JP3157062B2 - ヘッドドラム装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、磁気記録再生装置（Ｖ
ＴＲ）に用いられるヘッドドラム装置に関するものであ
る。

【０００２】

【従来の技術】近年、磁気記録を利用した記録再生装置
はＶＴＲ等に幅広く使用されている。最近の傾向とし
て、デジタル化等による信号量の増加が著しく、デジタ
ルＶＴＲに使用されるヘッドドラム装置は、従来と比較
して３倍以上の高速回転化が要求されている。又記録ト
ラックの狭トラック化、磁気テープの薄手化が進むと、
磁気テープは走行時に腰の弱い状態となる。

【０００３】このような状況下においても、ヘッドドラ
ム装置は記録されたトラックを磁気ヘッドが正しくトレ
ースし、短波長な記録信号を効率良く取り出すことが要
求される。又、ヘッドドラム装置間の互換を保つため、 １）リニアリティの確保 ２）テープ走行安定性の確保 ３）良好なヘッドタッチ 等の機能が要求され、その解決に向け各種の取り組みが
行われている。

【０００４】従来のヘッドドラム装置について説明す
る。図５は第１の従来例におけるヘッドドラム装置Ａの
外観を示す斜視図である。ヘッドドラム装置Ａは上ドラ
ム固定方式のものである。本図において、下ドラム１は
固定のドラムであり、磁気テープの当接面である外周基
準面に沿ってヘリカル状のリード２が形成されている。
リード２は磁気テープの下エッジと当接して、磁気テー
プを案内するガイドである。

【０００５】上ドラム３は下ドラム１と一定の隙間４を
隔てて設けられた固定のドラムであり、下ドラム１の外
周基準面とほぼ同一外形の外周基準面を有している。磁
気ヘッド５は下ドラム１及び上ドラム２間に設けられた
回転ベース（図示せず）に固定され、回転ベースの回転
により磁気テープをヘリカル走査するヘッドである。回
転ベースは駆動モータ６により駆動されて回転する。

【０００６】このように構成されたヘッドドラム装置Ａ
において、磁気テープ（図示せず）は、記録又は再生動
作時には上ドラム３、下ドラム１のヘッドドラム外周基
準面にリード２に沿うような形でヘリカル状に回巻され
る。磁気ヘッド５は駆動モータ６により、上ドラム３の
上面より見て反時計方向に回転する。

【０００７】図６は上ドラム３と下ドラム１との隙間４
における磁気テープ７の当接状態を示す部分断面図であ
る。本図に示すように磁気テープ７は走行時に隙間４に
大きく落ち込み、上ドラム３又は下ドラム１のエッジ部
との接触が強くなる。

【０００８】図７は第２の従来例におけるヘッドドラム
装置Ｂの外観を示す斜視図である。ヘッドドラム装置Ｂ
は中ドラム回転方式のものである。本図においてリード
２を含む下ドラム１、固定の上ドラム３、磁気ヘッド
５、駆動モータ６が設けられていることは第１の従来例
と同様である。中ドラム８は下ドラム１と上ドラム３と
の間に設けられた回転ドラムであり、駆動モータ６によ
り回転する。磁気ヘッド５は中ドラム８の外周部に設け
た窓に、先端部が僅かに突出するよう固定される。

【０００９】磁気テープ（図示せず）は上ドラム３、中
ドラム８、下ドラム１の外周基準面に股がってリード２
に沿うような形でヘリカル状に回巻される。中ドラム８
は駆動モータ６により駆動され、上面より見て反時計方
向に回転する。

【００１０】図８はヘッドドラム装置Ｂにおける磁気テ
ープ７の当接状態を示す部分断面図であり、図９は磁気
テープ７とヘッドドラム装置Ｂの当接状態を示す側面図
である。図８に示すように上ドラム３は固定しているた
め、磁気テープ７は中ドラム８の回転の影響を受け、適
度に外周基準面からから浮上する。しかしながら、磁気
テープ７と上ドラム３の下端エッジとは接触し易くな
る。又図９に示すように磁気テープ７が矢印Ａ方向に走
行する巻戻時には、粘性で搬送された磁気テープ７の表
面の空気が上ドラム３のエッジでそぎ落とされる。この
ため上ドラム３上に空気を巻き込みにくく、空気層の形
成が貧弱になる。従って上ドラム３と磁気テープ７の接
触が下ドラム１に比較して強くなる。

