JP3759906B2 - ガス温風暖房機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガス温風暖房機に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のガス温風暖房機の一例が、実開平6−40763号公報に記載されている。このガス温風暖房機を図4を参照して説明する。図4に示す従来のガス温風暖房機は、本体ケース22と、燃焼ケース30と、ファン46等を備えている。本体ケース22は、背面に空気吸込口27が形成され、前面に温風吹出口48が形成されるとともに、ガス温風暖房機の外枠を形成する。燃焼ケース30は、内部にガスバーナ36を有し、上部に燃焼ガス排出口30bが形成されている。ファン46は、燃焼ケース30より下方に設けられており、温風吹出口48に連通している。本体ケース22内には、空気通路25、24、29が形成されている。空気通路25は、本体ケース22と仕切り板31の間に形成されており、本体ケース22を冷却する。空気通路24は、仕切り板31と分流板28の間に形成されている。空気通路29は、分流板28と燃焼ケース30の間に形成されている。
【0003】
ガスバーナ36に点火すると、図示しない燃焼用一次空気吸込口から吸込まれた燃焼用一次空気と、燃焼用二次空気吸込口30aから矢印Dに示すように吸込まれた燃焼用二次空気によって、燃料ガスが燃焼される。この燃焼によって生じた燃焼ガスは、燃焼ケース30の上部に形成された燃焼ガス排出口30bから矢印Cに示すように排出される。燃焼中は、ファン46の回転によって燃焼ガスが燃焼ガス排出口30bから吸引される。燃焼中は同時に、ファン46の回転によって、室内の空気が空気通路29に矢印Bに示すように吸込まれる。この結果、矢印Cに示す燃焼ガスと矢印Bに示す空気がまず混合される。
【0004】
同時に、ファン46の回転によって、室内の空気が空気通路24に矢印Aに示すように吸込まれる。この結果、矢印Cに示す燃焼ガスと矢印Aに示す空気が混合通路52で混合される。即ち、ファン46によって空気吸込口27から吸込まれた空気は、燃焼ケース30の前板の前方を下方に移動する。ファン46は燃焼ガス排出口30bから燃焼ガスをも吸引し、吸引された燃焼ガスは燃焼ケース30の前板の前方を下方に移動する。燃焼ケース30の前板の前方を下方に移動する間に、空気と燃焼ガスは混合され、程よい温度に調整される。さらに、ファン46の回転によって、室内の空気が空気通路25から矢印Fに示すように吸込まれる。この空気は本体ケース22の内側を流れて本体ケース22を冷却し、最終的には導入口31aから混合空間52に入り込み、上流側からくる混合ガスとさらに混合される。このようにして混合された混合ガスは適度な温度の温風となる。この温風はファン46の回転によってファンケーシング40に沿って温風吹出口48に導かれ、温風吹出口48から吹出される。この温風によって室内が暖房される。
このガス温風暖房機によると、ファン46が燃焼ケース30の下方に設けられているため、ガス温風暖房機の奥行きを小さくすることができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ガス温風暖房機の設置場所によっては、奥行きはあまり問題とならずに、高さを低くすることが望まれる場合も多い。例えば、温風暖房機をキッチンの下部に組込む場合には、奥行きはあまり問題とならず、それよりも高さを低くすることが望まれる。
図4に示す従来のガス温風暖房機は、ファン46が燃焼ケース30の下方に設けられているため、ガス温風暖房機の奥行きは小さくすることができるものの、高さを低くするには限界があった。しかしながら、ガス温風暖房機の高さを低くするといっても、単純に燃焼ケース30とファン46を水平方向に並置することはできない。単純に燃焼ケース30とファン46を水平方向に並置すると、混合空間52を十分に確保することができず、この結果、燃焼ガスと空気が十分に混合されずに、必要以上に高温の温風が温風吹出口から吹出されてしまうからである。
