JP3758565B2 - 車両用回転電機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、乗用車やトラック等に搭載され、特に冷却媒体を内部に循環させることによって発熱部の冷却を行う車両用回転電機に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、エンジン騒音の静粛化に伴い補機類の磁気的騒音がクローズアップされている。補機類の磁気的騒音の低減手法として、特開昭59−209053号公報には、車両用交流発電機の固定子鉄心とハウジングとの間にゴム材等の軟質な制振部材を介在させて、固定子鉄心の振動を減衰してハウジングに伝えないようにして共振音を抑制する技術が開示されている。
【0003】
一方、車両のスラントノーズ化および車室内居住空間の確保によってエンジンルームの狭小化が進んでおり、エンジンルーム内に搭載される補機類の使用温度条件もますます厳しくなってきている。補機類の温度条件を改善する手法として、特公平5−16261号公報には、車両用交流発電機のハウジングに設けた冷却液通路にエンジン冷却水を流して、電機子コイルや整流装置等の電気部品の冷却を行う技術が開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述した特開昭59−209053号公報に開示された車両用交流発電機では、固定子鉄心と制振部材は熱的にも接触しているため、固定子鉄心の渦電流損失による自己発熱および固定子コイルのジュール熱によって制振部材が高温になる。このため、制振部材の機械的性質の悪化に伴って減衰作用が低下する問題や、固定子鉄心の保持力が減少して回転子の磁気力に固定子鉄心が牽引されて回動してしまうという問題があった。この問題を回避するためには、高温状態でも機械的性質が悪化しない耐熱性材料を採用することが考えられるが、コストアップにつながるため、最近のコストダウンの要請を考慮すると採用は難しい。
【0005】
また、上述した特公平5−16261号公報に開示された車両用交流発電機では、電機子コイルや整流装置等の電気部品の冷却性は向上するが、磁気的騒音に関しては何ら対策が講じられていないため、近年のエンジン騒音の静粛化に対して、車両用交流発電機の磁気的騒音が問題となる可能性が高い。また、車両用交流発電機の外形寸法および軸方向寸法を維持するために、ハウジングの肉厚を薄くして冷却水流路を形成する場合には、通常の空冷式の車両用交流発電機に比べてハウジングの剛性が低下して磁気的騒音が悪化することが考えられる。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みて創作されたものであり、その目的は、制振部材の温度上昇を抑えるとともに、磁気的騒音を低減することができる車両用回転電機を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上述した課題を解決するために、本発明の車両用回転電機は、固定子鉄心とこの固定子鉄心に巻装される電機子コイルとを有する固定子と、固定子に対向配置される界磁鉄心と界磁コイルとを有する回転子と、固定子及び回転子を支持するハウジングと、固定子鉄心とハウジングとの間に介在する制振部材とを備え、制振部材と固定子鉄心との間に、冷却媒体を流通させる第1の冷却媒体通路が形成されている。制振部材と固定子鉄心との間に第1の冷却媒体通路が形成されているため、固定子鉄心を冷却すると共に制振部材の昇温を抑えることができ、制振部材の機械的性質の悪化を抑制して、減衰作用の低下抑制及び固定子の回動を防止することができる。また、制振部材を固定子鉄心とハウジングの間に配置しているため、固定子の振動を抑えることができ、磁気的騒音の低減が可能になる。また、制振部材と固定子鉄心との間に配置された第1の冷却媒体通路以外に冷却媒体通路が存在する場合に、これらの冷却媒体通路は互いに連結されていてもよいし、独立していてもよい。この場合には、冷却媒体を第1の冷却媒体通路に優先的に流通させることが望ましい。第1の冷却媒体通路を流れる冷却媒体が、第2の冷却媒体通路を流れる冷却媒体の昇温の影響を受けないため、制振部材の冷却を効率よく行うことができる。
【0008】
また、上述した制振部材には第1の冷却媒体通路となる中空部が形成されていることが望ましい。制振部材を内部から直接的に冷却することができるため、より効果的に制振部材の昇温を抑えることができる。
