JP3755741B2 - ウインドウガラスの挟み込み有無検出装置 - Google Patents
ウインドウガラスの挟み込み有無検出装置 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ウインドウガラスの挟み込み有無検出装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、車両には、ウインドウガラスをモータ等の駆動力によって昇降させるパワーウインドウ装置を備えたものがある。このパワーウインドウ装置では、各ドアに設けられたスイッチの操作によってモータを駆動し、ウインドウガラスを昇降させるようになっている。
【0003】
ところで、このようなパワーウインドウ装置は、挟まれ防止機能を備えているものが多い。詳述すると、この挟まれ防止機能は、ウインドウガラスが閉動作を行っている途中において、該ガラスと窓枠の間に例えば異物が挟まって、それ以上の閉動作が不能となったとき、制御回路がその挟まりを検出する。そして、ウインドウガラスを逆方向たる開く方向に動作させて挟まった異物を開放させるものである。
【0004】
この異物が挟まったことの検出には、例えば、パルス検知方式がある。パルス検知方式は、ウインドウガラスを開閉するモータの回転速度を検出し、その検出速度に比例した周期のパルス信号を生成することによって行われる。このパルスの周期(モータの回転速度)の変動を、閾値と比較することで制御回路では挟まれ検出が行われる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記した従来において、ウインドウガラスに掛かる負荷は全開から全閉位置に移動する範囲内で一定ではない。特に、ドアの建て付け不良の場合等には、特定の場所でウインドウガラスに対して過負荷が掛かってしまう。この結果、異物を挟んでいないにも拘わらず、パルスの周期変動が閾値を超え、制御回路は挟まれを検出し、ウインドウガラスを反転させてしまう。そして、この場合過負荷が掛かる場所は同位置となるため、閉動作をするウインドウガラスが、同じ場所で繰り返し反転動作をして全閉させることができない虞がある。
【0006】
そこで、ドアの建て付け不良等の悪影響に対しても誤反転しないように、充分に余裕を持った大きい閾値を予め設定することが考えられる。しかし、そのように大きな閾値を予め設定しておくと、挟まれ検出が遅くなってしまい、制御回路にて挟まれが判断され反転動作が行われるまでの間に挟まれた物に掛る荷重が大きくなってしまうという問題が生じる。
【0007】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、高精度な挟まれ検出を維持する一方で、ウインドウガラスの移動範囲内における摺動抵抗の違いに基づく挟まれの誤検出を容易に防止できるウインドウガラス挟み込み有無検出装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、モータの回転に応じて発生したパルスが、ウインドウガラスによる挟まれの有無を決定するための閾値を超えたか否かを判定する判定手段と、前記判定手段の判定結果に基づいてウインドウガラス駆動用モータの駆動を反転する駆動制御手段とを備えるウインドウガラスの挟み込み有無検出装置において、ウインドウガラスの移動範囲を複数個の分割エリアに分割し、1つ、又は、複数の分割エリアにて、前記判定手段が複数回挟まれを検出した場合に、前記挟まれ検出がされた分割エリアを含む所定エリアの閾値を、複数回挟まれを検出した際の閾値より大きい閾値へ閾値変更処理する第1変更手段と、前記第1変更手段により変更された後の閾値が設定された所定エリアにおける分割エリアに対して、同一分割エリア内で検出されるパルスの変化量と変更前の閾値との関係が、複数回所定条件を満たした場合は、その分割エリアにおける閾値を再び変更前の閾値へ戻し処理する第2変更手段とを備え、前記判定手段は、前記複数回挟まれを検出した後は前記所定エリアでは、閾値を変更した後の閾値にてウインドウガラスによる挟まれ判定を行うことを要旨とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記第1変更手段による閾値変更処理は、判定手段が、ウインドウガラスの閉動作に際して、連続して挟まれを検出した際に行われることを要旨とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2において、前記第2変更手段による戻し処理は、同一分割エリア内で検出されるパルスの変化量と第1閾値との関係が、連続して所定条件を満たした場合に行われることを要旨とする。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至請求項3のうちいずれか1項において、前記分割エリアは、全開位置から全閉位置までのウインドウガラスの移動範囲に亘り、基準位置からのパルスカウント値に基づいて区画されていることを要旨とする。
