JP3754470B2 - 車両用ブレーキ装置 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、車両用ブレーキ装置に関し、特に左、右前輪ブレーキの制動力配分を制御可能な車両用ブレーキ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
左、右輪の接地荷重に応じた制動力を得るために、左、右輪ブレーキの制動力配分制御を行なうことが望ましく、それを実現するために、実公平2−7738号公報で開示されるような比例減圧弁、すなわち減圧開始圧を可変とした比例減圧弁を、マスタシリンダ等の制動液圧発生手段と左、右両輪ブレーキとの間にそれぞれ介設し、減圧開始圧を左、右で異ならせることにより左、右輪ブレーキの制動力に差を生じさせるようにしたものが在る。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記実公平2−7738号公報で開示される比例減圧弁は、入力される制御荷重が大となるのに応じて減圧開始圧を大とするようにして減圧開始圧を変化させるものである。このため、フロントエンジン・フロントドライブ車両のように後輪側の荷重が比較的小さい車両の左、右後輪では、比例減圧弁の減圧開始圧が比較的低く設定されるので、比例減圧弁に入力される制御荷重を比較的低くすることが可能であるが、接地荷重が比較的大きな左、右前輪に適用しようとすると、左、右の制動力配分制御を行なわない通常のブレーキ時には、減圧開始圧を制動液圧発生手段から出力される液圧以上の充分大きな値とする必要があり、通常ブレーキ時には比例減圧弁への入力制御荷重をそれに見合って大きな値とする必要がある。したがって制動力の左、右配分制御を行なわない通常ブレーキ時には非常に大きな制御荷重を比例減圧弁に与えておく必要があり、エネルギー消費量が大となる。しかも制御荷重が大となるのに応じて減圧開始圧を大とするものでは、何らかの故障によって制御荷重を発生できなくなると減圧開始圧が低いままとなってしまうので制動力のロスが大きい。
【0004】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、減圧開始圧を可変とした比例減圧弁を用いた簡単な構成で左、右前輪ブレーキの制動力配分制御を可能とし、エネルギー消費量の低減を図るとともに、制動力のロスが大きくなることを防止した車両用ブレーキ装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明によれば、入力液圧室の液圧が減圧開始圧を超えるのに応じて該入力液圧室の液圧を一定比率で減圧して出力液圧室から出力する比例減圧弁が、マニュアル操作に応じた制動液圧を発生する制動液圧発生手段と、右前輪ブレーキおよび左前輪ブレーキとの間にそれぞれ設けられる車両用ブレーキ装置において、前記比例減圧弁は、セット荷重が小となるのに応じて前記減圧開始圧が低下するようにして前記減圧開始圧を定めるセット荷重可変の調圧ばねと、ハウジングに設けられる隔壁に近接する側への移動によって前記セット荷重が小さくなるようにして前記調圧ばねを受けるばね受け部と、前記隔壁を前記ばね受け部との間に挟む位置で前記ハウジングに摺動可能に嵌合されるとともに前記隔壁との間に制御液圧室を形成する制御ピストンと、前記隔壁を液密にかつ摺動自在に貫通して前記ばね受け部および前記制御ピストンを連結するロッドと、前記調圧ばねのばね荷重よりも大きなばね荷重で前記隔壁側に前記制御ピストンを押圧する設定圧変更ばねとを備え、前記制御液圧室には、相互に異なる制御圧を発生し得る制御液圧発生手段が個別に接続される。
【0006】
【実施例】
以下、図面により本発明をフロントエンジン・フロントドライブ車両のブレーキ装置に適用したときの一実施例について説明する。
【0007】
図1ないし図4は本発明の一実施例を示すものであり、図1は車両用ブレーキ装置の構成を示す図、図2は前輪ブレーキに対応した比例減圧弁、アクチュエータおよび液圧切換手段の構成を示す断面図、図3は比例減圧弁の比例減圧特性図、図4は後輪ブレーキに対応したアクチュエータおよび開閉弁の構成を示す断面図である。
【0008】
先ず図1において、このブレーキ装置は、マニュアル操作に応じた液圧を出力可能な制動液圧発生手段としてのマスタシリンダMと、入力電気量に応じた液圧をそれぞれ出力可能として右前輪ブレーキBFR、左前輪ブレーキBFL、右後輪ブレーキBRRおよび左後輪ブレーキBRLにそれぞれ対応したアクチュエータAFR,AFL,ARR,ARLとを備える。
