JP3757209B2 - 船外機のシフトチェンジ装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は船外機のシフトチェンジ装置(変速機)に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、船外機のシフトチェンジ装置にあっては、先端にカムを備えたシフトロッドをその軸線方向(上下方向)に駆動してシフトスライダをスライドさせ、シフタークラッチを前進ギヤあるいは後進ギヤのいずれかに係合させることによってシフトチェンジが行われる。
【0003】
あるいは、シフトロッドの先端において、その中心軸から偏芯した位置にロッドピンを設け、シフトロッドを回動させることによって生じるロッドピンの移動(即ち、その移動軌跡はロッドピンの偏芯量を半径とする円弧となる)により、シフトスライダをスライドさせてシフトチェンジが行われる。
【0004】
上記したシフトチェンジ装置にあっては、シフトロッドの駆動を手動で行なうと、操作荷重が重いなどの理由から操作フィーリングが良くない。このため、船外機の外部、具体的には船体にアクチュエータを配置し、ケーブルやリンク機構を介して船外機内部のシフトロッドと接続することで、シフトロッドを駆動し、シフトチェンジをパワーアシストすることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】
特開平4−95598号公報(図1など)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記した特許文献1に係る技術にあっては、シフトロッドを駆動するアクチュエータを船体に配置し、ケーブルやリンク機構を介して船外機内部のシフトロッドと接続することから、構成が複雑になり、部品点数および重量が増加すると共に、船体にアクチュエータを取り付けるスペースが必要になるといった不具合があった。また、シフトロッドは、アクチュエータの故障などに備え、アクチュエータ以外の手段でも操作できることが望ましい。
【0007】
従って、この発明の目的は上記した課題を解決し、シフトロッドの駆動源にアクチュエータを用いて操作フィーリングを向上させながら、シフトロッドとアクチュエータの接続機構を簡素にして部品点数や重量の増加を抑制すると共に、船体のスペースを損なわないようにし、さらにはシフトロッドをアクチュエータ以外の手段で操作できるようにした船外機のシフトチェンジ装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を解決するために、この発明は請求項1項において、シフトロッドを駆動してシフタークラッチを前進ギヤあるいは後進ギヤに係合させてシフトチェンジを行ない、内燃機関の出力をプロペラに伝達して船体を前進あるいは後進させる船外機のシフトチェンジ装置において、前記シフトロッドを駆動するアクチュエータと、前記アクチュエータの出力を減速して前記シフトロッドに伝達するリダクションギヤと、前記リダクションギヤに設けられた手動操作自在なエマージェンシーギヤと、手動操作によって前記リダクションギヤと前記エマージェンシーギヤを噛合あるいは解除させるスライド機構と、および前記スライド機構に設けられて前記リダクションギヤと前記エマージェンシーギヤを離間位置に保持するスペーサとを備えるように構成した。
【0009】
このように、シフトロッドを船外機の内部に配置されたアクチュエータで駆動するように構成したので、手動によるシフトロッドの駆動に比して操作荷重が軽量となって操作フィーリングを向上させることができる。さらに、アクチュエータを船体に配置する場合に比してシフトロッドとアクチュエータの接続機構を簡素にすることができるため、部品点数や重量の増加を抑制することができると共に、船体のスペースを損なうことがない。また、アクチュエータの出力をシフトロッドに伝達するリダクションギヤに手動操作自在なエマージェンシーギヤを設けるように構成したので、シフトロッドをアクチュエータ以外の手段、即ち手動で操作することができる。また、手動操作によってリダクションギヤとエマージェンシーギヤを噛合あるいは解除させるスライド機構と、およびスライド機構に設けられてリダクションギヤとエマージェンシーギヤを離間位置に保持するスペーサとを備えるように構成したので、シフトロッドの駆動源をアクチュエータから手動へ、あるいは手動からアクチュエータへ容易に切り換えることができる。
