JP3755768B2 - 遠心分離機用スイングロータ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は試料を内蔵するマイクロプレートを遠心分離機用スイングロータに装着するためのマイクロプレート用アダプタ及びそれを備えたスイングロータに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
【特許文献1】
実公昭57−934号
まずマイクロプレートについて図12を用いて説明する。マイクロプレート4の使用形態は、例えば、血液等の体液に反応試薬を滴下した上で遠心分離機に掛けられたり、中間工程として遠心分離工程を含む組織培養分野や遺伝子工学分野における様々な実験に使用されたりしている。このようなマイクロプレート4は、一般にポリスチレンやポリプロピレン等のプラスチック材料からなり、モールド成形により形成されている。寸法は縦約130mm、横約90mm、高さ約10〜50mm程度の箱形の容器であり、その上面部には試料を注入するための多数の小さな凹状の試料注入穴部5が縦横整然と設けられている。マイクロプレート4には上下に重ねた場合のことを考慮して、マイクロプレート4の箱形外形壁7の下部に切欠部8を設けている。この切欠部8の寸法はマイクロプレート4の上面部の寸法とほぼ一致しており、これにより上下に重ねられたマイクロプレート4相互間の位置ずれを防止している。この切欠部8はマイクロプレート4のプレート底面9よりも低い位置に設けなければ、マイクロプレート4を上下に重ねてた場合の相互間の位置ずれを防止することができないため、結果として、マイクロプレート4の箱形外形壁7はプレート底面9よりも低い位置まで延在する構成となっている。
【0003】
次に上記したマイクロプレート4内の試料を遠心分離するための遠心分離機用ロータについて説明する。このようなマイクロプレート遠心分離用ロータは、例えば実公昭57−934号公報にも示されているが、本説明においては図10及び11を用いて説明する。図10はスイング式のロータの外観斜視図、図11は図10に示すスイングロータに装着されている金属製アダプタの外観斜視図である。図10において、ロータは、基本的にはロータボディ1、バケット2から構成されており、図示していない遠心分離機によりロータボディ1に回転力が付与され、この回転力起因する遠心力によりバケット2が外方向にスイングして、バケット2に保持された試料に遠心加速度を付加する構成である。
【0004】
このようなスイングロータをマイクロプレート4に内蔵された試料の分離に使用するために、バケット2に金属製のアダプタ3を装着することが一般的である。アダプタ3はバケット2に対してガタが無いように保持される外形寸法となっており、更にアダプタ3には、マイクロプレート4を保持したときにマイクロプレート4とのガタを無くすために、マイクロプレート4の外周を保持する折り曲げ部12、13が設けられている。アダプタ3はステンレス鋼板やアルミ板等の金属製板を加工されることで製作されており、その底部11は平坦である。
【0005】
このようなアダプタ3に上記したマイクロプレート4を装填すると、図12に示す構成となる。上記したように、マイクロプレート4の箱形外形壁7はプレート底面9よりも低い位置まで延在する構成となっており、更にアダプタ3の底部11は平坦に構成されているため、マイクロプレート4とアダプタ3の間には隙間部10が存在していた。このような状態で通常、回転数は約2,000rpm、最大遠心加速度は700×g程度で使用されているのが普通である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
近年、マイクロプレートを利用して、人体の健康に関する諸症状の検査や組織培養分野における様々な実験が盛んに行われるようになり、検査や実験の中間工程で必要となる遠心分離工程の効率向上が求められている。遠心分離工程の効率向上は、ローを回転させる回転数を上昇させることによって遠心加速度を大きくすることで達成できる。
【0007】
