JP3757499B2 - サーマルヘッド - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、サーマルプリンタに用いて好適なサーマルヘッドに関する。
【0002】
【従来の技術】
カラープリンタに用いられる一列に発熱抵抗体が形成されたシングルラインのサーマルヘッドの構造を、図6および図7を参照して説明する。図6は、発熱抵抗体が一列に形成されているシングルラインのサーマルヘッドの外観図である。図7は図6のサーマルヘッドのA−A’線視断面図である。これらの図において、101はアルミナ基板であり、この基板の上面にサーマルヘッドの各部品が形成され、下面にヒートシンク102が接着されている。ヒートシンク102はサーマルヘッドの動作において、各部で発生した熱を空気中に効率的に放射させる。
【0003】
103は発熱抵抗体であり、共通電極104と個別リード電極105との間の通電状態において熱エネルギーを発生するものである。共通電極104は発熱抵抗体103、103、・・・の全てに共通の電極であり、発熱抵抗体103、103、・・・のコンタクト部106に共通に接続されている。個別リード電極105は、発熱抵抗体103、103、・・・のおのおののコンタクト部107に接続され、IC(Integrated Circuit)108の端子109、109、・・・にそれぞれに配線されている。
【0004】
110はグレースであり、アルミナ基板101の上面に反紡錘形状に形成され、印字処理時の余熱として発熱抵抗体103の発生した熱エネルギーを蓄えるものである。111は接続用フレキシブルプリント板であり、図示されていないプリンタ本体のコントローラと接続する配線が形成されているものである。112は保護膜であり、印字における紙との接触による磨耗から発熱抵抗体103および電極104、105を保護する。
【0005】
次に、図6の上述したサーマルヘッドの製造方法を説明する。まず、アルミナ基板101の表面上のゴミを除去するため、アルミナ基板101の洗浄が行われる。洗浄後、スパッタリング装置により、アルミナ基板101の上面に所定のシート抵抗となるように、発熱抵抗体103の薄膜材料をスパッタリングにより形成させる。そして、スパッタリングまたは蒸着法により、発熱抵抗体103の薄膜材料の上面に電極材料(たとえばアルミニウム)を形成させる。
【0006】
次に、上記アルミニウム上にフォトレジストをコーティングされ、フォトリソグラフィーにより共通電極104および個別リード電極105のレジストパターンが作成される。このレジストパターンをマスクとして、アルミニウムをエッチングし、共通電極104および個別リード電極105を形成する。そして、レジストが全て除去され、発熱抵抗体103の薄膜材料、共通電極104および個別リード電極105上に新たにレジストがコーティングされる。
【0007】
次に、印字ドットごとの発熱抵抗体103を形成するレジストパターンが、フォトリソグラフィーにより形成される。そして、発熱抵抗体103の薄膜材料がエッチングにより各ドット毎の発熱抵抗体103に分離される。次に、電極形成用のマスクを用い、スパッタリングにより、グレース110上部に保護膜112が形成される。そして、熱処理により発熱抵抗体の抵抗値の安定化、および発熱抵抗体と電極材料との密着の安定化が行われる。
【0008】
次に、共通電極104上のIC領域に絶縁膜を堆積させ、このIC領域上にIC108がダイボンディングされる。そして、IC108の端子109と個別リード電極105とがワイヤボンディングにより接続され、IC108、ワイヤボンド部分および個別リード電極105の一部分が樹脂により封止される。上述してきた製造工程により、シングルラインのサーマルヘッドが製造される。
【0009】