【0009】
マスタシリンダMはタンデム型のものであり、ブレーキペダル1のブレーキ操作力が負圧ブースタ2を介して該マスタシリンダMに入力される。該マスタシリンダMは、相互に独立した第1および第2出力ポート31 ,32 を備えるものであり、第1出力ポート31 は、第1比例減圧弁41 、第1液圧切換手段51 および第1アンチロックブレーキ制御用モジュレータ61 を介して右前輪ブレーキBFRに接続されるとともに第1電磁切換弁71 を介して左後輪ブレーキBRLに接続され、第2出力ポート32 は第2比例減圧弁42 、第2液圧切換手段52 および第2アンチロックブレーキ制御用モジュレータ62 を介して左前輪ブレーキBFLに接続されるとともに第2電磁切換弁72 を介して右後輪ブレーキBRRに接続される。
【0010】
また右前輪ブレーキBFRに対応した制御液圧発生手段としてのアクチュエータAFRは第1比例減圧弁41 に接続されるとともに第1常閉型電磁弁81 を介して第1液圧切換手段51 に接続され、左前輪ブレーキBFLに対応した制御液圧発生手段としてのアクチュエータAFLは第2比例減圧弁42 に接続されるとともに第2常閉型電磁弁82 を介して第2液圧切換手段52 に接続され、左後輪ブレーキBRLに対応したアクチュエータARLは第1開閉弁91 を介して第1電磁切換弁71 に接続され、右後輪ブレーキBRRに対応したアクチュエータARRは第2開閉弁92 を介して第2電磁切換弁7 2 に接続される。
【0011】
図2において、アクチュエータAFRは、制御弁10と、リニアソレノイド11とから構成されるものである。
【0012】
制御弁10のハウジング12には、出力室13と、該出力室13との間に隔壁14を介在させた解放室15と、一端を該解放室15に連ならせた摺動孔16と、摺動孔16よりも大径にして該摺動孔16の他端に一端を同軸に連ならせるとともに他端を開放した作動室17とが設けられており、駆動ロッド18を備えるリニアソレノイド11は、駆動ロッド18を作動室17内に同軸に配置して作動室17の外端を塞ぐようにしてハウジング12に取付けられる。
【0013】
摺動孔16には、一端を解放室15に臨ませたスプール弁体19が摺動自在に嵌合され、解放室15内でスプール弁体19の一端および隔壁14間には戻しばね20が縮設される。而して該戻しばね20のばね力により、スプール弁体19はその他端を駆動ロッド18に常時当接させるように付勢される。
【0014】
隔壁14には、スプール弁体19よりも小径に形成された反力ピン21が液密にかつ摺動自在に貫通されており、出力室13に臨む反力ピン21の一端とハウジング12との間には、反力ピン21の他端をスプール弁体19の一端に常時当接させる程度の弱いばね力を発揮するばね22が縮設される。
【0015】
摺動孔16には、解放室15側の第1環状凹部23と、作動室17側の第2環状凹部24とが軸方向に間隔をあけて設けられ、第1および第2環状凹部23,24間で摺動孔16の内面に一端を開口させる連通路25がハウジング12に設けられ、該連通路25の他端は出力室13に連通される。またスプール弁体19には環状溝26が設けられており、該環状溝26は、スプール弁体19が図2で示すように後退位置に在るときには第2環状凹部24を連通路25に連通させるが第1環状凹部23を連通路25と遮断し、スプール弁体19が前進したときには第1環状凹部23を連通路25に連通させるが第2環状凹部24を連通路25とは遮断する。
【0016】
ハウジング12には、解放室15および第2環状凹部24にそれぞれ通じる第1および第2解放ポート27,28と、第1環状凹部23に通じる入力ポート29と、出力室13に通じる出力ポート30とが設けられ、図1で示すように、第1および第2解放ポート27,28はマスタシリンダMに付設されているリザーバRに連通され、入力ポート29は液圧供給源31に連通される。
【0017】
液圧供給源31は、前記リザーバRから作動液を汲上げるポンプ32と、該ポンプ32に接続されるアキュムレータ33と、アキュムレータ33の圧力を検出する圧力検出器34とを備え、常時一定の液圧を供給可能である。
【0018】