【0013】
(作用)
請求項1の発明によれば、1つ、又は複数の分割エリアにて、複数回挟まれが検出された際には、第1変更手段により前記分割エリアを含む所定エリアの閾値が、複数回挟まれが検出された際の閾値より大きい閾値へ閾値変更処理される。
そして、複数回挟まれが検出された後は、前記所定エリアでは閾値を変更した後の閾値にて挟まれ判定がなされる。このため、ウインドウガラスの移動範囲内において摺動抵抗が大きい部位では、複数回挟まれが検出されたことを条件として、挟まれ判定に閾値変更処理がなされた後の閾値が用いられ、挟まれの誤検出はなくなる。その一方で、ウインドウガラスの移動範囲内において摺動抵抗が大きくない部位では、閾値変更処理がなされることがないため、高精度な挟まれ検出が維持される。また、第1変更手段により変更された後の閾値が設定された所定エリアにおいて、同一分割エリア内で検出されるパルスの変化量と、変更前の閾値との関係が複数回所定条件を満たした場合は、第2変更手段にて閾値が再び変更前の閾値へ戻し処理される。このため、所定エリアを構成する分割エリアにおいて、変更した後の大きい閾値で挟まれ判定する必要がない分割エリアでは、再び変更前の閾値で挟まれ判定がなされ、より高精度な挟まれ検出が実現される。
【0014】
請求項2の発明によれば、判定手段が連続して挟まれを判定した際に、第1変更手段にて閾値変更処理が行われるため、閾値変更処理の信頼性が高められる。
【0015】
請求項3の発明によれば、判定手段が連続して同一分割エリア内で検出されるパルスの変化量と変更前の閾値との関係が、連続して所定条件を満たした際に、第2変更手段にて戻し処理が行われるため、同戻し処理の信頼性が高められる。
【0016】
請求項4の発明によれば、全開位置から全閉位置までのウインドウガラスの移動範囲に亘り、基準位置からのパルスカウント値に基づいて分割エリアは区画される。このため、分割エリアの区画形成は容易に実現される。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を車両のサイドドアのパワーウインドウ装置に具体化した一実施形態を図1〜図3に従って説明する。
【0018】
図1はパワーウインドウ装置の電気的構成を示すブロック図である。図2は、車両のサイドドアを示す側面図である。
図1において、駆動制御手段、判定手段、第1変更手段、及び第2変更手段としてのコントローラ11は演算部12、記憶部13及びカウンタ部14を備えている。演算部12は各種の演算を行うようにされている。又、記憶部13は演算部12による演算結果等を記憶する書き換え可能なメモリ部(RAM)と、各種制御プログラムを記憶する読み出し専用のメモリ部(ROM)と、電気的に書き込み/消去可能な不揮発性のメモリ部(EEPROM)とを備えている。カウンタ部14は、コントローラ11に入力されるパルスをカウントするパルスカウンタと、演算部12による挟まれ検出回数をカウントする反転カウンタと、後述する反転余裕度に関する所定条件を満たした数をカウントする解除用カウンタとを備えている。
【0019】
下降スイッチ、上昇スイッチ、自動操作スイッチ(オートスイッチ)からなるウインドウスイッチとしてのパワーウインドウスイッチ15は、入力回路16を介してコントローラ11に接続されている。パワーウインドウスイッチ15は、ドア17の内側面に設けられている。なお、図2におけるドア17の窓枠17aは説明の便宜上、誇張して上下方向に長く描かれている。
【0020】
前記上昇スイッチはウインドウガラス18を閉まる方向(上方)に作動させるためのスイッチであり、下降スイッチはウインドウガラス18を開く方向(下方)に作動させるためのスイッチである。両スイッチは、2段クリック式であり揺動型のパワーウインドウスイッチ15を選択的に切換操作、即ち、一端側(ダウン側)若しくは他端側(アップ側)を一段押圧することにより、オン・オフ操作される。
【0021】