また、第2の従来例として図8および図9で示されたサーマルヘッド(特願昭62−217627)がある。図8は、複数の発熱抵抗体が並列に2列で配設されたダブルヘッドラインのサーマルヘッドの平面図である。図9はB−B’線視断面図である。この図から、アルミナ基板200上において、グレーズガラス基板201とグレーズガラス基板202とは、金属板203を挟んで繋ぎ合わされ構成されているものである。金属板203は共通電極であり、他の共通電極204と接続されている。
【0010】
205は、発熱抵抗体であり、個別リード電極206に対しコンタクト領域207を介し、また、共通電極204に対しコンタクト領域208を介して、それぞれ接続されている。209は、発熱抵抗体であり、個別リード電極210に対しコンタクト領域211を介し、また、共通電極204に対しコンタクト領域212を介して、それぞれ接続されている。213は保護膜であり、印字される用紙との接触による摩耗から発熱抵抗体205および209を保護する。
【0011】
また、第3の従来例として図10で示される断面図のダブルラインのサーマルヘッドがある。この図において、グレーズガラス基板301は、アルミナ基盤302上に接着され、配線用溝303が形成されている。共通電極304は、配線用溝303内にバルク金属を埋め込むことで形成されている。305は他の共通電極であり、共通電極304と接合している。
【0012】
306は発熱抵抗体であり、個別リード電極307に対しコンタクト領域308を介し、また、共通電極305に対しコンタクト領域309を介して、それぞれ接続されている。310は発熱抵抗体であり、個別リード電極311に対しコンタクト領域312を介し、また、共通電極305に対しコンタクト領域313を介して、それぞれ接続されている。314は保護膜であり、印字される用紙との接触による摩耗から発熱抵抗体306および310を保護する。
【0013】
次に、図6のサーマルヘッドの動作を図11を参照して説明する。図11はサーマルヘッドの等価回路を示している。この図において401は電源であり、サーマルヘッドの駆動電力を供給する。103は発熱抵抗体であり、104は共通電極である。105は個別リード電極であり、108はコントロールICである。
【0014】
まず、図示していないプリンタ本体から送られてくる一定周期のクロック信号CLKに同期して、各発熱抵抗体103に対応したデータ信号DATAがコントロールIC108に入力され、ラッチ信号LATCHの、たとえば「立ち上がり」でデータ信号DATAの情報が、コントロールIC108内部の記憶部に記憶される。この記憶された情報に基づき、たとえばストローブ信号STBが「1」のとき、発熱抵抗体103は、通電されて熱エネルギーを発生する。ここで、プリント時に、次ラインの印字情報がデータ信号DATAにより、クロック信号CLKに同期してプリンタ本体から転送されてくる。
【0015】
また、昇華型熱転写プリンタのプリント動作を図12を用いて説明する。図12はサーマルヘッドを用いた昇華型熱転写プリンタの概念図である。サーマルヘッド501は、プラテン502と組み合わされてプリンタに装着されている。カラーリボン503と用紙504は、これらサーマルヘッド501とプラテン502とに挟まれ、サーマルヘッド501の発熱抵抗体505の通電により発生する熱エネルギーで、カラーリボン503の染料が拡散し、昇華することで用紙504に対しプリント動作が行われる。
【0016】
次に用紙504へのプリント処理について図11、12および13を参照し、詳細に説明する。図13は、発熱抵抗体103に対する通電のストローブ信号STBのパルス幅と染料濃度との関係を示した図である。ここで、パルス幅PBは、発熱抵抗体103に通電する時間幅を示し、この通電による発熱エネルギーが、バイアスエネルギーEBであり、このエネルギーを加えてもカラーリボンからのインクの転写は起らない。
【0017】
しかし、少しでもこれを越えるエネルギ一を加えるとカラーリボンからの染料の転写が起こる。ここで、パルス幅PGは、発熱抵抗体103に通電する時間幅を示し、この通電による発熱エネルギーが階調エネルギーEGであり、最高階調(255階調)の最大エネルギーはEB+EGである。
