JP3757903B2 - 回転磁気ヘッド - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、VTR(Video Tape Recorder)、テープストリーマー(Tape Streamer)等のヘリカルスキャン方式の高密度磁気記録再生装置の回転ヘッドドラムに搭載される回転磁気ヘッドに属するものであって、特に、ヘッドチップの形状に関する技術分野に属するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、VTR、テープストリーマー等の回転ヘッドドラムに搭載されている複数の回転磁気ヘッドは、磁気コアで構成されているヘッドチップ先端の磁気テープと接触するテープ摺動面のほぼ中央に信号記録トラック幅に相当する磁気的な隙間(スリット)である磁気ギャップが形成されている。
そして、このヘッドチップで磁気テープを高速でヘリカルスキャン(螺旋形の走査)することにより、ギャップ部分での磁気変換によって磁気テープに信号(データ)を記録又は再生(読み、書き)している。
【0003】
ここで、図7及び図8は、従来のVTR、テープストリーマー等のヘリカルスキャン方式の高密度記録再生装置の回転ヘッドドラム1を示したものであって、固定ドラム2の上部で回転される回転ドラム3の下端縁の外周に沿って複数の記録ヘッド4や複数の再生ヘッド5等の複数の回転磁気ヘッド6がそれぞれビス7によって放射状に取り付けられている。
【0004】
そして、これら複数の回転磁気ヘッド6の先端にはそれぞれヘッドチップ11が固着されていて、磁気テープ21が固定ドラム2の外周にヘリカル状に形成された段部であるテープリード8に沿って回転ヘッドドラム1の外周にヘリカル状に巻き付けられて矢印a方向に定速で走行されながら、回転ドラム3が矢印b方向へ高速で回転されることにより、複数の回転磁気ヘッド6のヘッドチップ11によって磁気テープ21がヘリカルスキャンされて、磁気テープ21に対する信号(データ)のヘリカル状で、高密度の記録又は再生が行われる。
【0005】
この際、図9及び図10に示すように、ヘッドチップ11の先端には、図7及び図8に示した回転方向及び回転方向に対する直角な方向の2方向に沿ってほぼ円弧状に形成されたテープ摺動面12と、そのテープ摺動面12のほぼ中央に形成された磁気ギャップ13が形成されていて、磁気ギャップ13の上下両側には空気抜き用の上下一対の溝14、15が回転方向bと平行に形成されている。そして、磁気ギャップ13部分での電磁変換(信号記録時には電気信号を磁束に変換し、再生時には磁気信号を電気信号に変換する)によって磁気テープ21の信号記録面21aに信号が高密度で記録(書き込み)又は再生(読み取り)されることになる。
【0006】
つまり、図11に示すように、信号記録時には、矢印a方向に定速走行される磁気テープ21の信号記録面21aを複数の記録ヘッド4のヘッドチップ11によって、磁気テープ21の下エッジ21bから上エッジ21cに向って矢印方向に高速でヘリカルスキャンすることにより、その複数のヘッドチップ11の磁気ギャップ13によって磁気テープ21の信号記録面21aに帯状の信号トラック(帯状の信号記録パターン)TR1、TR2、TR3、TR4・・・TRnを一定のトラックピッチPで順次記録する。一方、信号再生時には、記録時と同じように、複数の再生ヘッド5のヘッドチップ11によって磁気テープ21の信号トラックTR1、TR2、TR3、TR4・・・TRnを矢印b方向に順次ヘリカルスキャンして、その信号トラックTR1、TR2、TR3、TR4・・・TRnを順次再生するものである。
この際、回転磁気ヘッド6が、矢印a方向に定速で走行される磁気テープ21を、その下エッジ21b側から上エッジ21c側に向けて矢印h方向にヘリカルスキャンする方式においては、図9に示されているように、磁気ギャップ13が形成されている中央テープ摺動面12aより上側テープ摺動面12bが常に先行して磁気テープ21に接触される先行テープ接触面となり、下側テープ摺動面12cは常に中央テープ摺動面12aより遅れて磁気テープ21に接触されるテープ摺動面となる。
