JP3759204B2 - 回路図作成方法及びその装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、回路図作成方法及びその装置に関し、特に、集積回路の設計に用いられる回路図作成方法及びその装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
集積回路の設計効率化を図るため、コンピュータ・エィデット・デザイン(CAD)と呼ばれる設計支援システムが用いられる。
このシステムでは、多種多様な要素素子(たとえば抵抗、コンデンサ、ダイオード、トランジスタ、……)の情報ライブラリを有しており、設計者は、画面と対話しながら、設計対象回路に必要な要素素子の情報を取り出して画面上に配置し、それらを結線して所望の回路設計を行う。
【0003】
図21は、従来のCADの要部機能ブロックである。1は回路図設計データ(上記の情報ライブラリに相当するもの)を格納する記憶装置、2は設計者との対話機能を有する回路図エディタ、3は設計者によって作成された回路図データ(要素回路を組み合わせたもの)を格納する記憶装置、4は回路図データから所要の回路図情報(たとえば回路シミュレータで評価するためのネットリスト)を生成する回路図情報生成部、5は回路図情報を格納する記憶装置である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記従来の技術にあっては、回路図設計データ(情報ライブラリ)に各要素素子の情報しか含まれていなかったため、たとえば、作成された回路図データと実際の回路とが完全に一致しない場合(ほとんどの場合一致しない)、その差を補うための修正作業を行う必要がある。
【0005】
たとえば、要素素子を抵抗とした場合、実際の回路では、この要素素子は純粋に抵抗としてだけ機能するものではない。隣接する配線や素子又は基板との間に容量分が生じたり、もしくは基板がシリコン等の半導体材料の場合には基板との接合面にダイオードが生じたりする。
これらの不本意な容量やダイオードは、その要素素子に寄生するいわゆる寄生素子であり、プリントボートのように素子間隔の広いものでは無視し得るものであるが、集積回路のようにきわめて密集して素子がレイアウトされるものでは、回路動作に与える影響が大きく、無視できないものである。
【0006】
したがって、設計者は、自己の経験や知識等に基づいて、それぞれの要素素子の寄生素子を子細に検討し、必要な部分に寄生素子(実際は要素素子)を追加するといった修正作業を行うことになる。
かかる作業の第1の問題点は、その全てが手作業のため、設計効率の低下要因になるということである。
【0007】
また、第2の問題点は、修正作業の精度が設計者の経験や知識の深さによって決まるため、設計品質にバラツキが生じやすいということである。
そこで、本発明は、寄生素子を含む情報を自動で発生できるようにし、以って設計効率の改善を図るとともに、個人差をなくして設計品質のバラツキを抑えることを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
(a) 本発明の回路図作成方法は、回路図作成装置の第1の情報取出し手段が、様々な要素素子の情報を格納する第1の情報格納部から、作成対象回路に必要な要素素子の情報を取り出す第1のステップと、回路図作成装置の第2の情報取出し手段が、前記要素素子及びその要素素子に寄生する寄生素子を含む情報を格納する第2の情報格納部から、作成対象回路に必要な要素素子及びその要素素子に寄生する寄生素子を含む情報を取り出す第2のステップと、回路図作成装置の情報選択・採用手段が、前記第1のステップ及び第2のステップで取り出された情報の何れか一方を選択し、作成対象回路に必要な要素素子の情報として採用する第3のステップと、前記情報選択・採用手段が採用した情報に基づいて回路図を作成する第4のステップとから構成されることを特徴とするものである。
【0009】
(b) 本発明の回路図作成装置は、様々な要素素子の情報を格納する第1の情報格納部と、前記要素素子とその要素素子に寄生する寄生素子とを含む情報を格納する第2の情報格納部と、作成対象回路に必要な要素素子の情報を前記第1の情報格納部から取り出す第1の情報取出し手段と、作成対象回路に必要な要素素子及びその要素素子に寄生する寄生素子を含む情報を前記第2の情報格納部から取り出す第2の情報取出し手段と、前記第1の情報取出し手段及び前記第2の情報取出し手段で取り出された情報の何れか一方を選択し、作成対象回路に必要な要素素子の情報として採用する情報選択・採用手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0010】