【0010】
また、請求項2項にあっては、シフトロッドを駆動してシフタークラッチを前進ギヤあるいは後進ギヤに係合させてシフトチェンジを行ない、内燃機関の出力をプロペラに伝達して船体を前進あるいは後進させる船外機のシフトチェンジ装置において、前記シフトロッドを駆動するアクチュエータと、前記アクチュエータの出力を減速して前記シフトロッドに伝達するリダクションギヤと、前記リダクションギヤに設けられた手動操作自在なエマージェンシーギヤと、手動操作によって前記リダクションギヤと前記エマージェンシーギヤを噛合あるいは解除させるスライド機構と、および前記スライド機構に設けられて前記リダクションギヤと前記エマージェンシーギヤを離間方向に付勢するばねとを備えるように構成した。
【0011】
このように、シフトロッドを船外機の内部に配置されたアクチュエータで駆動するように構成したので、手動によるシフトロッドの駆動に比して操作荷重が軽量となって操作フィーリングを向上させることができる。さらに、アクチュエータを船体に配置する場合に比してシフトロッドとアクチュエータの接続機構を簡素にすることができるため、部品点数や重量の増加を抑制することができると共に、船体のスペースを損なうことがない。また、アクチュエータの出力をシフトロッドに伝達するリダクションギヤに手動操作自在なエマージェンシーギヤを設けるように構成したので、シフトロッドをアクチュエータ以外の手段、即ち手動で操作することができる。また、手動操作によってリダクションギヤとエマージェンシーギヤを噛合あるいは解除させるスライド機構と、およびスライド機構に設けられてリダクションギヤとエマージェンシーギヤを離間方向に付勢するばねとを備えるように構成したので、シフトロッドの駆動源をアクチュエータから手動へ、あるいは手動からアクチュエータへ容易に切り換えることができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面に即してこの発明の一つの実施の形態に係る船外機のシフトチェンジ装置を説明する。
【0013】
図1はその船外機のシフトチェンジ装置を全体的に示す概略図であり、図2は図1の部分説明側面図である。
【0014】
図1および図2において、符合10は、内燃機関、プロペラシャフト、プロペラなどが一体化された船外機を示す。船外機10は、図2に示す如く、スイベルシャフトおよびシフトロッド(共に後述)が回動自在に収容されるスイベルケース12と、スイベルケース12が接続されるスターンブラケット14を介し、船体(船舶)16の後尾に重力軸回りおよび水平軸回りに転舵自在に取り付けられる。
【0015】
船外機10は、その上部に内燃機関(以下「エンジン」という)18を備える。エンジン18は火花点火式の直列4気筒で2200ccの排気量を備える4サイクルガソリンエンジンからなる。エンジン18は水面上に位置し、エンジンカバー20で覆われて船外機10の内部に配置される。エンジンカバー20で被覆されたエンジン18の付近には、マイクロコンピュータからなる電子制御ユニット(以下「ECU」という)22が配置される。
【0016】
また、船外機10は、その下部にプロペラ24と、その付近に設けられたラダー26を備える。プロペラ24は、図示しないクランクシャフト、ドライブシャフト、ギヤ機構およびシフト機構を介してエンジン18の動力が伝達され、船体16を前進あるいは後進させる。
【0017】
