JP3755440B2 - 射出成形用金型及びこれを用いた成形品の製造方法 - Google Patents
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Description
【技術分野】
本発明は,凹陥部が設けられた本体部と,上記凹陥部に配設されていると共にアンダーカット部が設けられた突起部とを有する成形品を成形するための射出成形用金型及びこれを用いた成形品の製造方法に関する。
【0002】
【従来技術】
従来より,本体部と,該本体部に配設されていると共にアンダーカット部が設けられた突起部とを有する成形品がある。該成形品を射出成形するに当っては,上記アンダーカット部を形成するための凸部を設けた可動コアを有する射出成形用金型を用いる。
この場合,上記成形品を上記射出成形用金型から離型する際に,上記可動コアの凸部を,上記成形品の各部に干渉させることなく,上記アンダーカット部から抜く必要がある。
【0003】
かかる観点から,実開平5−58249号公報に開示されているごとく,離型時において,上記可動コアの凸部が成形品の各部に干渉することなく,アンダーカット部から抜き取られるように,成形品と可動コアを動作させることができる射出成形用金型が提案されている。
【0004】
該射出成形用金型9は,図11〜図13に示すごとく,互いに分離可能な第1金型91と第2金型92とを有する。上記第1金型91は,下記の主型93と可動コア94と押出ピン95とを有する。上記主型93は,成形品2の本体部21を成形するためのメインキャビティ81を上記第2金型92と共に構成する。上記可動コア94は,上記成形品2の突起部22を成形するためのサブキャビティ82を上記主型93と共に構成する。上記押出ピン95は,成形品2の離型方向Rに進退可能に上記主型93に配設されている。
【0005】
上記射出成形用金型9から成形品2を離型するに当っては,まず第1段階として,図12に示すごとく,第1押出板912を離型方向Rに移動させる。これにより,上記可動コア94と押出ピン95とを同時に,上記主型93に対して前進を開始させると共に,離型方向Rに同速度で所定の位置まで前進させる。
【0006】
次いで,第2段階として,図13に示すごとく,コアガイド916の作用により,上記可動コア94を上記突起部22から離れる方向に傾斜させると共に,2段押カム914の作用により第2押出板913を押上げ,上記押出ピン95を上記可動コア94よりもさらに前進させる。
これにより,上記可動コア94の凸部941をアンダーカット部24から抜くとともに,上記可動コア94を上記本体部21から離す。
【0007】
【解決しようとする課題】
しかしながら,上記従来の射出成形用金型9は,上述のごとく,離型時において,2段階の動作を行なう必要がある。そのため,上記射出成形用金型9は,複雑な構造を有することとなる。また,上記射出成形用金型9を製造するに当り,部品点数が多くなり,材料費がかかると共に,組立て工数も多くなる。
【0008】
また,上記成形品の本体部に凹陥部が設けられ,該凹陥部に上記突起部が形成されている場合(図8,図9参照),上記可動コアは上記凹陥部に配置されることとなる。そして,上記本体部が上記可動コアに抱き付いた状態となっている。それ故,離型時において,上記凹陥部から上記可動コアを円滑に抜き取る必要がある。
【0009】
本発明は,かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので,成形品の離型を円滑に行うことができ,安価で,製造容易な射出成形用金型及びこれを用いた成形品の製造方法を提供しようとするものである。
【0010】
【課題の解決手段】
第1の発明は,凹陥部が設けられた本体部と,上記凹陥部に配設されていると共にアンダーカット部が設けられた突起部とを有する成形品を成形するための射出成形用金型において,
該射出成形用金型は,互いに分離可能な第1金型と第2金型とを有し,
上記第1金型は,上記成形品の上記本体部を成形するためのメインキャビティを上記第2金型と共に構成する主型と,上記成形品の突起部を成形するためのサブキャビティを上記主型と共に構成する傾斜コアと,成形品の離型方向に進退可能に上記主型に配設された押出ピンとを有し,