しかし、上記のように構成されたロータを効率向上のために回転数を上昇させると、マイクロプレート4の試料注入穴部5の郡部とは箱形外形壁7との境界部6から試料注入穴部5の郡部が陥没する形で破損してしまい、遠心分離目的を達成できない。この原因は、マイクロプレート4に遠心加速度による遠心荷重が加わった際、マイクロプレート4のプレート底面9とアダプタ3の底部11の間に隙間部10が存在するため、試料注入穴部5が遠心荷重により隙間部10側に撓み、結果的に試料注入穴部5の郡部と箱形外形壁7の境界部6に大きな曲げモーメントが加わり、境界部6が破損に至るものである。出願人の試験によれば、市販されている通常のマイクロプレート4を試験したところ、約1,000×g(重力加速度の1,000倍)で、境界部6の破損が発生した。マイクロプレート4の材質は、一般にポリスチレンが多く用いられており、ポリスチレンの特性である強度的に脆いということも前記破損の一因である。
【0008】
遠心分離機用ロータは、高い遠心加速度を発生させるので、バケット2に保持されるアダプタ3を含む被分離物は軽量であるほど、遠心荷重を小さくでき、ロータボデイ、バケットの負担が軽くなり設計上有利になる。また、バケットは回転軸に対して対称に設置されており、対向するバケットの質量バランス及びその重心位置バランスに配慮する必要がある。もし、マイクロプレートの位置がずれて保持されて回転された場合は、ロータが大きく振動して回転し、遠心機を破損させることが有り遠心分離目的を達成できなくなる。
【0009】
本発明の目的は、上記した欠点を無くし、現状のマイクロプレートを装着した遠心分離機用ロータをより高遠心加速度下で使用できるようにして、遠心分離工程の効率向上を達成することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために本発明は、遠心分離機の回転軸によって回転されるロータ本体と、該ロータ本体の回転に伴って発生する遠心力により外方向にスイングするバケットと、該バケットに保持されるマイクロプレートを有する遠心分離用ロータにおいて、上記マイクロプレートは箱形容器の上面に設けられた多数の試料注入用凹部と、上面から下方に延在し、上記箱形容器の外周を形成する箱形外形壁とを有し、上記マイクロプレートを、上記多数の試料注入用凹部の底面と接触する第1の面と、上記外形壁と対向し、第1の面とは高さが異なる第2の面を有する部材に載置したことに一つの特徴がある。
【0011】
本発明の他の特徴は、上記箱形外形壁の底部を、上記多数の試料注入用凹部の底部の高さと異なるように構成したことにあり、更には、上記箱形外形壁の底部を、上記第2の面と接触するように構成したことにある。
【0012】
本発明の他の特徴は、第1及び第2の面を有する部材を、弾性体又はプラスチックより構成したことにある。
【0013】
本発明の他の特徴は、上記マイクロプレートを、中央部が高く、周辺部が低い凸状をしたパッドの上面に載置したことにあり、更にはパッドを弾性体又はプラスチックより構成したことにある。本発明の他の特徴は以下の説明により更に明確になる。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の一実施例になるマイクロプレート用アダプタを図1及び図2により説明する。図1は本発明の一実施例を示すアダプタ3の外観斜視図、図2は図1に示すアダプタ3とマイクロプレート4を組み合わせた縦断側面図である。
【0015】
図において、アダプタ3には、その内形寸法にほぼ等しい外形寸法を有するパッド14が装着されている。パッド14は、ゴム等の弾性体やプラスチックで形成され、その底面部においてアダプタ3に接着されている。パッド14の構成は、その中央部にマイクロプレート4のプレート底面9と接触する高さを有する上面部16を有し、外周部にはマイクロプレート4の箱形外形壁7の下面と接触する高さを有する段差部15を有する。
【0016】
このように構成されたパッド14を装着したアダプタ3にマイクロプレート4を載置し、ロータボディ1のバケット2に装填して遠心分離作業を行うと、遠心力によりアダプタ3を含んだバケット2が揺動し、結果として図2において下方向の遠心力が発生する。この遠心力がマイクロプレート4に作用するが、マイクロプレート4のプレート底面9はパッド14の上面部16により遠心方向に受けられており、更にマイクロプレート4の箱形外形壁7はパッド14の段差部15で受けられているため、試料注入穴部5の郡部と箱形外形壁7の境界部6及びその他の部分に大きな曲げモーメントが加わることがなく、結果として従来に比較して高遠心力に耐えうる構成となる。このように構成されたアダプタ3を使用して、市販のマイクロプレート4の回転試験をしたところ、2,000×gまで問題なく遠心加速度を付加することができ、従来のアダプタに比較して2倍の遠心加速度に耐えられることを確認できた。