図1に示す如く、船体16の操縦席付近にはステアリングホイール28が配置される。ステアリングホイール28の付近には舵角センサ30が配置され、操縦者によって入力されたステアリングホイール28の操舵(操作)角に応じた信号を出力する。また、操縦席の右側にはスロットルレバー32が配置されると共に、その付近にはスロットルレバー位置センサ34が配置され、操縦者によって操作されるスロットルレバー32の位置に応じた信号を出力する。
【0018】
スロットルレバー32に隣接した位置にはシフトレバー36が配置されると共に、その付近にはシフトレバー位置センサ38が配置され、操縦者によって操作(シフト)されたシフトレバー36の位置、具体的には、中立、前進および後進のいずれかに応じた信号を出力する。
【0019】
さらに、操縦席付近には、船外機10のチルト角度を調整するためのパワーチルトスイッチ40と、トリム角度を調整するためのパワートリムスイッチ42が配置され、操縦者によって入力されるチルトのアップ・ダウンおよびトリムのアップ・ダウンの指示に応じた信号を出力する。上記した舵角センサ30、スロットルレバー位置センサ34、シフトレバー位置センサ38、パワーチルトスイッチ40およびパワートリムスイッチ42の出力は、それぞれ信号線30L,34L,38L,40Lおよび42Lを介してECU22に送られる。
【0020】
また、後述するシフトロッドの上部には、回動角センサ44(図2に示す)が配置され、シフトロッドの回動角に応じた信号を出力する。回動角センサ44の出力は、信号線44Lを介してECU22に送られる。
【0021】
また、前記したスイベルケース12とスターンブラケット14の付近には、操舵用のアクチュエータ、具体的には電動モータ46(以下、「操舵用電動モータ」という)と、チルト角度およびトリム角度調整用の公知のパワーチルトトリムユニット48が配置され、それぞれ信号線46Lおよび48Lを介してECU22に接続される。また、エンジンケース20の内部には、シフトロッドを回動させるシフトチェンジ用のアクチュエータ、具体的には電動モータ50(以下、「シフト用電動モータ」という)が配置され、信号線50Lを介してECU22に接続される。
【0022】
ECU22は、上記した各センサおよびスイッチの出力に基づき、操舵用電動モータ46を駆動して船外機10を操舵すると共に、パワーチルトトリムユニット48を動作させて船外機10のチルト角度およびトリム角度を調整する。また、シフト用電動モータ50を駆動してシフトチェンジを行うと共に、図示しないスロットルバルブ開閉用の電動モータを駆動してエンジン18の回転数を調整する。
【0023】
図3は、図2を拡大して示す説明側面図である。尚、図3において、図の一部を断面で示す。
【0024】
図3に示すように、パワーチルトトリムユニット48は、1本のチルト角度調整用の油圧シリンダ(以下「チルト用油圧シリンダ」という)48aと、2本の(図では1本のみ表れる)トリム角度調整用の油圧シリンダ(以下「トリム用油圧シリンダ」という)48bを一体的に備える。
【0025】
チルト用油圧シリンダ48aは、そのシリンダボトムがスターンブラケット14に固定されて船体16に取り付けられると共に、ピストンロッドのロッドヘッドがスイベルケース12に当接させられる。トリム用油圧シリンダ48bも、そのシリンダボトムがスターンブラケット14に固定されて船体16に取り付けられると共に、ピストンロッドのロッドヘッドがスイベルケース12に当接させられる。
【0026】
スイベルケース12は、チルティングシャフト52を介してスターンブラケット14に接続される。換言すれば、スイベルケース12は、チルティングシャフト52を中心として船体16と相対角度変位自在に接続される。また、スイベルケース12は、その内部にスイベルシャフト54が回動自在に収容される。スイベルシャフト54は、その上端がマウントフレーム56に固定されると共に、下端がロアマウントセンターハウジング(図示せず)に固定される。マウントフレーム56とロアマウントセンターハウジングは、それぞれエンジン18などが載置されるフレームに固定される。
【0027】