上記傾斜コアは,上記突起部のアンダーカット部を形成するための凸部を有すると共に,上記主型に対して上記離型方向から所定角度傾斜した斜め方向に進退可能に設けられ,かつ,前進するほど上記成形品のアンダーカット部から上記凸部が離れるように構成されており,
上記押出ピンと上記傾斜コアとは,成形品の離型時において,略同時に前進を開始すると共に少なくとも上記アンダーカット部から上記凸部が抜けるまで,上記離型方向に略同速度で前進し,その後,上記押出ピンが上記傾斜コアよりも更に前進するよう構成されており,
また,上記第1金型は,上記傾斜コアを離型方向に押圧するガイドロッドを有し,該ガイドロッドは,成形品の離型時において,少なくとも上記傾斜コアの凸部が上記成形品のアンダーカット部から抜ける位置に達するまで,傾斜コアを押圧するよう構成してあり,
更に,上記第1金型は,上記傾斜コアに固定した規制コマと,上記主型に固定したストッパーブロックとを有し,成形品の離型時において,上記傾斜コアが上記主型に対して前進して,少なくとも上記傾斜コアの凸部が上記成形品のアンダーカット部から抜ける位置に達したとき,上記規制コマが上記ストッパーブロックに当接し,上記傾斜コアの離型方向への前進を規制するよう構成してあることを特徴とする射出成形用金型にある(請求項1)。
【0011】
上述のごとく,上記押出ピンと上記傾斜コアとは,成形品の離型時において,略同時に前進を開始すると共に少なくとも上記アンダーカット部から上記凸部が抜けるまで,上記離型方向に略同速度で前進するよう構成されている。そのため,上記傾斜コアを上記成形品と共に離型方向に移動させることにより,凸部をアンダーカット部から抜くことができる。
【0012】
また,上記傾斜コアの凸部がアンダーカット部から抜けた後に,上記押出ピンが上記傾斜コアよりも更に前進するよう構成されている。そのため,この押出ピンの更なる前進を実行することによって,上記成形品を上記傾斜コアから引き離す方向へ移動させることができる。これにより,例え,上記成形品の本体部が上記傾斜コアに抱き付いた状態にあっても,上記成形品を傾斜コアから円滑に離すことができる。
このように,上記構成の射出成形用金型を用いれば,上記傾斜コアの凸部と上記成形品の突起部とを干渉させることなく,円滑に成形品を離型することができる。
【0013】
また,上記傾斜コアは,上記離型方向から所定角度傾斜した斜め方向に進退可能に設けられ,前進するほど上記アンダーカット部から凸部が離れるよう構成されている。そのため,上記傾斜コアは,上記斜め方向の前進という簡単な動作で,上記傾斜コアを成形品の突起部から離すことができる。そして,傾斜コアを成形品の本体部から離すに当っても,上記押出ピンが傾斜コアよりも更に前進するという簡単な動作を行えば足りる。
それ故,上記射出成形用金型は,簡単な構造とすることができる。従って,安価で,製造容易な射出成形用金型を得ることができる。
【0014】
以上のごとく,上記第1の発明によれば,成形品の離型を円滑に行うことができ,安価で,製造容易な射出成形用金型を提供することができる。
【0015】
第2の発明は,凹陥部が設けられた本体部と,上記凹陥部に配設されていると共にアンダーカット部が設けられた突起部とを有する成形品を,射出成形用金型を用いて製造する方法において,
上記射出成形用金型は,互いに分離可能な第1金型と第2金型とを有し,上記第1金型は,上記成形品の上記本体部を成形するためのメインキャビティを上記第2金型と共に構成する主型と,上記成形品の突起部を成形するためのサブキャビティを上記主型と共に構成する傾斜コアと,成形品の離型方向に進退可能に上記主型に配設された押出ピンとを有し,上記傾斜コアは,上記突起部のアンダーカット部を形成するための凸部を有すると共に,上記主型に対して上記離型方向から所定角度傾斜した斜め方向に進退可能に設けられ,かつ,前進するほど上記成形品のアンダーカット部から上記凸部が離れるように構成されており,
上記メインキャビティ及び上記サブキャビティにおいて上記成形品を成形した後,第1金型と第2金型とを分離し,上記成形品を上記第1金型から離型するにあたり,
上記押出ピンと上記傾斜コアとを,上記主型に対して離型方向に,略同時に前進を開始させると共に少なくとも上記アンダーカット部から上記凸部が抜けるまで略同速度で前進させ,
その後,上記押出ピンを上記傾斜コアよりも更に前進させて,上記成形品を上記第1金型から離型する方法であり,