【0007】
この種、磁気テープを用いるヘリカルスキャン方式の磁気記録再生装置において、磁気テープの消費量を低減しつつ、長時間の記録、再生を可能にするための高密度記録化を実現する方法として、磁気テープ21に記録される信号トラックTRのトラック幅を狭くするか、信号の記録波長を短くするかの2通りの方法がある。しかし、何れの方法においても、ヘッド出力が低下することは避けられない。
【0008】
他方、回転磁気ヘッド6の磁気ギャップ13の深さを浅くして、ヘッド出力を大きくする方法が考えられるが、磁気ギャップ13の深さを浅くしてしまうと、単位時間当りのヘッド摩耗量が同一でも、磁気ギャップ13が短時間で開いてしまうため、回転磁気ヘッド6の早期交換が必要となり、メンテナンスコストの上昇が避けられなくなる。
【0009】
そこで、ヘッド摩耗を少なくする方法として、磁気テープ21に対する回転磁気ヘッド6のヘッドチップ11のテープ摺動面12の接触幅であるヘッド当り幅を大きくして、そのテープ摺動面12に対する磁気テープ21の接触圧を下げることが考えられる。なお、ヘッド当り幅を大きくすれば、磁気ギャップ13の摩耗も少なくなる。
【0010】
ちなみに、ヘッド摩耗の最大の要因は、磁気テープ21の製造工程中に磁気テープ21の信号記録面21a上に自然に付着されてしまう、大きさが数10nm程度の多数の微細磁性粉等であり、回転磁気ヘッド6のヘッドチップ11が磁気テープ21の信号記録面21a上をヘリカルスキャンする際に、その微細磁性粉等の研磨力によってヘッドチップ11のテープ摺動面12が摩耗されることになる。
【0011】
そして、特に、ヘッドチップ11が新しい磁気テープ21の信号記録面21a上で信号トラックTRが未だ書かれていない新しい面を初めてヘリカルスキャンする時には、既に信号トラックTRが書かれている信号記録面21a上の古い面をヘリカルスキャンする時よりも、微細磁性粉等の研磨力によるヘッド摩耗が多くなることは当然である。
【0012】
ここで、ヘッドチップ11のヘッド当り幅を大きくすることにより、ヘッド摩耗を少なくすることができる理由を図10及び図12によって説明する。
まず、図10の(A)に示すヘッドチップ11Sはテープ摺動面12のヘッド当り幅W1が小さい従来の一般的なヘッドチップを示したものであり、図10(B)に示すヘッドチップ11Lは、テープ摺動面12のヘッド当り幅W2を上下均等に大きくしたヘッドチップを示したものである。
【0013】
そして、図12の(A)は、矢印a方向に定速走行される磁気テープ21の信号記録面21a上をヘッドチップ11Sが小さいヘッド当り幅W1のテープ摺動面12によって、「ヘッド1」、「ヘッド2」「ヘッド3」、「ヘッド4」の順番に一定のトラックピッチPで矢印方向に高速でヘリカルスキャンして行く様子を示した概略図である。
また、図12の(B)は、矢印a方向に定速走行される磁気テープ21の信号記録面21a上をヘッドチップ11Lが大きいヘッド当り幅W2によって、「ヘッド1」、「ヘッド2」「ヘッド3」、「ヘッド4」の順番に一定のトラックピッチPで矢印方向に高速でヘリカルスキャンして行く様子を示した概略図である。
【0014】
この際、高密度記録化に伴い、磁気テープ21に記録される信号トラックTRのトラック幅に相当するヘッドチップ11S、11Lの磁気ギャップ13の幅W3を小さくしなければならないことから、必然的にヘッド当り幅W1やW2はその磁気ギャップ13の幅W3より大きくなっている。