(c) 又は、前記回路図作成装置()の第2の情報格納部は、1つの要素素子について、寄生素子の種類又は等価的回路構成の異なる複数の情報を格納することを特徴とし、又は、前記要素素子の情報から寄生素子の情報を導き出す計算式を保持し、前記要素素子の情報を元にして寄生素子の情報を計算で導き出すことを特徴とするものである。
以上の発明(a)〜(c)では、作成対象回路に必要な要素素子の情報が取り出され、また、該要素素子とその要素素子に関連する寄生素子とを結合した情報も取り出される。そして、これらの情報X,Yの一方が選択され、作成対象回路に必要な要素素子の情報として採用される。したがって、設計者による寄生素子の子細な検討が不要になり、また、設計者の経験や知識に頼る部分もなくなるから、設計効率及び設計品質の向上が図られる。
【0015】
ここで、前記「等価的回路構成」とは、設計回路データに対して回路動作をシミュレーションするための実回路データを指す用語である。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
(請求項1〜4に記載の発明の実施例)
図1〜図14は請求項1〜4に記載の発明に係る回路図作成方法及びその装置の一実施例を示す図である。
【0017】
まず、概念的な構成を説明する。図1において、10は第1の情報格納部、11は第2の情報格納部であり、これらの格納部は、たとえばハードディスクや磁気ディスク等の記憶装置内部に作られた、テーブルやファイル等の論理的な情報集合体である。たとえばテーブルは、それぞれの情報が所定のオフセット値で並んでおり、先頭の情報からのアドレス指定によって任意の情報を参照できるものである。また、ファイルは、キーワードやポインタ等の識別子によって情報の所在を間接的に表すことができるものである。アドレスか識別子かの違いはあるが、何れも格納された情報を一意的に識別できる点で同じである。
【0018】
第1の情報格納部10には、抵抗、コンデンサ、ダイオード、トランジスタ、……等の様々な要素素子の情報が格納されている。図では便宜的に、抵抗10a、コンデンサ10b及びダイオード10cを示してある。
抵抗10a、コンデンサ10b又はダイオード10cの各情報は、アドレス指定又はキーワードやポインタによって一意的に識別が可能で、それぞれ、概念的に示す線12a、12b、12cを介して選択的に取り出し可能になっている。
【0019】
第2の情報格納部11には、要素素子とその要素素子に寄生する寄生素子とを含む情報が格納されている。図では便宜的に、抵抗+寄生素子(コンデンサ)11a、コンデンサ+寄生素子(ダイオード)11bを示してある。
抵抗+寄生素子11a、コンデンサ+寄生素子11bの各情報は、アドレス指定又はキーワードやポインタによって一意的に識別が可能で、それぞれ、概念的に示す線13a、13bを介して選択的に取り出し可能になっている。
【0020】
また、第1の情報格納部10と第2の情報格納部11との間は、概念的な線14a、14bで示すように、要素素子の共通する情報同士が結ばれており、一方の情報を参照すると、線14a又は14bで結ばれた他方の情報も、自動的に参照できるようになっている。こうした情報の連結は、たとえば関連付けテーブルを備えることによって実現できる。
【0021】
15は作成対象回路に必要な要素素子の情報を、線12a、12b、12cを介して第1の情報格納部から取り出す第1の取出し手段であり、また、16は作成対象回路に必要な要素素子及びその要素素子に寄生する寄生素子の情報を、線13a、13bを介して第2の情報格納部11から取り出す第2の情報取出し手段である。これらの第1及び第2の情報取出し手段15、16は、たとえば、設計者によって入力されたコードに対応した情報を取り出すようなものであってもよい。
【0022】
17は第1の情報取出し手段15及び第2の情報取出し手段16によって取り出された各情報の一方を選択し、それを作成対象回路に必要な要素素子の情報として採用する選択・採用手段であり、この選択・採用手段17は、たとえば、設計者によって入力された選択指示に応答して、何れか一方の情報を選択するようなものであってもよい。
【0023】
ここで、図2〜図5は、要素素子の情報例及び寄生素子を含む要素素子の情報例である。図2は要素素子を抵抗とした場合の例、図3は要素素子をコンデンサとした場合の例、図4は要素素子をバイポーラトランジスタとした場合の例、図5は要素素子をMOSトランジスタとした場合の例である。
