JP3759270B2 - 清拭除塵材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車の被塗面、家具、漆器類等に付着する埃、塵等の拭き取りに用いられる清拭除塵材に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車の被塗面、すなわち塗装前の自動車のボディや、家具、漆器類等に付着する埃、塵等の拭き取りに用いられる清拭除塵材として、織布、不織布等の基布に、粘着性を有し且つ常温で非硬化性の粘稠な樹脂(ポリブテン樹脂又はポリイソブチレン樹脂又はこれらの混合物)と軟化点が60〜150℃の熱可塑性樹脂とが混合して形成された樹脂組成物のエマルジョンを含浸させた清拭除塵布がある(特開平7−231870号公報)。
【0003】
当該清拭除塵布において、ポリブチレン等の粘稠な樹脂(以下、単に「粘稠樹脂」という)及び軟化点が60〜150℃の熱可塑性樹脂(以下、「粘着性向上兼硬化性付与樹脂」という)が粘着成分となって、被除塵面上の塵、埃等を粘着除去する一方、粘着性向上兼硬化性付与樹脂が常温で硬化性を発揮することにより、清拭除塵布中の粘着成分が被除塵面へ移行するのが抑止される。粘着成分の被除塵面への移行抑止は、自動車の被塗面に対する塗料の密着性低下の防止、塗料のはじきを防止するため、さらに清浄美麗な塗面を形成するために、特に重要となる。
【0004】
上記清拭除塵布は、塵、埃等を粘着除去するために用いられる樹脂、すなわち粘着成分を、水を溶媒として用いたエマルジョンの状態で基布に含浸させているので、粘着成分となるポリマーをトリクロロエタン等の塩素系有機溶剤で希釈して状態で含浸させた清拭除塵布と比べて、その製造工程及び使用時、さらには自然環境に対しても安全である。また、粘着成分となるポリマーが基布内に含浸されているので、基布表面に粘着剤層を形成してなる清拭除塵布と比べて、基布の可撓性が損なわれないという利点がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記清拭除塵布において清拭除塵布の除塵力のさらなる向上を図ろうとした場合、以下のような問題点があった。
【0006】
すなわち、除塵力の向上を図ろうとする場合、粘着成分、特に粘稠樹脂の含浸量を増大させることが考えられる。しかし、粘稠樹脂の含浸量の増大は、清拭除塵布としての常温でのべたつきにつながり、取扱性、作業性、さらには粘着成分の被除塵面への移行抑止が低下する。これを回避するためには、常温で硬化性を発揮する粘着性向上兼硬化性付与樹脂の含浸量も同様に増大させる必要があるが、このことが清拭除塵布としての可撓性の低下をもたらす。また、粘着成分量の増大はエマルジョン中の樹脂濃度の増大を意味し、エマルジョンの粘度が高くなって粘稠になりすぎると、清拭除塵布の製造において、粘着成分となる樹脂組成物を基布に必要充分量だけ均一に含浸させるのに時間がかかる。
【0007】
以上のような理由から、粘稠樹脂と粘着性向上兼硬化性付与樹脂とを混合してなる樹脂組成物のエマルジョンを含浸してなる清拭除塵布において、適度な可とう性を維持したまま、除塵力のさらなる向上を図ることが困難であった。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、取扱いやすさ及び良好な作業性を確保できる程度の可撓性を有し、且つ優れた除塵性能を有する清拭除塵材を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成すべくなされた本発明の清拭除塵材は、ロジン系樹脂又はピネン系樹脂であって軟化点が10〜60°Cの熱可塑性樹脂単独で構成された粘着成分が含浸されていることを特徴とする。本発明の清拭除塵材のうち、使用雰囲気温度で軟化しない程度の軟化点を有する熱可塑性樹脂を用いた清拭除塵材を適宜選択することにより、上記目的を有効に達成することができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施形態を説明する。
【0011】
