JP3757848B2 - 筆記板用水性インキ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は筆記板用水性インキに関するものであり、更に詳細には、非浸透性である樹脂板、金属板、ホーロー板、ガラス板、焼き付け塗装板、フィルムなどの筆記面に筆記することができ、且つ、濡れ雑巾、ウェットティッシュ、湿式黒板拭き等の濡れた拭き材で容易にその筆跡を消去することが可能な筆記板用水性インキに関する。尚、本発明において筆記板用インキとは、上記樹脂板、金属板、ホーロー板、ガラス板、焼き付け塗装板、フィルムなどの非浸透性筆記面に筆記可能なインキを意味し、所謂ホワイトボードのようなもののみに使用するインキを意味するものではない。
【0002】
【従来の技術】
従来、非吸収面に筆記した筆跡が消去可能である筆記板用水性インキ組成物が数々知られている。これら筆記板用水性インキ組成物は、例えば、特開平3−62863号公報、特開平4−239569号公報、特開平6−122849号公報などに開示されているように、顔料と樹脂と剥離剤とからなっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の筆記板用水性インキは、非浸透性である筆記面での筆跡の消去性は可能であるが、その反面、剥離剤が含まれており、筆跡に触れる事により簡単に消えてしまう為、手や服を汚してしまったり、筆跡が読みとれなくなってしまうという問題点を有している。
本発明は、上記、単に擦過したのみでは剥離せず、しかも、消去しようとしたときには容易に消去可能な筆記板用水性インキを提供することを課題とする。
【0004】
【問題を解決するための手段】
本発明は、顔料と、ケイ酸アルミニウムと、アクリル系樹脂エマルションと、ポリエチレンワックスエマルションと、水とを少なくとも含む筆記板用水性インキを要旨とするものである。
【0005】
以下に本発明の各成分について詳細に説明する。
顔料は着色剤として使用するものであって、従来公知のアゾ系顔料、縮合ポリアゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、インジゴ系顔料、チオインジゴ系顔料などの有機顔料やカーボンブラック、紺青、ベンガラ、酸化チタン等の無機顔料及びアルミニウム粉末、真鍮粉末などの金属粉顔料や、これらの顔料、蛍光顔料及びパール顔料などの中から、筆記板用水性インキ中に微粒子として安定に分散し得るものを1種または2種以上を適宣選択して用いることができる。その使用量は、顔料の種類や他のインキ成分により異なるものの、筆記板用水性インキ全量に対して1〜40重量%、好ましくは5〜30重量%である。
【0006】
ケイ酸アルミニウムは、水性顔料分散液中において、隠蔽性を付与するものであるが、むしろ顔料と併用することにより、顔料単独で使用するより隠蔽性が向上することができる隠蔽性向上のための補助剤及び筆記した文字を遠くからでも見やすくするつや消し材として使用される。
その使用量は、筆記板用水性インキ全量に対して1〜20重量%、好ましくは5〜15重量%である。
【0007】
アクリル系樹脂エマルションは、顔料の分散及び塗膜形成附与という目的で使用するものであり、特に限定なく使用可能であるが、アクリル酸エステルの重合物またはアクリル酸エステルとスチレンとの共重合物のエマルションが好ましく用いられる。
具体的には、アクリル酸エステルの重合物としてはプライマルAC−22、同AC−261、同AC−73、同AC−3444、同AC−2235(以上、ローム・アンド・ハース・ジャパン(株)製)、JSRアクリルエマルションAE322、同517、同513A、同815(以上、日本合成ゴム(株)製)、モビニール700、同710、同727、同744、同745、同747、同930、同931、同DM772、同DM774(以上、ヘキスト合成(株)製)などが挙げられる。アクリル酸エステルとスチレンの共重合物のエマルションとしてはモビニール707、同728、同同860、同861、同933、同946、同DM60(以上、ヘキスト合成(株)製)、ニカゾールRX−291、同RX−383、同RX−284A、同RX−533K、同RX−78B、同RX−568(以上、日本カーバイド工業(株)製)、ジョンクリル61J、同62,同450、同501(以上ジョンソン(株)製)などが挙げられる。これらのアクリル系樹脂エマルションは、1種又は2種以上が使用可能である。
これらのアクリル系樹脂エマルションの使用量は、筆記板用水性インキ全量に対してアクリル系樹脂エマルションの固形分量として1〜10重量%、好ましくは2〜7重量%である。
【0008】