また、前記オートスイッチは、パワーウインドウスイッチ15のダウン側若しくはアップ側を2段押圧する操作に基づいてウインドウガラス18を全開・全閉状態に作動させるためのスイッチである。
【0022】
一方、ウインドウガラス18を上昇又は下降させるためのウインドウガラス駆動用モータとしての駆動モータ19は、直流モータから構成され、駆動回路としてのドライブ・切換回路20を介して前記コントローラ11に接続されている。前記ドライブ・切換回路20は、コントローラ11からの駆動制御信号に基づいて、駆動モータ19に対して駆動電源の供給又は停止を行うと共に正転又は反転を行うための回路を切り換える。即ち、前記上昇・下降スイッチの操作信号たるアップ若しくはダウン信号に基づくコントローラ11からの駆動制御信号に応答して、ドライブ・切換回路20は駆動モータ19を駆動させ、ウインドウガラス18を上昇又は下降させるようになっている。
【0023】
前記駆動モータ19の近傍には、パルスセンサ22が配設されている。このパルスセンサ22は入力回路23を介してコントローラ11に接続されており、駆動モータ19の駆動(回転)に応じてパルス信号(以下、単に「パルス」という)をコントローラ11へ出力するようになっている。そして、駆動モータ19の回転速度に比例したパルス周期の長短に基づいて、コントローラ11ではウインドウガラス18の挟まれを検出する。
【0024】
また、カウンタ部14のパルスカウンタでは、入力されたパルスをカウントしている。尚、本実施形態では、ウインドウガラス18の下降でカウントアップ、上昇でカウントダウンさせている。そして、前記パルスカウンタにてカウントされたカウント数は、前記駆動モータ19が駆動中及び停止された際にRAMに記憶されるとともに、図示しないイグニッションスイッチがオフされると、RAMから記憶部13のEEPROMにウインドウガラスの現在位置のデータとして記憶されるようになっている。又、前記イグニッションスイッチがオンされると、EEPROMからRAMの特定の記憶領域に書き込まれるようにされている。
【0025】
一方、前記記憶部13のROMには、予めウインドウガラス18の全閉及び全開位置に対応するパルスカウント値(基準位置からのパルスカウント値)が記憶されている。以下、パルスカウント値を位置データということがある。ここで、前記パルスカウント値は、パルスカウンタにてカウントされるパルスのカウント数に対応した累積値であり、予め実験にて全閉位置を基準位置として、全開位置までをカウントすることで決定されている。
【0026】
それとともに、ROMには全閉位置から全開位置までのウインドウガラスの移動範囲に亘り、基準位置からのパルスカウント値(位置データ)が一定間隔で記憶されている。この一定間隔で記憶されたパルスカウント値に基づいてウインドウガラス18の移動範囲は図2に示すように均等な複数個の分割エリアbに区画されている。そして、前記コントローラ11は前記パルスセンサ22から入力されるパルスのカウント数と、ROMに記憶された前記パルスカウント値(分割エリアを特定するための位置データ)とを比較することにより、ウインドウガラス18が、どの分割エリアb内に位置するかを判定可能としている。
【0027】
また、コントローラ11は、前記パルスセンサ22からのパルスのカウント数と、前記ROMに記憶された全閉又は全開位置のパルスカウント値とを比較することにより、ウインドウガラス18が全閉又は全開位置であることを判別できる。そして、前記コントローラ11は、この結果に応じてモータの駆動を制御する。
【0028】
次に、挟まれ検出の処理とともに、本実施形態における閾値変更処理について図3に示すフローチャートに従って説明する。なお、このフローチャートは演算部12が実行する処理を示したものである。
【0029】
このフローチャートは、アップ信号を入力すると起動し、アップ信号の入力がなくなると停止する。このアップ信号の入力がなくなる場合は、例えば、ウインドウガラスが全閉位置に位置した場合や、イグニッションスイッチがオフされた場合等である。
【0030】
パワーウインドウスイッチ15からコントローラ11に操作信号たるアップ信号が入力されると、コントローラ11はドライブ・切換回路20へ駆動制御信号を出力する。すると、ドライブ・切換回路20はその信号に基づいて駆動モータ19を駆動させ、ウインドウガラス18を上昇させる。そして、駆動モータ19の回転駆動に基づいて、パルスセンサ22は回転速度に比例した周期のパルスを生成し、コントローラ11へ出力する。この結果、コントローラ11では、閾値P0Sと比較するためのデータであるパルスの取得を開始する。それと同時に、カウンタ部14のパルスカウンタでは、RAMの特定の記憶領域に記憶されているカウント数を読み出し、そのカウント数からカウントを開始する。