また,上記第1金型は,上記傾斜コアを離型方向に押圧するガイドロッドを有し,成形品の離型時において,該ガイドロッドによって,少なくとも上記傾斜コアの凸部が上記成形品のアンダーカット部から抜ける位置に達するまで,上記傾斜コアを押圧し,
更に,上記第1金型は,上記傾斜コアに固定した規制コマと,上記主型に固定したストッパーブロックとを有し,上記傾斜コアを上記主型に対して前進させ,少なくとも上記傾斜コアの凸部が上記成形品のアンダーカット部から抜ける位置に達したとき,上記規制コマを上記ストッパーブロックに当接させ,上記傾斜コアの離型方向への前進を規制することを特徴とする成形品の製造方法にある(請求項2)。
【0016】
本製造方法においては,上述のごとく,上記押出ピンと上記傾斜コアとを,成形品の離型時において,略同時に前進を開始させると共に少なくとも上記アンダーカット部から上記凸部が抜けるまで,上記離型方向に略同速度で前進させる。そのため,上記傾斜コアを上記成形品と共に離型方向に移動させることにより,凸部をアンダーカット部から抜くことができる。
【0017】
そして,その後,上記押出ピンの方を上記傾斜コアよりも更に前進させる。そのため,上記成形品を上記傾斜コアから引き離す方向へ移動させることができる。これにより,例え,上記成形品の本体部が上記傾斜コアに抱き付いた状態にあっても,上記成形品を傾斜コアから円滑に離すことができる。
このように,上記傾斜コアの凸部と上記成形品の突起部とを干渉させることなく,円滑に成形品を離型することができる。
【0018】
また,上記傾斜コアは,上述のごとく斜め方向に進退可能に設けられ,上記斜め方向の前進という簡単な動作で,上記傾斜コアを成形品の突起部から離すことができる。そして,傾斜コアを成形品の本体部から離すに当っても,上記押出ピンを傾斜コアよりも更に前進させるという簡単な動作を行えば足りる。そのため,成形品の離型を容易に行うことができる。
【0019】
以上のごとく,上記第2の発明によれば,成形品の離型を円滑かつ容易に行うことができる成形品の製造方法を提供することができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
上記第1の発明(請求項1)において,上記成形品としては,例えば,自動車のラジエータグリル,ガーニッシュ,バックドア等がある。また,上記アンダーカット部は,例えば,上記突起部の基端部付近において窪んだ部分をいい,貫通していてもよい。
【0021】
また,上記傾斜コアが進退可能な斜め方向としては,上記離型方向に対して,例えば,10〜15°傾斜している方向が好ましい。この傾斜角度が10°未満の場合,上記傾斜コアの凸部がアンダーカット部から抜ける位置に達するまでに,傾斜コアを大きく前進させる必要があり,成形品の生産効率が低下するおそれがある。一方,上記傾斜角度が15°を超える場合には,傾斜コアの破損又は変形のおそれがある。また,上記離型方向とは,上記第1金型の主型から,上記成形品が離れる方向をいう。
【0022】
また,上記第1金型は,上記傾斜コアを離型方向に押圧するガイドロッドを有し,該ガイドロッドは,成形品の離型時において,少なくとも上記傾斜コアの凸部が上記成形品のアンダーカット部から抜ける位置に達するまで,傾斜コアを押圧するよう構成してある。これにより,上記押出ピンと上記傾斜コアとを,略同時に前進を開始すると共に少なくとも上記アンダーカット部から上記凸部が抜けるまで,上記離型方向に略同速度で前進するよう構成することが容易となる。
また,上記ガイドロッドは,例えば,スプリング等の弾性部材によって,上記傾斜コアを離型方向に押圧することができる。また,上記ガイドロッドは,上記傾斜コアを直接に押圧していてもよいし,間接的に押圧していてもよい。
【0023】
また,上記第1金型は,上記傾斜コアに固定した規制コマと,上記主型に固定したストッパーブロックとを有し,成形品の離型時において,上記傾斜コアが上記主型に対して前進して,少なくとも上記傾斜コアの凸部が上記成形品のアンダーカット部から抜ける位置に達したとき,上記規制コマが上記ストッパーブロックに当接し,上記傾斜コアの離型方向への前進を規制するよう構成してある。
これにより,上記押出ピンと傾斜コアとが上記離型方向に略同速度で前進した後,上記押出ピンが上記傾斜コアよりも更に前進するよう構成することが容易となる。