ポリエチレンワックスエマルションは、エチレン低重合体をノニオン系界面活性剤やアニオン系界面活性剤などの界面活性剤を用い水に分散させたものである。エチレン低重合体は、エチレンの重合、高分子量ポリエチレンの分解、高分子量ポリエチレン製造の際に副生する低重合体の分離という3種の製法により得ることができる。ポリエチレンワックスエマルションにおけるポリエチレンの分子量は、500〜10,000のものが好ましい。
ポリエチレンワックスエマルションは、筆跡の塗膜形成附与性及び消去性を向上する目的で使用するものであり、特に限定無く使用可能である。
具体的には、ポリエム20、同40J(以上、ローム・アンド・ハース・ジャパン(株)製)、ハイテックE−6000、同E−7058、同E−4A、同E−4B、同E−100、同E−103N、同E−68A(以上、東邦化学工業(株)製)、ジョンワックスJW−24、同JW−554(以上、ジョンソン(株)製)などが挙げられる。
これらのポリエチレンワックスエマルションの使用量は、筆記板用水性インキ全量に対してポリエチレンワックスエマルション中の固形分量として1〜10重量%、好ましくは2〜7重量%である。
【0009】
更に、本発明による筆記板用水性インキは、筆跡の乾燥性を高める乾燥促進剤として、低級アルコールを使用することも可能である。低級アルコールとしてはエタノール、ノルマルプロパノール、イソプロピルアルコール、ノルマルブチルアルコール、イソブチルアルコール等が挙げられる。この低級アルコールの使用量はインキ中に含まれる上記エマルションを破壊しない程度であることが必要であり、1〜15重量部、好ましくは2〜10重量部である。
【0010】
以上に示した成分以外に必要に応じて、pH調整材、防腐剤、防黴剤、湿潤剤、粘度調整剤、凍結防止剤、ペン先乾燥防止剤、消泡剤、または各種溶剤など、種々の添加剤を適宣選択して使用することができる。
【0011】
尚、本発明の筆記板用水性インキの製造方法は、上記せる各成分を必要量混合し、ホモミキサー、ラボミキサー等の高速撹拌機や、ボールミル、サンドミルまたはビーズミル等の分散機にて混合・分散することにより容易に得ることができる。
【0012】
【作用】
本願発明の筆記板用水性インキは、アクリル樹脂エマルションと、ポリエチレンワックスエマルションとが混合して形成した皮膜からなる。アクリル樹脂のみでは被筆記面に対する定着性が良いため、単に擦過した程度では剥離が生ぜず、ポリエチレンワックスエマルションを併用することにより、塗膜中の乳化剤とポリエチレンワックスとにより耐水性が低くなり、水で濡れたもので拭くと筆跡が消去できる。
【0013】
【実施例】
以下に本発明を実施例に従って更に詳細に説明する。
Figure 0003757848
上記成分をボールミルにて12時間撹拌して筆記板用水性インキを得た。
【0014】
実施例2
C.Iピグメントレッド170 2.0重量部
C.Iピグメントホワイト6 13.0重量部
C.Iピグメント ホワイト19 11.0重量部
モビニール727 10.0重量部
ジョンワックスJW−554 10.0重量部
プロピレングリコール 4.0重量部
イソプロピルアルコール 4.0重量部
プロクセルGXL(S) 0.3重量部
水 45.7重量部
上記成分をボールミルにて24時間撹拌して筆記板用水性インキを得た。
【0015】
実施例3
C.Iピグメントブルー15:6 1.0重量部
C.Iピグメントホワイト6 14.0重量部
C.Iピグメントホワイト19 10.0重量部
ジョンクリル61J 8.0重量部
ハイテックE−68A 8.0重量部
グリセリン 7.0重量部
エチルアルコール 3.0重量部
ノルマルブチルアルコール 2.0重量部
プロクセルGXL(S)(前述) 0.2重量部
水 46.8重量部
上記成分をボールミルにて48時間分散して筆記板用水性インキを得た。
【0016】
実施例4
C.Iピグメントグリーン7 1.0重量部
C.Iピグメントホワイト6 13.0重量部
C.Iピグメントホワイト19 11.0重量部
ニカゾールRX−638A 6.0重量部
ポリエム40J 6.0重量部
グリセリン 7.0重量部
エチルアルコール 3.0重量部
ノルマルプロピルアルコール 3.0重量部
プロクセルGXL(S)(前述) 0.2重量部
水 49.7重量部
上記各成分をボールミルにて48時間分散して筆記板用水性インキを得た。
【0017】
実施例5
C.Iピグメントオレンジ13 2.0重量部
C.Iピグメントホワイト6 14.0重量部
C.Iピグメントホワイト19 9.0重量部
モビニール728 10.0重量部
ハイテックE−4A 5.0重量部
グリセリン 7.0重量部
エチルアルコール 3.0重量部