本発明に用いられる基材は、可撓性有し、且つ塵、埃等を粘着除去する熱可塑性樹脂を含有することができるものである。具体的には、綿、麻等の天然繊維;レーヨン、キュプラ等の再生繊維;アセテート等の半合成繊維;ナイロン、ポリエステル等の合成繊維;及びこれらの混合繊維からなる織布、不織布又は編成物の他、発泡プラスチック又はフォームラバー等の発泡体を用いることもできる。発泡体の場合、独立気泡タイプ、連続気泡タイプのいずれを用いることもでき、発泡率により基剤としての可撓性を調節すればよい。
【0012】
軟化点が10〜60℃の熱可塑性樹脂(以下、「低軟化点熱可塑性樹脂」という)は、粘着成分として清拭除塵材中に含有されるもので、被清拭面上の塵、埃等を粘着除去する働きを有するとともに、該粘着成分が被清拭面へ移行することも抑止する。すなわち、その軟化点の低さから、容易に粘着性を発揮して、被清拭面上の塵、埃、油性の汚れ等を粘着除去することができる一方、軟化点未満の温度では、硬化性が発揮されて、粘着成分の被清拭面への移行を抑止するとともに、清拭除塵材がべたついた感じにならずに済む。
【0013】
低軟化点熱可塑性樹脂としては、一般に粘着付与剤として用いられる樹脂で軟化点が上記範囲内にある樹脂が該当する。具体的には、ロジンエステル等のロジン誘導体、ピネン系樹脂等のうち軟化点が上記範囲内にある樹脂、石油樹脂等の炭化水素樹脂のうち軟化点が上記範囲内にある樹脂が挙げられる。ロジンエステルの場合、エステル化に用いるアルコールの種類に応じてロジンの軟化点を要求する軟化点にまで下げることができる。合成樹脂の場合、そのモノマー源及び重合度により、軟化点を調整することができる。
【0014】
清拭除塵材に含有される低軟化点熱可塑性樹脂は、使用時においてべたつかないように、また作業性を損なわないように硬すぎないように、その軟化点は適宜選択することが好ましい。すなわち、夏期や暖かい地方では軟化点40℃以上の熱可塑性樹脂を使用することが好ましく、冬季や北国では軟化点10〜40℃程度の熱可塑性樹脂を使用することが好ましい。
【0015】
上記低軟化点熱可塑性樹脂の基材における含有形態は、基材の種類や清拭除塵材の製造方法により異なる。例えば、基材が織布、不織布又は編成物の場合には、布の織り目、編み目又は繊維間間隙に捕捉されたり、布状物を構成する繊維又は糸状体表面に付着したりしている。また、清拭除塵材の製造において低軟化点熱可塑性樹脂が溶融される場合には、繊維又は糸状体の表面に溶着する。さらに、基材の構成繊維と低軟化点熱可塑性樹脂との濡れ性が良い場合には、繊維又は糸状体内部にまで、低軟化点熱可塑性樹脂が含浸されることもある。基材が発泡体の場合には、発泡体表面に付着又は空孔内に捕捉、清拭除塵材の製造において低軟化点熱可塑性樹脂が溶融される場合には発泡体表面又は空孔内に溶着される様にして存在している。
【0016】
基材中における低軟化点熱可塑性樹脂の含有量は、清拭除塵材に求められる除塵力、コスト等から適宜選択される。本発明の清拭除塵材では、除塵能力を発揮する粘着成分が、軟化点が10〜60℃という、比較的低い温度範囲の熱可塑性樹脂で構成されていることから、軟化点が60℃以上の熱可塑性樹脂と異なり、多量に含有させても、基材の有する可撓性をそれ程損なわずに済む。従って、基材中における低軟化点熱可塑性樹脂の含有量は、基材1m2 あたり5〜40gの範囲で選択することができ、除塵力を高めるためには含有量を増大させればよい。基材への低軟化点熱可塑性樹脂の添加のしやすさ、すなわち、製造方法の点、コスト面から、一般に基材1m2 あたり8〜25g程度で、要求される除塵能力を満足することができる。
【0017】
基材に低軟化点熱可塑性樹脂を含有させる方法は特に限定しないが、低軟化点熱可塑性樹脂を溶融状態で基材に付着させたり、希釈剤で希釈した低軟化点熱可塑性樹脂溶液中に基材を浸漬する方法などが挙げられる。生産性の観点から、希釈溶液中に基材を浸漬する方法が好ましい。希釈溶液の場合、有機系溶剤を用いる場合と水を溶媒とするエマルジョン溶液があるが、有機系溶剤は人体に有害であり、トリクロロエタン等の塩素系有機溶剤はオゾン層破壊等の環境問題の原因となることから、水を溶媒とするエマルジョン溶液を用いることが好ましい。
【0018】
エマルジョン溶液は、一般に、粒径0.2〜0.5ミクロンの低軟化点熱可塑性樹脂粒子を水中に分散させることにより調製される。エマルジョンにおけるポリマー粒子濃度は、基材中の低軟化点熱可塑性樹脂の含有量に応じて適宜選択することができるが、基材1m2 あたり8〜25g程度含有させる場合、希釈率を4〜1.5倍としたエマルジョンが好ましく用いられる。尚、エマルジョンの場合、水中に低軟化点熱可塑性樹脂粒子を安定に存在させるために、必要に応じて界面活性剤等を適宜添加してもよい。
