JP3094089B2 - 脱臭フィルター材 - Google Patents

脱臭フィルター材

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【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) この発明は、活性炭及び/又はその他の脱臭剤の粉末
を水系バインダー内に分散させ、これを合成樹脂ネット
に含浸後、乾燥させて得られる脱臭フィルター材であっ
て、ネット材から脱臭剤が脱落しにくく、かつ使用され
るバインダーによる脱臭性能の低下が比較的少く、低圧
損のフィルター材に関する。
(従来技術) 従来の脱臭フィルター材としては、活性炭やその他の
脱臭剤をバインダー内に分散させ、ポリウレタンフォー
ムや不織布、合成樹脂ネット等の基材に含浸・付着させ
たもの、ポリウレタンフォームに接着剤を含浸・付着さ
せ、これに活性炭粉末を付着させたもの、粒状の活性炭
を不織布やポリウレタンフォームで包んだもの等があ
る。
(解決すべき課題) しかしながら従来の脱臭フィルター材においては基材
に付着させる際の作業工程によって脱臭性能が低下した
り、脱臭材層が取扱時や使用中に脱落したり、更にはこ
れらの理由とも相まって他の例えば除塵フィルター材等
との複合化は難しく、この点で取扱の容易なしかも脱臭
効果の優れたフィルター材の出現が望まれていた。
このうち、活性炭粉末をバインダーに分散し、合成樹
脂ネットに付着せしめた脱臭フィルターも知られている
が活性炭及び/又はその他の脱臭剤/バインダーの固形
分が小さすぎて、脱臭性能が低かったり、合成樹脂ネッ
トのストランドから脱臭剤層が脱落しやすい等の問題あ
った。
又、近年、空気清浄のために、脱臭フィルターを帯電
フィルター(除塵)と組合わせて使用する事がしばしば
行なわれている。
特に低圧力損失が要求される場合には、脱臭フィルタ
ーとして合成樹脂ネットに活性炭及び/又はその他の脱
臭剤を付着せしめた脱臭フィルターを使用し、帯電フィ
ルターとしては薄手の帯電不織布を折たたみ加工した、
いわゆるプリーツタイプの帯電フィルター等を組合わせ
て使用する事が考えられている。
本発明は脱臭効果の高いかつ取扱の容易な合成樹脂ネ
ットを基材とした脱臭フィルターを提供するものであ
り、特に好ましい例としては、帯電フィルターとの複合
化が容易なように合成樹脂ネットベースの脱臭フィルタ
ーが熱圧着にて接着複合せしめる事が可能となった合成
樹脂ネット基材の脱臭フィルターの提供にある。
かかる複合化は、製品の連続生産上非常に有利であ
り、生産効率のアップにも直接繋がるものである。
(解決手段) この発明はこのような従来技術の課題を克服しようと
してなされたものであり、その発明の要旨は次の通りで
ある。
即ち、150メッシュ以上の活性炭及び/又はその他の
水に不溶な脱臭剤粉末を水系バインダーに均一に分散さ
せ、活性炭及び/又はその他の脱臭剤/バインダーの固
形分比を2/5〜5/1、総固形分35%〜55%となした分散液
を得、一方の合成樹脂ネットをバインダー内に浸漬し、
次いで乾燥させることによって、合成樹脂ネットのスト
ランド上にバインダー被膜を予め形成し、当該合成樹脂
ネットを前記分散液に浸漬し、これを乾燥させて得られ
ることを特徴とするネット状の脱臭フィルター材であ
り、前記合成樹脂ネットのストランド間隔が好ましくは
1.5〜7m/m、より好ましくは2〜5m/mである。
活性炭及び/当はその他の脱臭剤の脱落防止の点で言
えば、前記合成樹脂ネットを、好ましくは分散液に使用
する水系バインダー又はこのバインダーと接着性の良好
なバインダー内に浸漬し乾燥させることによって、合成
樹脂ネットのストランド上にバインダー被膜を予め形成
しておくものである。
そして、通常は合成樹脂ネット1m2あたり、活性炭及
び/又はその他の脱臭剤が15〜60gr付着している脱臭フ
ィルター材である。
そして特に複合化のためには、前記分散液内に脱臭剤
粉末とバインダーとの合計固形分を100重量部として、
ホットメルト接着剤粉末を100〜180重量部添加するのが
好ましく、更には合成樹脂ネットに付着され、乾燥する
事によって得られた脱臭剤とバインダーの層の上に、使
用された水系バインダー又はこれと接着性の良好な水系
バインダーを塗工することよりなる。
かかる塗工のための水系バインダー内に、脱臭剤粉末
とバインダーとの合計固形分を100重量部として、ホッ