また、上述した制振部材は、少なくとも一方に第1の冷却媒体通路となる凹部が形成された2つの板状制振体を貼り合わせて構成することができる。第1の冷却媒体通路の形状自由度が増し、制振部材の冷却を効率よく行うことができる。また、第1の冷却媒体通路を制振部材より硬質な2つの板状体を貼り合わせて、制振部材にインサートする構成が望ましい。固定子組み付け時における第1の冷却媒体通路の変形を防止することができる。
【0009】
また、熱伝導性樹脂が電機子コイルのコイルエンドとハウジングの間に備わっており、第2の冷却媒体通路を熱伝導性樹脂のコイルエンドと反対側に接触するように配設することが望ましい。これにより、電機子コイルのコイルエンドで発生した熱を効率よく第2の冷却媒体通路内の冷却媒体に伝達することができる。
【0010】
また、上述したハウジングの外側の軸方向端面に取り付けられた整流装置をさらに備えるとともに、第2の冷却媒体通路をハウジングを挟んで整流装置の軸方向反対側に配設することが望ましい。これにより、整流装置で発生した熱をハウジングを通して効率よく第2の冷却媒体通路内の冷却媒体に伝達することができる。
【0011】
また、上述したハウジングの外側の軸方向端面に取り付けられた電圧調整器をさらに備えるとともに、第2の冷却媒体通路をハウジングを挟んで電圧調整器の軸方向反対側に配設することが望ましい。これにより、電圧調整器で発生した熱をハウジングを通して効率よく第2の冷却媒体通路内の冷却媒体に伝達することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を適用した第一実施形態の車両用交流発電機について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、第一実施形態の車両用交流発電機の全体構成を示す断面図である。また、図2は本実施形態の車両用交流発電機の部分的な拡大断面図である。
【0013】
本実施形態の車両用交流発電機は、フロント側ハウジング1、リヤ側ハウジング2、制振部材5、固定子6、回転子10、整流装置13、電圧調整器14、ブラシ装置15、リヤカバー16を含んで構成されている。
フロント側ハウジング1およびリヤ側ハウジング2は、アルミダイカスト製でともに椀状に形成されており、これらの開口部同士を直接当接させた状態で複数本のボルト(図示せず)により締め付けることにより相互に固定されている。
【0014】
フロント側ハウジング1の軸方向側部内周面には、制振部材5と冷却媒体通路41を挟んで固定子6が内包された状態で固定されている。この制振部材5は、円環状の軟質樹脂材料によって形成されており、フロント側ハウジング1内周面と冷却媒体通路41の外周面との間に、所定の締め代を設けて組み付けられている。
【0015】
固定子6は、固定子コア(固定子鉄心)61と、固定子コア61に形成された複数のスロット内に備わった電機子コイル62とを含んで構成されている。固定子コア61の軸方向両端面からは電機子コイル62が突出してコイルエンドを形成しており、この突出した電機子コイル62とフロント側ハウジング1の内壁面との間およびリヤ側ハウジング2の内壁面との間には、フィラーを混入した高熱伝導樹脂(熱伝導性樹脂)7が充填されている。
【0016】
回転子10は、界磁コイル101、ポールコア(界磁鉄心)102、103、シャフト105を含んで構成されている。界磁コイル101をポールコア102、103で挟み込んだ状態でシャフト105を圧入することにより回転子10が形成される。シャフト105のリヤ側端部近傍には一対のスリップリング106、107が形成されており、界磁コイル101の両端にそれぞれが電気的に接続されている。
【0017】
上述したフロント側ハウジング1には、円筒状のベアリングボックス8が一体に形成されている。また、リヤ側ハウジング2には、鉄製のベアリングボックス9が図示しないボルトによって取り付けられている。ベアリングボックス8、9のそれぞれには一対のベアリング11、12が収容されており、これらのベアリング11、12によって回転子10が回転自在に保持される。
【0018】
また、制振部材5と固定子コア61との間に設けられた上述した冷却媒体通路41の他に、フロント側ハウジング1には冷却媒体通路42が、リヤ側ハウジング2には冷却媒体通路43、44が形成されている。冷却媒体通路42は、フロント側ハウジング1の軸方向壁部であって、高熱伝導樹脂7が接する部分に形成されている。冷却媒体通路43は、リヤ側ハウジング2の軸方向壁部であって、高熱伝導樹脂7が接する部分に形成されている。また、冷却媒体通路44は、リヤ側ハウジング2の軸方向垂直壁面に形成されている。
【0019】