【0031】
そして、ステップ(以下、「S」と略す。)100において、前記パルスカウンタにてカウントされるパルスのカウント数と、ROMに記憶されたパルスカウント値(位置データ)とを比較する。そして、これによりウインドウガラス18が現在どこの分割エリアbにいるかを判定し、S101に進む。ここで、分割エリアbが判定された後の処理であるS101以降の処理は、各分割エリアb毎に独立して行われるようになっており、すなわち、積分判定禁止フラグ、反転カウンタ、及び解除用カウンタは各エリア毎に独立している。
【0032】
さて、S101において、その判定した分割エリア(例えばb1)に対応した積分判定禁止フラグを読み出し、同積分判定禁止フラグが「1」であるか否かを判定する。この積分判定禁止フラグは、後述する挟まれ検出処理において、通常閾値係数A1又は特別閾値係数A2(A1<A2)の何れを用いて挟まれ判定を行うかを決定するためのものである。そして、各分割エリアb毎に対応して用意される前記積分判定禁止フラグは、分割エリアb毎にセット又はクリアされるようになっている。
【0033】
この積分判定禁止フラグが「0」にクリアされている場合は、通常閾値係数A1が選択されて、低荷重で反転するための閾値(通常閾値P0S1)にて挟まれ検出処理(以下、「積分判定」という)が行われる。一方、積分判定禁止フラグが「1」にセットされている場合は、特別閾値係数A2が選択されて、高荷重で反転するための閾値(特別閾値P0S2)にて挟まれ検出処理(以下、「絶対値判定」という)が行われる。この結果、前記絶対値判定よりも積分判定の方が高感度に挟まれ検出は行われる。なお、各分割エリアbにおける積分判定禁止フラグは初期値は、クリアして「0」にされている。
【0034】
前記積分判定禁止フラグが「0」であった場合は(S101がYES)、S102に進み、積分判定のルーチンへ移行する。そして、積分判定を行い、挟まれが発生したか否かを判定する。
【0035】
ここで、S102における積分判定について詳説する。
本実施形態では、挟まれ検出処理としてパルス検知方式をとっており、パルスセンサ22にて生成され、駆動モータ19の回転速度に比例した周期のパルス信号に基づいている。一般に、モータ19の回転速度が速いとパルス周期は短く、反対に遅いとパルス周期は長くなり、このパルス周期の変動を利用している。
【0036】
すなわち、駆動モータ19が一定の回転速度でウインドウガラス18を閉める方向に閉動作させているとき、その時々に出力されるパルス周期は一定となる。そして、今出力された実パルスのパルス周期T0 と、その今出力されたパルスより数えてN−1個前までの各パルスのパルス周期T1 〜TN-1 とを合計し、その合計値をNで割る。即ち、平均パルス周期P0 (=[T0 +T1 +・・・+TN-1 ]/N)を求める。すると、パルス周期T0 が常に一定ならば、平均パルス周期P0 も一定となる。
【0037】
そして、その時々で求めた平均パルス周期P0 に対して、予め定めた閾値係数Aを掛けた値を閾値P0S(=A×P0 )として求める。この閾値P0Sは、その時々における挟まれの有無を決定するための基準値となるものである。なお、前記閾値P0Sに係る閾値係数Aに関しては、積分判定用の通常閾値係数A1が予め記憶部13のROMに格納されている。以下、通常閾値係数A1を用いた閾値P0Sを通常閾値P0S1という。本実施形態では、通常閾値P0S1が「変更前の閾値」に相当する。
【0038】
そして、そのときに求められたパルス周期T0 と、前記通常閾値P0S1とを比較する。その結果、実パルス周期T0 が通常閾値P0S1よりも大きいときは(T0 >P0S1)、演算部12は何かが挟まったと判断する。反対に、そのときの実パルス周期T0 が通常閾値P0S1以下(P0S1≧T0 )のときには、演算部12は何も挟まっていないと判断する。
【0039】
そして、上記したように、パルス周期T0 が通常閾値P0S1を超えていなかった場合は(S102がNO)、挟まれ検出回数をカウントするためのカウンタ部14の反転カウンタをクリアして(S103)、S100に戻る。そして、次のパルスの取得を行う。なお、各分割エリアb毎に対応して用意される前記反転カウンタは、分割エリアb毎にカウント又はクリアされるようになっている。
