュア工程を入れることの実施例を示す。実際のサンプルの内容を表2に示す。
【0056】
【表2】
【0057】
この結果から明らかなようにキュア工程を入れない場合と比較してキュア工程を入れると潤滑膜の構造すなわち移動可能成分と固定成分の割合をコントロール出来ること、また、その組み合わせによって飛散量を適宜コントロールできるという利点が存在すると言うことが判る。
【0058】
実施例に示したキュア工程後、溶媒でリンス処理をすることで潤滑剤の移動可能成分を除去した磁気記録媒体(No.7、14)と潤滑剤をリンスせず潤滑剤を除去しなかったスペーサの組み合わせにおいては回転による飛散量をみると減少せず逆に増加しておりこうした組み合わせでも優れた耐摩耗性と飛散性の改善が可能であると考えられる。
【0059】
以上、実施例で示してきたように本発明により潤滑剤の回転飛散を減少することが可能であり記録媒体上の潤滑膜を稼働中にスペーサからの潤滑剤との混合状態の潤滑膜とする事が可能となるため優れた信頼性を有した記録再生装置とすることが可能となる。
【0060】
また、他の潤滑剤A、Bの組み合わせとして、表3に示した実施例を示す。
【0061】
【表3】
【0062】
この実施例の結果では、末端官能基をA、Bで変えた場合でも、潤滑剤の流動係数を制御することで回転飛散量を低減することができることが判った。
【0063】
さらに、図3に潤滑剤の流動係数に着目してスペーサの潤滑膜の流動係数と磁気記録媒体の潤滑膜の流動係数の差をパラメータとしたときの1000h後の潤滑膜厚との関係を示す。
【0064】
スペーサの潤滑膜の流動係数が磁気録媒体の潤滑膜の流動係数より大きいほど潤滑膜厚の減少は少ない。特に流動係数の差が10×10-6(1/h)より大きい場合には磁気記録媒体の潤滑膜厚はほとんど減少しない。
【0065】
このように、磁気記録媒体とスペーサに形成する潤滑膜の流動係数をコントロールしてスペーサの潤滑膜の流動係数を磁気記録媒体の潤滑膜の流動係数より10×10-6(1/h)以上大きくすることで磁気記録媒体の潤滑剤が回転により外周側に流れていっても、それより速い速度でスペーサの潤滑剤が磁気記録媒体上の潤滑膜の減少した部分へ供給されることにより回転飛散量を少なくすることが可能なり優れた信頼性を有した記録再生装置とすることが可能となる。
【0066】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明により所期の目的を達成することができた。すなわち、記録媒体の潤滑剤の回転による飛散を実質的に低減することが可能となり、また、記録媒体の潤滑剤とスペーサの潤滑剤とを特定の組み合わせとすることで耐摩耗性を向上させることが可能となり、優れた信頼性を有した記録再生装置を得ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】磁気ディスク装置の概略構成を示す平面図。
【図2】スペーサと磁気記録媒体との積層状態を示した断面図。
【図3】スペーサの潤滑膜の流動係数と磁気記録媒体の潤滑膜の流動係数の差をパラメータとしたときの1000h後の磁気記録媒体上の潤滑膜厚との関係を示す特性図。
【符号の説明】
1…磁気記録媒体(ディスク)、
2…スピンドルモータ、
3…磁気ヘッド、
4…記録再生回路、
5…ヘッド位置決め機構、
6…磁気ディスク装置ベース、
7…スペーサ。
Claims (10)
- 記録再生を行う円板状の記録媒体と、記録再生ヘッドと、記録媒体を回転させるスピンドルモータと、スピンドルモータに記録媒体を所定間隔で積層する際に使用されるスペーサと、記録再生ヘッドを記録再生する場所に位置決めする機構と、記録再生信号を処理する回路とを少なくとも有する記録再生装置において、前記スペーサの少なくとも外周部に、前記記録媒体に塗布された潤滑剤よりも流動係数の大きい潤滑剤が塗布され、記録媒体の回転に伴いスペーサの潤滑剤がスペーサから記録媒体に移動する機能を有するスペーサを備えて成る記録再生装置。
- 記録媒体に塗布された潤滑剤膜とスペーサに塗布された潤滑剤膜との流動係数の差が少なくとも1×10−5(1/時間)以上である請求項1記載の記録再生装置。
- スペーサに塗布される潤滑剤の平均分子量を、記録媒体に塗布された潤滑剤の平均分子量よりも小さくして成る請求項1記載の記録再生装置。
- 記録媒体に塗布された潤滑剤の主鎖がF(CF2CF2CF2O)nCF2CF2−(ただし、nは5〜50の整数)よりなり、スペーサに塗布される潤滑剤の主鎖が−CF2(OCF2CF2)n(OCF2)m−(ただし、m、nは5〜40の整数)より成る請求項1記載の記録再生装置。
- 記録媒体に塗布された潤滑剤の主鎖骨格がパーフルオロポリエーテルであり、かつ、その末端に記録媒体に吸着する官能基を有しており、スペーサに塗布される潤滑剤の末端には官能基を有していない請求項1記載の記録再生装置。
- スペーサ及び記録媒体に塗布される潤滑剤の主鎖が−CF2(OCF2CF2)n(OCF2)m−(ただし、m、nは5〜40の整数)であり、末端官能基を有し、その末端構造が−CH2OHより成る請求項1記載の記録再生装置。
- 記録再生を行う円板状の記録媒体と、記録再生ヘッドと、記録媒体を回転させるスピンドルモータと、スピンドルモータに記録媒体を所定間隔で積層する際に使用されるスペーサと、記録再生ヘッドを記録再生する場所に位置決めする機構と、記録再生信号を処理する回路とを少なくとも有する記録再生装置の製造方法であって、前記記録媒体に潤滑剤を塗布する工程と、前記スペーサの少なくとも外周部に、前記記録媒体に塗布された潤滑剤よりも流動係数の大きい潤滑剤を塗布する工程と、前記の二つの塗布工程の少なくとも一方の塗布工程の後に潤滑膜を加熱処理する工程とを有して成る記録再生装置の製造方法。
- 記録媒体に潤滑剤を塗布した後の加熱処理工程においては60〜120℃、30分〜2時間の熱処理条件で、スペーサの少なくとも外周部に前記記録媒体に塗布された潤滑剤よりも流動係数の大きい潤滑剤を塗布した後の加熱処理工程においては60〜120℃、30分〜5時間の熱処理条件で行う加熱処理する工程として成る請求項8記載の記録再生装置の製造方法。
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