【0017】
なお、本実施例においては、パッド14をアダプタ3に接着する構成としたが、これを単に載置するのみの構成とし、マイクロプレート4を遠心分離機に装着する場合と、他のものを遠心分離機に装着する場合とでパッド14を取り外して使用する構成としても、同様の効果が得られることは明らかである。また、本実施例においては、パッド14とアダプタ3を別部品としたが、アダプタ3の底部11の形状を上記したパッド14のような構成としても同等の効果を得られる。
【0018】
次に、本発明になるマイクロプレート用アダプタの第2の実施例を図3を用いて説明する。アダプタ3は上述したようにロータボディ1のバケット2に装着して使用されるものであるため、アダプタ3の重量はより小さいほうがロータボディ1に掛かる遠心力を小さくすることができ、設計上有利になる。従って、第1の実施例として図1及び図2に示したパッド14をより軽くすることが望ましい。このことに鑑みて、図3に示す第2の実施例では、減肉部17を有するパッド14をアダプタ3に接着した構成としている。減肉部17は、アダプタ3の質量を軽減するためのものであるので、減肉方法は、マイクロプレート4の曲げモーメントによる破損を起こさないように配慮しながら、有る程度自由である。この減肉部17により、マイクロプレート4のプレート底面9を受けている部分と受けていない部分ができ、それら部分間において曲げモーメントが加わるが、従来に比較すると、プレート底面9を受けていない部分は小さくなることから、従来よりも高遠心力に耐えうる構成となる。また、図3の構成においては、マイクロプレート4の箱形外形壁7をパッド14により受けていないが、箱形外形壁7の部分の重量は、試料を注入された試料注入穴部5近傍に比較して小さいものであるから、箱形外形壁7の部分の遠心加速度は試料注入穴部5近傍よりも小さくなり、これにより従来構成で発生していた境界部6の破壊は起こりにくくなっている。
【0019】
次に、本発明になるマイクロプレート用アダプタの第3の実施例を図4及び図5を用いて説明する。第3の実施例は上述した第2の実施例と比較して、パッド14の外周部に段差部15を設けた点で異なっている。段差部15の外周面となるパッド側面19はアダプタ3の内径寸法と同じか若しくは若干大きく構成されている。これにより、第2の実施例ではパッド14をアダプタ15に接着しているのに対し、第3の実施例ではパッド側面19により、パッド14とアダプタ3の位置決め固定ができるので、必ずしも接着する必要のない構成となっている。また、第3の実施例においても、マイクロプレート4の箱形外形壁7をパッド14により受けていないが、これは第2の実施例と同じ理由による。
【0020】
次に本発明になるマイクロプレート用アダプタの第4の実施例を図6を用いて説明する。第4の実施例は、第1の実施例と比較して、パッド14にプレート押え部20を設けた点で大きく異なっている。パッド14に設けられたプレート押え部20はパッド14とマイクロプレート4の相対異動を規制するものであり、これにより、マイクロプレート4をパッド14に対してより確実に所定の場所に載置することができる。また、この図6には、プレート押え部20がマイクロプレート4の外周を押えている構成を開示したが、プレート押え部20はマイクロプレート4の箱形外形壁7の内側を押える構成としても良い。
【0021】
次に本発明になるマイクロプレート用アダプタの第5の実施例を図7を用いて説明する。アダプタ3とパッド14を別部品として構成すると、マイクロプレート4を重ねた状態で遠心分離機に掛けることが可能となる。図7に示すように、まずアダプタ3の底部に上述したようなパッド14を載置し、その上にマイクロプレート14を載置する。更にその上にパッド14を載置することで、2枚目のマイクロプレート14を載置することが可能となる。
【0022】