従って、ヘッドチップ11S、11Lの何れの場合でも、「ヘッド1」、「ヘッド2」「ヘッド3」、「ヘッド4」の順番に、これらのテープ摺動面12によって磁気テープ21の信号記録面21a上を一定のトラックピッチPで矢印h方向にヘリカル状に走行(摺動)する際、先行ヘッドのテープ摺動面12がヘッド当り幅W1、W2で走行した走行部分(走行軌跡)の上側部分(図9に示されている下側テープ摺動面12cより常に先行して磁気テープ21に接触される上側テープ摺動面12b側を言う)に、次のヘッドのテープ摺動面12の下側部分(図9に示されている上側テープ摺動面12bより遅れて磁気テープ21に接触される下側テープ摺動面12c側を言う)がヘッド当り幅W1、W2で走行する走行部分(走行軌跡)の下側部分がオーバーラップすることになる。
【0015】
そして、図12の(A)は、ヘッド当り幅W1が小さいヘッドチップ11Sの場合における「ヘッド1」、「ヘッド2」「ヘッド3」、「ヘッド4」の先行ヘッドの走行部分に対する次のヘッドの走行部分のオーバーラップ量を「2回走行部分」で示したものである。
【0016】
つまり、この場合には、次のヘッドの走行部分の下側部分が先行ヘッドの走行部分の上側部分にオーバーラップされるのは、「2回走行部分」で示す1回のみである上に、そのオーバーラップ幅も小さい。従って、走行部分がオーバーラップされない上に、幅の大きい「1回走行部分」は、先行ヘッドが未だ走行(摺動)していない磁気テープ21の信号記録面21aの常に新しい面を走行することになる。また、次のヘッドの磁気ギャップ13も先行ヘッドが走行(摺動)していない磁気テープ21の信号記録面21aの常に新しい面を走行することになる。
【0017】
一方、図12(B)は、ヘッド当り幅W2が大きいヘッドチップ11Lの場合における「ヘッド1」、「ヘッド2」「ヘッド3」、「ヘッド4」の先行ヘッドの走行部分に対する次のヘッドの走行部分のオーバーラップ量を「2回走行部分」と「3回走行部分」で示したものである。
【0018】
つまり、この場合には、次のヘッドの走行部分の下側部分が先行ヘッドの走行部分の上側部分にオーバーラップされるのは、「2回走行部分」と「3回走行部分」で示すように2回となり、「ヘッドギャップより先行走行部分W」で表示している部分では、磁気ギャップ13は先行ヘッドが先に走行(摺動)し終っている磁気テープ21の信号記録面21aの古い部分を走行することができる。
【0019】
以上により、前述した磁気テープ21の信号記録面21aに付着されている微細磁性粉等の研磨力によるヘッドチップ11のテープ摺動面12及び磁気ギャップ13の摩耗を、ヘッド当り幅W2が大きいヘッドチップ11Lの方が、ヘッド当り幅W1が小さいヘッドチップ11Sより少なくできることが判る。
【0020】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、図10の(B)に示すように、ただ単に、ヘッドチップ11のテープ摺動面12のヘッド当り幅W2を大きくしただけでは、テープ摺動面12と磁気テープ21との間に巻き込まれる空気量が増えるため、ヘッドチップ11と磁気テープ21との間のスペーシング(距離)が大きくなって、ヘッド出力が小さくなってしまう。
そこで、ヘッド・テープ間の当りを確保しながら、微細磁性粉等の研磨力によるヘッドチップ11の摩耗を小さくすることが求められている。
【0021】
このために、従来から、ヘッド・テープ間の当りを確保できるように、図9及び図10で既に説明しているように、テープ摺動面12に、磁気ギャップ13の上下両側に沿った上下一対の溝14、15をヘッド回転方向と平行状で、上下対称状に形成することにより、そのテープ摺動面12を磁気ギャップ13が形成されている中央テープ摺動面12aと、そのテープ摺動面12aの上下に上下一対の溝14、15によって分割された上側テープ摺動面12bと下側テープ摺動面12cとに3分割して、ヘッドチップ11による磁気テープ21のヘリカルスキャン時に、これら上下一対の溝14、15内での空気抜け作用による負圧効果によって磁気テープ21をヘッドチップ11のテープ摺動面12へ吸引する方法が特開平1−151019号公報や特開平11−316904号公報によって提案されている。