リニアソレノイド11は、図示しないコントローラから入力される電気量に応じた軸方向推力を駆動ロッド18からスプール弁体19に与えるものであり、スプール弁体19は、リニアソレノイド11からの前記軸方向推力で連通路25すなわち出力室13を第1環状凹部23すなわち入力ポート29に連通する方向に押圧されることになる。一方、スプール弁体19には、戻しばね20により前記軸方向推力に対抗するばね力が与えられるとともに、出力室13の液圧が反力ピン21に作用することにより反力ピン21からの反力が前記軸方向推力に対抗して与えられることになる。このようにして、スプール弁体19は、リニアソレノイド11の推力と、戻しばね20のばね力ならびに反力ピン21からの反力とが均衡するように、出力室13すなわち出力ポート30を第2環状凹部24すなわち第2解放ポート28に連通させる後退位置と出力ポート30を入力ポート29に連通させる前進位置との間で摺動孔16内を移動し、これにより出力ポート30からリニアソレノイド11の入力電気量に応じた液圧が出力されることになる。
【0019】
比例減圧弁41 のハウジング36には、一端を閉じたシリンダ孔37と、該シリンダ孔37の他端に一端が連なる大径孔38と、大径孔38との間に隔壁39を介在させるとともに隔壁39とは反対側を閉塞した摺動孔40とが同軸に設けられる。シリンダ孔37には、該シリンダ孔37の一端閉塞部との間に出力液圧室41を形成して受圧ピストン42が摺動自在に嵌合され、受圧ピストン42に設けられた小シリンダ孔43には、バルブ移動ピストン44が摺動自在に嵌合され、バルブ移動ピストン44および受圧ピストン42間には入力液圧室45が形成される。また摺動孔40には、隔壁39との間に制御液圧室46を形成して制御ピストン47が摺動自在に嵌合され、該制御ピストン47に同軸にかつ一体に連設されて隔壁39を液密にかつ摺動自在に貫通するロッド48の先端には、受圧ピストン42およびバルブ移動ピストン44に同軸に対向するばね受け部49が一体に設けられる。
【0020】
ハウジング36には、マスタシリンダMの第1出力ポート31 に通じる入力ポート51と、第1液圧切換手段51 に接続される出力ポート52と、アクチュエータAFRの出力ポート30に接続される制御ポート53とが設けられており、入力ポート51は入力液圧室45に連通され、出力ポート52は出力液圧室41に連通され、制御ポート53は制御液圧室46に連通される。
【0021】
受圧ピストン42の出力液圧室41側端部には、出力液圧室41に通じる弁孔54と、該弁孔54を中心部に開口させて入力液圧室45に臨むテーパ状の弁座55とが同軸に設けられており、入力液圧室45内には、弁座55に着座可能な弁体56が収納され、弁体56およびバルブ移動ピストン44間には閉じばね57が縮設される。しかも弁体56には、弁孔54に遊嵌される開弁ロッド58が一体に突設される。
【0022】
弁体56にはコネクタ59の一端が取付けられる。このコネクタ59の他端側には、バルブ移動ピストン44に一体に連設されたストッパ60が、弁体56から離反する方向に移動したときにコネクタ59に係合可能として挿通される。
【0023】
受圧ピストン42の出力液圧室41と反対側の端部には止め輪61が嵌着されるとともに、止め輪61よりも出力液圧室41側で該止め輪61に対向する段部62が設けられており、入力液圧室45とは反対側からバルブ移動ピストン44に係合する座金63の受圧ピストン42に対する軸方向相対移動が前記止め輪61および段部62で規制される。
【0024】
またばね受け部49および受圧ピストン42間には第1調圧ばね64が縮設され、ばね受け部49および座金63間には第1調圧ばね64よりもばね荷重の小さな第2調圧ばね65が縮設される。しかも摺動孔40の隔壁39とは反対側の閉塞部と制御ピストン47との間には設定圧変更ばね66が縮設されており、この設定圧変更ばね66のばね荷重は、第1および第2調圧ばね64,65のばね荷重よりも充分に大きく設定される。したがって制御ピストン47すなわちばね受け部49の軸方向位置は、制御液圧室46の制御液圧と、設定圧変更ばね66のばね力とが均衡する位置に定まり、それにより第1および第2調圧ばね64,65の軸方向長さすなわちセット荷重が定まることになる。
【0025】
このような第1比例減圧弁41 の比例減圧作動を説明するにあたって、シリンダ孔37の横断面積をA1 、受圧ピストン42における小シリンダ孔43の横断面積をA2 、弁孔54の弁座55への開口端横断面積をA3 、第1および第2調圧ばね64,65のセット荷重をFS 、入力ポート51への入力液圧をPI 、出力ポート52からの出力液圧をPO とする。
【0026】