【００１１】

【発明が解決しようとする課題】第１の従来例のヘッド
ドラム装置Ａでは、上下の固定ドラム３，１の隙間４が
大きく、図６に示すように薄手の磁気テープ７は隙間４
に落ち込み易くなる。この場合磁気テープ７が上ドラム
３、下ドラム１の夫々のエッジ部に当接し、上ドラム
３、下ドラム１の外周基準面上に空気を巻き込みにくく
なる。このため空気層の形成が貧弱になり、磁気テープ
７の走行負荷が増えると共に、上ドラム３、下ドラム１
の各エッジ部で磁気テープ７が接触し続け、損傷を起こ
すという問題点があった。

【００１２】又、第２の従来例のヘッドドラム装置Ｂで
は、上ドラム３及び下ドラム１が固定されて中ドラム８
が回転しているため、ヘッドドラム装置Ａのような問題
点は解消される。しかし、図９に示すように磁気テープ
７が逆方向に走行した場合、上ドラム３の外周基準面に
形成される空気層が希薄になり、磁気テープ７の走行負
荷に若干の増加がみられるという問題点があった。

【００１３】本発明は、このような従来の問題点に鑑み
てなされたものであって、磁気テープの走行負荷が少な
く、かつ薄手の磁気テープを用いても磁気ヘッドの接触
の良好な磁気記録再生装置のヘッドドラム装置を提供す
ることを目的とする。

【００１４】

【００１５】

【課題を解決するための手段】本願の請求項１の発明
は、磁気テープをヘリカル状に案内するリードと磁気テ
ープの巻付面となる外周基準面とを有する固定の下ドラ
ムと、下ドラムと同軸に取り付けられ、磁気テープの巻
付面となる外周基準面を有する固定の上ドラムと、下ド
ラムと上ドラムとの間に同軸に回転可能に取り付けら
れ、磁気テープの巻付面となる外周基準面を有する中ド
ラムと、中ドラムの外周部に取付けられる磁気ヘッド
と、中ドラムを回転させる駆動手段と、を有するヘッド
ドラム装置において、中ドラムの外周部の上ドラム側近
傍に、磁気テープとの当接面が外周基準面から突出する
ように取付けられ、且つ、磁気ヘッドのコア材質より硬
い材質で構成された凸部を有すると共に、凸部は、走査
方向の横幅が少なくとも１セグメント内の総トラック幅
以上のものであることを特徴とするものである。

【００１６】本願の請求項２の発明は、磁気テープをヘ
リカル状に案内するリードと磁気テープの巻付面となる
外周基準面とを有する固定の下ドラムと、下ドラムと同
軸に取り付けられ、磁気テープの巻付面となる外周基準
面を有する固定の上ドラムと、下ドラムと上ドラム間に
同軸に回転可能に取り付けられ、磁気テープの巻付面と
なる外周基準面を有する中ドラムと、中ドラムの外周部
に取付けられる磁気ヘッドと、中ドラムを回転させる駆
動手段と、を有するヘッドドラム装置において、中ドラ
ムの外周部の上ドラム側近傍に、磁気テープとの当接面
が外周基準面から突出するように取付けられ、且つ、中
ドラムの外周基準面の材質より硬い材質で構成された凸
部を有すると共に、凸部は、走査方向の横幅が少なくと
も１セグメント内の総トラック幅以上のものであること
を特徴とするものである。

【００１７】

【００１８】

【作用】このような特徴を有する本願の請求項１，２の
発明によれば、中ドラムが回転すると、凸部が磁気テー
プを持ち上げ、上ドラムの外周基準面と磁気テープとの
間に安定した空気層が形成される。このため磁気テープ
を逆方向に走行しても、上ドラムのエッジと磁気テープ
が接触せず、磁気テープの走行負荷が軽減されると共
に、磁気テープの損傷も発生しにくくなる。又凸部は材
質が磁気ヘッドや中ドラムの材質より硬いもので構成さ
れるので、凸部の寿命も長くなる。更に、凸部の走査幅
が１セグメント幅以上であるため、各トラックのクリー
ニング作用が確実となる。