しかし、この方法を実施しても、ヘッドチップ11のテープ摺動面12のヘッド当り幅を図10の(B)に示したように上下対称状に大きくしてしまうと、やはり、ヘッドチップ11と磁気テープ21との間のスペーシングが大きくなると言う問題が発生するので、ヘッド出力を確保しながら、ヘッド当り幅を大きくすることには限界があった。
【0022】
他方、ヘッド摩耗を少なくする目的で、従来から、回転ヘッドドラム1の複数の回転磁気ヘッド6に対する先行位置に複数のダミーヘッドを搭載して、これら複数のダミーヘッドで、磁気テープ21の信号記録面21a上に付着されている微細磁性粉等を先行して研削しながら、複数の回転磁気ヘッド6で磁気テープ21の信号記録面21aをヘリカルスキャンする方法が考えられている。
【0023】
このように、ダミーヘッドを使用すれば、図13のグラフで示すように、磁気テープ21上のヘッド走行回数に比例して、磁気テープ21上の微細磁性粉等によるヘッド研磨力が減少するので、ヘッド寿命を延ばすことができる。
しかし、このように複数のダミーヘッドを回転ヘッドドラム1に搭載すれば、コスト上昇が避けられなくなる上に、ダミーヘッドの摩耗による交換も必要となる等、メンテナンスコストの上昇も発生すると言う問題がある。
【0024】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであって、ヘッド・磁気テープ間の当りを確保でき、ダミーヘッドを回転ヘッドドラムに搭載しなくても、ヘッド摩耗を抑えることができる回転磁気ヘッドを提供することを目的としている。
【0025】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するための本発明の回転磁気ヘッドは、ヘッドチップ先端のテープ摺動面に、磁気ギャップの両側に沿った一対の溝を形成して、そのテープ摺動面を、前記磁気ギャップが形成されている帯状の中央テープ摺動面と、その中央テープ摺動面の上下両側に前記一対の溝を隔てて形成されている帯状の上側テープ摺動面及び下側テープ摺動面との上下3つのテープ摺動面に分割し、前記上側テープ摺動面と前記下側テープ摺動面とのうちで、前記中央テープ摺動面より磁気テープに先行して接触される一方のテープ摺動面の厚みを厚く構成し、
前記上側テープ摺動面と前記下側テープ摺動面とのうちで、前記中央テープ摺動面より磁気テープに遅れて接触される他方のテープ摺動面の厚みを薄く構成したものである。
【0026】
上記のように構成された本発明の回転磁気ヘッドは、ヘッドチップ先端のテープ摺動面に形成されていて、磁気ギャップを有する中央テープ摺動面の上下両側に上下一対の溝を隔てて形成されている上側テープ摺動面と下側テープ摺動面とのうちで、中央テープ摺動面より磁気テープに先行して接触される一方のテープ摺動面の厚みを厚くし、中央テープ摺動面より磁気テープに遅れて接触されるテープ摺動面の厚みを薄く構成したので、磁気テープと磁気ギャップを有する中央テープ摺動面との間の当りを確保しながら、先行ヘッドの中央テープ摺動面より磁気テープに先行して接触される厚みの厚い一方のテープ摺動面によって磁気テープ上に付着している微細磁性粉等を幅広く研削することができる。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を適用した回転磁気ヘッドの実施の形態を図1〜図6を参照して説明する。なお、図7〜図12と同一の構造部には同一の符号を付して重複する説明を省く。
【0028】
まず、図1〜図3によって、回転磁気ヘッドの第1の実施の形態を説明する。前述したように、この回転磁気ヘッド6のヘッドチップ11は、先端のテープ摺動面12が帯状の中央テープ摺動面12aと、その中央テープ摺動面12aの上下両側に上下一対の溝14、15を隔てて平行状に形成されている帯状の上側テープ摺動面12b及び下側テープ摺動面12cとの3つのテープ摺動面に分割されていて、中央テープ摺動面12aのほぼ中央に磁気ギャップ13が形成されている。