【0006】
また、ガス温風暖房機では、運転音の低減が重要な課題である。運転音が大きいと、暖房機周囲での様々の作業の妨げ等となるからである。この運転音は主にファンの回転数に依存し、ファンの回転数が大きい程運転音は大きくなる。しかしながら、この運転音を小さくするために単にファンの回転数を小さくしただけでは、燃焼ガスと混合するのに必要な量の空気を空気吸込口から吸込むことができない。必要量の空気を吸込むことができないと、温風吹出口から吹出される温風の温度が必要以上に高温となってしまう。従来のガス温風暖房機は、ファン46の直上に燃焼ケース30が配置され、ファン46の直上から水平方向前方にずれた位置に混合空間52が形成されており、また、混合空間52が狭く長いので、通路抵抗が大きかったため、必要量の空気を吸込むためにはファンの回転数をある程度大きくせざるを得なかった。
【0007】
本発明は、従来のガス温風暖房機よりも、ガス温風暖房機の高さを低くし、しかも、高温の燃焼ガスを空気と混合させて所定温度に冷却した温風にして吹出すためのファンの回転数を減少させ、運転音を小さくすることを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段および作用と効果】
本発明のガス温風暖房機は、本体ケースと、燃焼ケースと、ファンと、混合空間と、上部空気通路と、下部空気通路を備えている。本体ケースは、背面に空気吸込口が形成され、前面に温風吹出口が形成されるとともに、ガス温風暖房機の外枠を形成する。燃焼ケースは、内部にガスバーナを有し、上部に燃焼ガス排出口が形成されているとともに、本体ケース内の後方位置に収容されている。ファンは、燃焼ケースより前方で、かつ、燃焼ケースと重複する高さで本体ケース内に収容されており、温風吹出口に連通するとともに、燃焼ケースよりも背が低い。混合空間は、本体ケースの前板の後方、燃焼ケースの前板の前方、かつ、ファンの上方に位置して、空気吸込口から吸込まれた空気と燃焼ガス排出口から排出された燃焼ガスを混合する空間である。上部空気通路は、空気吸込口と混合空間をつなぐ空間であって、燃焼ケースの上方に位置する。下部空気通路は、空気吸込口と混合空間をつなぐ空間であって、燃焼ケースの下方に位置する。そして、ファンを回転させたときに、上部空気通路を通る空気量が下部空気通路を通る空気量より多くなるように構成されている。
なお、ファンの全部が燃焼ケースと重複する高さに位置していてもよいし、ファンの一部が燃焼ケースと重複する高さに位置していてもよい。
【0009】
本発明では、燃焼ガスと空気を十分に混合するために、ファンを燃焼ケースよりも背が低いものとする。これにより、本体ケースの前板の後方で、燃焼ケースの前板の前方で、かつ、ファンの上方の位置に、空気吸込口から吸込まれた空気と燃焼ガス排出口から排出された燃焼ガスを混合する空間を確保することが可能となる。この混合空間が確保されたために、燃焼ケースとファンを水平方向に並置することが可能となった。即ち、このような混合空間を確保できたために、燃焼ケースとファンを水平方向に並置しても、燃焼ガスと空気が混合不十分なままでファンに吸込まれてしまうことが防止できるのである。
【0010】
このように本発明のガス温風暖房機によると、燃焼ケースとファンを水平方向に並置できたために、ファンが燃焼ケースより下方に設けられている従来のガス温風暖房機に比較して、ガス温風暖房機の高さを低くすることができる。
また、ファンを燃焼ケースよりも背が低いものとすることでファンの上方の空間に大きな混合空間を確保できたために、混合空間(この空間は燃焼ガスと空気の通路ともいえる)の断面積を広くすることができる。さらに、燃焼ガスと空気を十分に混合する空間を確保しながらも混合空間(燃焼ガスと空気の通路)の長さを短くすることができる。即ち、混合空間(燃焼ガスと空気の通路)を広く短くすることができるので、通路抵抗を小さくすることができる。
【0011】