プロクセルGXL(S)(前述) 0.2重量部
水 49.8重量部
上記各成分をボールミルにて12時間分散して筆記板用水性インキを得た。
【0018】
実施例6
C.Iピグメントイエロー12 2.0重量部
C.Iピグメントホワイト6 13.0重量部
C.Iピグメントホワイト19 10.0重量部
プライマルAC−3444 6.0重量部
ポリエム20 7.0重量部
エチレングリコール 5.0重量部
エチルアルコール 3.0重量部
イソプロピルアルコール 2.0重量部
プロクセルGXL(S)(前述) 0.2重量部
水 51.8重量部
上記各成分をボールミルにて24時間分散して筆記板用水性インキを得た。
【0019】
実施例7
C.Iピグメントバイオレット23 0.5重量部
C.Iピグメントホワイト6 15.0重量部
C.Iピグメントホワイト19 8.0重量部
モビニール705 7.0重量部
ジョンワックスJW−24 12.0重量部
グリセリン 7.0重量部
エチルアルコール 3.0重量部
プロクセルGXL(S) 0.2重量部
水 47.3重量部
上記各成分をボールミルにて48時間分散して筆記板用水性インキを得た。
【0020】
実施例8
C.Iピグメントホワイト6 15.0重量部
C.Iピグメントホワイト19 12.0重量部
ジョンクリル450 8.0重量部
ハイテックE−7058 8.0重量部
プロピレングリコール 7.0重量部
エチルアルコール 8.0重量部
イソプロピルアルコール 2.0重量部
プロクセルGXL(S)(前述) 0.2重量部
水 33.8重量部
上記各成分をボールミルにて12時間分散して筆記板用水性インキを得た。
【0021】
比較例1
実施例1において、ハイテックE−1000をプライマルAC−261に変えた以外は実施例1と同様になして筆記板用水性インキを得た。
【0022】
比較例2
実施例3において、ジョンクリル61JとハイテックE−68Aをポリビニルアルコール8重量部に変え、剥離剤としてジメチルシロキサン−ポリエーテル共重合物5重量部と水を加え100重量部にした以外は実施例3と同様になして筆記板用水性インキを得た。
【0023】
比較例3
実施例5において、ハイテックE−4Aを水に変えた以外は、実施例5と同様になして筆記板用水性インキを得た。
【0024】
比較例4
実施例8において、ジョンクリル450とハイテックE−7058をポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル2重量部と水に変え100重量部にした以外は、実施例8と同様になして筆記板用水性インキを得た。
【0025】
以上の実施例1〜8及び比較例1〜4で得た筆記板用水性インキを、攪拌用ステンレスボールを配置したインキ収容部にインキを直接充填し、インキ収容部とペン先との間に配置した弁機構をペン先ノックにより開弁し、前記インキをペン先に吐出して筆記を可能とする型の生インキ式筆記具に充填して筆記用試験サンプルを作成し、筆記試験及び消去性試験を行なった。
結果を表1に示す。
【0026】
【表1】
Figure 0003757848
【0027】
※1 定着試験
▲1▼ホーロー製ホワイトボード及び▲2▼メラミン樹脂性ホワイトボードに5×5cmの四角形の線を筆記し、10分後に筆跡を指で最高で10回擦り、筆跡が消えるまでの回数を測定した。
>10:10回擦っても、筆跡に変化無い
【0028】
※2 消去性試験
▲1▼ホーロー製ホワイトボード及び▲2▼メラミン樹脂製ホワイトボードに5×5cmの四角形の線を筆記し、10分後に筆跡を濡れ雑巾で最高で10回拭き、筆跡が消えるまでの回数を測定した。
>10:10回拭いても筆跡は消えない
【0029】
【発明の効果】
以上のごとく、本発明の筆記板用水性インキは、非浸透性である筆記面上に筆記でき、その筆跡が濡れ雑巾、ウェットティッシュ、湿色黒板拭き等の濡れた拭き材による消去に優れたものである。

Claims (3)

  1. 顔料と、ケイ酸アルミニウムと、アクリル系樹脂エマルションと、ポリエチレンワックスエマルションと、水とを少なくとも含むことを特徴とする筆記板用水性インキ。
  2. アクリル系樹脂エマルションが、アクリル酸エステルの重合物またはアクリル酸エステルとスチレンとの共重合物のエマルションであることを特徴とする請求項1記載の筆記板用水性インキ組成物。
  3. ポリエチレンワックスエマルションが、分子量500〜10,000のポリエチレンのエマルションであることを特徴とする請求項1又は2記載の筆記板用水性インキ組成物。
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