JP3757966B2 - 低ムーニー・ニトリル基含有高飽和共重合体ゴムの製造方法 - Google Patents
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Description
この提案された方法は、熱酸化分解時に発生する遊離ラジカルを酸素供与体で安定化するものであるが、高剪断処理後に存在する過酸化物、カルボキシル基、カルボニル基などがゲル化の原因となるため、高剪断処理後に通常の老化防止剤を配合しても、ゴムの保存中にムーニー粘度が上昇することが判明した。
(ニトリル基含有高飽和共重合体ゴム)
本発明で高剪断処理されるニトリル基含有高飽和共重合体ゴムは、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリルなどのエチレン性不飽和ニトリルと、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエンなどの共役ジエンとの共重合体、または、上記の二種の単量体およびこれと共重合可能な単量体、例えば、スチレンなどのビニル芳香族化合物、(メタ)アクリル酸、アルキル(メタ)アクリレート、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、シアノアルキル(メタ)アクリレートなどの少なくとも1種の単量体との多元共重合体であるニトリル基含有不飽和共重合体ゴムの炭素−炭素二重結合を水素化したゴムである。
高剪断処理前のニトリル基含有高飽和共重合体ゴム(以下、「高ムーニー・ニトリル基含有高飽和共重合体ゴム」ということがある)のムーニー粘度[ML1-4(100℃)」は通常60〜150の範囲、好ましくは80〜100の範囲である。また、そのヨウ素価は120以下、好ましくは60以下、より好ましくは30以下である。
目的とする加工性のよい低ムーニー・ニトリル基含有高飽和共重合体ゴムは、上記の高ムーニー・ニトリル基含有高飽和共重合体ゴムに、老化防止剤の存在下、かつ酸素供与体の不存在下に高剪断力を付与してそのムーニー粘度ML4を低下させて得られる。
本発明で使用する老化防止剤は、ゴム技術の分野において、ゴムの酸化反応などにより生成するゴムラジカルやゴムヒドロペルオキシラジカルを酸化連鎖反応機構に関与しない型にしたり、ヒドロペルオキシドを安定なアルコール型に変化させてしまうような機能を有するものであり、ゴムの老化を防ぎ、その寿命を長くする目的で使用される有機化合物である。
メルカプトベンゾイミダゾール系老化防止剤の具体例としては、メルカプトベンゾイミダゾールおよびその亜鉛塩、メルカプトメチルベンゾイミダゾールおよびその亜鉛塩などが挙げられる。
ビスフェノール系老化防止剤の具体例としては、2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4′−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)などのビスフェノール・アルカン;および4,4′−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)などのビスフェノール・スルフィドが挙げられる。
チオビスフェノール系老化防止剤の具体例としては、4,4′−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4′−ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)フルフィド、4,4′−チオビス(6−t−ブチル−o−クレゾール)などが挙げられる。
ニッケル塩系老化防止剤の具体例としては、ニッケルジメチルジチオカーバメート、ニッケルジエチルジチオカーバメート、ニッケルジブチルジチオカーバメート、ニッケルイソプロピルキサントゲン酸塩などが挙げられる。
チオウレア系老化防止剤の具体例としては、1,3−ビス(ジメチルアミノプロピル)チオウレア、トリブチルチオウレアなどが挙げられる。
チオエーテル系老化防止剤の具体例としては、ジラウリル−3,3−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3−チオジプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)などが挙げられる。
リン系老化防止剤の具体例としては、トリス(ノニル化フェニル)フォスファイトなどが挙げられる。