また、スイベルケース12の上部には、前記した操舵用電動モータ46と、操舵用電動モータ46の出力(回転出力)を減速するギヤボックス60が固定される。ギヤボックス60は、その入力側が操舵用電動モータ46の出力軸に接続されると共に、出力側はマウントフレーム56に接続される。即ち、操舵用電動モータ46の回転出力によってマウントフレーム56が回動させられることにより、船外機10の水平方向の転舵がパワーアシストされ、よってプロペラ24およびラダー26が転舵される。尚、船外機10の全舵角量は、左転舵30度、右転舵30度の合計60度である。
【0028】
また、エンジン18(図3で図示せず)の出力は、クランクシャフト(図示せず)およびドライブシャフト70を介し、ギヤケース72の内部に収容されたプロペラシャフト74に伝達され、それに固定されたプロペラ24を回転させる。尚、ギヤケース72は、前記したラダー26を一体的に備える。
【0029】
図4は、プロペラシャフト74付近を拡大して示す説明図である。以下、図4を参照してプロペラシャフト74への動力の伝達について詳説する。
【0030】
図4に示すように、プロペラシャフト74の外周には、ドライブシャフト70の下端に固定されたドライブギヤ70aと噛合して相反する方向に回転する、前進ギヤ76Fと後進ギヤ76Rが配置される。前進ギヤ76Fと後進ギヤ76Rには、それぞれ複数個の前進ギヤ側爪部76Faと後進ギヤ側爪部76Raが形成される。また、前進ギヤ76Fと後進ギヤ76Rの間には、プロペラシャフト74と一体に回転するシフタークラッチ78が設けられる。
【0031】
シフタークラッチ78は、プロペラシャフト74を軸方向とする円筒状を呈し、その前進ギヤ76F側の側面には、前記した前進ギヤ側爪部76Faと噛合する複数個の前進選択用爪部78Fが形成されると共に、後進ギヤ76R側の側面には、前記した後進ギヤ側爪部76Raと噛合する複数個の後進選択用爪部78Rが形成される。即ち、シフタークラッチ78に形成された前進選択用爪部78Fと後進選択用爪部78R、前進ギヤ76Fに形成された前進ギヤ側爪部76Fa、および後進ギヤ76Rに形成された後進ギヤ側爪部76Raとによって噛合式のクラッチ(いわゆるドッグクラッチ)が構成される。
【0032】
また、ギヤケース72の内部には、シフトロッド80が回動自在に収容され、シフトロッド80の端部底面には、その中心軸から偏芯した位置にロッドピン82が設けられる。
【0033】
ロッドピン82は、シフトロッド80の下方に配置されたシフトスライダ84の凹部84aに挿入される。シフトスライダ84は、プロペラシャフト74およびシフタークラッチ78の延長軸線上をスライド自在に配置されると共に、スプリング86を介してシフタークラッチ78に接続される。
【0034】
尚、図4に示すシフタークラッチ78やロッドピン82の位置は、シフトポジションが中立位置(ニュートラル)にあるときを示す。図5に、シフトポジションが前進位置にあるときのシフタークラッチ78やロッドピン82の位置を示すと共に、図6に、シフトポジションが後進位置にあるときのそれを示す。
【0035】
図4から図6に示すように、シフトロッド80を回動させることにより、ロッドピン82は、シフトロッド80の中心軸80cからの偏芯量を半径とした円弧状の移動軌跡を描く。即ち、シフトロッド80を回動させることにより、ロッドピン82は、シフトスライダ84のスライド方向(即ち、シフトスライダ84の延長軸線SS方向)の変位を生じる。これにより、シフトスライダ84およびシフタークラッチ78がスライド(滑動)され、シフタークラッチ78が前進ギヤ76Fまたは後進ギヤ76Rのいずれかに係合される、あるいは、そのいずれとも係合しない中立(ニュートラル)位置とされる。
【0036】
具体的には、図4に示すように、中立位置において、シフトロッド80の中心軸80cとロッドピン82を結ぶ線は、シフトスライダ84の延長軸線SSと直交する。このときのシフトロッド80の回動角度を零度とする。シフトロッド80の回動角度が零度のとき、シフタークラッチ78に形成された前進選択用爪部78Fと前進ギヤ76Fに形成された前進ギヤ側爪部76Faは噛合せず、また、後進選択用爪部78Rと後進ギヤ76Rに形成された後進ギヤ側爪部76Raも噛合しない。即ち、シフタークラッチ78は、前進ギヤ76Fと後進ギヤ76Rのいずれにも係合されない。