【0019】
以上のようにして調製された低軟化点熱可塑性樹脂のエマルジョン溶液に基材を浸漬した後、基材を取り出して、ローラで押圧等することにより脱水し、さらに必要により熱風乾燥することにより、本発明にかかる清拭除塵材を製造することができる。
【0020】
清拭除塵布の製造において、低軟化点熱可塑性樹脂の添加をエマルジョンの状態で行う場合、エマルジョン中の水分は、浸漬工程後に行う脱水乾燥工程により基材から適宜取り除かれる。
【0021】
乾燥工程は、早期乾燥を行う場合や、使用する低軟化点熱可塑性樹脂が常温(20〜40℃程度)以上の場合には、熱風(60〜180℃)乾燥することは好ましい。熱風乾燥により、水分の蒸発を迅速に行うことができるだけでなく、低軟化点熱可塑性樹脂の基材への含有状態が、繊維若しくは糸状体又は発泡体表面への付着状態より進んで、繊維若しくは糸状体又は発泡体表面への熱溶着乃至繊維内部あるいは空孔内部にまで含浸された状態となり、低軟化点熱可塑性樹脂の存在が安定したものとなるからである。低軟化点熱可塑性樹脂の存在の安定化は、粘着成分が被清拭面へ移行することを有効に抑止して、除塵能力の向上に繋がる。
【0022】
以上のような構成を有する本発明の清拭除塵材は、除塵能力を発揮する粘着成分が、軟化点が10〜60℃という、比較的低い温度範囲の熱可塑性樹脂で構成されていることから、基材の有する可撓性を損なうことなく、要求される除塵性能に応じて、低軟化点熱可塑性樹脂の含有量を選択することができる。すなわち、柔らかくて作業性が良く、しかも優れた除塵能力を発揮する清拭除塵材を得ることができる。また、粘着成分が低軟化点熱可塑性樹脂単独で構成されることから、含有量の調整が容易で、優れた除塵能力を発揮する清拭除塵材を、粘着成分が複数の樹脂混合物で構成されている清拭除塵材よりも容易に製造することができる。さらに、使用条件、環境に応じて、含有する低軟化点熱可塑性樹脂の軟化点を選択することにより、硬化剤を添加することなく、使用雰囲気下でべたつかないという要求を満足することもできる。さらにまた、浸漬工程、その後に続く(熱風)乾燥工程により、低軟化点熱可塑性樹脂の基材における存在状態を、基材を構成する繊維若しくは糸状体又は発泡体表面への溶着乃至内部への含浸という比較的安定な状態とすることができ、被塗面への清拭にも適用できる。
【0023】
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明する。
【0024】
〔実施例〕
基材としてポリエステル30番単糸で製織した20インチ×20インチの基布を用い、低軟化点熱可塑性樹脂としてロジンエステル(軟化点50℃)を用いた。低軟化点熱可塑性樹脂は、粒径0.2〜0.5ミクロンの粒子として水を溶媒とするエマルジョン溶液(水10リットルあたり固形分3.3kg)の状態で用いた。尚、エマルジョン溶液における樹脂の分散安定のために、界面活性剤を適宜添加した。次に、調製したエマルジョン溶液に、上記基布を浸漬した(浸漬時間は約3秒)後、これを引き上げてローラ間を通過させることにより脱水処理し、さらに温度110℃の熱風乾燥機で3〜4分間乾燥することにより、本発明実施例に相当する清拭除塵材を製造した。製造された清拭除塵材は、基布1m2 あたり15gの低軟化点熱可塑性樹脂が含有されている。
【0025】
〔比較例1〕
ポリブテン樹脂及びロジン(軟化点100℃)を重量比1:1の割合で混合して、粘着成分となる樹脂組成物を調製した。この樹脂組成物からなる粒径0.2〜0.5ミクロンの粒子を水に分散させて、実施例と同等の希釈率のエマルジョン溶液(水10リットルあたり固形分3.3kg)を調製した。尚、エマルジョン溶液における樹脂の分散安定のために、界面活性剤を適宜添加した。次に、調製したエマルジョン溶液に、上記基布を浸漬した(浸漬時間は約5秒)後、これを引き上げてローラ間を通過させることにより脱水処理し、さらに温度110℃の熱風乾燥機で5分間乾燥することにより、清拭除塵材(比較例1)を製造した。製造された清拭除塵材は、基布1m2 あたり20gの熱可塑性樹脂が含有されている。
【0026】
〔比較例2〕