トメルト接着剤粉末が200〜500重量部添加するのもよ
く、これら使用されるホットメルト接着剤粉末の軟化温
度は60〜120℃、より好ましくは60〜80℃である。
基材となる合成樹脂ネットとしては、ポリエチレン、
ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリ塩化
ビニル等、種々の合成樹脂製ネットが用いられ、これ等
の中でバインダーの含浸後の乾燥における耐熱性の必要
性から考えると、ポリエステル、ポリアミド等が好まし
いが、コスト面を考慮するとポリプロピレンがそこそこ
の耐熱性もあり好ましい。
使用するネットの具体例としては、合成樹脂を押出し
てストランド状にしたもの、延伸したフィルムに細かな
割れ目を入れて割繊維にし、これを縦横に連続的に積層
し熱溶着した不織布、更には複数の細繊維をネット状に
編んだもの等が用いられる。
前記した合成樹脂ネットへ付着する活性炭及びその他
の粉末にあっては、その粉体の粒度が基準以上の大きさ
である場合には、分散液中で沈降しやすく均一な製品が
得られないばかりか、フィルターに摩擦力がかかった場
合、粒子が落下しやすく外観的にも見苦しい製品とな
る。
一方、脱臭剤/バインダーの固形分の比は、これが規
定よりも大きすぎると脱臭剤の脱落がおきやすく、小さ
すぎると脱臭性能の低下が大きくなるため、前記したよ
うに望ましい範囲が選択されるものである。
また、合成樹脂ネットの単位面積あたりの脱臭剤の付
着量を上げる事は、脱臭剤としての性能向上につながり
望ましく、このための一手段としてネットのストランド
間隔を小さくすると付着量を容易に上げる事ができる。
ところが、このネットのストランド間隔が小さくなり
すぎると、ネットを分散液に含浸した後、エアーでブロ
ーする等してストランド間に膜を張った過剰の分散液を
除去しようとしても充分に除去できず、いわゆる目ずま
りした状態の製品が得られ、外観的に見苦しく、又圧力
損失も高くなって商品価値がなくなることにもなる。従
ってここにもフィルターとしての最適化の条件があるこ
とになる。
本発明における脱臭フィルターは、合成樹脂ネットに
分散液を含浸させ、乾燥させたものであって、ネットの
ストランドの周囲に脱臭剤が分散されたバインダー層が
付着した形になるが、ネットの樹脂とバインダー層との
接着性が悪いと、摩擦や振動等の外力によって、脱臭剤
/バインダー層が脱落することともなる。
従って、これを未然に防止するため、予めかかるネッ
トをバインダーに浸漬し、ネットの樹脂ストランド上に
連続した被膜を形成する事によってこれを防止し得る。
この処理は特に合成樹脂ネットがポリエチレン、ポリプ
ロピレン、ポリエステル等、バインダー類との接着性が
不良の材質を選択した場合にその効果が発揮できる。
このように脱臭剤/バインダー層のネットストランド
からの脱落は、未然に防止し得るが、それでもバインダ
ー層に分散され一部埋め込まれた脱臭剤粉末が、摩擦、
振動、衝撃等によってバインダー層から脱落する事があ
る。
これは空調機器の脱臭フィルター等として用いる場
合、室内を汚す事となり大きな問題となる。
これを防ぐ為には、バインダー層上から更にバインダ
ーを塗工する事によって大きな効果が得られる。
この塗工は、スプレー、ロールコーター、含浸等によ
って行なわれるが、塗工量を少量かつ一定量にコントロ
ールするにはスプレー処理が好ましい。
この塗工量は少なすぎると効果が小さく、多すぎると
脱臭性能の低下が大きいので注意を要するところであ
る。
一方他の基材との接着、例えば帯電不織布、プリーツ
状帯電不織布との複合化に際しては熱圧着法が好まし
い。このため、接着力を持たせるために、バインダー内
にホットメルト接着剤の粉末を分散させておくことが好
ましい態様である。
ホットメルト接着剤粉末の添加量は少なすぎると熱圧
着による接着力が充分でなく、多すぎるとバインダー本
来の接着力が不充分となり、又脱臭剤の添加量が相対的
に減るため好ましくない。
かかるホットメルト接着剤の軟化温度は、低すぎると
例えばエアコン用の脱臭フィルターとして使用する場
合、温風にて軟化してしまうため好ましくなく、一方高
すぎると熱圧着にて高温にする必要が生じ、ネット自体
の軟化をまねくためいずれも好ましい範囲がある。
(具体例) 以上更に具体例によって本発明を説明する。
*参考例1〜6 参考例1〜6は合成樹脂ネットに直接バインダー被膜
を形成しない脱臭フィルターであり、脱臭剤としてやし
がら活性炭(平均粒径約300メッシュ〜北越炭素工業株