【0024】
次に,上記第2の発明において,上記第1金型は,上記傾斜コアを離型方向に押圧するガイドロッドを有し,該ガイドロッドによって,少なくとも上記傾斜コアの凸部が上記成形品のアンダーカット部から抜ける位置に達するまで,上記傾斜コアを押圧する。
これにより,上記押出ピンと上記傾斜コアとを,容易に,略同時に前進を開始させると共に少なくとも上記アンダーカット部から上記凸部が抜けるまで,上記離型方向に略同速度で前進させることができる。
【0025】
また,上記第1金型は,上記傾斜コアに固定した規制コマと,上記主型に固定したストッパーブロックとを有し,上記傾斜コアを上記主型に対して前進させ,少なくとも上記傾斜コアの凸部が上記成形品のアンダーカット部から抜ける位置に達したとき,上記規制コマを上記ストッパーブロックに当接させ,上記傾斜コアの離型方向への前進を規制する。
これにより,上記押出ピンと傾斜コアとを上記離型方向に略同速度で前進させた後,容易に,上記押出ピンを上記傾斜コアよりも更に前進させることができる。
【0026】
【実施例】
本発明の実施例にかかる射出成形用金型及びこれを用いた成形品の製造方法につき,図1〜図10を用いて説明する。
本例の射出成形用金型1は,図8,図9に示すごとく,凹陥部23が設けられた本体部21と,上記凹陥部23に配設されていると共にアンダーカット部24が設けられた突起部22とを有する成形品2を成形するための射出成形用金型である。
【0027】
該射出成形用金型1は,図1〜図6に示すごとく,互いに分離可能な第1金型11と第2金型12とを有する。
上記第1金型11は,下記の主型13と傾斜コア14と押出ピン15とを有する。図1,図6に示すごとく,上記主型13は,上記成形品2の上記本体部21を成形するためのメインキャビティ31を,上記第2金型12と共に構成する。上記傾斜型14は,上記成形品2の突起部22を成形するためのサブキャビティ32を上記主型13と共に構成する。押出ピン15は,成形品2の離型方向Rに進退可能に上記主型13に配設されている。
【0028】
上記傾斜コア14は,上記突起部22のアンダーカット部24を形成するための凸部141を有する。また,上記傾斜コア14は,上記主型13に対して上記離型方向Rから所定角度傾斜した斜め方向に進退可能に設けられている。更に,上記傾斜コア14は,図1〜図3に示すごとく,前進するほど上記成形品2のアンダーカット部24から上記凸部141が離れるように構成されている。
【0029】
上記押出ピン15と上記傾斜コア14とは,図1,図2に示すごとく,成形品2の離型時において,略同時に前進を開始すると共に少なくとも上記アンダーカット部24から上記凸部141が抜けるまで,上記離型方向Rに略同速度で前進する。その後,図3,図4に示すごとく,上記押出ピン15が上記傾斜コア14よりも更に前進するよう構成されている。
【0030】
図1〜図4に示すごとく,上記第1金型11は,上記傾斜コア14を離型方向Rに押圧するガイドロッド16を有する。該ガイドロッド16は,成形品2の離型時において,少なくとも,図2に示すごとく,上記傾斜コア14の凸部141が上記成形品2のアンダーカット部24から抜ける位置に達するまで,傾斜コア14を押圧する。
【0031】
また,図1〜図4に示すごとく,上記第1金型11は,上記傾斜コア14に固定した規制コマ17と,上記主型13に固定したストッパーブロック18とを有する。そして,成形品2の離型時において,上記傾斜コア14が上記主型13に対して前進して,少なくとも上記傾斜コア14の凸部141が上記成形品2のアンダーカット部24から抜ける位置に達したとき,図3に示すごとく,上記規制コマ17が上記ストッパーブロック18に当接する。これにより,図3,図4に示すごとく,上記傾斜コア14の離型方向Rへの前進を規制する。
【0032】
上記射出成形用金型1により製造される成形品2は,例えば,図10に示すような,自動車のラジエータグリルである。そして,上記成形品2の枠体20が,図8,図9(A)に示すごとく,断面略U字状に形成されている。該枠体20の凹陥部23には,枠体20を補強するリブとしての突起部22が複数形成されている。また,該突起部22は,本体部21との間に形成された貫通したアンダーカット部24を設けてなる。
【0033】