図2では、2分割された抵抗(要素素子)の接続点に、寄生素子(ダイオード又はコンデンサ)の一端がつながり、寄生素子の他端はグランド又は任意の電位(電源電位VCCや島電位)につながっている。また、図3では、コンデンサ(要素素子)の一端側に、寄生素子(ダイオード又はコンデンサ)の一端がつながり、寄生素子の他端は基板SUBにつながっている。また、図4では、バイポーラトランジスタ(要素素子)のエミッタ電極E、ベース電極B又はコレクタ電極Cに、寄生素子(バイポーラトランジスタ又はダイオード)がつながり、寄生素子はさらに、グランド又は任意の電位(例えば島電位)につながっている。また、図5では、MOSトランジスタ(要素素子)のゲート又はバックゲートBGに、寄生素子(抵抗又はダイオード)の一端がつながり、寄生素子の他端は入力信号源、グランド又は任意の電位(例えば電源電位)につながっている。なお、図2〜図5で示した寄生素子の種類やその寄生素子の接続パターンは、あくまでも代表例を示すものであり、本発明は、これらの例示に限定されるものではない。
【0024】
すなわち、単に、要素素子に寄生する寄生素子といっても、その接続パターンは1種類にとどまらず、電源の数や要素素子のレイアウト位置、プロセス、周囲の回路状況等、様々な要因によっては、多種多様なパターンが発生することがある。図1の情報11a(又は11b)は、その情報の一つ一つが積み重ねられた複数の矩形で表してある。1つの矩形は1つの接続パターンに対応する。もちろん、1つの要素素子に対して、1つの接続パターンしか存在しない場合もある。また、全くパターンが存在しない場合もある。前者の場合には、図1の情報11a(又は11b)の矩形を1つにすればよいし、後者の場合には、矩形そのものをなくせばよい。何れにしても、第2の情報格納部11内の情報を管理することによって、如何なるパターンにも柔軟に対応することができる。
【0025】
このような構成において、たとえば、設計対象回路として、図6に示すような簡単な回路を想定してみる。この回路は、交流電源(又は交流信号)を脈流に変換する、いわゆる半波整流回路(RECTIFIER)であり、その要素素子は、交流電圧又は交流信号発生用の交流発生源(VS)、整流用のダイオード(D1)、RC時定数回路を構成する抵抗(RS)及びコンデンサ(C1)、そして、ブリーダ用の抵抗(RC)である。
【0026】
設計者は、CAD画面と対話しながら、これらの要素素子の情報を第1の情報格納部10から取り出すが、本実施例では、それぞれの要素素子に関連付けられた、要素素子と寄生素子とを含む情報が第2の情報格納部11に格納されている場合、その情報が取り出されるようになっている。
図7は、第2の情報格納部11から取り出された情報(破線で囲まれた部分)を含む回路図データである。
【0027】
図6と図7を見比べると、RS、C1及びRCが第2の情報格納部11から取り出された情報で置換されている。なお、RS、C1、RCに付したダッシュ(’)は、置換後の要素素子であることを表している。RS’は、RSの1/2の値を有する2つの抵抗RS1、RS2と、RS1、RS2の接続点とグランド間に接続されたコンデンサCPとを含み、コンデンサCPが実際の回路でRSに寄生する寄生素子である。また、C1’は、C1と同じ値のコンデンサC2と、一端がC2側に他端がグランド側に接続されたダイオードDP1とを含み、ダイオードDP1が実際の回路でC1に寄生する寄生素子である。さらに、RC’は、RCの1/2の値を有する2つの抵抗RC1、RC2と、RC1、RC2の接続点と電源間に接続されたダイオードDP2とを含み、ダイオードDP2が実際の回路でRCに寄生する寄生素子である。
【0028】
したがって、本実施例によれば、作成対象回路に必要な要素素子を指定すると、その要素素子に関連付けられた情報(寄生素子を含む情報)がある場合には、自動的に、その要素素子の情報と寄生素子を含む情報とが置換されるから、実際の回路に一致した回路図データをきわめて手軽にかつ効率よく作成することができる。
【0029】
ところで、以上の自動置換は、1つの要素素子について、寄生素子を含む情報が1つしかない場合には有効であるが、寄生素子を含む情報が複数ある場合には、何等かの工夫が必要になる。たとえば、設計者によって選択できるようにしてもよいし、又は、複数の情報に優先度を付けておき、最も優先度の高いものを自動置換の候補としてもよい。優先度方式の場合、自動置換の結果が思わしくないときには、手動で選択できるようにしておき、その選択結果を優先度に反映させるようにするのが望ましい。
【0030】
なお、図8、図9は、図6、図7に対応した実際の回路図データであり、図8は要素素子だけの回路図データ、図9は寄生素子(※印)を含む回路図データ(すなわち実際の回路に一致するもしくは近い回路図データ)である。