式会社製 Y−300C)と、合成脱臭剤(平均粒径約200
メッシュ〜ラサ工業株式会社製 KD−211)の2種類を
用いた。
この活性炭と合成脱臭剤との比率を100対60のを割合
で配合した。
この2種類脱臭剤を組み合わせる理由として、タバコ
臭等は活性炭が主に吸着作用をなし、アンモニア等は合
成脱臭剤が吸着の機能をなすものである。
使用したネットはポリプロピレン製ネットであり、ス
トランドの間隔は縦横共に3mmの三井石油産資株式会社
製のTSX−350Pを用い、一方バインダーとしてアクリル
系エマルジョン(固形分52.5%〜日本合成ゴム株式会社
製 AE−932)を用いた。
参考例1〜6のサンプルの作成に当たっては、脱臭剤
とバインダーの固形分比を3.5対1として、配合液の総
固形分を45%に調整したスラリーをネット表面へ含浸さ
せ、ネット・ストランドの間隔の目詰まりをエアーで吹
き飛ばした後に、70℃、3分間の条件で乾燥させる。
構造的にはネット状に脱臭剤がバインダーにて付着さ
せている構造となっている。
総固形分は一定の範囲の割合が選択されるもので、こ
の総固形分が低過ぎた場合には、脱臭剤とバインダーの
スラリーがネット表面へ十分付着できず、満足な脱臭剤
の性能が得られず、一方総固形分が高過ぎる場合には、
配合液が泥状になりネット表面へ含浸付着することが出
来なくなるからである。
第1表に脱臭剤評価及び脱臭吸着評価を示す。
評価の方法は次の通りである。
脱臭性能の測定 除去率は以下の式で算出した。
ベンゼン臭気の発生は、株式会社ガステック、標準ガ
ス発生装置を用い、30ppmの標準ガスを得る。
一方、アンモニア臭気の発生は、28%濃度のアンモニ
ア試薬を水で1/500に希釈し、200ccをガス洗浄ビンに計
り取り、1/分のエアーでバブリングし、100ppmのア
ンモニアガスを発生させた。
このような条件下でガスを発生し、サンプルを4枚重
ね、ガス接触径40mmとして測定を実施し、測定経時5分
後の除去率を求めた。
圧力損失測定 圧力損失の測定は、日本空気清浄協会指定の第2性能
試験方法に準拠して行い、風速1m/秒の時の値である。
粉落ち性の評価 評価は官能評価であり、次の基準によった。
◎:ネットを軽く手でたたき、衝撃を与えても全く粉
落ちがない状態 ○:同上の条件で、手の平に極少量の粉しか落ちない
状態 △:同上の条件で、手の平に多少の粉落ちが確認され
る状態 ×:同上の条件で、手の平にかなり多くの粉落ちが確
認され、樹脂のストランドが見える状態 液の沈降試験評価 評価は官能評価であり、次の基準によった。
○:24時間放置後、沈降が見られないもの △:24時間放置後、沈降が若干確認されるもの ×:24時間放置後、約30%以上が沈降し、上済液が確
認され、簡単に再分散出来ないもの 尚、合成樹脂ネットのストランド間隔は3m/mである。
各試験の結果、各参考例の中で参考例1が最も高い性
能を示した。
*参考例7〜8 参考例7〜8は前記参考例1と同様に脱臭剤及びバイ
ンダーを調整したものであるが、樹脂ネットのストラン
ドの間隔を変化させて評価した。
尚、使用した脱臭剤の平均粒径は300メッシュであっ
た。
評価結果を第2表に示す。
この結果、特定のメッシュ間隔を有するものが高い性
能を示すことが分かる。
*実施例1〜2 実施例1〜2は前記各参考例のうち最も良好な性能を
示す参考例1の脱臭フィルター材において、合成樹脂ネ
ットのストランドの表面へ予めバインダーを含浸付着さ
せこれを乾燥させることによりバインダー皮膜を形成
し、その後参考例1と同様にして作成させた脱臭フィル
ター材である。
実施例1に使用されたバインダーは分散液の調整に使
用されたバインダーを用いたものであり、乾燥状態で26
g/m2付着させた。
実施例2に使用されたバインダーは綜研化学株式会社
製のアクリル系エマルジョン(E−1016D)、固形分46
%のものを使用し、乾燥状態で23g/m2付着させた。
これらを構造的に見ると、ネット上にバインダーが付
着され、この上に脱臭剤が第2のバインダにて付着され
ているものである。
脱臭性能及び脱臭剤のストランドからの剥離性を第3
表に示す。
ストランドからの脱臭剤の剥離性の評価は次の通りで
ある。
先ず、ネットを手で3回軽く揉み、強制的に脱臭剤の
皮膜とストランド表面に剥離力を与える。
○:上記操作後もほとんどの脱臭剤はストランドの表
面に付着している状態 △:かなりの脱臭剤が剥げ落ちるが、大半がストラン