また、本発明のガス温風暖房機は、空気吸込口と混合空間をつなぐ空間であって、燃焼ケースの上方に位置する上部空気通路と、燃焼ケースの下方に位置する下部空気通路を備えている。上部と下部に2つの空気通路を備えることで、少ないファン回転数で効率的に空気を吸込むことができる。また、上部と下部に2つの空気通路を備えると、上部空気通路を通ってきた空気と下部空気通路を通ってきた空気が混合空間で渦を巻いて燃焼ガスと十分に混合されるので、冷却効果が大きい。
【0012】
さらに、本発明のガス温風暖房機は、ファンを回転させたときに、上部空気通路を通る空気量が下部空気通路を通る空気量より多くなるように構成されている。上部空気通路を通る空気量を多くすることで、冷却効果の大きい空気を少ないファン回転数で吸込むことができる。
【0013】
即ち、上部空気通路を通る空気は混合空間の上部から下部へと混合空間全体に亘って流れるが、下部空気通路を通る空気は混合空間の中間部から下部の辺りの混合空間の一部にしか流れないため、上部空気通路を通る空気の方が下部空気通路を通る空気よりも、燃焼ガスと良く混合され、冷却効果が大きい。このため、上部空気通路を通る空気量を多くする方が、冷却効果が大きいのである。
また、従来のガス温風暖房機は、ファンの直上に燃焼ケースが配置され、ファンの直上から水平方向前方にずれた位置に混合空間が形成され、また、その混合空間は狭く長いので通路抵抗が大きかったのに対し、本発明のガス温風暖房機は、ファンの直上に混合空間を形成し、しかも、その混合空間が広く短いので、通路抵抗が小さい。このため、その混合空間の上部につながる上部空気通路を通る空気を、従来よりも少ないファン回転数で吸込むことができるのである。
【0014】
以上より、本発明のガス温風暖房機によると、従来のガス温風暖房機に比較して、ガス温風暖房機の高さを低くすることができる。しかも、冷却効果の大きい空気を少ないファン回転数で吸込むことができる。このため、従来のガス温風暖房機に比較して、高温の燃焼ガスを空気と混合させて所定温度に冷却した温風にして吹出すためのファンの回転数を減少させることができるので、運転音を小さくすることができる。
【0015】
請求項1の暖房機においては、ファンを回転させたときの上部空気通路を通る空気量と下部空気通路を通る空気量の比が1.5以上で6以下の範囲にあることが好ましい(請求項2)。
【0016】
上記したように、上部空気通路を通る空気量を多くする方が、冷却効果の大きい空気を少ないファン回転数で吸込むことができる。しかしながら、本発明者らのさらなる研究開発の結果、所定温度の温風を得るための混合用空気の全てを上部空気通路から得ようとすると、逆にファンの回転数を大きくしなければならないという知見を得た。即ち、所定温度の温風を得るための上部空気通路と下部空気通路の空気量の比(空気量比)は、小さ過ぎても大き過ぎてもファン回転数が大きくなってしまうという知見を得たのである。これは、下部空気通路からの空気も所定量取り入れた方が、混合空間で上部空気通路からの空気と下部空気通路からの空気が渦を巻いて燃焼ガスと十分に混合され、また、これらの空気を少ないファン回転数で吸込めるためであると考えられる。
【0017】
また、燃焼ケースの下方に位置する下部空気通路からの空気も所定量取り入れると、燃焼ケースの下部周辺の冷却効果も得られる。燃焼ケースは内部にガスバーナを有しているために非常に高温となるため、このような冷却効果が得られると、燃焼ケースの熱による損傷を抑制できる。また、燃焼ケースには、サーモカップル(熱電対)が取付けられているのが通常であるが、上記した冷却効果が得られると、そのサーモカップルの冷点側の温度を下げることができ、この結果、そのサーモカップルの出力を安定させるという効果も得られる。
【0018】
本発明者らはこのような知見に基づいて実験を行った結果、上記構成のガス温風暖房機では、空気量比を1.5以上で6以下の範囲にすると、冷却効果の大きい上部空気通路を通る空気量を適度に多くすることができ、しかも、ファン回転数を適度に小さくすることができることを見出した。このように、空気量比を上記範囲とすると、高温の燃焼ガスを空気と混合させて所定温度に冷却した温風にして吹出すためのファンの回転数をより減少させることができるので、運転音をより小さくすることができる。