老化防止剤は単独で用いても、または二以上を組合せ用いてもよい。また、高剪断力を付与するニトリル基含有高飽和共重合体ゴムに一度に添加しても、または分割添加してもよい。二種以上の老化防止剤を用いる場合、例えば、最初にアミン・ケトン系老化防止剤を添加し、押出機から押出し、後にメルカプトベンゾイミダゾール系老化防止剤を添加することもできる。
本発明の高剪断力付与処理によって、高ムーニー・ニトリル基含有高飽和共重合体ゴムのムーニー粘度ML4は、通常、60〜150の範囲から15ポイント以上、好ましくは30ポイント以上低下し、ムーニー粘度が5〜135、好ましくは20〜90の範囲となる。この処理は、通常、酸素、過酸化物、硝酸塩などのような酸素供与体の不存在下に剪断速度500〜5,000S−1、好ましくは800〜5,000S−1において行われる。高剪断力付与処理時の温度は、通常180〜380℃、好ましくは250〜350℃である。高い生産性をもって処理を行うには剪断速度は2,000〜5,000S−1であることが望ましい。ここで、酸素供与体の不存在下とは、特開平3−122103号に記載されているように、上記酸素供与体を共存させる態様を含まないことを意味し、必ずしも窒素などの不活性ガス雰囲気下での処理に限定されるものではない。
ムーニー粘度の低下度合いは、主に剪断速度を変えて制御することができる。
ムーニー粘度の低下に必要な剪断速度は通常500〜5,000S-1の範囲である。ムーニー粘度の低下度合いは、剪断速度のほか温度および時間などの要因に依存しても変わるので、適切な剪断速度は、これらの要因を考慮して所望する低ムーニー粘度が得られるように選定されるべきであり、最適の剪断速度は実験によって容易に求めることができる。
さらに、これらの硫黄系加硫剤に加えて、亜鉛華、ステアリン酸などの加硫促進剤;グアニジン系、アルデヒド−アミン系、アルデヒド−アンモニア系、チアゾール系、スルフェンアミド系、チオ尿素系、ザンテート系などの他の加硫促進剤を使用することができる。硫黄系加硫促進剤の使用量は特に限定されないが、通常、ニトリル基含有高飽和共重合体ゴム100重量部当り、0.1〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部である。
実施例および比較例において、使用した老化防止剤は以下のとおりである。
(1)ポリ(2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン)(RD、TMDQ:アミン・ケトン系“ノクラック224”)
(2)アルキル化ジフェニルアミン(ODA;芳香族二級アミン系“ナウガード445”)
(3)2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)(2246、MBMBP;ビスフェノール系”ノクラックNS6”)
(4)2−メチルカプトベンゾイミダゾール(MB、MBI;メルカプトベンゾイミダゾール系”ノクラックMB”)
(1)高速加硫性評価試験
所定の配合処方によって調製した未加硫ゴム組成物10グラムを用いて、日本ゴム協会規格SRIS 3102に従い、キュラストメーターによって、170℃におけるスコーチ時間(T5およびT95)(単位:分)、最大トルク(Vmax)および最小トルク(Vmin)(単位:kgf・cm)を測定した。T5の値は小さいほど加硫速度が速い。また、Vmaxの値は大きいほど架橋効率が高い。
日本工業規格JIS K6301に従い、所定の配合処方によって調製した未加硫ゴム組成物を170℃×20分の条件で加硫して得られた厚さ2mmのシートを、3号形ダンベルを用いて打ち抜いて試験片を作成し、引張強さ(単位:kgf/cm2)、100%、200%または300%伸長時引張り応力(単位:kgf/cm2)および伸び(単位:%)を測定した。圧縮永久歪(歪み率%)は荷重除去後150℃で70時間保持した後、測定した。また、硬さはJISスプリング式A形硬さ試験機を用いて測定した。さらに、反発弾性はJIS K6301に従って測定した(単位:%)。なお、耐油性試験については、JIS K6301に従い、潤滑油No.3(動粘度31.9〜34.1、アニリン点69.5±1℃、引火点162.7℃)中にゴム試験片を浸漬し、体積変化率(単位;%)を測定した。
日本工業規格JIS K6383に従い、ケルダール法によって共重合体中の窒素含量を測定し、計算により結合ニトリル量を求めた(単位:%)。
(4)ムーニー粘度[ML1-4]
日本工業規格JIS K6384に従い、共重合体約40グラムを用いて100℃に測定した。
ゲルパーミエーション(溶媒:テトラヒドロフラン)により、標準ポリスチレンに換算した数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)を測定した(単位:万)。また、MwとMnとの比を計算により求めた。