而してPI ≦FS /(A1 −A2 )の状態では、第1比例減圧弁41 は開弁したままであり、PI =PO である。したがって図3の実線で示す直線L1 のように、出力液圧PO は入力液圧PI の変化に比例して変化することになる。
【0027】
入力液圧PI が増大して、PI >FS /(A1 −A2 )となると、受圧ピストン42は、第1および第2調圧ばね64,65を圧縮して出力液圧室41の容積を増大する側に移動する。一方、バルブ移動ピストン44は、ばね受け部49に当接した状態にあって移動することはなく、弁体56はその開弁ロッド58をシリンダ孔37の一端閉塞部に当接させる位置に閉じばね57により保持されている。したがって弁体56が弁座55に着座して弁孔54が閉じられることになるが、入力液圧PI がさらに増加すると、受圧ピストン42は出力液圧室41の容積を縮小する側に移動して、弁体56が弁座55から離反して弁孔54を開放することになり、このような受圧ピストン42の軸方向移動により、入力液圧PI を比例的に減圧した出力液圧PO が得られることになる。すなわち、PI >FS /(A1 −A2 )の状態では、
PO =FS /(A1 −A2 )+PI ×{(A2 −A3 )/(A1 −A3 )}
となり、図3の実線で示す直線L2 のように、出力液圧PO は入力液圧PI を一定比率{(A2 −A3 )/(A1 −A3 )}で減少した値となる。
【0028】
しかも第1および第2調圧ばね64,65のセット荷重FS は、ばね受け部49の軸方向位置に応じて変化するものであり、ばね受け部49が隔壁39に近接する側に移動したとき、すなわち制御液圧室46にアクチュエータAFRから入力される制御液圧が増大したときに前記セット荷重FS は小さくなって減圧開始圧{FS /(A1 −A2 )}が低下し、またばね受け部49が隔壁39から離反する側に移動したとき、すなわち制御液圧室46にアクチュエータAFRから入力される制御液圧が低下したときに前記セット荷重FS は大きくなって減圧開始圧{FS /(A1 −A2 )}が増大する。したがって第1比例減圧弁41 は、図3の鎖線で示すように、制御液圧室46の制御液圧が小さくなるのに応じて減圧開始圧が大となる方向で減圧開始圧を制御液圧に応じて変化するように構成されることになる。
【0029】
第1液圧切換手段51 は、アクチュエータAFRの出力液圧を右前輪ブレーキBFRに間接的に作用せしめる液圧伝達機構67と、第1比例減圧弁41 および第1アンチロックブレーキ制御用モジュレータ61 を遮断可能なカット弁68とを備える。
【0030】
液圧伝達機構67は、両端を閉じたシリンダ体69と、シリンダ体69の一端壁61aとの間に形成される入力液圧室70ならびにシリンダ体69の他端壁69bとの間に形成される出力液圧室71に両端を臨ませてシリンダ体69に摺動自在に嵌合されるフリーピストン72と、入力液圧室70の容積を減少する側にフリーピストン72を付勢するばね力を発揮して出力液圧室71に収納される戻しばね73とを備える。シリンダ体69の一端側には入力液圧室70に連通した入力孔74が設けられ、シリンダ体69の他端側には出力液圧室71に連通した出力孔75が設けられ、入力孔74には第1常閉型電磁弁81 を介してアクチュエータAFRの出力ポート30が接続され、出力孔75には第1アンチロックブレーキ制御用モジュレータ61 が接続される。
【0031】
カット弁68は、第1比例減圧弁41 の出力ポート52に通じてシリンダ体69の他端壁69bの中央部に設けられる弁孔76と、該弁孔76を開閉可能にして出力液圧室71内に収納される弁体77と、該弁体77を閉弁方向に付勢する弁ばね78とを備える。
【0032】
出力液圧室71内には、シリンダ体69の他端壁69b内面に当接する皿状のリテーナ79と、フリーピストン72に当接する皿状のリテーナ80とが収納されており、戻しばね73は両リテーナ79,80間に縮設される。
【0033】
弁体77は、リテーナ79の中央部を移動自在に貫通する弁軸81の前端部(図2の上端部)に固設されてリテーナ79内に収納されており、弁軸81の前端寄りには、リテーナ79の内面に係合することにより弁軸81すなわち弁体77の弁孔76から遠ざかる方向の移動を規制する規制鍔部81aが設けられる。而して弁ばね78は、戻しばね73よりも小さなばね荷重に設定されるものであり、リテーナ79の内面と弁軸81の前端部との間に縮設される。
【0034】