次に,上記射出成形用金型1の構成につき,より具体的に説明する。なお,以下においては,図1〜図4に示す状態に従って上下左右を定めて説明する。従って,本例においては,上記離型方向Rは上方となる。ただし,この方向については,本発明を限定するものではない。
【0034】
図1〜図4に示すごとく,上記射出成形用金型1の第1金型11は,図示しない駆動機構に固定された取付板111を有する。該取付板111は,上記主型13の下方に配置されていると共に,該主型13にスペーサブロック(図示略)を介して固定されている。そして,上記主型13は,上記駆動機構によって,上記取付板111と共に,上下に移動することができる。
【0035】
また,上記取付板111と上記主型11との間のスペースには,押出板112が配置されている。該押出板112は,図示しない他の駆動機構によって,上下動可能となっている。そして,上記押出板112は,上記押出ピン15の下端部151を保持固定し,該押出ピン15を上下動させることができる。即ち,上記押出ピン15を,主型13に対して進退させることができる。
【0036】
また,上記取付板111には,上記ガイドロッド16を保持するロッド保持部113が形成されている。該ロッド保持部113は,上記ガイドロッド16を,所定範囲の上下動が可能な状態で保持している。そして,上記ロッド保持部113の底部114と上記ガイドロッド16との間には,該ガイドロッド16を上方へ付勢するスプリング115が配されている。
【0037】
また,図1〜図4,図7に示すごとく,上記押出板112には,上記規制コマ17を保持するコマ保持部116が形成されている。該コマ保持部116は,上記規制コマ17を,所定範囲の上下左右方向の移動が可能な状態で保持している。
なお,上記押出板112は,2枚の金属板を重ね合わせて固定して形成されている。
【0038】
また,上記ストッパーブロック18は,上記主型13の下面131に固定されている。そして,上記傾斜コア14を挿通するための挿通穴181を有している。該挿通穴181は,上下方向(離型方向R)に対して所定の傾斜角度をもって形成されている。これにより,上記傾斜コア14を一定の傾斜角度に保持している。即ち,上記傾斜コア14は,上記離型方向Rに対して,約10°傾斜している。
【0039】
次に,上記射出成形用金型1を用いた成形品2の製造方法につき説明する。
即ち,図1に示すごとく,まず上記メインキャビティ31及びサブキャビティ32において,本体部21と突起部22とを有する上記成形品2を成形する。
次いで,上記第1金型11と第2金型12とを分離する。具体的には,上記取付板111に取り付けた駆動機構により,上記第1金型11を下方に移動させる。即ち,本例においては,上記第2金型12が固定型であり,第1金型11が可動型である。
【0040】
次いで,図2に示すごとく,上記押出板112を上方へ移動させることにより,上記押出ピン15を上方へ前進させる。このとき,上記コマ保持部116によって上方への移動を阻止されていた規制コマ17が,上記押出板112の上昇に伴って,上記ガイドロッド16による上方への押圧力によって上方へ移動する。これにより,上記規制コマ17に固定された傾斜コア14が斜め上方へ移動する。
【0041】
それ故,上記押出ピン15と上記傾斜コア14とは,上方向については同速度で移動する。これにより,上記押出ピン15に押上げられて上記成形品2が上昇し,傾斜コア14も成形品2の本体部21に接触しながら上昇する。
そして,図2,図3に示すごとく,上記傾斜コア14は,成形品2に対して右方へ移動する。これにより,上記傾斜コア14の上端部に形成された凸部141は,上記成形品2の突起部22のアンダーカット部24から抜ける。
【0042】
更に,上記押出板112を上昇させると,図3に示すごとく,上記規制コマ17が,上記ストッパーブロック18に当接する。この状態においては,既に上記ガイドロッド16の上昇が停止しているため,上記規制コマ17は,上記ガイドロッド16に支承されていない。しかし,上記傾斜コア14が,上記成形品2の凹陥部23に抱き付かれた状態(図5参照)にあるため,上記傾斜コア14が成形品2と共に上昇し,これにより規制コマ17が上昇する。ただし,上記成形品2による傾斜コア14への抱き付き力が小さい場合には,規制コマが上記ストッパーブロック18に当接する前に,傾斜コア14が成形品2から離れる。
【0043】