【００１９】

【実施例】本発明の一実施例におけるヘッドドラム装置
について図面を参照しつつ説明する。図１は本実施例の
ヘッドドラム装置Ｃの外観を示す斜視図であり、図２は
磁気ヘッドと磁気テープの当接状態を示す部分断面図で
ある。

【００２０】図１に示すようにヘッドドラム装置Ｃは、
リード２を含む下ドラム１、上ドラム３、磁気ヘッド
５、駆動モータ６を有していることは前述した従来例と
同様であり、それらの説明は省略する。中ドラム１０は
下ドラム１と上ドラム３間に設けられた回転ドラムであ
り、駆動モータ６により駆動されて回転する。中ドラム
１０には例えばアルミ合金材料が用いられる。そして中
ドラム１０には図２に示すように、上面の上ドラム３と
対向する面より複数の凸部１１が外周基準面から僅かに
突き出るように設けられている。凸部１１は図１及び図
３に示すように磁気ヘッドと略同一外形を有しており、
例えばセラミック又はフェライト等の高硬度の材質で形
成される。

【００２１】磁気ヘッド５は、中ドラム１０の下ドラム
１と対向する下面の外周部分であって、中ドラム１０の
窓から先端部が外周基準面から僅かに突出するよう固定
される。図３は中ドラムにおける磁気ヘッドの配置を示
す平面図である。図３に示すように磁気ヘッド５を、積
層アモルファスの記録ヘッド５ａ，５ｂ、積層アモルフ
ァスの再生ヘッド５ｃ，５ｄ、フェライトの消去ヘッド
５ｅ，５ｆで構成するものとする。記録ヘッド５ａ，５
ｂ、及び再生ヘッド５ｃ，５ｄの積層アモルファスはフ
ェライトより軟らかい材質で形成される。又凸部１１の
材質はフェライトやセラミックであるので、記録ヘッド
５ａ，５ｂ、及び再生ヘッド５ｃ，５ｄより硬く、摩擦
が少ない。磁気ヘッド５は例えば図３に示すように、時
計方向に記録ヘッド５ａ，凸部１１ａ，再生ヘッド５
ｄ，消去ヘッド５ｆ，記録ヘッド５ｂ，凸部１１ｂ，再
生ヘッド５ｃ，消去ヘッド５ｅが夫々約４５度分割とな
るよう配列されている。

【００２２】このように構成されたヘッドドラム装置Ｃ
において、磁気テープ７は下ドラム１、中ドラム１０、
上ドラム３の各外周基準面に股がってリード２に沿うよ
うヘリカル状に回巻される。そして中ドラム１０は駆動
モータ６により駆動されて回転する。この場合凸部１１
は図２に示すように磁気テープ７を持ち上げる。このと
き凸部１１は中ドラム１０の上面の上ドラム３側に設け
られているため、上ドラム３の外周基準面の下端部で凸
部１１が通過するときに磁気テープ７を持ち上げ、この
部分に空気を吸引する。次に凸部１１が通り過ぎても、
磁気テープ７の持ち上げた空間に空気が貯り、それによ
って磁気テープ７と上ドラム３が空気層によって互いに
隔離された状態となる。

【００２３】更に磁気テープ７は、図９に示す矢印Ａ方
向に走行したとき、磁気テープ７との粘性による空気層
を上ドラム３の外周基準面の中心部まで搬送する。従っ
て磁気テープ７と上ドラム３との間に安定した空気層が
形成され、逆方向の走行時でも磁気テープ７の走行負荷
が軽くなる。又前述のように凸部１１の材質は高硬度の
ものであるので、アルミ合金で形成された中ドラム１０
より摩耗が少なくなる。即ち凸部１１は中ドラム１０よ
り長寿命となる。

【００２４】図４はヘッドドラム装置におけるトラック
パターンを示す説明図である。中ドラム１０が１回転し
たときに磁気テープ７を走査するトラック幅をセグメン
トＳとする。図４は１セグメントＳを４トラックで構成
した例を示すが、凸部１１の幅はセグメントＳより広
く、１回の走行で４トラック幅以上の磁気テープを走査
する。このため、１トラック当たりの凸部１１の走行回
数が増加し、磁気テープ７上のゴミが凸部１１によって
除去されやすくなり、磁気テープ７の表面粗さが良好に
なる。更に凸部１１は摩耗も少なく、積層アモルファス
の磁気ヘッド５の寿命より長くなる。