また、リヤ側ハウジング2の外側の軸方向端面には、整流装置13、電圧調整器14、ブラシ装置15等の電気部品がボルト等を用いて固定されており、その外側が鋼板製のリヤカバー16によって覆われている。
上述した構造を有する車両用交流発電機は、ベルト等を介してプーリ20にエンジン(図示せず)からの回転力が伝えられると回転子10が所定方向に回転する。この状態で回転子10の界磁コイル101に励磁電圧を印加することにより、ポールコア102、103のそれぞれの爪部が励磁され、電機子コイル62に三相交流電圧を発生させることができ、整流装置13の出力端子からは所定の直流電力が取り出される。
【0020】
このような発電状態において、電機子コイル62や整流装置13には出力電流が流れ、電圧調整器14には励磁電流が流れるため、それぞれが発熱する。本実施形態の車両用交流発電機は、これらの発熱を伴う各部を冷却媒体通路41、42、43、44のそれぞれに冷却媒体を流通させることにより冷却している。冷却媒体通路41等に流通させる冷却媒体として、例えばエンジン冷却水が用いられる。
【0021】
冷却媒体通路41には冷却媒体流入口400と冷却媒体排出口(図示せず)が設けられており、冷却媒体流入口400から取り入れられたエンジン冷却水は、冷却媒体通路41内を流通した後、冷却媒体排出口から排出される。冷却媒体通路41は、温度が上昇した固定子コア61と制振部材5との間に配置されており、制振部材5への伝熱を抑制する効果を奏しており、しかも固定子コア61の冷却性も向上させることができる。
【0022】
また、他の冷却媒体通路42等についても同様である。具体的には、冷却媒体通路42内を流通するエンジン冷却水によって、高熱伝導樹脂7を介して配置された電機子コイル62のフロント側コイルエンドを効率よく冷却することができる。冷却媒体通路43内を流通するエンジン冷却水によって、高熱伝導樹脂7を介して配置された電機子コイル62のリヤ側コイルエンドを効率よく冷却することができる。冷却媒体通路44内を流通するエンジン冷却水によって、リヤ側ハウジング2を挟んで配置された整流装置13や電圧調整器14を効率よく冷却することができる。
【0023】
このように、本実施形態の車両用交流発電機では、制振部材5をその内周に配置された冷却媒体通路41に冷却媒体を流通させることにより効率よく冷却することができる。したがって、制振部材5が高温になって機械的性質が悪化することを抑制することができ、固定子6が回動することを防止することができる。また、制振部材5が柔軟性を維持することにより、制振作用を有効に機能させることができるため、固定子6の振動を抑制して磁気的騒音の発生を最小限に抑えることができる。
【0024】
また、高熱伝導性樹脂7が電機子コイル62のコイルエンドとハウジング1、2の間に備わっているため、電機子コイル62のコイルエンドで発生した熱を効率よく冷却媒体通路42、43内の冷却媒体に伝達することができる。
また、冷却媒体通路44をリヤ側ハウジング2を挟んで整流装置13および電圧調整器14の軸方向反対側に配設しているため、整流装置13や電圧調整器14で発生した熱をリヤ側ハウジング2を通して効率よく冷却媒体通路44内の冷却媒体に伝達することができる。
【0025】
さらに、本実施形態の車両用交流発電機では、冷却媒体通路41、42、43、44のそれぞれが別に配置されており、これらに別々に冷却媒体を流通させることが望ましい。このように、各冷却媒体通路に別々に冷却媒体を流通させることにより、温度の高い部位を冷却媒体が温度の低い部位の近傍に配置された冷却媒体通路に流通することを防止することができ、温度が異なる各部位を効率よく冷却することができる。
【0026】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々の変形実施が可能である。例えば、上述した実施形態では、制振部材5とは別に冷却媒体通路41を形成したが、中空の制振部材を用いてその中空部分を冷却媒体通路として用いるようにしてもよい。
【0027】
図3は、第2の実施形態の車両用交流発電機の全体構成を示す断面図である。また、図4は図3に示した車両用交流発電機の部分的な拡大断面図である。これらの図に示した他の実施形態の車両用交流発電機は、図1および図2に示した車両用交流発電機に対して、制振部材5と冷却媒体通路41をこれらの機能を併せ持った制振部材51に置き換えた点が異なっている。以下、この制振部材51およびその近傍の構造について説明する。また、制振部材51以外の部品については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0028】