【0018】
すなわち、0〜255の階調に対応するエネルギーは、EB〜EB+EGとなっている。これらのエネルギーは、発熱抵抗体103が通電するパルス長に比例している。EBとEGとに対応するパルス幅をそれぞれPBとPGとにすれば、これらエネルギーの発熱に必要なパルス幅は、PB〜PB+PGのあいだのものが必要となる。1ラインの印字に必要なプリント時間tLは、以下の(1)式で求まる。
tL = PB + PG ・・・・(1)
【0019】
そして、1ページのプリント時間tPは、以下の(2)式で求まる。
tP = tL × L × 3 ・・・・(2)
(2)式で、「L」は1ページの行数であり、「3」はカラー印刷時のイエロー、マジェンダおよびシアンの3色印字するための数である。しかし、実際のプリント時間は、これ以外に用紙取り込みや、排紙に要する時間とが加算されたものとなる。
【0020】
サーマルヘッドの各発熱抵抗体103の発熱エネルギーEは(3)式で表せる。
E = (V2 / R) × t ・・・・(3)
ここで、Vは発熱抵抗体103に印可する印可電圧値であり、Rは発熱抵抗体103の抵抗値であり、tは発熱抵抗体103に通電する時間、すなわち1ラインのプリント時間tLである。一定濃度を得るためには、発熱抵抗体103の発熱エネルギーが一定である必要がある。
【0021】
この一定の条件下で、tLを小さくするためには、印可電圧値Vを大きくするか、抵抗値Rを小さくするかのどちらかを選択する必要があり、この場合次の問題が生じる。印可電圧値Vは図11に示される電源の電圧であり、コントロールIC108に印加される。このコントロールICは、通常MOS(Metal Oxide Semiconductor)で作成されており、現在の半導体技術では、耐圧として20数ボルトが限界である。現状は、ほぼこの許容電圧内の上限で使用しており、これ以上の電源電圧の昇圧は困難である。一方、発熱抵抗体103の抵抗値Rを小さくすることは容易である。
【0022】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、発熱抵抗体の抵抗値Rを小さくすると、プリンタ装置の大型化という新たな問題が生じる。(3)式を書き直して、(4)式とする。
E = (V × i) × t ・・・・(4)
ここで、「i」は発熱抵抗体103に流れる電流値である。すなわち、i=V/Rである。印可電圧値Vを一定のまま抵抗値Rを小さくすると、電流値iは増加する。
【0023】
そのため、電源の電流容量を増加させるため、電源本体のサイズが大きくなり、プリンタ装置本体も大型化してしまう。小型/軽量化の観点からは、発熱抵抗体の抵抗値Rを大きくする方向に向かってきている。このため、現状のサーマルヘッドにおいて、プリント時間tLの短縮化は不可能となっている。
【0024】
一方、図8のダブルラインサーマルヘッドを用いれば2ラインを同時にプリントできるため、原理的にはプリント時間を半分に短縮できる。しかしながら、図8、9および10に示されるサーマルヘッドは、バルク金属を用いた共通電極とアルミナ基板との熱膨張率が異なるため、双方の接合界面においてお互いに剥離が起こる。特に、アルミナ基板とバルク金属の剥離により、共通電極上に形成された薄膜の電極に熱応力が掛かり、薄膜の機械的強度が非常に弱いため、薄膜が損傷を受けてしまうので、実用化が困難な欠点があった。
【0025】
また、実用化が可能としても、ダブルラインサーマルヘッドにおける一方の発熱抵抗体をあらかじめ加熱させるプレヒートに用いる用途の場合、プレヒートの用いる発熱抵抗体は、各印字ドット単位に対応した階調制御の必要はない。そのため、高速印字のためにプレヒート用の発熱抵抗体を持つサーマルヘッドの代用として、ダブルラインサーマルヘッドを用いることは、ダブルラインサーマルヘッドの製造コストが高いため無駄が大きくなる問題があった。