上記規制コマ17が上記ストッパーブロック18に当接した状態(図3)から,更に,上記押出板112を上昇させ,押出ピン15を上昇させると,上記成形品2を更に上昇させることとなる。ところが,上記規制コマ17が上記ストッパーブロック18に当接して,それ以上の上昇を規制されているため,傾斜コア14は上昇しない。そのため,上記傾斜コア14は,上記成形品2から離れる。
このようにして,上記成形品2が,第1金型11から離型される。
【0044】
次に,本例の作用効果につき説明する。
上述のごとく,上記押出ピン15と上記傾斜コア14とは,成形品2の離型時において,略同時に前進を開始すると共に少なくとも上記アンダーカット部24から上記凸部141が抜けるまで,上記離型方向Rに略同速度で前進する。そのため,上記傾斜コア14を上記成形品2と共に離型方向Rに移動させることにより,凸部141をアンダーカット部24から抜くことができる(図2)。
【0045】
そして,その後,上記押出ピン15が上記傾斜コア14よりも更に前進する。そのため,上記成形品2を上記傾斜コア14から引き離す方向へ移動させることができる(図4)。これにより,例え,上記成形品2の本体部21が上記傾斜コア14に抱き付いた状態にあっても,上記成形品2を傾斜コア14から円滑に離すことができる。
このように,上記傾斜コア14の凸部141と上記成形品2の突起部22とを干渉させることなく,円滑に成形品2を離型することができる。
【0046】
また,上記傾斜コア14は,上記離型方向Rから所定角度傾斜した斜め方向に進退可能に設けられ,前進するほど上記アンダーカット部24から凸部141が離れるよう構成されている。そのため,上記傾斜コア14は,上記斜め方向の前進という簡単な動作で,上記傾斜コア14を成形品2の突起部22から離すことができる。そして,傾斜コア14を成形品2の本体部21から離すに当っても,上記押出ピン15が傾斜コア14よりも更に前進するという簡単な動作を行えば足りる。それ故,上記射出成形用金型1は,簡単な構造とすることができる。従って,安価で,製造容易な射出成形用金型1を得ることができる。
【0047】
また,上記第1金型11は上記ガイドロッド16を有し,該ガイドロッド16は,少なくとも上記傾斜コア14の凸部141が上記成形品2のアンダーカット部24から抜ける位置に達するまで,傾斜コア14を押圧する。これにより,容易に,上記押出ピン15と上記傾斜コア14とを,略同時に前進を開始させると共に少なくとも上記アンダーカット部24から上記凸部141が抜けるまで,上記離型方向Rに略同速度で前進させることができる。
【0048】
また,上記第1金型11は,上記規制コマ17と上記ストッパーブロック18とを有する。そして,上記規制コマ17が上記ストッパーブロック18に当接し,上記傾斜コア14の離型方向Rへの前進を規制する。これにより,上記押出ピン15と傾斜コア14とを上記離型方向Rに略同速度で前進させた後,容易に,上記押出ピン15を上記傾斜コア14よりも更に前進させることができる。
【0049】
以上のごとく,本例によれば,成形品の離型を円滑に行うことができ,安価で,製造容易な射出成形用金型及びこれを用いた成形品の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例における,成形品を離型する前の射出成形用金型の断面図。
【図2】実施例における,傾斜コアの凸部が成形品のアンダーカット部から抜けた状態の射出成形用金型の断面図。
【図3】実施例における,規制コマがストッパーブロックに当接した状態の射出成形用金型の断面図。
【図4】実施例における,押出ピンが傾斜コアよりも前進した状態の射出成形用金型の断面図。
【図5】図1のA−A線矢視断面相当の説明図。
【図6】図1のB−B線矢視断面相当の説明図。
【図7】図4のE−E線矢視断面相当のコマ保持部の説明図。
【図8】実施例における,成形品の部分斜視図。
【図9】(A)図8のC−C線矢視断面図,(B)図8のD−D線矢視断面図。
【図10】実施例における,成形品の全体の正面図。
【図11】従来例における,成形品を離型する前の射出成形用金型の断面図。
【図12】従来例における,第1段階の離型動作を表す,射出成形用金型の断面図。
【図13】従来例における,第2段階の離型動作を表す,射出成形用金型の断面図。
【符号の説明】