さらに、空気量比を2以上で5以下の範囲にすると、上記した作用効果がさらに顕著に得られることが、後の実施例に開示されている。
【0019】
請求項1又は2に記載のガス温風暖房機においては、上部空気通路の断面積が下部空気通路の断面積よりも大きいことが好ましい(請求項3)。
この態様によると、上部空気通路を通る空気量が下部空気通路を通る空気量より多くなるような構成を容易に実現できる。
【0020】
請求項1から3のいずれかのガス温風暖房機においては、混合空間を画定する本体ケースの前板が、下方ほど前方に張出すように傾斜していることが好ましい(請求項4)。
この態様によると、ガス温風暖房機の容積を小さくしながら、混合空間の通路抵抗を小さくして、所定温度の温風を吹出すためのファンの回転数を減少させることができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
後記する本発明の実施例の主要な特徴を記載する。
(形態1) 本体ケースの前板は、間に間隔を持つ2重板で形成されている。この形態のガス温風暖房機では、混合空間で十分に混合されて適温とされるので、前板を冷却する必要がない。間に間隔を持つ2重板で形成しておくだけで、本体ケース前板の温度は安全な範囲内に維持される。
【0022】
【実施例】
本発明を具現化した好適な実施例について図を参照して説明する。まず、本発明の実施例に係るガス温風暖房機の構成を図1を参照して説明する。図1は本発明の実施例に係るガス温風暖房機の断面図である。
図1に示すように、本実施例に係るガス温風暖房機は、本体ケース(フードとも言う)22によって外枠が形成されている。本体ケース22の背面には、背面上部から背面下部に亘ってエアフィルタ26が設けられている。このエアフィルタ26には空気吸込口27が形成されている。本体ケース22の前面下部には、温風吹出口48が形成されている。
【0023】
本体ケース22内の後方位置には、燃焼ケース30が収容されている。この燃焼ケース30の本体ケース22背面側には、燃焼用二次空気導入口30aが形成されている。燃焼ケース30の上部には、燃焼ガス排出口30bが形成されている。この燃焼ケース30の内部には、燃焼室32が形成されている。この燃焼室32には、ガスバーナ36が設けられている。このガスバーナ36には、図示しないメイン弁、安全弁、流量制御弁を介してガス管が接続されている。ガスバーナ36の上方には、ガスバーナ36の燃焼炎を囲う囲い筒34が設けられている。なお、ガスバーナ36には、図示しない燃焼用一次空気通路が接続されている。
【0024】
燃焼ケース30の上方には、断面山形の分流板28が設けられている。この分流板28の上方には、本体ケース22の上板が設けられており、分流板28と本体ケース22の上板の間には、上部第1空気通路24が形成されている。分流板28と燃焼ケース30の間には、上部第2空気通路29が形成されている。燃焼ケース30の下部と本体ケース22の下板の間には、下部空気通路38が形成されている。上部第1空気通路24の断面積K1は、下部空気通路38の断面積K2より大きい。これらの空気通路24、29、38は、いずれも燃焼ケース30の周囲を迂回して本体ケース22背面の空気吸込口27と連通している。3系統の空気通路24、29、38が形成されているため、燃焼ガスと空気をより十分に混合させることができる。
【0025】
本体ケース22内の前部下方には、ファン46が収容されている。このファン46は、燃焼ケース30より前方に設けられ、かつ、水平方向から見たときに燃焼ケース30と重複する高さに設けられている。このため、図5に示すようなファン46が燃焼ケース30より下方に設けられている従来のガス温風暖房機に比較して、ガス温風暖房機の高さを低くすることができる。ファン46は円筒状に形成され、遠心式のファンであり、図示しないモータによって回転駆動される。ファン46の周囲には、ファン46を覆うようにファンケーシング40が設けられている。このファンケーシング40によって、ファン46と温風吹出口48は連通している。