本発明はこのような背景の下になされたもので、製造コストが安く、高速印字が可能なサーマルヘッドを提供することを目的とする。
【0026】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、印刷データに基づいて発熱抵抗体に駆動電流を供給することにより発熱させてドット印刷を行うサーマルヘッドにおいて、基板と、この基板の表面を覆って設けられ、表面の一部が盛り上げられた絶縁層と、この絶縁層の盛り上げ箇所の表面に形成された発熱抵抗体のパターンとを具備し、前記基板は金属であり、該基板表面を突出形成して、基板と一体に形成された突起部とし、前記基板の表面から突出した前記突起部が前記絶縁層の盛り上げ箇所を貫通して絶縁層の表面から露出することにより、前記発熱抵抗体のパターンに接続され、この接続箇所を中心として前記発熱抵抗体のパターンを第1の発熱抵抗体と第2の発熱抵抗体とに分割していることを特徴とする。
【0027】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載のサーマルヘッドにおいて、印刷用紙の送り方向に対して、前記第2の発熱抵抗体の発生する熱エネルギを第1の発熱抵抗体の発生する熱エネルギに加えてプリント動作を行うため、第2の発熱抵抗体が第1の発熱抵抗体より前に配設されたことを特徴とする。
【0028】
請求項3記載の発明は、請求項1または請求項2に記載のサーマルヘッドにおいて、前記第2の発熱抵抗体の通電制御部が、トランジスタであることを特徴とする。
請求項4記載の発明は、請求項1ないし請求項3いずれかに記載のサーマルヘッドにおいて、前記突起部が前記基板の表面に垂直に突出形成されたことを特徴とする。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。図1は本発明の一実施形態によるサーマルヘッドの構成を示すブロック図である。この図において、1はヒートシンクであり、サーマルヘッドの各部で発生した熱を空気中に効率的に放射する。2はステンレス基板であり、基板平面上に長尺状に共通電極3が形成されている。共通電極3は、発熱抵抗体4、4、・・・および発熱抵抗体5、5、・・・に共通に接続されている。
【0030】
発熱抵抗体4は、カラーリボンのインクを用紙に転写する熱エネルギーを発生する。発熱抵抗体5は、カラーリボンのインクを用紙に転写する熱エネルギーを発生する。6は接続用フレキシブルプリント基板であり、図示されていないプリンタ本体のコントローラと接続する配線が形成されている。
【0031】
7は一括電極であり、発熱抵抗体5に対して通電のための電圧を一括印可するトランジスタに接続する。8、8、・・・・は個別リード電極であり、図には示されていないが、発熱抵抗体4にそれぞれ通電のための電圧を印可する、コントロールICに接続されている。9はグレーズガラスであり、グレース10および11を有している。12は共通電極である。
【0032】
また、図2は図1に示されるサーマルヘッドのC−C’線視断面図である。この図において、30は裏面グレーズガラスであり、ステンレス基板2が反らない様に塗布/焼成されている。31はコンタクト領域であり、個別リード電極8、8、・・・と発熱抵抗体4、4、・・・とをそれぞれ接続する。
【0033】
32はコンタクト領域であり、発熱抵抗体4、4、・・・および5、5、・・・と共通電極3とを接続する。33はコンタクト領域であり、発熱抵抗体5、5、・・・と一括電極7とを接続する。34は保護膜であり、印字時における用紙との接触による磨耗から発熱抵抗体4、4、・・・および5、5、・・・を保護する。
【0034】
次に、図2および図3を参照し、図1のサーマルヘッドの製造プロセスを説明する。図3は、サーマルヘッドのC−C’線視断面図であり、製造プロセスの過程を示すものである。ここで用いるグレーズガラスの製造方法は、「特公平7−12068」に準じている。まず、たとえば0.8mmの厚さのステンレス基板2が、n−プロピルブロマイドの様な有機溶剤により、脱脂洗浄される。