(6)加工性(ガーベダイ押出試験)
ATSM D−2230−77に従い、ガーベダイを用いて、所定の配合組成を有する未加硫ゴム組成物を押出し、ダイスエル(%)および押出量(g/分)
を求めるとともに、押出物の形状ないし状態を、膨油度・多孔度ならびにエッジ、表面およびコーナー部について評価し、それぞれ4等級で表示した。各評価項目とも4が最良、1が最悪である。
(イ)バンバリー混練時の電力消費量 堺重工株式会社製、1.7リットルバンバリーを用い、回転数100rpm、ローターの回転数比1.12でゴムとカーボンブラックの混練を行った。その際、まずゴムを投入し1分間、ゴムの素練りを行い、その後カーボンブラックを一括で投入し3分間混練を行なった。この時、いったんバンバリーを停止し、投入口のまわりに付着したカーボンをはけで掻き落とした。その後、再び1分間混練を行い、取り出した。この時、電力消費量は、このバンバリーでの一連の混練工程でかかった電力量を、キロワットで表した。
(ロ)ロール加工性 バンバリーから取り出したゴムのカーボンマスターバッチに、その他の配合剤を投入する際、とくに混練性に優れるものをA、通常の混練で問題なく混練できるものをB、バギングが発生し混練に手間取ったものをC、バギングの発生がひどく、混練が著しく困難であったものをDで表現した。
(ハ)ロールバギング限界の間隙 ロールにて配合剤の混練が終わった後、ロールの間隙を2mmから0.5mmづつ開けて行き、ゴムのバギングが始まったロール間隙であらわした。すなわち、ロール間隙の広い方がロール混練性に優れる。
フィラーゲルは、ゴムとカーボンブラックなどの配合剤とを混練後、80メッシュ金網を用いてメチルエチルケトン中に48時間浸漬後に測定した値である。
水素化アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム(水素化NBR、水素化率90%、ヨウ素価28、結合アクリロニトリル含有量36%、ムーニー粘度ML4 78)100重量部と老化防止剤3重量部とを二軸押出機に供給し下記条件下に高剪断力付与処理を行った(実施例1〜4)。
二軸押出機:プラスチック工学研究所製、スクリュー径38mm、 スクリュー長1600cm、L/D 42、7バレル構成、 スクリュー回転数400rpm、処理速度7kg/時間
設定温度:バレル1(投入ゾーン)100℃
設定温度:バレル2(溶融ゾーン)250℃
バレル3〜6(混練、剪断ゾーン)250〜290℃
バレル7(混練、脱気ゾーン)200〜250℃、720mmHg
剪断速度:3,200S-1
バレル1〜7中滞留時間:120〜180秒
剪断処理後のゴムを常温で大気中に保存し、押出直後および1、5、8、15、22、29および61日経過後にムーニー粘度を測定した。
また、押出直後および29日経過後に分子量分布(Mw/Mn)を求めた。結果を表1に示す。
配合組成 ゴム 100重量部
亜鉛華 5重量部
ステアリン酸 0.5重量部
SRFカーボン#60 40重量部
老化防止剤 1.5重量部
パーオキサイド 6重量部
また、ガーベダイ押出試験の結果から、本発明に従って、老化防止剤の存在下に高剪断力付与処理を行った場合には、押出特性が大幅に改良されることがわかる。
ニトリル基含有高飽和共重合体ゴム(水素化NBR、水素化率90%、ヨウ素価28、結合アクリロニトリル含有量36%、ムーニー粘度78(実施例5、6、7および比較例3)または140(実施例8))を、ペレット造粒装置(森山製作所社製)を用いて、該ゴムをペレット状に造粒した。該ゴムのペレット100重量部と老化防止剤(アミン−ケトン系、ノクラック224、大内新興社製)3重量部と老化防止剤(ベンゾイミダゾール系、ノクラックMB:大内新興社製)1重量部とを定量フィーダーを用い、二軸押出機に投入し、下記条件下に高温で高剪断力処理を行った。結果を表2に示す。
スクリュー回転数(rpm) 100 300 500
剪断速度(S-1) 800 2,400 4,000
滞留時間(秒) 120 100 90
〜180 〜160 〜150
設定温度: バレル1(投入ゾーン) 30℃
バレル2(溶融ゾーン) 150℃
バレル3 250℃
バレル4(混練ゾーン) 280℃
バレル5 260℃
バレル6(冷却ゾーン) 200℃
バレル7 200℃
ダイヘッド 200℃
ムーニー粘度142の水素化NBR(ゼットポール2020H、結合アクリロニトリル含有量36%、ヨウ素価28、日本ゼオン株式会社製)を、本発明の方法により二軸押出機を使用して、下記の条件下にそのムーニー粘度を低下させたものについて、加工性および硫黄系加硫剤を配合したときの加硫物性について評価した。結果を表3に示す。