【0026】
本実施例のガス温風暖房機は、ファン46を回転させたときに、上部空気通路24、28を通る合計の空気量が下部空気通路38を通る空気量より多くなるように構成されている。
【0027】
ファンケーシング40には、ファン46と燃焼ケース30を区切るようにガイドウォール42が形成されている。ガイドウォール42は、燃焼ケース30の前板の前方を前板から距離をおいて上方に伸びている。このガイドウォール42は、後に説明する混合空間52で混合した温風を温風吹出口48へガイドするとともに、燃焼ケース30の下方を迂回する下部空気通路38を通る空気を混合空間52にガイドする役割を果たす。ガイドウォール42は、上方に延びるにつれて燃焼ケース30の前板から離反するようにファン46に沿って湾曲している。よって、ガイドウォール42と燃焼ケース30の間に下方から手を入れたときに、上方で手を動かしやすい。このため、ガイドウォール42の上方であって燃焼ケース30の近傍に取り付けられているサーモカップル(熱電対)54の交換作業がしやすい。また、ファンケーシング40の前部には、スタビライザ50が形成されている。このスタビライザ50は、本体ケース22の前板の下方延長部に形成されている。このため、ガス温風暖房機の高さを低くし、奥行きを小さく抑えることができる。ガイドウォール42とスタビライザ50の形状や、ガイドウォール42あるいはスタビライザ50と、ファン46の間の距離を調整することによって、ファン46の吸込み力を調整することができる。
【0028】
ファン46は、燃焼ケース30よりも背が低く抑えられている。このために、本体ケース22の前板の後方で、燃焼ケース30の前板の前方で、ファン46の上方に、十分な大きさの混合空間52を確保することができる。この混合空間52は、空気通路24、29、38と、燃焼ケース30の燃焼ガス排出口30bに連通している。このように、ファン46を燃焼ケース30よりも背が低いものとすることでファン46の上方の空間に大きな混合空間52を確保できたために、混合空間(この空間は燃焼ガスと空気の通路ともいえる)52の断面積Nを広くすることができる。さらに、燃焼ガスと空気を十分に混合する空間を確保しながらも混合空間(燃焼ガスと空気の通路)52の長さを短くすることができる。即ち、混合空間(燃焼ガスと空気の通路)を広く短くできるので、通路抵抗を小さくすることができる。
【0029】
また、従来のガス温風暖房機に比較して負圧面Mを広くとることができるため、ファン46による温風の吸込みがより効果的に行われる。さらに、本体ケース22の前板と燃焼ケース30の間の空間が広くなるため、燃焼ケース30から排出される燃焼ガスの熱が本体ケース22の前板の表面22aまで熱が伝わりくくなる。このため、図5に示す従来のガス温風暖房機のような、本体ケース22の前板を冷却するための空気通路25を別個に設けなくてもよい。
【0030】
図1に示すように、本体ケース22の前板であって混合空間52を画定する部位は、下方ほど前方に張出すように傾斜している。このため、本体ケース22の体積を小さくしながら、効果的な混合空間52を確保できる。さらに、通路抵抗をより小さくすることができ、ファン46の回転数を一層下げることができる。また、本体ケース22の前板であって混合空間52を画定する部位は、間に距離Lを確保した2重板となっている。本実施例では、上部空気通路24、29と下部空気通路38の3系統の通路を備え、上部空気通路24、29を通る合計の空気量が下部空気通路38を通る空気量よりも多いので、混合空間52で燃焼ガスと各空気通路24、29、38からの空気が渦を巻いて十分に混合されて適温の温風とされる。このため、本体ケース22の前板を冷却する必要がない。間に間隔を持つ2重板で形成しておくだけで、本体ケース22の前板の表面22aの温度は安全な範囲内に維持される。
【0031】
