JP3758945B2 - 電解水生成装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、塩水を電気分解して酸性水およびアルカリ性水を生成する電解水生成装置、特にその電源装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種の電解水生成装置としては、隔膜にて区画された各画室に配設した電極に直流電圧を印加し、各画室を通る食塩水を電気分解して酸性水およびアルカリ性水を生成するものがある。このような電気分解法では、電気分解を連続して行うと各電極にカルシウム等の塩または水酸化物等のスケールが析出して電解電流を低下させまた電極を劣化させるという問題があるので、各電極に印加する直流電圧の極性を正逆切り替えるようにしてこのような問題を防止している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし極性を切り替えたときには、各電極に極性切替え前の電荷がしばらくは残留するので、極性の切替え後に通電した際には、両電極間に流れる電解槽電流は瞬間的に大きな突入電流を生じた後に定常的な値となり、この突入電流が電極に衝撃を与えて劣化させまたは損傷するという問題がある。
【0004】
電圧印加直後に生じる電極への突入電流は、電極に印加する直流電圧の極性の正逆切り替え時だけでなく、電解水生成装置の電源投入時にも生じ(図3の電解槽電流(=電源電流)I4 参照)、これによる劣化および損傷によっても電極板の寿命は短縮される。ここでいう寿命とは、生成される電解水の能力が低下して所定の範囲から外れるようになるまでの時間を意味し、対象となる能力は、例えば飲料・調理用電解水であればpH値およびORP(酸化還元電位)値であり、食塩添加タイプの除菌洗浄用電解水ではpH値、ORPおよび有効塩素濃度(mg/L)である。有効塩素濃度を基準とした場合における従来の通常の電解水生成装置の電極板の寿命は、図4の特性Bに示すように、例えば1500時間程度である。
【0005】
本発明はこのような問題を解決して、電解水生成装置の電源投入時および各電極に印加する直流電圧の極性正逆切り替え時における電極板への突入電流を減少させて電極板の寿命を増大させることを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
このために、本発明による電解水生成装置は、電解槽のケーシング内を隔膜により2つの電解室に仕切るとともに各電解室内にそれぞれ電極板を配設し、この両電極板を直流電源に接続して直流電圧を印加し、この直流電圧により前記各電解室内を通る塩水を電気分解して電解水を生成する電解水生成装置において、前記直流電源は自己フェイルセーフ機能付きのものとし、前記両電極板の間にキャパシタを接続したことを特徴とするものである。
【0007】
前項の発明のキャパシタは直流電源の内部に設けてもよい。
【0008】
前2項の発明の電解槽は、電解槽内の塩水を排出した場合でも、ケーシング内に両電極板の一部が浸る程度の塩水が残留するように構成することが好ましい。
【0009】
【発明の実施の形態】
先ず図1および図2に示す第1の実施の形態により、本発明の説明をする。図1に示すように、この実施の形態による電解水生成装置の電解槽10は、ケーシング11内を隔膜12により2つの電解室R1,R2に仕切るとともに各電解室R1,R2内にそれぞれ電極板13,14を配設したものであり、各電解室R1,R2の下部および上部にはそれぞれポート15a,15bおよび16a,16bが形成されている。
【0010】
各電解室R1,R2の下部ポート15a,16aには、塩化ナトリウム、塩化カリウム等の塩の希薄な水溶液(以下単に塩水または希食塩水と言う)を導入する希塩水導入管20の2つに分岐された先端部が接続され、また各電解室R1,R2の上部ポート15b,16bには、生成された電解水(酸性水およびアルカリ性水)を注出する注出管21,22が接続されている。この実施の形態では各電極板13,14の下部は、各ケーシング11の各下部ポート15a,16aを形成した位置より下方まで延びており、希塩水導入管20に設けた排出弁27によりケーシング11内の希食塩水を排出した場合でも希食塩水の水位は両下部ポート15a,16aの下縁を結ぶレベルL以下には下がらず、したがって両電極板13,14の下部の一部が浸る程度の希食塩水が残留するように構成されている。
【0011】
各電極板13,14は給電線31,32を介して直流電源30に接続されて直流電圧が印加され、両電極板13,14の間にはキャパシタ33が接続されている。この直流電源30は自己フェイルセーフ機能付きのもので、図2に示すしきい値Tを越える過電流が流れると出力電圧を降下させるものであり、電源スイッチ36を介して通常の交流電源35に接続されている。