【0040】
一方、前記S102において、パルス周期T0 が通常閾値P0S1を超え、挟まれが検出された場合は(S102がYES)、S104に進む。すると、前記カウンタ部14の反転カウンタは、挟まれ検出回数のカウント値を1つインクリメントし、反転カウンタのカウント値を記憶部13のRAMに記憶する。このとき、演算部12は、現在のパルスのカウント数も記憶部13のRAMに記憶し、挟まれが検出された際にウインドウガラス18が何れの分割エリアb1に位置していたかを判定可能とする。
【0041】
次いで、RAMに格納された前記挟まれ検出回数のカウント値及びパルスのカウント数に基づいて、ウインドウガラス18の閉動作が何度も行われる中で、同一の分割エリアb1において、挟まれ検出が2回連続で行われたか否かを判定する(S105)。
【0042】
挟まれ検出がまだ一回のときは(S105がNO)、後述するS108に移行する。一方、同一の分割エリアb1内で挟まれ検出が2回連続で行われた場合は、S106に進む。そして、S106において、その分割エリアb1と、同分割エリアb1に対して隣接する複数の分割エリアb2,b3(即ち、所定エリアk)における各積分判定禁止フラグを「1」にセットする。その後、反転カウンタをクリアし(S107)、S108に進む。
【0043】
S108においては、演算部12からドライブ・切換回路20に制御信号を出力し、ウインドウガラス18を反転動作(開く方向への動作)させることで、ウインドウガラス18の反転制御を行い、S100に戻る。なお、積分判定禁止フラグが「1」にセットされると、演算部12は通常閾値係数A1ではなく特別閾値係数A2を用いて挟まれ判定を行うため、本実施形態では前記S106が閾値変更処理に相当する。
【0044】
さて、前記S101において、積分判定禁止フラグが「1」の場合には、通常閾値係数A1にて挟まれ検出処理を行う積分判定を禁止し(S109)、絶対値判定のルーチンへ移行する。
【0045】
そして、演算部12はS110において絶対値判定を行い、挟まれが発生したか否かを判定する。ここで、S110における絶対値判定について詳説する。このS110の処理は、既に説明したS102における積分判定と閾値係数Aに関すること以外は同様の処理を行うため、その重複説明を省略し、異なる箇所のみ説明する。
【0046】
閾値P0Sに係る閾値係数Aとして、通常閾値係数A1よりも大きい特別閾値係数A2が予め記憶部13のROMに格納されている。以下、特別閾値係数A2を用いた閾値P0Sを特別閾値P0S2という。そして、演算部12は特別閾値係数A2と平均パルス周期P0 とを掛けることにより特別閾値P0S2(=A2×P0 )を算出し、パルス周期T0 との大小関係の比較により挟まれ判定を行う。なお、本実施形態では、前記特別閾値P0S2が「変更した後の閾値」に相当する。
【0047】
パルス周期T0 が特別閾値P0S2を超えていた場合は(P0S2<T0 、S110がYES)、挟まれ検出と判断し、S108へ移行して、ウインドウガラス18の反転制御を行う。一方、パルス周期T0 が特別閾値P0S2を超えていなかった場合は(P0S2≧T0 、S110がNO)、S111へ進む。
【0048】
そして、今回のパルスのカウント数に対応した分割エリア(例えばb3)において、挟まれ判定を行うための特別閾値係数A2を通常閾値係数A1に戻すか否か、換言すれば、積分判定禁止フラグを「0」にクリアするか否かを判定するための反転余裕度Yの演算を行う。前記反転余裕度Yは以下の式(α)で算出される。
【0049】
反転余裕度Y=パルス周期変化量D/通常閾値P0S1(=A1×P0 )…(α)
パルス周期変化量D=| 今回入力された実パルスのパルス周期T0 −平均パルス周期P0 |
外部からウインドウガラス18が過負荷を受け、摺動抵抗が大きい部位では、駆動モータ19の回転速度が遅くなるため、パルス周期T0 は、平均パルス周期P0 よりも長くなる。このため、前記S106で積分判定禁止フラグが1にセットされた所定エリアkにおいて、摺動抵抗が大きい部位ではパルス周期変化量Dを通常閾値P0S1(=A1×P0 )で割ると、一般的に所定値(本実施形態では、0.5)より大きくなる。その一方で、外部からウインドウガラス18が過負荷を受けていない部位では、前記所定値以下となる。
【0050】