本実施例では、寄生素子を含まない回路図データ(図6の回路図データ)と、第1の情報格納部10及び第2の情報格納部11内のデータとを管理するだけでよく、言い替えれば、寄生素子を含む回路図データ(図7の回路図データ)を管理しなくてもよく、データの管理容易化を図ることができる。これは、寄生素子を含む回路図データ(図7の回路図データ)と、寄生素子を含まない回路図データ(図6の回路図データ)とが、共通の要素素子同士で関連付けられているからである。たとえば、図8の回路図データ(要素素子だけの回路図データ)を作成するには、第1の情報格納部10から所望の要素素子の情報を取り出せばよいし、又は、図9の回路図データ(寄生素子を含む回路図データ)を作成するには、第2の情報格納部11から所望の寄生素子を含む要素素子の情報を取り出せばよい。
【0031】
図10は、要素素子のいくつかの定義例であり、同図(a)(b)は抵抗の例、同図(c)(d)はコンデンサの例である。図中のN1、N2はノード名、「R」、「RP」、「C」及び「CP」はそれぞれ要素素子の名称である。なお、’#0:’直後のアルファベットは、要素素子の種類を表し、それ以降の文字又は数値はその要素素子のパラメータのディフォルト値を表している。
【0032】
図11は図10のデータを元にして作成された一例の回路図、図12は図11の回路図のリスト出力(但し、寄生素子出力のオプション指定をしない場合)、図13は同じく図11の回路図のリスト出力(但し、寄生素子出力のオプション指定をした場合)である。
図11において、抵抗R01、R02及びコンデンサC01、C02には、それぞれ「R」と「C」が使用されている。また、抵抗R03、R04及びコンデンサC03には、それぞれ「RP」と「CP」が使用されている。「R」、「C」、「RP」及び「CP」は、図10(a)〜(d)の各要素素子である。ここで、抵抗R02の抵抗値(パラメータ#0)には、具体的な値(たとえば5.5K(Ω))が指定されているが、抵抗R01、R03及びR04には具体的な値は指定されていない。本実施例では、未指定の場合、所定のディフォルト値を指定したものと看做される。図10(a)のパラメータ#0の1.7K(Ω)は「R」のディフォルト値、同図(b)のパラメータ#0の1.7K(Ω)は「RP」のディフォルト値、同図(c)のパラメータ#0の0.7P(F)は「C」のディフォルト値、同図(d)のパラメータ#0の0.7P(F)は「CP」のディフォルト値である。
【0033】
すなわち、図12において、R01、R03及びR04の抵抗値はディフォルト値(1.7K)に自動設定され、また、C01、C03の容量値もディフォルト値(0.7P)に自動設定されている。
図12は、寄生素子出力のオプション指定をしない場合のリストであるが、このリストはオプション指定によって、図13のように変化する。枠で囲んだ部分が大きく変わったところである。要部イは、抵抗R03の要素素子に関する部分である。R03HとR03Lの2つの抵抗からなり、これらの抵抗は共通のノード(ノード1000)でつながっている。抵抗値はそれぞれ0.85K(Ω)であり、これらを足し合わせた値がR03の抵抗値(1.7K)になる。
【0034】
要部ロは、抵抗R04の要素素子に関する部分である。R04HとR04Lの2つの抵抗からなり、これらの抵抗は共通のノード(ノード1001)でつながっている。抵抗値はそれぞれ0.85K(Ω)であり、これらを足し合わせた値がR04の抵抗値(1.7K)になる。
要部ハは、抵抗R03の寄生素子に関する部分である。CR03の頭の1文字は寄生素子の種類(ここではCであるからコンデンサ)を表している。この寄生素子CR03は、ノード1000とノード0(グランド)につながっており、ノード1000はR03HとR03Lの接続ノードである。CR03の値はこの例の場合0.321P(F)である。なお、この値(0.321P)は、図10(b)内の計算式(後述の式(1)参照)によって与えられたものである。
【0035】
要部ニは、コンデンサC03の寄生素子に関する部分である。DC03の頭の1文字は寄生素子の種類(ここではDであるからダイオード)を表している。この寄生素子DC03は、ノード0(グランド)とノード4につながっており、ノード4は端子AGNDである。DC03の値は変数DCSで表されており、この変数DCSには、同リストの下から5行目に記載されているように、飽和電流ISの具体的な値が代入されている。
【0036】
要部ホは、抵抗R04の寄生素子に関する部分である。DR04の頭の1文字は寄生素子の種類(ここではDであるからダイオード)を表している。この寄生素子DR04は、ノード1001とノード1につながっており、ノード1001はR04HとR04Lの接続ノード、ノード1は端子M0である。DR04の値は、DC03と同じ変数DCSで表されている。
【0037】