【0037】
一方、図5に示すように、シフトロッド80を中立位置から上面視において右回りに90度回動させることにより、換言すれば、シフトロッド80を回動させてロッドピン82を延長軸線SS上に位置させることにより、ロッドピン82には、延長軸線SS方向において、その偏芯量と同じだけの変位が生じる。これにより、シフトスライダ84およびシフタークラッチ78が前進ギヤ76F側にスライドされ、シフタークラッチ78に形成された前進選択用爪部78Fと前進ギヤ76Fに形成された前進ギヤ側爪部76Faが噛合し、よってシフタークラッチ78が前進ギヤ76Fに係合される。
【0038】
これは後進についても同様であり、図6に示すように、中立位置からシフトロッド80を上面視において左回りに90度回動させてロッドピン82を延長軸線SS上に位置させることにより、シフトスライダ84およびシフタークラッチ78が後進ギヤ76R側にスライドされ、シフタークラッチ78に形成された後進選択用爪部78Rと後進ギヤ76Rに形成された後進ギヤ側爪部76Raが噛合し、よってシフタークラッチ78が後進ギヤ76Rに係合される。
【0039】
図3の説明に戻ると、シフトロッド80は、図示の如く、ギヤケース72とスイベルケース12(具体的には、そこに収容されるスイベルシャフト54の内部空間)を貫通し、その上端はエンジンカバー20の内部に達する。シフトロッド80の上部には前記したマウントフレーム56が位置すると共に、マウントフレーム56にはシフト用電動モータ50やリダクションギヤ(減速ギヤ)、センサ(後述)などを一体的に備えたユニット90が配置される。
【0040】
図7は、図3のVII−VII線断面図であり、図8は、図7に示すユニット90を拡大して示す説明図(部分透視図)である。また、図9は、図8のIX−IX線断面図である。
【0041】
図3および図7から図9に示すように、ユニット90は、シフト用電動モータ50と、その出力(回転出力)を減速するリダクションギヤ機構92と、リダクションギヤ機構92の出力軸92osの回動角を検出する、前記した回動角センサ44とを一体化して形成され、エンジンカバー20の内部においてマウントフレーム56上に複数本のボルトを介して脱着自在に固定される。また、シフト用電動モータ50は、ハーネス96(図7および図9に示す)を介してECU22に接続される。
【0042】
図8および図9に良く示すように、シフト用電動モータ50の出力軸50osにはモータ側ギヤ50aが固定され、モータ側ギヤ50aは、それよりも径大(即ち歯数の多い)の第1のリダクションギヤ92aに噛合される。
【0043】
第1のリダクションギヤ92aには、それよりも径小(即ち歯数の少ない)の第2のリダクションギヤ92bが同軸上に固定され、第2のリダクションギヤ92bは、それよりも径大の第3のリダクションギヤ92cに噛合される。第3のリダクションギヤ92cの同軸上には、それよりも径小の第4のリダクションギヤ92dが固定される。
【0044】
前記したリダクションギヤ機構92の出力軸92osには、第4のリダクションギヤ92dよりも径大の第5のリダクションギヤ92eが固定され、それに第4のリダクションギヤ92dが噛合される。
【0045】
また、図9に示すように、リダクションギヤ機構92の出力軸92osの下端付近には、出力軸側ギヤ92fが固定される。出力軸側ギヤ92fは、シフトロッド80の上端付近に固定されたシフトロッド側ギヤ80aに噛合されることにより、シフト用電動モータ50の出力が減速されてシフトロッド80に伝達される。即ち、シフト用電動モータ50の回転出力によって船外機10のシフトチェンジがパワーアシストされる。これにより、手動によるシフトロッドの駆動に比して操作荷重が軽量となって操作フィーリングを向上させることができる。