次に、本実施例に係るガス温風暖房機の動作を図1を参照して説明する。ガスバーナ36に点火すると、ガス管(図示省略)から供給された燃料が、燃焼用一次空気吸込口(図示省略)から吸込まれた燃焼用一次空気と、燃焼用二次空気吸込口30aから矢印Dに示すように吸込まれた燃焼用二次空気とともに燃焼される。この燃焼によって生じた燃焼ガスは、燃焼ケース30の上部に形成された燃焼ガス排出口30bから矢印Cに示すように排出される。燃焼中は、ファン46の回転によって燃焼ガスが燃焼ガス排出口30bから吸引される。燃焼中は同時に、ファン46の回転によって、室内の空気が上部第2空気通路29から矢印Bに示すように吸込まれる。この結果、矢印Cに示す燃焼ガスと矢印Bに示す空気がまず混合される。
【0032】
同時に、ファン46の回転によって、室内の空気が上部第1空気通路24から矢印Aに示すように吸込まれる。また、下部空気通路38から矢印Eに示すように吸込まれる。この結果、矢印Cに示す燃焼ガスと、矢印Aおよび矢印Eに示す空気が混合空間52で混合される。
即ち、ファン46によって空気吸込口27から上部第1空気通路24を通じて吸込まれた空気は、燃焼ケース30の前板の上方から混合空間52へ向かって下方に移動する。また、下部空気通路38を通じて吸込まれた空気は、燃焼ケース30の下板の下方から混合空間52へ向かって上方に移動する。ファン46は燃焼ガス排出口30bから燃焼ガスをも吸引し、吸引された燃焼ガスは燃焼ケース30の前板の前方を下方に移動する。燃焼ケース30の前板の前方を下方に移動する間に、空気と燃焼ガスは混合され、程よい温度に調整される。この温風はファン46の回転によってファンケーシング40に沿って温風吹出口48に導かれ、温風吹出口48から吹出される。この温風によって室内が暖房される。
【0033】
図2に、本発明者らの実験による、本実施例のガス温風暖房機のファン46の回転数、上部空気通路24、29を通る空気量V1、下部空気通路38を通る空気量V2、これらの合計V1+V2、これらの比(空気量比)V1/V2、運転音、温風の平均温度等のデータを示す。図3のグラフは、空気量比V1/V2を図2のA〜Hのように順次増加させたときの、空気量比V1/V2と運転音の関係をプロットしたものである。 運転音は、前記したように、ファン46の回転数にほぼ比例する。即ち、図2に示されるように、ファン46の回転数を増加させれば運転音も増加し、ファン46の回転数を減少させれば運転音も減少する。
この実験での運転音は、空気量の合計V1+V2を概ね一定(0.62m3/min(Bの場合)〜0.73m3/min(Hの場合))として、その空気量V1/V2を順次増加させたときに、吹出し温風の平均温度を概ね一定(72.4℃(Cの場合)〜74.5℃(Gの場合))にするためにファン46の回転数を変化(増加又は減少)させた結果として、変化(増加又は減少)している。
【0034】
図3のグラフに示されるように、空気量比V1/V2を1より小さくすると、運転音が34.6dBよりも大きくなってしまった。特に、空気量比V1/V2を0.3としたとき(A点)は、運転音が35.5dBとなった。
これに対し、(1)空気量比V1/V2が1より大きく7.5以下の範囲にある場合は、運転音を34.6dB以下にできた。(2)空気量比V1/V2が1.2以上で6.5以下の範囲にある場合は、さらに0.2dBも低減でき、運転音を34.4dB以下にできた。(3)空気量比V1/V2が1.5以上で5.8以下の範囲にある場合は、さらに0.2dBも低減でき、運転音を34.2dB以下にできた。(4)空気量比V1/V2が2以上で5以下の範囲にある場合は、さらに0.2dBも低減でき、運転音を34.0dB以下にできた。
【0035】
この実験結果は、本発明の一つの実施例のガス温風暖房機による実験結果であるが、この実験結果から、本発明の(請求項1に記載の)ガス温風暖房機では、空気量比V1/V2を1.5以上で6.0以下の範囲にすれば、高温の燃焼ガスを空気と混合させて所定温度に冷却した温風にして吹出すためのファン46の回転数を減少させることができ、運転音を相当程度に小さくできると考えられる(請求項2)。さらに、空気量比V1/V2を2以上で5以下の範囲にすれば、上記実験結果から、運転音をさらに小さくできると考えられる。