従って、S111において、反転余裕度Yが、Y>0.5の場合は(S111がNO)、分割エリアb3において、特別閾値P0S2(特別閾値係数A2)で挟まれ判定をすることは問題なしと演算部12は判断する。そして、前記余裕度Yが0.5以下であった数をカウントするためのカウンタ部14の解除用カウンタをクリアして(S112)、S100に戻る。なお、各分割エリアb毎に対応して用意される前記解除用カウンタは、分割エリアb毎にカウント又はクリアされるようになっている。
【0051】
一方、反転余裕度Yが、Y≦0.5であった場合は(S111がYES)、S113へ進む。そして、カウンタ部14の解除用カウンタが反転余裕度Yが0.5以下であった数のカウント値を1つインクリメントする。演算部12は、解除用カウンタのカウント値を記憶部13のRAMに記憶する。それと共に、今回のパルスのカウント数もRAMに記憶し、ウインドウガラス18が位置する分割エリアb3を判別可能とする(S113)。なお、本実施形態では、前記反転余裕度Y≦0.5が所定条件に相当する。
【0052】
次いで、RAMに記憶された解除用カウンタのカウント値及びパルスのカウント数に基づいて、同一の分割エリアb3において、2回連続してパルスの反転余裕度Yが0.5以下であったか否かを判定する(S114)。
【0053】
反転余裕度Yの0.5以下の判定がまだ一回のときは(S114がNO)、S100に戻る。一方、同一の分割エリアb3内でパルスの反転余裕度Yが、2回連続して0.5以下であった場合は、演算部12は、特別閾値P0S2で挟まれ判定をする必要ないと判断してS115に進む。そして、S115において、分割エリアb3における積分判定禁止フラグを「0」にクリアしてS100に戻る。このとき、前記S106にて積分判定禁止フラグが「1」に設定された所定エリアkのうち、S115にて前記フラグが「0」にクリアされた分割エリアb3以外の分割エリアは積分判定禁止フラグは「1」のままである。また、積分判定禁止フラグを「0」にクリアすると、演算部12は再び積分判定(通常閾値係数A1を用いた挟まれ判定)を行うため、S115が戻し処理に相当する。
【0054】
ところで、前記フローチャートとは別の割込処理により、コントローラ11に繰り返しパルスが入力される中で、演算部12は、現在のパルスカウンタのカウント数が全閉位置に対応するパルスカウント値(位置データ)と一致するか否かを判定している。そして、全閉位置に対応するパルスカウント値(位置データ)とパルスカウンタのカウント数とが一致した場合はこのフローチャートのルーチンを終了する。また、S108の処理により反転制御が行われた後、演算部12は、ウインドウガラス18に係る現在のパルスカウンタのカウント数が全開位置に対応するパルスカウント値(位置データ)と一致するか否かを、別の割込処理により判定している。そして、全開位置に対応するパルスカウント値(位置データ)とパルスカウンタのカウント数とが一致した場合は、前記フローチャートのルーチンを終了する。
【0055】
従って、上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)上記実施形態では、同一の分割エリアb1にて、2回連続して挟まれが検出された際に、前記分割エリアb1と、同分割エリアb1に対して隣接する複数の分割エリアb2,b3における各積分判定禁止フラグを「1」にセットする。そして、その所定エリアkにおける挟まれ判定を通常閾値係数A1よりも大きい特別閾値係数A2を用いて行う。このため、ウインドウガラス18の移動範囲内において、ドア17の建て付け不良の影響等により摺動抵抗が大きい部位では、特別閾値POS2にて挟まれの判定を行うため、従来と異なり挟まれの誤検出が発生することはない。
【0056】
(2)上記実施形態では、同一の分割エリアb内において2回連続して挟まれ検出された際に、挟まれ判定に用いられる閾値係数Aを通常閾値係数A1から特別閾値係数A2に変更する。このため、挟まれ検出1回で閾値(閾値係数)変更を行う場合と比して閾値(閾値係数)変更の信頼性を高めることができる。
【0057】
(3)上記実施形態では、特別閾値係数A2が用いられて挟まれ判定が行われる所定エリアkは、ウインドウガラス18の移動範囲内の全てではなく、2回連続して挟まれが検出された分割エリアb1と、同分割エリアb1に対して隣接する複数の分割エリアb2,b3(即ち、所定エリアk)である。このため、ウインドウガラス18の移動範囲全てで特別閾値POS2が用いられる場合と比較して、高精度な挟まれ検出を実現できる。
【0058】