次に本発明になるマイクロプレート用アダプタの第6の実施例を図8を用いて説明する。図8は図7に示したパッド14の構成を変形させたものである。図8に示すパッド14はその下面にマイクロプレート4の上面の大きさとほぼ同等の大きさのパッド凹部21を設けている。このように構成されたパッド14を使用して、第5の実施例と同様にマイクロプレート4を重ねると、図8の示すようになる。図8の構成を見ると分かるように、マイクロプレート4の上に載置されるパッド14は、そのパッド凹部21によりマイクロプレート4の上面を保持し、パッド14とマイクロプレート4の相対移動を規制している。このようなパッド凹部21を有するパッド14をアダプタ3に載置すると、アダプタ3の底部11が平坦であることから、パッド14とアダプタ3との間に隙間部22が生じる。この隙間部22を有する状態で遠心分離機にかけると、その遠心加速度によりパッド凹部21に曲げモーメントが発生するが、パッド14をゴム等の弾性体で構成すればパッド14自身の弾性力により曲げモーメントは吸収することができる。また、隙間部22をなくするために、最下位置に載置されるパッド14は底部の平坦なもの(例えば図1〜図7に示されるもの)とし、マイクロプレート4の上に載置されるパッド14はパッド凹部21を有する構成とすることもできる。
【0023】
次に本発明になるマイクロプレート用アダプタの第7の実施例を図9を用いて説明する。図9は、アダプタ3の底面の形状を上記したパッド14の上面形状と同様にして、マイクロプレート4のプレート底面9をアダプタ3により直接受ける構成とし、更にマイクロプレート4を重ねた状態で遠心分離機に掛けることを可能とするために、アダプタ3の折り曲げ部12,13と同等の幅の係合溝23を、折り曲げ部12,13の下方に設けている。なお、本実施発明においてはアダプタ3を上述したように構成したが、アダプタ3ではなくパッド14を同様に構成し、アダプタ3に装着する構成としても良い。
【0024】
【発明の効果】
本発明によれば、マイクロプレートが載置される面を段差のある面で構成し、中央の凸部でマイクロプレートの試料注入穴部の裏底面を受ける構成としたので、試料を内蔵するマイクロプレートを従来よりも高い遠心加速度下に置くことを可能にできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明になる第1の実施例を示すアダプタを示す外観斜視図。
【図2】図1のアダプタとマイクロプレートを組み合わせた状態を示す縦断側面図。
【図3】本発明の第2の実施例を示すアダプタとマイクロプレートを組み合わせた状態を示す縦断側面図。
【図4】本発明の第3の実施例を示す縦断側面図。
【図5】第4のアダプタの外観斜視図。
【図6】本発明の第4の実施例を示す縦断側面図。
【図7】本発明の第5の実施例を示す縦断側面図。
【図8】本発明の第6の実施例を示す縦断側面図。
【図9】本発明の第7の実施例を示す縦断側面図。
【図10】従来のロータを示す外観斜視図。
【図11】従来のアダプタを示す外観斜視図。
【図12】従来のアダプタに保持されたマイクロプレートを示す縦断側面図。
【符号の説明】
1はロータボディ、2はバケット、3はアダプタ、4マイクロプレート、5は試料注入穴、14はパッドである。
Claims (6)
- 遠心分離機の回転軸によって回転されるロータ本体と、該ロータ本体の回転に伴って発生する遠心力により外方向にスイングするバケットと、該バケットに保持されるマイクロプレートを有する遠心分離用ロータにおいて、上記マイクロプレートは箱形容器の上面に設けられた多数の試料注入用凹部と、上面から下方に延在し、上記箱形容器の外周を形成する箱形外形壁とを有し、上記マイクロプレートは、上記多数の試料注入用凹部の底面と接触する第1の面と、上記外形壁と対向し、第1の面とは高さが異なる第2の面を有する部材に載置されることを特徴とする遠心分離機用ロータ。
- 請求項1において上記箱形外形壁の底部は、上記多数の試料注入用凹部の底部の高さと異なることを特徴とする遠心分離機用ロータ。
- 請求項2において、上記箱形外形壁の底部は、上記第2の面と接触していることを特徴とする遠心分離機用ロータ。
- 請求項1において第1及び第2の面を有する部材は、弾性体又はプラスチックよりなることを特徴とする遠心分離用機ロータ。
- 請求項1において上記マイクロプレートは、中央部が高く、周辺部が低い凸状をしたパッドの上面に載置されることを特徴とする遠心分離機用ロータ。
- 請求項5においてパッドは弾性体又はプラスチックよりなることを特徴とする遠心分離機用ロータ。
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