ポリブテン樹脂及びロジンの重量比を2:1に変更して、実施例と同等の希釈率のエマルジョン溶液(水10リットルあたり固形分3.3kg)を調製した。尚、エマルジョン溶液における樹脂の分散安定のために、界面活性剤を適宜添加した。このエマルジョン溶液を用いて、比較例1と同様の方法により、清拭除塵材(比較例2)を製造した。製造された清拭除塵材は、基布1m2 あたり20gの熱可塑性樹脂が含有されている。
【0027】
〔評価〕
上記により製造した実施例及び比較例の清拭除塵材の除塵性能、移行性、及び可撓性を、以下のようにして評価した。尚、評価は、20℃の条件下で行った。
【0028】
▲1▼除塵性能
清拭除塵材を縦×横が200mm×200mmに裁断し、これを2枚重ねて試験片とした。2枚重ねたのは、1枚目と2枚目とから形成されるメッシュで塵埃を粘着捕獲するためである。
【0029】
次に、黒色塗装の鉄板上に、一辺が80mmの正方形範囲内に、5gのコーンスターチ粉末を均一に敷き詰め、それを清拭除塵材で軽く1回払拭した。
【0030】
払拭した後の鉄板表面の粉末の残存量を目視で観察し、優(残存量5%未満)、良(残存量5〜15%)、可(残存量15〜30%)、不可(残存量30%超)の4段階で評価した。評価結果を表1に示す。
【0031】
▲2▼移行性
清拭除塵材を縦×横が200mm×200mmに裁断し、これを試験片とした。平板なガラス板上に作成した試験片(1枚)を敷き、その試験片の上に、縦×横×厚みが200mm×200mm×2mmの平らなステンレス板を重ね合わせ、圧力を加えずに乗せたままで1分間放置した。その後、ステンレス板を試験片から圧力を加えずに取り除き、ガラス板面に移行付着した粘着成分の面積割合を目視で観察し、○(付着面積割合5%未満)、△(付着面積割合5〜10%)、×(付着面積割合10%超)の3段階で評価した。評価結果を表1に示す。
【0032】
▲3▼可撓性
清拭除塵材を縦×横が200mm×800mmに裁断し、長片の中央がわになるようにして、4回折り畳み、16枚重ねになる200mm×50mmの短冊形の試験片を作成した。これを、JIS1096の45°カンチレバー法に準じて、清拭除塵材の可撓性を評価した。すなわち、片側が45°の斜面を有する台形の装置を用い、試験片を水平面から斜面方向に押し出し、押し出された試験片の一端が自重により垂れ下がって斜面に達するまでの試験片の押し出し距離(mm)を測定した。測定結果を表1に示す。
【0033】
尚、押し出し距離が80mmを超えると、凹凸面や狭隘な箇所の拭き取りがしにくく、また拭き取り対象面を傷つけるおそれがあることから、清拭除塵材としては硬すぎて不適切である。一方、押し出し距離が60mm未満の場合は、清拭除塵材として張りがなく、拭き取りに際しては捩じれてくねり、作業能率が劣ることから、軟らかすぎて不適切である。押し出し距離が60〜80mmの場合は、清拭除塵材として適切な可撓性を有している。
【0034】
【表1】
【0035】
表1から、実施例は、可撓性があり、移行性がなく、さらに除塵性能が優れていることがわかる。一方、比較例1は、少し硬くて可撓性に劣り、除塵性能が実施例と比較して多少劣っていた。比較例2は、除塵性能は実施例と同程度であったが、軟らかすぎ、また払拭作業後に移行性が認められた。
【0036】
【発明の効果】
本発明の清拭除塵材は、使用条件、使用環境に応じて、含有する低軟化点熱可塑性樹脂の軟化点及び含有量を調整することにより、粘着成分の移行性がなく、可撓性があって作業性が良く、要求する除塵能力を満足することができる。
【0037】
また、本発明の清拭除塵材に含有されている粘着成分は、ロジン系又はピネン系の低軟化点熱可塑性樹脂単独で構成されることから、清拭除塵材の粘着成分の含有量の調節が容易であり、コスト面、使用条件等に応じた除塵力を有する清拭除塵材を、容易に製造できる。しかも、軟化点の選択により、含有量の増減によっても、粘着剤の移行が増大したり、可撓性が損なわれることがない。
Claims (1)
- 可撓性を有する基材中に、ロジン系樹脂又はピネン系樹脂であって軟化点が10〜60°Cの熱可塑性樹脂単独で構成された粘着成分が含浸されていることを特徴とする清拭除塵材。
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1997
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