フリーピストン72には、弁軸81と同軸である有底の収納凹部82が出力液圧室71側に開口して設けられており、リテーナ80の中央部を移動自在に貫通した弁軸81の後端部が収納凹部82内に移動自在に挿入される。而して弁軸81の後端には、リテーナ80に係合することにより、弁軸81すなわち弁体77の弁孔76に向けての移動を規制する規制鍔部81bが設けられる。
【0035】
このような第1液圧切換手段51 によると、アクチュエータAFRからの液圧が入力液圧室70に作用しておらず、液圧伝達機構67のフリーピストン72が入力液圧室70の容積を最小とする位置に在る状態(図2の状態)では、規制鍔部81bをリテーナ80に係合させた弁軸81が弁ばね78のばね力に抗して弁孔76を開放させる位置に弁体77を移動させており、カット弁68は開弁状態となる。また入力液圧室70への液圧作用に応じて、液圧伝達機構67のフリーピストン72が出力液圧室71の容積を減少せしめる側に移動したときには、リテーナ80への規制鍔部81bの係合が解除されることにより、弁軸81は弁ばね78のばね力により弁孔76を閉鎖する位置まで弁体77を移動させることができ、カット弁68が弁ばね78のばね力により閉弁することが可能となる。しかるに、この状態で第1比例減圧弁41 側から、出力液圧室71の液圧よりも所定値以上高い液圧が弁孔76に作用したときには、弁体77は弁ばね78のばね力に抗して弁孔76を開放する位置まで移動することができ、カット弁68は開弁可能である。
【0036】
左前輪ブレーキBFLに対応するアクチュエータAFL、第2比例減圧弁42 および第2液圧切換手段52 は、上記右前輪ブレーキBFRに対応するアクチュエータAFR、第1比例減圧弁41 および第1液圧切換手段51 と同様に構成される。
【0037】
第1アンチロックブレーキ制御用モジュレータ61 は、第1液圧切換手段51 および右前輪ブレーキBFR間に介設される常開型電磁弁841 と、右前輪ブレーキBFRおよび第1リザーバR1 間に介設される常閉型電磁弁851 と、右前輪ブレーキBFRから第1液圧切換手段51 側への作動液の流通を許容して常開型電磁弁841 に並列に接続されるチェック弁861 とで構成され、第2アンチロックブレーキ制御用モジュレータ62 は、第2液圧切換手段52 および左前輪ブレーキBFL間に介設される常開型電磁弁842 と、左前輪ブレーキBFLおよび第2リザーバR2 間に介設される常閉型電磁弁852 と、左前輪ブレーキBFLから第2液圧切換手段52 側への作動液の流通を許容して常開型電磁弁842 に並列に接続されるチェック弁862 とで構成される。
【0038】
第1リザーバR1 には吸入弁871 を介して第1戻しポンプ881 の吸入口が接続されており、第1戻しポンプ881 の吐出口は吐出弁891 を介して、マスタシリンダMにおける第1出力ポート31 に接続される。また第2リザーバR2 には吸入弁872 を介して第2戻しポンプ882 の吸入口が接続され、第2戻しポンプ882 の吐出口は吐出弁892 を介して、マスタシリンダMの第2出力ポート32 に接続される。
【0039】
図4において、左後輪ブレーキBRLに対応するアクチュエータARLは、右前輪ブレーキBFRに対応するアクチュエータAFRと同様の構成を有するものであり、アクチュエータAFRと同一の符号を付して図示するのみとする。而して図1で示すように、該アクチュエータARLの第1および第2解放ポート27,28はマスタシリンダMのリザーバRに連通され、入力ポート29は液圧供給源31に連通され、出力ポート30は第1開閉弁91 に接続される。
【0040】
第1開閉弁91 の弁ハウジング90には、一端を閉じた大径摺動孔91と、大径摺動孔91よりも小径にして大径摺動孔91の他端に一端が同軸に連なる小径摺動孔92と、小径摺動孔92よりも小径にして小径摺動孔92の他端に一端が同軸に連なる弁孔93と、弁孔93の他端に連なる弁室94とが設けられており、弁孔93および弁室94間には、弁孔93の他端を中心部に開口させたテーパ状の弁座95が形成される。
【0041】
弁室94内には、弁座95に着座可能な球状の弁体96と、該弁体96を弁座95に着座せしめる方向に付勢するばね97とが収納される。
【0042】