【0029】
そして、図11で説明したように、この回転磁気ヘッド6が、矢印a方向に定速で走行される磁気テープ21を、その下エッジ21b側から上エッジ21c側に向けて矢印方向にヘリカルスキャン(螺旋形の走査)する方式においては、磁気ギャップ13が形成されている中央テープ摺動面12aより上側テープ摺動面12bが常に先行して磁気テープ21に接触される先行テープ接触面となり、下側テープ摺動面12cは常に中央テープ摺動面12aより遅れて磁気テープ21に接触されるテープ摺動面となる。ちなみに、ここでは、上側テープ摺動面12bが特許請求の範囲で言う一方のテープ摺動面に相当し、下側テープ摺動面12cが特許請求の範囲で言う他方のテープ摺動面に相当している。
【0030】
そこで、この第1の実施の形態では、中央テープ摺動面12aの厚みをT1とし、磁気テープ21に中央テープ摺動面12aより先行して接触される上側テープ摺動面12bの厚みをT2とし、磁気テープ21に中央テープ摺動面12aより遅れて接触される下側テープ摺動面12cの厚みをT3とした時に、T2>T1≧T3に形成したものである。なお、上側の溝14の厚みをT4とし、下側の溝15の厚みをT5とした時に、T4=T5に形成している。
なお、寸法の一例として、T1=約54μm、T2=約150〜200μm、T3=約73μm、T4=約150μm、T5=約150μmとなっている。
【0031】
このように構成された回転磁気ヘッド6のヘッドチップ11の第1の実施の形態によれば、図3に示すように、矢印a方向に定速走行される磁気テープ21の信号記録面21a上をヘッドチップ11がテープ摺動面12によって、「ヘッド1」、「ヘッド2」、「ヘッド3」、「ヘッド4」の順番に一定のトラックピッチPで矢印方向に高速でヘリカルスキャンされる際に、先行ヘッドの走行部分の上側部分に対して、次のヘッドと、またその次のヘッドが「2回走行部分」と「3回走行部分」で示すように2回オーバーラップされることになる。
【0032】
つまり、図10の(B)及び図12の(B)で説明したような、ヘッド当り幅W2を上下均等に大きくしたヘッドチップ11Lとほぼ同じように、先行ヘッドの走行部分(走行軌跡)の上側部分を、先行ヘッドに続く次の2つのヘッドの下側部分が次々に(繰り返し何度も)走行(摺動)して行くことになる。
しかも、図3に示すように、先行ヘッドの次のヘッドの磁気ギャップ13は、「ヘッドギャップより先行走行部分W」で表示している先行ヘッドが先に走行(摺動)し終っている磁気テープ21の信号記録面21aの広幅の古い部分を走行することができる。
【0033】
従って、厚みT2が厚い上側テープ摺動面12bにダミージヘッドとほぼ同等の効果(機能)をも打ることができて、磁気テープ21の信号記録面21aに付着されている微細磁性粉等の研磨力によるヘッドチップ11のテープ摺動面12及び磁気ギャップ13の摩耗であるヘッド摩耗を抑えることができ、ヘッドチップ11の長寿命化を図ることができる。
【0034】
そして、図1に示すように、ヘッドチップ11のテープ摺動面12で、上側テープ摺動面12bの厚みT2を厚くした分、下側テープ摺動面12cの厚みT3を薄くしたことにより、その厚みT3が薄い下側テープ摺動面12cと磁気テープ21との間に入り込む空気量を少なくして、その下側テープ摺動面12cと磁気テープ21との間のスペーシングを著しく小さくすることができるので、ヘッド出力を確保することができる。
【0035】
次に、図4によって、回転磁気ヘッドの第2の実施の形態を説明する。
この第2の実施の形態では、前述した第1の実施の形態におけるT2>T1≧T3の条件に加えて、T4>T5に形成して、寸法を、T4=約160〜200μmに構成したものである。