【0046】
尚、リダクションギヤ機構92の出力軸92osの直上には、前記した回動角センサ44が配置される。回動角センサ44は、コネクタ44aと図示しないハーネスを介してECU22に接続され、出力軸92osの回動角、換言すれば、シフトロッド80の回動角に応じた信号をECU22に出力する。ECU22は、シフトレバー位置センサ38と回動角センサ44から送られた信号に基づいてシフト用電動モータ50を駆動してシフトチェンジを行う。
【0047】
ここで、リダクションギヤ機構92は、図8に示すように、上記した各ギヤに加え、エマージェンシーギヤ100を備える。
【0048】
図10は、図8のX−X線拡大断面図である。図8および図10に示すように、エマージェンシーギヤ100は、第3のリダクションギヤ92cと噛合する。また、図7、図8および図10に示すように、エマージェンシーギヤ100の軸100sは、その上部がユニット90の上面を貫通して外部(エンジンカバー20の内部空間)に突出されると共に、上端(外部に突出した部位)に上面視略六角形の操作レバー102が取り付けられる。これにより、操縦者は、エンジンカバー20を取り外すことによって操作レバー102を操作することができ、よって第3のリダクションギヤ92cを回動させることができる。即ち、操縦者は、必要に応じて手動でシフトロッド80を回動させてシフトチェンジを行うことができる。
【0049】
また、図11に示すように、エマージェンシーギヤ100は上下方向にスライド自在に構成されると共に、シフトチェンジを手動で行う必要がないときは、ユニット90の上面と操作レバー102の間に樹脂製のスペーサー104が介挿される。これにより、エマージェンシーギヤ100は、スペーサー104の厚み分だけ上方に移動され、第3のリダクションギヤ92cとの噛合が解除される。
【0050】
図12は、スペーサー104の上面図である。図12に示すように、スペーサー104は上面視略長方形を呈し、その中央付近にはエマージェンシーギヤ100の軸100sの直径と略同径の孔104aが穿設される。また、スペーサー104の一辺には、孔104aの直径よりもわずかに狭い幅の切り欠き104bが孔104aに連続して形成される。前述したように、スペーサー104は樹脂製であることから、切り欠き104bの幅は容易に拡大することができるため、スペーサー104は手動で取り外しが可能である。換言すれば、エマージェンシーギヤ100と第3のリダクションギヤ92cとの噛合を手動によって容易に成立または解除させることができる。
【0051】
このように、この発明の一つの実施の形態に係る船外機のシフトチェンジ装置にあっては、船外機10の内部に配置されたシフト用電動モータ50によってシフトロッド80を回動し、よって船外機10のシフトチェンジをパワーアシストするように構成したので、手動によるシフトロッドの駆動に比して操作荷重が軽量となって操作フィーリングを向上させることができる。
【0052】
また、シフト用電動モータ50を船体16に配置した場合に比してシフトロッド80との離間距離が短くなるため、シフト用電動モータ50とシフトロッド80の接続機構を簡素にすることができ、よって部品点数や重量の増加を抑制できると共に、船体16のスペースを損なうことがない。さらに、シフト用電動モータ50の出力をシフトロッド80に伝達するリダクションギヤ機構92に手動操作自在なエマージェンシーギヤ100を設けるように構成したので、シフトロッド80をシフト用電動モータ50以外の手段、即ち手動で操作することができる。
【0053】
また、エマージェンシーギヤ100をスライドさせてリダクションギヤ機構92(より具体的には第3のリダクションギヤ92c)との噛合を成立または解除させるスライド機構として、手動で取り付けおよび取り外しが可能なスペーサー104を用いるように構成したので、シフトロッド80の駆動源をシフト用電動モータ50から手動へ、あるいは手動からシフト用電動モータ50へ容易に切り換えることができる。
【0054】