【0035】
次に、ステンレス基板2表面上のゴミを除去するため、ステンレス基板2は、スクラッバーにより洗浄される。そして、ステンレス基板2における表面の凹凸に吸着しているゴミを除去するため、ステンレス基板2は、臭化メチルの洗浄液中において、超音波洗浄により表面洗浄される。次に、ステンレス基板2表面の表面研磨処理のため、たとえば、FeCl3:50g、HCl:500mlおよびH2O:1000mlの塩化第二鉄溶液により、ステンレス基板2表面は、2分間の緩やかなエッチングによる研磨処理が行われる。
【0036】
次に、サーマルヘッドを構成する、ステンレス基板2の表面にフォトレジストをコーティングする。そして、共通電極3の形成部だけフォトレジストが残るようにフォトリソグラフィーにより、コーティングされたフォトレジストのパターニングが行なわれる。この残ったフォトレジストのパターンをマスクとして、H2C2O4・2H2O:200g+H2O:2000mlのシュウ酸溶液中において、電極間隔を20mmとし、電極間に5Vの電圧を印可して、約0.67μm/minのエッチング速度により、ステンレス基板2表面がエッチングされ、共通電極3が形成される。
【0037】
このエッチングにより、突出形成される共通電極3の高さは、表面粗さ測定器により監視される。また、上記の説明では、ステンレス基板2の共通電極3の形成が、エッチング溶液によるエッチングで行われたが、たとえば他の手法として、研磨加工、切削加工、ロール加工、プレス加工、引き抜き加工およびこれらの方法の組み合わされた加工法を用いても形成することができる。
【0038】
次に、ステンレス基板2が900℃で10分間焼成され、ステンレス基板2表面に酸化皮膜が形成される。次に、図3に示す様に溶剤でガラスの粉末を溶きペースト状のガラス形成材料であるガラスペーストがステンレスで作成されたメッシュ板を用いたスクリーンで印刷され、850℃で焼成されることで各グレーズガラスとなる。まず、ガラスペースト41が、共通電極3の領域以外のステンレス基板2の表面に一様にスクリーン印刷される。このガラスペースト41の厚さは、20μmとされる。そして、印刷されたガラスペースト41を含め、ステンレス基板2の表面が平坦化される。
【0039】
ここで、ガラスペースト41が140℃において、あらかじめガラスペーストに含まれる溶剤が突沸せずに揮発する温度で加熱されるプリベーキングが行われ、ガラスペースト41に含まれる溶剤が、徐々に揮発させられる。次に、ステンレス基板2の温度が室温まで低下後、ステンレス基板2の下面にガラスペーストが均一にスクリーン印刷される。そして、このガラスペーストが平坦化された後、140℃において、プリベーキングされ、ステンレス基板2の下面のガラスペーストに含まれる溶剤が、徐々に揮発させられる。
【0040】
次に、炉の温度が850℃とされ、ステンレス基板2が炉中で加熱され、ステンレス基板2表面のガラスペースト41およびステンレス基板下面のガラスペーストの燒成を行い、ステンレス基板2が室温になるまで自然冷却される。ここでガラスペースト41は、グレーズガラス9となり、ステンレス基板2の下面のガラスペーストは、裏面グレースガラス30となる。そして、金属のマスクを用い、共通電極3の両側壁部およびグレーズガラス9表面にガラスペースト42が、厚さ30μmでスクリーン印刷される。
【0041】
次に、ステンレス基板2の表面が平坦化され、共通電極の両側のグレースガラス41が、140℃においてプリベーキングされ、ガラスペースト42に含まれる溶剤が揮発される。そして、炉の温度が850℃とされ、ステンレス基板2が加熱され、共通電極3の両側のガラスペースト42が燒成され、それぞれグレース10および11が形成される。ここで、必要に応じて共通電極3およびグレーズガラス11、16表面が砥粒およびバフ研磨により研磨される。