【0036】
このように、厚みT2が厚い上部テープ摺動面12bの真下に位置する上側溝14の厚みT4を厚く構成すると、この上側溝14内を抜ける空気の負圧効果によって、磁気テープ21を上側テープ摺動面12bに引き付け易くなり、テープ摺動面12全体と磁気テープ21との間のスペーシングをより一層小さくすることができて、ヘッド出力をより一層確保し易くなる。
【0037】
次に、図5及び図6によって、回転磁気ヘッドの第3の実施の形態について説明する。
この第3の実施の形態では、第1の実施の形態における下側溝15の下部を開放部分16によって開放させて、下側テープ摺動面12cを切削し、テープ摺動面12を中央テープ摺動面12aと上側テープ摺動面12bとに2分割したものである。
【0038】
このように、下側溝15の下部を開放部分16によって開放すると、テープ摺動面12の磁気ギャップ13が存在する中央テープ摺動面12aと磁気テープ21との間のスペーシングをより一層小さくすることができて、ヘッド出力をより一層確保し易くなる。
【0039】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記した実施の形態に限定されることなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変更が可能である。
【0040】
例えば、上記した実施の形態では、ヘッドチップ11が磁気テープ21の下エッジ21bから上エッジ21cに向って斜め上方にヘリカルスキャンされる方式であることから、上側テープ摺動面12bと下側テープ摺動面12cとのうちで、中央テープ摺動面12aより磁気テープ21に先行して接触される一方のテープ摺動面は上側テープ摺動面12bとなる。しかし、ヘッドチップ11が磁気テープ21の上エッジ21bから下エッジ21cに向って斜め下方にヘリカルスキャンされる方式であれば、上側テープ摺動面12bと下側テープ摺動面12cとのうちで、中央テープ摺動面12aより磁気テープ21に先行して接触される一方のテープ摺動面は、下側テープ摺動面12cとなる。
従って、本発明の回転磁気ヘッド6は、図1〜図7で示した構造が上下に反転されたものであっても良いことになる。
【0041】
【発明の効果】
以上のように構成された本発明の回転磁気ヘッドは、磁気テープと磁気ギャップを有する中央テープ摺動面との間の当りを確保しながら、先行ヘッドの中央テープ摺動面より磁気テープに先行して接触される厚みの厚い一方のテープ摺動面によって磁気テープ上に付着している微細磁性粉等を幅広く研削することができるようにしたので、厚みの厚い一方のテープ摺動面によってダミーヘッド効果を発揮させることができる。従って、ダミーヘッドを搭載しなくても、ヘッド摩耗を抑えることができて、製造コスト及びメンテナンスを下げることができる。その上、ヘッド当りの確保により、ヘッド出力も確保することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の回転磁気ヘッドのヘッドチップの第1の実施の形態を説明する断面側面図である。
【図2】 同上のヘッドチップの斜視図である。
【図3】 同上のヘッドチップの磁気テープ上での走行状況を説明する概略図である。
【図4】 本発明の回転磁気ヘッドのヘッドチップの第2の実施の形態を説明する断面側面図である。
【図5】 本発明の回転磁気ヘッドのヘッドチップの第3の実施の形態を説明する断面側面図である。
【図6】 同上のヘッドチップの斜視図である。
【図7】 回転ヘッドドラム全体の斜視図である。
【図8】 同上の回転ヘッドドラムの回転ドラムの下面図とヘッドチップの斜視図である。
【図9】 従来の一般的なヘッド当り幅が小さいヘッドチップの斜視図である。
【図10】 ヘッド当り幅が小さいヘッドチップとヘッド当り幅を大きくした場合のヘッドチップとにおける磁気テープ・ヘッド間のスペーシングの違いを説明する断面側面図である。