ドの表面へ付着して残っている状態 ×:揉んだ区域の脱臭剤はほとんど全てストランドの
表面から剥げ落ちる状態 以上の結果から、本実施例においては脱臭性能の点で
は高性能を示す参考例1の場合とほぼ同程度であるが、
脱臭剤の剥離性能が著しく向上していることが分かる。
*実施例3 実施例3は本発明の請求項6に基づくものであり、特
にホットメルト性を高めるための実施例である。参考例
1と比較して述べる。
この例は、実施例1の脱臭フィルター表面へEVA系ホ
ットメルト粉末(東京インキ株式会社5020C(60P))の
皮膜を形成した。
上記EVA系ホットメルト粉末は予め水と界面活性剤
(一方社油脂工業株式会社 スパラン33)、バインダー
としてアクリル系エマルジョン(日本合成ゴム株式会社
製 AE−932)とを用いたEVAホットメルトのスラリーを
作成する。各々の配合割合はEVAホットメルト粉末/水
/界面活性剤/バインダーで、EVAホットメルト粉末の
重量を100部とすると、100/203.5/1.0/47.6重量部であ
る。その後粘度調整のため、増粘剤として東亜合成株式
会社製のA−201を上記配合液中へ15部添加する。
このホットメルトのスラリーを実施例2と同一の方法
で作成されたサンプルへ脱臭剤粉末とバインダーとの合
計固形分100重量部としてホットメルト接着剤粉末が350
重量部添加されるように含浸付着乾燥した。
構造的に見れば、最外層はホットメルト粉末がバイン
ダーにて付着されたものである。
ポリプロピレン製不織布(三井石油化学工業株式会社
製 PK−103)と実施例3及び実施例2の脱臭フィルタ
ー材を130℃のアイロンで5秒間圧着し接着状態を評価
した。
熱溶着性の評価法 ○:脱臭フィルター材とポリプロピレン製不織布が熱
溶着により接着され、手で軽く引張っても簡単には剥離
されない状態 ×:全く接着されず簡単に剥げる状態 評価結果を第4表に示す。
(効果) 本発明は以上の通り従来の脱臭フィルター材に比べて
著しい特徴を有しており、脱臭材の性能は勿論のこと、
その付着も確実であり、その取り扱いもさほど注意を払
う必要がなく極めて実用価値の高いものである。
フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B01D 53/38 B01D 53/34 B01D 53/81 B01D 39/14

Claims (7)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】150メッシュ以上の活性炭及び/又はその
    他の水に不溶な脱臭剤粉末を水系バインダーに均一に分
    散させ、活性炭及び/又はその他の脱臭剤/バインダー
    の固形分比を2/1〜5/1、総固形分35%〜55%となした分
    散液を得、一方の合成樹脂ネットをバインダー内に浸漬
    し、次いで乾燥させることによって、合成樹脂ネットの
    ストランド上にバインダー被膜を予め形成し、当該合成
    樹脂ネットを前記分散液に浸漬し、これを乾燥させて得
    られることを特徴とするネット状の脱臭フィルター材。
  2. 【請求項2】合成樹脂ネットに浸漬するバインダーは分
    散液に使用する水系バインダー又はこのバインダーと接
    着性の良好なバインダーである請求項1記載の脱臭フィ
    ルター材。
  3. 【請求項3】合成樹脂ネットのストランド間隔が1.5〜7
    m/mである請求項1記載の脱臭フィルター材。
  4. 【請求項4】分散液内に、脱臭剤粉末とバインダーとの
    合計固形分を100重量部として、ホットメルト接着剤粉
    末を100〜180重量部添加した請求項1記載の脱臭フィル
    ター材。
  5. 【請求項5】合成樹脂ネットに付着され、乾燥する事に
    よって得られた脱臭剤とバインダーの層の上に、使用さ
    れた水系バインダー又はこれと接着性の良好な水系バイ
    ンダーを塗工した請求項1記載の脱臭フィルター材。
  6. 【請求項6】水系バインダー内に脱臭剤粉末とバインダ
    ーとの合計固形分を100重量部として、ホットメルト接
    着剤粉末が200〜500重量部添加されている請求項5記載
    の脱臭フィルター材。
  7. 【請求項7】ホットメルト接着剤粉末の軟化温度が60〜
    120℃である請求項4又は6記載の脱臭フィルター材。
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