【0042】
次に、ステンレス基板2上に形成された各膜上に、たとえばTaSiO2の抵抗体がスパッタリングにより形成される。そして、この抵抗体の上部にマスクとして、たとえばNiCrが電子ビーム蒸着により0.1μmの厚さで形成される。次に、発熱抵抗体4、5およびコンタクト領域31、32、33の部分の形状にフォトレジストのパターンが残るように、フォトリソグラフィーにより、フォトレジストのパターニングが行われる。
【0043】
次に、このフォトレジストのパターンをマスクとして、硝酸セリュウムアンモニウム溶液により、NiCrがエッチングされる。そして、フォトレジストを除去することで、発熱抵抗体4、5およびコンタクト領域31、32、33の部分の形状にNiCrがパターニングされる。そして、今度は、NiCrをマスクとして、抵抗体膜をエッチングすることにより、発熱抵抗体4、5およびコンタクト領域31、32、33の部分の形状に、抵抗体膜がパターニングされる。
【0044】
次に、アルミニウムの電極形成が密着良く行えるように、発熱抵抗体4、5およびコンタクト領域31、32、33の部分と、アルミニウムの電極7、8、12とのあいだに、アルミニウムを材料とした、コンタクト領域31、32、33の表面部分に対する蒸着されるアルミニウムの密着性を向上させるバインダー薄膜が、0.1μmの厚さで形成される。そして、電極材料としてのアルミニウム膜が電子ビーム蒸着により形成される。次に、コンタクト領域31、32、33の部分の形状にフォトレジストが残るように、フォトリソグラフィーにより、フォトレジストのパターニングが行われる。
【0045】
次に、このフォトレジストのパターンをマスクとして、燐酸により、アルミニウム膜およびバインダー薄膜が除去される。そして、フォトレジストを除去することにより、アルミニウムの電極7、8、12が形成される。次に、保護膜、たとえばSIALON(登録商標)が、スパッタリングにより、5μmの厚さで形成される。そして、550℃で1時間の熱処理により、SIALONがアニーリングされる。
【0046】
次に、図には示されていないが、共通電極7上のIC配設領域に絶縁膜を形成させ、このIC領域の絶縁膜上にコントロールICがダイボンディングされる。そして、コントロールICの端子と個別リード電極8とがワイヤボンディングにより接続され、コントロールIC、ワイヤボンド部分および個別リード電極8の一部分がエポキシ樹脂により封止される。
【0047】
次に、図1のサーマルヘッドの動作を図4を参照して説明する。図4はサーマルヘッドの等価回路を示している。この図において、50はコントロールICであり、電源51から供給される電圧により、発熱抵抗体4をおのおの駆動するものである。52は駆動用トランジスタであり、電源53により供給される電圧により、発熱抵抗体5をおのおの駆動するものである。54は接地点であり、発熱抵抗体4および5の共通電極12が接続されているものである。
【0048】
まず、図示していないプリンタ本体から送られてくる一定周期のクロック信号CLKに同期して、各発熱抵抗体4に対応したデータ信号DATAがコントロールIC50に入力され、ラッチ信号LATCHの、たとえば「立ち上がり」でデータ信号DATAの情報が、コントロールIC50内部の記憶部に記憶される。この記憶された情報に基づき、たとえばストローブ信号STBが「1」のとき、発熱抵抗体4は、通電されて熱エネルギーを発生する。
【0049】
また、発熱抵抗体4の通電と同時に、全ての発熱抵抗体5、5、・・・がプリンタ本体の制御信号ON/OFFが「1」となることにより、駆動用トランジスタ52がオン状態となり、発熱抵抗体5直下のグレース10が加熱され、熱エネルギーが蓄積されることになる。すなわち、図13におけるバイアスパルスのパルス幅PBで発熱する熱エネルギーに相当する熱エネルギーを、グレース10が蓄熱することになる。このグレース10に蓄熱された熱エネルギーが、次のラインをプリントするときの熱エネルギーの一部EBとなるため、バイアスパルスのパルス幅PBの時間分だけプリント時間が短縮されることになる。