【0036】
本実施例に係るガス温風暖房機は、発明の作用効果として記載したもの以外にも、以下のような作用効果を奏する。
(1)本実施例に係るガス温風暖房機では、上部空気通路24、29と下部空気通路38の3系統の通路を備え、さらに上部空気通路24、29を通る空気量が下部空気通路38を通る空気量よりも多いので、混合空間52で燃焼ガスと各空気通路24、29、38からの空気が渦を巻いて十分に混合されて適温とされる。このため、本体ケース22の前板を他の手段で冷却しなくても、本体ケース22の前板の表面22aの温度を安全な範囲内に維持することができる。
(2)本実施例に係るガス温風暖房機では、上部空気通路24、29を通る空気量が下部空気通路38を通る空気量よりも多いので、従来よりも小さな混合空間52で燃焼ガスと空気を十分に混合することができる。このため、従来のガス温風暖房機に比較して、体積を小さくすることができる。従って、例えばキッチンの下部等の空間がコンパクトな空間であっても組込むことができる。
【0037】
以上、本発明の実施例に係るガス温風暖房機について説明したが、本発明の適用範囲は上記の実施例になんら限定されるものではない。本発明は、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した形態で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例に係るガス温風暖房機の断面図。
【図2】ファン回転数、上部空気通路を通る空気量、下部空気通路を通る空気量、その合計量、その比、運転音、温風の平均温度等を示すデータ。
【図3】上部空気通路を通る空気量と下部空気通路を通る空気量の比と運転音の関係を示すグラフ。
【図4】従来のガス温風暖房機の断面図。
【符号の説明】
22:本体ケース、22a:前板の表面
24、29:上部空気通路
38:下部空気通路
26:エアフィルタ
27:空気吸込口
28:分流板
30:燃焼ケース、30a:燃焼用二次空気吸込口、30b:燃焼ガス排出口
32:燃焼室
34:囲い筒
36:ガスバーナ
40:ファンケーシング
42:ガイドウォール
46:ファン
48:温風吹出口
50:スタビライザ
52:混合空間
54:サーモカップル
Claims (4)
- 背面に空気吸込口が形成され、前面に温風吹出口が形成されるとともに、ガス温風暖房機の外枠を形成する本体ケースと、
内部にガスバーナを有し、上部に燃焼ガス排出口が形成されているとともに、本体ケース内の後方位置に収容されている燃焼ケースと、
燃焼ケースより前方で、かつ、燃焼ケースと重複する高さで本体ケース内に収容されており、温風吹出口に連通するとともに、燃焼ケースよりも背が低いファンと、
本体ケースの前板の後方、燃焼ケースの前板の前方、かつ、ファンの上方に位置して、空気吸込口から吸込まれた空気と燃焼ガス排出口から排出された燃焼ガスを混合する空間と、
空気吸込口と混合空間をつなぐ空間であって、燃焼ケースの上方に位置する上部空気通路と、
空気吸込口と混合空間をつなぐ空間であって、燃焼ケースの下方に位置する下部空気通路を備え、
ファンを回転させたときに、上部空気通路を通る空気量が下部空気通路を通る空気量より多くなるように構成されていることを特徴とするガス温風暖房機。 - ファンを回転させたときの上部空気通路を通る空気量と下部空気通路を通る空気量の比が1.5以上で6以下の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載のガス温風暖房機。
- 上部空気通路の断面積が下部空気通路の断面積よりも大きいことを特徴とする請求項1又は2に記載のガス温風暖房機。
- 混合空間を画定する本体ケースの前板が、下方ほど前方に張出すように傾斜していることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のガス温風暖房機。
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