次いで、図13を参照してこの発明の第2の実施の形態に係る船外機のシフトチェンジ装置について説明する。
【0055】
図13は、第2の実施の形態に係る船外機のシフトチェンジ装置のうち、エマージェンシーギヤ100などを示す図12と同様な断面図である。
【0056】
以下、従前の実施の形態との相違点に焦点をおいて説明すると、第2の実施の形態にあっては、ユニット90の上面と操作レバー102の間に、ばね110(具体的には圧縮コイルばね)を介挿させるように構成した。これにより、エマージェンシーギヤ100は、ばね110の付勢力によって上方に移動され、第3のリダクションギヤ92cとの噛合が解除される。一方、シフトチェンジを手動で行う場合は、ばね110の付勢力に抗して操作レバー102を手動で下方に押し付けることにより、第3のリダクションギヤ92cとの噛合を成立させることができる。
【0057】
このように、第2の実施の形態にあっては、エマージェンシーギヤ100をスライドさせてリダクションギヤ機構92(より具体的には第3のリダクションギヤ92c)との噛合を成立または解除させるスライド機構として、手動で圧縮可能なばね110を用いるように構成したので、第1の実施の形態と同様に、シフトロッド80の駆動源をシフト用電動モータ50から手動へ、あるいは手動からシフト用電動モータ50へ容易に切り換えることができる。
【0058】
尚、残余の構成およびそれによって得られる効果は、第1の実施の形態と同じであるので、説明を省略する。
【0059】
上記の如く、この発明の第1および第2の実施の形態においては、シフトロッド80を回動させてシフタークラッチ78を前進ギヤ76Fあるいは後進ギヤ76Rのいずれかに係合させてシフトチェンジを行ない、内燃機関(エンジン18)の出力をプロペラ24に伝達して船体16を前進あるいは後進させる船外機10のシフトチェンジ装置において、前記シフトロッド80を駆動するアクチュエータ(シフト用電動モータ50)と、前記アクチュエータの出力を減速して前記シフトロッドに伝達するリダクションギヤ(リダクションギヤ機構92)とを備えると共に、前記リダクションギヤに手動操作自在なエマージェンシーギヤ100を設けるように構成した。
【0060】
また、前記エマージェンシーギヤ100は、手動操作によって前記リダクションギヤ(リダクションギヤ機構92。具体的には第3のリダクションギヤ92c)との噛合を成立または解除させるスライド機構(スペーサー104、ばね110)を備えるように構成した。
【0061】
【発明の効果】
請求項1項にあっては、シフトロッドを船外機の内部に配置されたアクチュエータで駆動するように構成したので、手動によるシフトロッドの駆動に比して操作荷重が軽量となって操作フィーリングを向上させることができる。さらに、アクチュエータを船体に配置する場合に比してシフトロッドとアクチュエータの接続機構を簡素にすることができるため、部品点数や重量の増加を抑制することができると共に、船体のスペースを損なうことがない。また、アクチュエータの出力をシフトロッドに伝達するリダクションギヤに手動操作自在なエマージェンシーギヤを設けるように構成したので、シフトロッドをアクチュエータ以外の手段、即ち手動で操作することができる。また、手動操作によってリダクションギヤとエマージェンシーギヤを噛合あるいは解除させるスライド機構と、およびスライド機構に設けられてリダクションギヤとエマージェンシーギヤを離間位置に保持するスペーサとを備えるように構成したので、シフトロッドの駆動源をアクチュエータから手動へ、あるいは手動からアクチュエータへ容易に切り換えることができる。
【0062】