【0050】
図4の等価回路の実際の動作を図4、図5(a)および図5(b)を参照して説明する。図5(a)は、発熱抵抗体4を駆動する電圧値V1のストローブ信号STBのパルス幅を示すタイミングチャートである。また、図5(b)は、発熱抵抗体5を駆動する電圧値V2のオン/オフ信号ON/OFFのパルス幅を示すタイミングチャートである。1ラインをプリントする周期は、それぞれ時刻t0〜t2までと、t2〜t5までと、t5〜t7までとで示される時間幅である。
【0051】
発熱抵抗体5を駆動する電圧値V2のパルス幅は、常に一定であり、熱エネルギーEBを発生する通電時間となっている。すなわち、時刻t1〜t2で通電され、発熱抵抗体5の発生した熱エネルギーが、グレース10に蓄えられ、時刻t2〜t5における発熱抵抗体4の、たとえば時刻t2〜t4のパルス幅の発生する190諧調の発色濃度の熱エネルギーに加えられ、プリント動作が行われる。
【0052】
また、時刻t3〜t5で通電され、発熱抵抗体5の発生した熱エネルギーが、グレース10に蓄えられ、時刻t5〜t7における発熱抵抗体4の、たとえば時刻t5〜t6のパルス幅の発生する64諧調の発色濃度の熱エネルギーに加えられ、プリント動作が行われる。すなわち、発熱抵抗体5で発生する熱エネルギーは、染料が拡散転写するしきい値のエネルギーであり、発熱抵抗体4で発生するエネルギーは、発色濃度の諧調を決定するものとなる。
【0053】
【発明の効果】
本発明によれば、印刷データに基づいて発熱抵抗体に駆動電流を供給することにより発熱させてドット印刷を行うサーマルヘッドにおいて、基板と、この基板の表面を覆って設けられ、表面の一部が盛り上げられた絶縁層と、この絶縁層の盛り上げ箇所の表面に形成された発熱抵抗体のパターンとを具備し、前記基板は、前記基板の表面から突出して前記絶縁層の盛り上げ箇所を貫通して絶縁層の表面から露出することにより、前記発熱抵抗体のパターンに接続され、この接続箇所を中心として前記発熱抵抗体のパターンを第1の発熱抵抗体と第2の発熱抵抗体とに分割する共通電極を有するため、第2の発熱抵抗体の発熱エネルギーを、プリント時に第1の発熱抵抗体の発熱エネルギーに加えてプリント動作を行うので、各発熱抵抗体の通電パルスを短くでき、プリント時間の短縮が可能となる効果がある。
【0054】
また、本発明によれば、請求項1記載のサーマルヘッドにおいて、前記第1の発熱抵抗体と共通電極とに囲まれた前記絶縁層の盛り上がり部が蓄熱性材料により構成されたため、次ラインのプリント時まで第1の発熱抵抗体の発熱エネルギーを蓄えることができるので、第1の発熱抵抗体の発生した発熱エネルギーを効率的に使用できる効果がある。
さらに、本発明によれば、請求項1または請求項2記載のサーマルヘッドにおいて、前記第2の発熱抵抗体と共通電極とに囲まれた前記絶縁層の盛り上がり部が蓄熱性材料により構成されたため、第2の発熱抵抗体の発生した発熱エネルギーを次ラインのプリント時に、効率的に使用できる効果がある。
加えて、発明によれば、請求項1ないし請求項3いずれかに記載のサーマルヘッドにおいて、印刷用紙の送り方向に対して、前記第2の発熱抵抗体が第1の発熱抵抗体より前に配設されたため、前記第2の発熱抵抗体の発生した熱エネルギーが、印刷用紙とインクリボンとを、インクリボンの染料が拡散される直前の温度まで加熱することにより、第2の発熱抵抗体の発熱エネルギーを、プリント時に第1の発熱抵抗体の発熱エネルギーに加えてプリント動作が行えるので、第1の発熱抵抗体への通電パルスが短くなり、プリント時間の短縮が可能となる効果がある。
【0055】
また、本発明によれば、請求項3記載のサーマルヘッドにおいて、前記第2の発熱抵抗体と共通電極とに囲まれた前記絶縁層の盛り上がり部の厚さが、前記絶縁膜の他の領域に比較して厚く形成されたため、第2の発熱抵抗体の発生する熱エネルギーがより多く蓄えられ、第1の発熱抵抗体の発生する熱エネルギーに加えられるので、次ラインのプリントにおける第1の発熱抵抗体への通電パルス幅を短くできる効果がある。