大径摺動孔91には、大径摺動孔91の一端閉塞部との間にパイロット室98を形成して大径ピストン99が液密にかつ摺動自在に嵌合され、小径摺動孔92には、大径ピストン99に同軸にかつ一体に連設される小径ピストン100が液密にかつ摺動自在に嵌合される。しかも弁孔93には、ロッド101が遊挿されており、該ロッド101の一端は小径ピストン100に一体かつ同軸に連設あるいは同軸に当接され、ロッド101の他端は弁体96に当接可能である。また弁ハウジング90における大径摺動孔91および小径摺動孔92間の段部と、大径ピストン99との間にはばね102が縮設される。
【0043】
弁ハウジング90には、アクチュエータARLの出力ポート30に通じる通路103が設けられており、該通路103は、弁孔93の中間部内面に開口される。また通路103は、絞り104を介してパイロット室98に連通される。
【0044】
かかる構成の第1開閉弁91 にあっては、アクチュエータARLの出力ポート30から所定値以上の液圧が出力されると、パイロット室98の液圧により大径ピストン99がばね102のばね力に抗してパイロット室98の容積を増大する側に移動し、ロッド101で弁体96が押されて弁座95から離反することにより開弁する。またアクチュエータARLの出力ポート30からの出力液圧が所定値未満であるときには、ばね102のばね力により大径ピストン99がパイロット室98の容積を減少する側に移動し、弁体96を弁座95に着座させるようにロッド101が移動して、第1開閉弁91 が閉弁することになる。しかも絞り104により通路103の液圧低下に対してパイロット室98の液圧低下を遅らせることができ、第1開閉弁91 は通路103の液圧が充分に低下してから閉弁することになり、弁室94での残圧の発生はない。
【0045】
第1電磁切換弁71 は、その消磁状態で左後輪ブレーキBRLをマスタシリンダMの第1出力ポート31 に接続するが第1開閉弁91 とは遮断する位置と、その励磁状態で左後輪ブレーキBRLを第1開閉弁91 に接続するが前記第1出力ポート31 とは遮断する位置とを切換可能である。
【0046】
右後輪ブレーキBRRに対応するアクチュエータARRおよび第2開閉弁92 は、左後輪ブレーキBRLに対応する上記アクチュエータARLおよび第1開閉弁91 と同様に構成されており、第2電磁切換弁72 は、その消磁状態で右後輪ブレーキBRRをマスタシリンダMの第2出力ポート32 に接続するが第2開閉弁92 とは遮断する位置と、その励磁状態で右後輪ブレーキBRRを第2開閉弁92 に接続するが前記第2出力ポート32 とは遮断する位置とを切換可能である。
【0047】
次にこの実施例の作用について説明すると、ブレーキペダル1を踏込み操作した通常のブレーキ時には、第1および第2アンチロックブレーキ制御用モジュレータ61 ,62 、第1および第2電磁切換弁71 ,72 ならびに第1および第2常閉型電磁弁81 ,82 は図1で示す状態に在る。すなわち第1および第2アンチロックブレーキ制御用モジュレータ61 ,6 2 は、右前輪ブレーキBFRおよび左前輪ブレーキBFLを第1および第2液圧切換手段51 ,52 および第1および第2比例減圧弁41 ,42 を介してマスタシリンダMの第1および第2出力ポート31 ,32 にそれぞれ接続した状態に在り、第1および第2電磁切換弁71 ,72 は左後輪ブレーキBRLおよび右後輪ブレーキBRRをマスタシリンダMの第1および第2出力ポート31 ,32 にそれぞれ接続した状態に在り、第1および第2常閉型電磁弁81 ,82 はアクチュエータAFR,AFLと第1および第2液圧切換手段51 ,52 との間をそれぞれ遮断した状態に在る。
【0048】
この状態では、ブレーキペダル1の踏込み操作によってマスタシリンダMの第1出力ポート31 から出力される液圧は、第1比例減圧弁41 、第1液圧切換手段51 のカット弁68および第1アンチロックブレーキ制御用モジュレータ61 の常開型電磁弁841 を介して右前輪ブレーキBFRに作用するとともに第1電磁切換弁71 を介して右後輪ブレーキBRRに作用し、第2出力ポート32 から出力される液圧は、第2比例減圧弁42 、第2液圧切換手段52 のカット弁68および第2アンチロックブレーキ制御用モジュレータ62 の常開型電磁弁842 を介して左前輪ブレーキBFLに作用するとともに第2電磁切換弁72 を介して右後輪ブレーキBRRに作用する。
【0049】