以上の実施例では、1つの要素素子に寄生するすべての寄生素子の情報を第2の情報格納部11に格納しているが、情報量の点で見た場合、最善とは言えない。集積回路の場合、抵抗値や容量値はある範囲の中で任意に設計できるため、それぞれの値ごとに寄生素子の情報を保持すると、情報量が膨大なものになってしまうからである。この対策としては、それぞれの値ごとに寄生素子の情報を持つのではなく、代表的な1つの情報だけを保持し、この情報を元にして計算によって必要な情報を導き出すようにすればよい。
【0038】
たとえば、抵抗に寄生するコンデンサの場合の計算式として、次式(1)を使用することができる。
F=(2.4+R/100)×0.002 ……(1)
但し、Fは容量値(単位;ピコファラッド)、Rは抵抗値(Ω)である。なお、各係数の値(2.4、100、0.002)は、経験上又は実験から求められた値であり、これらの値に臨界的な意味はない。すなわち、これらの値と異なる値を係数とする計算式を排除するものではない。
【0039】
また、上式(1)に、抵抗の幅、シート抵抗値及び単位面積当たりの容量値等のパラメータを定数や変数として含ませてもよい。寄生素子の容量値は、要素素子の面積に比例し、該面積は抵抗値や容量値に依存するとともに、抵抗の幅、シート抵抗値(抵抗の種類によって異なる)及び単位面積当たりの容量値(容量の種類によって異なる)にも依存するからである。したがって、これらのパラメータを付加することにより、より正確に寄生素子を見積もることができ、たとえば、シミュレーション精度の向上を図ることができる。
【0040】
また、第2の情報格納部11に格納する情報に、要素素子の構成方法に関する情報を含ませてもよい。たとえば、抵抗を例にすると、仮に10KΩの抵抗であっても、その構成方法としては、図14に示すように、5KΩ×2本の直列構成や、20KΩ2本の並列構成など種々のものがあり、それぞれの構成方法で寄生素子の値が微妙に異なってくる。したがって、かかる構成方法も情報に加味しておけば、より一層正確な回路図データ作成を行うことができるから望ましい。
【0041】
さらに、一つの回路図から、集積回路のレイアウトに使用する回路(要素素子のみで構成される回路)と、シミュレーション等で回路動作を検討するときに使用する回路(要素素子とその要素素子に関連する寄生素子とを含む回路)とを選択的に作成できるので、回路の一元管理ができ、回路図の品質が向上する。
の実施例)
図15〜図20はの回路図作成方法及びその装置の一実施例を示す図である。
【0042】
まず、概念的な構成を説明する。図15において、20は第1の情報格納部、21は第2の情報格納部、22は第3の情報格納部であり、これらの格納部は、たとえばハードディスクや磁気ディスク等の記憶装置内部に作られた、テーブルやファイル等の論理的な情報集合体である。たとえばテーブルは、それぞれの情報が所定のオフセット値で並んでおり、先頭の情報からのアドレス指定によって任意の情報を参照できるものである。また、ファイルは、キーワードやポインタ等の識別子によって情報の所在を間接的に表すことができるものである。アドレスか識別子かの違いはあるが、何れも格納された情報を一意的に識別できる点で同じである。
【0043】
第1の情報格納部20には、抵抗、コンデンサ、ダイオード、トランジスタ、……等の様々な要素素子の情報が格納されている。図では便宜的に、抵抗20a、コンデンサ20b及びダイオード20cを示してある。
抵抗20a、コンデンサ20b又はダイオード20cの各情報は、アドレス指定又はキーワードやポインタによって一意的に識別が可能で、それぞれ、概念的に示す線23a、23b、23cを介して選択的に取り出し可能になっている。
【0044】
第2の情報格納部21には、「配線」に寄生する配線容量や配線抵抗の情報が格納されている。ここで、「配線」とは、作成対象回路上の要素素子同士、又は、要素素子と外部入出力との間を繋ぐ線路であり、図では、配線の等価的回路構成のいくつかの例、例えば、配線抵抗だけを含むもの(以下、配線抵抗21a)、配線容量だけを含むもの(以下、配線容量21b)、配線抵抗と配線容量の双方を含むもの(以下、配線抵抗+配線容量21c)が便宜的に示されている。
【0045】
配線抵抗21a、配線容量21b、及び、配線抵抗+配線容量21cの各情報は、アドレス指定又はキーワードやポインタによって一意的に識別が可能で、それぞれ、概念的に示す線24a、24b、24cを介して選択的に取り出し可能になっている。
第3の情報格納部22には、配線容量や配線抵抗の基本値に関する情報が格納されており、この情報は、例えば、次式(2)、(3)のAC 、BC 、CC 、A、R 、BR 、CR に相当する値である。
【0046】
C=AC ×NE +BC ×NP +CC ×NO ………(2)
R=AR ×NE +BR ×NP +CR ×NO ………(3)