【図11】 ヘッドチップによる磁気テープのヘリカルスキャンを説明する概略図である。
【図12】 ヘッド当り幅が小さいヘッドチップとヘッド当り幅が大きいヘッドチップとの磁気テープ上での走行状況の違いを説明する概略図である。
【図13】 磁気テープ上のヘッド走行回数が多くなることによる磁気テープのヘッド研磨力の減少を説明するグラフである。
【符号の説明】
6は回転磁気ヘッド、11はヘッドチップ、12はテープ摺動面全体、12aは中央テープ摺動面、12bは上側テープ摺動面(一方のテープ摺動面)、12cは下側テープ摺動面(他方のテープ摺動面)、13は磁気ギャップ、14は上側溝、15は下側溝、16は開放部分、21は磁気テープ、21aは信号記録面、21bは下エッジ、21cは上エッジである。

Claims (3)

  1. ヘリカルスキャン方式の記録再生装置の回転ヘッドドラムに搭載されて、磁気テープをヘリカルスキャンする回転磁気ヘッドであって、
    ヘッドチップ先端のテープ摺動面に、磁気ギャップの両側に沿った一対の溝を形成して、そのテープ摺動面を、前記磁気ギャップが形成されている帯状の中央テープ摺動面と、その中央テープ摺動面の上下両側に前記一対の溝を隔てて形成されている帯状の上側テープ摺動面及び下側テープ摺動面との上下3つのテープ摺動面に分割し、
    前記上側テープ摺動面と前記下側テープ摺動面とのうちで、前記中央テープ摺動面より磁気テープに先行して接触される一方のテープ摺動面の厚みを厚く構成し、
    前記上側テープ摺動面と前記下側テープ摺動面とのうちで、前記中央テープ摺動面より磁気テープに遅れて接触される他方のテープ摺動面の厚みを薄く構成した
    ことを特徴とする回転磁気ヘッド。
  2. ヘリカルスキャン方式の記録再生装置の回転ヘッドドラムに搭載されて、磁気テープをヘリカルスキャンする回転磁気ヘッドであって、
    ヘッドチップ先端のテープ摺動面に、磁気ギャップの両側に沿った一対の溝を形成して、そのテープ摺動面を、前記磁気ギャップが形成されている帯状の中央テープ摺動面と、その中央テープ摺動面の上下両側に前記一対の溝を隔てて形成されている帯状の上側テープ摺動面及び下側テープ摺動面との上下3つのテープ摺動面に分割し、
    前記上側テープ摺動面と前記下側テープ摺動面とのうちで、前記中央テープ摺動面より磁気テープに先行して接触される一方のテープ摺動面の厚みを厚く構成し、
    前記上側テープ摺動面と前記下側テープ摺動面とのうちで、前記中央テープ摺動面より磁気テープに遅れて接触される他方のテープ摺動面の厚みを薄く構成し、
    前記中央テープ摺動面と前記一方のテープ摺動面との間の溝の厚みを前記中央テープ摺動面と前記他方のテープ摺動面との間の溝の厚みより厚く構成した
    ことを特徴とする回転磁気ヘッド。
  3. ヘリカルスキャン方式の記録再生装置の回転ヘッドドラムに搭載されて、磁気テープをヘリカルスキャンする回転磁気ヘッドであって、
    ヘッドチップ先端のテープ摺動面に、磁気ギャップの上側又は下側に沿った一対の溝を形成して、そのテープ摺動面を、前記磁気ギャップが形成されている帯状の中央テープ摺動面と、その中央テープ摺動面の上側又は下側に前記溝を隔てて形成されている帯状の上側テープ摺動面又は下側テープ摺動面との上下2つのテープ摺動面に分割し、
    磁気テープに前記中央テープ摺動面より先行して接触される前記上側テープ摺動面又は前記下側テープ摺動面の厚みを前記中央テープ摺動面の厚みより厚く形成し、
    前記中央テープ摺動面に対する前記上側テープ摺動面又は前記下側テープ摺動面とは反対側は前記溝と平行な開放部分によって開放させた
    ことを特徴とする回転磁気ヘッド。
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