(4)上記実施形態では、特別閾値係数A2を用いて挟まれ判定を行う所定エリアkにおいて、同一分割エリアb3内で検出されるパルス周期変化量Dと通常閾値P0S1とから算出される反転余裕度Yが、パルスの2回連続で所定値(0.5)以下であった場合は、積分判定禁止フラグを「0」にクリアする。そして、その分割エリアb3においては再び通常閾値係数A1を用いて挟まれ判定を行う。従って、一旦設定された所定エリアkに対して、特別閾値係数A2が用いられるべき分割エリアbの絞り込みができ、より高精度な挟まれ検出を実現できる。
【0059】
(5)上記実施形態では、同一の分割エリアb3において、反転余裕度Yが、入力されるパルスが2回連続で所定値(0.5)以下であった際に、挟まれ判定に用いられる特別閾値係数A2を通常閾値係数A1に戻す処理を行う。このため、一回の反転余裕度Y≦0.5で、戻し処理を行う場合と比してその信頼性を高めることができる。
【0060】
(6)上記実施形態では、分割エリアを区画形成するために、全閉位置から全開位置までのウインドウガラスの移動範囲に亘り、基準位置からのパルスカウント値を一定間隔でROMに記憶した。このため、パルスセンサ22からのパルスのカウント数と、パルスカウント値とを比較することにより、ウインドウガラス18が位置する分割エリアbを容易に判定できる。
【0061】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、S105においては連続した挟まれ検出が、同一の分割エリアb1で発生したか否かを判定したが、最初に挟まれ検出がなされた分割エリアb1と、同分割エリアb1に対して隣接する複数の分割エリアとに判定するエリアを拡大してもよい。このようにすれば、広範囲に亘って、閾値変更処理の可否が判定できるため、高精度に閾値変更処理を行うことができる。また、この場合、この拡大されたエリアを特別閾値係数A2が用いられる所定エリアkと同じ範囲にしても良いし、所定エリアkより狭い範囲にしてもよい。
【0062】
・上記実施形態では、S106における閾値(閾値係数A)変更処理は、同一の分割エリアb内において2回連続して挟まれ検出された際に行われたが、挟まれ検出の回数は2回に限定することなく、3回、4回等適宜増やしてもよい。また、連続でなくても、同一の分割エリアbにて複数回挟まれが検出された際に、閾値(閾値係数A)変更処理を行うようにしてもよい。
【0063】
・上記実施形態では、S115における閾値(閾値係数A)の戻し処理は、同一の分割エリアbにおいて、反転余裕度Yが、2回連続所定値(0.5)以下であった際に行われたが、2回に限定することなく、3回、4回等適宜増やしてもよい。また、連続でなくても、同一の分割エリアbにて複数回反転余裕度Yが0.5以下であった際に、閾値(閾値係数A)の戻し処理を行うようにしてもよい。さらに、反転余裕度Yの判定値は0.5に限定するものではなく、適宜変更することは勿論可能である。
【0064】
・上記実施形態では、本発明を車両のサイドドアのパワーウインドウ装置に具体化したが、車両の天井面に設けられる電動のスライドルーフを含むスライドルーフ装置に具体化してもよい。このようにしても、本発明は、異物の挟み込みが有り得るスライドルーフに対して効果的に用いられる。尚、このようにした場合は前記スライドルーフがウインドウガラスに相当する。
【0065】
・上記実施形態では、閾値(閾値係数A)の戻し処理は、ウインドウガラス18の閉動作中に、同一の分割エリアbにおいて、反転余裕度Yが、2回連続所定値以下であった際に行われたが、以下のように変更してもよい。即ち、ウインドウガラス18の閉動作中にパワーウインドウスイッチ15の下降スイッチが押圧され、ダウン信号がコントローラ11に入力されると、コントローラ11における演算部12は、閾値(閾値係数A)の戻し処理を行う。そして、同処理において、特別閾値係数A2を用いて挟まれ判定を行うように設定されている所定エリア全体に対して、再び、通常閾値係数A1を用いて挟まれ判定がなされるようにする。このようにすれば、所望のときに容易に戻し処理ができ、工場等での実験段階では特に効果的である。
【0066】
・上記実施形態では、分割エリアbをウインドウガラス18の移動範囲において均等に分割して形成したが、均等でなくてもよい。
・上記実施形態では、特別閾値係数A2は予めROMに格納されていたが、経時変化を行う態様にしてもよい。即ち、S102において、挟まれ検出がなされた場合、そのときのパルス周期T0 と、平均パルス周期P0 とから、状況対応閾値係数A3((n×T0 )/P0 、nは定数)を算出する。そして、同閾値係数A3を用いてS110における挟まれ判定を行う。このようにすれば、各車両の状況に応じた閾値を設定できる。