この際、右前輪ブレーキBFRおよび左前輪ブレーキBFLに対応するアクチュエータAFR,AFLは非作動状態に在り、第1および第2比例減圧弁41 ,42 にアクチュエータAFR,AFLから作用する制御液圧は「0」である。したがって第1および第2比例減圧弁41 ,42 では、制御ピストン47が制御液圧室46の容積を最小とする位置に在り、第1および第2調圧ばね64,65のセット荷重は最大となっている。したがってマスタシリンダMから出力される液圧は、両比例減圧弁41 ,42 で減圧されることはなく、右前輪ブレーキBFR,BFLに作用することになる。
【0050】
また左後輪ブレーキBRLおよび右後輪ブレーキBRRに対応するアクチュエータARL,ARRも非作動状態にあって出力ポート30がリザーバRに連通しているが、第1および第2電磁切換弁71 ,72 でシール不良等が在っても、第1および第2開閉弁91 ,92 が閉弁状態に在るので、左後輪ブレーキBRLおよび右後輪ブレーキBRRまたはマスタシリンダMからアクチュエータARL,ARR側に作動液が漏出してしまうことはない。さらに右前輪ブレーキBFRおよび左前輪ブレーキBFLにそれぞれ通じるとともにマスタシリンダMにも通じた状態に在る第1および第2液圧切換手段51 ,52 の出力液圧室71と、アクチュエータAFR,AFRとの間にはフリーピストン72ならびに閉弁状態に在る第1および第2常閉型電磁弁81 ,82 が介在しているので、右前輪ブレーキBFRおよび左前輪ブレーキBFLまたはマスタシリンダMからアクチュエータAFR,AFL側に作動液が漏出してしまうことはない。
【0051】
このようなブレーキ時に、左、右前輪の制動力を配分制御するには、第1および第2比例減圧弁41 ,42 での比例減圧度に差を生じさせればよい。すなわちアクチュエータAFR,AFLから第1および第2比例減圧弁41 ,42 に異なる制御液圧を作用せしめることにより、第1および第2比例減圧弁41 ,42 での比例減圧度に差を生じさせて、右前輪ブレーキBFRおよび左前輪ブレーキBFLの制動力配分制御を行なうことができる。かかる制動力配分制御を実行する機会は、極めて少ないものであり、通常のブレーキ時には第1および第2比例減圧弁41 ,42 にアクチュエータAFR,AFLから制御液圧を作用せしめる必要はないので、第1および第2比例減圧弁41 ,42 をマスタシリンダMと右前輪ブレーキBFRおよび左前輪ブレーキBFLとの間に介設した簡単な構成で右前輪ブレーキBFRおよび左前輪ブレーキBFLの制動力配分制御が可能となるとともに、第1および第2比例減圧弁41 ,42 を設けたことによりエネルギー消費量が増大することもない。
【0052】
しかも制御液圧「0」で減圧開始圧が最高となるので、何らかの故障によってアクチュエータAFL,AFRから制御液圧が出力されない状態となったときにも制動力のロスを生じることはない。
【0053】
また左後輪ブレーキBRLおよび右後輪ブレーキBRRの制動力配分制御を行なう際には、第1および第2電磁切換弁71 ,72 により左後輪ブレーキBRLがアクチュエータARLに接続されるとともに右後輪ブレーキBRRがアクチュエータARRに接続され、その状態でアクチュエータARL,ARRへの入力電気量が個別に制御される。それにより両後輪での制動力の左右配分制御が可能となる。
【0054】
またブレーキ時に車輪がロックする可能性が生じたときに、前輪側では第1および第2アンチロックブレーキ制御用モジュレータ61 ,62 の働きにより右前輪ブレーキBFRおよび左前輪ブレーキBFLのブレーキ力が個別に制御され、また後輪側では、第1および第2電磁切換弁71 ,72 により左および右後輪ブレーキBRL,BRRがアクチュエータARL,ARRに接続された状態でアクチュエータARL,ARRへの入力電気量が個別に制御され、それにより左および右後輪ブレーキBRL,BRRの制動力が個別に制御される。
【0055】
ブレーキペダル1を踏込み操作していない非ブレーキ操作時に、前方の車両との衝突の可能性判断等により自動ブレーキ制御を行なう際には、第1および第2常閉型電磁弁81 ,82 が励磁されて開弁し、アクチュエータAFR,AFLが作動せしめられる。そうすると、アクチュエータAFR,AFLの出力液圧が、第1および第2液圧切換手段51 ,52 の入力液圧室70に作用することにより、第1および第2液圧切換手段51 ,52 のカット弁68がそれぞれ閉弁し、アクチュエータAFR,AFLが第1および第2液圧切換手段51 ,52 の液圧伝達機構67を介して右前輪ブレーキBFRおよび左前輪ブレーキBFLに接続された状態となる。したがってアクチュエータAFR,AFLの出力液圧により右前輪ブレーキBFRおよび左前輪ブレーキBFLでそれぞれ制動力を得ることができる。一方、後輪側では、第1および第2電磁切換弁71 ,72 により左および右後輪ブレーキBRL,BRRがアクチュエータARL,ARRに接続され、アクチュエータARL,ARRの出力液圧により左および右後輪ブレーキBRL,BRRで制動力をそれぞれ得ることができる。