フロント側ハウジング1の軸方向側部内周面には、冷却媒体通路45となる中空部が形成されているとともに制振部材51を介在させて固定子6が固定されている。この制振部材51は、中空円環状の軟質樹脂であり、フロント側ハウジング1および固定子6との間に所定の締め代を設けて組み付けられている。この中空部に冷却媒体を流通させることにより、制振部材51を内部から直接冷却することができるため、効果的に制振部材51の温度を下げることができる。
【0029】
図5は、第3実施形態の車両用交流発電機の部分的な拡大断面図である。本実施形態は、図3及び図4に示した車両用交流発電機に対して制振部材5を改良した制振部材52に置き換えた点が異なっている。以下、この制振部材52の構造について説明する。また、制振部材52以外の部品については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0030】
制振部材52は、一方の面に冷却媒体通路45となる凹部が形成される2つの板状制振体521、522を貼り合わせて構成されている。本実施形態では、双方に凹部を形成したが、一方のみに形成した場合も冷却媒体通路45を構成できるのはいうまでもない。
【0031】
この制振部材52を固定子コア61の外周に巻き付け、フロント側ハウジング1の内周面に所定の締め代を設けて組み付けられる。また、図6に示すように、冷却媒体通路45を制振部材53より硬質な板状体531、532で構成し、制振部材53にインサートすることも考えられる。この場合、固定子6の組み付け時に、冷却媒体通路45が変形することを防止することができ、冷却媒体を安定して流通させる効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態の車両用交流発電機の全体構成を示す断面図である。
【図2】図1に示した車両用交流発電機の部分的な拡大断面図である。
【図3】第2実施形態の車両用交流発電機の全体構成を示す断面図である。
【図4】図3に示した車両用交流発電機の部分的な拡大断面図である。
【図5】第3実施形態の車両用交流発電機の部分的な拡大断面図である。
【図6】第4実施形態の車両用交流発電機の部分的な拡大断面図である。
【符号の説明】
1 フロント側ハウジング
2 リヤ側ハウジング
5 制振部材
6 固定子
7 高熱伝導樹脂
10 回転子
13 整流装置
14 電圧調整器
15 ブラシ装置
16 リヤカバー
Claims (8)
- 固定子鉄心とこの固定子鉄心に巻装される電機子コイルとを有する固定子と、前記固定子に対向配置される界磁鉄心と界磁コイルとを有する回転子と、前記固定子及び前記回転子を支持するハウジングと、前記固定子鉄心と前記ハウジングとの間に介在する制振部材とを備える車両用回転電機において、
前記制振部材と前記固定子鉄心との間に、冷却媒体を流通させる第1の冷却媒体通路が形成されていることを特徴とする車両用回転電機。 - 請求項1において、
前記制振部材に前記第1の冷却媒体通路となる中空部が形成されていることを特徴とする車両用回転電機。 - 請求項1または2において、
前記第1の冷却媒体通路と別に形成された第2の冷却媒体通路を備え、
前記第1の冷却媒体通路に前記冷却媒体を前記第2の冷却媒体通路よりも優先して流通させることを特徴とする車両用回転電機。 - 請求項2または3において、
前記制振部材は、少なくとも一方に前記第1の冷却媒体通路となる凹部が形成された2つの板状制振体を貼り合わせて構成されていることを特徴とする車両用回転電機。 - 請求項2または3において、
前記制振部材は、少なくとも一方に前記第1の冷却媒体通路となる凹部が形成された2つの板状体を貼り合わせて、さらに前記制振部材にインサートして構成されていることを特徴とする車両用回転電機。 - 請求項3において、
熱伝導性樹脂が前記電機子コイルのコイルエンドとハウジングの間に備わっており、
前記第2の冷却媒体通路が前記熱伝導性樹脂の前記コイルエンドと反対側に接触するように配設されていることを特徴とする車両用回転電機。 - 請求項3において、
前記ハウジングの外側の軸方向端面に取り付けられた整流装置をさらに備え、
前記第2の冷却媒体通路が前記ハウジングを挟んで前記整流装置の軸方向反対側に配設されていることを特徴とする車両用回転電機。 - 請求項3において、
前記ハウジングの外側の軸方向端面に取り付けられた電圧調整器をさらに備え、
前記第2の冷却媒体通路が前記ハウジングを挟んで前記電圧調整器の軸方向反対側に配設されていることを特徴とする車両用回転電機。
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