式(2)、(3)において、Cは配線容量の値、Rは配線抵抗の値、NE は配線につながる要素素子の数、NP は配線につながるページターミナルの数、NO は配線につながる外部端子の数である。すなわち、AC は要素素子1個当たりの基本容量値、BC はページターミナル1個当りの基本容量値、CC は外部端子1個当たりの基本容量値であり、また、AR は要素素子1個当たりの基本抵抗値、BR はページターミナル1個当りの基本抵抗値、CR は外部端子1個当たりの基本抵抗値である。以下、第3の情報格納部22に格納された情報を便宜的にAC 、BC 、CC 、AR 、BR 、CR とするが、これに限定されない。要は、配線の接続情報(要素素子数、ページターミナル数及び外部端子数等)によって参照可能な、配線容量や配線抵抗の基本値であればよい。第3の情報格納部22内のAC 、BC 、CC 、AR 、BR 、CR の組は、アドレス指定又はキーワードやポインタによって一意的に識別が可能であり、概念的に示す線25は、配線の接続情報に応じて選択的に取り出された情報、すなわち、AC 、BC 、CC 、AR 、BR 又はCR を表している。
【0047】
26は作成対象回路に必要な要素素子の情報を、線23a、23b、23cを介して第1の情報格納部20から取り出す第1の取出し手段であり、また、27は作成対象回路上の配線の配線容量や配線抵抗に関する情報を、線24a、24b、24cを会して第2の情報格納部21から取り出すと共に、これらの配線容量や配線抵抗の値を特定するための基本値を、線25を介して第3の情報格納部22から取り出す第2の情報取出し手段である。これらの第1及び第2の情報取出し手段26、27は、たとえば、設計者によって入力されたコードに対応した情報を取り出すようなものであってもよい。
【0048】
28は選択・採用手段であり、この選択・採用手段28は、第1の情報取出し手段26の出力だけを選択する第1の選択モードと、第1の情報取出し手段26の出力と第2の情報取出し手段27の出力の双方を選択する第2の選択モードとを備えている。すなわち、選択・採用手段28は、たとえば、設計者によって入力された選択指示に応答して第1の選択モードを実行すると、作成対象回路に必要な要素素子の情報だけを出力し、又は、第2の選択モードを実行すると、作成対象回路に必要な要素素子の情報に加えて、作成対象回路上の配線の配線容量や配線抵抗の情報を出力するものである。
【0049】
ここで、図16は、配線容量や配線抵抗の情報例である。図において、30は配線であり、31〜33はこの配線30の等価的回路構成である。すなわち、31は配線抵抗のみの情報、32は配線容量のみの情報、33は配線抵抗と配線容量の双方を含む情報である。なお、これらの等価的回路構成はあくまでも代表的な例であり、これらの例に限定されるものではない。単に配線に寄生する配線容量や配線抵抗と言っても、その等価的回路構成は、電源の数、要素素子のレイアウト位置、プロセス、周囲の回路状況等の、様々な要因によって多種多様なパターンに変化することがあるからである。図15の情報21a(又は21b、21c)は、その情報の一つ一つが積み重ねられた複数の矩形で表してある。1つの矩形は1つのパターンに対応する。もちろん、1つの配線に対して、1つのパターンしか存在しない場合もある。また、全く存在しない場合もある。前者の場合には、図15の情報21a(又は21b、21c)の矩形を1つにすればよいし、後者の場合には、矩形そのものをなくせばよい。また、第3の情報格納部22においても、AC 、BC 、CC 、AR 、BR 、CR の組は、その情報の一つ一つが積み重ねられた矩形で表してあり、これについても、第2の情報格納部21と同様なことが言える。何れにしても、第2の情報格納部21内の情報や第3の情報格納部22内の情報を管理することによって、如何なるパターンにも柔軟に対応することができる。
【0050】
このような構成において、たとえば、設計対象回路として、図17に示すような簡単な回路を想定してみる。この回路は、VCC、VEEを定電圧源とし、VINを入力信号源とする差動増幅回路であり、必要な要素素子は、三つの電源(VCC、VEE、VIN)と、四つのバイポーラトランジスタ(Q1、Q2、Q3、Q4)と、四つの抵抗(RC1、RC2、RS2、RBIAS)である。
【0051】
設計者は、CAD画面と対話しながら、これらの要素素子の情報を第1の情報格納部20から取り出すが、本実施例では、要素素子を繋ぐ配線に寄生する配線容量や配線抵抗の情報が、第2の情報格納部21及び第3の情報格納部22に格納されている場合、その情報も取り出されるようになっている。
図18は、第2の情報格納部21及び第3の情報格納部22から取り出された情報(破線で囲まれた部分)を含む回路図データである。