【0056】
さらに非ブレーキ操作時のトラクション制御にあたっては、第1および第2常閉型電磁弁81 ,82 が励磁されて開弁し、アクチュエータAFR,AFLが作動せしめられる。これにより、第1および第2液圧切換手段51 ,52 の液圧伝達機構67を介して、アクチュエータAFR,AFLの出力液圧を右前輪ブレーキBFRおよび左前輪ブレーキBFLにそれぞれ作用させ、駆動輪に装着されている両前輪ブレーキBFR,BFLで制動力を発揮させて、左、右独立の制動力によるトラクション制御が可能となる。
【0057】
ところで、上記実施例では、フロントエンジン・フロントドライブ車両であることに伴ってトラクション制御時にアクチュエータAFR,AFLを右前輪ブレーキBFRおよび左前輪ブレーキBFRに接続するようにしたが、リヤドライブ車両の場合には、アクチュエータARL,ARRを左後輪ブレーキBRLおよび右後輪ブレーキBRRに接続するようにすればよい。
【0058】
以上、本発明の実施例を詳述したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行なうことが可能である。
【0059】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、制御液圧が小さくなるのに応じて減圧開始圧が大となる方向で減圧開始圧を制御液圧に応じて可変とした比例減圧弁が、マニュアル操作に応じた制動液圧を発生する制動液圧発生手段と、右前輪ブレーキおよび左前輪ブレーキとの間にそれぞれ設けられ、両比例減圧弁には、制御液圧発生手段がそれぞれ個別に接続されるので、比例減圧弁を用いた簡単な構成により両前輪ブレーキでの制動力の配分制御が可能となり、またエネルギー消費量も小さく抑えられ、制御液圧発生手段の故障時にも制動力のロスが生じることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】車両用ブレーキ装置の構成を示す図である。
【図2】前輪ブレーキに対応した比例減圧弁、アクチュエータおよび液圧切換手段の構成を示す断面図である。
【図3】比例減圧弁の比例減圧特性図である。
【図4】後輪ブレーキに対応したアクチュエータおよび開閉弁の構成を示す断面図である。
【符号の説明】
41 ,42 比例減圧弁
AFL,AFR 制御液圧発生手段としてのアクチュエータ
BFL 左前輪ブレーキ
BFR 右前輪ブレーキ
M 制動液圧発生手段としてのマスタシリンダ
Claims (1)
- 入力液圧室(45)の液圧が減圧開始圧を超えるのに応じて該入力液圧室(45)の液圧を一定比率で減圧して出力液圧室(41)から出力する比例減圧弁(4 1 ,4 2 )が、マニュアル操作に応じた制動液圧を発生する制動液圧発生手段(M)と、右前輪ブレーキ(B FR )および左前輪ブレーキ(B FL )との間にそれぞれ設けられる車両用ブレーキ装置において、前記比例減圧弁(4 1 ,4 2 )は、セット荷重が小となるのに応じて前記減圧開始圧が低下するようにして前記減圧開始圧を定めるセット荷重可変の調圧ばね(64,65)と、ハウジング(36)に設けられる隔壁(39)に近接する側への移動によって前記セット荷重が小さくなるようにして前記調圧ばね(64,65)を受けるばね受け部(49)と、前記隔壁(39)を前記ばね受け部(49)との間に挟む位置で前記ハウジング(36)に摺動可能に嵌合されるとともに前記隔壁(39)との間に制御液圧室(46)を形成する制御ピストン(47)と、前記隔壁(39)を液密にかつ摺動自在に貫通して前記ばね受け部(49)および前記制御ピストン(47)を連結するロッド(48)と、前記調圧ばね(64,65)のばね荷重よりも大きなばね荷重で前記隔壁(39)側に前記制御ピストン(47)を押圧する設定圧変更ばね(66)とを備え、前記制御液圧室(46)には、相互に異なる制御圧を発生し得る制御液圧発生手段(AFR,AFL)が個別に接続されることを特徴とする車両用ブレーキ装置。
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