【0012】
上述した第1の実施の形態の実施の形態の電解水生成装置では、希塩水導入管20から各電解室R1,R2内に希食塩水を供給した後に電源スイッチ36を投入して両電極板13,14に直流電圧を印加する。各電解室R1,R2内に供給された希食塩水は印加される直流電圧により電気分解され、陽極となる電極板(例えば13)側には酸性水が生成され、陰極となる電極板(例えば14)側にはアルカリ性水が生成され、各電解水はそれぞれ注出管21,22により注出されて使用箇所に供給される。
【0013】
上述のように電源スイッチ36を投入した際には、図2に示すように、先ず一時的にキャパシタ33に大きなキャパシタ電流I1 が流れ、これと両電極板13,14の間に流れる電解槽電流I2 の和である電源電流I3 が一時的に上述したしきい値Tを越え、これにより前述したような自己フェイルセーフ機能付きの直流電源30の電圧Vはキャパシタ33がない場合に比して一時的に低下するので、図2に示すようにゆっくりと立ち上がる。したがってその間に生じる電極板13,14への突入電流も、このようなキャパシタ33のない従来技術の電解槽電流(=電源電流)I4 (図3参照)に比して減少する。なおキャパシタ33の容量は、キャパシタ電流I1 の持続時間が、従来技術の電極板への突入電流の持続時間より長くなるような値(例えば220マイクロファラッド)とする。
【0014】
この実施の形態によれば、上述のように電源スイッチ36投入の際に両電極板13,14の間に流れる突入電流が従来に比して減少するので、この突入電流による電極板13,14の劣化および損傷は減少する。そしてこの実施の形態の場合における有効塩素濃度を基準とした電極板13,14の寿命は、図4の特性Aに示すように、3000時間程度となり、図4の特性Bに示す従来技術の場合の2倍程度に増大する。そしてこれに必要なのは低コストで入手できるキャパシタ33だけである。
【0015】
なおキャパシタ33は、図1の破線33Aに示すように直流電源30に内蔵させてもよく、そのようにすれば電解水生成装置を設置する際にキャパシタ33を接続する必要がないので、設置現場における配線作業が簡略化される。
【0016】
次に図5により第2の実施の形態の説明をする。この第2の実施の形態は、電解槽10および希塩水導入管20は第1の実施の形態と同一であり、電解槽10で生成された電解水の注出系統と電極板13,14への給電系統が相違しているだけであるので、主としてこの相違点につき説明し、その他の構成および作用効果の記載は省略する。
【0017】
先ず電極板13,14への給電系統の説明をする。直流電源30は第1の実施の形態と同様、電源スイッチ36を介して通常の交流電源35に接続された自己フェイルセーフ機能付きのものであり、各電極板13,14は給電線31,32および切換スイッチ34を介して直流電源30に接続されて直流電圧が印加され、両給電線31,32の間には第1の実施の形態と同じキャパシタ33が接続されている。切換スイッチ34は制御装置38により作動され、所定のシーケンスにしたがって各電極板13,14に印加する直流電圧の極性を正逆切り替えるようになっている。この極性の切替えは制御装置38に内蔵されるタイマに基づき行われるが、この実施の形態では電解水生成装置の運転中に切替え時間に到達しても運転が終了するまでは切替えはなされず、次回の運転開始時に切替えがなされるようになっている。なおキャパシタ33は、第1の実施の形態と同様、直流電源30に内蔵させることは可能である。
【0018】
次に電解水の注出系統の説明をする。各電解室R1,R2の上部ポート15b,16bに接続された各注出管21,22は、電磁切換弁25,26を介して注出管21,22に接続されている。各電磁切換弁25,26は切換スイッチ34と連動して制御装置38により切り替えられる。すなわち、電極板13が陽極で電極板14が陰極となるように切換スイッチ34が切り替えられているときは、電極板13側である導出管23が注出管21に接続されるとともに電極板14側である導出管24が注出管22に接続され、また電極板13が陰極で電極板14が陽極となるように切換スイッチ34が切り替えられているときは、電極板13側である導出管23が注出管22に接続されるとともに電極板14側である導出管24が注出管21に接続されるように、各電磁切換弁25,26は切換スイッチ34と連動して制御装置38により切り替えられる。これにより注出管21は常に電解槽10の陽極側に接続されるので、注出管21からは常に酸性水が注出されて使用箇所に供給され、また注出管22は常に電解槽10の陰極側に接続されるので、注出管22からは常にアルカリ性水が注出されて使用箇所に供給される。