【0052】
図17と図18を見比べると、CP2、CP3、CP4、CP5、CP6及びCP7が配線容量として付加されている。
第2の情報取り出し手段27は、第1の情報取り出し手段26で得られた要素素子間の配線の接続情報を基に、情報選択・採用手段28で指定された項目を参照し、必要な情報を取り出す。例えば、配線抵抗や配線容量を発生させる配線が、図18に示すように接地と電源に繋がらない配線で、かつ、配線容量のみを発生させるように指定すると、第1の情報取り出し手段26で得られた情報から、それに該当する配線を選択・認識し、それに合った情報を第2の情報格納部21又は第3の情報格納部22から取り出すようにしてもよい。すなわち、配線抵抗や配線容量を付加するノードの属性を、第1の情報取り出し手段26で得られた配線の接続情報から判断し、情報選択・採用手段28で指定される情報に従って各々の属性に対し、どのような配線抵抗、配線容量を発生させるかを第2の情報格納部21又は第3の情報格納部22の情報から求めるようにしてもよい。
【0053】
したがって、本実施例によれば、作成対象回路に必要な要素素子を指定し、回路上でその要素素子を繋ぐ配線に関連付けられた情報(配線容量や配線抵抗の情報)がある場合には、自動的に、その配線容量や配線抵抗の情報が付加されるから、実際の回路に一致した回路図データをきわめて手軽にかつ効率よく正確に作成することができる。
【0054】
配線抵抗や配線容量を発生させるノードの属性は、情報選択・採用手段28で指定することができる。情報選択・採用手段28での指定の仕方により、第2の情報格納部21の情報だけでも、あるいは、第3の情報格納部22の情報の両方からでも、配線抵抗や配線容量を自動的に発生させることができる。
ところで、以上の自動置換は、1つの配線について、配線容量や配線抵抗の情報が1つしかない場合には有効であるが、配線容量や配線抵抗の情報が複数ある場合には、何等かの工夫が必要になる。たとえば、設計者によって選択できるようにしてもよいし、又は、複数の情報に優先度を付けておき、最も優先度の高いものを自動置換の候補としてもよい。優先度方式の場合、自動置換の結果が思わしくないときには、手動で選択できるようにしておき、その選択結果を優先度に反映させるようにするのが望ましい。
【0055】
なお、図19、図20は、図17、図18に対応した実際の回路図データであり、図19は要素素子だけの回路図データ、図20は配線容量や配線抵抗を含む回路図データ(すなわち実際の回路に一致するもしくは近い回路図データ)である。
本実施例では、配線容量や配線抵抗を含まない回路図データ(図17の回路図データ)と、第1の情報格納部20、第2の情報格納部21及び第3の情報格納部22内のデータとを管理するだけでよく、言い替えれば、配線容量や配線抵抗を含む回路図データ(図18の回路図データ)を管理しなくてもよく、データの管理容易化を図ることができる。これは、配線容量や配線抵抗を含む回路図データ(図18の回路図データ)と、配線容量や配線抵抗を含まない回路図データ(図17の回路図データ)とが、回路上の配線の情報で関連付けられているからである。たとえば、図17の回路図データ(要素素子だけの回路図データ)を作成するには、第1の情報格納部20から所望の要素素子の情報を取り出せばよいし、又は、図18の回路図データ(配線容量や配線抵抗を含む回路図データ)を作成するには、第2の情報格納部21及び第3の情報格納部22から所望の配線容量や配線抵抗の情報を取り出すとともに、第1の情報格納部20から所望の要素素子の情報を取り出して両者を連結すればよい。
【0056】
図19は、要素素子のみのリストであるが、このリストは配線容量や配線抵抗の付加オプションを指定することによって、図20のように変化する。破線枠で囲んだ部分が大きく変わったところであり、ここでは、配線容量CP2〜CP7が付加されている。
配線抵抗や配線容量を付加するノードの属性は、接続する要素素子の種類や数等であり、回路構成を示すネットリストから自動的に求められるので、属性ごとの配線容量や配線抵抗の基本値を保持(第3の情報格納部22)しておけば、ノードの属性を指定するだけでそのノードに付加する配線容量や配線抵抗の値を特定できる。
【0057】
例えば、CP2〜CP7の値は、以下のようにして求めることができる。
CP2=0.02×2 =0.04pF
CP3=0.02×2 =0.04pF
CP4=0.02×2 =0.04pF
CP5=0.02×2 =0.04pF
CP6=0.02×3 =0.06pF
CP7=0.02×3+0.2 =0.26pF
但し、0.02は要素素子1個当たりの基本容量値、×2や×3はそのノードに接続する要素素子の数、+0.2は外部端子1個当たりの基本容量値である。
【0058】