請求項2項にあっては、シフトロッドを船外機の内部に配置されたアクチュエータで駆動するように構成したので、手動によるシフトロッドの駆動に比して操作荷重が軽量となって操作フィーリングを向上させることができる。さらに、アクチュエータを船体に配置する場合に比してシフトロッドとアクチュエータの接続機構を簡素にすることができるため、部品点数や重量の増加を抑制することができると共に、船体のスペースを損なうことがない。また、アクチュエータの出力をシフトロッドに伝達するリダクションギヤに手動操作自在なエマージェンシーギヤを設けるように構成したので、シフトロッドをアクチュエータ以外の手段、即ち手動で操作することができる。また、手動操作によってリダクションギヤとエマージェンシーギヤを噛合あるいは解除させるスライド機構と、およびスライド機構に設けられてリダクションギヤとエマージェンシーギヤを離間方向に付勢するばねとを備えるように構成したので、シフトロッドの駆動源をアクチュエータから手動へ、あるいは手動からアクチュエータへ容易に切り換えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一つの実施の形態に係る船外機のシフトチェンジ装置を全体的に示す説明図である。
【図2】図1に示す装置の部分説明側面図である。
【図3】図2を拡大して示す説明側面図である。
【図4】図3に示すプロペラシャフト付近を示す説明図である。
【図5】同様に、図3に示すプロペラシャフト付近を示す説明図である。
【図6】同様に、図3に示すプロペラシャフト付近を示す説明図である。
【図7】図3のVII−VII線断面図である。
【図8】図7に示すユニットを拡大して示す説明図(部分透視図)である。
【図9】図8のIX−IX線断面図である。
【図10】図8のX−X線拡大断面図である。
【図11】同様に、図8のX−X線断面図である。
【図12】図11に示すスペーサーの上面図である。
【図13】この発明の第2の実施の形態に係る船外機のシフトチェンジ装置のうち、エマージェンシーギヤ付近を示す図11と同様な断面図である。
【符号の説明】
10 船外機
16 船体
18 エンジン(内燃機関)
24 プロペラ
50 シフト用電動モータ(アクチュエータ)
76F 前進ギヤ
76R 後進ギヤ
78 シフタークラッチ
80 シフトロッド
92 リダクションギヤ機構(リダクションギヤ)
92a 第1のリダクションギヤ(リダクションギヤ)
92b 第2のリダクションギヤ(リダクションギヤ)
92c 第3のリダクションギヤ(リダクションギヤ)
92d 第4のリダクションギヤ(リダクションギヤ)
92e 第5のリダクションギヤ(リダクションギヤ)
100 エマージェンシーギヤ
104 スペーサー(スライド機構)
110 ばね(スライド機構)

Claims (2)

  1. シフトロッドを駆動してシフタークラッチを前進ギヤあるいは後進ギヤに係合させてシフトチェンジを行ない、内燃機関の出力をプロペラに伝達して船体を前進あるいは後進させる船外機のシフトチェンジ装置において、前記シフトロッドを駆動するアクチュエータと、前記アクチュエータの出力を減速して前記シフトロッドに伝達するリダクションギヤと、前記リダクションギヤに設けられた手動操作自在なエマージェンシーギヤと、手動操作によって前記リダクションギヤと前記エマージェンシーギヤを噛合あるいは解除させるスライド機構と、および前記スライド機構に設けられて前記リダクションギヤと前記エマージェンシーギヤを離間位置に保持するスペーサとを備えることを特徴とする船外機のシフトチェンジ装置。
  2. シフトロッドを駆動してシフタークラッチを前進ギヤあるいは後進ギヤに係合させてシフトチェンジを行ない、内燃機関の出力をプロペラに伝達して船体を前進あるいは後進させる船外機のシフトチェンジ装置において、前記シフトロッドを駆動するアクチュエータと、前記アクチュエータの出力を減速して前記シフトロッドに伝達するリダクションギヤと、前記リダクションギヤに設けられた手動操作自在なエマージェンシーギヤと、手動操作によって前記リダクションギヤと前記エマージェンシーギヤを噛合あるいは解除させるスライド機構と、および前記スライド機構に設けられて前記リダクションギヤと前記エマージェンシーギヤを離間方向に付勢するばねとを備えることを特徴とする船外機のシフトチェンジ装置。
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