【0019】
初めて電源スイッチ36を投入した際には、第1の実施の形態の場合と同様、両電極板13,14の間に流れる突入電流も、このようなキャパシタ33のない従来技術の電解槽電流に比して減少する。また前述したように、電解水生成装置の運転中に各電極板13,14に印加する直流電圧の極性を正逆切り替える時間に到達した場合は、切換スイッチ34による切替えを行うことなく電源スイッチ36により所定の通り運転を終了し、電源スイッチ36により次回の運転を開始するまでの間に切換スイッチ34による各電極板13,14に印加する直流電圧の極性の切替えを行うようにする。この運転停止の間に希塩水導入管20に設けた排出弁27を開いてケーシング11内の電解途中の希食塩水を排出するが、ケーシング11内の希食塩水の水位はレベルL以下には下がらず、両電極板13,14の下部の一部はケーシング11内に残留した希食塩水内に浸っている。運転終了の際に各電極板13,14に残留した電荷は、この運転停止の間にケーシング11内に残留した希食塩水を通して放電されて減少する。したがって、次の運転開始時における電極板13,14に対する突入電流はその分だけ減少されるので、電極板の寿命はその分だけ増大される。
【0020】
なお上述した第2の実施の形態では、運転終了の際に各電極板13,14に残留した電荷を放電させて減少させるのに、ケーシング11内に残留した希食塩水を使用したが、各電極板13,14への給電線31,32に間にスイッチを設け、電解水生成装置の運転終了から次の運転開始までの間このスイッチを短絡することによりこのような残留電荷を放電させて減少させることもできる。
【0021】
【発明の効果】
本発明によれば、電解水生成装置の電源投入時には、一時的にキャパシタに大電流が流れて自己フェイルセーフ機能付きの直流電源の電圧が低下し、これにより両電極板間を流れる電解槽電流が減少するので、その間に生じる電極板への突入電流は従来に比して減少する。また各電極に印加する直流電圧の極性切り替え時にも、一時的にキャパシタに大電流が流れて直流電源の電圧が低下し、その間に残留電荷の除去が行われるので、その間に生じる電極板への突入電流は従来に比して減少する。このように電解水生成装置の電源投入時および各電極に印加する直流電圧の極性正逆切り替え時のいずれの際にも、電極板に対する突入電流は従来に比して減少するので、突入電流による電極板の劣化および損傷は減少し、電極板の寿命を増大させることができる。
【0022】
前項の発明において、キャパシタを直流電源の内部に設けたものによれば、電解水生成装置を設置する際にキャパシタを接続する必要がないので、設置現場における配線作業が簡略化される。
【0023】
前2項の発明において、電解槽は、両電極板の一部が浸る程度の塩水が残留するようにしたものによれば、各電極板に残留した電荷が電極板に印加する直流電圧を切り替える間に塩水を通して放電されるので、その分だけ電極板に対する突入電流は減少され、電極板の寿命を一層増大させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明による電解水生成装置の第1の実施形態の全体構成を説明する図面である。
【図2】 図1に示す実施形態のキャパシタ電流、電解槽電流、電源電流および電源電圧を説明する図面である。
【図3】 従来技術による電解水生成装置の電解槽電流を示す図である。
【図4】 本発明と従来技術による電極板の寿命を比較して示す図である。
【図5】 本発明による電解水生成装置の第2の実施形態の全体構成を説明する図面である。
【符号の説明】
10…電解槽、11…ケーシング、12…隔膜、13,14…電極板、30…直流電源、33,33A…キャパシタ、R1,R2…電解室R1。

Claims (3)

  1. 電解槽のケーシング内を隔膜により2つの電解室に仕切るとともに各電解室内にそれぞれ電極板を配設し、この両電極板を直流電源に接続して直流電圧を印加し、この直流電圧により前記各電解室内を通る塩水を電気分解して電解水を生成する電解水生成装置において、前記直流電源は自己フェイルセーフ機能付きのものとし、前記両電極板の間にキャパシタを接続したことを特徴とする電解水生成装置。
  2. 前記キャパシタは前記直流電源の内部に設けてなる請求項1に記載の電解水生成装置。
  3. 前記電解槽は、前記電解槽内の塩水を排出した場合でも、前記ケーシング内に前記両電極板の一部が浸る程度の塩水が残留するように構成したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電解水生成装置。
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