さらに、本発明によれば、請求項1ないし請求項7いずれかに記載のサーマルヘッドにおいて、前記第1の発熱抵抗体と共通電極とに囲まれた前記絶縁層の盛り上がり部の体積が、前記第2発熱抵抗体と共通電極とに囲まれた前記絶縁層の盛り上がり部の体積に比較して、小さく形成されたため、第2の発熱抵抗体の発生する熱エネルギーがより多く蓄えられ、次ラインのプリントにおける、第1の絶縁部の蓄積する熱エネルギーの量に影響されず、精度の高いバイアスエネルギーとしての熱エネルギーを供給できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態によるプレヒート機能の付いたサーマルヘッドの斜視図である。
【図2】 本発明の一実施形態による図1のサーマルヘッドのC−C’線視断面図である。
【図3】 本発明の一実施形態による図1のサーマルヘッドの製造段階におけるC−C’線視断面図である。
【図4】 本発明の一実施形態によるプレヒート機能の付いたサーマルヘッドの等価回路を示す図である。
【図5】 本発明の一実施形態によるプレヒート機能の付いたサーマルヘッドの動作を示すタイミングチャートである。
【図6】 第1の従来例のサーマルヘッドの斜視図である。
【図7】 第1の従来例のサーマルヘッドの図6におけるA−A’線視断面図である。
【図8】 第2の従来例のダブルヘッドラインサーマルヘッドの平面図である。
【図9】 第2の従来例のダブルヘッドラインサーマルヘッドの図8におけるB−B’線視断面図である。
【図10】 第3の従来例のダブルヘッドラインサーマルヘッドの発熱抵抗体の領域の断面図である。
【図11】 第1の従来例のサーマルヘッドの等価回路である。
【図12】 サーマルヘッドを用いた昇華型熱転写プリンタの概念図である。
【図13】 発熱抵抗体に電流を流す通電のパルス幅と、発色濃度との関係を示した図である。
【符号の説明】
1 ヒートシンク
2 ステンレス基板
3 共通電極
4、5 発熱抵抗体
6 接続用フレキシブルプリント板
7 一括電極
8 個別リード電極
9 グレーズガラス
10、11 グレース
12 共通電極
30 裏面グレーズガラス
31、32、33 コンタクト領域
34 保護膜
41、42 ガラスペースト
Claims (4)
- 印刷データに基づいて発熱抵抗体に駆動電流を供給することにより発熱させてドット印刷を行うサーマルヘッドにおいて、
基板と、
この基板の表面を覆って設けられ、表面の一部が盛り上げられた絶縁層と、
この絶縁層の盛り上げ箇所の表面に形成された発熱抵抗体のパターンとを具備し、
前記基板は金属であり、該基板表面を突出形成して、基板と一体に形成された突起部とし、前記基板の表面から突出した前記突起部が前記絶縁層の盛り上げ箇所を貫通して絶縁層の表面から露出することにより、前記発熱抵抗体のパターンに接続され、この接続箇所を中心として前記発熱抵抗体のパターンを第1の発熱抵抗体と第2の発熱抵抗体とに分割していることを特徴とするサーマルヘッド。 - 印刷用紙の送り方向に対して、前記第2の発熱抵抗体が印刷用紙の送り方向に対し、前記第2の発熱抵抗体の発生する熱エネルギを第1の発熱抵抗体の発生する熱エネルギに加えてプリント動作を行うため、第1の発熱抵抗体の前に配設されたことを特徴とする請求項1に記載のサーマルヘッド。
- 前記第2の発熱抵抗体の通電制御部が、トランジスタであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のサーマルヘッド。
- 前記突起部が前記基板の表面に垂直に突出形成されたことを特徴とする請求項1ないし請求項3いずれかに記載のサーマルヘッド。
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