1...射出成形用金型,
11...第1金型,
12...第2金型,
13...主型,
14...傾斜コア,
141...凸部,
15...押出ピン,
2...成形品,
21...本体部,
22...突起部,
23...凹陥部,
24...アンダーカット部,
31...メインキャビティ,
32...サブキャビティ,
Claims (2)
- 凹陥部が設けられた本体部と,上記凹陥部に配設されていると共にアンダーカット部が設けられた突起部とを有する成形品を成形するための射出成形用金型において,
該射出成形用金型は,互いに分離可能な第1金型と第2金型とを有し,
上記第1金型は,上記成形品の上記本体部を成形するためのメインキャビティを上記第2金型と共に構成する主型と,上記成形品の突起部を成形するためのサブキャビティを上記主型と共に構成する傾斜コアと,成形品の離型方向に進退可能に上記主型に配設された押出ピンとを有し,
上記傾斜コアは,上記突起部のアンダーカット部を形成するための凸部を有すると共に,上記主型に対して上記離型方向から所定角度傾斜した斜め方向に進退可能に設けられ,かつ,前進するほど上記成形品のアンダーカット部から上記凸部が離れるように構成されており,
上記押出ピンと上記傾斜コアとは,成形品の離型時において,略同時に前進を開始すると共に少なくとも上記アンダーカット部から上記凸部が抜けるまで,上記離型方向に略同速度で前進し,その後,上記押出ピンが上記傾斜コアよりも更に前進するよう構成されており,
また,上記第1金型は,上記傾斜コアを離型方向に押圧するガイドロッドを有し,該ガイドロッドは,成形品の離型時において,少なくとも上記傾斜コアの凸部が上記成形品のアンダーカット部から抜ける位置に達するまで,傾斜コアを押圧するよう構成してあり,
更に,上記第1金型は,上記傾斜コアに固定した規制コマと,上記主型に固定したストッパーブロックとを有し,成形品の離型時において,上記傾斜コアが上記主型に対して前進して,少なくとも上記傾斜コアの凸部が上記成形品のアンダーカット部から抜ける位置に達したとき,上記規制コマが上記ストッパーブロックに当接し,上記傾斜コアの離型方向への前進を規制するよう構成してあることを特徴とする射出成形用金型。 - 凹陥部が設けられた本体部と,上記凹陥部に配設されていると共にアンダーカット部が設けられた突起部とを有する成形品を,射出成形用金型を用いて製造する方法において,
上記射出成形用金型は,互いに分離可能な第1金型と第2金型とを有し,上記第1金型は,上記成形品の上記本体部を成形するためのメインキャビティを上記第2金型と共に構成する主型と,上記成形品の突起部を成形するためのサブキャビティを上記主型と共に構成する傾斜コアと,成形品の離型方向に進退可能に上記主型に配設された押出ピンとを有し,上記傾斜コアは,上記突起部のアンダーカット部を形成するための凸部を有すると共に,上記主型に対して上記離型方向から所定角度傾斜した斜め方向に進退可能に設けられ,かつ,前進するほど上記成形品のアンダーカット部から上記凸部が離れるように構成されており,
上記メインキャビティ及び上記サブキャビティにおいて上記成形品を成形した後,第1金型と第2金型とを分離し,上記成形品を上記第1金型から離型するにあたり,
上記押出ピンと上記傾斜コアとを,上記主型に対して離型方向に,略同時に前進を開始させると共に少なくとも上記アンダーカット部から上記凸部が抜けるまで略同速度で前進させ,
その後,上記押出ピンを上記傾斜コアよりも更に前進させて,上記成形品を上記第1金型から離型する方法であり,
また,上記第1金型は,上記傾斜コアを離型方向に押圧するガイドロッドを有し,成形品の離型時において,該ガイドロッドによって,少なくとも上記傾斜コアの凸部が上記成形品のアンダーカット部から抜ける位置に達するまで,上記傾斜コアを押圧し,
更に,上記第1金型は,上記傾斜コアに固定した規制コマと,上記主型に固定したストッパーブロックとを有し,上記傾斜コアを上記主型に対して前進させ,少なくとも上記傾斜コアの凸部が上記成形品のアンダーカット部から抜ける位置に達したとき,上記規制コマを上記ストッパーブロックに当接させ,上記傾斜コアの離型方向への前進を規制するこ とを特徴とする成形品の製造方法。
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