【0067】
次に、上記実施形態及び各別例から把握できる技術的思想について、それらの効果と共に以下に記載する。
・前記変更後の閾値が設定された所定エリア内においてウインドウガラスの移動中に、操作手段が所定操作された際には、前記所定エリアの閾値を再び変更前の閾値へ戻し処理する第3変更手段を更に備えている。このようにすれば、容易に戻し処理が可能になる。上記実施形態では、前記第3変更手段はコントローラ11に相当し、操作手段はパワーウインドウスイッチ15に相当する。また、所定操作は、下降スイッチの押圧である。
【0068】
【発明の効果】
以上詳述したように、請求項1の発明によれば、高精度な挟まれ検出を維持できる一方で、ウインドウガラスの移動範囲内における摺動抵抗の違いに基づく挟まれの誤検出を容易に防止できる。また、戻し処理により、所定エリアを構成する分割エリアにおいて、第2閾値が用いられるべきエリアを絞り込むことができ、より高精度な挟まれ検出を実現できる。
【0069】
請求項2の発明によれば、判定手段が連続して挟まれを判定した際に、第1変更手段にて閾値変更処理が行われるため、閾値変更処理の信頼性を高めることができる。
【0071】
請求項3の発明によれば、請求項1又は請求項2の発明の効果に加えて、判定手段が連続して同一分割エリア内で検出されるパルスの変化量と第1閾値との関係が、連続して所定条件を満たした際に、第2変更手段にて戻し処理が行われるため、戻し処理の信頼性を高めることができる。
【0072】
請求項4の発明によれば、請求項1乃至請求項3のうちいずれか一項の発明の効果に加えて、全開位置から全閉位置までのウインドウガラスの移動範囲に亘り、基準位置からのパルスカウント値に基づいて、前記分割エリアの区画形成は容易に実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態におけるパワーウインドウ装置の電気的構成を示すブロック図。
【図2】同じく車両のドアを示す側面図。
【図3】同じく挟まれ判定及び閾値変更処理を示すフローチャート。
【符号の説明】
b…分割エリア、k…所定エリア、
11…コントローラ(判定手段、駆動制御手段、第1変更手段、第2変更手段)、18…ウインドウガラス、19…駆動モータ(ウインドウガラス駆動用モータ)。
Claims (4)
- モータの回転に応じて発生したパルスが、ウインドウガラスによる挟まれの有無を決定するための閾値を超えたか否かを判定する判定手段と、前記判定手段の判定結果に基づいてウインドウガラス駆動用モータの駆動を反転する駆動制御手段とを備えるウインドウガラスの挟み込み有無検出装置において、
ウインドウガラスの移動範囲を複数個の分割エリアに分割し、1つ、又は、複数の分割エリアにて、前記判定手段が複数回挟まれを検出した場合に、前記挟まれ検出がされた分割エリアを含む所定エリアの閾値を、複数回挟まれを検出した際の閾値より大きい閾値へ閾値変更処理する第1変更手段と、
前記第1変更手段により変更された後の閾値が設定された所定エリアにおける分割エリアに対して、同一分割エリア内で検出されるパルスの変化量と変更前の閾値との関係が、複数回所定条件を満たした場合は、その分割エリアにおける閾値を再び変更前の閾値へ戻し処理する第2変更手段とを備え、
前記判定手段は、前記複数回挟まれを検出した後は前記所定エリアでは、閾値を変更した後の閾値にてウインドウガラスによる挟まれ判定を行うことを特徴とするウインドウガラスの挟み込み有無検出装置。 - 前記第1変更手段による閾値変更処理は、判定手段が、ウインドウガラスの閉動作に際して、連続して挟まれを検出した際に行われる請求項1に記載のウインドウガラスの挟み込み有無検出装置。
- 前記第2変更手段による戻し処理は、同一分割エリア内で検出されるパルスの変化量と変更前の閾値との関係が、連続して所定条件を満たした場合に行われる請求項1又は請求項2に記載のウインドウガラスの挟み込み有無検出装置。
- 前記分割エリアは、全開位置から全閉位置までのウインドウガラスの移動範囲に亘り、基準位置からのパルスカウント値に基づいて区画されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のうちいずれか1項に記載のウインドウガラスの挟み込み有無装置。
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