【００２５】

【発明の効果】以上のように本発明によれば、中ドラム
の外周部に凸部を設けることにより、磁気テープと上ド
ラム間に空気層を十分確保することができる。こうする
と中ドラム回転方式のヘッドドラム装置において、磁気
テープの走行負荷を軽減することができ、凸部の突出し
効果は磁気ヘッドの寿命もより長続きする。更に磁気テ
ープは凸部によってクリーニングされる。従って薄手の
磁気テープに信号を高密度に記録する際、その信頼性が
大幅に向上するという効果が得られる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施例におけるヘッドドラム装置の
外観を示す斜視図である。

【図２】本実施例のヘッドドラム装置における磁気ヘッ
ドと磁気テープの当接状態を示す部分断面図である。

【図３】本実施例のヘッドドラム装置の中ドラムにおけ
る磁気ヘッドの配置を示す平面図である。

【図４】本実施例のヘッドドラム装置における磁気テー
プのトラックパターンを示す説明図である。

【図５】第１の従来例におけるヘッドドラム装置の外観
を示す斜視図である。

【図６】第１の従来例のヘッドドラム装置における磁気
テープとドラムの当接状態を示す部分断面図である。

【図７】第２の従来例におけるヘッドドラム装置の外観
を示す斜視図である。

【図８】第２の従来例のヘッドドラム装置における磁気
テープとドラムの当接状態を示す部分断面図である。

【図９】ヘッドドラム装置における磁気テープの走行方
向を示す説明図である。

【符号の説明】

１ 下ドラム ２ リード ３ 上ドラム ５ 磁気ヘッド ５ａ，５ｂ 記録ヘッド ５ｃ，５ｄ 再生ヘッド ５ｅ，５ｆ 消去ヘッド ６ 駆動モータ ７ 磁気テープ １０ 中ドラム １１ 凸部

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.⁷，ＤＢ名) G11B 15/61

Claims (2)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 磁気テープをヘリカル状に案内するリー
   ドと前記磁気テープの巻付面となる外周基準面とを有す
   る固定の下ドラムと、 前記下ドラムと同軸に取り付けられ、前記磁気テープの
   巻付面となる外周基準面を有する固定の上ドラムと、 前記下ドラムと前記上ドラムとの間に同軸に回転可能に
   取り付けられ、前記磁気テープの巻付面となる外周基準
   面を有する中ドラムと、 前記中ドラムの外周部に取付けられる磁気ヘッドと、 前記中ドラムを回転させる駆動手段と、を有するヘッド
   ドラム装置において、 前記中ドラムの外周部の前記上ドラム側近傍に、磁気テ
   ープとの当接面が外周基準面から突出するように取付け
   られ、且つ、前記磁気ヘッドのコア材質より硬い材質で
   構成された凸部を有すると共に、前記凸部は、走査方向
   の横幅が少なくとも１セグメント内の総トラック幅以上
   のものであること特徴とするヘッドドラム装置。
2. 【請求項２】 磁気テープをヘリカル状に案内するリー
   ドと前記磁気テープの巻付面となる外周基準面とを有す
   る固定の下ドラムと、 前記下ドラムと同軸に取り付けられ、前記磁気テープの
   巻付面となる外周基準面を有する固定の上ドラムと、 前記下ドラムと前記上ドラム間に同軸に回転可能に取り
   付けられ、前記磁気テープの巻付面となる外周基準面を
   有する中ドラムと、 前記中ドラムの外周部に取付けられる磁気ヘッドと、 前記中ドラムを回転させる駆動手段と、を有するヘッド
   ドラム装置において、 前記中ドラムの外周部の前記上ドラム側近傍に、磁気テ
   ープとの当接面が外周基準面から突出するように取付け
   られ、且つ、中ドラムの外周基準面の材質より硬い材質
   で構成された凸部を有すると共に、前記凸部は、走査方
   向の横幅が少なくとも１セグメント内の総トラック幅以
   上のものであることを特徴とするヘッドドラム装置。