ペレット造粒装置: 実施例5で使用した装置と同じ
スクリュー回転数(rpm) 200 300
剪断速度(S-1) 1,600 2,400
滞留時間(秒) 110 100
〜170 〜160
以上
ノクセラーTT:チウラム型加硫促進剤
ノクセラーM:チアゾール型加硫促進剤
ムーニー粘度113の水素化NBR(ゼットポール2020H、結合アクリロニトリル含有量36%、ヨウ素価11、日本ゼオン株式会社製)を、本発明の方法により二軸押出機を使用して、下記条件下にそのムーニー粘度を低下させたものについて、加工性および有機過酸化物系加硫剤を配合したときの加硫物性について評価した。結果を表4に示す。
ペレット造粒装置:実施例5で使用したものと同じ
老化防止剤:種類、量とも実施例5と同じ
スクリュー回転数(rpm) 100 300 500
剪断速度(S-1) 800 2,400 4,000
滞留時間(秒) 120 100 90
〜180 〜160 〜150
なお、比較例6では、比較例1で調製した水素化NBR、比較例7では、ムーニー粘度65の水素化NBR(ゼットポール2010L、結合アクリロニトリル量36%、ヨウ素価11、日本ゼオン株式会社製)を使用した。結果を表4に示す。
通常、ムーニー粘度が低くなると、強度の低下など物性的には低下の傾向があるが、低ムーニー化品は、加工性の大幅な改善に併せ、物性の改善をも達成したゴム組成物であることが見出された。
実施例11、12、13で調製した高剪断力処理ゴム100部に対してカーボンブラックを150部配合したもの(実施例14、15、16)および実施例12、13で調製した高剪断力処理したゴム100部にカーボンブラックを200部配合したもの(実施例17、18)について、加工性および有機過酸化物系加硫剤を配合したときの加硫物性について評価した。結果を表5および6に示す。
なお、比較例8および10では、比較例1で調製した水素化NBR、比較例9および11では、ムーニー粘度65の水素化NBR(ゼットポール2010L、結合アクリロニトリル含有量36%、ヨウ素価11、日本ゼオン株式会社製)をそれぞれ使用した。
Claims (7)
- ニトリル基含有高飽和ゴム共重合ゴムに高剪断力を付与することによってそのムーニー粘度を低下させる方法において、老化防止剤の存在下、かつ酸素供与体の不存在下に剪断速度500〜5,000S−1において高剪断力を付与することによってムーニー粘度を15ポイント以上低下させて、ムーニー粘度5〜135を有する低ムーニー・ニトリル基含有高飽和共重合体ゴムを生成せしめることを特徴とする低ムーニー・ニトリル基含有高飽和共重合体ゴムの製造方法。
- ニトリル基含有高飽和共重合体ゴムが、エチレン性不飽和ニトリル単量体、ジエン系単量体および任意成分である共重合可能な単量体との共重合体の水素化物であって、エチレン性不飽和ニトリル単量体単位を10〜60重量%含み、且つ、ヨウ素価が120以下である請求項1に記載の製造方法。
- ニトリル基含有高飽和共重合体ゴム100重量部に対し、芳香族二級アミン系、アミン・ケトン系、メルカプトベンゾイミダゾール系、ビスフェノール系、モノフェノール系、チオビスフェノール系、ヒドロキノン系、ニッケル塩系、チオウレア系、チオエーテル系およびリン系の各老化防止剤の中から選ばれる少なくとも一種の老化防止剤1〜10重量部の存在下に高剪断力を付与する請求項1または請求項2に記載の製造方法。
- ニトリル基含有高飽和共重合体ゴム100重量部に対して、芳香族二級アミン系老化防止剤、芳香族アミンとケトンとの縮合物である老化防止剤、メルカプトベンゾイミダゾール系老化防止剤およびビスフェノール系老化防止剤の中から選ばれる少なくとも一種の老化防止剤1〜10重量部の存在下に高剪断力を付与する請求項1または請求項2に記載の製造方法。
- ムーニー粘度60〜150のニトリル基含有高飽和共重合体ゴムに高剪断力を付与することによってムーニー粘度を30ポイント以上低下させて、ムーニー粘度20〜90を有する低ムーニー・ニトリル基含有高飽和共重合体ゴムを生成せしめる請求項1〜請求項4のいずれかに記載の製造方法。
- 温度180〜380℃において高剪断力を付与する請求項1〜請求項5のいずれかに記載の製造方法。
- 複数のバレルから構成される押出機を用い、温度240〜320℃において高剪断力を付与する請求項1〜請求項6のいずれかに記載の製造方法。
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