【発明の効果】
請求項1〜4記載の発明によれば、作成対象回路に必要な要素素子の情報とともに、その要素素子に関連する寄生素子を含む情報が取り出される。そして、これらの情報の一方が選択され、作成対象回路に必要な要素素子の情報として採用される。
【0059】
したがって、設計者による寄生素子の子細な検討が不要になり、また、設計者の経験や知識に頼る部分もなくなるから、設計効率及び設計品質の向上を図ることができる
【図面の簡単な説明】
【図1】請求項1〜4記載の発明の一実施例の要部概念構成図である。
【図2】請求項1〜4記載の発明の一実施例の要素素子(抵抗)及びその要素素子と寄生素子とを含む情報概念図である。
【図3】請求項1〜4記載の発明の一実施例の要素素子(コンデンサ)及びその要素素子と寄生素子とを含む情報概念図である。
【図4】請求項1〜4記載の発明の一実施例の要素素子(バイポーラトランジスタ)と寄生素子とを含む情報概念図である。
【図5】請求項1〜4記載の発明の一実施例の要素素子(MOSトランジスタ)と寄生素子とを含む情報概念図である。
【図6】請求項1〜4記載の発明の一実施例の作成対象回路の一例回路図である。
【図7】図6の一部の要素素子を寄生素子を含む情報で置換した回路図である。
【図8】図6に対する設計図データのリスト図である。
【図9】図7に対する設計図データのリスト図である。
【図10】請求項1〜4記載の発明の一実施例の回路図設計データの概念図である。
【図11】図10のデータを元にして作成された一例の回路図である。
【図12】寄生素子を含まない設計図データのリスト図である。
【図13】寄生素子を含む設計図データのリスト図である。
【図14】要素素子の様々な構成例を示す図である。
【図15】 他の回路図作成方法及びその装置の一実施例の要部概念構成図である。
【図16】配線容量や配線抵抗の情報例を示す概念図である。
【図17】配線容量や配線抵抗を含まない回路図である。
【図18】配線容量や配線抵抗を含む回路図である。
【図19】配線容量や配線抵抗を含まないリスト図である。
【図20】配線容量や配線抵抗を含むリスト図である。
【図21】従来例の概略ブロック図である。
【符号の説明】
10:第1の情報格納部
10a〜10c:要素素子の情報
11:第2の情報格納部
11a、11b:寄生素子を含む情報
15:第1の情報取出し手段
16:第2の情報取出し手段
17:情報選択・採用手段
20:第1の情報格納部
21:第2の情報格納部
21a〜21c:配線容量や配線抵抗の情報
22:第3の情報格納部
26:第1の情報取出し手段
27:第2の情報取出し手段
28:情報選択・採用手段

Claims (4)

  1. 回路図作成装置の第1の情報取出し手段が、様々な要素素子の情報を格納する第1の情報格納部から、作成対象回路に必要な要素素子の情報を取り出す第1のステップと、
    回路図作成装置の第2の情報取出し手段が、前記要素素子及びその要素素子に寄生する寄生素子を含む情報を格納する第2の情報格納部から、作成対象回路に必要な要素素子及びその要素素子に寄生する寄生素子を含む情報を取り出す第2のステップと、
    回路図作成装置の情報選択・採用手段が、前記第1のステップ及び第2のステップで取り出された情報の何れか一方を選択し、作成対象回路に必要な要素素子の情報として採用する第3のステップと、
    前記情報選択・採用手段が採用した情報に基づいて回路図を作成する第4のステップとから構成されることを特徴とする回路図作成方法。
  2. 様々な要素素子の情報を格納する第1の情報格納部と、
    前記要素素子とその要素素子に寄生する寄生素子とを含む情報を格納する第2の情報格納部と、
    作成対象回路に必要な要素素子の情報を前記第1の情報格納部から取り出す第1の情報取出し手段と、
    作成対象回路に必要な要素素子及びその要素素子に寄生する寄生素子を含む情報を前記第2の情報格納部から取り出す第2の情報取出し手段と、
    前記第1の情報取出し手段及び前記第2の情報取出し手段で取り出された情報の何れか一方を選択し、作成対象回路に必要な要素素子の情報として採用する情報選択・採用手段とを備えたことを特徴とする回路図作成装置。
  3. 前記第2の情報格納部は、1つの要素素子について、寄生素子の種類又は等価的回路構成の異なる複数の情報を格納することを特徴とする請求項2記載の回路図作成装置。
  4. 前記第2の情報格納部は、前記要素素子の情報から寄生素子の情報を導き出す計算式を保持し、前記要素素子の情報を元にして寄生素子の情報を計算で導き出すことを特徴とする請求項2記載の回路図作成装置
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